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JP6662626B2 - 炭素/炭素複合材製コイルスプリング - Google Patents

炭素/炭素複合材製コイルスプリング Download PDF

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本発明は、高温環境下において使用されることによって特にその性能を発揮することができる炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングに係り、詳細には、高せん断弾性率を有する炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングに関する。
コイルスプリングは、機械要素として、各種の機械、装置、機構に用いられており、今日においては、家庭用品や工業用品、更にはその他の分野において、必要不可欠の重要な部品となっている。
従来、コイルスプリングは、一般に金属材料にて製造されているものであり、ステンレス鋼、低合金鋼、工具鋼、チタン合金などが主に使われてきている。 しかし、金属材料製コイルスプリングは、耐熱性に劣り、高温の使用環境下において充分なスプリング特性を発揮し得ず、従って使用が不可能又は長期的な使用が不可能である。
例えば、耐熱性合金と称される材料で作られたコイルスプリングであっても 400℃を越える温度では、強度低下及び変形が著しく、急激なヘタリ現象が起こるため、このような高温環境下ではスプリングとして使用することができなかった。
そして、400℃を越えるような環境温度でコイルスプリングを使用する場合、インコネル、ハステロイ等の超耐熱合金を使用してコイルスプリングを製造することもあったが、このような超耐熱合金でも、700℃を越える温度では、強度低下及び変形が著しく、急激なヘタリ現象が起こるため、このような高温環境下ではスプリングとして使用することができなかった。
更に、インコネル、ハステロイ等の超耐熱合金に代えて窒化珪素やジルコニアなどのセラミックスを使ってコイルスプリングを製造することも行われているが、このようなセラミックス製のコイルスプリングはもともと靱性が低く、熱衝撃にも弱いため、繰り返し高温環境下で使用すると破壊する可能性が高い。 また、500〜1000℃を越える高温では、急激に強度低下が起こるため破損に至ることがある。
このような問題を解決するために、炭素/炭素複合材料(C/Cコンポジットとも呼ぶ)製のコイルスプリングが製造されている(特許文献1参照)。 炭素/炭素複合材料(C/Cコンポジットとも呼ぶ)は、強化繊維である炭素繊維を黒鉛または炭素のマトリックスで固めた繊維強化複合材料であって、従来の炭素材料、あるいは黒鉛材料に比べ数倍の強度、弾性率を備えると共に、耐熱性、耐摩耗性、靱性に優れていることから、宇宙往還機等のノーズキャップや翼のリーディングエッジ等、航空機、レーシングカー、新幹線車両、大型重量車両等のブレーキ、熱処理炉の炉内構造材、トレイ、ヒーター、半導体製造炉や太陽電池製造炉における製品ハンドリングフォーク、金属加工用の高温治具等に使用されてきた材料である。
特許文献1が開示する炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングは、例えば、
(1)原料であるプリフォームドヤーンをヤーン状またはテープ状またはシート状にし、
(2)型である芯棒に、当該プリフォームドヤーンを間隙保持用コイル材(型)とともに巻き付け、原料プリフォームドヤーンとコイル材(型)を交互に配置し、
(3)ホットプレスで約300〜2000℃,常圧もしくは加圧下で成形し、
(4)成形品からコイル材(型)を取外し、
(5)必要に応じて700〜1200℃で炭化した後、1500〜3000℃で黒鉛化する
ことによって製造されている。
特許文献1が開示する炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングは、上述したような製造方法を取っているため、炭素/炭素複合材料の強化繊維である炭素繊維は、コイルスプリングの螺旋形状に沿って、螺旋の長手方向にのみ配向された、いわゆる一方向強化材としての炭素/炭素複合材料から構成されていた。
このように、コイルスプリングの螺旋形状に沿って、螺旋の長手方向にのみ配向された一方向強化炭素/炭素複合材料の場合、スプリングとして使用することができる程度の強度、弾性率(コイルスプリングにおいては、特にせん断弾性率が重要である)を有してはいるものの、大荷重を支えるコイルスプリングとしてはせん断弾性率が低く、十分な機能を果たしているとは言えなかった。
特開平6−264947号公報
本発明は、上述したような技術的背景に鑑みなされたものであり、1000℃を越えるような高温環境下においても繰り返し使用できるコイルスプリングであって、大荷重を支えることができる高せん断弾性率を有するコイルスプリングを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、平板状の炭素/炭素複合材料において、強化材である炭素繊維を平板状の面内方向の一方向に引き揃えた一方向強化炭素/炭素複合材料に比べ、炭素繊維として短繊維を使用し、この炭素繊維が面内にランダムに配向されたランダム配向炭素/炭素複合材料の面内におけるせん断弾性率が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至った。
すなわち、第1の観点にかかる発明では、円筒面において螺旋状に複数回巻いた炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングであって、強化材である炭素繊維として短繊維を使用し、当該炭素繊維が円筒面に沿ってランダムに配向された構成の炭素/炭素複合材製のコイルスプリングとした。
すなわち、第1の観点にかかる発明では、円筒面において螺旋状に複数回巻いた炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングであって、強化材である炭素繊維として短繊維のみを使用し、当該炭素繊維が円筒面に沿った面内においてランダムに配向された構成の炭素/炭素複合材製のコイルスプリングとした。
本発明では、上述したような構成の炭素/炭素複合材製のコイルスプリングとした結果、1000℃を越えるような高温環境下においても繰り返し使用できるコイルスプリングであって、大荷重を支えることができる高せん断弾性率を有するコイルスプリングを提供することが可能となった。
図1は、本発明にかかる炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングの代表的な例を示したものである。 図2は、本発明にかかる炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングの断面の一例を示したものであって、短繊維炭素繊維が、コイルスプリングが形成する円筒面に沿って2次元的にランダムに配向されていると共に、短繊維炭素繊維がランダムに配向された層が、円筒面の半径方向に複数層積層された状態を示すものである。
以下、本発明にかかる炭素/炭素複合材製のコイルスプリングについて説明する。
炭素/炭素複合材料(C/Cコンポジットとも呼ぶ)は、強化繊維である炭素繊維を黒鉛または炭素のマトリックスで固めた繊維強化複合材料であって、従来の炭素材料、あるいは黒鉛材料に比べ数倍の強度、弾性率を備えると共に、優れた耐熱性、耐摩耗性、靱性を有する材料である。 また、炭素/炭素複合材料は、比重が小さく、強度、剛性(弾性率)が高いことから、高比強度、高比合成な材料としても知られている。
炭素/炭素複合材料は、炭素繊維を一方向にのみ配向したもの、炭素繊維を平面的に2方向に配向したもの、炭素繊維を立体的に3方向に配向したもの、炭素繊維(短繊維)を平面的にランダムに配向したもの、炭素繊維(短繊維)を立体的にランダム配向したものの他、炭素繊維を種々のパターンで配向したものがこれまでに考案されてきている。
また、炭素/炭素複合材料の製造方法についても、レジンチャー法、CVD法、プリフォームドヤーンを使用した製造方法などの他、短繊維状炭素繊維と、バインダーピッチ粉末と、コークス粉末と、粘結剤とからなるシート状の中間材料を使用した製造方法が開発されてきている。
図1は、本発明にかかる炭素/炭素複合材料製のコイルスプリング1の代表的な例を示したものである。 コイルスプリング1は、螺旋状の本体部分2と一端側3と他端側4から構成され、螺旋状の巻き数は、そのコイルスプリング1が使用される荷重、たわみ、スプリング外径、スプリング素線径等によって定められる。
炭素/炭素複合材料製のコイルスプリング1は、引張用、圧縮用のいずれにも対応することができ、引張用、圧縮用によってそれぞれ異なった端部(一端側3および他端側4)の形状が決定されると共に、コイルスプリングの自由高さ等がそれぞれ設定される。
なお、図1には、コイルスプリングの外径が一定のものが示されているが、これに限定されるものではなく、コイルスプリングの外径が、たとえば瓢箪のように変化するものであっても良い。 また、図1には、コイルスプリングの素線断面の形状が矩形状であるものが示されているが、これに限定されるものではなく、コイルスプリングの素線断面の形状が円形、楕円形、台形等のものであっても良い。
次に、本発明にかかる炭素/炭素複合材料製のコイルスプリング1の製造方法の一例について説明する。
本実施形態では、短繊維状炭素繊維と、バインダーピッチ粉末と、コークス粉末と、粘結剤とからなるシート状の中間材料を使用した炭素/炭素複合材料製のコイルスプリング1の製造方法について説明する。
本実施形態で使用する炭素/炭素複合材料製造のためのシート状の中間材料は、短繊維状炭素繊維と、バインダーピッチ粉末と、コークス粉末と、粘結剤とから構成されている。
本実施形態で使用する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、およびピッチ系のいずれのものであってもよく、耐炎化処理糸、炭化処理糸、黒鉛化処理糸のいずれのものでも使用することができる。 本実施形態においては、炭素繊維は短繊維状であり、1〜50mmの長さであることが好ましく、1〜25mmの長さであれば、更に好ましい。
また、本実施形態で使用するバインダーピッチ粉末は、軟化性を有する石油及び/又は石炭系バインダーピッチ粉末であり、60〜320℃の範囲の軟化温度を有し、キノリン不溶分が0〜80重量%、及び揮発分が10〜60重量%の石油及び/又は石炭から得られる等方性、潜在的異方性、又は異方性のバインダーピッチとすることができる。
このバインダーピッチ粉末は、強化繊維(炭素繊維)と、骨材としての後述するコークス粉末と、を結合させるために用いられるものであって、その平均粒径は0.5〜60ミクロンが好ましく、3〜20ミクロンであれば更に好ましい。
また、本実施形態で使用するコークス粉末は、軟化性を有しない石油及び/又は石炭系コークス粉末であって、骨材的役割を持たせるためのものであり、軟化点を有しておらず、揮発分が10重量%以下、好ましくは2重量%以下のものである。 このコークス粉末としては、石油系あるいは石炭系のいずれのものでも使用することができ、その平均粒径は0.5〜30ミクロンが好ましく、1〜20ミクロンであれば更に好ましい。
なお、軟化性を有する石油及び/又は石炭系バインダーピッチ粉末と、軟化性を有しない石油及び/又は石炭系コークス粉末との配合比は特に限定されるものではないが、重量比でバインダーピッチ/コークス=90/10〜10/90が好ましく、70/30〜30/70であれば更に好ましい。
また、本実施形態に使用される粘結剤は、バインダーピッチ粉末とコークス粉末を粘着させると共に、バインダーピッチ粉末、コークス粉末、および粘結剤からなる混合物を炭素繊維に粘着接合するために使用されるものである。粘結剤としては、メチルセルロースなどの増粘安定剤(又は糊料)として工業的に使用されているものを利用することができ、天然由来の増粘安定剤および化学的に合成された増粘安定剤のいずれをも使用することができる。
なお、バインダーピッチ粉末、コークス粉末、および粘結剤とからなる混合物に添加する分散液としては、アルコール等の有機溶剤または水を使用することができる。 また、炭素繊維の体積含有率は、中間材料の全体積に対し、5〜70体積%、好ましくは20〜60体積%とするのが良い。
本実施形態で使用するシート状の中間材料は、以下のような工程を経て製造される。
(1)バインダーピッチ粉末、コークス粉末、粘結剤、および分散液を所定配合比で混合することにより混合溶液を形成する工程。
(2)混合タンクの中に上記混合溶液と、所定量の短繊維状炭素繊維を入れ、撹拌することにより、短繊維状炭素繊維を混合溶液中に均一に分散させる工程。
(3)短繊維状炭素繊維が分散混合された混合溶液を、混合タンクから公知の技術である抄紙装置に圧送して抄紙処理する工程。
このようにして得られたシート状の中間材料では、短繊維状炭素繊維がシート面内にランダムに配向され、互いに絡み合った状態で不織布状に配置されている。 そして、短繊維状炭素繊維と、短繊維状炭素繊維の周囲に配置されたバインダーピッチ粉末、コークス粉末、粘結剤とから構成される連続シート状の不織布は、混合溶液に配合された粘結剤によって所定のタキネスを持つ。
次に、以上説明したシート状の中間材料を使用して、炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングを製造する方法について説明する。
まず、上述した方法により製造したシート状の中間材料を、テープ状に裁断しておく。
コイルスプリングを形成する型として、円筒状の芯型の外周面にコイルの間隙保持のための螺旋状突起部を取り付けた型を使用する。 すなわち、コイルスプリングを形成する型は、円筒状であって、その外周面には、コイルスプリングを形成する溝が螺旋状に設けられた状態になっている。
この円筒状の型の外周面に設けられた溝の中に、溝幅に合わせて裁断されたテープ状の中間材料を巻き付ける。 従って、円筒状の型の外周面に設けられた溝の中では、テープ状の中間材料が複数層重ねられた状態で配置されることになる。
このテープ状の中間材料を巻き付けた型をホットプレスで約300〜2000℃,常圧〜500kg/cm2で加圧焼成する。 加圧焼成後、芯型および螺旋状突起部からコイル状成形品を取外し、次いで必要に応じ700〜1200℃で炭化処理、1500〜3000℃で黒鉛化処理することにより、本発明の炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングを得る。
以上説明したような方法により製造された炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングでは、短繊維炭素繊維が、コイルスプリングが形成する円筒面に沿って2次元的にランダムに配向されていると共に、短繊維炭素繊維がランダムに配向された層が、円筒面の半径方向に複数層積層された状態になっている(図2参照)。
上記製造方法により製造された炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングのせん断弾性率(実施例1〜実施例10)と、従来技術であるプリフォームドヤーンを使用した一方向強化炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングのせん断弾性率(比較例1〜比較例3)を表1に比較して示す。
表中PANとはPAN系炭素繊維を、Pitchとはピッチ系炭素繊維を表すものである。 また、b/hはコイルスプリングの素線の幅(強化方向)寸法bを素線の厚さ寸法(半径方向厚さ)hで割った値を示すものである。
表1から分かるように、本発明に係る炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングでは、PAN系炭素繊維を使用したものよりも、Pitch系炭素繊維を使用したものの方が、多少せん断弾性率が高くなる傾向があるものの、炭素繊維の配向をランダム配向としたコイルスプリングのせん断弾性率が、一方向強化したコイルスプリングのせん断弾性率よりも、飛躍的に向上していることがわかる。
また、素線断面形状b/hが大きくなるとせん断弾性率が大きくなる傾向があることがわかる。
表1に示す結果から分かるように、本発明に係る炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングでは、7GPa以上のせん断弾性率を有しており、従来技術の炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングが4.8〜5.3GPaのせん断弾性率であるのに比べ飛躍的に向上していることが分かる。
なお、本発明に係る炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングでは、実用的な素線断面形状b/hの範囲内では、7〜15GPaのせん断弾性率を有している。
なお、上記実施形態における説明では、短繊維状炭素繊維と、バインダーピッチ粉末と、コークス粉末と、粘結剤とからなるシート状の中間材料を使用して、炭素/炭素複合材料製のコイルスプリング1を製造する方法について説明したが、このような製造方法に限定されるものではない。
強化材である炭素繊維として短繊維を使用し、この短繊維炭素繊維が円筒面に沿ってランダムに配向された状態になるような製造方法であれば、上記説明とは異なった構成の中間材料を使用するようにしても良いし、あるいはレジンチャー法やCVD法によって製造するようにしても良い。
1 コイルスプリング
2 本体部分
3 一端側
4 他端側


Claims (2)

  1. 円筒面において螺旋状に複数回巻いた炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングであって、強化材である炭素繊維として短繊維のみを使用し、当該炭素繊維が円筒面に沿った面内においてランダムに配向されたことを特徴とする炭素/炭素複合材製のコイルスプリング。
  2. 請求項1に記載された炭素/炭素複合材料製のコイルスプリングであって、前記コイルスプリングに使用されている炭素/炭素複合材料のせん断弾性率が、7GPa以上であることを特徴とする炭素/炭素複合材製のコイルスプリング。
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