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JP6658670B2 - プレス成形方法 - Google Patents

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JP6658670B2 JP2017102393A JP2017102393A JP6658670B2 JP 6658670 B2 JP6658670 B2 JP 6658670B2 JP 2017102393 A JP2017102393 A JP 2017102393A JP 2017102393 A JP2017102393 A JP 2017102393A JP 6658670 B2 JP6658670 B2 JP 6658670B2
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Description

本発明は、プレス成形方法に関し、特に、金属素板を屈曲させて断面が略L字形状を有する成形部材を成形する際のスプリングバックを抑制するプレス成形方法に関する。
近年、環境問題に起因した自動車車体の軽量化のため、自動車部品に高強度鋼板が多用されつつある。自動車部品の製作には、製作コストに優れたプレス成形が用いられることが多い。しかし、高強度鋼板は低強度な鋼板と比較して成形後の弾性回復(スプリングバック)が大きく、目的の形状の自動車部品をプレス成形によって得ることを困難にしている。また、車体軽量化を目的として使用する鋼板の高強度化は薄肉化と同義であるが、板厚の薄い鋼板ほどスプリングバックが大きいことも上記の問題をより深刻にする。したがって、高強度鋼板を使用した自動車部品のスプリングバックを抑制するためのプレス成形方法の開発が強く要求されている。
プレス成形した成形部材に生じるスプリングバックの一例として、図6に示すような第1片部43と第2片部45とが屈曲部47を介して連続し断面が略L字形状の成形部材41を金型により成形すると、離型後において第1片部43と第2片部45とのなす角度θ0が増加するものがある。
このようなスプリングバックを抑制してプレス成形する技術として、例えば非特許文献1には、ハット形断面形状を有するメンバー類(自動車部品)の寸法精度を得るために、成形工程に加えてリストライク工程を取り入れ、該リストライク工程で成形する曲げ部の曲げ半径を成形工程で成形する曲げ部の曲げ半径よりも小さくすることで、成形工程で成形された曲げ部の一部をリストライク工程でウェブ、フランジに曲げ戻し、前記曲げ部を内向きに閉じる角度変化(スプリングゴー要素)を発生させることにより、前記曲げ部の角度変化の改善を図り、スプリングバックを抑制する方法が開示されている。
また、特許文献1には、コの字型断面形状またはVの字型断面形状を有するプレス成形部品について、コの字またはVの字を形成する面部と面部の間を繋ぐ繋ぎ部を、断面形状が曲線からなる2つ以上の曲線部と断面形状が直線からなる1つ以上の直線部となるように面取りすることで、プレス成形後の前記直線部に残留する応力がスプリングゴーの要因となり、繋ぎ部における角度変化量を小さくしてスプリングバックを抑制する方法が開示されている。
特許4992048号公報
薄鋼板成形技術研究会編、プレス成形難易ハンドブック(第4版)、日刊工業新聞社、2017年、p.319
非特許文献1および特許文献1に開示されているように、金属素板を屈曲させて断面が略L字形状を有する成形部材を成形する場合において、該略L字形状の片部と片部とを接続する部位のスプリングバックによる角度変化を抑制するためには、前記接続する部位にスプリングゴー成分とスプリングバック成分を混在させ、両者を打ち消して角度変化を抑える方法が有効である。
しかしながら、非特許文献1に開示されている方法は、2工程以上のプレス成形工程を必要とし、生産性の面で問題があった。また、特許文献1に開示されている方法は、最終製品形状に制約があるため、製品仕様上、設計変更が認められない場合には適用できない上、引張強度が1180MPaを越えるような高張力鋼板を用いた場合では、プレス荷重が不足し、前記繋ぎ部に付与する直線部を十分に成形できないという課題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形する場合において、スプリングバックを抑制することができるプレス成形方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、成形下死点において、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲する第2屈曲部とを成形し、第1片部と第2片部とのなす角度のスプリングバックによる変化を防止するため、成形下死点における第1屈曲部の曲率半径R1、曲げ角度α1、第2屈曲部の曲率半径R2、曲げ角度α2を決めることにより、離型後において、第1片部のなす角度θ0が目標角度θaになる手段であって、成形下死点である金型設計形状について、板厚を考慮して、上述の第1屈曲部の曲率半径R1、曲げ角度α1、第2屈曲部の曲率半径R2、曲げ角度α2とすることにより、スプリングバックを防止できるわけである。
ここで、前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とを相殺させるため、変更可能な因子として以下が挙げられる。
(a)成形下死点(金型設計形状)における第1屈曲部7の曲率半径R1
(b)成形下死点(金型設計形状)における第2屈曲部9の曲率半径R2
(c)成形下死点(金型設計形状)における第1屈曲部7の曲げ角度α1
(d)成形下死点(金型設計形状)における第2屈曲部9の曲げ角度α2
また、成形対象となる成形部材の形状には、以下が挙げられる。
(i)第1片部から順に第1屈曲部および第2屈曲部が連続し、第2屈曲部が第2片部に接続
(ii)第2片部から順に第1屈曲部および第2屈曲部が連続し、第2屈曲部が第1片部に接続
なお、第1屈曲部を目標形状あるいは製品形状とする必要がある場合は、上記(a)、(c)を求めることになるため、上記(b)、(d)について上記(i)と(ii)の場合を変更因子として扱うことになる。
本願では、上述の(a)、(b)について検討した。なお、本発明は、断面が略L字形状を有する成形部材に、スプリングバックの抑制に伴う塑性曲げが残る場合も含む。
(1)本発明に係るプレス成形方法は、金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、前記第1片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第2片部と接続する第2屈曲部とを成形し、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を以下のステップS1からステップS9の手順に従って求めて設定することを特徴とするものである。
(S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
(S3)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2を与える。
(S5)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2により、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を求める。
(S7)成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2および離型後における曲げ角度β2と、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を算出する。
(S9)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1との角度比β1/α1により、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を求める。
(2)本発明に係るプレス成形方法は、金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、前記第2片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第1片部と接続する第2屈曲部とを成形し、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を以下のステップS1からステップS9の手順に従って求めて設定することを特徴とするものである。
(S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
(S3)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2を与える。
(S5)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2により、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を求める。
(S7)成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2および離型後における曲げ角度β2と、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を算出する。
(S9)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1との角度比β1/α1により、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を求める。
(3)本発明に係るプレス成形方法は、金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、前記第1片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第2片部と接続する第2屈曲部とを成形し、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を以下のステップS1およびステップS13からステップS19の手順に従って求めて設定することを特徴とするものである。
(S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
(S13)成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2を与える。
(S15)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1により、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を求める。
(S17)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1および離型後における曲げ角度β1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を算出する。
(S19)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2と離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2との角度比β2/α2により、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を求める。
(4)本発明に係るプレス成形方法は、金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、前記第2片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第1片部と接続する第2屈曲部とを成形し、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を以下のステップS1およびステップS13からステップS19の手順に従って求めて設定することを特徴とするものである。
(S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
(S13)成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2を与える。
(S15)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1により、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を求める。
(S17)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1および離型後における曲げ角度β1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を算出する。
(S19)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2と離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2との角度比β2/α2により、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を求める。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2は、弾性変形領域内の値に設定することを特徴とするものである。
本発明においては、金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、前記第1片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第2片部と接続する第2屈曲部とを成形し、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を求めて設定することにより、離型後におけるスプリングバックを抑制して形状凍結性に優れた成形部材を1工程で能率よく成形できて、しかもプレス機の能力に依存せずに十分な成形が可能になる。
本発明の実施の形態に係るプレス成形方法により成形する断面が略L字形状を有する成形部材を説明する図である。 実施形態1において、第1屈曲部の曲げ角度と、第2屈曲部の曲率半径および曲げ角度とを与えて、第1屈曲部の曲率半径を求める手順を示すフロー図である。 実施形態1および実施形態2において、金属素板を屈曲させた屈曲部の成形下死点における曲率半径と、成形下死点における曲げ角度および離型後における曲げ角度を説明する図である。 実施形態1および実施形態2において、金属素板を屈曲させた屈曲部の曲率半径と曲げ角度の角度比の関係を示すグラフである。 実施形態2において、第1屈曲部の曲率半径および曲げ角度と、第2屈曲部の曲げ角度とを与えて、第2屈曲部の曲率半径を求める手順を示すフロー図である。 従来のプレス成形方法により成形する断面が略L字形状を有する成形部材に生じるスプリングバックを説明する図である。
本発明の実施の形態に係るプレス成形方法は、金型により金属素板を屈曲させて、図1(a−1)および(b−1)に示すような第1片部3と第2片部5とで断面が略L字形状を有する成形部材1を成形するに際し、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0を目標角度に成形するものであって、成形下死点において、第1片部3から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部7と、第1屈曲部7から連続し、第1屈曲部7と反対方向に屈曲して第2片部5と接続する第2屈曲部9とを成形するものである。
ここで、前記略L字形状の屈曲の曲げ角度や、第1屈曲部7および第2屈曲部9それぞれの曲げ角度とは、それぞれの屈曲した部位の円弧の中心角に相当するものである。
そして、離型後において、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1から離型後における曲げ角度β1への弾性回復による角度変化(α1−β1)と、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2から離型後における曲げ角度β2への弾性回復による角度変化(α2−β2)とが相殺されることで、第1片部3と第2片部5のなす角度θ0の角度変化が防止されて目標角度θaとなるように、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2および曲げ角度α2から、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1を求める。または、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1および曲げ角度α1と、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2から、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2を求める。
なお、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2と成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1とが同じであると、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2と成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1とが同じとなって、第1片部3と第2片部5は平行となり、本願の意図する屈曲形状とはならないため、曲率半径R1と曲率半径R2は異なる値となるようにする。
このような第1屈曲部7と第2屈曲部9を成形することで、以下に述べる作用効果を奏する。
まず、第1屈曲部7と第2屈曲部9は、互いに屈曲の向きが反転しているため、第1屈曲部7と第2屈曲部9は、離型後において互いに反する向きに弾性回復による角度変化を生じる。
すなわち、第1屈曲部7は目標角度と同じ方向に屈曲しているため、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1から離型後における曲げ角度β1への変化は第1片部3と第2片部5のなす角度θ0を増加させるスプリングバック成分である。これに対し、第2屈曲部9は第1屈曲部7と反対方向に屈曲しているため、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2から離型後における曲げ角度β2への変化は第1片部3と第2片部5のなす角度θ0を減少させるスプリングゴー成分となる。これにより、離型後において、第1屈曲部7のスプリングバック成分と第2屈曲部9のスプリングゴー成分を相殺することができれば、すなわち、第1屈曲部7の角度変化(α1−β1)と第2屈曲部9の角度変化(α2−β2)とを等しくすれば、第1片部3と第2片部5のなす角度θ0の角度変化が防止されて、目標角度θaとなり、スプリングバックが防止できる。
なお、図1(a−2)および(b−2)に示すような第1片部13と第2片部15とで断面が略L字形状を有する成形部材11を成形するに際し、成形下死点において、第2片部15から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部17と、第1屈曲部17から連続し、第1屈曲部17と反対方向に屈曲して第2片部15と接続する第2屈曲部19とを成形するものであっても、上記と同様に、第1屈曲部17の曲率半径R1および曲げ角度α1と、第2屈曲部19の曲率半径R2および曲げ角度α2を求めて設定することで、離型後において第1片部13と第2片部15のなす角度θ0の角度変化が防止されて、目標角度θaとなり、スプリングバックが防止できる。
以下、成形部材1を成形するに際して成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1を求める場合を実施形態1に、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2を求める場合を実施形態2に説明する。
[実施形態1]
成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1は、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2と曲げ角度α2を与えることによって、図2に示すステップS1からステップS9の手順に従って求めることができる。なお、第2屈曲部9が第2片部5に接続する場合(図1(a−1)、(b−1))と、第2屈曲部19が第1片部13に接続する場合(図1(a−2)、(b−2))ともに手順は同様である。
以下、金属素板として鋼板強度980MPa級の鋼板を用いて図1に示す成形部材1を成形するに際し、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0を目標角度θa=120°に成形する場合を例として、ステップS1からステップS9の各ステップを説明する。
<ステップS1>
ステップS1においては、金属素板の板厚および応力ひずみ関係を用いて、図3に示すように、ダイ23とパンチ25を備えた金型21により金属素板31を屈曲させて成形し、成形下死点における屈曲部33の曲率半径Rと、成形下死点における屈曲部33の曲げ角度αと離型後における曲げ角度βの角度比β/αとの関係を取得する。
図4に、金属素板31として引張強度980MPa級、板厚1.4mmの鋼板を屈曲させた屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αの関係を示す。
図4は、公知の参考文献(塑性加工学会編:「曲げ加工」、コロナ社(1995年)、p.23)に基づいて理論計算により取得した例であり、当該理論計算において、屈曲部33の角度比β/αは、参考文献中の式(1.46)を変形した以下の式(1)により算出される。
Figure 0006658670
ここで、nは加工硬化係数であり、λeは以下の式(2)(上記参考文献中の式(1.17))で与えられる。
Figure 0006658670
ここで、rは板厚中央面の曲率半径(=屈曲部33の曲率半径R)、t0は板厚、σは降伏応力、Eはヤング率であり、図4に示す曲率半径Rと角度比β/αの関係は、板厚t0=1.4mm、降伏応力σ=850MPa、ヤング率E=210GPa、加工硬化係数n=0.12を式(1)および式(2)に代入して求めたものである。
なお、屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αは、上記の理論計算により取得するものに限らず、例えば、屈曲部33を成形下死点まで成形する成形解析(図3(a)から(b)の工程)と、該成形した屈曲部33を金型21から離型した後のスプリングバック解析(図3(b)から(c)の工程)を有限要素解析により実施するものであってもよい。
有限要素解析により屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αの関係を取得する場合、金属素板31の種類(鋼板を用いる場合においては鋼種)と板厚t0を一定とし、成形下死点における屈曲部33の曲率半径Rと成形下死点(金型形状)の曲げ角度αを様々に変化させて成形解析およびスプリングバック解析を行えばよい。なお、有限要素解析においては、金属素板31の幅(紙面に対して奥行方向の長さ)は問題とならず、任意の値を適宜設定することができる。
さらに、上述の有限要素解析によらず、実際の実験において、屈曲部33の曲率半径Rと成形下死点(金型形状)の曲げ角度αを変更し、離型後の曲げ角度βを求めて、屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を取得してもよい。
<ステップS3>
ステップS3においては、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2および曲げ角度α2を与える。
なお、成形下死点における第1片部3と第2片部5のなす角度θ0は、第1屈曲部7の曲げ角度α1を保持したまま第1片部3を曲げ角度α2により回転させる幾何学的関係から、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2とは、θ0=π−α1+α2の関係になる。
本実施形態1では、上記の関係から、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1=100°を与えると、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2=40°となる。さらに、第2屈曲部9の曲率半径R2=60mmを与えた。
<ステップS5>
ステップS5においては、前記(S1)で取得した屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2および曲げ角度α2により、離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β2を求める。
本実施形態1では、離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β2は、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2=60mm、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2=40°であるので、図4に示す曲率半径Rと角度比β/αとの関係から、離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β2=α2×0.45=18°となる。
<ステップS7>
スプリングバックによる角度の変化を防止するには、第1屈曲部7の曲げ角度の変化Δγ1(=α1―β1)と第2屈曲部9の曲げ角度の変化Δγ2(=α2―β2)とが相殺すればよく、すなわち等しくなればよい。そこで、ステップS7においては、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2および離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β2と、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1とを用いて、第1屈曲部7の曲げ角度の変化Δγ1(=α1―β1)と第2屈曲部9の曲げ角度の変化Δγ2(=α2―β2)とが等しくなるように、第1屈曲部7の離型後における曲げ角度β1を算出する。
本実施形態1では、第2屈曲部9の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)は、Δγ2=40−18=22°であり、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1は100°であるので、Δγ2=22°=Δγ1=α1―β1=100−β1の関係から、離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β1は、78°となる。
<ステップS9>
ステップS9においては、前記(S1)で取得した屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と離型後における第1屈曲部7の曲げ角度β1との角度比β1/α1により、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1を求める。
本実施形態1では、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1は100°であり離型後における曲げ角度β1は78°であるので、角度比β1/α1は、78/100=0.78であり、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1は、図4の関係からR1=20mmと求まる。
以上、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2および曲げ角度α2を与えて、ステップS1からステップS9の手順に従って求めた曲率半径R1を設定した金型を製作し、当該金型により成形部材1を成形することで、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0の金型離型後における角度変化を抑制して目標角度θaに1工程で成形することができる。
[実施形態2]
成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2は、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と曲率半径R1、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2を与えることによって、図5に示すように、ステップS1およびステップS13からステップS19の手順に従って求めることができる。なお、第2屈曲部9が第2片部5に接続する場合(図1(a−1)、(b−1))、第2屈曲部19が第1片部13に接続する場合(図1(a−2)、(b−2))ともに手順は同様である。以下、金属素板として鋼板強度980MPa級の鋼板を用いて図1に示す成形部材1を成形するに際し、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0を目標角度θa=105°に成形する場合を例として、ステップS1およびステップS13からステップS19の各ステップを説明する。
<ステップS1>
上述の実施形態1と同様に、ステップS1においては、金属素板の板厚および応力ひずみ関係を用いて、図3に示すように、ダイ23とパンチ25を備えた金属素板31を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部33の曲率半径Rと、成形下死点における屈曲部33の曲げ角度αと離型後における曲げ角度βの角度比β/αとの関係を取得する。
図4に、金属素板31として引張強度980MPa級、板厚1.4mm、降伏応力σ=850MPa、ヤング率E=210GPa、加工硬化係数n=0.12の鋼板を屈曲させた屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αの関係を示す。
<ステップS13>
ステップS13においては、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1および曲げ角度α2と、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2を与える。
なお、成形下死点における第1片部3と第2片部5のなす角度θ0は、第1屈曲部7の曲げ角度α1を保持したまま第1片部3を曲げ角度α2により回転させる幾何学的関係から、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2とは、θ0=π−α1+α2の関係になる。
本実施形態2では、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1=90°を与えると、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2=15°となる。また、第1屈曲部7の曲率半径R1=15mmを与えた。
<ステップS15>
ステップS15においては、前記(S1)で取得した屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αとの関係とを用いて、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1および曲げ角度α1により、離型後における第1屈曲部7の曲げ角度β1を求める。
本実施形態2では、離型後における第1屈曲部7の曲げ角度β1は、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1=15mm、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1=90°であるので、図4に示す曲率半径Rと角度比β/αとの関係から、離型後における第1屈曲部7の曲げ角度β1=α1×0.84=75.6°となる。
<ステップS17>
スプリングバックによる角度の変化を防止するには、第1屈曲部7の曲げ角度の変化Δγ1(=α1―β1)と第2屈曲部9の曲げ角度の変化Δγ2(=α2―β2)とが相殺すればよく、すなわち等しくなればよい。そこで、ステップS17においては、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1および離型後における第1屈曲部7の曲げ角度β1と、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2とを用いて、第1屈曲部7の曲げ角度の変化Δγ1(=α1―β1)と第2屈曲部9の曲げ角度の変化Δγ2(=α2―β2)とが等しくなるように、第2屈曲部9の離型後における曲げ角度β2を算出する。
本実施形態2では、第1屈曲部7の曲げ角度の変化Δγ1(=α1―β1)は、Δγ1=90−75.6=14.4°であり、第2屈曲部9の曲げ角度α2は15°であるので、Δγ1=Δγ2=14.4°=α2―β2=15−β2から、第2屈曲部の離型後における曲げ角度β2は、0.6°となる。
<ステップS19>
ステップS19においては、前記(S1)で取得した屈曲部33の曲率半径Rと角度比β/αの関係とを用いて、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2と離型後における第2屈曲部9の曲げ角度β2との角度比β2/α2により、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2を求める。
本実施形態2では、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2は15°であり離型後における曲げ角度β2は0.6°であるので、角度比β2/α2は、0.6/15=0.04であり、成形下死点における第2屈曲部9の曲率半径R2は、図4よりR2=113mmと求まる。
以上、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1および曲げ角度α1、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2を与えて、ステップS1、ステップS13からステップS19の手順に従って求めた曲率半径R2を設定した金型を製作し、当該金型により成形部材1を成形することで、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0の金型離型後における角度変化を抑制して目標角度θaに1工程で成形することができる。
なお、上記の実施形態1および実施形態2において、第2屈曲部9を塑性変形領域で屈曲させて成形すると、離型後においてその形状が残る。
そこで、成形下死点において第2屈曲部9を弾性変形領域で屈曲させた形状とすることで、離型後に弾性回復させて第2屈曲部9の形状が残らないようにするのが好ましい。
第2屈曲部9を弾性変形領域で屈曲させた形状とするためには、例えば図4に示すように、第2屈曲部9の成形下死点における曲率半径R2を弾性変形域以上の値(図4における117mm以上)とし、かつ、目標角度θaと成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2との関係がθa=α1+α2とすることで、離型後の第2屈曲部9を平面状に弾性回復させることができる。なお、弾性変形領域は金属素板の種類によって異なるため、第2屈曲部9の成形下死点における曲率半径R2には、各金属素板において取得した曲率半径Rと角度比β/αの関係において弾性変形領域の値を設定すればよい。
また、θa=α1+α2とする理由は、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2がスプリングバックにより角度差Δα2だけ弾性変形で戻ると離型後の第2屈曲部9の曲げ角度β2は0°となるため、β2=α2−Δα2=0からα2=Δα2となる。他方、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1は角度差Δα1だけ弾性変形で増加して離型後の第1屈曲部7の曲げ角度β1となりβ1=α1+Δα1となる。そして、離型後に目標角度θaとなるには、スプリングバック(弾性変形)による戻り角度差Δα1とスプリングバック(弾性変形)により増加する角度差Δα2が等しくする必要がある。
その結果、β1=α1+Δα1=α1+Δα2=α1+α2が成り立ち、しかも、離型後の第1屈曲部7の曲げ角度β1は、スプリングバックがない状態、すなわち目標角度θaにする必要があることから、β1=θa=α1+α2となる。
以上から、この条件『θa=α1+α2』と、β2/α2が弾性域となるR2が成り立てば、弾性変形を加えることでスプリングバックを防止できることになる。
また、上記の実施形態1のステップS3、または、上記の実施形態2のステップS13において、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1の代わりに、成形下死点における第1片部3と第2片部5のなす角度θ0が与えられた場合は、第1屈曲部7の曲げ角度α1を保持したまま第1片部3を曲げ角度α2により回転させる幾何学的関係から、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2を用いて、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1を求めてもよい(θ0=π−α1+α2)。
さらに、上記の実施形態1のステップS3、または上記の実施形態2のステップS13において、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2の代わりに、成形下死点における第1片部3と第2片部5のなす角度θ0が与えられた場合、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1を用いて、第1屈曲部7の曲げ角度α1を保持したまま第1片部3を曲げ角度α2により回転させる幾何学的関係から、成形下死点における第2屈曲部9の曲げ角度α2を求めてもよい(θ0=π−α1+α2)。
なお、上記の実施形態1および実施形態2では、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0を目標角度θa=120°または105°に成形するものを例示したが、本発明に係るプレス成形方法は、成形部材1の目標角度をこの値に限るものではなく、成形対象とする成形部材の形状に併せて適宜設定すればよい。
さらに、本発明によれば、従来のプレス成形方法では、スプリングバックを抑制して成形することが困難であった目標角度90°で成形することができる。
すなわち、従来のプレス成形方法により図6に示すような屈曲部47を介して第1片部43と第2片部45とで断面が略L字形状を有する成形部材41を成形するに際し、第1片部43と第2片部45とのなす角度θ0を目標角度90°で成形しようとする場合、スプリングバックを見込んで第1片部43と第2片部45とのなす角度θ0を設定すると成形下死点における角度θ0は90°未満の負角となり、成形後に成形部材を金型(パンチ)から抜き取ることが困難となった。
これに対し、本発明に係るプレス成形方法によれば、第1片部3と第2片部5とのなす角度θ0が目標角度(=90°)を維持するように、成形下死点における第1屈曲部7の曲率半径R1および曲げ角度α1と第2屈曲部9の曲げ角度α2から第2屈曲部9の曲率半径R2を求めるため、あるいは、成形下死点における第1屈曲部7の曲げ角度α1と第2屈曲部9の曲率半径R2および曲げ角度α2から第1屈曲部7の曲率半径R1を求めるため、成形下死点においても第1片部3と第2片部5のなす角度θ0が90°未満の負角とならずに成形部材1のスプリングバックを抑制して成形することができる。
なお、上記の説明では、図1(a−1)、(b−1)に示すように、第1片部3と第2片部5とからなる断面が略L字形状の成形部材1を例として挙げていたが、本発明で成形対象とする成形部材はこれに限るものではなく、例えばハット断面形状やコ字断面形状の成形部材のように、断面が略L字形状を含むものであればよい。
さらに、長手方向において局所的に断面が略L字形状を有する成形部材についても、当該断面が略L字形状を有する部位について、前記屈曲と同一方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部と反対方向に屈曲する第2屈曲部をそれぞれ局所的に形成することで、局所的なスプリングバックについても適切に抑制することができる。
また、本発明に係るプレス成形方法は、図1に示すような成形部材1を成形するに際して、フォーム成形又はドロー成形のいずれであっても、成形下死点における第1屈曲部7と第2屈曲部9の曲率半径と曲げ角度を上記ステップS1からステップS9、または、ステップS1およびステップS13からステップS19により求めることで、成形部材1の離型後におけるスプリングバックを適切に抑制することができる。
1 成形部材
3 第1片部
5 第2片部
7 第1屈曲部
9 第2屈曲部
11 成形部材
13 第1片部
15 第2片部
17 第1屈曲部
19 第2屈曲部
21 金型
23 ダイ
25 パンチ
31 金属素板
33 屈曲部
41 成形部材
43 第1片部
45 第2片部
47 屈曲部

Claims (5)

  1. 金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するプレス成形方法であって、
    成形下死点において、前記第1片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第2片部と接続する第2屈曲部とを成形し、
    離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を以下のステップS1からステップS9の手順に従って求めて設定することを特徴とするプレス成形方法。
    (S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
    (S3)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2を与える。
    (S5)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2により、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を求める。
    (S7)成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2および離型後における曲げ角度β2と、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を算出する。
    (S9)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1との角度比β1/α1により、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を求める。
  2. 金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するプレス成形方法であって、
    成形下死点において、前記第2片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第1片部と接続する第2屈曲部とを成形し、
    離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を以下のステップS1からステップS9の手順に従って求めて設定することを特徴とするプレス成形方法。
    (S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
    (S3)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2を与える。
    (S5)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2により、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を求める。
    (S7)成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2および離型後における曲げ角度β2と、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を算出する。
    (S9)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1と離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1との角度比β1/α1により、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1を求める。
  3. 金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するプレス成形方法であって、
    成形下死点において、前記第1片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第2片部と接続する第2屈曲部とを成形し、
    離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を以下のステップS1およびステップS13からステップS19の手順に従って求めて設定することを特徴とするプレス成形方法。
    (S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
    (S13)成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2を与える。
    (S15)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1により、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を求める。
    (S17)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1および離型後における曲げ角度β1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を算出する。
    (S19)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2と離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2との角度比β2/α2により、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を求める。
  4. 金型により金属素板を第1片部と第2片部に屈曲させて、断面が略L字形状を有する成形部材を成形するに際し、前記第1片部と第2片部のなす角度を目標角度に成形するプレス成形方法であって、
    成形下死点において、前記第2片部から連続し、前記略L字形状の屈曲よりも曲げ角度が大きく該屈曲と同じ方向に屈曲する第1屈曲部と、該第1屈曲部から連続し、該第1屈曲部と反対方向に屈曲して前記第1片部と接続する第2屈曲部とを成形し、
    離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2とが相殺されるように、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を以下のステップS1およびステップS13からステップS19の手順に従って求めて設定することを特徴とするプレス成形方法。
    (S1)前記金属素板の板厚および応力ひずみ関係から、該金属素板を屈曲させて成形した成形下死点における屈曲部の曲率半径Rと、成形下死点における前記屈曲部の曲げ角度αと離型後における前記屈曲部の曲げ角度βとの角度比β/αと、の関係を取得する。
    (S13)成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2を与える。
    (S15)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第1屈曲部の曲率半径R1および曲げ角度α1により、離型後における前記第1屈曲部の曲げ角度β1を求める。
    (S17)成形下死点における前記第1屈曲部の曲げ角度α1および離型後における曲げ角度β1と、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2とを用いて、離型後のスプリングバックによる前記第1屈曲部の曲げ角度の変化Δγ1(=α1−β1)と前記第2屈曲部の曲げ角度の変化Δγ2(=α2−β2)とが等しくなって相殺されるように、離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2を算出する。
    (S19)前記(S1)で取得した屈曲部の曲率半径Rと角度比β/αとの関係を用いて、成形下死点における前記第2屈曲部の曲げ角度α2と離型後における前記第2屈曲部の曲げ角度β2との角度比β2/α2により、成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2を求める。
  5. 成形下死点における前記第2屈曲部の曲率半径R2および曲げ角度α2は、弾性変形領域内の値に設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプレス成形方法。
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