JP6330766B2 - プレス成形方法 - Google Patents
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Description
ここで、ハット型の部品の断面形状の崩れは、主として、天板部と縦壁部との境界部である曲げ部における角度変化と、縦壁部の反りとによって、プレスした部品の断面が開く方向に弾性回復する現象で発生する。
従来、この断面形状の崩れへの対策として、例えば特許文献1では、ブランクを断面コ字形状の部品にプレス成形する際に、天板部と縦壁部との折曲部(曲げ部)の材料を天板部側に向かって流動させることで、折曲部の角度の開きを低減する技術を提案している。
特許文献3では、曲げ部の角度変化および縦壁部の反りに対して、1回目の下死点成形で製品形状よりも成形高さを高くし、2回目の下死点成形ではストローク量が制限されるように金型形状を変化させて製品形状に成形することで、ハット型部品に面内圧縮力を与え、これによって曲げモーメントを低下させる対策技術を提案している。
また特許文献2では、少なくとも2台以上の金型を必要とするため、生産コストの上昇が懸念される。
特許文献3では、2回目の下死点成形時にストローク量を制限するための特別な金型構造が必要となる。さらに、成形高さを変化させるときに、特許文献3のように縦壁部のパンチ底(パンチ面)に対する角度が直角の場合では問題とならないが、角度が90度より大きな角度となった場合、金型の面が製品形状とは異なる可能性がある。ここで、天板部と縦壁部との曲げ部の角度は90度より大きく設計する場合もある。
上記天板部を挟み込むパンチのパンチ面及びパッドのパッド面と、上記パンチに沿って相対移動して上記縦壁部を形成するダイと、そのダイのダイフェース面に対向配置されたブランクホルダのホルダ押え面とを有し、且つ、上記パンチ面の外縁部に対向するパッド面の外縁部、上記ダイの肩部側のダイフェース面の外縁部、及び上記ダイフェース面の外縁部に対向する上記ホルダ押え面の外縁部の少なくとも1つの面の外縁部に対し、対向する面を当接させた際に、当接した面間に隙間を形成する面削ぎ部が形成された金型を使用して、
上記天板部をパンチとパッドで挟持すると共に上記ダイを上記ブランクホルダに向けて相対移動させて、上記縦壁部を形成すると共に上記天板部と上記縦壁部との境界部を上記パンチの肩部に沿った形状に曲げる第1工程と、
第1工程後に、上記パッドと上記パンチでの上記天板部の挟持を保持した状態で、上記ダイと上記ブランクホルダを、上記第1工程でのダイの移動方向とは反対方向である戻し方向に予め設定した曲げ戻し量だけ移動させた後に離型する第2工程と、
を有することを特徴とする。
そして、そのような金型を使用して、成形中の応力を任意にコントロールすることで、ハット型部品のパンチ底およびフランジ部に曲げ変形を発生させて曲げ部の角度変化を相殺することで、角度の開きが低減可能であるという知見を得た。また、パンチ底およびフランジ部に曲げ変形を発生させると同時に縦壁部に面内圧縮力が作用することで、板厚方向の応力分布差が低下し、壁反りを低減可能であるという知見も得た。尚、縦壁部とフランジ部との間の曲げ部についても同様である。
本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
ここで、以下の説明では、少なくとも天板部2と天板部2に連続した縦壁部3とを有する成形品形状として、図1に示すような、断面ハット型の成形品1をプレス成形する場合を例に挙げて説明する。即ち、本実施形態のプレス成形品1は、図1に示すように、天板部2、天板部2に曲げ部5を介して連続する縦壁部3、縦壁部3に第2曲げ部6を介して連続するフランジ部4を有する。但し、本発明の対象とするプレス成形品1の形状は、断面ハット型形状に限定されない。
本実施形態のプレス成形用金型は、図2に示すように、上型と下型とを備える。
上型は、ダイ10とパッド11から構成されている。下型は、パンチ12とブランクホルダ13とから構成されている。ブランクホルダ13には、ダイクッション14が設けられている。
そして、パンチ12のパンチ面12aとパッド11のパッド面11aが、ブランク7における天板部2となる位置を挟んで対向するように配置されている。また、パンチ12の両側にブランクホルダ13が配置されていると共に、パッド11の両側にダイ10が配置されている。
図2中、符号10c及び13bは、フランジ部4にビード形成のために、ダイ10のダイフェース面10aとブランクホルダ13のホルダ押え面13aとに対をなして形成された凹凸部である。この凹凸部を形成することで、より確実にフランジ部4をダイ10とブランクホルダ13で挟持可能となる。ダイ10とブランクホルダ13との間の押圧力によっては、ビードは無くても良い。
パッド側面削ぎ部20による上記隙間は、図3に示すように、最大の高さhpが2mm以上4mm以下の範囲であり、且つダイ10からの最大の距離wpが10mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。
ホルダ側面削ぎ部21による、上記隙間は、図4に示すように、最大の高さhcが0mmより大きく且つ4mm以下の範囲であり、且つパンチ12からの最大の距離wcが、10mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。また最大の高さhcは、最大の高さhp以下であることが好ましい。
次に、上記のプレス成形用金型を使用したプレス成形方法について説明する。
本実施形態のプレス形成方法は、少なくとも第1工程と第2工程とを備える。
第1工程は、天板部2をパンチ12とパッド11で挟持すると共にダイ10をブランクホルダ13に向けて相対移動させて、縦壁部3を形成すると共に天板部2と縦壁部3との境界部をパンチ12の肩部12bに沿った形状に成形する工程である。
第2工程は、第1工程後に、天板部2をパッド11とパンチ12で挟持した状態で、ダイ10とブランクホルダ13を、第1工程でのダイ10の移動方向とは反対方向である戻し方向に予め設定した曲げ戻し量ΔH1だけ移動させた後に、離型する工程である。
曲げ戻し量ΔH1は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。
ここで、本実施形態では、第1工程でのダイ10の移動方向を下方、戻し方向(曲げ戻し方向)を上方として説明する。
まず、ブランク7を、図5(a)に示すように、上型と下型との間に、パンチ12のパンチ面12aが天板部2位置と対向するように設定する。このとき、ブランクホルダ13は成形下死点位置から2〜10mm上昇させた位置に待機させておく。
次に、図5(b)に示すように、パッド11により天板部2を押圧しながら上型のダイ10を成形下死点位置まで下降させる。
これによって、天板部2は、パンチ面12aに沿った形状に加工されると共に、天板部2と縦壁部3の境界部に、パンチ12の肩部12bに応じた曲率で折れ曲がった曲げ部5が形成される。また、縦壁部3とフランジ部4との境界部に対しダイ10の肩部10bに沿った第2曲げ部6が形成される。また、フランジ部4がダイフェース面10aとホルダ押え面13aとで挟持された状態になっている。
ここまでが第1工程に対応する。
さらに、縦壁部3では、一度曲げられた部分が、成形下死点で逆方向に再度曲げられる曲げ・曲げ戻し変形を受けるため、図8に示すように、部品表面に引張応力、部品裏面に圧縮応力が作用することで、板厚方向に応力分布が発生し、この応力差を緩和するために残留曲げモーメントが生じ、これにより図9に示すような外側への壁反りを引き起こす。このような、曲げ部5の角度変化および縦壁部3の反りは、材料強度が高い鋼板ほど大きくなる。
このとき、パッド11によるパンチ12への押圧力は、例えば部品長手方向の単位長さあたり30kgf/mm以上に設定する。すなわち天板部2がパンチ12とパッド11の挟圧位置からずれないだけの押圧力に設定しておく。
これによって、天板部2が上型に取り付けられたパッド11によって押圧された状態のまま、この金型の動きにより、天板部2およびフランジ部4の材料は、それぞれパッド11およびブランクホルダ13に設けた各面削ぎ部20,21に沿うように曲げられる。
このときの曲げ部5付近は、図10に示すような板厚方向の応力分布をとる。第2曲げ部6でも同様である。
これによって、パンチ12の肩部12bおよびダイ10の肩部10bに発生する残留曲げモーメントとは反対方向に作用する残留曲げモーメントがパンチ12の肩部12bおよびダイ10の肩部10bに発生することで、スプリングバックが互いに相殺され、曲げ部5及び第2曲げ部6における各角度変化を低減させることができる。
その後、図5(d)に示すように、上型を上昇して離型する。
このように、本実施形態では、金型の動きを成形中に変化させることで、曲げ部5における残留曲げモーメントとは反対方向の残留曲げモーメントを発生させる。この結果、角度変化を低減し、かつ、縦壁部3に圧縮応力を付与することで、縦壁部3の壁反りを低減させることが出来る。
ここで、本実施形態では、パンチ12の肩部12b側のパンチ面12aの外縁部、パンチ面12a外縁部に対向するパッド面11aの外縁部、ダイ10の肩部10b側のダイフェース面10aの外縁部、及びダイフェース面10aの外縁部に対向するホルダ押え面13aの外縁部のうち、パッド面11aの外縁部及びホルダ押え面13aの外縁部に対し面削ぎ部20,21を形成する場合を例示したがこれに限定されない。
また、上記の実施形態では、パッド面11aの外縁部及びホルダ押え面13aの外縁部の両方に面削ぎ部20,21を形成する場合で説明したが、パッド面11aの外縁部及びホルダ押え面13aの外縁部の一方だけに面削ぎ部を形成しても良い。この場合でも、少なくとも面削ぎ部を形成した側の曲げ部でのスプリングバックを抑制すると共に、縦壁部3のスプリングバックを抑制することが出来る。
また本発明のプレス成形の対象とする成形品1は、ハット形状に限定されず、断面コ字状の成形品1でも良い。少なくとも天板部2とそれに続く縦壁部3を有する形状であれば対象となる。
1180MPa級冷延鋼板(板厚1.2mm)を想定して、天板部2、縦壁部3、フランジ部4からなるハット断面部品のプレス成形解析を行った。使用したソルバーはLS−DYNA ver971である。
また、縦壁部3の角度は天板面に対して95°とした。断面形状は長手方向に真っ直ぐなため、長さ100mmの鋼板を供試材として用いた。
そして、実施形態で説明した金型を使用し、実施形態で説明した本発明に基づくプレス成形方法で断面ハット型形状にプレス成形した。
表1中、REV量は曲げ戻し量ΔH1である。
プレス成形後のスプリングバック量の評価では、図12に示すように、パンチ12およびダイ10の肩部10bの角度θ1,θ2が95°±10°かつ縦壁部3の曲率ρが0.03mm−1以下の最終形状の場合を形状凍結性が良好(OK)と評価した。
すなわち、パッド11の面削ぎ部の高さhpによる効果を確認するために、上記のハット部品を対象に、パッド11の面削ぎ部の高さhpの影響を検証した。
パッド11の面削ぎ部の高さは1mm、3mm、5mmの3水準とし、その他の形状はhw=50mm、hc=1mm、hw=50mm、パッド圧6ton、逆曲げ量(曲げ戻し量ΔH1を指す。以下同様)5mmで統一した。
すなわち、パッド11の面削ぎ部の高さが2mmを下回ると、図5(c)の工程でパンチ12の肩部12bに十分な逆曲げ成形が生じず、スプリングバックとスプリングゴーの相殺効果が発現しない。また4mmを上回ると、過剰に逆曲げ成形されてしまうため、スプリングゴーし過ぎてしまい、形状凍結性を確保できなかった。
また、パッド11の面削ぎ部の幅wpによる効果について確認するために、上記のハット部品を対象に、パッド11の面削ぎ部の高さwpの影響を検証した。パッド11の面削ぎ部の面幅は9mm、11mm、49mm、51mmの4水準とし、その他の形状はhp=3mm、hc=1mm、wc=50mm、パッド圧6ton、逆曲げ量5mmで統一した。
またブランクホルダ13の面削ぎ部の高さhcによる効果について確認するために、上記のハット部品を対象に、ブランクホルダ13の面削ぎ部の高さhcの影響を検証した。ブランクホルダ13の面削ぎ部の高さは2mm、4mmの2水準とし、その他の形状はhp=3mm、wp=50mm、hw=50mm、パッド圧6ton、逆曲げ量5mmで統一した。
また、ブランクホルダ13の面削ぎ部の幅wcによる効果について確認するために、上記のハット部品を対象に、パッド11の面削ぎ部の高さwcの影響を検証した。パッド11面削ぎ部の幅は9mm、11mm、49mm、51mmの4水準とし、その他の形状はhp=3mm、hc=1mm、wp=50mm、パッド圧6ton、逆曲げ量5mmで統一した。
また、パッド圧について確認するために、上記のハット部品を対象に、パッド圧の影響を検証した。パッド圧は2ton、6tonの2水準とし、その他の形状はhp=3mm、hc=1mm、wp=50mm、wc=50mm、逆曲げ量5mmで統一した。
また、逆曲げ量による効果について確認するために、上記のハット部品を対象に、逆曲げ量の影響を検証した。逆曲げ量は1mm、3mm、9mm、10mmの4水準とし、その他の条件はhp=3mm、hc=1mm、wp=50mm、wc=50mm、パッド圧6tonで統一した。
2 天板部
3 縦壁部
4 フランジ部
5 曲げ部
6 第2曲げ部
7 ブランク
10 ダイ
10a ダイフェース面
10b 肩部
10c 凹部
11 パッド
11a パッド面
12 パンチ
12a パンチ面
12b 肩部
13 ブランクホルダ
13a 押え面
14 ダイクッション
20,21 面削ぎ部
Claims (5)
- ブランクを、少なくとも天板部と上記天板部に連続した縦壁部とを有する成形品形状にプレス成形するプレス成形方法であって、
上記天板部を挟み込むパンチのパンチ面及びパッドのパッド面と、上記パンチに沿って相対移動して上記縦壁部を形成するダイと、そのダイのダイフェース面に対向配置されたブランクホルダのホルダ押え面とを有し、且つ、上記パンチ面の外縁部に対向するパッド面の外縁部、上記ダイの肩部側のダイフェース面の外縁部、及び上記ダイフェース面の外縁部に対向する上記ホルダ押え面の外縁部の少なくとも1つの面の外縁部に対し、対向する面を当接させた際に、当接した面間に隙間を形成する面削ぎ部が形成された金型を使用して、
上記天板部をパンチとパッドで挟持すると共に上記ダイを上記ブランクホルダに向けて相対移動させて、上記縦壁部を形成すると共に上記天板部と上記縦壁部との境界部を上記パンチの肩部に沿った形状に曲げる第1工程と、
第1工程後に、上記パッドと上記パンチでの上記天板部の挟持を保持した状態で、上記ダイと上記ブランクホルダを、上記第1工程でのダイの移動方向とは反対方向である戻し方向に予め設定した曲げ戻し量だけ移動させた後に離型する第2工程と、
を有することを特徴とするプレス成形方法。 - 上記面削ぎ部は、上記パンチ面の外縁部、及び上記パッド面の外縁部の少なくとも一方の外縁部に形成され、
対向する面である上記パンチ面と上記パッド面とを当接させた状態で、上記面削ぎ部による上記隙間は、最大の高さhpが2mm以上4mm以下の範囲であり、且つ上記ダイからの最大の距離wpが10mm以上50mm以下の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載したプレス成形方法。 - 上記面削ぎ部は、上記ダイフェース面の外縁部、及び上記ホルダ押え面の外縁部の少なくとも一方の外縁部に形成され、
上記対向する面である上記ダイフェース面と上記ホルダ押え面とを当接させた状態で、上記面削ぎ部による上記隙間は、最大の高さhcが0mmより大きく且つ上記最大の高さhp以下の範囲であり、且つ上記パンチからの最大の距離wcが、10mm以上50mm以下の範囲に形成されていることを特徴とする請求項2に記載したプレス成形方法。 - 上記ブランクホルダは、ダイクッションを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したプレス成形方法。
- 上記曲げ戻し量は、2mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載したプレス成形方法。
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