JP6493331B2 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents
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車体構造部品に用いられるプレス成形品の一つとして、例えばBピラーアウターのような長手方向に所定の曲率半径で湾曲した天板部およびフランジ部と、天板部とフランジ部をつなぐ縦壁面とを有するハット形断面部品が挙げられる。このような部品をプレス成形した場合、成形下死点の天板部に引張応力、フランジ部に圧縮応力が発生し、これらの応力差により部品長手方向でのスプリングバック(キャンバーバック)が発生する。このような部品に対して、ハイテン材を適用した場合、前述の下死点での応力差が大きくなり、スプリングバックが増加するといった課題が発生する。さらに、ハイテン材では材料強度のバラツキが大きくなるため、寸法精度のバラツキも大きくなる。つまり材料強度感受性が増加する。
特許文献1に記載のプレス成形品の製造方法では、長手方向に湾曲した天板部と、天板部の長手方向に沿った両端から湾曲内側に向かって延在する二つの側壁面とを有する成形品に対して、前工程の天板部の曲率と、天板部と前記側面部とがなす角度を変更することにより、後工程で発生する応力を低減して、スプリングバックを抑制する。
特許文献3に記載のプレス成形品の製造方法では、プレス成形時に発生する反りを見込んだ金型を生成する方法であり、この見込み形状を用いてプレス成形することによりスプリングバックを低減する。
特許文献2に記載のプレス成形品の製造方法では、圧縮応力もしくは引張応力が発生する領域により、変更する曲率の大小傾向が変化するため、金型の設計が複雑になる。
本発明は、上記従来の問題点を解消することにあり、ハイテン材を使用した場合でも、スプリングバックを精度良く低減することができ、目標の部品形状に近い高精度なハット形断面湾曲形状の部品を得ることができる形状凍結性および材料強度感受性に優れたプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
シミュレーション解析としては、有限要素法その他の公知の解析手法を適用すればよい。
これに対し、本発明の態様によれば、同一の金型でプレス成形すると想定される金属板の条件のうち、材料強度が最も高いと想定される金属板の条件で、第1の金型の設計を最適化する。
ここで、製品形状での曲率半径よりも小さい第2の曲率半径のハット形断面を有する部品形状に第1の金型でプレス成形して中間部品を製造することで、少なくとも部品長手方向のスプリングバックを抑制することが可能となる。部品断面方向のスプリングバックも抑制するように設計して第1の金型を構成しても良い。
本実施形態が目的とするプレス成形による製品形状の例を図1に示す。この例では、本体部4が、天板部1とフランジ部2とが側壁部3を介して幅方向で連続してハット形断面の部品となっていると共に、天板部1及びフランジ部2が長手方向に沿って天板部1側に凸となるように湾曲した形状となっている。図1では、湾曲部分が左側に偏って形成されている。天板部1及びフランジ部2にそれぞれ形成される、長手方向に沿った湾曲の曲率は同じでも良いが、本実施形態では異なっているとする。
さらに、天板部1に対し、補強その他を目的とした凹や凸の形状が形成される場合であっても適用できる。この場合、天板部1と対向する金型のプレス面部分にその凹や凸の形状を形成しておけばよい。
金属板としては、590MPa以上の超ハイテン材を対象とするが、鋼板やアルミニウム板などを用いてもよい。また、中間部品及び製品形状において、天板部1とフランジ部2の曲率半径の大きさは異なっていてもよい。
ここで、フランジ外周をトリムするトリム加工(不図示)を有する。トリム加工は、第1の工程の前に実施しても良いし、第1の工程と第2の工程の間で実施しても良いし、第2の工程の後に実施しても良い。本実施形態では、トリム加工を第1の工程でのプレス加工の後に実施する場合で説明する。この場合、中間部品は、フランジ外周のトリム加工が行われた状態の部品となる。
第2の工程は、第1の工程で作製した中間部品20を、図4(b)に示すような第2の金型で使用して、製品形状にプレス成形する工程である。符号21はパンチ、符号22は下型、符号23はシワ押さえ部材である。
本実施形態では、第1の金型を、金属板10を第1の工程を行うことなく製品形状にプレス成形する場合に発生する部品断面方向のスプリングバック及び部品長手方向のスプリングバックの両方を抑制可能な形状の中間部品20に成形するための金型形状に設計する。
第1の設計は、例えば次のように実施する。
部品長手方向に沿って湾曲のないストレート形状のハット形断面の部品形状を想定することで、部品長手方向のスプリングバックによる壁開き(部品断面方向のスプリングバック)の影響を無視して、壁開きのみの影響を条件で設定することができる。そして、ストレート形状で壁開きを抑制すれば、長手方向に沿って湾曲形状であっても、壁開きを抑制することが可能となる。
すなわち、パンチ肩角度変化を利用して部品断面方向のスプリングバックを抑制する方法としては、例えばパンチ肩11aをC面取りして角度変化を抑制するように金型形状を決定する方法や、曲げ半径の異なる形状で2回曲げするように金型形状を設定する方法がある。これらの方法は、パンチ肩11aで発生するスプリングバック成分とスプリングゴー成分の相殺により角度変化を低減するように金型形状を決定するものである。
また、第2の設計では、第1の設計で決定した金型形状を、部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状に修正する。
すなわち、上記により部品断面のスプリングバック抑制条件を見出した後、キャンバーバック対策を実施する。
このとき、本実施形態にあっては、解析の条件として設定する金属板の材料条件は、次のようにして決定する。すなわち、同一の金型を使用してプレス成形すると想定される複数枚の金属板10における、材料強度が最も高いと想定される金属板を代表の金属板とし、その代表の金属板の材料条件を解析に適用する材料条件とする。
上記の代表とする金属板の材料強度は、実際にプレス成形する複数の金属板10における材料強度が最も高い金属板を採用しても良い。なお、バラツキはほぼ正規分布でばらついていると推定される。また、金属板10を製造する際に設定されている材料強度の上限許容強度を、代表の金属板の材料強度として設定しても良い。
ここで、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が0.7よりも小さい場合、第2の工程での金型下死点において天板部1に過度の圧縮応力が、フランジ部2に過度の引張応力が発生し、成形品にスプリングゴーが発生するおそれがある。逆に、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1よりも大きい場合、第2の工程の金型下死点において天板部1に引張応力が、フランジ部2に圧縮応力が残り、スプリングバックが十分抑制されない可能性がある。
同じ線長とするには、例えばフランジ部2と張出部5を接続する縦壁部6の線長を変更するように調整することで可能である。
また、第2の工程に使用する第2の金型は、製品形状若しくはそれに近似する形状を有する金型形状に設定する。
また、上記の各中間部品20に発生するスプリングバック後の各曲率半径は、CAE解析その他のシミュレーション解析をコンピュータで行うことで計算によって求めても良いし、実際に試験品を作製して実測によって求めても良い。
第1の工程で、上記のように設計した第1の金型を用いて、金属板10を中間部品20にプレス成形する。
次に、第2の工程で、上記の第2の金型を用いて、中間部品20をプレス成形して製品形状の部品を製造する。
ここで、本実施形態では、金型を設計する場合には、スプリングバックが抑制されるように設計するが、そのときの解析には、対象とする金属板の材料条件も設定して行われる。しかし、実際にプレス成形される金属板の材料強度はバラツキがあるため、その材料設定条件によっては、同じ金型でプレス成形して製造した全て製品にわたって寸法精度が良いとは限らない。
本実施例では、図5に示す長手方向に湾曲したハット形断面部品をプレス成形する場合を対象として、第1の工程で使用する第1の金型と第2の工程で使用する第2の金型との長手方向に沿った曲率半径の比を変更して複数の解析を実施した。なお、プレス成形に使用する金属板10は、板厚t=1.4mmであって、引張強度が590MPa級〜1470MPa級の鋼板とし、第1の工程の成型をフォーム成形で成形した場合とした。
ここで、部品長手方向両端における製品との乖離量を平均化した値によって評価した。部品長手方向のスプリングバックであるキャンバーバック(製品との乖離量)は製品に対して±1.0mmの範囲、材料強度感受性は590−1470MPa材間で1.0mmの範囲で、本実施例では合格の基準として説明する。
また表1のNo.5〜8は、材料強度条件を1470MPa材とし、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1.1になるように第1の金型を設定して成形にした場合の解析結果である。ここで、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)を1.1と設定したのは、590MPa材で第1及び第2の工程後のキャンバーバック(製品との乖離量)を0.0mmとするためである。
以上のように、本発明に基づき金型を設計することで、同じ金型で加工した製品全体のスプリングバック抑制効果が向上することが分かる。
2 フランジ部
3 側壁部
10 金属板
20 中間部品
Claims (6)
- 天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に、上記天板部及び上記フランジ部が長手方向に沿って上記天板部側に凸や凹に湾曲したハット形断面を有する製品形状に、金属板をプレス成形して製造する際に、
上記天板部及びフランジ部について、それぞれ長手方向に沿った湾曲を上記製品形状での曲率半径よりも小さい第2の曲率半径のハット形断面を有する部品形状に第1の金型でプレス成形して中間部品を製造する第1の工程と、上記中間部品を上記製品形状に第2の金型でプレス成形する第2の工程とを有し、
同一の金型を使用してプレス成形すると想定される複数枚の上記金属板における、材料強度が最も高いと想定される金属板を代表の金属板とし、その代表の金属板の材料条件で上記第1の工程及び上記第2の工程のプレス成形を実施し上記第2の金型から外した後のスプリングバック発生後の部品形状が上記製品形状に近づくようにシミュレーション解析を実施して上記第1の金型の構成を設定することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 上記設定する第1の金型の構成は、少なくとも上記天板部及びフランジ部における上記湾曲の部分をプレスする面における部品長手方向の湾曲の曲率半径を上記第2の曲率半径以下に構成することを特徴とする請求項1に記載したプレス成形品の製造方法。
- 上記製品形状における天板部の長手方向に沿った曲率半径をR1oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後の天板部の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(1)式を満たす値となるように、上記天板部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2の記載したプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R1’/R1o) < 1.00・・・・(1) - 上記製品形状におけるフランジ部の長手方向に沿った曲率半径をR2oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後のフランジ部の長手方向に沿った曲率半径R2’が下記(2)式を満たす値となるように、上記フランジ部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(2) - 上記第1の工程ではドロー成形またはフォーム成形を適用し、上記第2の工程では製品形状に成形するリストライク工程であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
- 金属板の材料強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
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