しかしながら、特許文献1に記載された排水ますでは、長期の使用によって、ガイド溝に異物が付着し易くなり、当該異物によってインバート体の位置の切り替えができない場合があった。また、上記従来の排水ますでは、インバート体を上下動させるためのガイド溝や当該ガイド溝に沿ってインバート体を上下動可能に支持する保持板等の部材を設ける必要があるため、排水ます内の構造が複雑化していた。そのため、排水の流路の切り替えを簡単な構造で行うことができる排水ますの開発が望まれていた。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することができ、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことができる排水ますおよびそれを備えた排水システムを提供することである。
本発明に係る排水ますは、上方に開口する点検口と、側部に形成され排水が流入する流入口と、側部に形成され排水が流出する第1流出口と、側部に形成され排水が流出する第2流出口と、を有する有底筒状のます本体と、前記ます本体内に設けられ、前記流入口から流入した排水を前記第1流出口に導く第1切替位置と前記第1切替位置よりも上方の位置であって前記流入口から流入した排水を前記第2流出口に導く第2切替位置との間で位置変更が可能である流路切替部材と、前記流路切替部材を下方より保持することにより当該流路切替部材の位置を前記第2切替位置にする位置保持部材と、を備え、前記流路切替部材は、前記第1切替位置において前記流入口の少なくとも一部と前記第1流出口の少なくとも一部とを繋ぐ第1インバート体と、前記第1インバート体の下方に設けられ、前記第2切替位置において前記流入口の少なくとも一部と前記第2流出口の少なくとも一部とを繋ぐ第2インバート体とを有している。
本発明に係る排水ますによれば、流路切替部材を第1切替位置に配置した場合、流入口からます本体内に流入する排水を第1インバート体により第1流出口に導くことができる。一方、流路切替部材を第2切替位置に配置した場合には、流入口からます本体内に流入する排水を第2インバート体により第2流出口に導くことができる。本発明の排水ますにおいては、流路切替部材を位置保持部材により保持するだけで、当該流路切替部材を第2切替位置に配置することができる。これによって、ます本体内の構造が複雑化することなく、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことができる。また、従来のようにます本体内にガイド溝や当該ガイド溝に沿ってインバート体を上下動可能に支持する保持板等の部材を設けることがないので、ガイド溝に異物が付着することがない。これにより、異物によって排水流路の切り替えが行えないような事態の発生を抑制することができる。したがって、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記第2流出口の上端は前記第1流出口の上端の高さ以下の位置に配置されかつ前記第2流出口の下端は前記第1流出口の下端の高さ以上の位置に配置され、または、前記第1流出口の上端は前記第2流出口の上端の高さ未満の位置に配置されかつ前記第1流出口の下端は前記第2流出口の下端の高さよりも上方の位置に配置されている。
上記態様によれば、ます本体の高さを従来よりも低くすることができる。したがって、排水ますの埋設深度、および排水ますに接続される貯留槽や当該排水ますと貯留槽とを連結する流出管路のそれぞれの埋設深度を浅くすることができる。これにより、埋設深度が深くなることに起因して各部材を埋設できないような事態を回避することができると共に、埋設時の掘削量を抑えてコストアップを抑制することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記流路切替部材は、有底筒状の第1筒状部材と、前記第1筒状部材の下端に設けられた有底筒状の第2筒状部材とを有し、前記第1筒状部材は、上方が開口され、前記流路切替部材が前記第1切替位置に配置されたときに、前記流入口に対向する第1孔部と前記第1流出口に対向する第2孔部とを有し、前記第2筒状部材は、上方が開口され、前記流路切替部材が前記第2切替位置に配置されたときに、前記流入口に対向する第3孔部と前記第2流出口に対向する第4孔部とを有し、前記第1インバート体は、前記第1筒状部材の底部を形成し、前記第1孔部から前記第2孔部に向かって形成され、前記第2インバート体は、前記第2筒状部材の底部を形成し、前記第3孔部から前記第4孔部に向かって形成されている。
上記態様によれば、第1筒状部材の上方が開口されているので、ます本体の点検口および第1筒状部材の前記開口を介して第1インバート体を目視にて点検することができる。また、第1切替位置において、流入口からの排水を第1筒状部材の第1孔部、第1インバート体および第2孔部を介して第1流出口に導くことができる。第2切替位置において、流入口からの排水を第2筒状部材の第3孔部、第2インバート体および第4孔部を介して第2流出口に導くことができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1流出口は前記流入口に対向して設けられ、前記第2流出口は前記流入口に対して垂直に設けられ、前記第1インバート体は半円筒状かつ平面視で直線状に形成され、前記第2インバート体は平面視で円弧状に形成され、前記第1筒状部材は、第1側部、前記第1側部に対向する第2側部、前記第1側部に対して垂直な第3側部、および前記第3側部に対向する第4側部を有しかつ角筒形状に形成されており、前記第2筒状部材は、第5側部、前記第5側部に対向する第6側部、前記第5側部に対して垂直な第7側部、および前記第7側部に対向する第8側部を有しかつ角筒形状に形成されており、前記第1孔部は前記第1筒状部材の前記第1側部に設けられ、前記第2孔部は前記第1筒状部材の前記第2側部に設けられ、前記第3孔部は前記第2筒状部材の前記第5側部に設けられ、前記第4孔部は前記第2筒状部材の前記第7側部に設けられている。
上記態様によれば、第1筒状部材および第2筒状部材をそれぞれ角筒形状に形成することにより、第1孔部、第2孔部、第3孔部および第4孔部を設ける箇所をそれぞれ角筒の側壁とすることができる。これにより、上記各孔部を例えば円筒形状の第1筒状部材に加工する場合よりも加工し易くなる。また、第1インバート体が半円筒状かつ直線状に形成されていることにより、流入口からます本体内に流入する排水を第1流出口に円滑に流すことができる。さらに、第2インバート体が円弧状に形成されていることによって、第2流出口が流入口に対して垂直に設けられた構成でも、当該第2インバート体に対して流水による大きな負荷を掛けることなく排水を流すことができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1筒状部材の前記第1側部と前記第2筒状部材の前記第5側部とは面一に設けられ、前記第1筒状部材の前記第2側部と前記第2筒状部材の前記第7側部とは平面視で直交するように設けられている。
上記態様によれば、第1側部と第5側部とが面一に設けられているので、位置保持部材によって流路切替部材を第2切替位置に配置した場合に、第5側部の第3孔部を流入口に対向する位置に配置することができる。また、第2側部と第7側部とが平面視で直交しているので、位置保持部材によって流路切替部材を第2切替位置に配置した場合に、第7側部の第4孔部を第2流出口に対向する位置に配置することができる。このように第1側部と第5側部との位置関係および第2側部と第7側部との位置関係を設定することによって、第1流出口が流入口に対向して設けられ、第2流出口が流入口に垂直に設けられ、高さが従来よりも低い上述のます本体に対応することができる。したがって、上記構成を有する流路切替部材を用いることで、排水ますの埋設深度を浅くすることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ます本体は、円筒形状に形成され、前記ます本体の内周壁と前記流路切替部材との間に設けられた第1〜第4スペーサをさらに備え、前記第1スペーサは、前記流入口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第1管状部と、前記流路切替部材の前記第1側部または前記第5側部に接触する第1垂直部と、前記ます本体の内周壁に接触する第1湾曲部とを有し、前記第2スペーサは、前記第1流出口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第2管状部と、前記流路切替部材の前記第2側部または前記第6側部に接触する第2垂直部と、前記ます本体の内周壁に接触する第2湾曲部とを有し、前記第3スペーサは、前記第2流出口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第3管状部と、前記流路切替部材の前記第3側部または前記第7側部に接触する第3垂直部と、前記ます本体の内周壁に接触する第3湾曲部とを有し、前記第4スペーサは、前記流路切替部材の前記第4側部または前記第8側部に接触する第4垂直部と、前記第3スペーサに対向する前記ます本体の内周壁に接触する第4湾曲部とを有している。
上記態様によれば、流路切替部材の第1筒状部材および第2筒状部材をそれぞれ角筒形状に形成した場合に、円筒形状のます本体の内周壁と上記各筒状部材との間にスペーサを配置することによって、ます本体に対する流路切替部材の位置決めを適切に行うことができる。また、ます本体の内周壁と各筒状部材(つまり流路切替部材)との間がスペーサにより埋められるので、隙間が生じ難い。これにより、排水の浸入を抑制または防止することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1スペーサは、前記第1垂直部の上端に設けられ、上方に向かうにつれ前記ます本体の外方に傾斜した第1傾斜部をさらに備え、前記第2スペーサは、前記第2垂直部の上端に設けられ、上方に向かうにつれ前記ます本体の外方に傾斜した第2傾斜部をさらに備え、前記第3スペーサは、前記第3垂直部の上端に設けられ、上方に向かうにつれ前記ます本体の外方に傾斜した第3傾斜部をさらに備え、前記第4スペーサは、前記第4垂直部の上端に設けられ、上方に向かうにつれ前記ます本体の外方に傾斜した第4傾斜部をさらに備え、前記第1傾斜部は前記ます本体の内周壁に接触する部分が湾曲して形成され、前記第2傾斜部は前記ます本体の内周壁に接触する部分が湾曲して形成され、前記第3傾斜部は前記ます本体の内周壁に接触する部分が湾曲して形成され、前記第4傾斜部は前記ます本体の内周壁に接触する部分が湾曲して形成されている。
上記態様によれば、各スペーサが垂直部の上端に傾斜部を備えていることにより、上方からの汚水が傾斜部を伝って下方に流れ易くなる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記流路切替部材は、有底円筒状に形成され、前記流路切替部材が前記第1切替位置に配置されたときに前記流入口に対向する第5孔部および前記第1流出口に対向する第6孔部を有すると共に、前記流路切替部材が前記第2切替位置に配置されたときに前記流入口に対向する第7孔部および前記第2流出口に対向する第8孔部を有し、前記第1インバート体は前記第5孔部から前記第6孔部に向かって半円筒状かつ平面視で直線状に形成され、前記第2インバート体は前記第7孔部から前記第8孔部に向かって平面視で円弧状に形成されている。
上記態様によれば、流路切替部材を円筒状に形成することにより、ます本体内に配置する際に万一流路切替部材の外周壁が周辺部材に接触した場合に、角筒形状の流路切替部材よりも損傷を受け難い。また、第1インバート体が半円筒状かつ直線状に形成されていることにより、流入口からます本体内に流入する排水を第1流出口に円滑に流すことができる。さらに、第2インバート体が円弧状に形成されていることによって、第2流出口が流入口に対して垂直に設けられた構成でも、当該第2インバート体に対して流水による大きな負荷を掛けることなく排水を流すことができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ます本体は、円筒形状に形成され、前記ます本体の内周壁と前記流路切替部材との間に設けられ、平面視で円を描くように配置された第5〜第8スペーサをさらに備え、前記第5スペーサは、前記流入口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第5管状部と、前記流路切替部材の外周壁に接触する第5円弧部とを有し、前記第6スペーサは、前記第1流出口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第6管状部と、前記流路切替部材の外周壁に接触する第6円弧部とを有し、前記第7スペーサは、前記第2流出口に挿通され前記ます本体の内方に通ずる第7管状部と、前記流路切替部材の外周壁に接触する第7円弧部とを有し、前記第8スペーサは、前記流路切替部材の外周壁に接触するよう円弧状に形成されている。
上記態様によれば、ます本体の内周壁と流路切替部材との間にスペーサを配置することによって、ます本体に対する流路切替部材の位置決めを適切に行うことができる。また、ます本体の内周壁と流路切替部材との間がスペーサにより埋められるので、隙間が生じ難い。これにより、排水の浸入を抑制または防止することができる。
本発明に係る排水システムは、上述したいずれか一つの排水ますと、上流端が排水設備に接続され、下流端が前記流入口に接続された流入管路と、上流端が前記第1流出口に接続された第1流出管路と、上流端が前記第2流出口に接続された第2流出管路と、前記第2流出管路の下流端に接続された貯留槽と、を備えている。
本発明に係る排水システムによれば、上記の構成を有する排水ますを備えているので、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することができ、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことができる。
本発明によれば、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することが可能で、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことが可能な排水ますおよびそれを備えた排水システムを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る排水ますおよびそれを備えた排水システムについて説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の技術的範囲内で種々の実施形態を採用することができる。
本実施形態の排水ます1は、排水の流路の切り替えが可能なますである。ここで、「排水」には、汚水および雨水が含まれる。「汚水」とは、トイレ、風呂、および台所の流し台等から排出される水であり、そのままでは河川に放流させることができないものである。本実施形態では、トイレ、風呂、および台所の流し台等の排水設備から、排水ます1に向かって汚水が排出されるものとする。また、「雨水」とは、降雨などの自然現象に起因する水であり、そのまま河川に放流させることができるものである。
図1に示すように、本実施形態の排水ます1は、ます本体2と、流路切替部材3と、位置保持部材4(図10(b)参照)と、第1〜第4スペーサ5〜8(図2参照)と、第1〜第3継手部材9〜11とを備えている。流路切替部材3は、ます本体2内に配置されている。位置保持部材4は、後で詳述する第2切替位置P2(図10(b)および図11参照)に流路切替部材3を配置する際にます本体2内に設けられるものである。図1は流路切替部材3が第1切替位置P1にある状態を示しているため、図1では位置保持部材4はます本体2内に配置されていない。
ます本体2は、円筒形状に形成されている。ます本体2は、有底筒状に形成され、内部に空間を有するものである。ます本体2は、底部2a(図2参照)と、当該底部2aに連結された円筒部2bとを備えている。ます本体21の上端には、上方に開口する点検口21が設けられている。なお、点検口21は、通常時には図示しない蓋により閉じられた状態となっている。
図2に示すように、ます本体21の円筒部2bには、当該円筒部2bの厚み方向に貫通して形成された流入口22、第1流出口23および第2流出口24が設けられている。第1流出口23は、流入口22に対向して設けられている。本実施形態では、第1流出口23の管軸は、流入口22の管軸と一致している。第1流出口23の直径は、流入口22の直径と等しい。図3に示すように、第1流出口23の上端23aは、流入口22の上端22aと同じ高さの位置にある。また、第1流出口23の下端23bは、流入口22の下端22bと同じ高さの位置にある。
図2に示すように、第2流出口24は、流入口22に対して垂直に設けられている。したがって、第2流出口24は、第1流出口23に対しても垂直に設けられていることとなる。本実施形態では、第2流出口24の管軸の高さ位置は、流入口22の管軸の高さ位置と同じである。第2流出口24の直径は、流入口22の直径と等しい。図3に示すように、第2流出口24の上端24aは、流入口22の上端22aと同じ高さの位置にある。また、第2流出口24の下端24bは、流入口22の下端22bと同じ高さの位置にある。したがって、第2流出口24の上端24aは、第1流出口23の上端23aと同じ高さの位置にあり、第2流出口24の下端24bは、第1流出口23の下端23bと同じ高さの位置にある。
点検口21は、作業者がます本体2の内部に破損または詰まり等がないかの確認およびメンテナンスを行う部位である。図2に示すように、点検口21は、流入口22、第1流出口23および第2流出口24よりも大きく開口している。そのため、作業者は、点検口21を通じて、ます本体2内部の確認およびメンテナンスを容易に行うことができる。なお、図示は省略するが、ます本体2の上端には、例えば塩化ビニルで形成され、上端および下端が開口された立管が接続されている。この立管の上端に蓋が設けられている。通常時には、立管の上端の開口は前記蓋によって閉じられている。
図1の流路切替部材3をます本体2内に配置する前に、ます本体2に図2の第1〜第4スペーサ5〜8を設置する。第1〜第4スペーサ5〜8は、それぞれます本体2の内周壁と流路切替部材3との間に配置されるものである。第1スペーサ5の構成と、第2スペーサ6の構成と、第3スペーサ7の構成とはそれぞれ同じである。第1〜第3スペーサ5〜7の構成と、第4スペーサ8の構成とは異なっている。したがって、以下では、第1スペーサ5および第4スペーサ8の各構成について説明することにする。図4は、図2の視点と異なる視点から見た第1〜第4スペーサ5〜8の斜視図である。
図4に示すように、第1スペーサ5は、第1管状部5a、第1垂直部5b、第1湾曲部5cおよび第1傾斜部5dを備えている。同様に、第2スペーサ6は、第2管状部6a、第2垂直部6b、第2湾曲部6c(図2参照)および第2傾斜部6dを備えている。第3スペーサ7は、第3管状部7a、第3垂直部7b、第3湾曲部7c(図2参照)および第3傾斜部7dを備えている。一方、第4スペーサ8は、第4垂直部8b、第4湾曲部8cおよび第4傾斜部8dを備えている。なお、第2管状部6aおよび第3管状部7aの構成と機能は、それぞれ第1管状部5aと同じである。第2垂直部6b、第3垂直部7bおよび第4垂直部8bの構成と機能は、それぞれ第1垂直部5bと同じである。第2湾曲部6c、第3湾曲部7cおよび第4湾曲部8cの構成と機能は、それぞれ第1湾曲部5cと同じである。第2傾斜部6d、第3傾斜部7dおよび第4傾斜部8dの構成と機能は、それぞれ第1傾斜部5dと同じである。
図4に示すように、第1管状部5aは円筒状に形成されている。第1管状部5aは、当該第1管状部5aの管軸が第1垂直部5bに対して垂直となるよう第1垂直部5bに設けられている。第1管状部5aの孔部は第1垂直部5bを貫通して形成されている。図9に示すように、第1管状部5aの外周壁には、当該第1管状部5aよりも大径な、すなわち第1管状部5aの外周面から径方向の外方に突出した管状凸部5eが設けられている。この管状凸部5eの外方端(図9においては右端)5e1は、第1スペーサ5の第1管状部5aが流入口22(図2参照)に挿通された状態のときに、ます本体2(図2参照)の内周面に接触するようになっている。同じ様に、図4において第2管状部6aに管状凸部6eが設けられ、第3管状部7aに管状凸部7eが設けられている。一方、第4スペーサ8においては、ます本体2の流入口や流出口に挿通させる第1〜第3管状部5a,6a,7aに相当する管状部が設けられていない。そのため、第4スペーサ8には、上記の管状凸部5e,6e,7eと同じ機能を有する管状部8eが設けられている。図2に示すように、第1スペーサ5の第1管状部5aは、ます本体2の流入口22に挿通される。この場合、第1スペーサ5をます本体2の点検口21に挿入した後、第1管状部5aをます本体2の内側から外側に向かって流入口22に挿通すればよい。第2スペーサ6の第2管状部6aは、ます本体2の第1流出口23に挿通される。この場合、第2スペーサ6をます本体2の点検口21に挿入した後、第2管状部6aをます本体2の内側から外側に向かって第1流出口23に挿通すればよい。第3スペーサ7の第3管状部7aは、ます本体2の第2流出口24に挿通される。この場合、第3スペーサ7をます本体2の点検口21に挿入した後、第3管状部7aをます本体2の内側から外側に向かって第2流出口24に挿通すればよい。第4スペーサ8は、第3スペーサ7に対してます本体2の管軸を挟んで対向する当該ます本体2の内周壁の所定位置に配置される。
図4に示すように、第1スペーサ5の第1垂直部5bは、ます本体2(図2参照)の管軸に平行に配置される。この第1垂直部5bの下端に第1湾曲部5cが設けられている。また、第1垂直部5bの上端に第1傾斜部5dが設けられている。第1湾曲部5cは円弧状に形成されている。第1傾斜部5dは円弧状に形成されている。また、図9に示すように、第1スペーサ5の側面視において第1湾曲部5cは先下がりに傾斜して設けられている。つまり、第1湾曲部5cは、下方に向かうにつれます本体2の外方に傾斜して設けられている。第1スペーサ5の側面視において第1傾斜部5dは先上がりに傾斜して設けられている。つまり、第1傾斜部5dは、上方に向かうにつれます本体2の外方に傾斜して設けられている。第1湾曲部5cは、第1スペーサ5の第1管状部5aが流入口22(図2参照)に挿通された状態のときに、ます本体2の内周面に接触するようになっている。また、第1傾斜部5dは、第1管状部5aが流入口22に挿通された状態のときに、ます本体2の内周面に接触するようになっている。
第1〜第4スペーサ5〜8をそれぞれます本体2(図2参照)内に配置すると、図4に示すように、第1垂直部5bと第2垂直部6bと第3垂直部7bと第4垂直部8bとによって、上下方向に貫通した挿入孔30が形成される。上述したように、第1〜第4傾斜部5d,6d,7d,8dが傾斜しているため、上方からの汚水がこれらの傾斜部を伝って下方に流れ易くなっている。
次に、流路切替部材3は、ます本体2内に配置される。詳細には、流路切替部材3は、図5に示すように、上述の挿入孔30に挿入されます本体2内に配置される。以下、流路切替部材3の構成の詳細について説明する。流路切替部材3は、ます本体2内の第1切替位置P1(図10(a)参照)と当該第1切替位置P1よりも上方の位置である第2切替位置P2(図10(b)および図11参照)との間で位置変更が可能に設けられているものである。流路切替部材3は、第1切替位置P1に配置されたときには、流入口22(図2参照)から流入した排水を第1流出口23(図2参照)に導く。一方、流路切替部材3は、第2切替位置P2に配置されたときには、流入口22から流入した排水を第2流出口24(図2参照)に導く。流路切替部材3は、有底筒状の第1筒状部材31と、有底筒状の第2筒状部材32とを備えている。第1筒状部材31の上端は開口されている。第2筒状部材32の上端は開口されている。ただし、第2筒状部材32の上端については、閉じられていてもよい。第2筒状部材32は、第1筒状部材31の下端に接合されて設けられている。第2筒状部材32の外形の大きさは、第1筒状部材31の外形の大きさと同じである。第1筒状部材31および第2筒状部材32は、それぞれ例えば角筒形状に形成されている。具体的には、第1筒状部材31は、第1側部31aと、当該第1側部31aに対向する第2側部31bと、第1側部31aに対して垂直な第3側部31cと、第3側部31cに対向する第4側部31dとを備えている。同じ様に、第2筒状部材32は、第5側部32a(図7参照)と、当該第5側部32aに対向する第6側部32bと、第5側部32aに対して垂直な第7側部32cと、第7側部32cに対向する第8側部32d(図8参照)とを備えている。図8に示すように、第1筒状部材31に対して第2筒状部材32を接合する際には、例えば、第1筒状部材31の第1側部31aと第2筒状部材32の第5側部32aとを面一に合わせ、第1筒状部材31の第3側部31cと第2筒状部材32の第7側部32cとを面一に合わせる。それによって、第1筒状部材31の第2側部31bと第2筒状部材32の第6側部32bとが面一に合わさり、第1筒状部材31の第4側部31dと第2筒状部材32の第8側部32dとが面一に合わさる。
図5に示すように、第1筒状部材31の第1側部31aには、円形の第1孔部33が設けられている。第2側部31bには、円形の第2孔部34が設けられている。第1孔部33の中心軸と第2孔部34の中心軸とは一致している。第1孔部33の直径と第2孔部34の直径とは同じである。なお、第1孔部34の中心軸と第2孔部34の中心軸とが一致していること、および第1孔部33の直径と第2孔部34の直径とが同じであることは必須ではない。第1側部31aにおいて第1孔部33の周縁には図示しないゴムリングが設けられている。第2側部31bにおいて第2孔部34の周縁にはゴムリングGRが設けられている。同様に、第3側部31cにもゴムリングGRが設けられ、第4側部31dにも図示しないゴムリングが設けられている。第1側部31aに設けられた前記ゴムリングは、流路切替部材3が上述の挿入孔30に挿入された際に、第1孔部33の周壁と第1管状部5aの内周壁との隙間を埋めるものである。また、第2側部31bに設けられたゴムリングGRは、流路切替部材3が挿入孔30に挿入された際に、第2孔部34の周壁と第2管状部6aの内周壁との隙間を埋めるものである。
図5に示すように、第2筒状部材32の第5側部32a(図7参照)には、円形の第3孔部35が設けられている。第7側部32cには、円形の第4孔部36が設けられている。第3孔部35の中心軸と第4孔部36の中心軸とは側面視で一直線状に重なる。第3孔部35の中心軸と第4孔部36の中心軸とは平面視で直交している。第3孔部35の直径と第4孔部36の直径とは同じである。なお、第3孔部35の中心軸と第4孔部36の中心軸とが側面視で一直線状に重なっていることや平面視で直交していること、および第3孔部35の直径と第4孔部36の直径とが同じであることは必須ではない。第5側部32aにおいて第3孔部35の周縁には図示しないゴムリングが設けられている。第7側部32cにおいて第4孔部36の周縁にはゴムリングGRが設けられている。同様に、第6側部32bにもゴムリングGRが設けられ、第8側部32d(図8参照)にも図示しないゴムリングが設けられている。第5側部32aに設けられた前記ゴムリングは、流路切替部材3が上述の挿入孔30に挿入されて且つ後述の位置保持部材4(図10(b)参照)によって流路切替部材3の位置が第2切替位置P2(図10(b)および図11参照)となった際に、第3孔部35の周壁と第1管状部5aの内周壁との隙間を埋めるものである。また、第7側部32cに設けられたゴムリングGRは、流路切替部材3が挿入孔30に挿入されて且つ後述の位置保持部材4によって流路切替部材3の位置が第2切替位置P2となった際に、第4孔部36の周壁と第3管状部7aの内周壁との隙間を埋めるものである。第1筒状部材31の上端部には、取っ手40が設けられている。この取っ手40は、第3側部31cの上端部と第4側部31dの上端部とを架け渡すように棒状に形成されている。なお、取っ手40の形状は特に限定されるものではない。
図8に示すように、第1筒状部材31には、第1切替位置P1(図10(a)参照)において流入口22(図2参照)の少なくとも一部と第1流出口23(図2参照)の少なくとも一部とを繋ぐ第1インバート体37が設けられている。第1インバート体37は、第1筒状部材31の底部を形成している。第1インバート体37は、第1孔部33から第2孔部34(図7参照)に向かって形成されている。第1インバート体37は、半円筒状かつ平面視で直線状に形成されている。流入口22からの排水は、第1インバート体37上を流れ、第1流出口23から流出される。一方、第2筒状部材32には、第2切替位置P2(図10(b)および図11参照)において流入口22(図2参照)の少なくとも一部と第2流出口24(図2参照)の少なくとも一部とを繋ぐ第2インバート体38が設けられている。第2インバート体38は、第2筒状部材32の底部を形成している。第2インバート体38は、第3孔部35から第4孔部36に向かって形成されている。第2インバート体38は、平面視で円弧状に形成されている。流入口22からの排水は、第2インバート体38上を流れ、第2流出口24から流出される。
次に、ます本体2に第1〜第3継手部材9〜11が接続される。詳細には、図6に示すように、第1継手部材9は、第1管部9aと、板状に形成された第1湾曲部9bとを備えている。第1管部9aは円筒状に形成されている。第1管部9aは、第1管状部5aの外径よりも大きい内径を有している。第1湾曲部9bは、第1管部9aの外周面上に設けられている。第1湾曲部9bは、平面視で円弧状に湾曲して形成されている。第1継手部材9がます本体2に接続される際には、第1管部9a内に第1管状部5aが挿入される。第1湾曲部9bはます本体2の外周面に接合される。第1継手部材9がます本体2に接続された状態において、第1管部9aの中心軸と第1管状部5aの中心軸とは重なる。第1管部9aには、外部に設けられた流入管路101(図13参照)が接続される。これにより、流入管路101は間接的に流入口22(図2参照)に接続される。第2継手部材10は、第2管部10aと、第2湾曲部10bとを備えている。第3継手部材11は、第3管部11aと、第3湾曲部11bとを備えている。第2管部10aおよび第3管部11aの構成および機能は第1管部9aと同じであり、第2湾曲部10bおよび第3湾曲部11bの構成および機能は第1湾曲部9bと同じであるため、説明を省略する。第2管部10aには、外部に設けられた第1流出管路102(図13参照)が接続される。これにより、第1流出管路102は間接的に第1流出口23(図2参照)に接続される。第3管部11aには、外部に設けられた第2流出管路103(図13参照)が接続される。これにより、第2流出管路103は間接的に第2流出口24(図2参照)に接続される。以上のように、ます本体2に各構成要素を配置することによって、図1の排水ます1が完成する。
次に、位置保持部材4について説明する。図10(b)に示すように、位置保持部材4は、流路切替部材3の位置を第1切替位置P1(図10(a)参照)から第2切替位置P2に変更するためのものである。なお、図11は流路切替部材3が第2切替位置P2に配置された状態を示す斜視図である。図10(b)に戻って、位置保持部材4は流路切替部材3を下方より保持する。位置保持部材4はブロック状に形成されている。流路切替部材3の第2筒状部材32の下端部に溝部41を設け、当該溝部41に嵌合する凸部42を位置保持部材4の上端部に設けておけばよい。溝部41に凸部42を嵌合させることにより、第2筒状部材32に対する位置保持部材4の位置決めを適切に行うことができる。流路切替部材3の第2筒状部材32は、第1切替位置P1においてはます本体2(図2参照)の底部2aの上に配置される。位置保持部材4を配置する際には、流路切替部材3をます本体2内から一旦引き出す。その後、位置保持部材4を配置し、流路切替部材3を再度配置するようにする。流路切替部材3を引き出す際には、取っ手40(図5参照)を握って当該流路切替部材3を持ち上げればよい。なお、流路切替部材3の下に位置保持部材4を設けることで当該流路切替部材3の高さ位置が高くなった場合でも、流路切替部材3がます本体2内に収まるように当該ます本体2の高さ方向の長さが設定されている。
また、位置保持部材4の他の例として、次のようなスライド式のものを採用してもよい。図12(a)に示すように、他の例としての位置保持部材4aは、レール部材43と、ガイド部材44と、支持台45とを備えている。レール部材43は、上下方向に延びて管状に形成され、ガイド部材44に対して上下方向にスライド自在に構成されている。レール部材43の上端は流路切替部材3の第2筒状部材32の下端部に接続されている。レール部材43には、レール孔部43aが設けられている。ガイド部材44は上下方向に延びている。ガイド部材44の一部はレール部材43内に挿入されている。ガイド部材44には、水平方向に突出する突起部44aが設けられている。ガイド部材44の下端は支持台45に支持されている。支持台45は、ます本体2(図2参照)の底部2aに配置されている。ガイド部材44に対するレール部材43の位置が初期位置(図12(a)の位置)であるとき、流路切替部材3の位置は第1切替位置P1となっている。この状態から、取っ手40(図5参照)を握って流路切替部材3を引き上げる。そうすれば、図12(b)に示すように、ガイド部材44の突起部44aがレール孔部43aに嵌合する。これにより、ガイド部材44に対してレール部材43の位置が固定される。これによって、流路切替部材3の位置が第2切替位置P2となる。ガイド部材44の突起部44aは、レール部材43内にある状態で当該レール部材43の内周面からの力(つまり、内方に向かう力)を受けるように設計されており、レール孔部43aの位置において前記力が解放されることによって、レール孔部43aに嵌合するようになっている。なお、位置保持部材4aを適用する場合には、前述の位置保持部材4を適用する場合よりも流路切替部材3の第1切替位置P1の高さおよび第2切替位置P2の高さが高くなるため、これに合わせて流入口22、第1流出口23および第2流出口24の高さをそれぞれ設定するようにする。
続いて、上記の排水ます1を備えた排水システム100について説明する。図13に示すように、排水システム100は、排水が流れるシステムである。本実施形態では、排水システム100は、排水のうち排水設備104から流出する汚水が流れるシステムである。なお、排水システム100は、雨水が流れるシステムであってもよい。この場合、排水設備104は、雨水が集約される側溝等に置換される。排水システム100は地中に埋設されている。排水システム100は、流入管路101と、第1流出管路102と、第2流出管路103と、上述の排水ます1と、貯留槽107とを備えている。なお、特に図示はしていないが、流入管路101、第1流出管路102および第2流出管路103は、下流に向かって下方に傾斜して設けられている。流入管路101には、排水設備104から排出される汚水が流入する。流入管路101の上流端は、排水設備104に接続されている。流入管路101の下流端は、排水ます1の第1継手部材9に接続されている。第1流出管路102の上流端は、排水ます1の第2継手部材10に接続されている。第1流出管路102の下流端は、汚水を汚水処理場等に導く下水本管105に接続されている。第1流出管路102の途中部分には公共ます106が設けられている。第2流出管路103の上流端は、排水ます1の第3継手部材11に接続されている。第2流出管路103の下流端は、汚水を貯留する貯留槽107に接続されている。なお、上記の各管路は、一本の配管によって構成されていてもよいし、複数本の配管とそれら配管を接続する継手とによって構成されていてもよい。貯留槽107には、当該貯留槽107の内部を保守および点検するための円筒107aが鉛直方向に突設されている。この円筒107aの上端部は蓋107bによって閉じられている。
排水システム100においては、通常時には流路切替部材3の位置が第1切替位置P1(図10(a)参照)になっているため、排水設備104から流出する汚水は、流入管路101、排水ます1および第1流出管路102を介して下水本管105に排出される。これに対して、地震または津波等の災害が発生し、それにより下水本管105が破損したときには、流路切替部材3の位置が第2切替位置P2(図10(b)および図11参照)に変更される。これにより、排水設備104から流出する汚水は、流入管路101、排水ます1および第2流出管路103を介して貯留槽107に排出される。なお、排水システム100の下流にある下水本管105や貯留槽107は例であって、これに限定されず、他の部材を設けるようにしてもよい。
以上のように、本実施形態の排水ます1によれば、流路切替部材3を第1切替位置P1に配置した場合、流入口22からます本体2内に流入する排水を第1インバート体37により第1流出口23に導くことができる。一方、流路切替部材3を第2切替位置P2に配置した場合には、流入口22からます本体2内に流入する排水を第2インバート体38により第2流出口24に導くことができる。本実施形態の排水ます1においては、流路切替部材3を位置保持部材4により保持するだけで、当該流路切替部材3を第2切替位置P2に配置することができる。これによって、ます本体2内の構造が複雑化することなく、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことができる。また、従来のようにます本体2内にガイド溝や当該ガイド溝に沿ってインバート体を上下動可能に支持する保持板等の部材を設けないので、ガイド溝に異物が付着することがない。これにより、異物によって排水流路の切り替えが行えないような事態の発生を抑制することができる。したがって、排水ます1によれば、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することができる。
また、本実施形態では、流入口22の上端22aと、第1流出口23の上端23aと、第2流出口24の上端24aとを同じ高さ位置に設定し、流入口22の下端22bと、第1流出口23の下端23bと、第2流出口24の下端24bとを同じ高さ位置に設定した。これによって、ます本体2の高さを従来よりも低くすることができる。したがって、排水ます1の埋設深度、および排水ます1に接続される貯留槽107や当該排水ます1と貯留槽107とを連結する第2流出管路103のそれぞれの埋設深度を浅くすることができる。これにより、埋設深度が深くなることに起因して各部材を埋設できないような事態を回避することができると共に、埋設時の掘削量を抑えてコストアップを抑制することができる。
また、本実施形態では、流路切替部材3の第1筒状部材31の上方が開口されているので、ます本体2の点検口21および第1筒状部材31の前記開口を介して第1インバート体37を目視にて点検することができる。また、第1切替位置P1において、流入口22からの排水を第1筒状部材31の第1孔部33、第1インバート体37および第2孔部34を介して第1流出口23に導くことができる。第2切替位置P2において、流入口22からの排水を第2筒状部材32の第3孔部35、第2インバート体38および第4孔部36を介して第2流出口24に導くことができる。
また、本実施形態では、第1筒状部材31および第2筒状部材32をそれぞれ角筒形状に形成することにより、第1孔部33、第2孔部34、第3孔部35および第4孔部36を設ける箇所をそれぞれ角筒の側部とすることができる。これにより、上記各孔部を例えば円筒形状の第1筒状部材31に加工する場合よりも加工し易くなる。また、第1インバート体37が半円筒状かつ直線状に形成されていることにより、流入口22からます本体2内に流入する排水を第1流出口23に円滑に流すことができる。さらに、第2インバート体38が円弧状に形成されていることによって、第2流出口24が流入口22に対して垂直に設けられた構成においても、当該第2インバート体38に対して流水による大きな負荷を掛けることなく排水を流すことができる。
また、本実施形態では、流路切替部材3において、第1筒状部材31の第1側部31aと第2筒状部材32の第5側部32aとが面一に設けられているので、位置保持部材4によって流路切替部材3を第2切替位置P2に配置した場合に、第5側部32aの第3孔部35を流入口22に対向する位置に配置することができる。また、第1筒状部材31の第2側部31bと第2筒状部材32の第7側部32cとが平面視で直交しているので、位置保持部材4によって流路切替部材3を第2切替位置P2に配置した場合に、第7側部32cの第4孔部36を第2流出口24に対向する位置に配置することができる。このように第1側部31aと第5側部32aとの位置関係および第2側部31bと第7側部32cとの位置関係を設定することによって、第1流出口23が流入口22に対向して設けられ、第2流出口24が流入口22に垂直に設けられ、高さが従来よりも低い上述のます本体2に対応することができる。したがって、上記構成を有する流路切替部材3を用いることで、排水ます1の埋設深度を浅くすることができる。
また、本実施形態では、流路切替部材3の第1筒状部材31および第2筒状部材32をそれぞれ角筒形状に形成した場合に、円筒形状のます本体2の内周壁と上記各筒状部材との間にスペーサ5〜8を配置することによって、ます本体2に対する流路切替部材3の位置決めを適切に行うことができる。また、ます本体2の内周壁と流路切替部材3との間がスペーサ5〜8により埋められるので、隙間が生じ難い。これにより、排水の浸入を抑制または防止することができる。
また、本実施形態では、各スペーサ5〜8が垂直部5b,6b,7b,8bの上端に傾斜部5d,6d,7d,8dを備えていることにより、上方からの汚水がこれらの傾斜部5d,6d,7d,8dを伝って下方に流れ易くなる。
また、本実施形態では、第1継手部材9によって第1管状部5aと外部に配設された流入管路101とを連結することができる。また、第2継手部材10によって第2管状部6aと外部に配設された第1流出管路102とを連結することができる。さらに、第3継手部材11によって第3管状部7aと外部に配設された第2流出管路103とを連結することができる。
また、本実施形態では、ブロック状に形成された位置保持部材4により流路切替部材3の配置を容易に第2切替位置P2にすることができる。
また、本実施形態では、スライド式の流路切替部材4aを単に引き上げるだけで、当該流路切替部材4aの配置を容易に第2切替位置P2にすることができる。また、位置保持部材として上記ブロック状の位置保持部材4を採用する場合と異なり、ます本体2内から流路切替部材3を引き出す必要がなくなる。これにより、作業性の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、流路切替部材3に取っ手40を設けたことにより、作業者が取っ手40を握って流路切替部材3を引き出し易くなる。
さらに、本実施形態に係る排水システム100によれば、上述の排水ます1を備えているので、排水流路の切り替えの信頼性を長期にわたって維持することができ、簡単な構造で排水流路の切り替えを行うことができる。
以上、本実施形態の排水ます1について説明したが、さらに次のような変形例を適用してもよい。
上記実施形態では、第1流出口23の管軸が流入口22の管軸と一致し、第2流出口24の管軸の高さ位置が流入口22の管軸の高さ位置と同じとなるようにしたが、これに限定されるものではない。第1流出口23の管軸が流入口22の管軸と一致してなくてもよいし、第2流出口23の管軸が流入口22の管軸と同じ高さの位置になくてもよい。
また、上記実施形態では、第2流出口24の上端24aが第1流出口23の上端23aと同じ高さの位置にあり、第2流出口24の下端24bが第1流出口23の下端23bと同じ高さの位置にあるようにしたが、これに限定されるものではない。第2流出口24の上端24aが第1流出口23の上端23aの高さ以下の位置に配置され、第2流出口24の下端24bが第1流出口23の下端23bの高さ以上の位置に配置されるように設定してもよい。或いは、第1流出口23の上端23aが第2流出口24の上端24aの高さ未満の位置に配置され、第1流出口23の下端23bが第2流出口24の下端24bの高さよりも上方の位置に配置されるように設定してもよい。
また、上記実施形態では、角筒形状の第1筒状部材31および第2筒状部材32により流路切替部材3を構成するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば円筒形状等の他の形状の筒状部材によって流路切替部材を構成するようにしてもよい。図14に示すように、流路切替部材3aは有底円筒状に形成されている。流路切替部材3aの上端部には取っ手40が設けられている。流路切替部材3aには、円形の第5孔部33aおよび円形の第6孔部34aが設けられている。第5孔部33aの中心軸と第6孔部34aの中心軸とは一致している。第5孔部33aの直径と第6孔部34aの直径とは同じである。また、流路切替部材3aには、第5孔部33aや第6孔部34aよりも下方に円形の第7孔部35aおよび円形の第8孔部36aが設けられている。第7孔部35aの中心軸と第8孔部36aの中心軸とは側面視で一直線状に重なる。第7孔部35aの直径と第8孔部36aの直径とは同じである。第7孔部35aと第8孔部36aとは、互いに交わらないように形成されている。これによって、ます本体2(図1参照)内に排水が漏れることを防ぐことができる。第5孔部33aの直径、第6孔部34aの直径、第7孔部35aの直径、および第8孔部36aの直径は、流路切替部材3aの内径よりも小さい。なお、第5孔部33aの周縁、第6孔部34aの周縁、第7孔部35aの周縁、および第8孔部36aの周縁にそれぞれゴムリング(図示せず)を設けてもよい。
図14に示すように、流路切替部材3aには、第1切替位置P1(図10(a)参照)において流入口22(図2参照)の少なくとも一部と第1流出口23(図2参照)の少なくとも一部とを繋ぐ第1インバート体37aが設けられている。第1インバート体37aは、第5孔部33aから第6孔部34aに向かって形成されている。第1インバート体37aは、半円筒状かつ平面視で直線状に形成されている。流入口22からの排水は、第1インバート体37a上を流れ、第1流出口23から流出される。一方、流路切替部材3aには、第2切替位置P2(図10(b)参照)において流入口22の少なくとも一部と第2流出口24(図2参照)の少なくとも一部とを繋ぐ第2インバート体38aが設けられている。第2インバート体38aは、第7孔部35aから第8孔部36aに向かって形成されている。第2インバート体38aは、平面視で円弧状に形成されている。流入口22からの排水は、第2インバート体38a上を流れ、第2流出口24から流出される。以上のように、流路切替部材3aを円筒状に形成することにより、ます本体2内に配置する際に万一流路切替部材3aの外周壁が周辺部材に接触した場合に、角筒形状の流路切替部材3よりも損傷を受け難い。また、第1インバート体37aが半円筒状かつ直線状に形成されていることにより、流入口22からます本体2内に流入する排水を第1流出口23に円滑に流すことができる。さらに、第2インバート体38aが円弧状に形成されていることによって、第2インバート体38aに対して流水による大きな負荷を掛けることなく排水を流すことができる。
上述のような円筒状の流路切替部材3aを採用する場合、図15および図16に示すような第5〜第8スペーサ50,60,70,80を用いればよい。図15に示すように、第5スペーサ50は、流入口22(図2参照)に挿通されます本体2の内方に通ずる第5管状部51と、流路切替部材3a(図14参照)の外周壁に沿うように接触する第5円弧部52とを有している。第5スペーサ50において第5管状部51の内側端は第5円弧部52の内周壁に沿うように形成されている。以下同様に、図16に示すように、第6スペーサ60は、第1流出口23(図2参照)に挿通されます本体2の内方に通ずる第6管状部61と、流路切替部材3aの外周壁に沿うように接触する第6円弧部62とを有している。第6スペーサ60において第6管状部61の内側端は第6円弧部62の内周壁に沿うように形成されている。第7スペーサ70は、第2流出口24(図2参照)に挿通されます本体2の内方に通ずる第7管状部71と、流路切替部材3aの外周壁に沿うように接触する第7円弧部72とを有している。第7スペーサ70において第7管状部71の内側端は第7円弧部72の内周壁に沿うように形成されている。なお、第5スペーサ50の機能、第6スペーサ60の機能および第7スペーサ70の機能は、それぞれ上述の第1スペーサ5の機能、第2スペーサ6の機能および第3スペーサ7の機能と同じであるため説明を省略する。第8スペーサ80は、流路切替部材3aの外周壁に沿うように接触するよう円弧状に形成されている。図16に示すように、第5〜第8スペーサ50,60,70,80は、平面視で円を描くように配置される。ます本体2の内周壁と流路切替部材3aとの間に第5〜第8スペーサ50,60,70,80を配置することによって、ます本体2に対する流路切替部材3aの位置決めを適切に行うことができる。また、ます本体2の内周壁と流路切替部材3aとの間が上記スペーサにより埋められるので、隙間が生じ難い。これにより、排水の浸入を抑制または防止することができる。
また、上記実施形態では、ます本体2の流入口22と第1流出口23とを平面視で直線状に配置し、第2流出口24を流入口22に対して平面視で垂直に配置するようにしたが、これらの配置は特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、第1インバート体37を平面視で直線状に形成し、第2インバート体38を平面視で円弧状に形成するようにしたが、これに限定されるものではない。第1インバート体37および第2インバート体38の形状は、それぞれ種々設定可能である。
また、上記実施形態では、別部材である第1筒状部材31と第2筒状部材32とを接合することにより流路切替部材3を形成するようにしたが、これに限定されるものではない。一体的に形成された流路切替部材3を用いてもよい。
さらに、上記実施形態では、ブロック状に形成された位置保持部材4やスライド式の位置保持部材4aを例に挙げて説明したが、位置保持部材の構成については、流路切替部材3の位置を上下方向に変更し得るものであれば、特に限定されるものではない。