JP4203562B2 - 排水トラップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴槽、流し、洗面台、トイレ傍の手洗い器等、使用によって排水が生じる機器(以下「排水機器」と呼ぶ)の排水を処理する排水装置に関するものであって、更に詳しくは、排水の流路中に、排水の溜まり部分(以下「封水部」と呼ぶ)を設け、該封水部に溜まった排水(以下「封水」と呼ぶ)によって、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する排水トラップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、浴槽、流し、洗面台、トイレ傍の手洗い器等の排水機器からの排水を処理する排水配管において、排水機器から床下配管に到る配管中に、封水部を形成して下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する、排水トラップを配管することがよく知られている。
【0003】
図6に示した排水トラップ(特許文献1など)や、図7に示した排水トラップ(特許文献2など)は、椀トラップと呼ばれる種類の排水トラップで、流入口と連通したパイプ管の下端を、排水トラップのケーシング内に設けた、上方に開口した椀体内に配置することで、椀体内に排水溜まりである封水部を形成し、該封水によって、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止している。
【0004】
また、図8に示した排水トラップは、管トラップと呼ばれる種類の排水トラップで、排水用の管体を略横S字状又は略横P字状に屈曲させ、屈曲部分に排水溜まりである封水部を形成して、該封水によって、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止している。
【0005】
これらの排水トラップは、先に記載したように、浴槽、流し、洗面台、トイレ傍の手洗い器等の排水機器から、パイプ管やホース管、又は継手管などを介して、排水を下水側に排出する床下配管に配管されている。
【0006】
床下配管は、生活空間の床面から、コンクリート等の養生面のような配管用の床面との間の床下空間に配管されるものであって、水平面に対し1度乃至2度程度の若干の勾配を有するものの、ほぼ水平方向に沿って配管された排水主管と、該排水主管と排水トラップとを接続する枝管部とからなり、更にその下流側は縦管等によって下水道等に連通されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−98603号公報(第1図乃至第2図)
【特許文献2】
特開2001−152507号公報(第1図乃至第4図)
【特許文献3】
特開平8−333784号公報(第1図乃至第2図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような排水トラップが、下水側からの臭気や害虫類が屋内側に侵入することを防止するという機能を充分に発揮するためには、封水部内に充分な封水が満たされており、排水流路中を封水によって空気が通気できないような状態となっている必要がある。
このためには、封水部に排水を導く部材の下端から、封水が溢れ出る封水部の上端までの高さ幅(以下、「封水深」と呼ぶ)が長い方が有利である。しかし、排水が排出される際には、排水は封水部内の封水深の長さを、上方に上昇しなければならないため、封水深が長くなることは排水の流れ方としては悪化の方向に作用し、この点からは封水深が短い方が有利である。
実際の排水トラップの設計や、日本工業規格(JIS規格)では、上記の封水確保と排水性能確保のバランスから、封水深を、50ミリメートル以上、100ミリメートル以下となるように設計している。
【0009】
ところで、排水が緩やかに流れるのであれば、排水トラップの封水部には、常に流れ込んだ量に等しい量の排水が溢れるだけであって、封水部は常に充分な量の封水で上縁まで満たされていることになる。
しかし、実際にこれらの排水トラップを利用すると、排水の流れが、サイホン現象と呼ばれる空気の引き込み現象を生じる。これは、排水時に排水が勢いよく流れることで、排水主管側に封水部中の封水が引き込まれてしまう現象であり、これが起きると、封水の水面が封水部を形成する部材の下端よりも低くなってしまい、排水流路中を下水側からの臭気や害虫類が通気できる状態(以下、「破封状態」と呼ぶ)になってしまうことがある。サイホン現象の例としては、次の1.、2.のようなものがあり、1.は自己の排水によって発生するため自己サイホン、2.は他の排水装置の排水に誘導されて発生するため誘導サイホン、とそれぞれ呼ばれている。
1.排水トラップ自身の排水が流れるときに、排水が配管の下流側の空気を巻き込んで流れるため、その分配管の上流側が負圧となり、配管の上流にある排水トラップの封水部に負圧が作用して封水部の封水がひきこまれて流れ出し、破封状態が発生する。
2.排水主管に、枝管を介して複数接続されている配管のどれか一つに排水があって、排水主管中に排水が流れるとき、排水主管中の排水が、排水主管の下流側の空気を巻き込んで流れるため、その分排水主管の上流側が負圧となり、配管の上流にある排水トラップの封水部に負圧が作用して封水部の封水がひきこまれて流れ出し、破封状態が発生する。
【0010】
また、上記段落0009の2.のように、枝管を介して(排水装置を含む)配管が複数接続されている排水配管の、排水主管の上流側に接続されている排水機器に排水が大量に行われた場合、排水主管の下流側に接続されている排水機器においては、排水主管と枝管部との接続箇所を排水が通過するまでのわずかな時間であるが、排水に押された空気が、枝管を介して排水装置側に侵入する。これによって生じた空気の圧力(正圧)のために、封水部の水が下流側から上流側に瞬間的に押し上げられ、排水口から溢れて排水装置を汚してしまう、逆流と呼ばれる現象が発生する、という問題があった。
【0011】
上記段落0003に記載したような椀トラップと呼ばれる排水トラップの場合、図6の従来例や、図7の従来例のように、椀体の開口を、椀体の途中部分の水平方向の断面積よりも小さくすることで、封水が必要以上に引き込まれることを防止し、破封状態が生じないようにする方法が考案されている。
【0012】
しかしながら、上記段落0004に記載したような管トラップと呼ばれる排水トラップの場合には、上記のような破封状態を防止する適切な方法は未だ考案されておらず、上記したサイホン現象によって、しばしば破封状態が発生していた。
本発明は上記問題点に鑑み考案されたものであって、管トラップを含む全ての排水トラップに応用でき、サイホン現象によって排水の引き込みが生じても、破封状態を生じ難い排水トラップを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、
排水機器からの排水が流入する流入口(1)と、排水を下水側に流出する流出口(2)と、流入口(1)から流出口(2)までの間に形成される排水流路と、排水流路上に設けられる封水部(T)と、からなる排水トラップであって、流入口(1)からの排水が下方に向かって流れる第一下り流路(3)と、第一下り流路(3)下端に連通した、排水が横方向に流れる第一横流路(4)と、下端において第一横流路(4)に連通した、排水が上方に流れる第一上り流路(5)と、第一上り流路(5)上端に連通した、排水が横方向に流れる第二横流路(6)と、から構成し、更に、
第一横流路(4)から、横方向に連通した第三横流路(7)を設けて排水流路を分岐させると共に、第三横流路(7)の上壁部(7a)下端を、第一横流路(4)の上壁部(4a)下端の高さと同等又はそれ位置以上の高さ位置に設け、該第三横流路(7)と、第二横流路(6)の任意の箇所とを連通する、第二上り流路(8)を設けて第二横流路(6)と第三横流路(7)を連通させると共に、該第一上り流路(5)、又は第二上り流路(8)のいずれか一方、又は両方の、第二横流路(6)との接続部分よりも下方に、各上り流路と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を設けたことを特徴とする排水トラップである。
なお、「通水面積」とは、排水流路の、排水の流れに対して垂直な断面での面積を意味する表現であり、この通水面積が大きければ大きいほど、排水は流れやすい。
また、ここでいう「第一上り流路(5)、又は第二上り流路(8)のいずれか一方、又は両方....に、通水面積が各上り流路との接続部分よりも大きな面積を有する溜水部を設けた」とは、
第一上り流路(5)側のみに溜水部(9)がある場合、第一上り流路と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を、第一上り流路(5)上に設けた、ということを、また、
第二上り流路(8)側のみに溜水部(9)がある場合、第二上り流路(8)と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を、第二上り流路(8)上に設けた、ということを、また、
第一上り流路(5)及び第二上り流路(8)の両方に溜水部(9)がある場合、第一上り流路と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を、第一上り流路(5)上に設け、また第二上り流路(8)と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を、第二上り流路(8)上に設けた、ということを、
意味する表現である。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、上記段落0013に記載の排水トラップにおいて、
排水トラップを、上面に流入口(1)を、側面に流出口(2)を、また流入口(1)の直下には有底円筒形状の椀体(11)を備えたケーシング体(10)と、上下に開口した円筒体であって、上方の開口は流入口(1)に水密的に連通し、また下方の開口は椀体(11)内に配置されるパイプ管(12)と、から構成し、更に椀体(11)内であって、椀体(11)内の排水流路を二つに分離させる分岐壁(13)を、椀体(11)の底面から上端まで設けて排水流路を分岐させた後、椀体(11)の上端から流出口(2)に到るまでに分岐壁(13)によって分岐された分岐流路を合流させたことを特徴とする排水トラップである。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、上記段落0013に記載の排水トラップにおいて、排水トラップを、排水トラップの排水流路を、管体によって構成したことを特徴とする排水トラップである。
【0016】
【実施例】
以下に本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1また図2に示した、本発明の第一実施例の排水トラップは、各流路を管体によって構成されている。
その詳細な構成は、上端に流入口(1)を備えた、下方に向かって排水が流れる第一下り流路(3)と、第一下り流路(3)下端に連通した、排水が横方向に流れる第一横流路(4)と、下端において第一横流路(4)に連通した、排水が上方に流れる第一上り流路(5)と、第一上り流路(5)上端に連通した、排水が横方向に流れる第二横流路(6)と、第一上り流路(5)と第一横流路(4)との交差部分において第一横流路(4)に連通した第三横流路(7)と、また該第三横流路(7)端部と第二横流路(6)の任意の箇所とを上下方向に向かって連通する第二上り流路(8)を設けてなる。
また、該排水トラップは、該第二上り流路(8)の、第一横流路(4)との接続部分から、第二上り流路(8)の中間部分までに、通水面積が第二横流路(6)との接続部分よりも大きな面積となるように溜水部(9)を設けてなり、更に第三横流路(7)の上壁部(7a)下端を、第一横流路(4)の上壁部(4a)下端よりも高い高さ位置に設けてなる。
なお、上記構成の排水トラップでは、第一下り流路(3)、第一横流路(4)、第一上り流路(5)、第三横流路(7)、及び第二上り流路(8)の、第二横流路(6)下端よりも低い高さ位置の部分に封水が溜まって、封水部(T)を形成する。
【0017】
上記した排水トラップは、上流側を以下のように構成された排水機器である洗面台(W)に接続され、また下流側を同じく以下のように構成された排水機器である床下配管に接続されてなる。
洗面台(W)は、図2に示したように、吐水を溜めることができる槽体部(w1)と、槽体部(w1)下方に設けられた排水トラップ等を内部に収納するキャビネット部(w2)、及び該槽体部(w1)の底面に取り付けられた、排水口を備えた排水栓(w3)と、からなり、該排水栓(w3)が排水トラップの第一下り流路(3)の上流側に連通して接続される。
床下配管は、図3に示したように、生活空間の床面から、コンクリート等の養生面のような配管用の床面との間の床下空間に配管されるものであって、水平面に対し1度乃至2度程度の若干の勾配を有するものの、ほぼ水平方向に沿って配管された排水主管(P1)と、該排水主管(P1)と排水トラップの第二下り流路(14)とを接続する枝管部(P2)とからなり、更にその下流側は縦管等によって下水道等に連通されている。
なお、上記の枝管部(P2)は排水主管(P1)に複数設けられ、上記した洗面台(W)の排水トラップの他に、例えば浴槽、流し、トイレの手洗い器等の他の排水機器に取り付けられた排水装置と連通されてなる。
【0018】
上記した洗面台(W)等の排水機器と、排水トラップと、床下配管と、から構成された排水配管において、洗面台(W)に排水が生じた場合、
排水は槽体部(w1)から排水栓(w3)を介して排水トラップ内に流入し、
第一下り流路(3)から第一横流路(4)を流れ、更に第一上り流路(5)又は第三横流路(7)を介して第二上り流路(8)を流れて第二横流路(6)に到り、更に第二横流路(6)から第二下り流路(14)を介して枝管部(P2)に流入し、最終的に排水主管(P1)から下水側に排出される。
【0019】
排水が完了し、サイホン現象が終了すると、第一上り流路(5)と第二上り流路(8)は、第三横流路(7)において連通しているため、その内部に溜められている封水の水面は等しい高さ位置となる。この実施例では、第二上り流路(8)の、第一横流路(4)との接続部分から、第二上り流路(8)の中間部分までに、第二上り流路(8)と第二横流路(4)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を設けたため、溜水部(9)が無い場合と比べて、封水部(T)内の封水を多く確保することができる。
このことから、排水が完了して第一上り流路(5)と第二上り流路(8)の封水の水面が同じ高さになったときの、第一横流路(4)上端から封水の水面までの高さは、従来の排水トラップの排水完了時の、第一横流路(4)上から封水の水面までの高さよりも高い高さ位置となり、その分破封状態が生じにくい排水トラップとなっている。なお、上記実施例では自己サイホンに関しての破封防止について記載しているが、誘導サイホンに関しても、同様の理由から、同様の効果を得ることができる。
【0020】
更に、上記した第一実施例の排水トラップにおいて、分岐した第一上り流路(5)を流れる排水流路と、第二上り流路(8)を流れる排水流路における、排水の流れかたを比較する。第一上り流路(5)側の排水流路では、第一上り流路(5)と第二上り流路(8)の間に設けられている第三横流路(7)の上壁部(7a)下端が、第一横流路(4)の上壁部(4a)下端よりも高い高さ位置に設けてなる。このため第一横流路(4)をほぼ直線状に流れてきた排水の流れは、第三横流路(7)を流れる際、若干上方に向かって拡散するように流れるため、排水に乱流が生じ、スムーズな排水が妨げられる(乱流の程度は、第三横流路(7)の上壁部(7a)下端と、第一横流路(4)の上壁部(4a)下端との高さの関係を調節する、第三横流路(7)の上壁部(7a)分の形状を工夫する、などで適宜コントロールできる)。このため、サイホン現象に対して封水が流出し難い排水トラップと成っている。
また、第二上り流路(8)側の排水流路では、第二横流路(6)の途中部分で一端横方向への流れを止め、流れの方向を上方に変更してから、第二上り流路(8)内を上昇しなければならない。実際には、第二横流路(6)の途中部分で一端横方向への流れが止まることはほぼあり得ないので、排水の流れの勢いを利用して排水が第二上り流路(8)内を上昇することはほとんど不可能であり、この第二上り流路(8)においては、排水が下から上に排水が溜まってゆく水圧の力のみによってごく緩やかに排水が上昇してゆき、サイホン現象の影響を殆ど受けることがない。
【0021】
また、第二下り流路側(14)に正圧が発生した場合、第二横管部(6)を介して、第一上り流路(5)、第二上り流路(8)それぞれに封水を押し下げようとする空気の圧力(正圧)が発生するが、本第一実施例では、第一上り流路(5)と第二上り流路(8)の間に設けられている第三横流路(7)の上壁部(7a)下端が、第一横流路(4)の上壁部(4a)下端よりも高い高さ位置に設けてなるため、排水の逆流は、第一上り流路(5)、第二上り流路(8)のいずれかの流路を介したものであれ、第一横流路(4)に向かう流れよりも先に第三横流路(7)の中心側に向かう流れを生じ、その分第一横流路(4)に向かう逆流が減少して、排水装置の槽体部(w1)に溢れにくく成っている。
更に、この第一実施例では、第二上り流路(8)中に、通水面積が大きな溜水部(9)を設けているため、全体の封水の量が増加しており、相対的に空気の圧力(正圧)の影響が小さくなるため、逆流し難い排水トラップとなっている。
【0022】
次に、本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図4に示した、本発明の第二実施例の排水トラップは、ケーシング体(10)の内部に配置された、上端又は下端が解放された複数の円筒状の隔壁によって構成されている。
その詳細な構成は、上面に流入口(1)を、側面に流出口(2)を、また流入口(1)の直下には有底円筒形状の椀体(11)を備えたケーシング体(10)と、上下に開口した円筒体であって、上方の開口は流入口(1)に水密的に連通し、また下方の開口は椀体(11)内に配置されるパイプ管(12)と、から構成されてなり、
更に、椀体(11)の下端から、パイプ管(12)の下端よりも上方で、かつ椀体(11)のほぼ中間部分までの高さ位置における椀体(11)の内径を、椀体(11)の、上端における内径よりも大径として、封水部(T)中の排水を溜める溜水部(9)として設けてなる。
更にこの第二実施例では、椀体(11)内であって、椀体(11)の中心軸を通過し、且つ流出口(2)の軸に対して垂直な位置に、椀体(11)内の排水流路を二つに分離させる分岐壁(13)を、椀体(11)内において、パイプ管(12)の下端よりも上方の高さ位置から、椀体(11)の上端まで垂立させてなる。
排水トラップ内は、上記のように区画されているため、パイプ管(12)内が第一下り流路(3)、椀体(11)の内面からパイプ管(12)までの間の流路であって、分岐壁(13)によって隔てられている二つの流路のうち、流出口(2)に遠い方が第一上り流路(5)、近い側の流路が第二上り流路(8)であり、また第一上り流路(5)の上端から椀体(11)の底面上であって、分岐壁(13)及び第二上り流路(8)の下方が第三横流路(7)、パイプ管(12)の下端までの高さ位置が第一横流路(4)、第二上り流路(8)の上端から第一上り流路(5)の上端を介して流出口(2)に到るまでが第二横流路(6)、としてそれぞれ機能する。
【0023】
上記した排水トラップは、図4に示したような、パイプ管(12)の上流側を排水機器である浴槽パン(B)に接続され、また流出口(2)の下流側を床下配管の枝管部(P2)に接続されてなる。
【0024】
上記した浴槽パン(B)等の排水機器と、排水トラップと、床下配管と、から構成された排水配管において、浴槽パン(B)に排水が生じた場合、排水は流入口(1)からパイプ管(12)を介して排水トラップ内に流入し、第一下り流路(3)から第一横流路(4)を介し第一上り流路に、又は第三横流路(7)を介して第二上り流路(8)を流れ、更に第二横流路(6)から流出口(2)を介し、最終的に排水主管(P1)から下水側に排出される。
【0025】
上記した第二実施例の排水トラップは、第一実施例の、段落0019乃至段落0021に記載した理由と同様の理由によって、サイホン現象による破封や逆流に強い排水トラップとすることができる。
【0026】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で、自由にその構成を変更することが可能である。
例えば、上記第一実施例においては、排水トラップを、管体を屈曲させることで構成しているが、図5に示した実施例のように、排水トラップの一部を略直方体からなる躯体によって形成し、更に該躯体に壁面を設けて排水流路を形成する管体としても本発明の目的を達成することができる。本発明は上記のように、本発明の要旨を満たす位置関係に排水流路を形成する管体としての機能を有していれば、流路の形状について特に何らかの限定を課すものではない。
【0027】
また、上記第二実施例においては、排水トラップを、有底筒状の椀体(11)内に、上端が流入口(1)に連通したパイプ管(12)の下端を配置することで椀トラップと呼ばれる排水トラップを構成して本発明を実施している。これに対して、上面に流入口(1)を設けたケーシング体(10)の底面から、下端が流出口(2)に連通したパイプ管(12)を垂立させ、該パイプ管(12)の上端に、有底筒状の椀体(11)を、下方を開口させた状態で覆い被せて構成する、所謂逆椀式の排水トラップに本発明を採用しても良い。上記のようにしても、本発明の目的を達成することができる。
【0028】
【発明の効果】
本願発明の排水トラップは、以下の効果を奏する。
1.本発明の排水トラップは、各種の排水トラップにおいて、サイホン現象によって負圧が発生し、封水の引き込みが生じても、溜水部に溜められた封水によって破封し難い排水トラップとすることができる。
2.本発明の排水トラップは、各種の排水トラップにおいて、排水主管における排水によって正圧が発生しても、逆流によって排水装置に排水の溢れが生じ難い排水トラップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の断面図である。
【図2】本発明の第一実施例の排水トラップを採用した洗面台の正面図である。
【図3】排水配管を示す、床面を省略した参考図である。
【図4】本発明の第二実施例の断面図である。
【図5】本発明の、直方体からなる排水トラップの実施例を示す断面図である。
【図6】従来の排水トラップを示す断面図である。
【図7】従来の排水トラップを示す断面図である。
【図8】従来の排水トラップを示す断面図である。
【符号の説明】
1 流入口 2 流出口
3 第一下り流路 4 第一横流路
5 第一上り流路 6 第二横流路
7 第三横流路 8 第二上り流路
9 溜水部 10 ケーシング体
11 椀体 12 パイプ管
13 分岐壁 14 第二下り流路
B 浴槽パン T 封水部
P1 排水主管 P2 枝管部
W 洗面台 w1 槽体部
w2 キャビネット部 w3 排水栓
Claims (3)
- 排水機器からの排水が流入する流入口(1)と、
排水を下水側に流出する流出口(2)と、
流入口(1)から流出口(2)までの間に形成される排水流路と、
排水流路上に設けられる封水部(T)と、からなる排水トラップであって、
流入口(1)からの排水が下方に向かって流れる第一下り流路(3)と、
第一下り流路(3)下端に連通した、排水が横方向に流れる第一横流路(4)と、
下端において第一横流路(4)に連通した、排水が上方に流れる第一上り流路(5)と、
第一上り流路(5)上端に連通した、排水が横方向に流れる第二横流路(6)と、から構成し、更に、
第一横流路(4)から、横方向に連通した第三横流路(7)を設けて排水流路を分岐させると共に、第三横流路(7)の上壁部(7a)下端を、第一横流路(4)の上壁部(4a)の高さと同等又はそれ位置以上の高さ位置に設け、
該第三横流路(7)と、第二横流路(6)の任意の箇所とを連通する、第二上り流路(8)を設けて第二横流路(6)と第三横流路(7)を連通させると共に、該第一上り流路(5)、又は第二上り流路(8)のいずれか一方、又は両方の、第二横流路(6)との接続部分よりも下方に、各上り流路と第二横流路(6)との接続部分の通水面積よりも大きな通水面積を有する溜水部(9)を設けたことを特徴とする排水トラップ。 - 上記請求項1に記載の排水トラップにおいて、
排水トラップを、
上面に流入口(1)を、側面に流出口(2)を、また流入口(1)の直下には有底円筒形状の椀体(11)を備えたケーシング体(10)と、
上下に開口した円筒体であって、上方の開口は流入口(1)に水密的に連通し、また下方の開口は椀体(11)内に配置されるパイプ管(12)と、から構成し、
更に椀体(11)内であって、椀体(11)内の排水流路を二つに分離させる分岐壁(13)を、椀体(11)の底面から上端まで設けて排水流路を分岐させた後、椀体(11)の上端から流出口(2)に到るまでに分岐壁(13)によって分岐された分岐流路を合流させたことを特徴とする排水トラップ。 - 上記請求項1に記載の排水トラップにおいて、
排水トラップの排水流路を、管体によって構成したことを特徴とする排水トラップ。
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