JP6399439B2 - 熱交換器 - Google Patents
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Description
また、材料を薄肉化した場合、犠牲材に添加されたZnの芯材内部への拡散及び芯材に添加されたCuの犠牲材内部への拡散が進行することにより、犠牲材と芯材間の電位勾配が減少し、チューブ内周面の耐食性が低下する。加えて、芯材に添加されたCuのろう材側への拡散も同様に進行し、チューブ外周面側の耐食性が低下する。特に外周面側の耐食性はアウターフィンとの接合部(フィレット)へCuが濃縮することで孔食電位が貴となりチューブに貫通孔が発生する原因となる。
また、ろう材へZnを添加することでチューブ単体での外周面側の電位勾配(孔食電位の勾配)を確保し、耐食性を向上させることができる。
加えて、アウターフィン、並びにチューブのろう材、及び芯材の孔食電位のバランスを適正化することで、アウターフィンによる犠牲陽極効果を高め、チューブを薄肉化した場合であっても、耐食性に優れる熱交換器を提供できる。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
図1は本実施形態の熱交換器20(図3参照)に用いられるブレージングシート1の断面図を示すものである。このブレージングシート1はアルミニウム合金からなる芯材1aと、この芯材1aの一面側に被着(クラッド圧着)された層状のろう材1bと、芯材1aの他面側に被着(クラッド圧着)された層状の犠牲材1cとを主体として構成されている。
また、本実施形態の熱交換器20に採用されるブレージングシート1は、その厚さが、0.2mm未満であっても良い。これにより、軽量かつ安価な熱交換器20を構成することができる。
図2に示すように、前記ブレージングシート1を成形ロール等により犠牲材1cを内側、ろう材1bを外側として両端部1A、1Aを内側に曲げ、犠牲材1cに端部1A、1Aを突き合わせるようにして内柱10Aを設けてB型に成形加工しチューブ形状とすることができる。この状態で加熱しろう材1bを溶融させることで、端部1A、1Aをろう付けし偏平薄型のチューブ10を形成することができる。
図2に示す構造のチューブ10を用いて、例えば図3に示す熱交換器20を構成することができる。
熱交換器20は、例えば自動車のラジエータ等に用いられる構造とされ、チューブ10と、ヘッダー(ヘッダープレート)21と、アウターフィン22と、サイドサポート23とから概略構成されている。
ヘッダー21とチューブ10とは、ヘッダー21の下面に複数整列形成されたスロット(差込孔)21aに各チューブ10の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材1bを用いて両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。また、チューブ10とアウターフィン22は、チューブ10を構成するブレージングシート1に設けられたろう材1bを用いて、両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
なお、チューブ10を形成する際のブレージングシート1の端部1A、1Aのろう付け(図2参照)、ヘッダー21とチューブ10、チューブ10とアウターフィン22のろう付けは同時に行うことができる。
次に、アウターフィン22について説明する。
チューブ10に接合されるアウターフィン22は、0.5質量%〜3.5質量%のZnを添加したアルミニウム合金から形成することが好ましい。アウターフィン22を構成するアルミニウム合金は、Zn以外にMn:0.5〜2.0質量%、Si:0.1〜1.0質量%、Cu:0.05〜0.5%質量%、Zr:0.3質量%以下、Ti:0.3質量%以下から選択される少なくとも1種を含有していても良い(例えば、JIS3003)。また、その他に不可避不純物を含んでいても良い。
アウターフィン22は、上記組成を有するアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程などを経て、波形形状に加工される。なお、アウターフィン22の製造方法は、特に限定をされるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
アウターフィン22の孔食電位は、アウターフィン22を構成するアルミニウム合金のZn含有量により調整することができる。以下、アウターフィン22に含まれるZnの含有量の範囲について詳しく説明する。
[Zn:0.5質量%〜3.5質量%]
Znは、孔食電位を卑にする作用があり、アウターフィン22に添加した場合、ろう材1bに対して電位差(孔食電位差)を確保することが可能となり、耐食性に有効な孔食電位勾配ができることで、耐食性を向上させ、腐食深さを低減する効果がある。しかし、Zn量が0.5質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、3.5質量%を超えると、孔食電位が著しく卑となり、腐食速度が増加することでアウターフィンが早期に腐食する。
チューブ10の芯材1aは、Mnを1.2質量%〜1.8質量%、Siを0.4質量%〜1.3質量%、Feを0.21質量%〜0.5質量%、Cuを0.5質量%〜1.3質量%含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物のアルミニウム合金からなる。
以下、チューブ10の芯材1aを構成するアルミニウム合金の各構成元素の含有量の範囲について詳しく説明する。
[Mn:1.2質量%〜1.8質量%]
Mnはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、Mn量が1.2質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8質量%を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下する。なお、同様の理由から下限を1.4質量%、上限を1.8質量%とすることが望ましく、さらには下限を1.5質量%、上限を1.75質量%にすることがより望ましい。
Siはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、Si量が0.4質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.3質量%を超えると材料の融点が低下する。なお同様の理由から下限を0.6質量%、上限を1.2質量%とすることが望ましく、さらには下限を0.7質量%、上限を1.1質量%にすることがより望ましい。
Feはマトリックス中にAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果や、ろう付け熱処理後の結晶粒を微細化することにより、ろう付け後の強度を向上させる効果がある。しかし、Fe量が0.21質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.5質量%を超えると耐食性が劣化したり、鋳造時に巨大な金属間化合物を生成して材料の成形性が低下する。なお、同様の理由により下限を0.25質量%、上限を0.45質量%とすることが望ましく、さらには、下限を0.28質量%、上限を0.40質量%とすることがより望ましい。
Cuはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材1aに添加した場合、芯材1aの孔食電位を貴として犠牲材1cとの孔食電位差が大きくなるため、耐食性を向上させる効果がある。
しかし、Cu量が0.5質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.3質量%を超えると材料の融点が低下する。なお、同様の理由により下限を0.6質量%、上限を1.2質量%とすることが望ましく、さらには、下限を0.7質量%、上限を1.1質量%とすることがより望ましい。
チューブ10のろう材1bは、Siを6.0質量%〜11.0質量%、Znを0.1質量%〜5.0質量%含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物のアルミニウム合金からなる。
以下、チューブ10のろう材1bを構成するアルミニウム合金の各構成元素の含有量の範囲について詳しく説明する。
[Si:6.0質量%〜11.0質量%]
ろう材1b中に含まれるSiは融点を下げると共に流動性を付与する成分であり、その含有量が6質量%未満では所望の効果が不十分であり、一方、11質量%を越えて含有すると流動性が高まりすぎて好ましくない。したがって、ろう材1b中の好ましいSiの含有量は6.0質量%〜11.0質量%が好ましい。
Znは、孔食電位を卑にする作用があり、ろう材1bに添加した場合、芯材1aとの孔食電位差が大きくなり、耐食性に有効な電位勾配ができることで、耐食性を向上させ、腐食深さを低減する効果がある。しかし、Zn量が0.1質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、5.0質量%を超えると、ろう材1bの孔食電位が卑となりすぎて、アウターフィン22との孔食電位差を確保することができなくなる。
チューブ10の犠牲材1cは、Znを4.0質量%〜7.0質量%、Mnを1.0質量%〜1.8質量%、Siを0.2質量%〜1.2質量%含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物のアルミニウム合金からなることが好ましい。
以下、チューブ10の犠牲材1cを構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
[Zn:4.0〜7.0質量%]
Znは孔食電位を卑にする作用があり、犠牲材1cに添加した場合、芯材1aとの孔食電位差が大きくなり、耐食性に有効な電位勾配ができることで、ブレージングシート1(即ちチューブ10)の耐食性を向上させ、腐食深さを低減する効果がある。しかし、Zn量が4.0質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、7.0質量%を超えると腐食速度が速くなりすぎることで犠牲材1cが早期に消失し、腐食深さが増加する。なお、同様の理由により、下限を4.5質量%、上限を7.0質量%とすることが望ましく、さらには下限を4.8質量%、上限を6.8質量%とすることがより望ましい。
Mnはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、Mn量が1.0質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8質量%を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下する。なお、同様の理由から下限を1.2質量%、上限を1.8質量%とすることが望ましく、さらには下限を1.3質量%、上限を1.7質量%にすることがより望ましい。
Siはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、Si量が0.2質量%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.2質量%を超えると材料の融点が低下する。なお同様の理由から下限を0.2質量%、上限を1.2質量%とすることが望ましく、さらには下限を0.4質量%、上限を1.0質量%にすることがより望ましい。
従来から、チューブ10の内周面において、耐食性を高めるために、犠牲材1cの孔食電位を芯材1aの孔食電位に対し卑とすることが知られている。しかしながら、チューブ10の外周面においては、チューブ10とアウターフィン22のろう付けの過程において、芯材1aに添加されたCuがろう材1bへ拡散し、アウターフィン22との接合部30(フィレット)へCuが濃縮することで孔食電位が貴となり、チューブ10に貫通孔が発生する問題があった。
これによって、アウターフィン22にチューブ10に対する犠牲陽極効果を与え、チューブ10の耐食性を高め、貫通孔が発生することを防ぐことができる。
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、及びろう材用合金を鋳造した。なお、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、ろう材用アルミニウム合金の組成については、後段にまとめて示す。
得られた芯材は585℃で8hrの均質化処理を行なった。この均質化処理の条件は一例であり、温度:550〜600℃、保持時間:8〜16hの範囲から選択することができる。犠牲材及びろう材については均質化処理を行わない。
サンプルNo.1、2は、芯材のSiの含有量を調整し、それぞれ好ましい範囲の上限、下限としたものである。サンプルNo.3、4は、ろう材のSiの含有量を調整し、それぞれ好ましい範囲の上限、下限としたものである。サンプルNo.5、6は、ろう材のZnの含有量を調整し、それぞれ好ましい範囲の上限、下限としたものである。サンプルNo.7、8は、犠牲材のSiの含有量を調整し、それぞれ好ましい範囲の上限、下限としたものである。サンプルNo.9、10は、犠牲材のZnの含有量を調整し、それぞれ好ましい範囲の上限、下限としたものである。サンプルNo.11は、芯材、ろう材、犠牲材を構成するAlと不可避不純物以外の構成元素を好ましい範囲の中で、中程の含有量としたものである。
サンプルNo.Aは、アウターフィンのZnの含有量を調整し好ましい範囲の上限超としたものである。サンプルNo.Bは、アウターフィンのZnの含有量を調整し好ましい範囲の上限としたものである。サンプルNo.Cは、アウターフィンのZnの含有量を調整し好ましい範囲の中程としたものである。サンプルNo.Dは、アウターフィンのZnの含有量を調整し好ましい範囲の下限としたものである。サンプルNo.Eは、アウターフィンのZnの含有量を調整し好ましい範囲の下限未満としたものである。
以上の手順で作製した、ろう付け品に対して、孔食電位、耐食性、耐久性をそれぞれ測定した。孔食電位、耐食性、熱交換器耐久性の測定方法を以下に示す。また、測定結果を表3に示す。
アノード分極測定を実施し、アウターフィンとろう材の接合部、並びにアウターフィンと芯材の孔食電位を測定した。アノード分極には飽和カロメル電極を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl3溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定した。
表3においては、孔食電位の順列として、芯材、接合部におけるろう材、アウターフィンの順で卑となっている場合を○、それ以外を×とした。
アウターフィンとチューブをろう付熱処理により組み合わせた熱交換器(ミニコア)について、ASTM G85−A3で規定されているSWAAT試験を500時間実施し、500時間経過後のチューブ材の最大腐食深さを測定した。
表3においては、耐食性として、チューブ材の最大腐食深さが40μm以下の場合を◎、41μm以上70μm以下の場合を○、71μm以上の場合を×とした。
作製した熱交換器に0.5kPaと150kPaの繰り返し加圧試験を実施し、部材に破断が発生するまでの回数を測定した。
表3においては、耐久性として、部材破断までの繰り返し回数が15万回以上であった場合を◎、10万回以上15万回未満であった場合を○、10万回未満であった場合を×とした。
表3に示すように、熱交換器サンプルNo.1〜No13の実施例のサンプルは、耐食性、耐久性ともに好ましい結果となった。
これに対して、熱交換器サンプルNo.14〜No.23の比較例のサンプルは、ろう付接合不良などの製造上の不具合を生じたり、耐食性、耐久性が低下したりなどの欠点を有している。
熱交換器サンプルNo.15のサンプルは、耐久性に劣る結果となった。このサンプルは、チューブの芯材に含まれるSi量が少ないものであるため、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が十分に形成されず、強度が低下したと考えられる。
熱交換サンプルNo.17のサンプルは、チューブとフィンとが接合されなかった。このサンプルは、チューブのろう材のSi量が少ないものであるため、ろう材の流動性が不足したため、接合不良が生じたと考えられる。
熱交換サンプルNo.19のサンプルは、耐食性に劣る結果となった。また、芯材、接合部におけるろう材、アウターフィン孔食電位の順列が好ましいものとなっていなかった。このサンプルは、チューブのろう材のZn量が不足していたことで、ろう材の孔食電位を卑とする効果が不十分となり、孔食電位の順列が好ましい状態とならず、犠牲陽極効果を得ることができなかったためであると考えられる。
熱交換サンプルNo.21のサンプルは、耐久性に劣る結果となった。このサンプルは、チューブの犠牲材に含まれるSi量が少ないものであるため、Al−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が十分に形成されず、強度が低下したと考えられる。
熱交換サンプルNo.23のサンプルは、耐食性に劣る結果となった。また、芯材、接合部におけるろう材、アウターフィン孔食電位の順列が好ましいものとなっていなかった。加えてアウターフィンの孔食電位が著しく高くなっていた。これは、アウターフィンに含まれるZn量が不足していたためと考えられる。アウターフィンの孔食電位が高すぎると、ろう付け後のチューブのろう材が示す孔食電位に対し、アウターフィンの孔食電位を十分に卑とすることができず、アウターフィン22による犠牲陽極効果が不十分となる。これによって耐食性が低下したと考えられる。
Claims (2)
- チューブとアウターフィンとをろう付けにより接合部を形成し組み合わせた熱交換器であって、
前記チューブが、芯材と、前記芯材の一方の面であり前記チューブ外周面に形成されたろう材と、前記芯材の他方の面であり前記チューブ内周面に形成された犠牲材と、からなり、
前記芯材が、Mnを1.2質量%〜1.8質量%、Siを0.4質量%〜1.3質量%、Feを0.21質量%〜0.5質量%、Cuを0.5質量%〜1.3質量%含有し、残部がAl及び不可避不純物のアルミニウム合金からなり、
前記ろう材が、Siを6.0質量%〜11.0質量%、Znを0.1質量%〜5.0質量%含有し、残部がAl及び不可避不純物のアルミニウム合金からなり、
前記犠牲材が、Znを4.0質量%〜7.0質量%、Mnを1.0質量%〜1.8質量%、Siを0.2質量%〜1.2質量%含有し、残部がAl及び不可避不純物のアルミニウム合金からなり、
前記アウターフィンが、Znを0.5質量%〜3.5質量%含有するアルミニウム合金からなり、
前記アウターフィンの孔食電位が−830mV以上−750mV以下(vsSCE)であり、前記アウターフィンと前記接合部のろう材との孔食電位差が、30mV以上であり、
前記接合部におけるろう材と、前記芯材と、前記アウターフィンとの孔食電位の順列が、前記芯材、前記接合部におけるろう材、前記アウターフィンの順で卑となっていることを特徴とする熱交換器。 - 前記アウターフィンと前記芯材との孔食電位差が、120mV以上220mV以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
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