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JP6286842B2 - 屈曲振動片、振動デバイス、電子機器、及び移動体 - Google Patents

屈曲振動片、振動デバイス、電子機器、及び移動体 Download PDF

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Description

本発明は、一対の振動腕を有する屈曲振動片及びその屈曲振動片を備えた振動デバイス、電子機器、移動体に関する。
携帯端末等の通信機器、パーソナルコンピューター等の情報機器、その他様々な電子機器には圧電材料を用いた屈曲振動片が広く使用されている。
一般に屈曲振動モードで振動する音叉型屈曲振動片は、CI値を抑制するために、振動腕の表裏面の長手方向に溝を形成し、その内側の主面側に励振電極を形成する構造が広く採用されている。
また、基部から振動腕と平行に延出する支持腕を枠状に設け、支持腕で固定支持する構造の音叉型屈曲振動片が知られている。この音叉型屈曲振動片は、長手方向の基部の寸法を短くして小型化を図り、かつ振動腕から支持腕の固定位置までの距離を長くして、振動漏れを抑制している。
また、電子機器等のさらなる小型化に伴い、基部から延出する一対の振動腕と、振動腕に沿って基部より延出する支持腕を備えた音叉型屈曲振動片が知られている。このような音叉型屈曲振動片を用いた屈曲振動子として特許文献1に開示の音叉型屈曲振動子がある。特許文献1に開示の音叉型屈曲振動子は、基部と、基部から延出する一対の振動腕と、振動腕の間であって振動腕に沿って基部から延出する支持腕を備え、支持腕の幅方向の全幅にわたって溝状の第一の凹部が形成されている。
このような構成の音叉型屈曲振動子によれば、振動腕部から漏れる振動を支持腕の第1の凹部で減衰させることができ、支持腕への振動の伝播を軽減して、温度特性やCI値の悪化を防止することができる。
特開2011−15101号公報
屈曲振動モードで振動する屈曲振動片は、振動腕から基部を介して支持腕に振動漏れを生じてCI値が上昇し振動特性が悪くなる。
そこで、支持腕又は基部の形状を大きくして、振動腕と支持腕の距離を長くすることにより振動漏れを軽減することが考えられるが、屈曲振動片の小型化の要請に反することになる。
本出願人は、支持腕又は基部の形状を小型化しつつ、かつ少ない質量要素で振動漏れを軽減するために、基部に突起を設けた屈曲振動片について種々研究したところ、突起の形成箇所により、基部に突起がない従来の振動片と比べて振動漏れを軽減できる知見が得られた。
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、振動腕の振動漏れを軽減することができる屈曲振動片、振動デバイス、電子機器、及び移動体を提供することにある。
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]基部と、基部の一端側から延出している第1の振動腕、および平面視で前記第1の振動腕と並んでいる第2の振動腕と、前記第1の振動腕と前記第2の振動腕との間であって、前記基部の前記一端側から延出している支持腕と、を備え、前記第1の振動腕の延出する方向に対して直交する方向に沿った方向を幅方向として、前記基部の他端側には、前記振動腕の幅の範囲と、前記支持腕の幅の範囲の少なくとも一方に突起が設けられていることを特徴とする屈曲振動片。
一対の振動腕を間の支持腕で支持する屈曲振動片は、一対の振動腕が互いに逆相で屈曲変形した場合、支持腕が電極パッド、導電性接着剤を介してパッケージに固定されるため、基部は振動腕の延びる方向に屈曲変形することになるが、特に支持腕の基端と振動腕の基端との間に位置する基部の部分と、それに連なって、振動腕の延びる方向とは反対方向に位置する基部の部分は大きく屈曲することになる。この領域に突起のような錘が形成されると、支持腕を中心として左右の振動腕がバランス良く屈曲振動している状態において、突起によりモーメントが変わりアンバランスとなって振動漏れが発生し易くなる。しかし、上記構成による基部の他端の突起が基部の一端の支持片の幅および支持腕の幅の少なくともいずれか一方と基部を挟んで重なる領域に形成された場合には、支持腕を中心として左右の振動腕がバランスよく屈曲振動している状態において、突起によりモーメントが変わることなく均衡した状態を維持して、振動漏れの発生を低減することができる。
[適用例2]前記支持腕は、前記基部との付け根部分にテーパー部を備えており、前記突起は、前記テーパー部と前記基部との前記幅方向に沿っている境の幅の範囲を除く前記支持腕の両側面により規定される幅の範囲にあって前記他端側に設けられていることを特徴とする適用例1に記載の屈曲振動片。
上記構成によれば、支持腕を中心として左右の振動腕がバランスよく屈曲振動している状態において、突起によりモーメントが変わることなく均衡した状態を維持して、特に振動漏れの発生を低減することができる。
[適用例3]前記基部の他端は、前記支持腕の延出方向とは反対方向へ向かうに従い前記幅方向の幅が漸減していることを特徴とする適用例1又は2に記載の屈曲振動片。
上記構成によれば、支持腕と基部の連結位置周辺の剛性を高めることができ、振動漏れを軽減することができる。また振動腕の屈曲振動に起因する基部における振動が縮幅部によって相殺(緩和・吸収)されるので、基部に接続された支持腕の振動が小さくなる。よって、パッケージにマウントする固着部を支持腕に設けた際に縮幅部のない基部を有する屈曲振動片と比べて振動漏れを抑えることができる。
[適用例4]前記振動腕は、前記基部の幅方向にある端部に近い側にテーパー部を備えており、前記突起は、前記振動腕の前記テーパー部と前記基部との前記幅方向に沿っている境の幅の範囲にあって前記他端側に設けられていることを特徴とする適用例3に記載の屈曲振動片。
上記構成によれば、基部の屈曲変形の影響を受け難い箇所であるため、振動漏れの発生を低減することができる。
[適用例5]適用例1ないし4のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする振動デバイス。
上記構成によれば、振動漏れを少なくしてCI値を小さくし、振動特性に優れた振動デバイスが提供される。
[適用例6]適用例1ないし4のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする電子機器。
上記構成によれば、振動漏れを少なくしてCI値を小さくし、振動特性に優れた様々な電子機器が提供される。
[適用例7]適用例1ないし4のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする移動体。
上記構成によれば、上記構成によれば、振動漏れを少なくしてCI値を小さくし、振動特性に優れた様々な移動体が提供される。
本発明の屈曲振動片の平面図である。 本発明の屈曲振動片の部分拡大図である。 変形例の屈曲振動片の平面図である。 本発明の屈曲振動片の振動漏れ指数と基部他端の突起の形成箇所の関係を示すグラフである。
本発明の屈曲振動片(振動片ともいう)、振動デバイス、電子機器、及び移動体の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は、本発明の屈曲振動片の平面図である。図2は本発明の屈曲振動片の部分拡大図である。図1に示すように本発明の屈曲振動片10は、基部20と、基部20の一端22から延出する一対の振動腕30と、一対の振動腕30の間であって、振動腕30に沿って基部20の一端22から延出する支持腕40を備えている。
図1に示す基部20は、一端22に対して裏側となる所の側面が他端24であり、他端24側には突出した突起50が存在している。そして、他端24が振動腕30の延出方向に対して交差する方向として直交する方向に伸びている構成である。本実施形態の場合、一端22は、例えば、振動腕30と支持腕40との間に存在している直線的な領域であり、一端22と他端24が基部本体を間に挟んで平行に形成されている。このような基部20は、振動腕30および支持腕40の延出方向に平行となる長さ方向の長さが同じ長さに形成されている。
2本一対の振動腕30(第1及び第2の振動腕)は、腕部32が基端から先端に向けて互いに平行に延出し、各基端において基部20の一端22と接続されている基端を各々有する。振動腕30の表裏主面には、それぞれ長手方向に延出している溝として、平面視で例えば略矩形形状をなしている溝部34が形成されている。
振動腕30は腕部32の先端に錘部として、平面視で振動腕30の延出方向に直交した方向に沿っており、腕部32の幅よりも幅が大きい拡幅部であるハンマーヘッド部36が形成されている。ハンマーヘッド部36は、腕部32の幅よりも広い幅を有し、平面視で略矩形状に形成されているが、この形状に限定されるものではなく、ハンマーヘッド部36の先端に向かって漸次に、あるいは段階的に幅が広くなっている形状であってもよい。このようなハンマーヘッド部36を有する振動腕30は、振動片の小型化目的のために、それまでのタイプよりも基部20から延出する長さを短くしても、それまでのタイプよりも振動腕30の先端側の質量を大きく設定することにより、必要以上の高い周波数で屈曲振動することを抑制できる。例えば、振動腕30の長さに係らず同一振動を維持すること等が可能である。即ち、振動腕30にハンマーヘッド部36を設けると、ハンマーヘッド部36の質量を変えることにより振動腕30の単位時間当たりの屈曲変形する回数を調整して容易に所望の屈曲振動周波数を得ることができる。なお、屈曲振動する振動腕30の基端側半分の長さにおいては、振動腕30の幅は屈曲変形に対する剛性の効果が優勢であるのに対して、振動腕30の先端側半分の長さにおいては、振動腕30の幅は質量負荷効果が優勢であるから、ハンマーヘッド部は、振動腕30の先端側半分の領域に形成されるが、ハンマーヘッド部36のように、最も質量負荷効果の高い先端領域を含んで形成されるのが望ましい。また、振動腕30の全長に対して振動腕30の先端に形成されたハンマーヘッド部36の長さを30%以上50%以下とする。さらにハンマーヘッドによる屈曲振動周波数の低下分を補うように腕部32の幅を広くする。これにより熱弾性損失が低減してQ値が飛躍的に高くなり、更に、ハンマーヘッド部36の長さを1.2%以上で30%より小さくすることで、腕部32に形成された励振電極(後述)の面積を広くすることができるので、CI値が飛躍的に低くなる。
腕部32および溝部34の表面には、図示しない励振電極が形成されており、後述する電極パッド44を介して励振電極に所定の駆動電圧を印加することにより、所定の周波数で振動腕30が互いに接近または離間する向きに屈曲して振動するようになっている。
支持腕40は、2本一対の振動腕30の間であって、振動腕30の延出方向に沿って基部20から一端22を境にして腕部42が延出している。支持腕40の延出方向の長さは、振動腕30の延出方向の長さよりも短く、支持腕40の先端が、腕部32とハンマーヘッド部36の接続箇所よりも基部20側に配置されるように設定している。すなわち、支持腕40は、2つのハンマーヘッド部36の間に存在しないことが望ましいが、少なくとも2つのハンマーヘッド部36の間が最も狭くなっている所に達していなければ良い。支持腕40の底面には一対の電極パッド44が形成されている。屈曲振動片10は、導電性接着剤を用いてパッケージ等の実装面に接着し、2本一対の振動腕30を中央の支持腕40で固定支持することができる。また、支持腕40と振動腕30との最小距離は、電極パッド44とハンマーヘッド部36との最小距離よりも長いことが好ましい。こうすることによって、電極パッド44に形成する導電性接着剤が大きく形成されてしまっても、ハンマーヘッド部36よりも振動腕30に付着する可能性が低くなり、即ち、水晶よりも損失の大きい導電性接着剤が、振動特性へ大きな影響をもつ振動腕30の屈曲変形部に付着する可能性が低くなるので、致命的な特性劣化に至ることがない。
振動腕30および支持腕40と基部20の一端22との連結位置にはそれぞれ平面視で、基部20との境から延出方向に向かうに従い振動腕30の幅、支持腕40の幅が小さくなっているテーパー部38,46が形成されている。振動腕30の腕部32および支持腕40の腕部42は、それぞれ基端から先端に向けて互いに平行となるように略直線状に延出しているが、支持腕40の基端側には、支持腕40の幅が狭くなる領域が設けられていてもよい。こうすることで、2本の振動腕30が共に同一方向に屈曲振動するモード(以下、同相モード)の振動周波数を、2本の振動腕30が互いに近接と離間を交互に繰り返すモード(以下、メインモード)の振動周波数から離すことができ、同相モードとメインモードの結合強度を小さくすることになって、メインモードの振動漏れが増大するのを防ぐことができる。特に、同相モードの振動周波数をf1、メインモードの振動周波数をf0とした場合、|f1−f0|/f0≧10%、より好ましくは|f1−f0|/f0≧20%とすることにより、両者の結合を大きく抑制することができる。そして振動腕30の腕部32および支持腕40の腕部42は、基部20の一端22との連結位置において、先端から基端に向けて側辺が直角または鋭角に折れ曲がるのではなく、その幅が漸次拡大するように、丸み付けしたテーパー部38,46を設けてもよい。テーパー部38,46は振動腕30および支持腕40のそれぞれの両側面と基部20の一端22との間に形成されている。このテーパー部38,46を設けることによって、連結位置の強度が大きくなり、対衝撃性を向上させることができると共に、屈曲振動発生時の歪の集中を避けることができる。即ち歪の発生に随伴する温度変化(温度上昇あるいは温度低下)の集中を避け、熱の流れが大きくなってしまうのを抑えることができために、熱弾性損失の増大を抑制することができる。なお、本実施形態の振動腕30の幅とは、振動腕30の腕部32の幅と、腕部32の両側面に形成されたテーパー部38の幅を含む領域としている。また本実施形態の支持腕40の幅とは、支持腕40の腕部42の幅と、腕部42の両側面に形成されたテーパー部46の幅を含む領域としている。
基部20の他端24には、振動腕30および支持腕40が延出する方向と反対方向に突出する突起50が1つ形成されている。突起50は、基部20の他端24からの突出長さが、一例として、30μm程とし、共振周波数を一対の振動腕30の共振周波数よりも高くして、振動腕30と共振しないようにしている。また突起50の幅は、振動腕30および支持腕40の幅よりも小さく設定している。
そして図2に示すように支持腕40の延出方向の中心線から基部20の端部までの長さをL、支持腕40の中心線から基部20他端の突起50の形成箇所(突起50の突出方向の中心線)までの長さをX、突起50が支持腕40の幅と基部20の間に挟んで重なる基部20の他端の領域をa、支持腕40において、支持部40の中心線を基点にした突起50側の範囲であり、テーパー部46を除く領域をb、支持腕40を境にして突起50が存在する側にある基部20の端部からテーパー部38を含む範囲にある他端24の領域をc、として定義している。
図3は変形例の屈曲振動片の平面図である。図示のように、変形例の屈曲振動片10Aは基部20Aの平面形状が図1に示す屈曲振動片10と異なる。その他の構成は、図1、図2に示す屈曲振動片10と同様の構成であり同一符号を付して詳細な説明を省略する。変形例の屈曲振動片10Aは、基部20Aの他端24Aに、支持腕40の延出方向とは反対方向へ向けて突出し、振動腕30の並ぶ方向の長さが突出方向に向けて漸減する縮幅部26を有している。このような構成の変形例の屈曲振動片10Aによれば、振動腕の屈曲振動に起因する基部における振動が縮幅部26によって相殺(緩和・吸収)されるので、基部に接続された支持腕の振動が小さくなる。よって、パッケージにマウントする固着部を支持腕に設けた際に縮幅部のない基部を有する屈曲振動片と比べて振動漏れを抑えることができる。
また、本実施形態の屈曲振動片10,10Aは、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、リチウムテトラボート、ニオブ酸カリウム、リン酸カリウム、ランガサイト等の圧電材料により、公知のフォトエッチング技術を用いて所望の外形形状に形成することができる。一例として、結晶軸としてX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)を有する水晶で形成する場合には、X軸を中心にY軸と0°以上15°以下の角度を成す座標軸をY´軸とすれば、Y´軸とX軸に直交する方向の厚さ方向、Y´軸方向を振動腕の長手方向に配向するのが通例である(以下これを水晶Z板と呼ぶ)。
このような構成の屈曲振動片10,10Aは、一例として水晶を用いた場合、以下のような工程で製造される。屈曲振動片10,10Aは、水晶Z板の表面を研磨して平坦な平板形状としてウエハー状の基材をベースにして製造される。この水晶ウエハーの表面にCr膜あるいはNi膜を形成し、更にその表面にAu膜を積層した保護膜を、蒸着法やスパッタ法などによって形成する。そして保護膜の表面にレジスト膜を塗布してから、フォトリソグラフィーにより、レジスト膜を屈曲振動片10,10Aの外形形状よりもやや広い形状にパターニングする。次いで、パターニングしたレジスト膜をマスクとして保護膜をエッチングして除去する。レジスト膜剥離後、再度レジスト膜を塗布し、突起50を含む外形形状と溝形状をパターニングする。この状態で、水晶ウエハーの露出した部分をフッ酸でエッチングして、屈曲振動片10,10Aの外形を形成する。
次に溝部34に形成されている保護膜をエッチングする。こうしてエッチングし露出した水晶面は、振動腕30に形成する溝部34の平面形状に対応している。そして、水晶ウエハーの露出した部分をフッ酸で所定時間だけハーフエッチングし、振動腕30に溝部34を形成する。溝部34のエッチング後、レジスト膜および保護膜を剥離する。
電極は、水晶ウエハーの表面全体に、Cr膜またはNi膜を下地として形成した後、その上にAu膜を配置した電極膜を形成する工程と、その後、この電極膜に励振電極のパターンに対応したレジスト膜を形成し、そして、電極膜をエッチングして励振電極を形成した後、レジスト膜を剥離する工程を踏んで形成される。
次に振動腕30の先端に錘付けをする。これは、蒸着法やスパッタ法などにより、ハンマーヘッド部36の一部あるいは全面へAu等の金属皮膜を周波数調整用の錘付け膜として形成する。
周波数の粗調整は、錘付け膜の一部にレーザー光等を照射して、部分的に蒸散させ、ハンマーヘッド部36の質量を調整する。これにより、水晶ウエハー60に形成された複数の屈曲振動片10の屈曲振動周波数を、所望の周波数(例えば32.768kHz)に近づけるように粗調整することができる。
最後に屈曲振動片10,10Aの個片化を行う。即ち、水晶ウエハーにおける細い連結部を折り取り、連結状態であった屈曲振動片を個片にする。
図4は本発明の屈曲振動片の振動漏れ指数と基部他端の突起の形成箇所の関係を示すグラフである。ここで、計算に用いる屈曲振動片10の形状は、一例として、全長を860μm、支持腕40の延出方向の中心線から基部20の端部までの長さLを248μm、支持腕40の中心線から支持腕40の側辺までの長さを50μm、支持腕40の中心線から支持腕40側の振動腕30の側辺(振動片の内側の側辺)までの長さを155μm、支持腕40の中心線から基部20端部側の振動腕30の側辺(振動腕30の外側の側辺)までの長さを207μm、支持腕40の中心線から基部20他端の突起50の形成箇所(突起50の突出方向の中心線)までの長さをX、突起50は、平面視で正方形であり、その突出方向の長さを30μm、溝部34の深さを45μm、ハンマーヘッド部36の幅を198μm、ハンマーヘッド部46の長さを237μm、として屈曲振動周波数を32.768kHz近傍としている。そして、この屈曲振動片10を膜厚20μmのシリコン系の導電性接着剤でパッケージにマウントした状態で、セラミック製のパッケージにマウントした状態を想定して次のように振動漏れを計算している。
屈曲振動片10の屈曲振動に起因する弾性エネルギーは、支持腕40を介して導電性接着剤に到達し、導電性接着剤に裏面(屈曲振動片10とは反対側)に仮想的に設けられ、パッケージの材料定数を有する半無限媒体に伝達したまま屈曲振動片10には戻らない、ことを条件にして計算をしている。
半無限媒体に伝達したこのエネルギーは、再び屈曲振動片10において屈曲振動に寄与することがないので、振動漏れによる損失になる。そしてこの振動漏れによる損失のみを考慮したQ値をQLeakとして定義した(振動漏れが大きくなると、QLeakは小さくなる)。また、後述するメカニズムからも容易に想像できるように、本発明は上記で示した寸法の絶対値、屈曲振動周波数、材料に依存するものではない。
同グラフの縦軸は振動漏れ指数(Q0/QLeak)としている。ここで、Q0は基部20の他端24に突起50を形成していない場合の振動漏れのみを考慮したQ値であり、QLeakは基部20の他端24に突起50を1つ形成した場合の振動漏れのみを考慮したQ値を示している。同グラフの横軸は基部20の他端24の突起50の形成箇所(X/L)とし、X/L=0のとき支持腕40の中心線と突起50の中心が重なる位置となり、X/L=1のとき基部20の端部と突起50の中心が重なる位置となる。また、同グラフの振動漏れ指数1.0を通り縦軸と平行の直線Aは、屈曲振動片の基部の他端に突起がない場合を示している。そして◇プロットは、基部20の一端22と他端24が基部本体を間に挟んで平行に形成されている図1に示す屈曲振動片10である。□プロットは、基部20Aの他端24Aに縮幅部26を有している図3に示す屈曲振動片10Aである。
振動漏れ指数が1.0よりも小さいと、基部の他端に突起を形成していない屈曲振動片よりも振動漏れが小さいことになる。図1に示す屈曲振動片10の場合、振動漏れ指数が1.0よりも小さいX/Lの範囲は、0≦X/L≦0.17である。即ち突起50が支持腕40の幅と基部20を間に挟んで重なる基部20の他端の領域(図1,図2中の矢印a)に形成された場合である。
振動腕30は、励振電極に所定の駆動電圧を印加することにより、所定の周波数で振動腕30が逆位相で屈曲して振動するように構成されている。一対の振動腕30が互いに逆相で屈曲変形した場合、支持腕40が電極パッド44、導電性接着剤を介してパッケージに固定されるため、基部20は振動腕30の延びる方向に屈曲変形することになるが、特に支持腕40の基端と振動腕30の基端との間に位置する基部20の部分と、それに連なって、振動腕の延びる方向とは反対方向に位置する基部20の部分は大きく屈曲することになる。この領域に突起50のような錘が形成されると、支持腕40を中心として左右の振動腕30がバランス良く屈曲振動している状態において、突起50によりモーメントが変わりアンバランスとなって振動漏れが発生し易くなる。
一方、基部20の他端24の突起50が基部20の一端22の支持腕40の幅と基部20を挟んで重なる領域に形成された場合には、支持腕40を中心として左右の振動腕30がバランスよく屈曲振動している状態において、突起によりモーメントが変わることなく均衡した状態を維持して、振動漏れの発生を低減することができる。
次に、図3に示す屈曲振動片10Aの場合、振動漏れ指数が1.0よりも小さいX/Lの範囲は、0≦X/L≦0.12および0.8≦X/L≦1.0である。即ち基部20Aの他端24Aの突起50が、テーパー部46と基部20との幅方向に沿っている境の幅の範囲を除く支持腕40の両側面により規定される幅の範囲にあって他端24A側の領域(図2中の矢印b)、および振動腕30は、基部20の幅方向にある端部に近い側にテーパー部38を備えており、振動腕30のテーパー部38と基部20との幅方向に沿っている境の幅の範囲にあって他端24A側の領域(図2中の矢印c)に形成された場合である。なお図3の屈曲振動片10Aは、突起50が支持腕40の腕部42の側面と基部20の一端22Aとの連結位置に設けられたテーパー部46を除く支持腕40の腕部42の両側面よりも内側の領域(同図矢印b)に形成された形態を示している。
図3に示す屈曲振動片10Aは、基部20Aの他端24Aに、支持腕40の延出方向とは反対方向へ向けて突出し、振動腕30の並ぶ方向の長さが突出方向に向けて漸減する縮幅部26を有している。屈曲振動片10Aは、支持腕40と基部20との連結部分の剛性が高まり、振動腕の屈曲振動に起因する基部における振動が縮幅部26によって相殺(緩和・吸収)される、このため、図3に示す屈曲振動片10Aは、図1の屈曲振動片10と比べて、大幅に振動漏れを少なくすることができる。しかしながら、一対の振動腕30が互いに逆相で屈曲変形した場合、基部20Aは振動腕30の延びる方向に屈曲変形することになるが、特に支持腕40Aの基端と振動腕30の基端との間に位置する基部20Aの部分と、それに連なって、振動腕の延びる方向とは反対方向に位置する基部20Aの部分は僅かながら屈曲することになる。このため、この領域に突起50のような錘が形成されると、支持腕40を中心として左右の振動腕30がバランス良く屈曲振動している状態において、突起によってモーメントが変わりアンバランスとなり振動漏れが発生し易くなる。
一方、基部20Aの他端24Aの突起50が支持腕40の腕部42の側面と基部20の一端22Aとの連結位置に設けられたテーパー部46を除く支持腕40の腕部42の両側面よりも内側の領域(図2中の矢印b)に形成された場合には、支持腕40を中心として左右の振動腕30がバランスよく屈曲振動している状態において、突起によってモーメントが変わることなく、均衡した状態を維持して、振動漏れの発生を低減することができる。さらに、基部20Aの他端24Aの突起50が基部20Aの一端22Aの振動腕30の幅と基部20Aを挟んで重なる領域(図2中の矢印c)に形成された場合には、基部20Aの屈曲変形の影響を受け難い箇所であるため、振動漏れの発生を低減することができる。
このような本発明の屈曲振動片によれば、基部の他端の突起が基部の一端の支持片の幅および支持腕の幅の少なくともいずれか一方と基部を挟んで重なる領域に形成されているので、支持腕を中心として左右の振動腕がバランスよく屈曲振動している状態において、突起によりモーメントが変わることなく均衡した状態を維持して、振動漏れの発生を低減することができる。
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、2本一対の振動腕は、先端にハンマーヘッド部を形成せず、基端から先端に向けて腕部を略直線状に延出させた形態であっても適用することができる。
また、本発明の屈曲振動片は、様々な構造のパッケージに搭載することができ、例えば発振回路を有する回路素子と組み合わせた発振器等、振動子以外の様々な振動デバイスに適用することができる。
また、本発明の屈曲振動片は、発振回路を有する回路素子と組み合わせることによって、デジタル携帯電話、パーソナルコンピューター、(モバイル型パーソナルコンピューター)、電子時計、ビデオレコーダー、ビデオカメラ、テレビ、デジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレーター等の電子機器として広範に用いることができる。
また、本発明の屈曲振動片は、自動車に搭載されている。屈曲振動片は、キーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)、に広く適用できる。
10,10A………屈曲振動片、20,20A………基部、22,22A………一端、24,24A………他端、26………縮幅部、30………振動腕、32………腕部、34………溝部、36………ハンマーヘッド部、40………支持腕、42………腕部、44………電極パッド、50………突起。

Claims (8)

  1. 一端、および、前記一端とは反対側であって、平面視で直線状の他端を有する基部と、
    前記基部の前記一端側から一方向に沿って延出している第1の振動腕および第2の振動腕と、
    前記基部の前記一端側から前記一方向に沿って延出しており、前記一方向に直交する幅方向において前記第1の振動腕と前記第2の振動腕との間に配置されている支持腕と、
    記他端側であって、前記支持腕の幅の範囲に設けられている単一の突起と、
    を備えていることを特徴とする屈曲振動片。
  2. 前記支持腕は、前記基部との付け根部分であって前記幅方向に交わる両側面に支持腕テーパー部を備えており、
    前記支持腕の幅の範囲は、前記支持腕の前記両側面により規定される幅および前記支持腕テーパー部の幅を含んだ範囲であることを特徴とする請求項1に記載の屈曲振動片。
  3. 一端、および、前記一端とは反対側の他端を有する基部と、
    前記基部の前記一端側から一方向に沿って延出している第1の振動腕および第2の振動腕と、
    前記基部の前記一端側から前記一方向に沿って延出しており、前記一方向に直交する幅方向において前記第1の振動腕と前記第2の振動腕との間に配置されている支持腕と、
    を備え、
    前記他端の前記幅方向の幅は、前記一方向とは反対方向へ向かうに従い漸減しており、
    前記第1の振動腕は、前記幅方向に交わる両側面のうち、前記支持腕側とは反対側の側面に、第1の振動腕テーパー部を有し、
    前記第2の振動腕は、前記幅方向に交わる両側面のうち、前記支持腕側とは反対側の側面に、第2の振動腕テーパー部を有し、
    前記他端側であって、前記第1の振動腕テーパー部の幅の範囲、前記第2の振動腕テーパー部の幅の範囲および前記支持腕の幅の範囲のいずれかに、単一の突起が設けられていることを特徴とする屈曲振動片。
  4. 前記支持腕は、前記基部との付け根部分であって前記幅方向に交わる両側面に支持腕テーパー部を備えており、
    前記支持腕の幅の範囲は、前記支持腕の前記両側面により規定される幅の範囲であることを特徴とする請求項に記載の屈曲振動片。
  5. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする振動デバイス。
  6. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の屈曲振動片と、
    前記屈曲振動片が固定される実装面を有するパッケージと、
    を備え、
    前記屈曲振動片の前記支持腕の一方の主面に、電極パッドが設けられており、
    前記電極パッドが、接着剤を介して、前記実装面に固定されていることを特徴とする振動デバイス。
  7. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする電子機器。
  8. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする移動体。
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