本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
実施例1に係る加熱冷却式シートについて、図1及び図2に基づき説明する。図1に想像線によって表されている加熱冷却式シート10は、シートクッション11とシートバック12とからなる。該加熱冷却式シート10は、例えば自動車等の車両に搭載されている。該加熱冷却式シート10のことを、以下「シート10」と略称する。なお、シートバック12の有無は任意である。
シートクッション11の上面、つまり着座面11aを上から見たときに、シートバック12によって遮られていない範囲11bは、人Mnが着座することが可能な部位である。以下、該範囲11bのことを適宜「シートクッション11のなかの平面視着座可能な範囲11b」又は「着座可能な部位11b」という。
シートクッション11は、クッション材21と、該クッション材21を覆う表皮22とからなる。該クッション材21は、例えばウレタンフォームによって構成されている。該表皮22は、柔軟性を有した薄膜によって構成されている。
さらに、該シート10は、シートクッション11の下面11c、つまりクッション材21の下面を支える支持板23を有する。該支持板23は、図示せぬシートフレームの一部であって、金属製(例えば鋼板製)の略平板によって構成されている。
該シート10は、シートクッション11の内部に埋設された加熱冷却装置30を備えている。クッション材21には、加熱冷却装置30を埋設するための埋設凹部24が形成されている。該加熱冷却装置30は、ペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32に結合された熱伝導部材34とによって、シートクッション11を加熱又は冷却するものである。
詳しく述べると、該加熱冷却装置30は、支持板23の上面23aに密接するように重ねられた1つの第1熱伝導板31と、該第1熱伝導板31の上面に重ねられ且つ結合された1つのペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32の上面32aに重ねられ且つ結合された1つの第2熱伝導板33と、該第2熱伝導板33の上面に重ねられ且つ結合された1つの熱伝導部材34とからなる。
ここで、「結合」には接着、ハンダ付け、溶着、溶接、ビス止め、ボルト止め、カシメを含む。該第1及び第2熱伝導板31,33は、熱伝導性の良好な板材、例えば銅板やアルミニウム板によって構成される。該第1熱伝導板31は、ペルチェ素子32から伝わった熱を外部へ効率よく放散するように、大きい面積の平板状に形成される。
該ペルチェ素子32は、電力を熱に変換する周知の熱電変換素子であって、電流を流す極性を変えることにより冷却と加熱とに切り替わる特性を有している。該ペルチェ素子32は、厚みが均一な平面視略矩形状(正方形を含む)に形成されている。上記の説明から明らかなように、該ペルチェ素子32は、シートクッション11に対して着座面11aとは反対側、つまり該シートクッション11の下面11c側に位置している。さらに、該ペルチェ素子32は、シートクッション11のなかの平面視着座可能な範囲11b(着座可能な部位11b)に配置されている。例えば、該ペルチェ素子32は、シートクッション11の平面視略中央に位置している。
該熱伝導部材34は、熱伝導性が良好で、しかも柔軟性(可撓性)を有している部材、例えば平編み銅線によって構成されている。該平編み銅線は、予め設定された所定の幅且つ厚みを有した、帯状に形成されている。このように、帯状の該熱伝導部材34は、平べったい帯面を上下方向に向けて、ペルチェ素子32の上面32aに対し、第2熱伝導板33を介して間接的に、又は直接に結合される。
該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32からシートクッション11内の平面視着座可能な範囲11bを通り、着座面11aへ向かって延びている。詳しくは、該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32から着座面11aへ向かって、傾斜しつつ延びるとともに、延びた先端から着座面11aに沿って延びる水平部34c,34cを有している。
より詳しく述べると、シートクッション11に組み込まれた状態の該熱伝導部材34の断面形状は、概ね逆ハット状である。つまり、該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32の上面32aに重ねられ且つ結合される水平状の基部34aと、該基部34aの左端及び右端から上方へ傾斜しつつ延びる左右の傾斜部34b,34bと、該左右の傾斜部34b,34bの上端から着座面11aに沿って横へ延びる左右の水平部34c,34cとからなる。
該左右の傾斜部34b,34bは、基部34aから上方へ延びるにつれて互いに離反する方向に、且つシートクッション11の幅方向に傾斜している。このように、熱伝導部材34が、ペルチェ素子32から着座面11aへ向かって傾斜しつつ延びているので、着座面11aから熱伝導部材34へ作用した垂直荷重を水平荷重に、分散することができる。従って、シート10に着座した人Mnの体重が着座面11aから熱伝導部材34へ作用しても、該熱伝導部材34や、該熱伝導部材34とペルチェ素子32との結合部分の耐久性を維持することができる。しかも、熱伝導部材34が傾斜しているので、シートクッション11の柔軟性を十分に確保することができる。この結果、シート10の座り心地性を一層高めることができる。
該左右の水平部34c,34cは、左右の傾斜部34b,34bの上端からシートクッション11の幅方向に延びて、クッション材21の上面21aと表皮22との間に位置している。このため、ペルチェ素子32から熱伝導部材34へ伝わった熱を、該水平部34c,34cから着座面11aへ直接的に且つ広範囲に伝えることができる。従って、シート10に着座した人Mnを広範囲に冷却又は加熱することができるので、快適性を十分に高めることができる。
クッション材21に形成された埋設凹部24は、上下貫通しており、第1熱伝導板31を埋設するための第1凹部24aと、ペルチェ素子32を埋設するための第2凹部24bと、第2熱伝導板33及び熱伝導部材34を埋設するための第3凹部24cとからなる。該各凹部24a〜24cは互いに連通している。該第3凹部24cの左右の壁面は、左右の傾斜部34b,34bを傾斜状態に支持するように傾斜している。
シートクッション11のなかの、少なくともペルチェ素子32の真上の部分には、空隙25が形成されている。例えば、シートクッション11は、ペルチェ素子32の上面32aから真上に、深さδの空隙25を有している。なお、該空隙25は、少なくとも平面視でペルチェ素子32の位置に、且つペルチェ素子32の上面32aよりも上位にあればよい。
詳しく述べると、該第3凹部24cには、左右の傾斜部34b,34b間を塞ぐように閉鎖部材26が嵌め込まれている。該閉鎖部材26は、クッション材21と同じ材料によって構成されており、左右の壁面が傾斜している。第3凹部24cに閉鎖部材26が嵌め込まれることにより、左右の傾斜部34b,34bは該第3凹部24cの左右の壁面と該閉鎖部材26の左右の壁面とによって、挟み込まれる。この結果、左右の傾斜部34b,34bは傾斜した状態を維持することができる。
ペルチェ素子32の真上の部分とシートクッション11との間に空隙25があるので、シートクッション11は、ペルチェ素子32の真上の部分と他の部分とで、下方への弾性変形の違い(クッション性の違い)を吸収することができる。従って、ペルチェ素子32に応力が集中しないので、該ペルチェ素子32の耐久性を一層高めることができる。しかも、着座した人Mnは、底付き感を感じない。この結果、シートクッション11の座り心地性を一層高めることができる。
シートクッション11の内部に加熱冷却装置30を埋設する構成は、上述のように埋設凹部24を形成する他に、クッション材21に一体成形することによって埋設する構成を含む。その場合であっても、シートクッション11のなかの、少なくともペルチェ素子32の真上の部分には、空隙25が形成される。例えば、次の第1の埋設方法または第2の埋設方法が考えられる。
該第1の埋設方法は、表皮22の内側に平編み銅線からなる熱伝導部材34を仕込んだ状態で成形型にセットし、その後に成形型にウレタン樹脂を注入して発泡させることによって、シートクッション11の内部に熱伝導部材34を埋設する方法である。
該第2の埋設方法は、成形型に熱伝導部材34をセットし、その後に成形型にウレタン樹脂を注入して発泡させることによって、クッション材21に一体成形し、その後に該クッション材21を表皮22により覆うことによって、シートクッション11の内部に熱伝導部材34を埋設する方法である。
次に、加熱冷却装置30の作用を説明する。ペルチェ素子32は、上面32aが発熱作用をするとともに下面32bが吸熱作用をしている。上面32aから発せられた熱は、第2熱伝導板33を介して熱伝導部材34に伝わり、さらに水平部34c,34cから着座面11aに伝わる。このため、シート10に着座している人Mnの臀部及び太腿が暖められる。
該ペルチェ素子32に電流を流す極性を変えることにより、該ペルチェ素子32は冷却作用と加熱作用とが切り替わる。つまり、ペルチェ素子32は、上面32aが吸熱作用をするとともに下面32bが発熱作用をする。着座面11aの熱は、水平部34c,34cから熱伝導部材34を介して第2熱伝導板33に伝わり、さらに該第2熱伝導板33からペルチェ素子32の上面32aに伝わる。一方、ペルチェ素子32の下面32bから放散された熱は、第1熱伝導板31を介して支持板23から大気に放散される。このため、シート10に着座している人Mnの臀部及び太腿が冷やされる。
上記実施例1の説明をまとめると、次の通りである。実施例1では、ペルチェ素子32は、シートクッション11に対して着座面11aとは反対側に位置している。比較的固いペルチェ素子32が着座面11aから離れており、しかも、熱伝導部材34が可撓性の部材なので、着座面11aには、いわゆる「ごつごつ感」がない。このため、シート10の座り心地性を高めることができる。
さらに、実施例1では、ペルチェ素子32は、シートクッション11のなかの平面視着座可能な範囲11bに配置されている。熱伝導部材34は、ペルチェ素子32からシートクッション11内の平面視着座可能な範囲11bを通り、着座面11aへ向かって延びている。つまり、ペルチェ素子32及び熱伝導部材34の両方が、シートクッション11のなかの平面視着座可能な範囲11bに位置することになる。このため、ペルチェ素子32から着座面11aまでの、熱伝導部材34の熱伝導の経路が短くてすむ。しかも、シートクッション11のなかの着座不能な部位11d(図1参照)、例えばシートバック12の真下の部分には、熱を伝達しない。従って、前記熱伝導の経路途中からの熱放散が小さいので、ペルチェ素子32から着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
このように、実施例1では、シート10の座り心地性を高めるとともに、ペルチェ素子32から着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
実施例2に係る加熱冷却式シートについて、図3に基づき説明する。図3は、図2に対応して表されている。実施例2の加熱冷却式シート10Aは、上記図1及び図2に示されている実施例1の加熱冷却装置30を、図3に示される実施例2の加熱冷却装置30Aに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1及び図2に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例2の加熱冷却装置30Aは、基本的な構成が実施例1に対して同じであり、1つ又は複数のペルチェ素子32が支持板23の下面23bに設けられていることを特徴とする。
例えば、該加熱冷却装置30Aは、支持板23の下面23bに密接するように重ねられた2つの第1熱伝導板31と、該第1熱伝導板31の下面に重ねられ且つ結合された2つのペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32の下面32bに重ねられ且つ結合された2つの第2熱伝導板33と、該第2熱伝導板33の下面に重ねられ且つ結合された2つの熱伝導部材34とからなる。
このように、該2つの熱伝導部材34は、各ペルチェ素子32に対して間接的に又は直接的に結合されるとともに、シートクッション11内の平面視着座可能な範囲11b(図1参照)を通り、着座面11aへ向かって延びている。詳しくは、該各熱伝導部材34は、各ペルチェ素子32から着座面11aへ向かって、傾斜しつつ延びるとともに、延びた先端から着座面11aに沿って延びる水平部34cを有している。
つまり、該各熱伝導部材34は、各ペルチェ素子32の下面32bに重ねられ且つ結合される水平状の基部34aと、該基部34aの端から支持板23の貫通孔23cを通って上方へ延びて上方へ傾斜しつつ延びる傾斜部34bと、該傾斜部34bの上端から着座面11aに沿って横へ延びる水平部34cとからなる。
該貫通孔23cは、シートクッション11の平面視略中央に位置している。各傾斜部34bは、各基部34aから上方へ延びるにつれて互いに離反する方向に、且つシートクッション11の幅方向に傾斜している。なお、該2つの熱伝導部材34は、互いに熱伝達が可能に結合されてもよく、又は一体品としてもよい。
クッション材21に形成された埋設凹部24は、熱伝導部材34を埋設するための第3凹部24cだけによって構成されている。該第3凹部24cに閉鎖部材26が嵌め込まれることにより、各傾斜部34bは該第3凹部24cの左右の壁面と該閉鎖部材26の左右の壁面とによって、挟み込まれる。この結果、各傾斜部34bは傾斜した状態を維持することができる。閉鎖部材26の下方に空隙25を有するか否かは、任意である。
実施例2によれば、上記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。つまり、実施例2では、シート10Aの座り心地性を高めるとともに、ペルチェ素子32から着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
さらには、熱伝導部材34が、ペルチェ素子32から着座面11aへ向かって傾斜しつつ延びているので、該熱伝導部材34や、該熱伝導部材34とペルチェ素子32との結合部分の耐久性を維持することができる。しかも、シートクッション11の柔軟性を十分に確保して、シート10Aの座り心地性を一層高めることができる。
さらには、各ペルチェ素子32から各熱伝導部材34へ伝わった熱を、水平部34cから着座面11aへ直接的に且つ広範囲に伝えることができる。従って、シート10に着座した人Mnを広範囲に冷却又は加熱することができるので、快適性を十分に高めることができる。
さらに実施例2では、下向き荷重が着座面11aに作用することによる、シートクッション11の変形を支持板23によって抑制することができる。該支持板23の下面23bに設けられている各ペルチェ素子32には、下向き荷重が作用しない。従って、ペルチェ素子32の耐久性を、より一層高めることができる。
実施例3に係る加熱冷却式シートについて、図4に基づき説明する。図4は、図3に対応して表されている。実施例3の加熱冷却式シート10Bは、上記図3に示されている実施例2の加熱冷却装置30Aを、図4に示される実施例3の加熱冷却装置30Bに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1〜図3に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例3の加熱冷却装置30Bは、基本的な構成が実施例2に対して同じであり、1つ又は複数のペルチェ素子32に対しヒートパイプ41を介して熱伝導部材34が結合されていることを特徴とする。例えば、該加熱冷却装置30Bは、2つの第2熱伝導板33の下面にヒートパイプ41が重ねられ且つ結合され、該ヒートパイプ41の上端部に2つの熱伝導部材34が重ねられ且つ結合された構成である。
実施例3によれば、上記実施例2と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例3では、ペルチェ素子32に対しヒートパイプ41を介して熱伝導部材34が結合されているので、熱伝導効率がより高まる。このため、ペルチェ素子32から着座面11aまでの熱伝達距離が、上記実施例1よりも長くなったにもかかわらず、該着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
実施例4に係る加熱冷却式シートについて、図5に基づき説明する。図5は、図4に対応して表されている。実施例4の加熱冷却式シート10Cは、上記図4に示されている実施例3の加熱冷却装置30Bを、図5に示される実施例4の加熱冷却装置30Cに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図4に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例4の加熱冷却装置30Cは、基本的な構成が実施例3に対して同じであり、シートクッション11の下部に取り付けられているヒートシンク42に対して、1つのペルチェ素子32が結合されていることを特徴とする。該シート10Cは、シートクッション11の下面11c、つまりクッション材21の下面を支える支持ネット43を有する。該支持ネット43は、上記図4に示される支持板23と同じ役割を果たす部材であって、例えば多数のスプリングの集合体によって構成されている。
ヒートシンク42は、支持ネット43に吊り下げられている。加熱冷却装置30Cは、ヒートシンク42にペルチェ素子32が重ねられ且つ結合され、該ペルチェ素子32に第2熱伝導板33を介して2つの熱伝導部材34の各基部34aが重ねられ且つ結合された構成である。該ペルチェ素子32は、例えばシートクッション11に対して縦向きに配置される。
実施例4によれば、上記実施例3と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例4では、ペルチェ素子32の熱を支持板23(図4参照)を介して大気に放散することができないものの、ヒートシンク42から大気へ放散することが可能である。
実施例5に係る加熱冷却式シートについて、図6に基づき説明する。図6は、図4に対応して表されている。実施例5の加熱冷却式シート10Dは、上記図4に示されている実施例3の加熱冷却装置30Bを、図6に示される実施例5の加熱冷却装置30Dに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図4に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例5の加熱冷却装置30Dは、基本的な構成が実施例3に対して同じであり、1つ又は複数のペルチェ素子32に対し、ヒートパイプ44を介して複数の熱伝導部材34が結合されていることを特徴とする。ヒートパイプ44は、シート幅方向に細長い部材であって、シート幅と略同じ長さに設定されている。2つの第2熱伝導板33の下面には、ヒートパイプ44が重ねられ且つ結合されている。該ヒートパイプ44の上面44aには、多数の熱伝導部材34の各基部34aが重ねられ且つ結合されている。例えば、2つのペルチェ素子32に対して、6つの熱伝導部材34がシート幅方向に配列されている。
実施例5によれば、上記実施例3と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例5では、シートクッション11に多数の熱伝導部材34を配列したにもかかわらず、ペルチェ素子32の数量を低減することができる。
実施例6に係る加熱冷却式シートについて、図7に基づき説明する。図7は、図2に対応して表されている。実施例6の加熱冷却式シート10Eは、上記図1及び図2に示されている実施例1の加熱冷却装置30を、図7に示される実施例6の加熱冷却装置30Eに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1及び図2に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例6の加熱冷却装置30Eは、基本的な構成が実施例1に対して同じであり、シートクッション11の下部に取り付けられているヒートシンク45に対して、1つのペルチェ素子32が結合されていることを特徴とする。該シート10Eは、シートクッション11の下面11c、つまりクッション材21の下面を支える支持ネット46を有する。該支持ネット46は、上記図2に示される支持板23と同じ役割を果たす部材であって、例えば多数のスプリングの集合体によって構成されている。
ヒートシンク45は、支持ネット46に吊り下げられている。第1熱伝導板31の下面はヒートシンク45の上面に密接するように重ねられている。
実施例6によれば、上記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。つまり、実施例6では、シート10Eの座り心地性を高めるとともに、ペルチェ素子32から着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
さらには、熱伝導部材34が、ペルチェ素子32から着座面11aへ向かって傾斜しつつ延びているので、該熱伝導部材34や、該熱伝導部材34とペルチェ素子32との結合部分の耐久性を維持することができる。しかも、シートクッション11の柔軟性を十分に確保して、シート10Eの座り心地性を一層高めることができる。
さらには、ペルチェ素子32から熱伝導部材34へ伝わった熱を、水平部34c,34cから着座面11aへ直接的に且つ広範囲に伝えることができる。従って、シート10Eに着座した人Mnを広範囲に冷却又は加熱することができるので、快適性を十分に高めることができる。
さらに実施例6では、ペルチェ素子32の熱を支持板23(図1参照)を介して大気に放散することができないものの、ヒートシンク45から大気へ放散することが可能である。
実施例7に係る加熱冷却式シートについて、図8(a)、図8(b)及び図9に基づき説明する。図8(a)は、実施例7の加熱冷却式シート10Fの加熱冷却装置30Fの分解した構成を示している。図8(b)は、図8(a)の加熱冷却装置30Fを該シート10Fに組み付けた構成を示しており、図2に対応して表されている。図9は、図8(a)に示された着脱ユニット61の斜視図である。
実施例7の加熱冷却式シート10Fは、上記図7に示されている実施例6の加熱冷却装置30Eを、図8〜図9に示される実施例7の加熱冷却装置30Fに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図7に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例7の加熱冷却装置30Fは、基本的な構成が実施例6に対して同じであり、該シート10Fの組立後に、シートクッション11に一括して組み付け可能なユニットの構成であることを特徴とする。但し、実施例7のシートクッション11は、上記図2に示される支持板23によって支持されている。
該加熱冷却装置30Fは、シートクッション11内に予め組み込まれている組込ユニット51と、該組込ユニット51及びシートクッション11に着脱可能な着脱ユニット61とからなる。
該組込ユニット51は、上記実施例6と同様にシートクッション11内に埋設された熱伝導部材34と、該熱伝導部材34の基部34aの下面に結合された平板状の固定板52とからなる。該固定板52は、熱伝導性の良好な板材、例えば銅板やアルミニウム板によって構成されており、クッション材21にも固定されている。
該着脱ユニット61は、支持板23の下面23bに下から重ねられ且つボルト62によって結合されるヒートシンク63と、該ヒートシンク63の上面63aに重ねられ且つ結合されたペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32の上面32aに重ねられ且つ結合された熱伝導板33Fとからなる。該熱伝導板33Fは、上記実施例6の第2熱伝導板33(図7参照)と同じ構成であって、固定板52の下面52aに下から重ねられ且つボルト64によって結合される。
図9に示されるように、ヒートシンク63は、シートクッション11のシート幅方向又はシート前後方向に細長い部材であって、シート幅と略同じ長さ、又はシート前後長さと略同じ長さに設定されている。このため、該ヒートシンク63には、長手方向に複数のペルチェ素子32を1列に配列することが可能である。図8(a)に示された組込ユニット51には、ペルチェ素子32の数量に合わせて、複数の熱伝導部材34及び複数の固定板52が配列される。
なお、ヒートシンク63の多数の伝熱フィン63bの開放端を閉鎖板65によって閉鎖して送風路66を形成するとともに、該送風路66にファン67を接続することが可能である。このような構成とすることによって、ヒートシンク63から外気への熱放散効率を、一層高めることができる。
シート10Fに加熱冷却装置30Fを組み付けるには、先ず、図8(a)に示されるように、シートクッション11に組み込まれた組込ユニット51の固定板52に、熱伝導板33Fの位置を合わせて、下から重ね合わせる。このときに、ヒートシンク63の上面63aは支持板23の下面23bに重なる。次に、支持板23にヒートシンク63をボルト62によって結合する。最後に、ヒートシンク63に形成されている上下貫通したボルト逃げ孔63cからボルト64を挿通して、固定板52に熱伝導板33Fを結合して、組立作業を完了する。
実施例7によれば、上記実施例6と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例7では、シート10Fの組立後に、シートクッション11に着脱ユニット61を組み付け可能なので、シート10Fに対する加熱冷却装置30Fの組み付けが容易である。
実施例8に係る加熱冷却式シートについて、図10(a),図10(b)に基づき説明する。図10(a)は、実施例8の加熱冷却式シート10Gの加熱冷却装置30Gの分解した構成を示しており、図8(a)に対応して表されている。図10(b)は、図10(a)の加熱冷却装置30Gを該シート10Gに組み付けた構成を示しており、図8(b)に対応して表されている。
実施例8の加熱冷却式シート10Gは、上記図8〜図9に示されている実施例7の加熱冷却装置30Fを、図10に示される実施例8の加熱冷却装置30Gに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図8〜図9に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例8の加熱冷却装置30Gは、基本的な構成が実施例7に対して同じであり、組込ユニット51Gに対する着脱ユニット61Gの位置決めが容易な構成であることを特徴とする。該加熱冷却装置30Gは、シートクッション11内に予め組み込まれている組込ユニット51Gと、該組込ユニット51G及びシートクッション11に着脱可能な着脱ユニット61Gとからなる。
該組込ユニット51Gは、上記実施例7と同様に熱伝導部材34と固定板52とからなる。該固定板52の縁は、樹脂製の環状のホルダ53に一体成形されている。該ホルダ53は、クッション材21に固定されている。この結果、固定板52はホルダ53を介してクッション材21に固定されている。該環状のホルダ53の内周面53aは、下端から上方へ向かって先細り状のテーパ状に形成されている。該環状のホルダ53の下端には、フランジ54が形成されている。
該着脱ユニット61Gは、ヒートシンク63とペルチェ素子32とからなり、熱伝導板33F(図8(a)参照)を廃止している。該ペルチェ素子32の縁は、樹脂製の位置決め部68によって包囲されている。該位置決め部68は、例えばヒートシンク63の上面63aに一体成形されている。該位置決め部68の外周面68aは、下端から上方へ向かって先細り状のテーパ状に形成されている。該位置決め部68の外周面68aのテーパ角は、環状のホルダ53の内周面53aのテーパ角に合致している。
シート10Gに加熱冷却装置30Gを組み付けるには、先ず、ホルダ53内に位置決め部68を挿入する。この結果、ホルダ53の内周面53aに位置決め部68の外周面68aが嵌合することによって、組込ユニット51Gに対する着脱ユニット61Gの位置が決まる。このときに、ヒートシンク63の上面63aは支持板23の下面23bに重なる。次に、支持板23にヒートシンク63をボルト62によって結合する。最後に、ホルダ53のフランジ54とヒートシンク63とをボルト64によって結合して、組立作業を完了する。
実施例8によれば、上記実施例7と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例8では、組込ユニット51Gに対する着脱ユニット61Gの位置決めが容易なので、シート10Gに対する加熱冷却装置30Gの組み付けが一層容易である。
実施例9に係る加熱冷却式シートについて、図11に基づき説明する。図11は図10(b)に対応して表されている。実施例9の加熱冷却式シート10Hは、上記図10(a),(b)に示されている実施例8の加熱冷却装置30Gを、図11に示される実施例9の加熱冷却装置30Hに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図10に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例9の加熱冷却装置30Hは、基本的な構成が実施例8に対して同じであり、シートクッション11内及び加熱冷却装置30Hに通気路71が設けられていることを特徴とする。
詳しく述べると、ヒートシンク63はカバー72によって覆われている。該カバー72は、ヒートシンク63と共にホルダ53のフランジ54にボルト64によって結合されている。ヒートシンク63の多数の伝熱フィン63bの開放端はカバー72によって閉鎖して送風路66を形成するとともに、該送風路66にファン67を接続することが可能である。
該通気路71は、クッション材21の上面21aと表皮22との間に、着座面11aに沿って複数本形成され、さらに、熱伝導部材34を埋設するための第3凹部24cを通って、カバー72内に連通している。このため、着座面11a付近や熱伝導部材34付近の湿った空気を、通気路71や第3凹部24cを介してファン67によって吸引して、外部へ放散することができる。従って、シート10Hに着座している人Mn(図2参照)の快適性を、より一層高めることができる。
実施例10に係る加熱冷却式シートについて、図12(a)及び図12(b)に基づき説明する。図12(a)は、図1に対応して表されている。図12(b)は、図12(a)に示された加熱冷却装置30を表している。
上記図1及び図2に示されている実施例1の加熱冷却式シート10は、1つの加熱冷却装置30を備えた構成であった。これに対し、実施例10の加熱冷却式シート10Iは、着座面11aに沿って実施例1の加熱冷却装置30を複数配列したことを特徴とし、他の構成については上記図1及び図2に示される構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例10のシート10Iは、着座面11aに対して着座している人の位置(着座位置)がずれた場合であっても、着座している人を効率よく冷却又は加熱するように、複数の加熱冷却装置30を、第1の配列エリアA1,A1に配列している。該第1の配列エリアA1,A1は、細い想像線によって囲まれた範囲であって、着座した人の大腿部に沿うように、着座面11aの左半分と右半分とに設定された、前後に細長いエリアである。該第1の配列エリアA1,A1は、着座面11aのなかの、シートバック12寄りの後半部が幅狭で、シート前寄りの前半部が幅広である。
また、人体のなかの大腿部には、太い血管が通っていることが知られている。大腿部を冷やしたり暖めると、血流によって全身が冷え又は暖まる。一方、人体のなかの肛門付近は、冷やされると不快感がある。これらの点を踏まえて、実施例10では、着座している人の快適性を増すために、大腿部を効率よく冷却又は加熱するように、複数の加熱冷却装置30を第2の配列エリアA2に配列している。該第2の配列エリアA2は、着座面11aの前半部に且つシート幅の略全体にわたって設定された、横長のエリアである。
着座面11aを上から見て、該第1の配列エリアA1,A1の前半部が、該第2の配列エリアA2に重なっている。全ての加熱冷却装置30は、熱伝導部材34の水平部34c,34cがシート前後方向に位置している。例えば、該第1の配列エリアA1,A1の後半部には、それぞれ2つの加熱冷却装置30,30が配列している。右側2つの加熱冷却装置30,30と、左側2つの加熱冷却装置30,30とは、互いに前開き方向に傾いている。着座面11aを上から見て、右側2つの加熱冷却装置30,30同士は、互いにシート幅方向に重なっている。左側2つの加熱冷却装置30,30同士も同様である。第2の配列エリアA2には、シート幅方向に4つの加熱冷却装置30が一列に配列している。
実施例11に係る加熱冷却式シートについて、図13に基づき説明する。図13は、図1に対応して表されている。図13に想像線によって表されている実施例11の加熱冷却式シート10Jは、上記図1及び図2に示されている実施例1の加熱冷却式シート10と実質的に同じ構成である(基本構成が同じである)。該加熱冷却式シート10Jは、シートクッション11Jとシートバック12Jとからなり、例えば自動車等の車両に搭載されている。該加熱冷却式シート10Jのことを、以下「シート10J」と略称する。
シートクッション11Jの上面、つまり着座面11aを上から見たときに、該シートクッション11Jはシートバック12Jによって遮られていない。従って、実施例11の着座面11aの全体が、上記図1に示される実施例1の「シートクッション11のなかの平面視着座可能な範囲11b」に相当する。このため、実施例11では、着座面11aの全体にわたり、着座面11aに沿って実施例1の加熱冷却装置30を複数配列したことを特徴とし、他の構成については上記図1及び図2に示される構成と同じなので、説明を省略する。なお、シートバック12Jの有無は任意である。
具体的には、実施例11のシートクッション11Jは、着座面11aを上から見て、前半部が前細り状に形成されている。このような着座面11aに対して着座している人の位置(着座位置)がずれた場合であっても、着座している人を効率よく冷却又は加熱するように、複数の加熱冷却装置30を満遍なく配列している。
詳しく述べると、該複数(例えば8つ)の加熱冷却装置30は、着座面11aに後列、中央列、前列の3列に配列されている。全ての加熱冷却装置30は、熱伝導部材34の水平部34c,34cがシート前後方向に位置している。
後列には、3つの加熱冷却装置30がシート幅方向に等ピッチで配列されている。中央列には、3つの加熱冷却装置30が後列と同じ位相に配列されている。前列には、2つの加熱冷却装置30がシート幅方向に等ピッチで配列されている。該前列の各加熱冷却装置30は、中央列の各加熱冷却装置30間に位置するとともに、シート前後方向に概ね半分ほどを、該中央列の各加熱冷却装置30にオーバーラップして位置している。
実施例12に係る加熱冷却式シートについて、図14及び図15に基づき説明する。図14は、図1に対応して表されている。実施例12の加熱冷却式シート10Kは、上記図1及び図2に示されている実施例1の加熱冷却装置30を、図14及び図15に示されるようにシートバック12にも備えたことを特徴とし、他の構成については上記図1及び図2に示される構成と同じなので、説明を省略する。該加熱冷却式シート10Kのことを、以下「シート10K」と略称する。
具体的には、実施例12では、シートクッション11とシートバック12の両方に、加熱冷却装置30,30を備えている。シートクッション11に備えた加熱冷却装置30は、実施例1と同じ構成である。シートバック12に備えた加熱冷却装置30は、該シートバック12の内部に埋設されており、シートクッション11に備えた加熱冷却装置30と同じ構成である。
詳しく述べると、該加熱冷却式シート10Kは、シートクッション11とシートバック12とからなる。シートバック12を正面から見たときに、シートクッション11によって遮られていない範囲12bは、着座した人Mnの背Baの少なくとも一部が当接可能な部位である。以下、該範囲12bのことを適宜「シートバック12のなかの、着座した人Mnの背Baの少なくとも一部が当接可能な正面視当接範囲12b」又は「寄りかかり可能な部位12b」という。
シートバック12は、クッション材81と、該クッション材81を覆う表皮82とからなる。該クッション材81は、例えばウレタンフォームによって構成されている。該表皮82は、柔軟性を有した薄膜によって構成されている。
さらに、該シート10Kは、シートバック12の背面12cを支える支持板83を有する。該支持板83は、図示せぬシートフレームの一部であって、金属製(例えば鋼板製)の略平板によって構成されている。
クッション材81には、加熱冷却装置30を埋設するための埋設凹部24が形成されている。該加熱冷却装置30は、ペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32に結合された熱伝導部材34とによって、シートバック12を加熱又は冷却するものである。
詳しく述べると、該加熱冷却装置30は、支持板83の正面83aに密接するように重ねられた1つの第1熱伝導板31と、該第1熱伝導板31の正面に重ねられ且つ結合された1つのペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32の正面32a(前面32a。図2に示されているシートクッション11に有したペルチェ素子32の上面32aに相当。)に重ねられ且つ結合された1つの第2熱伝導板33と、該第2熱伝導板33の正面に重ねられ且つ結合された1つの熱伝導部材34とからなる。
該ペルチェ素子32は、シートバック12の背面12c側に位置している。さらに、該ペルチェ素子32は、シートバック12のなかの正面視当接範囲12b(寄りかかり可能な部位12b)に配置されている。例えば、該ペルチェ素子32は、シートバック12の下半分のシート幅方向略中央に位置している。帯状の該熱伝導部材34は、平べったい帯面をシート前後方向に向けて、ペルチェ素子32の正面32aに対し、第2熱伝導板33を介して間接的に、又は直接に結合される。
該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32からシートバック12内の正面視当接範囲12bを通り、シートバック12の正面12a(背もたれ面12a。前面12a)へ向かって延びている。詳しくは、該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32から正面12aへ向かって、傾斜しつつ延びるとともに、延びた先端から正面12aに沿って延びる水平部34c,34cを有している。
より詳しく述べると、シートバック12に組み込まれた状態の該熱伝導部材34の断面形状は、概ねハット状である。つまり、該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32の正面32aに重ねられ且つ結合される水平状の基部34aと、該基部34aの左端及び右端から前方へ傾斜しつつ延びる左右の傾斜部34b,34bと、該左右の傾斜部34b,34bの前端から正面12aに沿って横へ延びる左右の水平部34c,34cとからなる。
該左右の傾斜部34b,34bは、基部34aから前方へ延びるにつれて互いに離反する方向に、且つシートバック12の幅方向に傾斜している。このように、熱伝導部材34が、ペルチェ素子32から正面12aへ向かって傾斜しつつ延びているので、正面12aから熱伝導部材34へ作用した垂直荷重を水平荷重に、分散することができる。従って、シート10Kに着座した人Mnの体重が正面12aから熱伝導部材34へ作用しても、該熱伝導部材34や、該熱伝導部材34とペルチェ素子32との結合部分の耐久性を維持することができる。しかも、熱伝導部材34が傾斜しているので、シートバック12の柔軟性を十分に確保することができる。この結果、シート10Kの座り心地性を一層高めることができる。
該左右の水平部34c,34cは、左右の傾斜部34b,34bの前端からシートバック12の幅方向に延びて、クッション材81の正面81aと表皮82との間に位置している。このため、ペルチェ素子32から熱伝導部材34へ伝わった熱を、該水平部34c,34cから正面12aへ直接的に且つ広範囲に伝えることができる。従って、シート10Kに着座した人Mnを広範囲に冷却又は加熱することができるので、快適性を十分に高めることができる。
クッション材81に形成された埋設凹部24は、前後貫通しており、第1熱伝導板31を埋設するための第1凹部24aと、ペルチェ素子32を埋設するための第2凹部24bと、第2熱伝導板33及び熱伝導部材34を埋設するための第3凹部24cとからなる。該各凹部24a〜24cは互いに連通している。該第3凹部24cの左右の壁面は、左右の傾斜部34b,34bを傾斜状態に支持するように傾斜している。
シートバック12のなかの、少なくともペルチェ素子32の直前(すぐ前。真ん前)の部分には、空隙25が形成されている。例えば、シートバック12は、ペルチェ素子32の正面32aから直前に、深さδの空隙25を有している。なお、該空隙25は、少なくとも正面視でペルチェ素子32の位置に、且つペルチェ素子32の正面32aよりも上位にあればよい。
詳しく述べると、該第3凹部24cには、左右の傾斜部34b,34b間を塞ぐように閉鎖部材26が嵌め込まれている。該閉鎖部材26は、クッション材81と同じ材料によって構成されており、左右の壁面が傾斜している。第3凹部24cに閉鎖部材26が嵌め込まれることにより、左右の傾斜部34b,34bは該第3凹部24cの左右の壁面と該閉鎖部材26の左右の壁面とによって、挟み込まれる。この結果、左右の傾斜部34b,34bは傾斜した状態を維持することができる。
ペルチェ素子32の直前の部分とシートバック12との間に空隙25があるので、シートバック12は、ペルチェ素子32の直前の部分と他の部分とで、後方への弾性変形の違い(クッション性の違い)を吸収することができる。従って、ペルチェ素子32に応力が集中しないので、該ペルチェ素子32の耐久性を一層高めることができる。しかも、着座した人Mnは、底付き感を感じない。この結果、シートバック12の寄りかかり心地性を一層高めることができる。
次に、加熱冷却装置30の作用を説明する。ペルチェ素子32は、正面32aが発熱作用をするとともに背面32bが吸熱作用をしている。正面32aから発せられた熱は、第2熱伝導板33を介して熱伝導部材34に伝わり、さらに水平部34c,34cからシートバック12の正面12aに伝わる。このため、シート10に着座している人Mnの背Ba(例えば腰部)が暖められる。
該ペルチェ素子32に電流を流す極性を変えることにより、該ペルチェ素子32は冷却作用と加熱作用とが切り替わる。つまり、ペルチェ素子32は、正面32aが吸熱作用をするとともに背面32bが発熱作用をする。シートバック12の正面12aの熱は、水平部34c,34cから熱伝導部材34を介して第2熱伝導板33に伝わり、さらに該第2熱伝導板33からペルチェ素子32の正面32aに伝わる。一方、ペルチェ素子32の背面32bから放散された熱は、第1熱伝導板31を介して支持板83から大気に放散される。このため、シート10に着座している人Mnの背(例えば腰部)が冷やされる。
実施例12によれば、上記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例12では、ペルチェ素子32は、シートバック12の背面12c側に位置している。比較的固いペルチェ素子32が背面12cから離れており、しかも、熱伝導部材34が可撓性の部材なので、正面12a(背もたれ面12a)には、いわゆる「ごつごつ感」がない。このため、シート10Kの座り心地性を高めることができる。
さらに、実施例12では、ペルチェ素子32は、シートバック12のなかの、着座した人Mnの背Baの少なくとも一部が当接可能な正面視当接範囲12bに配置されている。熱伝導部材34は、ペルチェ素子32からシートバック12内の正面視当接範囲12bを通り、シートバック12の正面12a(背もたれ面12a)へ向かって延びている。つまり、ペルチェ素子32及び熱伝導部材34の両方が、シートバック12のなかの正面視当接範囲12bに位置することになる。このため、ペルチェ素子32からシートバック12の正面12aまでの、熱伝導部材34の熱伝導の経路が短くてすむ。しかも、シートバック12のなかの寄りかかり不能な部位には、熱を伝達しない。従って、前記熱伝導の経路途中からの熱放散が小さいので、ペルチェ素子32からシートバック12の正面12aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
このように、実施例12は、シート10Kの座り心地性を高めるとともに、ペルチェ素子32からシートバック12の正面12aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
シートバック12の背面12cは、金属製の支持板83によって支えられている。該支持板83の背面83bにペルチェ素子32を設けることが可能である。このような構成とすれば、後向き荷重がシートバック12の正面12aに作用することによる、シートバック12の変形を支持板83によって抑制することができる。該支持板83の背面83bに設けられている各ペルチェ素子32には、後向き荷重が作用しない。従って、ペルチェ素子32の耐久性を、より一層高めることができる。
なお、実施例12では、加熱冷却装置30をシートバック12の正面視当接範囲12bの全体にわたって、1つ又は複数設けることが可能である。また、加熱冷却装置30をシートバック12だけに備えることは任意である。
実施例13に係る加熱冷却式シートについて、図16に基づき説明する。図16は、図13に対応して表されている。実施例13の加熱冷却式シート10Lは、上記図13に示されている実施例11の加熱冷却式シート10Jと実質的に同じ構成である(基本構成が同じである)。該加熱冷却式シート10Lは、シートクッション11Jとシートバック12Jとからなり、例えば自動車等の車両に搭載されている。
実施例13の加熱冷却式シート10Lは、実施例11の加熱冷却装置30を、図16に示されるようにシートバック12Jにも備えたことを特徴とし、他の構成については上記図13に示される構成と同じなので、説明を省略する。該加熱冷却式シート10Lのことを、以下「シート10L」と略称する。
具体的には、実施例13では、シートクッション11Jとシートバック12Jの両方に、それぞれ複数の加熱冷却装置30,30を備えている。シートクッション11Jに備えた複数の加熱冷却装置30は、実施例11と同じ構成である。シートバック12Jに備えた複数の加熱冷却装置30は、該シートバック12Jの内部に埋設されており、シートクッション11Jに備えた加熱冷却装置30と同じ構成である。
具体的には、実施例13のシートバック12Jは、正面12aに対して着座している人の位置(着座位置)がずれた場合であっても、着座している人を効率よく冷却又は加熱するように、複数の加熱冷却装置30を正面12aの例えば下半分に満遍なく配列している。
詳しく述べると、該複数(例えば3つ)の加熱冷却装置30は、シート幅方向に等ピッチで配列されている。全ての加熱冷却装置30は、熱伝導部材34の水平部34c,34cがシート上下方向に位置している。シートバック12Jに対して各加熱冷却装置30を設ける構成については、上記図14及び図15に示される実施例12の構成と同じであり、説明を省略する。
なお、実施例13では、加熱冷却装置30をシートバック12Jの正面視当接範囲12bの全体にわたって、1つ又は複数設けることが可能である。また、加熱冷却装置30をシートバック12Jだけに備えることは任意である。
実施例14に係る加熱冷却式シートについて、図17〜図21に基づき説明する。図17は、図14に対応して表されている。実施例14に係る加熱冷却式シート10Mは、上記図14及び図15に示されている実施例12の加熱冷却式シート10Kと、類似の構成である(基本構成が同じである)。
図17に示されるように、実施例14の加熱冷却式シート10Mは、シートクッション11とシートバック12とからなり、例えば自動車等の車両に搭載されている。該シートクッション11Mは、図1、図2及び図14に示されるシートクッション11に対して実質的に(基本的に)同じ構成なので、同一符号を付して、詳細を省略する。該シートバック12は、図14及び図15に示されるシートバック12に対して実質的に(基本的に)同じ構成なので、同一符号を付して、詳細を省略する。該加熱冷却式シート10Mのことを、以下「シート10M」と略称する。
実施例14の該シート10Mは、シートクッション11に少なくとも1つの加熱冷却装置30Mcを備えるとともに、シートバック12に少なくとも1つの加熱冷却装置30Mbを備えている。例えば、該シートクッション11は、着座面11aに沿って配列された複数(例えば2つ)の該加熱冷却装置30Mcを備える。該複数の加熱冷却装置30Mcの配列方向は、例えばシートクッション11の前後方向である。該シートバック12は、正面12a(背もたれ面12a。前面12a)に沿って配列された複数(例えば2つ)該加熱冷却装置30Mbを備える。該複数の加熱冷却装置30Mbの配列方向は、例えばシートバック12の幅方向である。
図17及び図18に示されるように、シートクッション11に備えた該各加熱冷却装置30Mcは、該シートクッション11のクッション材21に固定されていることを特徴とし、ペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32に結合された熱伝導部材34とによって、該シートクッション11を加熱又は冷却する。
図17及び図20に示されるように、シートバック12に備えた該各加熱冷却装置30Mbは、該シートバック12のクッション材81に固定されていることを特徴とし、ペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32に結合された熱伝導部材34とによって、該シートバック12を加熱又は冷却する。
該シートクッション11に備えた該各加熱冷却装置30Mcと、該シートバック12に備えた該各加熱冷却装置30Mbの、詳細な構成については、上記図14及び図15に示される加熱冷却装置30に対して実質的に(基本的に)同じ構成なので、同一符号を付して、詳細を省略する。以下、該シートクッション11に備えた該加熱冷却装置30Mcのことを、適宜「クッション用加熱冷却装置30Mc」と言い、該シートバック12に備えた該加熱冷却装置30Mbのことを、適宜「バック用加熱冷却装置30Mb」と言う。
先ず、該シートクッション11及び該各クッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcについて、詳しく説明する。
図17〜図19に示されるように、該シートクッション11のクッション材21には、シート下方に開放した溝21bが形成されている。該溝21bは、該2つのクッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcの配列方向に細長い、底面視略矩形状に形成されている。該各クッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcは、溝21bの長手方向に所定のピッチP1だけ離間している。該ピッチP1を適宜に設定することにより、該各クッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcの各ペルチェ素子32,32の温度の、均一化を図ることができる。
該各クッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcは、それぞれ1つのペルチェ素子32と、該ペルチェ素子32の上面32aに重ねられ且つ結合された1つの熱伝導板33(第2熱伝導板33に相当)と、該熱伝導板33の上面に重ねられ且つ結合された1つの熱伝導部材34と、ペルチェ素子32の下面32bに重ねられ且つ結合された1つのヒートシンク35とからなる。
該シートクッション11に組み込まれた状態の該熱伝導部材34の断面形状は、概ね逆ハット状である。つまり、該熱伝導部材34は、ペルチェ素子32の上面32aに重ねられ且つ結合される水平状の基部34aと、該基部34aの左端及び右端から上方へ傾斜しつつ延びる左右の傾斜部34b,34bと、該左右の傾斜部34b,34bの上端から着座面11aに沿って横へ延びる左右の水平部34c,34cとからなる。
該熱伝導部材34は、左右の水平部34c,34cのなかの、シートクッション11の幅方向外側の両端に、下方へ折り返された左右の縁部34d,34dを有する。左右の水平部34c,34cから左右の縁部34d,34dを折り返すことによって、該左右の水平部34c,34cはクッション材21の内部に固定される。このため、該左右の水平部34c,34cは、クッション材21の撓みに追従して、十分に弾性変形をすることができる。しかも、該左右の縁部34d,34dがクッション材21の内部に固定されるので、左右の水平部34c,34cは、該クッション材21から作用する繰り返し荷重に対して、耐久性を確保することができる。さらに、該左右の縁部34d,34dには、補強板36,36が重ねられ且つ結合されている。このため、可撓性を有している該水平部34c,34cの剛性を、補強板36,36によって十分に確保することができる。
該熱伝導部材34の基部34aの上面(表皮22側の面)には、平板状且つ平面視略矩形状の当て板37が、重ねられ且つ結合されている。このため、可撓性を有している基部34aの剛性を、当て板37によって確保することができる。
該熱伝導板33は、溝21bの底面21cに位置し且つ該底面21cに固定されている。このように、該熱伝導板33及び該熱伝導部材34がクッション材21に固定されることによって、該クッション用加熱冷却装置30Mcは、該クッション材21に固定されている。このため、該シートバック12に備えた加熱冷却装置20Mは、該クッション材21の撓みに追従して、十分に変位することができる。
該クッション用加熱冷却装置30Mcのなかの、ペルチェ素子32と熱伝導板33とヒートシンク35とは、溝21bの内部に配置されている。このため、該ペルチェ素子32は、溝21bの底面21c又はその近傍に位置する。その分、シートクッション11の着座面11aに対し、該ペルチェ素子32を近づけることができる。ペルチェ素子32から着座面11aまでの、熱伝導部材34の熱伝導の経路は、短くてすむ。ペルチェ素子32から着座面11aへ熱を伝える熱伝導効率を高めることができる。
該溝21bの下端の開口の、少なくとも一部は、リッド91によって塞がれている。該リッド91は、支持板23の下面23bに、取り外し可能に取り付けられている。好ましくは、図18に示されるように、該リッド91の幅は、該溝21bの溝幅の全体を塞ぐことが可能な大きさに設定される。さらに、好ましくは、図19に示されるように、該リッド91の長さLrは、該溝21bの溝長手方向の両端部21d,21eのみを開放するとともに、該2つの加熱冷却装置30Mc,30Mcの両方を、シート下方から覆うことが可能な大きさに設定される。
図18に示されるように、該溝21bの溝幅Waは、クッション用加熱冷却装置30Mcのなかの、ペルチェ素子32及びヒートシンク35の、幅Wbよりも若干大きい。このため、溝21bとリッド91とによって送風路92を形成することができる。
該リッド91は、該送風路92に連通した1つのファン93を備えている。より詳しく述べると、図19に示されるように、該ファン93は、該各クッション用加熱冷却装置30Mc,30Mcの間(好ましくは中央位置)に位置し、該リッド91に取り外し可能に取り付けられている。該溝21bの両端部21d,21eから流入した外気は、該送風路92を通過しつつ各ヒートシンク35,35と熱交換をした後に、該ファン93から外気へ放散される。このような構成とすることによって、各ヒートシンク35,35から外気への熱放散効率を、一層高めることができる。
次に、シートバック12及び該各バック用加熱冷却装置30Mb,30Mbについて詳しく説明する。
図17に示されるように、該2つのバック用加熱冷却装置30Mb,30Mbは、シート幅方向に所定のピッチP2だけ離間している。該ピッチP2を適宜に設定することにより、該各バック用加熱冷却装置30Mb,30Mbの各ペルチェ素子32,32の温度を均一化を図ることができる。
図20に示されるように、該シートバック12のクッション材81には、該バック用加熱冷却装置30Mbの一部を配置するための凹部81bが形成されている。該凹部81bは、シートバック12の背面12c側に開放している。
該バック用加熱冷却装置30Mbは、上記図18に示されているクッション用加熱冷却装置30Mcに対して、基本的に(実質的に)同じ構成であり、同一符号を付し、説明を省略する。
該バック用加熱冷却装置30Mbは、ペルチェ素子32の一方の面32a(上面32aに相当)がシートバック12の正面12aを向くように、シートバック12に組み込まれている。
シートバック12に組み込まれた状態の該熱伝導部材34は、左右の水平部34c,34cが上下方向に向くように配置されている。つまり、該熱伝導部材34は、シートバック12に対して横向きに組み込まれるので、ペルチェ素子32の一方の面32aに重ねられ且つ結合される基部34aと、該基部34aの両端から前方へ傾斜しつつ延びる一対の傾斜部34b,34b(左右の傾斜部34b,34bに相当)と、該一対の傾斜部34b,34bの前端から着座面11aに沿って延びる一対の延出部34c,34c(左右の水平部34c,34cに相当)とからなると、言い換えることができる。
該一対の傾斜部34b,34bのなかの一方は、該基部34aの上端から上方へ傾斜しつつ前方へ延び、他方は該基部34aの下端から下方へ傾斜しつつ前方へ延びる。該一対の延出部34c,34cは、該一対の傾斜部34b,34bの前端から着座面11aに沿って、互いに相反する方向へ延びる。
該熱伝導板33は、凹部81bの底面に位置し且つ該底面に固定されている。このように、該熱伝導板33及び該熱伝導部材34がシートバック12のクッション材81に固定されることによって、該バック用加熱冷却装置30Mbは、該クッション材81に固定されている。このため、該バック用加熱冷却装置30Mbは、該クッション材81の撓みに追従して、十分に変位することができる。
図20に示されるように、シートバック12に組み込まれる該熱伝導部材34は、2つの水平部34c,34cのなかの、いずれか一方を他方へ向けて折り返された形状に形成されている。一方の水平部34c(例えば、上側の水平部34c)は、折り返される前には、図21に想像線によって示される。つまり、該熱伝導部材34の断面形状は概ね逆ハット状である。この状態の一方の水平部34cは、他方の水平部34c(例えば、下側の水平部34c)の基端へ向かって折り返されることにより、図21の実線に示されるようになる。つまり、該一方の水平部34cの縁部34dは、他方の水平部34cの基端に対向する。
このように、2つの水平部34c,34cのなかの、いずれか一方を他方へ向けて折り返すことにより、シートバック12のクッション材81の正面81aに対する熱伝導位置を変更することができる。
実施例14によれば、上記図14及び図15に示される実施例12と同様の作用、効果を発揮する。
本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施例の構成の一部又は全部を組み合わせることが可能である。