JP6146151B2 - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
従来のポリカーボネート樹脂は、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後に廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
本発明の目的は、上記の問題点を解消し、色相、透明性、耐熱性、耐候性、及び機械的強度に優れ、かつ残存低分子成分や異物の少ないポリカーボネート樹脂を製造する方法を提供することにある。
(1)触媒の存在下、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応により重縮合させ、得られたポリカーボネート樹脂を、ベント口を有する押出機に供給し、ポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法であって、
前記押出機のベント圧力を0.001〜40kPaに制御し、
前記ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物を少なくとも含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(2)前記押出機にて注水脱揮を行い、その注水量が100〜10000ppmであることを特徴とする(1)に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(3)エステル交換反応により重縮合させ得られた前記ポリカーボネート樹脂を、溶融状態で前記押出機に供給する(1)または(2)に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(4)前記押出機のスクリューにローターを具備することを特徴とする(1)乃至(3)
のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(5)前記押出機のスクリューが複数のエレメントから構成されており、該エレメントの少なくとも1つがローターであり、該ローターの合計の長さが、スクリュー全体の長さの10〜30%であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(6)前記押出機のスクリューが複数のエレメントから構成されており、該エレメントの少なくとも1つがニーディングディスクであり、該ニーディングディスクの合計の長さが、スクリュー全体の長さの3〜15%であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(7)前記原料モノマーを、重縮合前に原料濾過フィルターで濾過する(1)乃至(6)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(8)前記押出機を用いて、熱安定剤を混練する操作を行う(1)乃至(7)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(9)前記触媒が、長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である(1)乃至(8)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
(10)前記特定ジヒドロキシ化合物が、イソソルビドである(1)乃至(9)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法は、触媒の存在下、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応により重縮合させ、得られたポリカーボネート樹脂を、ベント口を有する押出機に供給し、ポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法であって、
前記押出機のベント圧力を0.001〜40kPaに制御し、
前記ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物を少なくとも含むことを特徴とする。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法について詳述する。
なお、以下において、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法で製造されたポリカーボネート樹脂を「本発明のポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以下、「特定ジヒドロキシ化合物」と称することがある。)に由来する構造単位を少なくとも含む。即ち、特定ジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、さらに下記式(1)の構造単位を少なくとも含むものを言う。
前記式(1)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は重合反応性が良好であり、得られるポリカーボネート樹脂の機械物性や耐熱性、光学特性なども優れている点において好ましい。
これらの特定ジヒドロキシ化合物の中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性および得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、前記式(2)、(4)又は(5)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物又は前記式(5)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物がさらに好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られる上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物等の無水糖アルコールが、入手及び製造のし易さ、耐候性、光学特性、成形性、耐熱性およびカーボンニュートラルの面から最も好ましい。
化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。前記その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、分岐を有する直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物および芳香族ビスフェノール類等が挙げられる。
前記の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンである。
本発明のポリカーボネート樹脂において、位相差の波長分散性や耐熱性などの所望とする光学特性や機械物性を満足するには、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を25重量%以上、75重量%以下含有することが好ましく、30重量%以上、70重量%以下含有することがより好ましい。
ドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは65重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。一方、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。
安定剤の量が少なすぎると特定ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると特定ジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明で用いるそれぞれのジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
このため、特定ジヒドロキシ化合物又は前記その他のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を含有するものについては、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂又は蒸留等で除去することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造される。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
前記エステル交換反応の際には、エステル交換反応触媒存在下で重縮合を行うが、本発明のポリカーボネート樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度又は重縮合して得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
シド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、50μmol以下が好ましく、より好ましくは40μmol以下であり、さらに好ましくは30μmol以下で、特に好ましくは20μmol以下である。
本発明のポリカーボネート樹脂は、特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られる。
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカー
ボネート樹脂の色相や熱安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
モノマーの揮散を抑制することが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、130〜250℃、好ましくは150〜240℃、更に好ましくは170〜230℃で、1〜110kPa、好ましくは5〜70kPa、さらに好ましくは7〜30kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法では、上述の重縮合反応を行った後、得られたポリカーボネート樹脂を、フィルターを用いて濾過した後、冷却固化する。中でもポリカーボネート樹脂中に含まれる低分子量成分の除去や、熱安定剤等の添加混練を実施するため、重縮合で得られたポリカーボネート樹脂を押出機に導入し、次いで押出機から排出されたポリカーボネート樹脂を、フィルターを用いて濾過することが好ましい。
(1) 濾過に必要な圧力を発生させるために、最終重合反応器からギアポンプやスクリュー等を用いて溶融状態でポリカーボネート樹脂を抜き出し、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、回転式カッター等でペレット化する方法
(2) 最終重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、回転式カッター等でペレット化する方法
(3) 最終重合反応器から溶融状態のままで一軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、一旦ストランドの形態で冷却固化させてペレット化し、該ペレットを再度押出機に導入して溶融押出しした後、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、ペレット化する方法
(4) 最終重合反応器から溶融状態でポリカーボネート樹脂を抜き出し、押出機を通さずにストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、一軸又は二軸の押出機にペレットを供給し、溶融押出しした後、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化する方法
本発明の製造方法では、ベント口を有する押出機を用いることを特徴としている。また、押出機のベント圧力を0.001〜40kPaに制御することを特徴としている。下限としては、ベント圧力が低すぎるとベントアップする恐れがあるため、0.003kPa以上であることが好ましく、0.005kPa以上であることがさらに好ましく、0.01kPa以上であることが特に好ましい。上限としては、ベント圧力が高すぎると色相が悪化する恐れがあるため、30kPa以下であることが好ましく、10kPa以下であることがさらに好ましく、5kPa以下であることが特に好ましい。
、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することもできる。
前記押出機において、十分な脱揮効率を得るためには、押出機の処理条件を表す下記式(A)で示されるθの値が10以上、200以下であることが好ましく、さらに20以上、190以下が好ましく、特に30以上、180以下が好ましい。
dc:前記押出機のシリンダー径[m]
Lv:前記押出機のスクリュー軸方向のベント口の長さ[m]
Q:押出機への樹脂の供給量[kg/hr]
そして、前記スクリューの周速は、前記押出機のスクリュー径と回転数により適宜決定されるが、ポリカーボネート樹脂の剪断による発熱に起因する着色や分子量の低下等の熱劣化を抑制するためには、通常1.0m/秒以下、好ましくは0.6m/秒以下、特に好ましくは0.4m/秒以下である。一方、周速が小さくなりすぎると、真空脱揮時のベントアップを招いたり、脱揮性能や添加剤の分散性能が低下する傾向があるため、通常0.05m/秒以上、好ましくは0.1m/秒以上である。
前記スクリューエレメントの材質としては、表面のニッケル等の含有量を高くして鉄含有量を低く抑えたり、TiNやCrNで表面硬度を高める処理を施したりすることが好ましい。
であることが好ましい。押出機に供給されたポリカーボネート樹脂は、前記スクリューを包む連続したシリンダーを、複数のヒーターで外部から加熱、又は冷却しながら押し出される。このうち、少なくとも一つのヒーター設定温度が240℃以下であることが好ましく、更に好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。このようにヒーターを設定することで、それ以上の温度に樹脂が加熱されている場合はそこで冷却されることになり、ポリカーボネート樹脂が熱によって劣化することを抑制することができる。ヒーターの一部が上記の温度の上限を超えていても本発明は実施可能であるが、過熱をより徹底して防ぐためには、全てのヒーターが上記の240℃以下であることがより好ましい。一方で、ヒーター設定温度は少なくとも100℃以上であることが必要である。押出機バレルに低温すぎる部分があると、そこでポリカーボネート樹脂がバレルと接触する部分で急冷されて粘度が増大し、剪断発熱が大きくなってかえってポリカーボネート樹脂の劣化を促進したり、スクリューを回転させているモーターの負荷が上がったりする場合がある。ヒーターの設定温度は、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは160℃以上である。
本発明においては、溶融重縮合して得られたポリカーボネート樹脂中のヤケやゲル等の異物を除去するために、フィルターによる濾過を行う。このフィルターによる濾過は、残存モノマーや副生フェノール等を減圧脱揮により除去し、熱安定剤や離型剤等の添加剤を混合するために、ポリカーボネート樹脂を前記の押出機で押出した後に行うことが好ましい。
本発明において好適に用いられるフィルターは、保持部材(リテイナーとも言う)に、濾過部材(以下、メディアと言うことがある)を組合せて構成されており、それらフィルターが(場合によっては複数枚・複数個)格納容器に格納されたユニット(フィルターユニットと言うこともある)の形式で用いられる。
って、押出機のスクリュー回転が不安定になったり、モーターの過負荷を招いたり、フィルターを破損したりするため、この樹脂温度は、好ましくは220℃以上、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは240℃以上である。
このように、重合条件、および押出機やフィルター濾過の条件を適正化することにより、フィルターを通過する際のポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の増加量を100重量ppm以下とすることができ、さらに好ましくは80重量ppm以下、より好ましくは60重量ppm以下とすることができる。
られる強度と耐熱性を有している限り制限はないが、好ましくは鉄の含有量が少ないSUS316、SUS316L等のステンレス系である。
また、前記のフィルターの格納容器は、ポリカーボネート樹脂の供給口と排出口が実質的に水平に配置されていても、実質的に垂直に配置されていても、斜めに配置されていてもよいが、フィルター格納容器内でのガスおよびポリカーボネート樹脂の滞留を抑制し、ポリカーボネート樹脂の劣化を防ぐためには、ポリカーボネート樹脂の供給口がフィルター格納容器の下部に、排出口が上部に配置されていることが好ましい。
前記フィルターで濾過されたポリカーボネート樹脂は、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化されるが、本発明において、ポリカーボネート樹脂が直接外気と触れるストランド化、ペレット化の際には、外気からの異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
<リン系化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂には、重合触媒を失活させ、さらに高温下でのポリカーボネート樹脂の着色を抑制するために添加された、リン系化合物を含有することが好ましい。このリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特に亜リン酸が好ましい。
ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂への前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえってポリカーボネート樹脂が着色してしまうため、リン系化合物の添加量は、ポリカーボネート樹脂中のリン原子の含有量が0.1重量ppm以上、8重量ppm以下、特に0.15重量ppm以上、7重量ppm以下、とりわけ0.2重量ppm以上、6重量ppm以下となるような量であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、前記リン系化合物に加えて、ヒンダードフェノール化合物を併用添加することで、得られるポリカーボネート樹脂のさらなる色調の向上が期待できる。
トキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t
ert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3
,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
ヒンダードフェノール化合物の添加量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.001重量部〜1重量部が好ましく、0.005重量部〜0.5重量部がより好ましく、0.01重量部〜0.3重量部がさらに好ましい。
なお、ヒンダードフェノール化合物や以下の酸化防止剤についても、リン系化合物と同様に、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法では、酸化防止の目的で、通常知られている酸化防止剤をポリカーボネート樹脂に添加することもできる。
酸化防止剤としては、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部〜0.1重量部が好ましく、0.0005重量部〜0.08重量部がより好ましく、0.001重量部〜0.05重量部がさらに好ましい。
以下に、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法により製造された本発明のポリカーボネート樹脂の好適な物性について説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.33dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は80℃以上、180℃以下であることが好ましく、さらには90℃以上、160℃以下が好ましく、特に95℃以上、140℃以下が好ましい。ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が低すぎると、高温下や高湿下において成形品が変形するなどして、使用に耐えうる耐熱性を満足できない。一方、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が過度に高いと、成形加工の際に温度を高くせざるを得ず、ポリカーボネート樹脂の分子量低下や着色などの熱劣化を招いたり、ガスの発生により成形品の外観を損ねるおそれがある。なお、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。
前記の重縮合反応において、炭酸ジエステルから脱離成分としてモノヒドロキシ化合物が生成する。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、生成するモノヒドロキシ化合物はフェノールである。炭酸ジエステルと同様にモノヒドロキシ化合物もポリカーボネート樹脂中に多く残存すると、成形加工時に問題を生じることがある。本発明のポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量は700重量ppm以下であり、さらに500重量ppm以下であることが好ましく、特には300重量ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の製造時に、前述の触媒失活剤となる特定のリン系化合物を適量用い、さらに十分に脱揮処理を行うことで、ポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量を低減し、かつ加熱下での発生を抑制することができる。
モノヒドロキシ化合物は重縮合反応中だけでなく、ポリカーボネート樹脂を加熱して成形や加工する時にも、重合反応や熱分解が進行して発生するため、重合後の加熱条件下においても発生を抑制する必要がある。本発明のポリカーボネート樹脂は、260℃で60分間加熱した後のモノヒドロキシ化合物の増加量、即ち、260℃で60分間加熱することで発生するモノヒドロキシ化合物は700重量ppm以下であり、さらには400重量ppm以下であることが好ましく、特には200重量ppm以下であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、以下に記載する二つの条件で射出成形されたプレートのイエローインデックス(YI)値の差が0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。YI値の差が大きくなると、射出成形や押出成形などの溶融加工をする際にポリカーボネート樹脂の着色が大きくなり、透明性や良好や色相を求められる用途への適用が難しくなる。
本発明のポリカーボネート樹脂が前記式(2)で表される特定ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む場合、前記式(2)で表される特定ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位全体に対して、下記式(2A)と(2B)で表される二重結合末端基の含有量が0.4mol%以下であることが好ましく、さらに0.3mol%以下であることが好ましい。下記式(2A)と(2B)で表される二重結合末端基は熱分解によって生成する構造であり、ポリカーボネート樹脂が受けた熱履歴を表す指標となる。この二重結合末端基量が上記上限よりも多いと、重合や成形加工の際に過剰な熱履歴がかかっており、樹脂の色調や耐候性が悪化しやすくなる。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、着色が少なく、異物の少ないポリカーボネート樹脂が得られるため、本発明のポリカーボネート樹脂から押出成形によって得られた厚さ35μm±5μmのフィルムに含まれる25μm以上の異物が、好ましくは500個/m2以下、より好ましくは、300個/m2以下、最も好ましくは200個/m2以下とすることができる。このように異物の少ない特性は、ポリカーボネート樹脂を光学用途に用いる際に特に好適である。なお、ここで、25μm以上の異物とは、上記フィルムをインラインで観察した際の画像において、異物を2本平行線で挟んだとき、この平行線の距離が最も大きくなる、異物の最大長(最大径)に相当する。
次に、図1を参照して、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法の実施形態の一例を具体的に説明する。以下に説明する連続製造装置や原料、触媒等は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は以下に説明する例に限定されるものではない。
図1は、本発明の方法で用いるポリカーボネート樹脂の連続製造装置の一例を示す系統図である。図1に示す製造装置において、ポリカーボネート樹脂は、原料の前記ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを調製する原料調製工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程を経て製造される。重縮合工程で生成した留出液は凝縮器12a、12b、12c、12dにて液化して留出液回収タンク14aに回収される。
尚、以下は、原料のジヒドロキシ化合物としてイソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を、原料の炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート(DPC)をそれぞれ用い、また、触媒として酢酸カルシウムを用いた場合を例示して説明する。ISBは前記の特定ジヒドロキシ化合物に該当する。
図1の製造装置の重縮合工程においては、第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6dが直列に設けられている。各反応器では液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われ、第1竪型攪拌反応器6aの槽底より排出された重縮合反応液は第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて、第3竪型攪拌反応器6cへ、第4横型攪拌反応器6dへと順次連続供給され、重縮合反応が進行する。各反応器における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低攪拌速度となるようにそれぞれ設定することが好ましい。図1の装置を用いた場合、第4横型攪拌反応器6dが本発明における最終重合反応器に相当し、第3竪型攪拌反応器6cが最終重合反応器の一つ前の反応器に相当する。
第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bは、供給熱量が特に大きくなることがあるため、熱媒温度が過剰に高温にならないように、それぞれ内部熱交換器8a、8bが設けられる。
尚、本実施の形態においては、各反応器にそれぞれ取り付けられた凝縮器12a、12b、12c、12dから、フェノール(モノヒドロキシ化合物)等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型攪拌反応器6cと第4横型竪型攪拌反応器6dにそれぞれ取り付けられた凝縮器12c、12dの下流側にはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
内温:130℃〜230℃
圧力:40kPa〜10kPa
加熱媒体の温度:140℃〜240℃
還流比:0.01〜10
(第2竪型攪拌反応器6b)
内温:150℃〜230℃
圧力:40kPa〜8kPa
加熱媒体の温度:160℃〜240℃
還流比:0.01〜5
(第3竪型攪拌反応器6c)
内温:170℃〜230℃
圧力:10kPa〜1kPa
加熱媒体の温度:180℃〜240℃
(第4横型攪拌反応器6d)
内温:200℃〜260℃
圧力:1kPa〜10Pa
加熱媒体の温度:210〜270℃
続いて、前述した4器の反応器6a〜6dの内温と圧力が、それぞれの設定値の±5%の範囲内に達した後に、原料混合槽2aで調製した原料混合溶融液を、第1竪型攪拌反応器6a内に連続供給する。また、原料混合溶融液の供給開始と同時に、第1竪型攪拌反応器6a内に触媒供給口1eから触媒を連続供給し、エステル交換反応を開始する。
エステル交換反応が行われる第1竪型攪拌反応器6aでは、重合反応液の液面レベルは、所定の平均滞留時間になるように一定に保たれる。第1竪型攪拌反応器6a内の液面レベルを一定に保つ方法としては、通常、液面計等で液レベルを検知しながら槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御する方法が挙げられる。
次に、上記前段反応工程で得られたオリゴマーをギアポンプ4bにより移送し、第4横型攪拌反応器6dに供給して、後段反応を行なうのに適した温度・圧力条件下で、副生するフェノールおよび一部未反応モノマーを、留出管11dを介して系外に除去してポリカーボネート樹脂を生成させる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂及びこれを含む樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品とすることができ、色相、透明性、耐候性、耐熱性、及び機械的強度に優れ、残存低分子成分や異物の少ないポリカーボネート樹脂成形品を得ることができる。
以下において、ポリカーボネート樹脂の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
ポリカーボネート樹脂ペレットの色相は、ASTM D1925に準拠して、コニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、反射光で測定を行った。測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットのYIの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定した。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
なお、ペレットYIの数値は、低いほど良い。
ポリカーボネート樹脂試料約1gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解して溶液とした後、総量が25mLになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターで濾過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
なお、モノヒドロキシ化合物の含有量は、少ないほど良い。
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号、および製造元は次の通りである。
<ジヒドロキシ化合物>
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[SKChemical社製]
<炭酸ジエステル>
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
<ヒンダードフェノール化合物>
・Irganox1010:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][BASF社製]
図1に示すように、竪型攪拌反応器3器と横型攪拌反応器1器、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISBとCHDMとDPCをそれぞれタンクで溶融させ、ISBを25.6kg/hr、CHDMを25.3kg/hr、DPCを75.5kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.005)の流量で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した。同時に、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.5μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給した。原料と触媒水溶液を配管で混合した後、第1反応器に入るまでの流路にプリーツ型円筒タイプの原料濾過フィルターを2器設置し、上流側の原料濾過フィルターの目開きを10μm、下流側の目開きを1μmとした。第1竪型攪拌反応器での平均滞留時間が90分となるように、反応器底部の移送配管に設けられたバルブの開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。反応器底
部より排出された反応液は、引き続き第2竪型攪拌反応器、第3竪型攪拌反応器、第4横型攪拌反応器[(株)日立プラントテクノロジー社製2軸メガネ翼]に逐次連続供給された。第1竪型攪拌反応器と第2竪型攪拌反応器は還流冷却器を具備しており、還流比を調節することで、未反応のジヒドロキシ化合物とDPCの留出を抑制した。
表2に記載したスクリュー構成、注水量、ベント圧力とした以外は、実施例1と同様にポリカーボネート樹脂を取得して、前述の方法にてペレットYI、樹脂中のモノヒドロキシ化合物の含有量(残存PHL)を測定した。結果を表2に示す。
1b、1c、1d 原料(ジヒドロキシ化合物)供給口
1e 触媒供給口
2a 原料混合槽
3a アンカー型攪拌翼
4a 原料供給ポンプ
4b、4c、4d ギアポンプ
5a 原料フィルター
6a 第1竪型攪拌反応槽
6b 第2竪型攪拌反応槽
6c 第3竪型攪拌反応槽
6d 第4横型攪拌反応器
7a、7b、7c マックスブレンド翼
7d 2軸メガネ型攪拌翼
8a、8b 内部熱交換器
9a、9b 還流冷却器
10a、10b 還流管
11a、11b、11c、11d 留出管
12a、12b、12c、12d 凝縮器
13a、13b、13c、13d 減圧装置
14a 留出液回収タンク
15a ベント式二軸押出機
15b ポリマーフィルター
16a ストランド冷却槽
16b ストランドカッター
16c 空送ブロワー
16d 製品ホッパー
16e 計量器
16f 製品袋(紙袋、フレコンなど)
Claims (8)
- 触媒の存在下、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換反応により重縮合させ、得られたポリカーボネート樹脂を、ベント口を有する押出機に供給し、ポリカーボネート樹脂ペレットを製造する方法であって、
前記押出機のスクリューにローターを具備し、
前記押出機のベント圧力を0.001〜40kPaに制御し、
前記押出機にて注水脱揮を行い、その注水量が100〜10000ppmであり、
前記ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物を少なくとも含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- エステル交換反応により重縮合させ得られた前記ポリカーボネート樹脂を、溶融状態で前記押出機に供給する請求項1に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記押出機のスクリューが複数のエレメントから構成されており、該エレメントの少なくとも1つがローターであり、該ローターの合計の長さが、スクリュー全体の長さの10〜30%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記押出機のスクリューが複数のエレメントから構成されており、該エレメントの少なくとも1つがニーディングディスクであり、該ニーディングディスクの合計の長さが、スクリュー全体の長さの3〜15%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記原料モノマーを、重縮合前に原料濾過フィルターで濾過する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記押出機を用いて、熱安定剤を混練する操作を行う請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記触媒が、長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 前記特定ジヒドロキシ化合物が、イソソルビドである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
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