以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像処理装置及び磁気共鳴診断装置を説明する。
本実施形態に係る医用画像処理装置は、加温焼灼による温熱治療における治療部位の決定から治療効果判定までの一連の過程において温熱治療を包括的に支援するコンピュータ装置である。本実施形態に係る医用画像処理装置は、磁気共鳴診断装置や超音波診断装置、核医学診断装置において収集された医用画像データを用いて温熱治療を支援する。本実施形態に係る医用画像処理装置は、磁気共鳴診断装置や超音波診断装置、核医学診断装置に組み込まれたコンピュータ装置でも良いし、磁気共鳴診断装置や超音波診断装置、核医学診断装置にネットワークを介して接続されるコンピュータ装置でも良い。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、本実施形態に係る医用画像処理装置は磁気共鳴診断装置に組み込まれているものとする。
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴診断装置1のネットワーク環境を示す図である。図1に示すように、磁気共鳴診断装置1は、撮像機構10と医用画像処理装置30とを含んでいる。撮像機構10は、検査室に設置されている。医用画像処理装置30は、検査室に隣接する制御室に設置されている。図1に示すように、磁気共鳴診断装置1は、ネットワークを介して核医学診断装置100や超音波診断装置200に接続されている。核医学診断装置100や超音波診断装置200は、撮像機構10が設置されている検査室に設置されていても良いし、異なる検査室に設置されていても良い。
図2は、本実施形態に係る磁気共鳴診断装置1の構成を示す図である。図2に示すように、磁気共鳴診断装置1は、撮像機構10と医用画像処理装置30とを有する。撮像機構10は、静磁場磁石11、傾斜磁場電源13、傾斜磁場コイル15、寝台駆動部17、寝台19、送信部21、送信用RFコイル23、受信用RFコイル25、及び受信部27を有する。
静磁場磁石11は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。発生された磁場の均一度が良い空間領域が撮像領域に規定される。静磁場磁石11としては、プロトン密度強調画像やT1強調画像、T2強調画像等のMRI画像を収集可能な7テスラ相当の磁場を発生可能なものが好適である。なお、7テスラという具体的な数字は例示であって、本実施形態に係る静磁場は、7テスラ以外の磁場強度でも良い。静磁場磁石11としては、例えば、永久磁石や超伝導磁石等が使用される。ここで静磁場磁石11の中心軸をZ軸、鉛直方向の軸をX軸、Z軸とX軸とに直交する軸をY軸に規定する。
傾斜磁場電源13は、医用画像処理装置30内のインタフェース部31を介して撮像制御部51から供給される制御信号に従って、傾斜磁場コイル15に電流を供給する。傾斜磁場電源13は、傾斜磁場コイル15に電流を供給することにより、傾斜磁場コイル15から傾斜磁場を発生させる。
傾斜磁場コイル15は、静磁場磁石11の内側に取り付けられる。傾斜磁場コイル15は、傾斜磁場電源13から供給された電流に従って撮像領域に傾斜磁場を発生する。傾斜磁場は、磁気共鳴信号(以下、MRI信号と呼ぶことにする)に位置情報を付加するために発生される。具体的には、傾斜磁場は、スライス選択傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びリードアウト傾斜磁場を含む。スライス選択傾斜磁場は、撮像断面を決めるために印可される。位相エンコード傾斜磁場は、空間的位置に応じた位相変化をMRI信号に与えるために印可される。リードアウト傾斜磁場は、空間的位置に応じた周波数変化をMRI信号に与えるために印可される。
寝台駆動部17は、寝台19上の天板20を長手方向(Z軸方向)に移動するために寝台19を駆動する。具体的には、寝台駆動部17は、撮像制御部51から供給される制御信号に従って寝台19に駆動信号を供給する。
寝台19は、天板20を長手方向(Z軸方向)や上下方向(X軸方向)に移動可能に支持する。寝台19は、寝台駆動部17からの駆動信号の供給を受けて天板20を移動する。天板20には、被検体Pが載置される。通常、天板20の長手方向が静磁場磁石11の中心軸(Z軸)に平行するように寝台19が設置される。天板20は、静磁場磁石11内側の空洞(ボア)内に挿入される。
送信部21は、被検体P内に存在する対象原子核を励起するための高周波磁場を送信用RFコイル23を介して被検体Pに送信する。具体的には、送信部21は、送信用RFコイル23を介して撮像制御部51から供給される制御信号に従って、対象原子核を励起するための高周波信号(RF信号)を送信用RFコイル23に供給する。より詳細には、送信部21は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、及び高周波電力増幅部等を装備する。発振部は、対象原子核に固有の共鳴周波数で振動するRF信号を発生する。位相選択部は、発生されたRF信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相が選択されたRF信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数が変換されたRF信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅が変調されたRF信号を増幅する。増幅されたRF信号は、送信用RFコイル23に供給される。
送信用RFコイル23は、傾斜磁場コイル15の内周側に配置される。送信用RFコイル23は、送信部21から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。発生された高周波磁場は、対象原子核に固有の共鳴周波数で振動し、対象原子核を励起させる。
受信用RFコイル25は、傾斜磁場コイル15の内周側に配置される。受信用RFコイル25は、励起された対象原子核から発生される電磁波を電磁気的に検出し、検出された電磁波のエネルギーに応じたアナログの電気信号を生成する。生成された電気信号はMRI信号と呼ばれている。MRI信号は、受信部27に供給される。
受信部27は、励起された対象原子核から発生される電磁波のエネルギーに応じたMRI信号を受信用RFコイル25を介して受信する。具体的には、受信部27は、インタフェース部31を介して撮像制御部51から供給される制御信号に従って、受信用RFコイル25からのMRI信号を受信する。そして受信部27は、受信されたアナログのMRI信号を信号処理してデジタルのMRI信号を生成する。より詳細には、受信部27は、増幅部、検波部、及びA/D変換部等を内蔵する。増幅部は、受信用RFコイル25からのMRI信号を増幅する。検波部は、増幅されたMRI信号を検波する。A/D変換部は、検波されたMRI信号をA/D変換し、デジタルのMRI信号を生成する。
医用画像処理装置30は、インタフェース部31、再構成部33、記憶部35、抽出部37、画像合成部39、表示画像発生部41、関心領域設定部43、画像処理部45、表示部47、操作部49、撮像制御部51、外部機器接続部53、及びシステム制御部55を有している。
インタフェース部31は、傾斜磁場電源13、寝台駆動部17、送信部21、及び受信部27に接続される。インタフェース部31は、これら傾斜磁場電源13、寝台駆動部17、送信部21、及び受信部27と医用画像処理装置30との間で送受信される各種信号を医用画像処理装置30に入力したり、医用画像処理装置30から出力したりする。
再構成部33は、受信部27からインタフェース部31を介して供給されたMRI信号を再構成処理してMRI画像を発生する。MRI画像としては、例えば、T1強調画像、T2強調画像、プロトン密度強調画像等の形態情報に関するMRI画像(以下、MRI形態画像と呼ぶ)が挙げられる。MRI形態画像は、被検体に注入された磁性粒子を含む造影剤に関する画素領域(以下、磁性粒子領域と呼ぶ)を含んでいる。また、MRI画像に基づいて撮像領域内の温度の空間分布を表現するMRI画像(以下、温度モニタ画像と呼ぶ)が発生されても良い。なお、本実施形態においてMRI画像は、3次元構造を有するボリュームデータであっても良いし、2次元構造を有するスライスデータであっても良い。しかしながら、以下、説明を具体的に行なうため、MRI画像は、ボリュームデータであるとする。
記憶部35は、種々の画像を記憶する。例えば、記憶部35は、再構成部33により再構成されたMRI画像、他の画像診断装置により同一の被検体を撮像することにより発生された医用画像(以下、他モダリティ画像と呼ぶ)を記憶する。典型的には、他の画像診断装置による撮像時においても、被検体には治療部位に対する造影効果を有する造影剤が注入されているものとする。従って、他モダリティ画像は、被検体に注入された造影剤に関する画素領域(以下、造影剤領域と呼ぶ)を含んでいる。他の画像診断装置としては、PET装置や超音波診断装置が適当である。
抽出部37は、MRI画像から画像処理により磁性粒子領域を抽出する。抽出方法としては、閾値処理や画素値分布、幾何学的形状を利用した既存の処理が適用可能である。抽出された磁性粒子領域は、画像合成に利用される。
画像合成部39は、複数の画像に位置合わせ処理を施し、位置合わせ処理が施された複数の画像に合成処理を施すことにより合成画像を発生する。例えば、画像合成部39は、MRI形態画像と他モダリティ画像との合成画像(以下、MR−他モダリティ合成画像と呼ぶ)を発生する。また、画像合成部39は、磁性粒子領域とMR−他モダリティ合成画像との合成画像(以下、磁性粒子合成画像と呼ぶ)を発生する。画像合成部39は、具体的には、MRI形態画像と他モダリティ画像と磁性粒子領域とを装置内座標系に基づいて空間的に同一位置に配置し、予め設定された合成表示条件に従って合成する。
表示画像発生部41は、磁性粒子領域が強調された2次元の表示画像を、磁性粒子合成画像に基づいて発生する。具体的には、表示画像発生部41は、磁性粒子合成画像に含まれる磁性粒子領域に既定のRGB(赤,緑,青)のカラー値を割付ける。次に表示画像発生部41は、カラー値が割付けられた磁性粒子合成画像に3次元画像処理を施し、磁性粒子領域が強調された2次元の表示画像を発生する。3次元画像処理としては、例えば、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、MPR(multi-planar reconstruction)等が挙げられる。画素値投影処理としては、典型的には、最大値投影法(MIP:maximum intensity projection)が採用されるとよい。なお、カラー値の割付は、3次元画像処理前でなく、3次元画像処理後に行われても良い。
関心領域設定部43は、ユーザにより操作部49を介してなされた指示又は画像処理に従って表示画像上に関心領域を設定する。関心領域は、治療部位の加温焼灼の対象領域として設定されたり、画像処理部45による解析の対象領域として設定されたりする。加温焼灼の対象領域としての関心領域を加温焼灼領域と呼ぶことにする。加温焼灼領域の位置は、ユーザにより操作部49を介して適宜移動可能である。加温焼灼領域に対応する被検体の局所部位が磁気共鳴診断装置1等により加温焼灼される。なお、加温焼灼するための装置は、磁気共鳴診断装置1に限定されず、超音波診断装置200や電磁波照射装置等の他の外部機器であっても良い。
画像処理部45は、画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理部45は、関心領域に限定して磁性粒子の密度に関連する指標値を、関心領域内の画素の画素値に基づいて算出する。
表示部47は、表示画像等を表示機器に表示する。例えば、表示部47は、表示画像上の磁性粒子領域を強調して表示画像を表示する。また、表示部47は、表示領域上の関心領域を強調して表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
操作部49は、入力機器を介したユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切り替えスイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等が適宜利用可能である。
撮像制御部51は、ユーザによる操作部49を介した指示に従うパルスシーケンスで被検体PをMR撮像するために、傾斜磁場電源13、送信部21、及び受信部27を制御する。本実施形態に係るパルスシーケンスとしては、例えば、形態情報を収集するための通常のパルスシーケンスの他に、温度計測のためのシーケンスや加温焼灼のためのシーケンスも実行可能である。
外部機器接続部53は、核医学診断装置100や超音波診断装置200、その他の外部機器にネットワークを介して接続されている。その他の外部機器としては、例えば、磁気共鳴診断装置1や超音波診断装置200に代えて治療部位を加温焼灼するための電磁波照射装置などである。外部機器接続部53は、核医学診断装置100や超音波診断装置200、その他の外部機器との間でデータを送受信する。
システム制御部55は、磁気共鳴診断装置1の中枢として機能する。システム制御部55は、温熱治療を支援するためのプログラムに従って各部を制御する。
以下、本実施形態に係る磁気共鳴診断装置1の種々の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態に係る磁気共鳴診断装置1は、核医学診断装置100を併用して温熱治療を支援する。第1実施形態に係る核医学診断装置100としてはPET(positron emission tomography)装置が好適である。
図3は、第1実施形態に係る温熱治療の典型的な流れを示す図である。図3に示すように、まず、PET装置100により患者がPET撮像される(ステップSA1)。PET撮像は、患者の治療候補部位を対象として行われる。PET撮像により収集されたPET生データに基づいて患者に関するPET画像がPET装置100により発生される。PET画像は、PET装置100から磁気共鳴診断装置1に送信され、記憶部35に記憶される。医師や技師等のユーザは、PET画像等を参照し、治療部位を診断し、治療方針を決定する(ステップSA2)。
決定された治療方針に従って温熱治療が実行される。まず、ユーザは、磁性ナノ粒子を含むMR造影剤を、ステップSA1においてPET撮像された患者に注入する(ステップSA3)。磁性ナノ粒子は、常磁性を有する微小な金属粒子である。磁性ナノ粒子は、MR撮像における造影効果を有している。磁性ナノ粒子としては、例えば、ガドリニウムが好適である。造影剤は、この磁性ナノ粒子と癌組織等の病巣部に特異的に集積する薬剤とが混合されてなる。造影剤は、病巣部に直接的に注入されても良いし、病巣部の近隣の血管から注入されても良い。なお、本実施形態に係るMR造影剤に含まれる磁性粒子のサイズは、ナノオーダに限定されず、ナノオーダよりも小さい又は大きいサイズであっても良い。
なお、温熱治療は、PET撮像後、所定日数経過後に行われても良いし、同日に行われても良い。
患者に造影剤が注入されると、磁気共鳴診断装置1により患者がMR撮像される(ステップSA4)。ステップSA3において磁気共鳴診断装置1は、プロトン密度強調画像やT1強調画像、T2強調画像等のMRI形態画像を収集可能なパルスシーケンスを実行すればよい。MR撮像において撮像制御部51は、所定のパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源13、送信部21、及び受信部27を制御する。撮像制御部51による制御に従って受信部27は、受信用RFコイル25を介してMRI信号を受信する。再構成部33は、MRI信号に基づいて患者に関するプロトン密度強調画像やT1強調画像、T2強調画像等のMRI形態画像を発生する。MRI形態画像は、患者に注入された磁性ナノ粒子に対応する磁性ナノ粒子領域を含んでいる。
MR撮像が行われると磁気共鳴診断装置1は、MRI形態画像とPET画像と磁性ナノ粒子領域との合成画像(以下、磁性ナノ粒子合成画像と呼ぶ)を発生し、磁性ナノ粒子領域を強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を表示する(ステップSA5)。以下、図4を参照しながらステップSA5の処理について説明する。
図4に示すように、PET画像IPとMRI形態画像IMとが画像合成部39により読み出される。PET画像IPは、PET造影剤の濃度分布を表現する機能画像である。PET画像IPは、PET造影剤に対応する画素領域(以下、PET造影剤領域と呼ぶ)RPを含んでいる。MRI形態画像IMは、プロトン密度やT1緩和時間、T2緩和時間等に依存するMRI信号の空間分布を表現する形態画像である。MRI形態画像IMは、磁性ナノ粒子領域を含んでいる。画像合成部39は、MRI形態画像IMとPET画像IPとを位置整合して合成しMR−PET合成画像IG1を発生する。MR−PET合成画像IG1の発生処理に並行して抽出部37は、MRI形態画像IMから磁性ナノ粒子領域RMを既存の画像処理により抽出する。画像合成部39は、MR−PET合成画像IG1と磁性ナノ粒子領域RMとを位置整合して重ね合わせて磁性ナノ粒子合成画像IG2を発生する。
磁性ナノ粒子合成画像が発生されると表示画像発生部41は、磁性ナノ粒子合成画像に3次元画像処理を施して2次元の表示画像(磁性ナノ粒子合成表示画像)を発生する。第1実施形態において3次元画像処理は、ボリュームレンダリング画像やMPR画像が好適である。表示部47は、磁性ナノ粒子領域を視覚的に強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を表示する。例えば、表示画像発生部41は、磁性ナノ粒子合成画像に基づいてアキシャル断面画像、サジタル断面画像、コロナル断面画像、及びボリュームレンダリング画像が発生する。そして表示部47は、図5に示すように、磁性ナノ粒子領域を強調してアキシャル断面画像、サジタル断面画像、コロナル断面画像、及びボリュームレンダリング画像を並べて表示する。
磁性ナノ粒子合成表示画像が表示されるとユーザは、画像上における磁性ナノ粒子領域の位置等から、癌組織等の治療候補部位に造影剤が集積していることを確認する。
その後、関心領域設定部43は、ユーザによる操作部49を操作することにより磁性ナノ粒子合成表示画像を介して磁性ナノ粒子合成画像、MR−PET合成画像、または、MRI画像に加温焼灼領域を設定する(ステップSA6)。具体的には、ユーザは、操作部49を介して磁性ナノ粒子合成表示画像上で加温焼灼領域の候補領域の位置及び範囲を指定する。表示部47は、指定された位置及び範囲にマーク(以下、ROIマークと呼ぶ)を重ねて表示する。ユーザにより操作部49等を介して確定操作がなされると、関心領域設定部43は、磁性ナノ粒子合成画像、MR−PET合成画像、または、MRI画像に、ROIマークに対応する位置及び範囲に加温焼灼領域を設定する。加温焼灼領域は、球形状や立方体形状等の任意の3次元幾何学形状であっても良い。加温焼灼領域の形状は、ユーザにより操作部を介して任意に設定可能である。加温焼灼領域は、一つであっても良いし、複数あっても良い。
加温焼灼領域の設定を支援するため、画像処理部45は、磁性ナノ粒子の密度に関連する指標値を、関心領域内の画素の画素値に基づいて算出することができる。このような指標値(以下、密度指標値と呼ぶ)としては、磁性ナノ粒子の個数、磁性ナノ粒子の密度、温熱効果値等が挙げられる。磁性ナノ粒子の個数は、個々の磁性ナノ粒子領域の幾何学的形状に従って磁性ナノ粒子領域を計数することにより計算される。磁性ナノ粒子の密度は、磁性ナノ粒子領域の個数を関心領域の体積で除することにより計算される。温熱効果値は、加温焼灼による熱しやすさを示す指標値である。温熱効果値は、磁性ナノ粒子とMR磁場条件とに基づいて計算される。算出された密度指標値は、表示部47により表示される。表示部は、例えば、密度指標値の数値を表示する。なお、表示部47は、密度指標値を数値で表示するのではなく、密度指標値に応じた色でROIマークを表示しても良い。例えば、図6に示すように、温熱効果値を3段階等の複数段階に区分し、各段階に予め割り当てられた赤色、青色、黄色等の色でROIマークが表示されると良い。また、他の計測値から温熱効果値をシミュレーションできる場合、表示部47は、シミュレーションで得られた値を表示しても良い。このように、密度指標値を表示することで、ユーザは、密度指標値を考慮してより適切に加温焼灼領域の位置及び範囲を決定することができる。
加温焼灼領域の設定を支援するため、表示部47は、磁性ナノ粒子合成表示画像に神経束に対応する画素領域(以下、神経束領域と呼ぶ)を位置整合して重ねて表示しても良い。神経束領域は、予め発生された神経画像から抽出部37により抽出される。神経画像は、磁気共鳴診断装置により被検体の治療候補部位をMR撮像することにより発生された拡散強調画像に線維追跡技術(トラクトグラフィとも呼ばれる)を施すことにより発生され、予め記憶部35に記憶されている。神経画像の各ボクセルのボクセル値は、拡散に関する指標値に対応する。拡散に関する指標値としては、例えば、ADC(apparent diffusion coefficient)やFA(fractional anisotropy)、RA(relative anisotropy)、VR(volume ratio)等が利用されている。線維追跡技術は、拡散テンソルの最大固有値に対応する固有ベクトルが示す方向にあるボクセルを追跡する方法である。神経束が加温焼灼により熱せられると被検体に危険が及ぶ恐れがある。従って表示部47は、磁性ナノ粒子合成表示画像に神経束領域を重ねて表示する。これによりユーザは、神経束の分布を考慮して加温焼灼領域の位置及び範囲を決定することができる。
また、加温焼灼領域の設定を支援するため、表示部47は、種々のデータを位置整合して磁性ナノ粒子合成表示画像に重ねて表示しても良い。例えば、表示部47は、神経束領域の他に、癌組織の悪性度を評価した情報等を磁性ナノ粒子合成表示画像に重ねて表示しても良い。癌組織の悪性度は、例えば、癌組織領域に入り込む神経束領域の数や神経束領域の画素数等により評価される。癌組織領域の悪性度を簡便に把握するため、表示部47は、悪性度に応じた色で癌組織領域を表示すると良い。さらに、加温焼灼領域の設定を支援するため、画像処理部45は、磁性ナノ粒子領域や神経束領域、癌組織の悪性度を評価した情報の画像上の重複度を画素毎に計算する。重複度が高い場合、医学的に危険である可能性が高い。従って表示部47は、重複度を表示すると良い。例えば、表示部47は、重複度に応じた色で画素を表示すると良い。これによりユーザは、重複度の高い領域を磁性ナノ粒子合成表示画像で容易に確認することができる。
ステップSA6においては、加温焼灼領域が設定されるとしたが、発熱温度の上限や一度に焼灼する大きさ、焼灼する順番等の他の焼灼条件が、ユーザにより操作部49を介して設定されても良い。
加温焼灼領域等の焼灼条件が設定されると、この加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に限局して加温焼灼が行われる(ステップSA7)。この局所部位は、磁性ナノ粒子が集積している。加温焼灼により局所部位に集積した磁性ナノ粒子が熱せられることにより、磁性ナノ粒子が集積している病巣部が焼灼される。加温焼灼は、磁気共鳴診断装置1または他の治療用装置により行われる。磁気共鳴診断装置1による加温焼灼方法として、例えば、局所励起法が知られている。局所励起法を使用する場合、撮像制御部51は、焼灼条件に従って任意の一定時間、加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に限局してRF信号のエネルギーが最も印加されるように、送信部21に局所励起パルスを送信させる。なお、磁気共鳴診断装置1による加温焼灼法は、局所励起法のみに限定されない。磁気共鳴診断装置1による他の加温焼灼方法として、例えば、多重送信(multi transmit)法が知られている。多重送信法を使用する場合、撮像制御部51は、複数の送信用RFコイル23の各々からRF信号を送信させる。この際、撮像制御部51は、加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位にRF信号のエネルギーが最も印加されるように、送信されるRF信号の位相を制御する。加温焼灼のための他の装置としては、超音波診断装置200や電磁波照射装置等が知られている。超音波診断装置200を使用する場合、超音波診断装置200は、加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に超音波が集束するように位相制御をして超音波を照射する。電磁波照射装置を使用する場合、電磁波照射装置は、加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位が限局して加温されるように電磁波を照射する。
加温焼灼に並行して磁気共鳴診断装置1は、加温焼灼のモニタリングを行う(ステップSA8)。撮像制御部51は、加温焼灼中、温度モニタのためのパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源13、送信部21、及び受信部27を制御する。磁気共鳴診断装置1により加温焼灼を行う場合、温度モニタのためのパルスシーケンスと加温焼灼のためのパルスシーケンスとが個別に繰り返し行われても良いし、温度モニタのためのパルスシーケンスに、加温焼灼のためのパルスシーケンスが組み込まれても良い。
ステップSA8において再構成部33は、まず、受信部27からのMRI信号に基づいてMRI画像を再構成する。再構成部33は、MRI形態画像の加温焼灼領域内の各画素について画素値に基づいて温度指標値を算出する。表示部47は、MRI画像に基づく表示画像に含まれる加温焼灼領域内の各画素を温度指標値に応じた色で表示する。換言すれば、表示部47は、温度指標値に応じた色が割り付けられた加温焼灼領域を、MRI画像に基づく表示画像に重ねて表示する。例えば、温度が高くなるにつれ青色、黄色、赤色のように変化して加温焼灼領域が表示されると良い。MRI画像に基づく表示画像は、表示画像発生部41により発生される。なお、温度指標値の算出方法としては、信号強度法と位相法とが良く知られている。信号強度法はT1値及びT2値が温度に依存することを利用する方法であり、位相法はプロトンの核磁気共鳴周波数が温度に依存することを利用する方法である。本実施形態は、信号強度法および位相法だけでなく、他の算出方法にも適用可能である。なお、加温焼灼のモニタリングにおいてMRI画像は、プロトン密度強調画像やT1強調画像、T2強調画像であっても良いし、拡散強調画像であっても良い。いずれの種類の画像を再構成するかは、温熱治療の対象部位に応じて決定されると良い。この際、表示画像に磁性ナノ粒子領域や神経束領域、癌組織の悪性度を評価する情報等が重ねて表示されると良い。この場合の表示画像としては、例えば、影付きボリュームレンダリング画像やMIP画像などが好適である。
加温焼灼とモニタリングとが行われると磁気共鳴診断装置1やPET装置100により治療効果の判定が行われる(ステップSA9)。治療効果の判定は、加温焼灼の後日に行われる。磁気共鳴診断装置1で治療効果の判定を行う場合、撮像制御部51は被検体をMR撮像し、再構成部33は、MRI画像を再構成する。MRI画像に基づく表示画像は、表示部47により表示される。この際、表示部47は、治療効果の判定のため、加温焼灼前の表示画像と加温焼灼後の表示画像とを表示すると良い。ユーザは、加温焼灼前の表示画像と加温焼灼後の表示画像とを比較読影する。なお、表示画像は、MRI画像に基づく表示画像でも良いし、MR−PET合成画像に基づく表示画像でも良い。
PET装置100で治療効果の判定を行う場合、まず、PET装置100は、被検体をPET撮像し、PET画像を発生し、PET画像を表示する。この際、PET装置100は、治療効果の判定のため、加温焼灼前のPET画像と加温焼灼後のPET画像とを表示すると良い。ユーザは、加温焼灼前のPET画像と加温焼灼後のPET画像とを比較読影する。なお、表示画像は、PET画像でも良いし、MR−PET合成画像に基づく表示画像でも良い。また、PET装置100は、PET画像の加温焼灼領域を構成する画素の画素値と被検体の体重と投与した放射能量とに基づいてSUV(standard uptake value)を算出する。算出されたSUVは、表示部47により表示される。ユーザは、加温焼灼前のSUVと加温焼灼後のSUVとを比較することにより加温焼灼の治療効果を判定することができる。
なお、磁気共鳴診断装置1やPET装置100だけでなく、X線コンピュータ断層撮影装置を利用して治療効果の判定が行われても良い。
かくして第1実施形態によれば、磁気共鳴診断装置1により発生されたMRI画像とMRI画像内の磁性ナノ粒子領域とPET装置100により発生されたPET画像との合成画像に基づく表示画像が、磁性ナノ粒子領域を強調して表示される。これにより、加温焼灼領域の位置決め精度が向上し、ひいては、温熱治療の精度が向上する。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る磁気共鳴診断装置1は、超音波診断装置200を併用して温熱治療を支援する。第1実施形態に係る磁気共鳴診断装置1は、加温焼灼領域の設定のため、MRI形態画像とPET画像との合成画像(MR−PET合成画像)に基づく表示画像を表示していた。第2実施形態に係る磁気共鳴診断装置1は、加温焼灼領域の設定のため、MRI形態画像と超音波画像との合成画像(MR−UL合成画像)に基づく表示画像を表示する。以下、第2実施形態に係る磁気共鳴診断装置1及び医用画像処理装置30について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素及びステップについては、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図7は、第2実施形態に係る温熱治療の典型的な流れを示す図である。図7に示すように、まず、磁気共鳴診断装置1により患者がMR撮像される(ステップSB1)。MR撮像は、MR造影剤が注入された患者の治療候補部位を対象として行われる。MR撮像により収集されたMRI信号に基づいて患者に関するMRI形態画像が発生される。MRI形態画像は、記憶部35に記憶される。ユーザは、MRI画像やX線コンピュータ断層撮影装置により収集されたCT画像やPET装置100により収集されたPET画像等を参照し、治療部位を診断し、治療方針を決定する(ステップSB2)。
決定された治療方針に従って温熱治療が実行される。まず、ユーザは、被検体に超音波造影剤を注入する(ステップSB3)。超音波造影剤は、病巣部に特異的に集積する薬剤が付着された磁性ナノ粒子とナノオーダの気泡剤とを含んでいる。磁性ナノ粒子が気泡剤に付着されていても良いし、気泡剤が磁性ナノ粒子の標識を有していても良い。超音波造影剤は、病巣部の近隣の血管から注入される。
超音波診断装置200は、ユーザにより病巣部近傍の体表に超音波プローブが当てられた状態において、病巣部を含む走査対象領域を超音波で超音波走査する(ステップSB4)。走査モードとしては、例えば、Bモードが好適である。超音波診断装置200は、走査対象領域における超音波造影剤が強調された超音波画像を繰り返し発生する。超音波画像は、磁気共鳴診断装置1に供給される。
なお、温熱治療は、MR撮像後、所定日数経過後に行われても良いし、同日に行われても良い。
超音波走査が行われると磁気共鳴診断装置1は、MRI形態画像と超音波画像と磁性ナノ粒子領域との合成画像(磁性ナノ粒子合成画像)を発生し、磁性ナノ粒子領域を強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を表示する(ステップSB5)。以下、図8を参照しながらステップSB5の処理について説明する。
図8に示すように、超音波画像IUとMRI形態画像IMとが画像合成部39により読み出される。超音波画像IUは、超音波の反射強度の空間分布を表現する形態画像である。超音波画像IUは、超音波造影剤に対応する画素領域(以下、超音波造影剤領域と呼ぶ)を含んでいる。画像合成部39は、MRI形態画像IMと超音波画像IUとを位置整合して合成しMR−UL合成画像IG3を発生する。MR−UL合成画像IG3の発生処理に並行して抽出部37は、MRI画像IMから磁性ナノ粒子領域RMを既存の画像処理により抽出する。画像合成部39は、MR−UL合成画像IG3と磁性ナノ粒子領域RMとを位置整合して重ね合わせて磁性ナノ粒子領域との合成画像(磁性ナノ粒子合成画像)IG4を超音波走査中に即時的に発生する。
磁性ナノ粒子合成画像が発生されると表示画像発生部41は、磁性ナノ粒子合成画像に3次元画像処理を施して2次元の表示画像(磁性ナノ粒子合成表示画像)を発生する。表示部47は、磁性ナノ粒子領域を視覚的に強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を超音波走査中に即時的に表示する。超音波画像IUが重ね合わされることによりユーザは、超音波造影剤の流入具合を即時的に観察することができる。そのため、超音波造影を適切な量だけ被検体に注入することができる。磁性ナノ粒子合成表示画像が表示されるとユーザは、画像上における超音波造影剤領域や磁性ナノ粒子領域の位置等から、癌組織等の治療候補部位に超音波造影剤が集積していることを確認する。表示部47は、集積度合いをより明瞭に視認可能にするため、超音波造影剤領域や磁性ナノ粒子領域を密度指標値に応じた色で表示すると良い。
また、表示部47は、超音波画像とMRI形態画像に基づく表示画像とを並べて表示しても良い。この場合、超音波プローブの動きに応じて表示画像の断面が追従されると良い。追従機能を実行する場合、ユーザは、超音波画像と表示画像との各々に解剖学的に同一な点(注目点)を指定する。表示画像発生部41は、超音波プローブの動きに応じて、超音波走査面に対応するMRI形態画像内における断面の位置を計算する。そして表示画像発生部41は、計算された位置の断面に関するMPR画像をMRI形態画像に基づいて発生する。これにより超音波走査面の位置に連動してMPR画像の断面位置を追従させることができる。発生されたMPR画像は、超音波画像と並べて表示される。そして、ユーザは、操作部49を操作することにより表示画像上に加温焼灼領域の位置を指定する。
その後、関心領域設定部43により、ユーザによる操作部49を介した指示に従って、磁性ナノ粒子合成画像、MR−UL合成画像、または、MRI形態画像に加温焼灼領域が設定される(ステップSA6)。加温焼灼領域が設定されると、この加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に限局して加温焼灼が行われる(ステップSA7)。加温焼灼に並行して磁気共鳴診断装置1により、加温焼灼のモニタリングが行われる(ステップSA8)。加温焼灼とモニタリングとが行われると磁気共鳴診断装置1やPET装置100により治療効果の判定が行われる(ステップSA9)。
かくして第2実施形態によれば、磁気共鳴診断装置1により発生されたMRI画像と磁性ナノ粒子領域と超音波診断装置200により発生された超音波画像との合成画像に基づく表示画像が、磁性ナノ粒子領域を強調して表示される。これにより、加温焼灼領域の位置決め精度が向上し、ひいては、温熱治療の精度が向上する。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る磁気共鳴診断装置は、PET装置と超音波診断装置との両方を併用して温熱治療を支援する。以下、第3実施形態に係る磁気共鳴診断装置及び医用画像処理装置について説明する。なお以下の説明において、第1及び第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図9は、第3実施形態に係る温熱治療の典型的な流れを示す図である。図9に示すように、まず、磁気共鳴診断装置1により患者がMR撮像され、PET装置100により同一患者がPET撮像される(ステップSC1)。MR撮像は、MR造影剤が注入された患者の治療候補部位を対象として行われる。MR撮像により収集されたMRI信号に基づいて患者に関するMRI形態画像が発生される。MRI形態画像は、記憶部35に記憶される。PET撮像は、PET造影剤が注入された患者の治療候補部位を対象として行われる。PET撮像により収集されたPET生データに基づいて患者に関するPET画像が発生される。PET画像は、PET装置100から磁気共鳴診断装置1に送信され、記憶部35に記憶される。
ユーザは、MRI画像やPET画像等を参照し、治療部位を診断し、治療方針を決定する(ステップSC2)。
決定された治療方針に従って温熱治療が実行される。まず、ユーザは、被検体に超音波造影剤を注入する(ステップSB3)。超音波診断装置200は、ユーザにより病巣部近傍の体表に超音波プローブが当てられた状態において、病巣部を含む走査対象領域を超音波で超音波走査する(ステップSB4)。超音波診断装置200は、走査対象領域における超音波造影剤が強調された超音波画像を繰り返し発生する。超音波画像は、磁気共鳴診断装置に供給され、記憶部35に記憶される。
超音波走査が行われると磁気共鳴診断装置1の画像合成部39は、MRI形態画像とPET画像と超音波画像と磁性ナノ粒子領域との合成画像(磁性ナノ粒子合成画像)を発生し、磁性ナノ粒子領域を強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を表示する(ステップSC5)。磁性ナノ粒子合成画像は、超音波走査中に即時的に発生される。磁性ナノ粒子合成画像が発生されると表示画像発生部41は、磁性ナノ粒子合成画像に3次元画像処理を施して2次元の表示画像(磁性ナノ粒子合成表示画像)を発生する。表示部47は、磁性ナノ粒子領域を視覚的に強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を超音波走査中に即時的に表示する。超音波画像IUが重ね合わされることによりユーザは、超音波造影剤の流入具合を即時的に観察することができる。また、MRI形態画像だけでなく、PET画像や超音波診断装置が重ね合わされることでユーザは、様々な情報を考慮して加温焼灼領域の位置を指定することができる。
その後、関心領域設定部43により、ユーザによる操作部49を介した指示に従って、磁性ナノ粒子合成画像、MR−UL合成画像、または、MRI形態画像に加温焼灼領域が設定される(ステップSA6)。加温焼灼領域が設定されると、この加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に限局して加温焼灼が行われる(ステップSA7)。加温焼灼に並行して磁気共鳴診断装置1により、加温焼灼のモニタリングが行われる(ステップSA8)。加温焼灼とモニタリングとが行われると磁気共鳴診断装置1やPET装置100により治療効果の判定が行われる(ステップSA9)。
かくして第3実施形態によれば、磁気共鳴診断装置1により発生されたMRI形態画像とMRI形態画像内の磁性ナノ粒子領域とPET装置100により発生されたPET画像と超音波診断装置200により発生された超音波画像との合成画像に基づく表示画像が、磁性ナノ粒子領域を強調して表示される。これにより、加温焼灼領域の位置決め精度が向上し、ひいては、温熱治療の精度が向上する。
[第4実施形態]
第4実施形態においては、超音波診断装置200により磁性ナノ粒子のモニタリングと加温焼灼とが行われ、磁気共鳴診断装置1により温度モニタが行われ、磁気共鳴診断装置1とPET装置100とを併用して治療効果の判定が行われる。以下、第4実施形態に係る磁気共鳴診断装置1及び医用画像処理装置30について説明する。なお以下の説明において、第1、第2、第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図10は、第4実施形態に係る温熱治療の典型的な流れを示す図である。図10に示すように、まず、PET装置100により患者がPET撮像される(ステップSA1)。ユーザは、PET画像等を参照し、治療部位を診断し、治療方針を決定する(ステップSA2)。決定された治療方針に従って温熱治療が実行される。まず、ユーザは、被検体に超音波造影剤を注入する(ステップSB3)。超音波診断装置200は、ユーザにより病巣部近傍の体表に超音波プローブが当てられた状態において、病巣部を含む走査対象領域を超音波で超音波走査する(ステップSB4)。超音波診断装置200は、走査対象領域における超音波造影剤が強調された超音波画像を繰り返し発生する。超音波画像は、磁気共鳴診断装置1に供給される。超音波走査が行われると磁気共鳴診断装置1は、MRI形態画像と超音波画像と磁性ナノ粒子領域との合成画像(磁性ナノ粒子合成画像)を発生し、磁性ナノ粒子領域を強調して磁性ナノ粒子合成表示画像を表示する(ステップSB5)。
決定された治療方針に従って温熱治療が実行される。まず、ユーザは、被検体に超音波造影剤を注入する(ステップSB3)。超音波診断装置200は、ユーザにより病巣部近傍の体表に超音波プローブが当てられた状態において、病巣部を含む走査対象領域を超音波で超音波走査する(ステップSB4)。超音波診断装置200は、走査対象領域における超音波造影剤が強調された超音波画像を繰り返し発生する。超音波画像は、磁気共鳴診断装置1に供給され、記憶部35に記憶される。その後、関心領域設定部43により、ユーザによる操作部49を介した指示に従って、磁性ナノ粒子合成画像、MR−UL合成画像、または、MRI画像に加温焼灼領域が設定される(ステップSA6)。加温焼灼領域の位置データは、超音波診断装置200に供給される。
加温焼灼領域が設定されると、この加温焼灼領域に対応する被検体内の局所部位に限局して超音波診断装置200により加温焼灼が行われる(ステップSD7)。加温焼灼に並行して磁気共鳴診断装置1により、加温焼灼のモニタリングが行われる(ステップSA8)。加温焼灼と温度モニタとが別々の装置で行われることにより、加温焼灼と温度モニタとを装置の負担なく行うことができる。加温焼灼とモニタリングとが行われると磁気共鳴診断装置1やPET装置100により治療効果の判定が行われる(ステップSA9)。磁気共鳴診断装置1と超音波診断装置200とが同一の部屋にある場合、治療効果判定の結果により、超音波診断装置200により加温焼灼領域の再加熱が行われても良い。
かくして第4実施形態によれば、磁気共鳴診断装置1により発生されたMRI画像とMRI画像内の磁性ナノ粒子領域とPET装置100により発生されたPET画像と超音波診断装置200により発生された超音波画像との合成画像に基づく表示画像が、磁性ナノ粒子領域を強調して表示される。これにより、加温焼灼領域の位置決め精度が向上し、ひいては、温熱治療の精度が向上する。また、超音波診断装置200により加温焼灼が実行され、磁気共鳴診断装置1により温度モニタが実行される。これにより、加温焼灼と温度モニタとを複雑な制御無く容易に並行して実行することができる。
[効果]
上記の説明の通り、本実施形態に係る医用画像処理装置30は、記憶部35、画像合成部39、表示画像発生部41、及び表示部47を有している。記憶部35は、磁性粒子を含む被検体に関し磁気共鳴診断装置により発生されたMRI画像と他の画像診断装置により発生された他モダリティ画像とを記憶する。抽出部37は、MRI画像から磁性ナノ粒子領域を画像処理により抽出する。画像合成部39は、他モダリティ画像とMRI画像と磁性ナノ粒子領域との合成画像を発生する。表示画像発生部41は、合成画像に3次元画像処理を施して合成画像から表示画像を発生する。表示部47は、表示画像に含まれる磁性粒子領域を強調して表示画像を表示する。
上記構成により、本実施形態に係る医用画像処理装置30は、核医学診断装置100や超音波診断装置200により収集された治療候補部位に関する種々の情報をMRI形態画像に重畳して表示することができる。従って本実施形態に係る医用画像処理装置30は、磁気共鳴診断装置1単独の場合に比して、加温焼灼による治療位置の精度を向上することができ、磁気共鳴診断装置1や超音波診断装置200を利用した加温焼灼手段と相まって、効果的な治療を行うことができる。
また、本実施形態によれば、従来に比して低侵襲で、且つ、繰り返し治療を行え、診断〜治療〜経過観察の過程を1台の装置上で全て実現することができる。従って、診断治療技術が飛躍的に向上する。本実施形態により、癌組織等の治療部位を温熱治療するための治療計画の立案、治療の可否の判断、インフォームドコンセントなど、診断治療に必要な多くの情報をユーザや患者に対して提供することができる。これにより磁気共鳴診断装置1の臨床の場での有用性が向上する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。