以下、本発明の超音波治療支援システムの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の超音波治療支援システムの全体構成を図1に示す。図1に示すように、本実施形態の超音波治療支援システムは、超音波装置1と、磁気共鳴撮像(MRI)装置2と、表示装置の1つである術者用モニタ3と、位置検出デバイス4を備えて構成される。超音波装置1には、超音波断層画像を撮像する超音波診断装置と、HIFU治療を施す超音波治療装置の機能が組み込まれている。また、超音波装置1は、超音波装置本体部11と、表示装置の1つである超音波モニタ12と、超音波プローブ13、及び超音波プローブ13の位置検出器を構成するポインタ16を備えて構成されている。
MRI装置2は、例えば、垂直磁場方式永久磁石MRI装置であり、垂直な静磁場を発生させる上部磁石21と下部磁石22、これら磁石を連結するとともに上部磁石21を支持する支柱23、ベッド24、パーソナルコンピュータ25、MRI制御部26、映像記録装置27を含んで構成されている。また、MRI装置2は、領斜磁場をパルス的に発生させる図示しない傾斜磁場発生部と、ベッド24に横臥された静磁場中の患者50に磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器と、患者50からの磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備えている。
パーソナルコンピュータ25には、赤外線カメラ41が検出して算出したポインタ16の位置及び向きの検出情報が、超音波プローブ13の位置及び向きの位置データとして、ケーブル28を介して入力される。パーソナルコンピュータ25は、入力されるポインタ16の位置及び向きの検出情報に基づいて、MRI装置2のMRI画像の位置データに変換し、MRI制御部26へ送信するようになっている。MRI画像の位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映され、新たな撮像断面で取得されたMRI画像は術者用モニタ3に表示されるようになっている。また、MRI画像は映像記録装置27に同時に記録される。ちなみに、ポインタ16は、断層面指示デバイスとして機能する。したがって、例えば、穿刺針などにポインタ16を取り付け、穿刺針のある位置及び向きを常に撮像断面とするように構成することができる。この場合、術者用モニタ3には針を常に含む超音波断層像が表示されることになる。MRI制御部26は、ワークステーションで構成されており、パーソナルコンピュータ25に接続され、MRI装置2の図示しないRF送信器、RF受信器などを制御するようになっている。
また、映像記録装置27には、治療前に取得された患者50の治療部位に係る病変部を含むボリューム画像データが格納されている。つまり、例えば、患者50の体軸に直交するスライス断像画像を体軸方向にずらして取得した2次元画像を複数枚収集したボリューム画像データが格納されている。本実施形態の場合は、MRI装置2で取得したボリューム画像データが格納されているが、本発明はこれに限られず、X線装置、X線CT装置又は超音波装置1により取得したボリューム画像データでよいことは言うまでもない。また、映像記録装置27に格納されたボリューム画像データには、位置検出デバイス4の基準ツール42の座標系に変換された座標データ又は変換可能な座標データが付されている。そして、パーソナルコンピュータ25は、ボリューム画像データに基づいて、周知のボリュームレンダリング法によりボリュームレンダリング画像(以下、三次元画像という。)を生成して、術者用モニタ3に表示するように構成されている。
術者用モニタ3は、図示例では、2つの表示画面3a、3bを備えてなり、モニタ支持部31を介して回転自在にMRI装置2の上部磁石21に支持されており、表示画面の位置及び姿勢を自由に調整できるようになっている。また、表示装置であるGUI(グラフィック・ユーザ・インターフェイス)29がパーソナルコンピュータ25に接続されており、操作者はGUI29のモニタ画面を見ながら超音波治療を実施することができるようになっている。位置検出デバイス4は、2台の赤外線カメラ41と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードと、基準ツール42を含んで構成されている。また、位置検出デバイス4は、支持アーム43を介して姿勢を自由に変えられるように回転自在にMRI装置2の上部磁石21に支持されている。基準ツール42は、3つの反射球44を備え、上部磁石21の側面に設けられている。これにより、位置検出デバイス4は断層面指示デバイスであるポインタ16の位置及び姿勢(向き)を検出し、赤外線カメラ41の座標系とMRI装置2の座標系をリンクさせるようになっている。
超音波装置1の超音波装置本体部11は、MRI装置2を制御するパーソナルコンピュータ25と接続されている。ポインタ16が取り付けられた超音波プローブ13(a、b)の超音波探触子14(a、b)の一方で得られる超音波断層画像を専用の超音波モニタ12に映し出すだけでなく、パーソナルコンピュータ25に転送し、画像処理が行われて術者用モニタ3に映し出すことが可能になっている。なお、断層画像の断層位置は、超音波プローブ13に取り付けられたポインタ16により指示することができ、ポインタ16により検出された位置及び傾きの断層画像が術者用モニタ3に表示される。また、超音波プローブ13はMRI装置2の磁場内でも作動可能なセラミックなどの非磁性体で形成されている。
このように構成される超音波プローブ13は、把持部17bを操作者が手で把持して、所望の位置及び向きに操作できるように形成されている。また、超音波プローブ13の位置及び向きの精度が要求される場合は、周知のマニピュレータのハンド部に超音波プローブ13を把持させて、超音波装置1からの指令によりマニピュレータコントローラが位置及び向きを制御する構成とすることができる。
図2に、超音波装置1の詳細構成を示す。超音波プローブ13は、超音波断層画像を撮像するための超音波を送受信する超音波探触子14と、治療超音波を照射する治療超音波プローブ15とを備えて構成されている。超音波探触子14は、治療超音波プローブ15の中心部に、同軸に取り付けられている。超音波装置本体部11は、治療超音波装置の中核をなす超音波治療制御部を構成するHIFUコントローラ110と、超音波送受信部111と、超音波画像構成部112と、超音波制御部113と、ユーザとのインターフェイスであるコントロールパネル114とを備えて構成されている。超音波送受信部111は、超音波プローブ13の超音波探触子14に接続され、超音波探触子14との間で超音波信号を送受信するようになっている。超音波探触子14により受信された反射エコー信号は超音波画像構成部112に入力されて、二次元超音波画像(Bモード画像)或いは三次元超音波画像(ボリュームレンダリング画像)が構成されるようになっている。超音波画像構成部112で構成された超音波画像は、モニタ12に表示されるようになっている。超音波制御部113は、超音波送受信部111と超音波画像構成部112と、HIFUコントローラ110を制御するようになっている。コントロールパネル114は、超音波制御部113に指示を入力することができるようになっている。HIFUコントローラ110は、患者50に照射する治療超音波のパワー(強度及び時間)を制御するようになっている。
このように構成される超音波装置本体部11は、超音波探触子14から患者50内に超音波を送受信し、受信した反射エコー信号を用いて診断部位についての二次元又は三次元の超音波画像を生成して超音波モニタ12と術者用モニタ3及びGUI29のモニタに表示するようになっている。また、HIFUコントローラ110は、超音波制御部113の指令に基づいて治療超音波プローブ15を介して、患者50の病変部に治療超音波を照射して温熱により変性させて治療を行うように構成されている。
なお、本実施形態では、超音波断層画像を撮像するための超音波探触子14と、治療超音波を照射する治療超音波プローブ15とを別々に設けた例を説明したが、本発明はこれに限らず、同一の振動子を超音波断層画像の撮像用と、治療超音波の照射用に使い分けることもできる。この場合、HIFUコントローラ110は、撮像用として動作させる場合は患者50に照射する超音波パワーを弱め、治療超音波用として動作させる場合は患者50に照射する超音波パワーを強めるように、超音波駆動信号をパルス波又は連続波に切替えるとともに、超音波駆動信号の振幅を制御する。また、本実施形態では、超音波画像装置と超音波治療装置とを1つの超音波装置として構成したが、これらを別々に分けて構成することができる。
図3に、HIFUコントローラ110の詳細構成図を示す。HIFUコントローラ110は、コンピュータをプログラムで作動させて機能を発揮する治療計画策定部117と、治療超音波パワー設定部118と、治療超音波パワー制御部119を備えて構成される。また、HIFUコントローラ110は、HIFU電源部121とHIFUメモリ122と、各部間の信号伝送を行うバス123を備えて構成されている。バス123には、超音波制御部113とMRI装置2のパーソナルコンピュータ25が通信可能に接続されている。HIFU電源部121は、図示していないが、患者50内に治療超音波を照射する治療超音波信号の発生部を備え、治療超音波プローブ15に接続されている。
このように構成されるHIFUコントローラ110は、超音波制御部113からの制御指令に応じて、超音波治療とモニタリングの管理を一緒に行うことができる。例えば、治療計画策定部117において、治療対象領域に治療超音波の集束位置を複数割り付け、複数の集束位置の照射順番と、治療超音波プローブ15の位置及び向きと、移動距離と、治療間隔を予め設定しておくことで、治療開始から治療終了まで自動的に治療超音波の集束位置を移動して治療できるようになっている。
図4に、MRI装置2のパーソナルコンピュータ25に備えられる本実施形態の特徴に係る機能のブロック図を示す。図に示すように、パーソナルコンピュータ25には、MRI画像構成部25aと、MRIパーフュージョン計測部25bと、MRI温度計測部25cと、治療効果判別部25dとを含んで構成され、それらはハードウエアを作動させるプログラムから構成され、MRI制御部26の指令に基づいて作動されるようになっている。
ここで、図5を参照して、HIFUコントローラ110による治療手順の概要を説明する。まず、図5(a)に示すように、治療超音波プローブ15から照射される集束超音波131は、予め設定された1つの集束位置132に集束される。図5(b)に示すように、集束超音波131の1回の照射により温熱変性される三次元領域は、照射深度方向に直交する直径Φが例えば5〜10mmの領域である。なお、実際に温熱変性される三次元領域は、球形ではなく、断面が円形で照射深度方向に少し長円の領域になるが、図示例では球形領域として示している。そして、図5(c)に示すように、集束位置132を二次元及び三次元に順次移動させて、治療対象領域133の全域に集束超音波を照射する。ここで、周知のARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)による焦点可視化を行うことができる(非特許文献2参照)。ARFIによれば、理想的な焼灼領域に対して、生体組織内の実際の影響領域を算出することができるから、三次元計測を行うことで立体的な治療対象領域を算出できる。
Palmeri ML, Wang MH, Dahl JJ, Frinkley KD, et al. Quantifying hepatic shear modulus in vivo using acoustic radiation force.Ultrasound in Medicine & Biology 2008;34:546-58.
ここで、図6を参照して、本システムの超音波治療の誘導支援画像について説明する。患者50は例えば手術台であるベッド24に固定されてMRI装置2の撮像空間に位置され、治療超音波プローブ15を用いて非侵襲治療を行う。まず、用手又はマニピュレータを用いて、治療超音波プローブ15を患者の治療対象領域(例えば、頭部)の外皮に当てる。これにより、位置検出デバイス4の赤外線カメラ41により検出されたポインタ16の位置データに基づいて、超音波装置本体部11は、治療超音波プローブ15の位置及び向きを検出して、超音波探触子14により撮像される超音波断層像の座標データを算出する。パーソナルコンピュータ25はその超音波断層像の座標データに対応するMRI画像を、映像記憶装置27に記憶されているボリューム画像データから切り出す。そして、図6に示すように、アキシャル(Axial)画像、サジタル(Sagittal)画像、コロナル(Coronal)画像の直交3断面画像を含むナビゲーション画像(誘導支援画像)130が術者用モニタ3に表示される。また、術者用モニタ3には、ナビゲーション画像130の一つとしてボリュームレンダリングにより作成した三次元画像を表示させることができる。なお、ナビゲーション画像130は、MRI装置により撮像されたT1強調画像又はT2強調画像等のボリューム画像データから、ポインタ16により指示された治療部位を含む超音波断層像に対応するMR断層像及びボリュームレンダリング画像が用いられる。
パーソナルコンピュータ25又はHIFUコントローラ110の治療計画策定部117は、術者用モニタ3又はGUIモニタに表示される治療部位を含むMRI画像であるナビゲーション画像130に基づいて、治療すべき領域の外縁に、輪郭線を描画させて治療対象領域133を自動設定する。なお、GUI29又はHIFUコントローラ110のコントロールパネル114などの入力装置を介して、治療対象領域133を設定することもできる。また、治療対象領域133の周辺に警告領域134の輪郭線を描画させて設定することができる。なお、ナビゲーション画像130を見て術者が治療対象領域133及び警告領域134の輪郭線を描画させて設定することができる。なお、ナビゲーション画像130上には、例えばパーソナルコンピュータ25の治療超音波プローブ誘導支援の機能により、治療超音波プローブ15の位置及び向きを示す模擬画像135が重畳表示される。また、模擬画像135には、治療超音波プローブ15の集束位置132が表示される。模擬画像135は、これに限らず、矢印と数値の画像により構成することができる。パーソナルコンピュータ25は、例えば、ナビゲーション画像130上の集束位置132が警告領域134内に入った場合にナビゲーション画像130や治療超音波パワーを自動的に変更するようにしている。
HIFUコントローラ110の治療超音波パワー設定部118は、治療超音波集束部位に照射する治療超音波のパラメータを設定するようになっている。すなわち、治療対象領域133の中心あるいは辺縁にかかわらず、治療超音波パワーを一定に設定すると、治療対象領域133の辺縁部に照射した治療超音波により、辺縁部に隣接する正常組織がダメージ等の副作用を受けることがある。一方、治療対象領域133の辺縁に隣接する正常な領域であっても、癌組織などの病変が浸潤していることがある。そこで、治療対象領域133の辺縁に隣接する領域の一定範囲にマージン領域を設定し、マージン領域を含めて治療超音波を照射するようする。マージン領域は、例えば、5mm幅程度、あるいはマージン率(例えば、10%)に設定する。また、マージン領域を含む集束位置に照射する治療超音波のパワーを他の領域よりも下げて設定することができる。
HIFUコントローラ110の治療計画策定部117によって策定された治療計画に従って、操作者は超音波治療の支援画像を見ながら治療超音波プローブ15を患者50の体表面に当接させ、位置及び向きを設定された集束位置132の1つに合わせる。一方、治療超音波パワー制御部119は、治療計画に従って集束位置132ごとにHIFU電源部121を制御して、治療超音波プローブ15の焦点を集束位置132に合わせるとともに治療超音波パワーを制御する。そして、集束位置132に治療超音波を照射して治療を実行する。
図7に、本実施形態の超音波治療支援システムの全体の処理手順のフロー図を示す。特に、本実施形態の超音波治療支援システムでは、HIFU治療によって治療された領域を、GUI29のモニタに表示して可視化するようにしている。すなわち、パーソナルコンピュータ25のMRI画像構成部25aとMRI制御部26は、MRI装置2を用いて三次元ボリューム撮像及び三次元画像の再構成を行ってGUI29のモニタに表示する(S101)。表示された三次元画像から画像処理にて指定される治療必須領域である治療対象領域(セグメンテーション)133を描出する(S102)。次いで、HIFUコントローラ110の治療計画策定部117は、治療対象領域133に対して複数の目標(ターゲット)とする集束位置132を割り付ける。そして、各集束位置132について治療超音波プローブ15の位置及び向きを含むHIFU治療計画を策定するとともに、各集束位置132の治療超音波パワーやしきい値等のパラメータを入力設定する(S103)。このとき、治療対象領域133の治療必須領域だけでなく、治療対象領域133の辺縁部に設定されるマージン領域133aについても、治療超音波パワーやしきい値等のパラメータを入力設定する。これらの設定された領域について、治療超音波プローブ15の設置位置を算出して治療計画の策定を終了する。
次いで、治療計画策定部117により策定された治療計画に従って治療超音波プローブ15の位置及び向きを移動させると、治療超音波プローブ15から照射される治療超音波の経路が描出される(S104)。このとき、患者50の生体情報(例えば:血圧、心拍数、発汗、体温等の異常上昇、あるいは意識の喪失)をモニタリングする装置を患者50装着する。そして、パーソナルコンピュータ25の治療超音波プローブ15を誘導するナビゲーション画像の機能を起動する(S105)。これにより、治療超音波プローブ15の動きに追従してナビゲーション画像130に治療超音波プローブ15の模擬画像135と集束位置132の模擬画像が重畳表示される(S106)。そして、GUI29のモニタに表示されたナビゲーション画像130又は数値情報を用いて、治療超音波プローブ15の焦点を指定される焦点位置に誘導する(S107)。このようにして、GUI29のモニタに表示されたMRIのナビゲーション画像あるいは超音波モニタ12に表示された画像にて、ターゲットの集束位置を確認後(S108)、HIFUによる治療を開始する(S109)。HIFU治療開始にあたって、HIFUコントローラ110の超音波パワー制御部119は、今回治療対象の目標(ターゲット)とする集束位置132が治療対象領域133のどの領域かを判別する。つまり、今回治療対象のターゲットが腫瘍などの治療対象領域133の内のどの位置かを判別し、そのターゲットがマージン領域133aを含む場合を自動的に判定する。そして、ターゲットがマージン領域133aを含む場合は、予め設定された治療超音波パワーに制御する。また、HIFU治療時は、MRI画像によるモニタリングを必ず実施する。
図7のステップS109〜S119の処理は、本実施形態の特徴に係る処理であり、HIFU治療の実施に同期して治療効果(治療済領域又は未治療領域)の判別を自動により高精度及び高解像度で行う処理である。すなわち、ステップS108にて超音波画像やMRI画像にてターゲットの位置を確認後、HIFU治療(S109)に同期してMRIパーフュージョン計測部25bによるMRIパーフュージョン計測(S110)と、MRI温度計測部25cによるMRI温度計測(S111)を同時に実行する。このようにして、HIFU治療とMRIパーフュージョン計測とMRI温度計測のモニタリングを治療終了まで繰り返し、治療超音波のターゲットである集束位置132を含む部位における血流速度と温度の時系列データを求める。次いで、治療後にMRI装置2(又は、超音波診断装置)により、治療効果の確認が行われる(S112)。このステップS112における治療効果確認は、未治療の残治療領域があるかどうか判断する。具体的には、治療前後の画像を取得し、それらの画像から病変部(腫瘍等)の治療前後の差分画像を求めて治療効果判定を行うものであり、治療範囲特定と残治療領域の可視化が可能となる。しかし、S112における治療効果の確認は、精度及び分解能が低いことから、本システムでは、以下に述べるステップS113〜S119の処理を行って、治療効果判別の精度及び分解能を改善している。ステップS113〜S119の処理は、パーソナルコンピュータ25の治療効果判別部25dにより実行される。
(S113:体液の流速による治療効果の解析)
治療効果判別部25dは、MRIパーフュージョン計測部25bによるMRIパーフュージョン計測(S110)によって得られたMRIパーフュージョン画像のデータに基づいて解析されたHIFU照射前後の血流速度を取り込み、HIFU照射前後の血流速度の低下量を三次元的に解析する。なお、血流に限らずリンパ液などの体液の流速を計測して用いることができる。MRIパーフュージョン計測は、周知の技術であるが、次に概要を説明する。血中造影剤に起因するコントラストを特定するために、スピンの位相変化Δψは、磁気感受性Δχと静磁場強度B0、エコータイムTEを使って(1)式で表せる。
Δψ=Δχ・B0・TE (1)
ここで、エコータイムTEを長くすることで、スピンはこの間に十分なディフェイズを受け、コントラストが増強する。実際の撮像は、ダイナミック撮像により、1断面を1〜2秒程度の一定間隔で、連続して撮影する。これにより、HIFU照射前後の血流変化信号変化をとらえて信号強度曲線が作成される。この信号強度曲線より、平均通過時間MTT、血液量CBV、血流量CBFを算出し、これを1画素ごとに全画素について解析を行って、パーフュージョン解析画像が得られる。一般に、虚血により、平均通過時間MTTは延長し、血流量CBFは低下、血液量CBVは一時的に増加後低下する傾向がある。これらのMTTとCBF、CBVを組み合わせて評価することにより、詳細な血流動態情報が得られる。
このようなMRIパーフュージョン画像を用いて、治療効果の解析法の一例を、図8を参照して説明する。図8(a)に示すように、被験者腹部501の対象臓器502に設定されたターゲットに治療超音波プローブ15から治療超音波131を照射する。ターゲットの各部位について計測された血流の信号強度は、血流の流速に相関する。例えば、図8(b)に示すように、ターゲットのA領域504と、B領域505と、C領域506の血流の信号強度をグラフ化する。同グラフの横軸はHIFU治療開始前後の時間を示し、縦軸は血流の信号強度を示す。例えば、HIFU治療開始514の前後において、信号強度511が信号しきい値範囲510の上限から下限を下回るまで低下した場合、ターゲットの血流が損失されたこと、つまり血管が熱変性により狭窄されたことを意味するから、治療完了と判別される。そして、図8(c)のような血流の信号強度の変化が計測された領域を治療済のA領域とする。一方、図8(d)に示すように、信号強度512が最終的に、信号しきい値範囲510の上限と下限の間にとどまった場合、血管が熱変性により一時的に狭窄された後、再び血流が流れ出しているから、治療済又は未治療のどちらにも判断ができない。そこで、図8(d)のような血流の信号強度の変化が計測された領域を不確定領域のB領域と判別する。さらに、HIFU治療が開始されても信号強度513が信号しきい値範囲510の上限を上回ったまま変化しない場合は、血管が狭窄されていない状態であるから、治療が行われていない未治療領域のC領域であると判別する。この判別結果を、MRI画像化すると、図8(b)に示すようなA、B、C領域に分別された画像になる。これらのMRIパーフュージョン計測及びMRIパーフュージョン解析は、パーソナルコンピュータ25に格納されたプログラムにより実行される。
(S114:温度計測による治療効果の解析)
MRIパーフュージョン解析では、図8(b)に示すように、治療済領域A、不確定領域B、未治療領域Cの3領域に判別でき、治療済領域Aと未治療領域Cは、確定することができるが、不確定領域Bについてはパーフュージョン解析では確定できない。そこで、本実施形態では、不確定領域Bについて、MRI温度計測データを用いて治療効果の解析を行う。図9に、本実施形態の温度計測による治療効果を解析する方法を説明する。不確定領域Bに対して、温度計測データにより治療効果確認を行うことができ、さらに不確定領域Bを図9(a)に示すように、治療領域B1と未治療領域B2に分別できる。
すなわち、ターゲットの生体組織のMRI温度計測値が予め設定された温度しきい値611以上に加熱された領域については治療済領域と判別することができ、そうでない領域については未治療領域B2と判別することができる。ここで、MRI温度計測には、周知の技術が適用できるが、例えば特許文献1に記載のプロトンの位相シフトにより、ターゲットの全画素及び全ボクセルに対応する生体組織の温度及びその径時変化を求める。そして、HIFU治療開始後に病変部が加熱により変性される生体組織のMRI温度計測値が、予め設定される温度しきい値611以上に達したか否かを判断する(S115)。この判断で、画素に対応する領域の温度が温度しきい値以上であれば治療済領域B1に判別し(S117)、温度しきい値以下であれば未治療領域B2に判別する(S116)。この未治療領域B2は未治療領域Cとともに、再治療を要する残治療領域に設定される(S118)。すなわち、最終的に、図10(a)、(b)に示すように、1つのターゲットについて、治療済領域702と未治療領域704に判別される。そして、未治療領域704は残治療領域に設定され(S119)、その残治療領域については最初のステップS101に戻って、治療計画の策定から再度HIFU治療が実施される。
以上説明したように、本実施形態によれば、治療超音波が照射された治療部位の組織は熱により変性され、治療が十分に行われた部位は、体液(例えば、血液、リンパ液など)の流路が狭窄されることから体液の流速が大きく低下する。これに対して、治療が行われていない部位は、体液の流路が狭窄されていないから体液の流速がほとんど変化しない。したがって、MRI装置により計測された治療部位のMRIパーフュージョン計測データに基づいて、治療対象領域を含む部位の体液の流速を計測することにより、高精度及び高分解能で治療済領域と未治療領域の判別を自動的に行うことができる。
ところで、治療部位の熱変性の程度によって、体液の流路が一次的に狭窄されて流速が低下しても、時間の経過につれて体液の流路の狭窄が回復して体液が流れることがあり、このような領域については治療済領域と未治療領域の判別精度が低下する。そこで、体液の流速の径時変化によっては治療効果を確定できない不確定領域について、同領域の各部の温度が予め設定された温度しきい値以上に達した領域については治療済領域とし、そうでない領域については未治療領域と判別するようにしたのである。すなわち、治療効果の判定の解析を多重化することにより、高精度及び高分解能で治療済領域と未治療領域の判別を自動的に行うようにしたのである。その結果、治療対象領域の生体組織のみを十分に温熱治療を可能にするとともに、正常組織への侵襲性を最大限に低減することができる。
特に、本実施形態の超音波治療支援システムによれば、治療効果の判定を、MRIパーフュージョン計測により得られる血流速度を解析する第1の解析に加えて、第1の解析により判別された不確定領域についてMRI温度計測により得られる温度に基づく第2の解析を行うことから、言い換えれば解析を多重化したことから、高精度及び高分解能で治療済領域と未治療領域の判別を自動的に行うことができる。なお、MRI温度計測の解析データのみによる治療効果の判別を行わない理由は、温度分解能が低く、画像化した場合の表示温度にバラツキあるためである。したがって、本実施形態のように、血流パーフュージョン解析とMRI温度計測解析からなる2重の解析を行うことにより、治療効果判別の精度を向上させることができる。
また、MRIパーフュージョン計測部25bとMRI温度計測部25cは、治療超音波の照射前後に交互にかつ連続して実行され、体液の流速と温度を時系列に計測する。これにより、治療により生ずる体液の流速変化及び生体組織の温度変化を計測することができ、治療効果の判別に効果的である。
また、HIFUコントローラ110の超音波治療制御部である治療計画策定部117は、治療効果判別部25dにより未治療領域と判別された領域を残治療対象領域として設定し、その残治療領域の治療計画を再度策定するように構成することができる。
図11に、本実施形態のMRIパーフュージョンデータを取得するMRIパーフュージョン計測シーケンスの一例を示す。このシーケンスは、一般的に脳造影パーフュージョンで行われており、その多くはFSEシーケンス(ファストスピンエコー法)を用いている。FSE法は、T2値が信号強度に最も影響される。T2値だけで考えると脳脊髄液をはじめとする液体成分が、軟骨、粘液基質が高く、特に脳脊髄液が最も純水に近く高信号を示す特徴がある。一方、EPI(エコープラナー法)シーケンスを用いた高速撮像の適用もあり、血管中のGdが血管外(脳実質)の局所磁場を乱し、脳実質のプロトンがディフェイズしてT2*強調効果を得るものである。パーフュージョンの原理は、下記の非特許文献2に詳しく書かれているので省略する。図11は、スピンエコータイプのEPIシーケンスを示しており、RFパルス1202、1204の繰り返し時間TR1201において、スライス選択傾斜磁場1205と180度反転パルス1203とスライス選択傾斜磁場1206を印加後に、位相エンコードパルス1210とブリップエンコードパルス1211〜1214の印加の間に、読み取り傾斜磁場1220〜1225を印加してエコー信号を取得する。最終的に直交3軸に対してクラッシャーパルス1207、1215、1226を印加して計測を繰り返す。このMRIパーフュージョン計測シーケンスを実行して得られた信号は、リアルタイムに解析され、MRIパーフュージョン情報1230としてGUI29に表示される。すなわち、図8の解析に従い、A、B、C領域の分類1236に従って分別され、治療対象領域1231について解析されたA領域1233、B領域1235、C領域1232がMRI画像上に重畳表示される。
(非特許文献2) 沖津 他、オープンMRIにおける脳造影パーフュージョンイメージング技術の開発、MEDIX VOL.42 pp48−50
図12に、本実施形態の温度計測データを取得するMRI温度計測シーケンスを示す。このシーケンスは、一般的にグラディエントシーケンスで実施されている。温度計測の原理は、特許文献1又は特許文献2(特開2000−300536号公報)に記載されているので省略する。基本的なパルスシーケンスの構成は、図示のようにRFパルス1302、1303の繰り返し時間TR1301において、スライス選択傾斜磁場1304と位相エンコードパルス1306を印加し、読み取り傾斜磁場1308、1309を印加してエコー信号を取得する。最終的に直交3軸に対してクラッシャーパルス1305、1307、1310を印加して、計測を最初から繰り返す。MRI温度計測で得られた信号は、リアルタイムに解析され、MRI温度計測情報1311としてGUI29のモニタに表示される。モニタ上には、予め設定された温度区分1136に従って温度分布が表示される。図示例では、治療対象領域1312に、35〜40℃の分布領域1132、40〜50℃の分布領域1313、50〜60℃の分布領域1134、60℃を越える分布領域1135が重畳表示され、術者に対して一目で温度分布が分かるような仕組みになっている。
図13に、本実施形態の超音波治療、MRIパーフュージョン計測及びMRI温度計測とMRIデータの処理の時系列を示す。時間経過に伴い、腫瘍1421に対する超音波治療1402〜1407と、MRIパーフュージョン計測1408〜1413と、MRI温度計測1414〜1418を順番に連続して行う。その過程でMRIパーフュージョン計測データはMRI画像1419とMRI温度計測データはMRI画像1420に画像化され、かつデータ解析されて、図8又は図9で説明したようにグラフ化される。そして、前述したように、治療済領域1454及び未治療領域1452、1453が解析結果として表示される。この解析結果1464は、MRI画像1462に重畳表示され、治療対象領域1463との比較が一目で分かるようになっている。
図14に、MRIパーフュージョン計測及びMRI温度計測を同時に実行して、それらの計測データを同時に取得する他の実施形態を説明する。本実施形態のパルスシーケンスは、図11のMRIパーフュージョン計測シーケンスと図12のMRI温度計測シーケンスを組合せ、一度に両方のデータを取得する効率的な方法である。図に示すように、RFパルス1502、1504の繰り返し時間TR1501の間に、スライス選択傾斜磁場1505と位相エンコードパルス1508を印加し、読み取り傾斜磁場1516、1517を印加して温度計測用のエコー信号を取得する。Gp、Grに対してリワインドパルス1509、1518を印加する。次に、180度反転パルス1503とスライス選択傾斜磁場1506の印加後に、位相エンコードパルス1510とブリップエンコードパルス1511〜1514を印加する。ブリップエンコードパルス1511〜1514の印加の間に読み取り傾斜磁場1519〜1524を印加して、パーフュージョン計測のエコー信号を取得する。最終的に直交3軸に対してクラッシャーパルス1507、1515、1525を印加して計測を繰り返す。MRIパーフュージョン計測とMRI温度計測で得られた信号は、それぞれリアルタイムに解析され、MRI温度計測情報1311、MRIパーフュージョン1230としてGUI29のモニタに表示される。図15に、図14のMRIパーフュージョン計測及びMRI温度計測を同時に実行するシーケンスと、超音波治療を行うタイミングを示す。
図16に、超音波装置1とMRI装置2とで交互に撮像したときの断層画像の一例を示す。患者50に対して術者又はマニピュレータが超音波探触子14を当てて治療部位を含む超音波断層画像136を撮像すると、超音波断層画像136が超音波モニタ12と術者用モニタ3に表示される。つまり、パーソナルコンピュータ25が超音波断層画像136に対応するMR断層画像をボリューム画像データから切り出し、前述したように術者用モニタ3にMR断層画像137を表示する。そして、治療部位に応じて術者又はマニピュレータ51が超音波探触子14aを移動させると、これに追従して超音波断層画像136及びMR断層画像137が追従して超音波モニタ12及び術者用モニタ3の表示画像が変わる。また、図示していないが、GUI29のモニタにも同じ画像が表示される。つまり、超音波プローブ13には位置を検出するためのポインタ16が取り付けられているから、位置検出デバイス4によって超音波プローブ13の位置及び向きを検出して、集束位置132の位置に追従して超音波プローブ13の位置決めをする。
このようにして、図16に示すように、超音波探触子14による超音波断層画像136と、同一位置のMR断層画像137を得ることが可能になり、それぞれ交互に撮像を行って画像情報を取得することが可能となる。MRI装置2の高速撮像シーケンスの応用のひとつとして、フルオロスコピー(透視撮像)と呼ばれるリアルタイム動態画像化法が臨床応用されつつある。フルオロスコピーでは、1秒以下程度の周期で撮像と画像再構成を繰り返すことにより、あたかもX線透視撮像のように体内組織の動態抽出や体内に外部から挿入した器具の位置把握に用いることができる動態画像を生成・表示することができる。この応用は三次元高速撮像にも応用されている。
図17に、超音波治療前のシミュレーション時のGUI29のモニタの表示画像例を示す。MRIの3D撮像ボタン901を押下することで、Axial断面画像910、Sagittal断面画像911、Coronal断面画像912、Volume Rendering画像913が再構成される。治療対象領域描出ボタン902を押下することでマウス等のツールにて(又は自動的に)セグメンテーションが行われる(914)。ボリューム情報及びセグメンテーション情報は治療計画情報画面920にも表示される。また、治療計画情報画面920は別視点又は角度から閲覧することもできる。また、治療対象領域(腫瘍領域)921、それらを含むマージン領域924を設定する。ここで、治療パラメータ入力ボタン903を押下することで、それぞれの領域に対する治療パラメータを入力して超音波パワーを設定することができる。実際の治療時には治療の経過を表示することができ、情報画面925に治療経過・生体情報の他にログとして腫瘍領域と治療領域の差も情報としてリアルタイム表示することができる。治療直前には、治療パラメータ入力ボタン903の他に、HIFU治療計画ボタン904を押下し、ターゲット914と治療超音波プローブ15の模擬画像915を表示することで、照射経路916がGUI29のモニタ上に描写される。ここで、治療パラメータ903に応じて模擬画像915及び照射経路916の補正が行われ、結果がGUI29のモニタ上に表示され、その結果はメモリ上に記録される。その他、禁忌情報905(例:不整脈、人工心臓等の患者固有情報)を入力した後、治療開始となる。治療開始ボタン906を押下することで、治療に必要な機器やナビゲーション等の治療支援機能が連動して動作する。
図18に、超音波治療中のGUI29のモニタ上の表示例を示す。治療計画に基づき必要に応じて照射経路を作成又は補正しながら治療を実施する。治療は、生体情報ボタン1002、ナビゲーション画像ボタン1003を用いて画像誘導を行う。生体情報1025には、患者情報や治療装置等の情報詳細が表示される。超音波画像には治療前の画像1011、治療中(リアルタイム)の画像1013、治療後(リアルタイム)の画像1017がそれぞれ表示され、深度や周波数等の各種パラメータだけでなく治療前の治療対象領域1012から治療中の情報と治療前後の情報1017が分かるようになっている。この治療対象領域1012のマージン領域は予め算出したマージン率によって表示されている。ここで、治療直前にARFI(治療予定領域抽出)ボタン1004を押下することで超音波経路1014、ターゲット領域1015が事前に描出される。ターゲット領域1015の周辺部への波及効果(周辺組織へ影響を与える可能性がある領域)情報1016も表示することもできる。これは、生体に間接的に影響する範囲を描写したものであり、正常組織に極力かからないように注意喚起を意味するものである。また、領域情報ボタン1005を押下することで、治療後(リアルタイム)画像1017に各種警告情報を表示することもできる。例えば、既に治療した領域1018を重畳表示し、予定している治療対象領域を越えている場合や、患者に異常が生じた場合には警告を発する機能を自動的にON/OFFする機能を有する警告情報ボタン1006が設けられている。
一方、直交3軸断面のナビゲーション画像1031〜1033が表示されており、超音波プローブ1035の位置をMRI画像上に重畳表示することもでき、さらに術具に応じた治療対象領域(マージン含む)1036も表示することができる。ナビゲーション画像は、画像誘導用と治療用の画像を変更することもできる。また、マージンを含む治療対象領域1037も直交3軸断面のナビゲーション画像1031〜1033に重畳表示することができ、実空間と画像情報を用いて治療をすることなる。治療パラメータは適宜変更することができ、設定状況は一覧表示することも可能である。治療開始ボタン1007に連動して画像情報1008、ログ1009、MRI/US連動ボタン1010がONとなるが、必要に応じて手動でON/OFFすることもできる。この機能により、治療前情報と治療中およびその差分情報(治療経過情報、残治療領域等)が画像情報として表示される。また、ログ情報は、過去に行った治療経過内容を見直すために使用されることとなる。また、治療開始ボタン1007にMRI/US連動ボタン1010を連動させることにより、MRIパーフュージョンや温度計測データを適宜連続して取得することができる。MRI撮像が不要な場合には、超音波B画像にて治療様子をモニタリングすることもできる。
その他、直交3軸断面のナビゲーション画像1031〜1033上には、治療経過画像が表示されており、ナビゲーション画像上における治療対象領域、警告領域に対して、治療済み域及び未治療領域が重畳表示されているほか、直前の治療対象領域が重畳表示されている。HIFU治療計画904の付加機能として、未治療領域に対する治療の経路を算出する機能もあり、未治療領域へのアプローチ経路1038を自動的に算出することもできる。また、MRIガントリ内部で治療を行う場合には、ISCボタン1001を押下することで超音波断層画像と同一断面をMRI装置にて撮像することができ、別画面に表示することもできる。MRI画像上には治療対象領域、マージン領域、ARFIによる治療予定領域が同じように表示され、組織コントラストの異なる画像が表示される。また、長所としては、身体の深部まで画像化できることが挙げられる。これより、術者は直前の治療画像を目視して術具の移動と追加治療を行うことができる。治療前後の情報は超音波画像1017、直交3軸断面のナビゲーション画像1031〜1033及びボリュームレンダリング画像1034、MRI画像の他に、治療情報1025として表示することもできる。
図19に、治療後のMRI画像及び未治療領域をGUI29のモニタに表示する表示例を示す。初期画面として、Axial画像1119に治療対象領域1112に対するHIFU照射のターゲット領域1115が重畳表示されている。この詳細画面は、HIFU照射領域の表示画像1111に治療対象領域1112に対するターゲット領域1113〜1117がそれぞれ表示される。そして、スライドバー1118でスライス断面を変えることにより、ターゲット領域1113〜1117も連動してそれぞれ位置・領域が変更する。
また、MRIパーフュージョンボタン1101を押下することで、MRIパーフュージョン画面1121に、解析結果が表示され、パーフュージョン画像解析ボタン1103を押下することで、パーフュージョン計測データ1127が表示される。そして、図8で説明した解析に従い、A、B、C領域1126に分別され、治療対象領域1112におけるA領域1122、B領域1125、C領域1123がMRI画像上に重畳表示される。表示された領域内の任意の点をマウス等にて指定1124すると、パーフュージョンデータ1127にその点における時系列詳細データが表示される。解析データはHIFU治療開始からの血流を含む信号強度変化であり、指定場所1124のデータ1129がしきい値範囲1128にあるかどうか一目で分かるようになっている。
一方、MRI温度計測ボタン1102を押下することで、MRI温度計測画面1130に、解析結果が表示される。温度計測画像解析ボタン1104を押下することで、温度計測データ1137が表示される。図12に示したように、MRI温度計測情報1311としてGUI29のモニタに表示される。モニタ上には、予め設定された温度区分1136に従って温度分布が表示される。図示例では、治療対象領域1312に、35〜40℃の分布領域1132、40〜50℃の分布領域1133、50〜60℃の分布領域1134、60℃を越える分布領域1135が重畳表示され、術者に対して一目で温度分布が分かるよう仕組みになっている。
また、MRI温度計測データの表示領域1137には、治療開始からの測定データ1138が温度しきい値1139を越えた場合、その領域は治療済領域と判別され、B1領域603として画像上に重畳表示される。次に、治療済/残治療領域描出ボタン1105を押下すると、解析結果から治療済領域1142と未治療領域1112、1141が治療領域(解析結果)画面1140に表示される。術者はこれらの情報を元に追加治療を行うかどうか判断し、必要に応じて追加治療ボタン1107を押下する。これにより、Axial画像1143上に残治療領域1144、治療超音波プローブ15の模擬画像1147、照射経路1146、及び模擬画像1147に対応する仮想のターゲット領域1145が表示され、再治療計画実施後に再治療が開始される。ここでも、治療パラメータに応じて治療超音波プローブ15の照射経路1146の補正が行われ、結果がGUI29のモニタ上に表示され、問題なければ追加治療開始となる。仮に、残治療領域が存在してもさまざまな条件を考慮して追加治療を実施しない場合には、終了ボタン1108を押下して治療終了となる。