JP5900042B2 - 高分子電解質、高分子電解質膜、固体高分子形燃料電池およびイオン性材料 - Google Patents
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Description
炭化水素系電解質膜を用いて、低加湿で高いプロトン伝導性を有するためには、例えば、特許文献1には、液晶骨格を有する材料を用いて、スルホン酸基のネットワ−クを形成させ、低加湿で高いプロトン伝導性を発現させることが記載されている。
本発明の目的は、薄膜化可能な主鎖を有し、加水分解やラジカル耐性に優れた高分子電解質を提供することである。また、本発明の他の目的は上記高分子電解質からなる高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池を提供することである。さらに、本発明の他の目的は上記高分子電解質を得るときに好適なイオン性材料を提供することである。
本発明の請求項3に記載の高分子電解質は、請求項1または2に記載の高分子電解質において、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であることを特徴とするものである。
本発明の請求項4に記載の高分子電解質は、請求項2または3に記載の高分子電解質において、A1が−(CH2)3−、または−(CH2)4−であることを特徴とするものである。
本発明の請求項6に記載の高分子電解質は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質において、高分子電解質のイオン交換容量が2.0×10-3meq/kg以上2.3×10-3meq/kg以下であることを特徴とするものである。
本発明の請求項8に記載の固体高分子形燃料電池は、請求項7に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とするものである。
本発明の請求項9に記載のイオン性材料は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質を得るときに用いるイオン性材料であって、下記化学式で表されるポリマ−化可能な基を有することを特徴とするものである。
本発明の一実施態様に係る高分子電解質は、下記化学式(1)で表される高分子単位を有し、下記化学式(2)で表されるポリマ−化可能な基を有するイオン性材料(以下「モノマー」ということがある。)を重合させることによって得られる。
上記化学式(2)中、A1およびA2はアルキル基、B1は電子求引性基、B2は電子供与性基、Yはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択されるプロトン酸基をそれぞれ示す。X1、X2はそれぞれ独立した塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかである。X1およびX2は同一の原子であっても、異なる原子でもよいが、同一の原子であることが好ましい。
化学式(2)中のA1およびA2で表されるアルキル基は、−(CH2)m−(ただし、mは1以上の整数)であることが好ましく、mが3または4であることが特に好ましい。mが3または4であることによって、その高分子電解質からなる高分子電解質膜の柔軟性を維持しつつ、酸価の高い高分子電解質膜を得ることができる。
[モノマーの製造方法について]
化学式(2)のモノマーを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、A1が−(CH2)4−、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であり、A2が(−CH2)3−、Yがスルホン酸基である場合、以下のようにして合成することができる。なお、A1、B1、A2、Yが上記構成でない場合であっても、以下のような合成方法および公知の合成方法を組み合わせることによって、化学式(2)のモノマーを製造することができる。
次に、上記化合物Aと、下記化学式(4)で表される化合物Bとを反応させ、下記化学式(5)で表される化合物Cを得る。
このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は8時間以上48時間以下であることが好ましく、16時間以上32時間以下であることがより好ましい。
上記化合物Bのモルパーセントは、100mol%の化合物Aに対して、50mol%以上100mol%以下であることが好ましく、80mol%以上100mol%以下であることがより好ましい。
次に、上記化合物Cと塩化チオニルとを反応させ、下記化学式(6)で表される化合物Dを得る。
反応は、反応効率の観点から、窒素雰囲気で行うことが望ましい。上記反応で用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリノンなどが挙げられる。
このときに用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、より好ましくは、アルコ−ル系溶媒であることが望ましい。アルコ−ル系溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノ−ル、1−ブタノ−ルが挙げられる。
また、上記化合物Dと上記化合物Eとを反応させ、その後、スルホン酸基を導入することによっても得られる。このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は8時間以上48時間以下であることが好ましく、16時間以上32時間以下であることがより好ましい。
また、反応を行う雰囲気は特に限定されるものではないが、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
また、このときに用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。触媒のモルパーセントは、100mol%の化合物Dに対して、100mol%以上200mol%以下であることが好ましく、100mol%以上150mol%以下であることがより好ましい。
モノマーの重合は、特に限定されるものではないが、特定の触媒の存在下で反応させることが好ましい。このときに使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、配位子成分、配位子が配位された遷移金属錯体、および還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために塩を添加してもよい。
配位子成分のモルパーメントは、100mol%のモノマーに対して、1mol%以上100mol%以下であることが好ましく、1mol%以上20mol%以下であることがより好ましい。
上記触媒系に使用することのできる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが還元剤として好ましく、これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
また、上記触媒系において使用することのできる塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム化合物が挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムを用いることが好ましい。
また、上記重合の際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
モノマーの重合度、すなわち上記化学式(1)におけるnは、10〜10000であることが好ましく、1000〜10000であることより好ましい。上記範囲であることにより、高分子電解質を溶媒に容易に溶解させることができ、成膜性を良好にすることができる。
このようにして得られた高分子電解質を用いて高分子電解質膜を製造する方法としては、例えば、ポリフェニレン系電解質を溶媒に溶解して溶液とした後、キャスティングにより基材上に塗布することによって高分子電解質をフィルム状に形成する方法や、所定のギャップに制御されたアプリケ−タを用いて塗工することで高分子電解質膜を成膜する方法、ダイコ−タを用いて高分子電解質膜を成膜する方法などが挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
また、このときに用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン系極性溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコ−ル、iso−プロピルアルコ−ル、sEC−ブチルアルコ−ル、tErt−ブチルアルコ−ル等のアルコ−ル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上混合させてもよい。また、これらの溶媒に水を添加したものを用いてもよい。
基材上に形成された塗膜を、好ましくは25℃以上140℃以下、0.1時間以上24時間以下で加熱することで、本発明の高分子電解質膜が得られる。
固体高分子形燃料電池は、一般に、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の両面に設けた空気極側電極触媒層および燃料極側触媒層とからなる膜電極接合体と、空気極側電極触媒層および燃料極側電極触媒層と対向して配置された空気極側ガス拡散層および燃料極側ガス拡散層と、これらを挟持したセパレ−タとから構成される。
本発明の高分子電解質は、薄膜化しても十分な機械強度を有し、耐加水分解性およびラジカル安定性を向上させることができることから、上記固体高分子形燃料電池を構成する高分子電解質膜の材料として用いることができる。また、導電性物質および触媒物質とともに、空気極側電極触媒層または燃料極側電極触媒層を形成することもできる。
以下、本発明の実施例を比較例と比較して説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
14.6×10-3kg(0.1mol)の1,4−ジクロロベンゼンに、13.6×10-3kg(0.1mol)の1−クロロへキサン酸と14.6×10-3kg(0.11mol)の塩化アルミニウムを加え、窒素雰囲気下、1時間撹拌を行った。この反応溶液の有機成分を抽出により回収し、シクロへキサンを用いて再結晶を行った。乾燥後、下記化学式(9)で表される化合物C−1を得た。
得られた化合物C−1(50×10-3kg(0.2mol))に、118.9×10-3kg(1mol)の塩化チオニルと5ミリリットル(5×10-6m3)のメチルホルムアミドを窒素雰囲気下で加え、45℃で4時間加熱撹拌して、下記化学式(10)で表される化合物D−1を得た。
57.5×10-3kg(0.29mol)の4−ヒドロキシベンゾフェノン(化学式(7)で表わされる化合物E)に、141.7×10-3kg(1.16mol)のプロパンスルトン、20×10-3kg(0.5mol)の水酸化ナトリウムおよび200ミリリットル(200×10-6m3)のメタノールを窒素雰囲気下で加え、48時間撹拌した。その後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物を塩酸にて洗いこみ、上記化学式(8)で表わされる化合物Fを得た。
<モノマーの合成>
10×10-3kg(0.038mol)の化合物D−1に、12.2×10-3kg(0.038mol)の化合物F、5.56×10-3kg(0.042mol)の塩化アルミニウムおよび30ミリリットル(30×10-6m3)のジメチルホルムアミドを窒素雰囲気下で加え、60℃で1時間撹拌させて、下記化学式(11)で表わされるモノマーを得た。
得られたモノマー(8.22×10-3kg(14.58mmol))に、1.493×10-3kg(5.692mmol)のトリフェニルホスフィン、0.293×10-3kg(1.953mmol)のヨウ化ナトリウム、1.281×10-3kg(19.59mmol)の亜鉛および0.311×10-3kg(0.475mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリドを
窒素雰囲気下で加え、さらに溶媒として、20ミリリットル(20×10-6m3)のジメチルホルムアミドを加えた。そして、60℃で24時間撹拌して、下記化学式(12)で表わされる実施例の高分子電解質を得た。
<9−ブロモ−1−デセンの合成>
三角フラスコに25×10-3kg(0.16mol)の9−デセン−1−オ−ルを入れた後、100ミリリットル(100×10-6m3)のベンゼンと1.0×10-3kgのピリジンを加え、9−デセン−1−オ−ルを溶解した。次に、43.2×10-3kg(0.16mol)の三臭化リンが溶解した100ミリリットル(100×10-6m3)のベンゼン溶液を氷冷下でゆっくりと滴下した後、室温で18時間撹拌した。その後、反応液を氷水中に注ぎ、300ミリリットル(300×10-6m3)のジエチルエーテルで抽出した。ここで得たエーテル−ベンゼン混合液は無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。求引ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エーテル−ベンゼンを減圧除去し、残渣を減圧蒸留して目的物である9−ブロモ−1−デセンを得た。
0.08mol(3.40×10-3kg)の水酸化ナトリウムを100ミリリットル(100×10-6m3)のエタノールに溶解させた後、0.08mol(14.9×10-3kg)の4,4’−ビフェノ−ルが溶解した100ミリリットル(100×10-6m3)のエタノールに少量ずつ加え、エタノールを減圧除去した。残渣を150ミリリットル(150×10-6m3)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に窒素気流下で加温して溶解させ、A液を得た。次に、上記で調整した9−ブロム−1−デセン(0.072mol(15.8×10-3kg))とフェノチアジン(0.1×10-3kg)を(150×10-6m3)のDMFに溶解させ、B液を得た。
30ミリリットル(30×10-6m3)のN,N−ジメチルホルムアミドL中に0.05×10-3kgのフェノチアジンを重合禁止剤として溶解させた後、0.008mol(1.22×10-3kg)の1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)と0.002mol(0.65×10-3kg)の4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノ−ル、および0.008mol(1.32×10-3kg)の3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウムをさらに溶解させ、窒素雰囲気下、50℃で48時間撹拌した。
488×10-6kg(1×10-3mol)の3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸に、6.6×10-6kg(0.04×10-3mol)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤として窒素雰囲気下で加えた後、4.7ミリリットル(4.7×10-6m3)のジメチルスルホキシドを加えた。その後、60℃で60時間熱重合して高分子量化させた後、アセトンで再沈殿させ、比較例の高分子電解質である3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマ−を得た。
実施例および比較例の高分子電解質をジメチルスルホキシドに溶解させ、ガラスにキャストし、45℃で12時間、80℃で12時間、80℃で1時間真空乾燥させることで、実施例および比較例の高分子電解質膜を得た。
[評価]
<薄膜化>
実施例の高分子電解質膜は、比較例の高分子電解質膜に比較して、ラジカル耐性が高く、薄膜化しても膜電極接合体が作製できる機械強度を有していた。
<フェントン試験>
60℃、3%過酸化水素水溶液、4ppmFE2+中に、実施例および比較例の高分子電解質膜を浸漬させた。その結果、実施例の高分子電解質膜の方が、耐久性を有していることを確認した。
Claims (9)
- 前記A1およびA2が−(CH2)m−(但し、mは1以上の整数)であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
- 前記B1がカルボニル基、前記B2がエーテル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質。
- 前記A1が−(CH2)3−、または−(CH2)4−であることを特徴とする請求項2または3に記載の高分子電解質。
- 前記Yがスルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質。
- 前記高分子電解質のイオン交換容量が2.0×10-3meq/kg以上2.3×10-3meq/kg以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質からなることを特徴とする高分子電解質膜。
- 請求項7に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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