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JP5900042B2 - 高分子電解質、高分子電解質膜、固体高分子形燃料電池およびイオン性材料 - Google Patents

高分子電解質、高分子電解質膜、固体高分子形燃料電池およびイオン性材料 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質膜の材料として用いられる高分子電解質に関する。また、本発明は高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池に関し、さらに上記高分子電解質を得るときに用いるイオン性材料に関する。
固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」ともいう。)は、環境負荷ガスの放出を削減できる動力源として、燃料電池自動車、定置用コジェネレ−ション、携帯電話の電源として研究開発が進められている。PEFCでは、電池内でプロトンの伝導が起こることによって発電反応が進行する。PEFCにおけるプロトン伝導には、水の存在は必須であり、それゆえ、PEFCの発電反応を進行させるためには、加湿器が必要となる。車両などに燃料電池を適用する場合、車載性の観点から、加湿器は小さいことが望まれるため、低加湿下でもプロトン伝導が良好に行われる電解質膜が求められている。ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成社製)に代表されるフッ素系樹脂電解質膜は、低加湿下におけるプロトン伝導性に優れており、PEFCにおいて汎用されている材料である。
しかしながら、フッ素系電解質膜は、フッ素からなる高分子材料であるため、リサイクル性という面で問題を有する。燃料電池自動車の普及を考えた場合、リサイクルできるかどうかという問題は重要であり、リサイクルができない材料の環境への負荷は無視することができない。さらに、フッ素系電解質を単独で電解質膜として適用した場合、耐久性の点で問題がある。したがって、フッ素系電解質膜の代替材料の必要性が高まってきている。
代替材料として炭化水素系電解質の開発が近年行われてきている。炭化水素系材料は、一般的にフッ素系電解質よりも耐久性に優れ、フッ素系樹脂電解質膜の代替として期待される。
炭化水素系電解質膜を用いて、低加湿で高いプロトン伝導性を有するためには、例えば、特許文献1には、液晶骨格を有する材料を用いて、スルホン酸基のネットワ−クを形成させ、低加湿で高いプロトン伝導性を発現させることが記載されている。
特許第4161092号公報
しかしながら、特許文献1に記載のスルホン酸型液晶モノマー材料を高分子量化したスルホン化液晶ポリマ−材料は、主鎖がメタクリル骨格もしくはアクリル骨格のため、薄膜化による性能向上が望みにくく、また、エステル結合を有するため、加水分解による分解反応が進行しやすい。
本発明の目的は、薄膜化可能な主鎖を有し、加水分解やラジカル耐性に優れた高分子電解質を提供することである。また、本発明の他の目的は上記高分子電解質からなる高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池を提供することである。さらに、本発明の他の目的は上記高分子電解質を得るときに好適なイオン性材料を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った結果、主鎖をフェニレン骨格に変更し、耐加水分解性を向上させるため、エステル部位を除去し、かつラジカル耐性を向上させるため、電子求引性基を導入した高分子電解質膜に着目した。具体的には、メソゲン部位の間に電子求引性基であるケトン基を導入し、電子密度を低下させ、ラジカル耐性を向上させた。
本発明の請求項1に記載の高分子電解質は、下記化学式で表される高分子単位を有することを特徴とするものである。
Figure 0005900042
本発明の請求項2に記載の高分子電解質は、請求項1に記載の高分子電解質において、A1およびA2が−(CH2m−(但し、mは1以上の整数)であることを特徴とするものである。
本発明の請求項3に記載の高分子電解質は、請求項1または2に記載の高分子電解質において、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であることを特徴とするものである。
本発明の請求項4に記載の高分子電解質は、請求項2または3に記載の高分子電解質において、A1が−(CH23−、または−(CH24−であることを特徴とするものである。
本発明の請求項5に記載の高分子電解質は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質において、Yがスルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とするものである。
本発明の請求項6に記載の高分子電解質は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質において、高分子電解質のイオン交換容量が2.0×10-3meq/kg以上2.3×10-3meq/kg以下であることを特徴とするものである。
本発明の請求項7に記載の高分子電解質膜は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質からなることを特徴とするものである。
本発明の請求項8に記載の固体高分子形燃料電池は、請求項7に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とするものである。
本発明の請求項9に記載のイオン性材料は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質を得るときに用いるイオン性材料であって、下記化学式で表されるポリマ−化可能な基を有することを特徴とするものである。
Figure 0005900042
本発明によれば、主鎖をアクリル骨格またはメタクリル骨格からフェニレン骨格に変更することで、高分子が剛直な骨格となり、高分子電解質を薄膜化させることができ、さらに、薄膜化した高分子電解質を燃料電池に用いた場合、発電性能を向上させることができる。また、電子求引性基を有するため、ラジカル安定性を向上させることができる。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
本発明の一実施態様に係る高分子電解質は、下記化学式(1)で表される高分子単位を有し、下記化学式(2)で表されるポリマ−化可能な基を有するイオン性材料(以下「モノマー」ということがある。)を重合させることによって得られる。
Figure 0005900042
ただし、化学式(1)中、A1およびA2はアルキル基、B1は電子求引性基、B2は電子供与性基、Yはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択されるプロトン酸基、nは10〜10000は整数である。
Figure 0005900042
[モノマーについて]
上記化学式(2)中、A1およびA2はアルキル基、B1は電子求引性基、B2は電子供与性基、Yはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択されるプロトン酸基をそれぞれ示す。X1、X2はそれぞれ独立した塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかである。X1およびX2は同一の原子であっても、異なる原子でもよいが、同一の原子であることが好ましい。
ここで、ポリマ−化可能な基とは、具体的には、X1またはX2を含む基のことをいう。また、イオン性材料とは、Yで表されるプロトン酸基を有する材料のことをいう。
化学式(2)中のA1およびA2で表されるアルキル基は、−(CH2m−(ただし、mは1以上の整数)であることが好ましく、mが3または4であることが特に好ましい。mが3または4であることによって、その高分子電解質からなる高分子電解質膜の柔軟性を維持しつつ、酸価の高い高分子電解質膜を得ることができる。
化学式(2)中のB1は電子求引性基であることが好ましい。B1が電子求引性基であることによって、ラジカル安定性を向上させることができる。電子求引性基としては、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基などが挙げられる。特に、B1がカルボニル基である場合、化学式(2)のモノマーを容易に合成でき、よりラジカル安定性を向上させることができる。
化学式(2)中のB2は電子供与性基であることが好ましい。電子供与性としては、特に、エーテル基が好ましい。B2がエーテル基であることにより、化学式(2)のモノマーを容易に合成できる。
[モノマーの製造方法について]
化学式(2)のモノマーを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、A1が−(CH24−、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であり、A2が(−CH23−、Yがスルホン酸基である場合、以下のようにして合成することができる。なお、A1、B1、A2、Yが上記構成でない場合であっても、以下のような合成方法および公知の合成方法を組み合わせることによって、化学式(2)のモノマーを製造することができる。
まず、下記化学式(3)で表される化合物Aを準備する。
Figure 0005900042
ここで、X1、X2はそれぞれ塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかである。反応効率の点から、1,4−ジクロロベンゼンであることが好ましい。
次に、上記化合物Aと、下記化学式(4)で表される化合物Bとを反応させ、下記化学式(5)で表される化合物Cを得る。
Figure 0005900042
Figure 0005900042
ここで、化学式(5)中のX1は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかである。反応効率の点から、塩素原子であることが好ましい。
このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は8時間以上48時間以下であることが好ましく、16時間以上32時間以下であることがより好ましい。
反応の際の圧力は、特に限定されるものではないが、加圧下、常圧(大気下)、または減圧下いずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
上記化合物Bのモルパーセントは、100mol%の化合物Aに対して、50mol%以上100mol%以下であることが好ましく、80mol%以上100mol%以下であることがより好ましい。
また、このときに用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。触媒のモルパーセントは、100mol%以上の化合物Aに対して、100mol%以上200mol%以下であることが好ましく、100mol%以上150mol%以下であることがより好ましい。
次に、上記化合物Cと塩化チオニルとを反応させ、下記化学式(6)で表される化合物Dを得る。
Figure 0005900042
このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上60℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましく、2時間以上5時間以下であることがより好ましい。
反応は、反応効率の観点から、窒素雰囲気で行うことが望ましい。上記反応で用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリノンなどが挙げられる。
次に、下記化学式(7)で表される化合物Eとプロパンスルトンとを反応させ、下記化学式(8)で表される化合物Fを得る。
Figure 0005900042
Figure 0005900042
このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、反応時間は10時間以上48時間以下であることが好ましい。また、反応を行う雰囲気は、大気雰囲気下でも窒素雰囲気下でも問題ない。
このときに用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、より好ましくは、アルコ−ル系溶媒であることが望ましい。アルコ−ル系溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノ−ル、1−ブタノ−ルが挙げられる。
本発明のモノマーは、上記化合物Dと上記化合物Fとを反応させることにより、得ることができる。具体的には、上記化学式(2)において、A1が−(CH24−、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であり、A2が−(CH23−、Yがスルホン酸基であるモノマーが得られる。
上記化合物Fの溶解性が悪い場合には、カチオン交換やエステル保護により、溶解性を改善することが好ましい。
また、上記化合物Dと上記化合物Eとを反応させ、その後、スルホン酸基を導入することによっても得られる。このときの反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることがより好ましい。また、反応時間は8時間以上48時間以下であることが好ましく、16時間以上32時間以下であることがより好ましい。
反応の際の圧力は、特に限定されるものではないが、加圧下、常圧(大気圧)下、または減圧下いずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、常圧下であることが好ましい。
また、反応を行う雰囲気は特に限定されるものではないが、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
上記化合物Dのモルパーセントは、100mol%の化合物Fに対して、50mol%以上100mol%以下であることが好ましく、80mol%以上100mol%以下であることがより好ましい。
また、このときに用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。触媒のモルパーセントは、100mol%の化合物Dに対して、100mol%以上200mol%以下であることが好ましく、100mol%以上150mol%以下であることがより好ましい。
[高分子電解質の製造方法について]
モノマーの重合は、特に限定されるものではないが、特定の触媒の存在下で反応させることが好ましい。このときに使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、配位子成分、配位子が配位された遷移金属錯体、および還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために塩を添加してもよい。
配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらの中でトリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジンが配位子成分として好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
配位子成分のモルパーメントは、100mol%のモノマーに対して、1mol%以上100mol%以下であることが好ましく、1mol%以上20mol%以下であることがより好ましい。
配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2−ビピリジン)が遷移金属錯体として好ましい。
遷移金属錯体のモルパーセントは、100mol%のモノマーに対して、1mol%以上100mol%以下であることが好ましく、1mol%以上20mol%以下であることがより好ましい。
上記触媒系に使用することのできる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが還元剤として好ましく、これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
還元剤のモルパーセントは、100mol%のモノマーに対して、1mol%以上100mol%以下であることが好ましく、10mol%以上30mol%以下であることがより好ましい。
また、上記触媒系において使用することのできる塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム化合物が挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムを用いることが好ましい。
塩のモルパーセントは、100mol%のモノマーに対して、1mol%以上100mol%以下であることが好ましく、10mol%以上30mol%以下であることがより好ましい。
また、上記重合の際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合の際の重合温度および重合時間は、特に限定されるものではなく、分子量、重合の濃度等によって適宜設定すればよい。例えば、重量平均分子量が10万以上50万以下の重合体を得ることを目的とする場合は、反応効率の点から、重合温度は25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上70℃以下であることがより好ましい。また、重合時間は、8時間以上40時間以下であることが好ましく、16時間以上32時間以下であることがより好ましい。
重合の際の重合圧力は、特に限定されず、加圧下、常圧(大気)下、減圧下のいずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、常圧下であることが好ましい。
モノマーの重合度、すなわち上記化学式(1)におけるnは、10〜10000であることが好ましく、1000〜10000であることより好ましい。上記範囲であることにより、高分子電解質を溶媒に容易に溶解させることができ、成膜性を良好にすることができる。
[高分子電解質膜の製造方法について]
このようにして得られた高分子電解質を用いて高分子電解質膜を製造する方法としては、例えば、ポリフェニレン系電解質を溶媒に溶解して溶液とした後、キャスティングにより基材上に塗布することによって高分子電解質をフィルム状に形成する方法や、所定のギャップに制御されたアプリケ−タを用いて塗工することで高分子電解質膜を成膜する方法、ダイコ−タを用いて高分子電解質膜を成膜する方法などが挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
成膜にあたっては、溶液の粘度を10mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましく、10mPa・s以上1000mPa・s以下とすることがより好ましい。上記範囲内であると、溶媒の残留量が少なく、また溶液を乾燥する際に多量の気泡が発生する確率が低いことと、レべリング効果により厚みむらが低減できることにより、安定したプロトン伝導性が確保される。
このときの高分子電解質の濃度は、分子量にもよるが、通常、2.5質量%以上50質量%以下、好ましくは7質量%以上25質量%以下である。上記範囲内であれば、成膜性に優れる。
また、このときに用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン系極性溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコ−ル、iso−プロピルアルコ−ル、sEC−ブチルアルコ−ル、tErt−ブチルアルコ−ル等のアルコ−ル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上混合させてもよい。また、これらの溶媒に水を添加したものを用いてもよい。
粘度を調整した高分子電解質溶液は、例えば、基材にキャストされる。キャストする基材としては、金属材料、ガラス、セラミックス、プラスチックなどが挙げられる。基材の形状は特に限定されるものではない。
基材上に形成された塗膜を、好ましくは25℃以上140℃以下、0.1時間以上24時間以下で加熱することで、本発明の高分子電解質膜が得られる。
[固体高分子形燃料電池について]
固体高分子形燃料電池は、一般に、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の両面に設けた空気極側電極触媒層および燃料極側触媒層とからなる膜電極接合体と、空気極側電極触媒層および燃料極側電極触媒層と対向して配置された空気極側ガス拡散層および燃料極側ガス拡散層と、これらを挟持したセパレ−タとから構成される。
本発明の高分子電解質は、薄膜化しても十分な機械強度を有し、耐加水分解性およびラジカル安定性を向上させることができることから、上記固体高分子形燃料電池を構成する高分子電解質膜の材料として用いることができる。また、導電性物質および触媒物質とともに、空気極側電極触媒層または燃料極側電極触媒層を形成することもできる。
以下、本発明の実施例を比較例と比較して説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<化合物C−1の合成>
14.6×10-3kg(0.1mol)の1,4−ジクロロベンゼンに、13.6×10-3kg(0.1mol)の1−クロロへキサン酸と14.6×10-3kg(0.11mol)の塩化アルミニウムを加え、窒素雰囲気下、1時間撹拌を行った。この反応溶液の有機成分を抽出により回収し、シクロへキサンを用いて再結晶を行った。乾燥後、下記化学式(9)で表される化合物C−1を得た。
Figure 0005900042
<化合物D−1の合成>
得られた化合物C−1(50×10-3kg(0.2mol))に、118.9×10-3kg(1mol)の塩化チオニルと5ミリリットル(5×10-63)のメチルホルムアミドを窒素雰囲気下で加え、45℃で4時間加熱撹拌して、下記化学式(10)で表される化合物D−1を得た。
Figure 0005900042
<化合物Fの合成>
57.5×10-3kg(0.29mol)の4−ヒドロキシベンゾフェノン(化学式(7)で表わされる化合物E)に、141.7×10-3kg(1.16mol)のプロパンスルトン、20×10-3kg(0.5mol)の水酸化ナトリウムおよび200ミリリットル(200×10-63)のメタノールを窒素雰囲気下で加え、48時間撹拌した。その後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物を塩酸にて洗いこみ、上記化学式(8)で表わされる化合物Fを得た。
<モノマーの合成>
10×10-3kg(0.038mol)の化合物D−1に、12.2×10-3kg(0.038mol)の化合物F、5.56×10-3kg(0.042mol)の塩化アルミニウムおよび30ミリリットル(30×10-63)のジメチルホルムアミドを窒素雰囲気下で加え、60℃で1時間撹拌させて、下記化学式(11)で表わされるモノマーを得た。
Figure 0005900042
<高分子電解質の合成>
得られたモノマー(8.22×10-3kg(14.58mmol))に、1.493×10-3kg(5.692mmol)のトリフェニルホスフィン、0.293×10-3kg(1.953mmol)のヨウ化ナトリウム、1.281×10-3kg(19.59mmol)の亜鉛および0.311×10-3kg(0.475mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリドを
窒素雰囲気下で加え、さらに溶媒として、20ミリリットル(20×10-63)のジメチルホルムアミドを加えた。そして、60℃で24時間撹拌して、下記化学式(12)で表わされる実施例の高分子電解質を得た。
Figure 0005900042
[比較例]
<9−ブロモ−1−デセンの合成>
三角フラスコに25×10-3kg(0.16mol)の9−デセン−1−オ−ルを入れた後、100ミリリットル(100×10-63)のベンゼンと1.0×10-3kgのピリジンを加え、9−デセン−1−オ−ルを溶解した。次に、43.2×10-3kg(0.16mol)の三臭化リンが溶解した100ミリリットル(100×10-63)のベンゼン溶液を氷冷下でゆっくりと滴下した後、室温で18時間撹拌した。その後、反応液を氷水中に注ぎ、300ミリリットル(300×10-63)のジエチルエーテルで抽出した。ここで得たエーテル−ベンゼン混合液は無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。求引ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エーテル−ベンゼンを減圧除去し、残渣を減圧蒸留して目的物である9−ブロモ−1−デセンを得た。
<4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノ−ルの合成>
0.08mol(3.40×10-3kg)の水酸化ナトリウムを100ミリリットル(100×10-63)のエタノールに溶解させた後、0.08mol(14.9×10-3kg)の4,4’−ビフェノ−ルが溶解した100ミリリットル(100×10-63)のエタノールに少量ずつ加え、エタノールを減圧除去した。残渣を150ミリリットル(150×10-63)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に窒素気流下で加温して溶解させ、A液を得た。次に、上記で調整した9−ブロム−1−デセン(0.072mol(15.8×10-3kg))とフェノチアジン(0.1×10-3kg)を(150×10-63)のDMFに溶解させ、B液を得た。
窒素雰囲気下でよく撹拌しながらA液にB液を30分程度かけて加え、40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、300ミリリットル(300×10-63)の10%冷希塩酸で洗浄した後、300ミリリットル(300×10-63)のエーテルで抽出し、次いで100ミリリットル(100×10-63)の冷蒸留水で洗浄した。エーテル層は、無水硫酸ナトリウムで一晩脱水する。硫酸ナトリウムをろ過により取り除き、エーテルを減圧除去する。残渣に300ミリリットル(300×10-63)のヘキサンを加え、ろ過により沈殿物を得る。次いで200ミリリットル(200×10-63)のベンゼンを加え、ベンゼン可溶部分をベンゼンを用いたカラムクロマトグラフィ−で精製してスルホン化4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノ−ルを得た。
<3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸の合成>
30ミリリットル(30×10-63)のN,N−ジメチルホルムアミドL中に0.05×10-3kgのフェノチアジンを重合禁止剤として溶解させた後、0.008mol(1.22×10-3kg)の1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)と0.002mol(0.65×10-3kg)の4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノ−ル、および0.008mol(1.32×10-3kg)の3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウムをさらに溶解させ、窒素雰囲気下、50℃で48時間撹拌した。
反応終了後、溶媒を濃縮したジエチルエーテルを加え、ろ過することにより沈殿を得た。次に、沈殿を蒸留水でよく洗浄した。次に、洗浄後の沈殿を6×10-3mol/m3のHCl中で24時間撹拌後、遠心分離機により沈殿を得て、この沈殿をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、比較例のモノマーである3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を得た。
<3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸の高分子量化>
488×10-6kg(1×10-3mol)の3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸に、6.6×10-6kg(0.04×10-3mol)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤として窒素雰囲気下で加えた後、4.7ミリリットル(4.7×10-63)のジメチルスルホキシドを加えた。その後、60℃で60時間熱重合して高分子量化させた後、アセトンで再沈殿させ、比較例の高分子電解質である3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマ−を得た。
[高分子電解質の成膜]
実施例および比較例の高分子電解質をジメチルスルホキシドに溶解させ、ガラスにキャストし、45℃で12時間、80℃で12時間、80℃で1時間真空乾燥させることで、実施例および比較例の高分子電解質膜を得た。
[評価]
<薄膜化>
実施例の高分子電解質膜は、比較例の高分子電解質膜に比較して、ラジカル耐性が高く、薄膜化しても膜電極接合体が作製できる機械強度を有していた。
<フェントン試験>
60℃、3%過酸化水素水溶液、4ppmFE2+中に、実施例および比較例の高分子電解質膜を浸漬させた。その結果、実施例の高分子電解質膜の方が、耐久性を有していることを確認した。
本発明は、電気自動車、燃料電池自動車などの自動車、ノ−トパソコン、携帯電話、携帯情報端末などのモバイル機器、家庭用発電装置などの発電源として用いられる固体高分子形燃料電池を構成する高分子電解質膜などに利用できる。

Claims (9)

  1. 下記化学式で表される高分子単位を有することを特徴とする高分子電解質。
    Figure 0005900042
  2. 前記A1およびA2が−(CH2m−(但し、mは1以上の整数)であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
  3. 前記B1がカルボニル基、前記B2がエーテル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質。
  4. 前記A1が−(CH23−、または−(CH24−であることを特徴とする請求項2または3に記載の高分子電解質。
  5. 前記Yがスルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質。
  6. 前記高分子電解質のイオン交換容量が2.0×10-3meq/kg以上2.3×10-3meq/kg以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質からなることを特徴とする高分子電解質膜。
  8. 請求項7に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質を得るときに用いるイオン性材料であって、下記化学式で表されるポリマ−化可能な基を有することを特徴とするイオン性材料。
    Figure 0005900042
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