JP5956250B2 - タイヤ偏摩耗検知方法及びタイヤ偏摩耗検知装置 - Google Patents
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Description
これらの偏った摩耗が積み重なると、タイヤショルダー部の端部が著しく摩耗したタイヤになってしまう。このような偏った摩耗が積み重なったタイヤを、トレッド表面が均一に摩耗したタイヤである正常摩耗タイヤに対し偏摩耗タイヤという。
極端な偏摩耗が起こっているタイヤを使用し続けると、タイヤ本来の性能が発揮できなくなる。特にスタッドレスタイヤでは、路面のグリップ不足が発生しやすくなるといった問題点がある。
また、偏摩耗タイヤは、タイヤの接地形状が理想としている状態から外れていることから、燃費性能もトレッド表面が均一に摩耗している正常摩耗タイヤに比べて低下する。
また、前記特許文献2,3に記載の方法では、磁性体やガスなどの異物をタイヤトレッド内に挿入するため、異物を挿入された箇所が故障の核となり、タイヤの耐久性を損なうことが懸念される。
このように、加速度センサーを用いて検出した接地面近傍を含む加速度波形のうち、正常な摩耗状態と偏摩耗状態とを区別できる情報が少ない接地部分の加速度波形を除いた加速度波形(以下、領域加速度波形という)を用いて偏摩耗を検知したので、接地面近傍の加速度波形全体を用いた場合に比較して、偏摩耗の検知精度を向上させることができる。
また、1個の加速度センサーで偏摩耗の発生を検知する構成としたので、システムを簡素化できるだけでなく、耐久性に悪影響を与えることなく、ショルダー偏摩耗を検知することができる。更に、加速度センサーの配置位置をタイヤトレッド幅方向中心にしたので、車体側及び反車体側のどちらの側のショルダーが偏摩耗しても検知できる。
なお、周波数帯域値は、抽出された加速度波形をFFT処理して得られる周波数スペクトルから求めてもよいし抽出された加速度波形をバンドパスフィルタに通して得られる波形から求めてもよい。
偏摩耗が進展すると、踏み込み前領域では、加速度波形をFFT処理して得られた周波数スペクトルの1000Hz〜1500Hz帯域の振動成分の大きさが特に増加し、蹴り出し後領域では800Hz〜1200Hz帯域の振動成分の大きさが特に増加するので、この振動成分の増加分が大きな周波数帯域の帯域値を用いれば、偏摩耗の検知精度を更に向上させることができる。
このように、ショルダー偏摩耗による影響が反映しやすいタイヤ径方向加速度を用いたので、偏摩耗の検知精度を更に向上させることができる。
このように、算出された周波数帯域値を、新品タイヤの周波数帯域値ではなく、摩耗したタイヤであって、偏摩耗が起きていない正常摩耗タイヤの周波数帯域値(基準帯域値)と比較したので、偏摩耗の検知精度を更に向上させることができる。
このような構成を採ることにより、タイヤの耐久性を損なうことなく、タイヤショルダー部の端部の偏摩耗を精度よく検知することのできるタイヤ偏摩耗検知装置を実現することができる。
また、本発明は、前記加速度センサーを、検出方向がタイヤ径方向になるように、前記タイヤトレッドのセンター部の内面に配置したことを特徴とする。
これにより、ショルダー偏摩耗による影響が反映しやすいタイヤ径方向加速度を用いてタイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知できるので、偏摩耗の検知精度を更に向上させることができる。
加速度センサー11は、図2に示すように、タイヤ1のインナーライナー部2の同図のCLで示すタイヤ幅方向中心に、検出方向がタイヤ径方向になるように配置されて、タイヤトレッド3のセンター部4の内面に作用するタイヤ径方向加速度を検出する。
加速度センサー11がタイヤ偏摩耗検知装置10のセンサー部10Aを構成し、加速度波形抽出手段12からショルダーエッジ摩耗検知手段17までの各手段が記憶・演算部10Bを構成する。
記憶・演算部10Bを構成する各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェアにより構成され図示しない車体側に配置される。なお、記憶手段16は、RAM等のメモリーにより構成される。
また、加速度センサー11の出力信号を演算部10Bに送る構成としては、例えば、図2に示すように、インナーライナー部2もしくはホイール5に送信器11Fを設置して、加速度センサー11の出力信号をそれぞれ図示しない増幅器で増幅した後、無線にて車体側に配置された演算部10Bに送信する構成とすることが好ましい。なお、演算部10Bをタイヤ1側に設けてショルダーエッジ摩耗検知手段17の検知結果を車体側の図示しない車両制御装置に送信する構成としてもよい。
加速度波形分離手段13は、加速度波形抽出手段12で抽出された加速度波形から、蹴り出し後領域の加速度波形である領域加速度波形を分離して抽出する。
図3は、加速度センサー11で検出した径方向加速度波形の一例を示す図で、横軸は時間[sec.]、縦軸は径方向加速度の大きさ[G]である。
径方向加速度波形では、図3に示すように、踏み込み点Pfと蹴り出し点Pkとにおいて加速度が0となるので、加速度波形分離手段13では、径方向加速度波形から、蹴り出し点Pkよりも後の時間領域にある加速度波形を抽出し、これを領域加速度波形として、周波数解析手段14に送る。
踏み込み前領域の加速度波形を領域加速度波形とする場合には、踏み込み点Pfより前の時間領域にある加速度波形を抽出し、これを領域加速度波形とすればよい。
なお、踏み込み点Pfの位置、及び、蹴り出し点Pkの位置は、径方向加速度波形を微分して得られる加速度微分波形に出現する2つのピーク(踏み込み端ピークと蹴り出し端ピーク)の位置から求める方が精度が高い。
図4は、領域加速度の周波数スペクトルの一例を示す図で、横軸は周波数 [Hz]、縦軸は径方向加速度の大きさ(振動レベル)[G]である。同図において、800Hz〜1500Hz帯域で振動レベルが大きい方がショルダーエッジ摩耗が起こったタイヤ(以下、偏摩耗品)のデータで、振動レベルが小さい方が偏摩耗が起きていない正常摩耗タイヤ(正常摩耗品)のデータである。
偏摩耗品は、図5に示すように、ショルダーブロックのタイヤ幅方向外側の端部が著しく摩耗して、同図の太い破線で示す部分のゴムがなくなったタイヤをいう。
図6は、タイヤセンター4部における周方向接地圧分布を示す図で、横軸は直下(タイヤ軸方向から見た時の接地中心)からの回転角度[deg]、縦軸は接地圧[GPa]である。また、同図の菱形は正常摩耗品のデータ、三角形は偏摩耗品のデータである。
正常摩耗品の接地圧分布と偏摩耗品の接地圧分布とを比較して分かるように、偏摩耗品では接地端の圧力が増加していることがわかる。接地端の圧力が増加は、接地面外高周波レベルの増加の一因となるので、偏摩耗品の踏み込み前領域の加速度波形もしくは蹴り出し後の加速度波形は、正常摩耗品の踏み込み前領域の加速度波形もしくは蹴り出し後の加速度波形に比較して、前記接地面外高周波を含む周波数帯域の振動レベルが高くなる。
図7(a)は、踏み込み前領域の加速度波形をFFT処理して求めた周波数スペクトルで、図7(b)は、接地面を含む連続領域のタイヤ径方向加速度の周波数スペクトルをFFT処理して求めた周波数スペクトルである。
図4及び図7(a)と、図7(b)とを比較して分かるように、踏み込み前領域の加速度波形もしくは蹴り出し後の加速度波形の周波数スペクトルの方が、接地面を含む連続領域のタイヤ径方向加速度の周波数スペクトルよりも、偏摩耗品の径方向加速度の大きさ(振動レベル)と正常摩耗品の振動レベルとの差が大きい。
記憶手段16は、予め求めておいたショルダー部の端部に偏摩耗が起きていない正常摩耗タイヤにおける周波数帯域値である基準周波数帯域値T0を記憶する。
基準帯域値を設定するためのタイヤ(正常摩耗タイヤ)としては、例えば、室内試験において、タイヤをショルダー部に大きな偏摩耗を発生させるような条件で走行させてショルダー部に偏摩耗が発生するまでの時間(もしくは、距離)を測定しておき、偏摩耗が起こりにくい状態で、タイヤを前記時間(もしくは、距離)と同じ時間(もしくは、距離)だけ走行させて摩耗させたタイヤを使用すればよい。
ショルダーエッジ摩耗検知手段17は、周波数帯域値算出手段15で算出された周波数帯域値Tと、前記基準周波数帯域値T0とを比較して、ショルダーエッジ摩耗が起こっているか否かを判定する。
まず、加速度センサー11により、タイヤトレッド3の変形に伴って変形するインナーライナー部2内面のセンター部4におけるタイヤ径方向加速度を検出した後、これら検出されたタイヤ径方向加速度のデータを送信器11Fから車体側に配置された演算部10Bに送信する。
演算部10Bでは、加速度センサー11の出力信号からタイヤ接地面近傍のタイヤ径方向加速度の時系列波形である加速度波形を抽出した後、加速度波形から領域加速度波形を分離して抽出し、この抽出された領域加速度波形を用いて、タイヤ1にショルダーエッジ摩耗が起こっているか否かを判定する。
具体的には、領域加速度波形をFFT処理して求めた領域加速度の周波数スペクトルの特定周波数帯域における径方向加速度の大きさである周波数帯域値Tを算出し、この周波数帯域値Tと予め求めておいた基準周波数帯域値(正常摩耗タイヤにおける周波数帯域値)T0とを比較して、ショルダーエッジ摩耗が起こっているか否かを判定する。
判定方法としては、例えば、周波数帯域値T(dB)と基準周波数帯域値T0(dB)との差が予め設定しておいた閾値Kを超えた時に、ショルダーエッジ摩耗が起こっていると判定すればよい。
タイヤトレッド3の摩耗が進展しているタイヤでは溝深さが浅くなるので、新品タイヤに比較してブロック剛性が高くなり、その結果、接地面外高周波の発生領域が新品タイヤとは異なってくる。したがって、本例のように、正常摩耗タイヤの周波数帯域値T0を用いた方が検知精度が向上する。
また、前記実施の形態では、抽出された領域加速度波形をFFT処理して得られる周波数スペクトルから周波数帯域値を求めたが、領域加速度波形をバンドパスフィルタに通して得られる800Hz〜1500Hzの周波数成分のみを含む加速度波形から周波数帯域値を求めてもよい。
また、前記実施の形態では、蹴り出し後領域の加速度波形を抽出してこれを領域加速度波形としたが、踏み込み前領域の加速度波形を領域加速度波形としてもよい。
また、踏み込み前領域及び蹴り出し後領域の両方の加速度波形を抽出し、それぞれの領域加速度波形を用いて求めた踏み込み側周波数帯域値T(f)と蹴り出し側帯域値T(k)とから、タイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知するようにしてもよい。具体的には、周波数帯域値T(f),T(k)のいずれか一方が、予め求めておいた基準周波数帯域値T0(f),T(k)0に対して所定値以上増加している場合に、ショルダーエッジ摩耗が起来ていると判定すればよい。
加速度センサーを、タイヤのインナーライナー部のタイヤ幅方向中心に、検出方向がタイヤ径方向になるように配置した試験タイヤを搭載した試験車両を、速度40km/hr〜80km/hrにて走行させるとともに、加速度センサーの出力信号を処理する記憶・演算部は車体側に搭載して、領域加速度波形の周波数スペクトルを求めた。
試験タイヤのタイヤサイズは315/80R22.5である。
また、試験車両として、「空車」、「半積車」、「積車」の3種類の車両をそれぞれ走行させて荷重による影響を調べた。「空車」の荷重は1.9[t]、「半積車」の荷重は2.4[t]、「積車」の荷重は2.85[t]である。
また、周波数スペクトルは、正常摩耗品と、図2の符号Zで示すショルダーエッジ摩耗が起こっている偏摩耗品のそれぞれについて、踏み込み側領域加速度波形の周波数スペクトル(以下、踏み込み側スペクトルという)と、蹴り出し側領域加速度波形の周波数スペクトル(以下、蹴り出し側スペクトルという)とを求めた。
図8及び図9において、(a)図は荷重が「積車」である踏み込み側スペクトル、(b)図は荷重が「積車」である蹴り出し側スペクトル、(c)図は荷重が「半積車」である踏み込み側スペクトル、(d)図は荷重が「半積車」である蹴り出し側スペクトル、(e)図は荷重が「空車」である踏み込み側スペクトル、(f)図は荷重が「空車」である蹴り出し側スペクトルである。
図8及び図9から明らかなように、踏み込み側スペクトルでは、1000Hz〜1500Hz帯域において、偏摩耗品の振動レベルが正常摩耗品の振動レベルよりも増加しており、蹴り出し側スペクトルでは、800Hz〜1200Hz帯域において、偏摩耗品の振動レベルが正常摩耗品の振動レベルよりも増加していることが分かる。また、踏み込み側スペクトルと蹴り出し側スペクトルとを比較すると、蹴り出し側スペクトルの方が低速、低荷重でもショルダーエッジ摩耗を検知できることがわかる。
また、偏摩耗品の振動レベルと正常摩耗品の振動レベルとの差は、荷重と速度が増加するほど大きくなっていることがわかる。
なお、速度40km/hrの周波数スペクトルについては、正常摩耗品と偏摩耗品とのレベル差が小さかったので、省略した。
図10からも、偏摩耗品の周波数帯域値が正常摩耗品の周波数帯域値よりも増加していることが分かる。また、図8及び図9に示した周波数スペクトルと同様に、偏摩耗品の周波数帯域値が正常摩耗品の周波数帯域値よりも増加していることが分かる。
したがって、踏み込み前領域もしくは蹴り出し後領域の加速度波形である領域加速度波形から算出された周波数帯域値の大きさからタイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知すれば、偏摩耗の検知精度が向上することが確認された。
5 ホイール、
10 タイヤ偏摩耗検知装置、10A センサー部、10B 演算部、
11 加速度センサー、11F 送信器、12 加速度波形抽出手段、
13 加速度波形分離手段、14 周波数解析手段、15 周波数帯域値算出手段、
16 記憶手段、17 ショルダーエッジ摩耗検知手段、CL センターライン。
Claims (6)
- 加速度センサーを用いて検出した加速度波形からタイヤの偏摩耗を検知するタイヤ偏摩耗検知方法であって、
タイヤトレッドの内面のタイヤ幅方向中心に配置された加速度センサーの出力信号から踏み込み前領域及び蹴り出し後領域のいずれか一方または両方の加速度波形を抽出するステップ(a)と、
前記抽出された加速度波形から特定周波数帯域の加速度の大きさである周波数帯域値を算出するステップ(b)と、
前記算出された周波数帯域値の大きさからタイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知するステップ(c)と、
を備えたことを特徴とするタイヤ偏摩耗検知方法。 - 前記特定周波数帯域が800Hz〜1500Hzであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ偏摩耗検知方法。
- 前記加速度がタイヤ径方向加速度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ偏摩耗検知方法。
- 前記ステップ(c)では、前記ステップ(b)で算出された周波数帯域値と、予め求めておいた偏摩耗が起きていない正常摩耗タイヤにおける周波数帯域値とを比較して、タイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のタイヤ偏摩耗検知方法。
- 加速度センサーを用いて検出したタイヤ径方向加速度からタイヤの偏摩耗を検知するタイヤ偏摩耗検知装置であって、
タイヤトレッドの内面のタイヤ幅方向中心に配置された加速度センサーと、
前記加速度センサーの出力信号から踏み込み前領域及び蹴り出し後領域のいずれか一方または両方の加速度波形を抽出する加速度波形抽出手段と、
前記抽出した加速度波形から特定周波数帯域の加速度の大きさである周波数帯域値を算出する周波数帯域値算出手段と、
予め求めておいたショルダー部の端部に偏摩耗が起きていない正常摩耗タイヤにおける周波数帯域値である基準周波数帯域値を記憶する記憶手段と、
前記算出された周波数帯域値と基準周波数帯域値とを比較して、タイヤショルダー部の端部の偏摩耗を検知する偏摩耗検知手段と、
を備えたことを特徴とするタイヤ偏摩耗検知装置。 - 前記加速度センサーは、検出方向がタイヤ径方向になるように、前記タイヤトレッドのセンター部の内面に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ偏摩耗検知装置。
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