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JP5885755B2 - 塗布装置および塗布方法 - Google Patents

塗布装置および塗布方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗布装置および塗布方法に関し、特にシート状のワーク(ウェブ)に間欠塗布することに適した塗布装置および塗布方法に関する。
特許文献1には、図8に示すように、エア加圧ライン(定圧力供給手段)120、塗布液タンク130、供給配管140、供給用バルブ150、定容量ポンプ(定容量供給手段)160、吐出配管170、吐出用バルブ180、スリットノズル190、可動ステージ200および制御部を備えた塗布装置101が提案されている。エア加圧ライン120は塗布液タンク130に接続され、コンプレッサなどで圧縮したエアを塗布液タンク130内に供給し、塗布液タンク130内の塗布液に一定の圧力を付与する。塗布液タンク130と定容量ポンプ160の入口との間は供給配管140で接続される。供給用バルブ150は供給配管140の途中に設けられ、その開動作に伴い前記エア加圧ライン120による塗布液の圧送が行われる。
定容量ポンプ160はシリンダ内にピストンが往復動可能に配されたピストンポンプなどが採用され、ACサーボモータなどでピストンが一定速で往移動することでシリンダ内の一定量の塗布液を押し出す。定容量ポンプ160の出口とスリットノズル190との間は吐出配管170で接続される。吐出用バルブ180は吐出配管170の途中に設けられ、その開動作に伴い前記定容量ポンプ160による塗布液の定容量送液が行われる。
スリットノズル190の下方には一定速で移動する可動ステージ200が設置される。可動ステージ200上にはガラス基板などの枚葉状のワークWが吸着保持される。スリットノズル190から塗布液を吐出することで、可動ステージ200と共に移動されるワークWに塗布液を塗布する。
特許文献1に記載された塗布装置101の動作を説明する。塗布開始時、制御部210により、エア加圧ライン120を駆動し、吐出用バルブ180を閉動作、供給用バルブ150を開動作することで、塗布液タンク130内の圧力を高める。そして、吐出用バルブ180を開、供給用バルブ150を閉とし、スリットノズル190の先端から塗布液の吐出を開始する。同時に可動ステージ200を用いてワークWとスリットノズル190を相対移動させる。
その後、制御部210によりエア加圧ライン120を停止し、塗布液タンク130内の圧力は大気圧に戻るように設定する。これ以降の塗布液の送液は定容量ポンプ160のみで流量を一定に維持して行い、均一な膜厚で塗布を行う。塗布終了時は、吐出用バルブ180を閉、供給用バルブ150を開とすることで、強制的にスリットノズル190への塗布液の供給を停止する。
特許第4366757号公報
一般的に、塗布液の主要な送液手段としては、時間当たりの流量を一定に制御しやすい定容量ポンプが採用される。しかし、定容量ポンプによる送液では、ポンプの動作初期に応答の遅延が生じ、吐出圧力が上昇しきらない。そこで、特許文献1では、上記のように塗布開始時においてエア加圧ライン120による圧送を補助的に活用することで、吐出圧力の不足を補い、定容量ポンプ160の動作初期の応答の遅延を抑制するようにしている。
しかし塗布終了時については、基本的に吐出用バルブ180を閉としてスリットノズル190への塗布液の供給を遮断しているだけなので、応答性が悪くなる。すなわち、制御不能の、スリットノズル先端に残留する塗布液が自重や惰性により流出し、塗布終了部の塗布膜が塗り広げられてしまうことがある。また、塗布液が低粘度の塗布液の場合には塗布終了部が直線的に揃わなくなる問題がある。
特に、長尺状のワークに一定の塗布長さの塗布膜を一定の間隔(間欠領域)を開けて連続的に繰り返し形成する、いわゆる間欠塗布を行う場合は、1つのワークに対する塗布が完了するまで可動ステージ200を動かし続けるので、上記のような塗布不良が発生すると歩留まりが大きく低下し、材料コストの損失が多大となる。
また、特許文献1の塗布装置101では、1回の塗布動作において、定容量ポンプ160に加え、エア加圧ライン120や供給用と吐出用の2つのバルブ150,180の動作まで制御しなければならず、制御系統が複雑になる。この結果、品質の良い塗布膜を得るためにはタクトタイムが増し、生産性が低下する。実際、特許文献1は、1枚の枚葉状のワークに1回の塗布を行うことを前提としている。
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、複雑な制御を必要とすることなく、塗布終了時の応答性を高め、品質の良い塗布膜を形成することを目的とする。
塗布装置はワークに対向配置されるスリットノズルに塗布液を供給し、前記ワークまたは前記スリットノズルを相対移動させ、前記スリットノズルの先端から前記塗布液を前記ワークの塗布面に吐出することにより、所定長さの塗布膜を形成する。
本発明の塗布装置は、スリットノズル、給液路、圧送装置、給液用バルブ、移動装置、吸液手段および制御部を備える。スリットノズルは前記ワークの塗布面に前記塗布液を先端から吐出する。給液路は前記スリットノズルに接続される。給液路を流通して前記スリットノズルに塗布液が供給される。圧送装置は前記給液路内の塗布液に一定方向に一定圧力を常時供給して塗布液を圧送する。給液用バルブは前記給液路を開閉する。移動装置は前記ワークまたは前記スリットノズルを相対移動させる。吸液手段は前記スリットノズル内の塗布液を吸引可能に構成される。制御部は前記給液用バルブおよび前記吸液手段の動作を制御する。
この構成によると、塗布終了時に、前記制御部により、前記給液用バルブを閉動作させるとともに、前記吸液手段を動作させることにより、前記スリットノズルの先端に残留する余剰の塗布液が吸引される。すなわち、塗布終了時の応答性が改善され、塗布終了部の塗布膜が塗り広げられたり、不揃いになることが防止される。
前記吸液手段は、一例としてポンプが挙げられる。このポンプは前記給液路の塗布液流通方向について前記給液用バルブの下流に配され、前記給液路内の前記塗布液に負圧を付与することが可能に構成される。
これによると、塗布終了時に、給液用バルブの閉動作によって圧送装置による塗布液の圧送が停止され、さらにポンプの駆動によって給液路内の塗布液に負圧が付与されることに伴い、給液路内の塗布液が逆流する。これにより、スリットノズル先端に残留する余剰の塗布液が吸引される。また、主要な送液手段として圧送装置を使用し、ポンプは補助的に使用するので、容量の少ない小型ポンプで必要な性能を得ることが出来る。したがって、設備コストの削減にも寄与する。
塗布終了時の応答性をさらに向上させるために、本発明の塗布装置は、前記制御部により制御され、前記スリットノズル内の残圧を除去可能に構成された残圧除去手段をさらに備えてもよい。
この構成によると、塗布終了時に、第1段階として、前記制御部により、前記給液用バルブを閉動作させるとともに、前記吐出圧力除去手段を動作させることにより、前記スリットノズルの残圧が除去される。続いて、第2段階として、前記制御部により、前記吸液手段を動作させることにより、前記スリットノズル内の塗布液が吸引される。つまり、吸液手段により吸引される塗布液は、あらかじめ残圧除去手段により残圧が除去されているため、吸液手段単独で吸引する場合よりも、塗布終了時の応答性が向上する。
このような残圧除去手段の一例として、前記スリットノズルに接続された末端が大気に開放された配管と、前記制御部によって制御されて前記配管を開閉する残圧除去バルブと、を備えるものが挙げられる。この構成によると、前記制御部により、前記残圧除去バルブを開動作すると、前記配管が大気に開放され、前記スリットノズル内の残圧が除去される。
前記ポンプは正逆流駆動可能な定容量ポンプを好適に使用出来る。これによると、定容量ポンプの正流駆動により給液路内の塗布液に正圧が付与され、定容量ポンプの逆流駆動により給液路内の塗布液に負圧が付与されるようになる。
塗布開始時には、前記給液用バルブを開動作させるとともに、前記定容量ポンプの正流駆動により前記給液路内の前記塗布液に陽圧を付与するように動作させる。これによると、塗布開始時に、給液用バルブの開動作によって圧送装置による塗布液の圧送が開始され、さらに定容量ポンプの正流駆動により給液路内の塗布液に正圧が付与されることに伴い、スリットノズルに速やかに塗布液が供給される。すなわち、塗布開始時の応答性が改善される。さらに、塗布開始時の吐出圧力の不足を定容量ポンプの正流駆動で補い、塗布開始部の塗布膜の膜厚の不均一部分を少なくすることが可能となる。特に、長尺状のワークに間欠塗布を行う場合は、歩留まりが高まり、材料コストの削減に寄与する。
特に、使用される塗布液の粘性が高くなると、塗布液に付与される圧力がポンプの動作に追従しにくくなるので、その分ポンプの駆動を早めに開始する必要が生じる。このような場合でも、定容量ポンプであれば、ポンプの流量を制御することで塗布液に付与される圧力の管理を比較的容易に行える。したがって、塗布液の入れ替えへの対応が容易である。
塗布開始に吐出圧力の不足が定容量ポンプの正流駆動で補われ、吐出圧力が十分に高まった後は、定容量ポンプの駆動を停止することで、圧送装置のみによる塗布液の圧送が実現される。この間の圧送は一定圧力で行われるため、吐出圧力も略一定となり、スリットノズルの先端から略一定の流量で塗布液を吐出して、ワークの塗布面に塗布膜を均一な膜厚で形成することが出来る。
なお、前記移動装置を、シート状のワーク(ウェブ)を一定速度で連続搬送するように構成すると、シート状のワークを連続的に移動させながらロール・トゥ・ロールで間欠塗布することが可能となる。これにより、タクトタイムが短縮され、生産性が向上する。
この発明によれば、圧送装置による塗布液の送液が供給用バルブの閉動作により強制遮断された際に、吸液手段を動作させてスリットノズル先端に残留する余剰の塗布液が吸引される。したがって、複雑な制御を必要とすることなく、塗布終了時の応答性が改善される。これにより、塗布終了部の塗布膜が塗り広げられたり、不揃いになることが防止され、塗布不良の発生が低減される。
なお、吸液手段として可逆ポンプを使用すると、圧送装置による塗布液の送液が供給用バルブを開動作により再開された際に、可逆ポンプを正流駆動することで、スリットノズルからの吐出圧力不足が補われる。したがって、塗布開始時の応答性も改善することが出来る。
本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置の概略構成を示す図である。 上記塗布装置により、低粘度(1〜10cP)の塗布液を使用して、シート状のワークに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の経時変化の一例を示すタイムチャートである。 上記塗布装置により、高粘度(≧100cP)の塗布液を使用して、シート状のワークに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の経時変化の一例を示すタイムチャートである。 図4(A)〜図4(D)は、それぞれ図2、図3に示されたA〜Dの各期間に対応したスリットノズル先端部の塗布液の状態を示す模式図である。 圧送のみにより、低粘度(1〜10cP)の塗布液を使用して、シート状のワークに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の時間変化の一例を示すタイミングチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係る塗布装置の概略構成を示す図である。 上記塗布装置により、高粘度(≧100cP)の塗布液を使用して、シート状のワークに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の経時変化の一例を示すタイムチャートである。 従来の塗布装置の一例の概略構成を示す図である。
本発明の塗布装置はワークに対向配置されるスリットノズルに塗布液を供給し、ワークまたはスリットノズルを相対移動させ、スリットノズルの先端から塗布液をワークの塗布面に吐出することにより、所定長さの塗布膜を形成するように構成される。以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置の概略構成を示す図である。図1に示すように塗布装置1は、給液路10、圧送装置20、スリットノズル30、ポンプ40、給液用バルブ50、移動装置60および制御部70を備える。
給液路10は塗布液が流通する配管であり、第1配管11および第2配管12の2本の配管から構成される。本実施の形態では、主要な送液手段として、圧送装置を利用することから、給液路10を構成する配管11、12は大きな圧力(数10kPa)に耐えうる材料で出来ていることが好ましく、例えばテフロン(登録商標)チューブが用いられる。圧力(0.3MPa以上)が増大するような場合は鋼管を使用することが好ましい。第1配管11は塗布液タンク23とポンプ40の入口との間を接続し、第2配管12はポンプ40の出口とスリットノズル30との間を接続している。
圧送装置20は一例としてエアを圧縮するコンプレッサ21と圧縮エアが流通する耐圧配管22、および塗布液タンク23から構成される。塗布液タンク23は塗布液を収容する密閉容器である。耐圧配管22の下流端は塗布液タンク23内の塗布液の液面上方に接続されている。上記第1配管11の上流端は塗布液タンク23内の塗布液に差し込まれている。
耐圧配管22は、コンプレッサ21で圧縮したエアを塗布液タンク23内に供給し、塗布液タンク23内の塗布液に一定の圧力を付与する。塗布液タンク23内で加圧された塗布液は給液路10内に押し出される。給液路10内の塗布液には常時一定圧力が一定方向に付与されることで、塗布液が給液路10を圧送され、スリットノズル30に供給されるようになる。なお、塗布液タンク23の出口側に圧力調整弁(レギュレータ)などを設けて、塗布液に付与される圧力を精密に一定に調整するようにして良い。本発明ではこのような圧送装置20を主要な送液手段として用いる。
スリットノズル30は給液路10の塗布液流通方向について最下流に配されている。スリットノズル30は略直方体形状を呈し、長さ方向がワークWの搬送方向に直交する方向に一致するようにワークWの上方に配置される。スリットノズル30の先端部(下端部)は先細のテーパに形成されており、その先端にスリット状の吐出口を有する。スリットノズル30は先端の吐出口が所定の間隔を離してワークWと対向配置され、吐出口から吐出される塗布液によりワークWに塗布膜が形成される。
ポンプ40は本発明の吸液手段の一例である。給液路10内の塗布液に正圧および負圧を付与することが可能に構成される。このようなポンプ40には一例としてピストンポンプやダイヤフラムポンプのような正逆流駆動可能な定容量ポンプが用いられる。すなわち、容量ポンプを正流駆動すると給液路10内の塗布液に正圧が付与され、定容量ポンプを逆流駆動すると給液路10内の塗布液に負圧が付与される。ポンプ40による圧力付与方向や流量は制御部70により制御される。
給液用バルブ50は給液路10の塗布液流通方向についてポンプ40よりも上流に配される。換言すれば、ポンプ40は給液路10の塗布液流通方向について給液用バルブ50よりも下流に配される。本実施の形態では、給液用バルブ50は第1配管11に配されている。給液用バルブ50の閉動作によって圧送装置20による塗布液の圧送が停止される。給液用バルブ50の開閉は制御部70によって制御される。
移動装置60は、ワークWまたはスリットノズル30を相対移動させるように構成される。本実施の形態では、移動装置60は、固定されたスリットノズル30に対してワークWを移動させる装置である。移動装置60は一例として、回転駆動される巻き取りローラ61および従動回転される送り出しローラ62を有し、巻き取りローラ61と送り出しローラ62に巻回保持されたシート状のワーク(ウェブ)Wを巻き取りローラ61により巻き取ることにより、いわゆるロール・トゥ・ロールでワークWを一定の速度で連続搬送する装置として構成されている。
制御部70はポンプ40および給液用バルブ50の動作を制御するように構成される。制御部70は一例としてコンピュータで構成される。本発明では、塗布装置1の稼働中に動作状態が変更されるのは、ポンプ40および給液用バルブ50である。圧送装置20および移動装置60も塗布装置1の稼働中に駆動されるが、制御部70による制御対象になっていない。これらは一旦動作が開始されると定常状態を維持し、動作状態は変更されないからである。
また、本発明では、主要な送液手段として圧送装置20を使用し、ポンプ40は補助的に使用するので、容量の少ない小型ポンプで必要な性能を得ることが出来る。1回の塗布動作で制御すべきポイントも少ないため、制御機構もシンプルに構成することが出来る。
次に、以上のように構成される塗布装置1の動作を図2〜図5を用いて説明する。図2は上記塗布装置1により、低粘度(1〜10cP)の塗布液を使用して、シート状のワークWに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の経時変化の一例を示すタイムチャートである。図3は上記塗布装置1により、高粘度(≧100cP)の塗布液を使用して、シート状のワークWに間欠塗布する場合の各部の制御タイミングおよびそれに基づく吐出圧力、膜厚の経時変化の一例を示すタイムチャートである。図4(A)〜図4(D)はそれぞれ図2、図3に示されたA〜Dの各期間に対応したスリットノズル先端部の塗布液の状態を示す模式図である。
同じ長さの塗布膜を形成する場合であっても、使用する塗布液の粘性によって圧送装置の供給圧力、ポンプの駆動開始のタイミングや流量の制御が変わってくるため、低粘度(1〜10cP)の塗布液の場合(図2、図5)と高粘度(100cP)の塗布液(図3)の場合に分けて説明する。
まず、図2、図4(A)〜図4(D)を用いて使用する塗布液が低粘度の場合について説明する。なお、塗布装置1の駆動中、圧送装置20は吐出圧力が20kPaとなる一定の圧力を塗布液タンクに常時供給しており、移動装置60は100mm/秒の一定の速度でシート状のワークWを連続搬送しているものとする。
<塗布開始部(図2の区間A、図4(A)参照。)>
給液用バルブ50の開動作(図2の時間軸では0.3秒)により、圧送装置20による給液路10内の塗布液への圧力供給が開始される。現実には、応答遅延があるので給液用バルブ50を開にしても吐出圧力は即座に規定の20kPaまで上昇しない。その間は膜厚が不均一な領域になるので出来るだけ短くしたい。そこで、吐出圧力の不足を補うために、給液用バルブ50の開動作と同時にポンプ40を所定の流量(一例として0.3mL/秒)で正流駆動し、塗布液に陽圧を付与する。これにより、給液用バルブ50の開動作から0.04秒で吐出圧力が規定値に達するようになり、膜厚が不均一な塗布開始部の塗布膜の長さは4mmに収まる。
比較のために、図5に、同じ低粘度の塗布液を使用し、ポンプ40を使用しないで圧送装置20による圧送のみにて塗布液を吐出する場合(給液用バルブ50の開閉動作のタイミングは同一。)によって同様の塗布膜の塗布を行った場合のタイムチャートを示す。この場合、吐出圧力が規定値に達するのに0.1秒掛かっており、膜厚不均一領域の長さは倍以上の10mmにも及ぶ。このことから、塗布開始時に補助的にポンプを活用することにより、応答性が向上し、膜厚が不均一な塗布開始部の塗布膜の長さを短縮する効果が認められる。
<塗布中央部(図2の区間B、図4(B)参照。)>
ポンプ40の正流駆動が停止された後は、圧送装置20による圧送のみで塗布液の吐出が行われる。吐出圧力は既定値に達した後、安定するので、吐出流量も安定し、均一な膜厚の塗布膜が得られる。この塗布中央部(図2にハッチングを施した領域参照。)は膜厚が均一な領域であり、エッチングなどの加工が行える塗布膜の使用可能領域である。つまり、この塗布中央部の長さが長いほど塗布膜の品質が良いことになる。図2では96mmがこの塗布中央部の長さとなる。
<塗布終了部(図2の区間C、図4(C)参照。)>
給液用バルブ50の閉動作(図2の時間軸では1.3秒)により、圧送装置20による給液路10内の塗布液への圧力供給が遮断される。現実には、応答遅延があるので給液用バルブ50を閉にしても吐出圧力は即座にゼロにならない。その間、給液用バルブ50の下流側にある塗布液には制動が及ばず、スリットノズル30先端に残留する余剰の塗布液が自重や惰性で流出し、塗布終了部の塗布膜が塗り広げられたり、不揃いになるおそれがある。そこで、吐出圧力の余剰を削減するためにポンプ40を所定の流量(一例として−0.3mL/秒)で逆流駆動し、塗布液に負圧を付与する。これにより、給液用バルブ50の閉動作から0.05秒で吐出圧力がゼロになる。これにより、膜厚が不均一な塗布終了部の塗布膜の長さは5mmに収まる。
これに対し、図5に示すように、同じ低粘度の塗布液を使用し、ポンプ40を使用しないで圧送装置20による圧送のみにて塗布液を吐出する場合は、吐出圧力が規定値に達するのに0.1秒掛かっており、膜厚不均一領域の長さは倍の10mmにも及ぶ。このことから、塗布終了時に補助的にポンプ40を逆流駆動することにより、スリットノズル30先端に残留する余剰の塗布液が吸引され、塗布液の切れが良くなる効果が期待される。すなわち、塗布終了時の応答性が改善され、塗布終了部の塗布膜が塗り広げられたり、不揃いになることが防止される。
<間欠領域(図2の区間D、図4(D)参照。>
吐出圧力がゼロになる(図2の時間軸では1.35秒)と、塗布液が吐出されなくなり、塗布膜の形成が中断される。そして、再び給液用バルブ50が開になり(図2の時間軸では1.5秒)、スリットノズル30先端から塗布液の吐出が再開される。
こうして、塗布開始部、塗布中央部および塗布終了部からなる塗布膜が、間欠領域を挟んで、連続搬送されるワークWに繰り返し形成されることになる。
次に、図3、図4(A)〜図4(D)を用いて、高粘度(≧100cP)の塗布液を使用する場合を説明する。なお、塗布装置1の駆動中、圧送装置20は吐出圧力が低粘度の塗布液の時より高い50kPaとなる一定の圧力を塗布液タンクに常時供給している。移動装置60の移動速度および給液用バルブ50の開閉動作のタイミングは低粘度の塗布液のときと同じである。
塗布液の粘性が高くなるに従い、給液用バルブ50の開閉動作に対する吐出圧力の応答は低下する。そこで、塗布開始部(A区間)においては、給液用バルブ50の開動作より若干早く、ポンプ40を所定の流速(図3では0.8mL/秒)で正流駆動するようにする。一方、塗布終了部(C区間)においては、給液用バルブ50の閉動作と同時にポンプ40を逆流駆動するが、ポンプ40を長く駆動するために立ち上げを速く行い、立ち下げは時間をかけて行うようにする。
これにより、塗布液の粘性が高くなることによる応答の低下を、移動装置60の移動速度および給液用バルブ50の開閉動作のタイミングを変更することなく、塗布開始部および塗布終了部で補助的に活用するポンプ40の駆動開始タイミングや流量を調整によってカバーすることが可能である。したがって、塗布液の粘性が変わっても生産性を損なうことなく、一定の品質の塗布膜を間欠塗布によって連続して形成することが可能となる。
なお、上記実施形態では、移動装置60はワークWをスリットノズル30に対して移動させるように構成したが、スリットノズル30を可動支持部材に支持し、スリットノズル30をワークWに対して移動させるように構成しても良い。ただし、スリットノズル30を移動させる場合は、少なくとも第2配管12にはフレキシブルチューブを採用する必要がある。
図6は本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略構成を示す図である。塗布終了時の塗布装置の挙動で、給液用バルブ50を閉状態としたときに、高粘度の塗布液を扱う場合や低粘度でも塗布量が多い場合、あるいは塗布液が吐出するスリットの幅が狭い場合などは粘性抵抗などの抵抗力によって残圧が発生する。この場合、ポンプ40の逆流駆動による塗布液の吸引は、残圧の除去から始まる。つまり、前述した条件などの場合以外と比較すると実際に塗布液の吸引が開始されるまでにワンテンポ応答が遅れてしまう。そのため塗布終了部の塗布膜が塗り広がる原因となってしまう。
そこで、本実施の形態に係る塗布装置1では、図6に示すように、残圧除去手段80をさらに備える。残圧除去手段80は、スリットノズル30内の塗布液に作用する上記の残圧を除去するように構成される。残圧除去手段80は一例として、配管81および残圧除去バルブ82を備える。配管82の一端はスリットノズル30に接続され、他端は大気中に開放されている。残圧除去バルブ82は制御部70に制御されて開閉動作する。
残圧除去バブル82をスリットノズル30の近辺に設けることでより残圧の除去が効果的に行われる。そして、配管81は比較的大口径(例えば、給液路10を構成する配管11,12の径がφ4〜6mmの時に径φ10mm)有することで塗布液が高粘度の場合でも効率的に残圧の除去が可能となる。さらにスリットノズル30から配管81を垂直上方に引き出し、残圧除去バルブをスリットノズル30の直上に配置することでスリットノズル30内に溜まったエアーも残圧の除去と同時に排出することが可能となる。残圧の除去で発生する塗布液はドレンボトル83等に回収される。未使用の塗布液のため塗布液タンク23に戻して再利用すれば塗布液の節約を図れる。
給液用バルブ50、ポンプ40および残圧除去バルブ82の動作タイミングとしては、図7に示すように、塗布終了時に、給液用バルブ50が閉制御されると同時に残圧除去バルブ82が開制御され、残圧の除去を開始する。残圧除去バルブ82の開状態に維持する時間は、一例として0.05秒〜0.5秒程度(図7の例では0.15秒)に設定される。残圧の除去が終了し残圧除去バルブ82を閉制御するとともにポンプ40を逆流駆動させ、スリットノズル30先端の余剰の塗布液を吸引する。
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、長尺状のワークに所定長さの塗布膜を繰り返して形成する、間欠塗布に有用である。
W…ワーク
1…塗布装置
10…給液路
11…第1配管
12…第2配管
20…圧送装置
21…コンプレッサ
22…耐圧配管
23…塗布液タンク
30…スリットノズル
40…ポンプ
50…給液用バルブ
60…移動装置
61…巻き取りローラ
62…送り出しローラ
70…制御部
80…残圧除去手段
81…配管
82…残圧除去バルブ

Claims (7)

  1. ワークに対向配置されるスリットノズルに塗布液を供給し、移動装置により前記ワークまたは前記スリットノズルを相対移動させ、前記スリットノズルの先端から前記塗布液を前記ワークの塗布面に吐出することにより、所定長さの塗布膜を形成する塗布装置であって、
    前記スリットノズルに接続され、前記スリットノズルに塗布液を供給するための給液路と、
    前記給液路内の塗布液に一定方向に一定圧力を常時供給して塗布液を圧送する圧送装置と、
    前記給液路を開閉する給液用バルブと、
    前記スリットノズル内の塗布液を吸引可能に構成された吸液手段と、
    前記給液用バルブおよび前記吸液手段の動作を制御する制御部と、
    を備え、
    前記吸液手段は、前記給液路の塗布液流通方向において前記給液用バルブの下流に配され、前記給液路内の前記塗布液に負圧を付与するように構成されたポンプを含み、
    前記制御部は、
    塗布終了時に、前記給液用バルブを閉じて、前記給液路内の前記塗布液に負圧を付与するように前記ポンプを駆動させ、
    塗布開始時から塗布終了時までの間に、前記給液用バルブを開けて、前記ポンプの駆動を停止する、
    ように構成される、塗布装置。
  2. さらに、前記制御部により制御され、前記スリットノズル内の残圧を除去可能に構成された残圧除去手段を備える、請求項1に記載の塗布装置。
  3. 前記残圧除去手段は、前記スリットノズルに接続され末端が大気に開放された配管と、前記制御部によって制御されて前記配管を開閉する残圧除去バルブと、を備える、請求項2に記載の塗布装置。
  4. 前記ポンプが正逆流駆動可能な定容量ポンプである、請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
  5. 前記移動装置は、シート状の前記ワークを一定速度で連続搬送するように構成された、請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
  6. 給液路内の塗布液に一定圧力を供給することにより圧送される塗布液を、スリットノズルの先端から吐出し、前記スリットノズルの先端との間に所定の間隔を維持して前記スリットノズルに対して相対移動されるワークの塗布面に所定長さの塗布膜を形成する塗布方法であって、
    塗布開始時から塗布終了時までの間に、前記スリットノズルに前記塗布液を供給するための給液路において圧送装置と前記スリットノズルとの間に配されるポンプの駆動を停止し、前記圧送装置で前記塗布液を圧送し、
    塗布終了時に前記塗布液の圧送を停止するとともに、前記ポンプを駆動させることで前記スリットノズルの先端に残留する塗布液を吸引することを特徴とする塗布方法。
  7. 給液路内の塗布液に一定圧力を供給することにより圧送される塗布液を、スリットノズルの先端から吐出し、前記スリットノズルの先端との間に所定の間隔を維持して前記スリットノズルに対して相対移動されるワークの塗布面に所定長さの塗布膜を形成する塗布方法であって、
    塗布開始時から塗布終了時までの間に、前記スリットノズルに前記塗布液を供給するための給液路において圧送装置と前記スリットノズルとの間に配されるポンプの駆動を停止し、前記圧送装置で前記塗布液を圧送し、
    塗布終了時に前記塗布液の圧送を停止するとともに、前記スリットノズル内の残圧を除去した後、前記ポンプを駆動させることで前記スリットノズル内に残留する塗布液を吸引することを特徴とする塗布方法。
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