JP5870643B2 - 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
燃料電池の種類は、使用する電解質によって、固体高分子形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、アルカリ形等に分類されており、それぞれ、運転温度が大きく異なっている。したがって、それに伴い、発電規模や利用分野も異なっている。
固体高分子形燃料電池は、触媒層被覆膜(Catalist−Coated−Membrane:CCM)と呼ばれる電解質膜の両面に一対の電極触媒層を配置させて形成された膜に対して、一方の電極に水素を含有する燃料ガスを供給し、他方の電極に酸素を含む酸化剤ガスを供給するためのガス流路を形成した、一対のセパレータ板で挟持した電池である。この一対のセパレータ板で挟持した電池を、単電池セルと呼ぶ。
近年では、膜電極接合体(Membrane−Electrolyte−Assembly:MEA)と呼ばれる、触媒層被覆膜にガスケットやガス拡散層を配置した構造が主流となっている。
燃料電池用のガスケットは、触媒層被覆膜における電極触媒周縁部の電解質膜露出部に配置される場合が多い。また、燃料電池用のガス拡散層は、電極触媒層の両面に配置される場合が多い。
したがって、ガスケットやガス拡散層を貼合する際に、電解質膜の寸法が変化して、電解質膜に皺が生成するという問題が発生するおそれがある。また、電解質膜上に形成した電極触媒層の寸法も同時に変化して、皺が生成するという問題が発生するおそれがある。
具体的には、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、電解質膜と、当該電解質膜の面上に形成された電極触媒層と、を有する触媒層被覆膜と、
前記電極触媒層の周縁部に枠状に形成されたガスケットと、
前記電極触媒層のうち前記電解質膜と対向する面と反対側の面に形成されたガス拡散層と、を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
前記触媒層被覆膜を高温・高湿度の環境下で一定時間以上静置させて湿潤状態にする触媒層被覆膜湿潤工程と、
前記触媒層被覆膜湿潤工程による前記触媒層被覆膜の湿潤状態を維持した状態で、前記電極触媒層の周縁部に前記ガスケットを貼合するガスケット貼合工程と、
前記ガスケット貼合工程の後工程であり、且つ前記電極触媒層に前記ガス拡散層を貼合するガス拡散層貼合工程と、を有し、
前記高温・高湿度の環境下は、前記ガスケット貼合工程及び前記ガス拡散層貼合工程で使用される温度よりも高い温度、及び前記ガスケット貼合工程及び前記ガス拡散層貼合工程で使用される湿度よりも高い湿度の環境下であり、
前記ガス拡散層貼合工程を、前記触媒層被覆膜湿潤工程よりも低い温度及び湿度の大気中で行うことを特徴とするものである。
このため、電解質のみならず、電解質膜の両面に一対の電極触媒層を形成した触媒層被覆膜を取り扱う際にも、適用することが可能である。加えて、触媒層被覆膜の寸法を安定化させる工程が、触媒層被覆膜を高温・高湿度の環境下で湿潤状態にし、この湿潤状態を維持した状態でガスケットを貼合するのみであることから、製造プロセスを簡便化させることが可能となる。
このため、ガス拡散層を電極触媒層の両面に貼合することを含む、ガスケット貼合後の触媒層被覆膜使用時に、ガスケット枠内における触媒層被覆膜の寸法の安定化を図ることが可能となる。
(構成)
図1は、本実施形態の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以降の説明では、「膜電極接合体」と記載する場合がある)の製造方法(以降の説明では、「製造方法」と記載する場合がある)により製造された、膜電極接合体の概略構成を示す断面図である。
触媒層被覆膜4は、電解質膜1と、カソード触媒層2と、アノード触媒層3を有している。
電解質膜1は、固体高分子形燃料電池に一般的に用いられるものを用いる。具体例としては、フッ素系電解質膜や炭化水素電解質膜を、好適に用いることが可能である。
具体例としては、白金または白金と他の金属(例えば、Ru、Rh、Mo、Cr、Co、Fe等)との合金の微粒子(平均粒径は、10[nm]以下が望ましい)が表面に担持されたカーボンブラック等の導電性炭素微粒子(平均粒径:20〜100 nm程度)と、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液等の高分子溶液が適当な溶剤(エタノール等)中で均一に混合されたインクより作製されるものを用いることが可能である。これは、アノード触媒層3に関しても同様である。
カソード側ガスケット5は、枠状の形状をした樹脂フィルムである。
本実施形態では、一例として、カソード側ガスケット5を、熱可塑性樹脂を用いて形成した場合を説明する。
また、カソード触媒層2のうち、電解質膜1と対向する面と反対側の面(図1中では、上側の面)には、カソード側ガス拡散層7が貼合されている。
本実施形態では、一例として、カソード側ガス拡散層7を、炭素材料によって構成された織布、不織布(炭素繊維を交絡させることによって得られるフェルト等)、ペーパー類(カーボンペーパー等)等を用いて形成した場合を説明する。
アノード側ガスケット6は、カソード側ガスケット5と同様、枠状の形状をした樹脂フィルムである。
また、アノード触媒層3のうち、電解質膜1と対向する面と反対側の面(図1中では、下側の面)には、アノード側ガス拡散層8が貼合されている。
アノード側ガス拡散層8は、カソード側ガス拡散層7と同様、少なくとも、ガス透過性(通気性)と導電性を有するものであればよい。
また、本実施形態では、一例として、アノード側ガス拡散層8は、カソード側ガス拡散層7と同様の材料を用いて形成した場合を説明する。
以下、図1を参照して、本実施形態の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、触媒層被服膜湿潤工程と、ガスケット貼合工程と、ガス拡散層貼合工程と、一体化工程を有する。
(触媒層被服膜湿潤工程)
触媒層被服膜湿潤工程は、触媒層被服膜4を湿潤状態にする工程であり、触媒層被覆膜4を、所定の高温・高湿度の環境下で一定時間以上静置させておくことで、触媒層被覆膜4を構成する電解質膜1に、静置環境下の水分を吸収して、膨潤させる。
触媒層被服膜湿潤工程を行う際の湿度は、その後の製造プロセスで使用される湿度よりも高い湿度である50[%]以上であることが望ましい。
また、触媒層被服膜湿潤工程を行う際の温度も、湿度と同様に、その後の製造プロセスで使用される温度よりも高い温度である、23[℃]以上であることが望ましい。
ガスケット貼合工程は、触媒層被服膜湿潤工程による触媒層被服膜4の湿潤状態を維持した状態で、触媒層被覆膜4にカソード側ガスケット5及びアノード側ガスケット6を貼合する工程である。すなわち、ガスケット貼合工程は、触媒層被服膜湿潤工程の後工程である。
また、触媒層被覆膜4にアノード側ガスケット6を貼合する際には、触媒層被覆膜4にカソード側ガスケット5を貼合した後に、触媒層被覆膜4を上下反転させ、触媒層被服膜湿潤工程と同じ環境下において、治具や吸着プレートを用いて、皺が発生しないように触媒層被覆膜4を固定し、アノード触媒層3の周縁部において、電解質膜1の露出部にアノード側ガスケット6を貼合する。
また、ガスケット貼合工程を行う際の温度は、熱による膨潤・収縮を避けるために、触媒層被服膜湿潤工程の温度と等しい環境下とする。
ガス拡散層貼合工程は、カソード触媒層2にカソード側ガス拡散層7を貼合した後、触媒層被覆膜4を上下反転させ、アノード触媒層3にアノード側ガス拡散層8を貼合する工程であり、ガスケット貼合工程の後工程である。
ガス拡散層貼合工程を行う際の湿度は、カソード触媒層2にカソード側ガス拡散層7を貼合し、アノード触媒層3にアノード側ガス拡散層8を貼合する環境下の水分の影響を受けて、膨潤により、電解質膜1、カソード触媒層2、アノード触媒層3の寸法が大きくなることを抑制するために、触媒層被服膜湿潤工程の湿度より低い環境下とする。
このため、ガス拡散層貼合工程を行った後の使用環境が、前工程で湿潤状態にした環境下よりも低温・低湿の環境下であれば、電解質膜1が収縮した際にも、カソード触媒層2の周縁部がカソード側ガスケット5により固定されているとともに、アノード触媒層3の周縁部がアノード側ガスケット6により固定されているため、カソード触媒層2及びアノード触媒層3の寸法の変化が抑制されているため、皺が生成されることが抑制されている。
一体化工程は、上述した触媒層被服膜湿潤工程、ガスケット貼合工程、ガス拡散層貼合工程を行った後に後工程として行う工程であり、電解質膜1、カソード触媒層2、アノード触媒層3、触媒層被覆膜4、カソード側ガスケット5、アノード側ガスケット6、カソード側ガス拡散層7及びアノード側ガス拡散層8に対するプレス及び熱処理を行って一体化する工程である。
なお、一体化を行う方法については、熱プレス法や熱ラミネート法等を用いてもよい。
一体化工程を行うと、膜電極接合体9が製造される。
以下、具体的な実施例(実施例1、実施例2、比較例)により、本発明の固体高分子形燃料電池の膜電極接合体及びその製造方法を説明する。
なお、以下に説明する、実施例1、実施例2及び比較例においては、製造時における湿度及び温度を、以下の表1中に示す条件とする。
まず、白金の担持量が60[%]である白金担持カーボン触媒と、20質量%高分子電解質溶液であるNafion(登録商標、デュポン社製)を、混合比1:2の、水、エタノール混合溶媒で混合した。
続いて、上記の混合物に対し、遊星ボールミルで分散処理を行い、触媒インクを調整した。
次に、プレート上に転写シートを固定し、ドクターブレードにより触媒インクを転写シート上に塗布した。
そして、触媒インクからなる塗膜が形成された転写シートを、オーブン(熱風循環恒温乾燥機41‐S5H:佐竹化学機械工業社製)に入れ、オーブンの温度を50[℃]に設定し、5分間乾燥させることで、転写シート上に触媒層(カソード触媒層2、アノード触媒層3)を形成した。
カソード触媒層2及びアノード触媒層3が形成された転写シートを、25[cm2]で2枚切り取り、カソード触媒層2とアノード触媒層3が正対するように、電解質膜1の両面に配置した。
続いて、130[℃]、6[MPa]の条件でホットプレスを行い、転写基材のみを剥がして、触媒層被覆膜4を形成した。
次に、触媒層被覆膜4を、23[℃]、60[%R.H.]に調整された部屋に1日静置させ、触媒層被覆膜4を膨潤させた。続いて、同じ環境下で、触媒層被覆膜4を膨潤させた状態を維持するために、触媒層被覆膜4を吸着テーブル上に固定した。
続いて、カソード側ガス拡散層7として、MPL処理カーボンペーパー(東レ社製)を、カソード触媒層2の上に、23[℃]、50[%R.H.]の大気中で貼合した。
実施例1では、ガスケット(カソード側ガスケット5及びアノード側ガスケット6)を貼合する前後において、電極触媒層(カソード触媒層2とアノード触媒層3)の、[(ガスケット貼合後の電極触媒層の長さ−ガスケット貼合前の電極触媒層の長さ)×100/(ガスケット貼合前の電極触媒層の長さ)]で表される寸法変化率の値は、カソード触媒層2及びアノード触媒層3で、共に0.2[%]以下であった。
まず、実施例1と同様の手順により、触媒層被覆膜4を形成した。
そして、形成した触媒層被覆膜4を、28[℃]、50[%R.H.]に調整された部屋に1日静置させて、触媒層被覆膜4を膨潤させた。
続いて、同じ環境下で、触媒層被覆膜4を膨潤させた状態を維持するために、触媒層被覆膜4を吸着テーブル上に固定した。
次に、吸着テーブル上に固定した触媒層被覆膜4に、カソード側ガスケット5として、開口部のサイズがカソード触媒層2のサイズと同じサイズとなるように枠状にカットした厚さ[175um]のPENフィルムを、23[℃]、50[%R.H.]の大気中で貼合した。
次に、触媒層被覆膜4を上下反転させ、カソード側ガスケット5及びカソード側ガス拡散層7が貼合されている面が吸着テーブルと接するように固定した後、アノード側ガスケット6及びアノード側ガス拡散層8を、カソード側ガスケット5及びカソード側ガス拡散層7と同様に貼合した。
まず、実施例1及び2と同様の手順により、触媒層被覆膜4を形成した。
そして、形成した触媒層被覆膜4を、23[℃]、50[%R.H.]に調整された部屋に1日静置させて、触媒層被覆膜4を膨潤させた。
続いて、同じ環境下で、触媒層被覆膜4を膨潤させた状態を維持するために、触媒層被覆膜4を吸着テーブル上に固定した。
次に、吸着テーブル上に固定した触媒層被覆膜4に、カソード側ガスケット5として、開口部のサイズがカソード触媒層2のサイズと同じサイズとなるように枠状にカットした厚さ[175um]のPENフィルムを、30[℃]、70[%R.H.]の大気中で貼合した。
次に、触媒層被覆膜4を上下反転させ、カソード側ガスケット5及びカソード側ガス拡散層7が貼合されている面が吸着テーブルと接するように固定した後、アノード側ガスケット6及びアノード側ガス拡散層8を、カソード側ガスケット5及びカソード側ガス拡散層7と同様に貼合した。
このため、カソード触媒層2とカソード側ガスケット5、及びアノード触媒層3とアノード側ガスケット6が、一部重なり合った。
2 カソード触媒層
3 アノード触媒層
4 触媒層被覆膜
5 カソード側ガスケット
6 アノード側ガスケット
7 カソード側ガス拡散層
8 アノード側ガス拡散層
9 膜電極接合体
Claims (2)
- 電解質膜と、当該電解質膜の面上に形成された電極触媒層と、を有する触媒層被覆膜と、
前記電極触媒層の周縁部に枠状に形成されたガスケットと、
前記電極触媒層のうち前記電解質膜と対向する面と反対側の面に形成されたガス拡散層と、を備える固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
前記触媒層被覆膜を高温・高湿度の環境下で一定時間以上静置させて湿潤状態にする触媒層被覆膜湿潤工程と、
前記触媒層被覆膜湿潤工程による前記触媒層被覆膜の湿潤状態を維持した状態で、前記電極触媒層の周縁部に前記ガスケットを貼合するガスケット貼合工程と、
前記ガスケット貼合工程の後工程であり、且つ前記電極触媒層に前記ガス拡散層を貼合するガス拡散層貼合工程と、を有し、
前記高温・高湿度の環境下は、前記ガスケット貼合工程及び前記ガス拡散層貼合工程で使用される温度よりも高い温度、及び前記ガスケット貼合工程及び前記ガス拡散層貼合工程で使用される湿度よりも高い湿度の環境下であり、
前記ガス拡散層貼合工程を、前記触媒層被覆膜湿潤工程よりも低い温度及び湿度の大気中で行うことを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。 - 前記ガスケットは、枠状の形状をした樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
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