1.1.インクジェット記録装置
以下、本発明の一実施形態を、記録装置としてインクジェット式プリンターを用いた例により、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、記録媒体送りモーター4の駆動により用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された記録媒体Pに対して吐出されるようになっている。これにより記録物を製造することが可能となる。
記録方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でも良い。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
1.2.インクジェット記録方法
1.2.1.樹脂インクの層の形成工程
本実施形態にかかるインクジェット記録方法における樹脂インクの層の形成工程(以下、適宜形成工程という)は、後述の樹脂インクを記録媒体に対して層を形成する工程である。形成手段については特に制限はなく、公知の技術を選択することができる。例えば、前述のインクジェット記録装置を用いてヘッド9によって形成しても良く、または、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーコーター、スリットコーター等の従来から利用されているアナログコーターによって塗布しても良い。インクジェット記録装置を用いた場合には、任意の箇所に層を形成可能である点で優れている。一方アナログコーターの場合は、樹脂インクの粘度の制限範囲が広く、高速で塗布できる点で優れている。アナログコーターの市販品としては、たとえばKハンドコーター(松尾産業株式会社製)、バーコーター(第一理化株式会社製)、Capilary Coater小型基板&小容量タイプ(株式会社ヒラノテクシード製)、No579バーコーター(株式会社安田精機製作所製)などがある。
本工程で形成される層の機能の一つとしては、光輝性インク中の溶剤が層に浸透することによって、記録媒体の表面に光輝性顔料を平坦に配向させることが挙げられる。また、本工程で形成される層の機能の一つとしては、光輝性層が形成される面の平坦性を向上させることが挙げられる。なお、層は、後述する光輝性層との界面が明確に分離している場合と、該界面が必ずしも明確に分離していない場合とがある。また、本工程で形成される機能の一つとしては、光輝性インク(記録物)の耐擦性を向上させることが挙げられる。
また、樹脂インクの層の形成工程は、形成された樹脂インクの層の表面粗さが20μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、「表面粗さ」とは、JIS B 0601:2001に規定される算術平均粗さ(Ra)を意味する。これによって、より表面が粗い普通紙のような記録媒体であっても、光輝性顔料が平滑に配列し高い光沢(光輝性)を発揮するようになる。さらに、形成される樹脂インクの層は、記録媒体の種類によって変化させても良い。たとえば、平滑な表層を有する記録媒体であればインクの消費量の観点と、記録物として凹凸防止の観点から、光輝性インク中の分散媒の受容限界を超えない範囲で樹脂インクの層は薄い方が好ましい。しかし、一方インク受容層の無い記録媒体であって光輝性インクの溶剤に対する溶解度が極めて低い記録媒体の場合は、光輝性インク中の分散媒が表層であふれ、光輝性顔料が平滑に配列しなくなってしまうのが一層起こりやすいので、他の記録媒体の種類より樹脂インクの層の膜厚を厚く形成すると好ましい。分散媒が良好に受容されていない状態で乾燥が進むと表層の光輝性顔料が平滑に配列しづらくなる。
また、樹脂インクの層の表面粗さは樹脂インクの層の光沢度と密接な関係を有する。また、樹脂インクの層の光沢度と、光輝性インクの層の光沢度も後述の図2のように密接な関係を有する。本願発明にかかる樹脂インクに含有される好適な樹脂の屈折率の範囲(1.4〜1.6)においては、樹脂インクの層の60°光沢度が20以上であることが好ましく、より好ましくは45以上であり、さらに好ましくは70以上であり、一層好ましくは90以上である。ここで、樹脂の60°光沢度については、市販されている光沢度計を用いて測定する事が可能であり、前述の樹脂インクの層の60°光沢度は光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用いて、煽り角度60°で測定した値である。
他の例として、記録媒体の表面が非常に粗い場合は、その表面を平滑にするために樹脂インクの層の膜厚を厚くする必要があるが、一方で記録媒体の表面が比較的平坦である場合は、樹脂インクの層の膜厚は薄くしても平滑性を出すことが可能となる。
膜厚を厚く形成する手段としては、インクジェット記録方法の場合は記録密度(duty)を上昇させるのが良い。ここで、ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
なお、記録方法は、乾燥工程を含む第1下地層形成工程と、乾燥工程を含まない第2下地層形成工程とを有していても良い。これによって、高い光沢(光輝性)を有する記録物が欲しい場合には第1下地層形成工程で下地層を形成、その後に記録し、少し抑えた光沢を有する記録物が欲しい場合には第2下地層形成工程で下地層を形成、その後に記録することにより、より一層広い範囲の光沢を表現することが可能となる。また、高い光沢を持った領域と、少し光沢を抑えた領域を持った記録媒体がほしい場合には、部分的に加熱させる乾燥工程(たとえば、部分的に温風を当てる、プラテンを部分的に加熱させるなど)を設けることにより、目的の光沢を持った記録物を得ることが可能となる。また、少し抑えた光沢が欲しい領域に対して光輝性インクで記録を行い(第2下地層形成工程を利用)、その後に乾燥工程を入れて、再度光輝性インクで高い光沢が欲しい領域に記録することで(第1下地層形成工程を利用)、目的の光沢を持った記録物を得ることが出来る。つまりこの場合は、最初に行われた下地層形成工程が第2下地層形成工程に該当し、最初に行われた下地形成工程と、光輝性インクによって記録された後に行われる乾燥工程とを合わせたのが、第1下地層形成工程に該当する。
加熱手段としては、プラテン3を加熱してヒーターとして機能させてよいし、ヒーター線等により放射熱で加熱させてもよいし、装置内に温風を送る手段を設けそれによって加熱させてもよい。また、他の公知の加熱手段を用いてもよい。なお、乾燥工程は下地層の平滑な面の形状を早期に維持出来ることが効果的であり、必ずしも設ける必要は無い。また、下地層の形状を維持するための方法は、活性エネルギー線を用いた樹脂インクの硬化方法であっても良い。活性エネルギー線としては、その照射により重合開始剤から開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば特に制限はなく、広く、α線、γ線、β線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、活性エネルギー線としては、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
本工程で形成される下地層は記録媒体の算術平均粗さを低くするのであれば特に量や厚みは限定されないが、算術平均粗さRaは20μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。これにより、記録媒体の表面に光輝性顔料をより平滑に配向させることができ、特に優れた光輝性を有する画像を記録(形成)することができる。
樹脂インクの層の膜厚は、好ましくは0.1〜30μmであり、より好ましくは1〜15μmである。樹脂インクの層の膜厚が0.1μm未満であると光輝性インクの溶剤の浸透効果または光輝性顔料の平滑化効果が不足することがある。
1.2.2.光輝性層を形成する工程
本実施形態にかかるインクジェット記録方法における光輝性層を形成する工程は、上述のインクジェット記録装置を用い、下地層の上に、光輝性インクの液滴を吐出して、記録媒体に付着させて行われる。本工程で形成される光輝性層の機能の一つとしては、記録媒体に光輝性面を形成することが挙げられる。光輝性層の膜厚は、好ましくは0.02〜10μmであり、より好ましくは0.05〜5μmである。光輝性層の膜厚が0.02μm未満であると、光輝性層表面の反射光より透過光の割合が多くなる為、結果として十分な光輝性が得られなくなる場合がある。
光輝性層を形成する工程は、たとえば、25℃程度の室温で行うことができ、さらに高い温度で行われてもよい。記録媒体として、普通紙を選択した場合は、光輝性層を形成する工程は、高い温度、たとえば、20〜150℃、好ましくは25〜110℃、さらに好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜90℃で行われることができる。このようにすれば、光輝性インクに溶媒が含有されるときの乾燥速度を高めることができる。
なお、記録方法は、乾燥工程を含む第1下地層形成工程と、乾燥工程を含まない第2下地層形成工程とを有していても良い。これによって、高い光沢(光輝性)を有した記録物が欲しい場合には第1下地層形成工程で下地層を形成、その後に記録し、少し抑えた光沢を有した記録物が欲しい場合には第2下地層形成工程で下地層を形成、その後に記録することが可能になり、より一層広い範囲の光沢を表現することが可能となる。また、高い光沢を持った領域と、少し光沢を抑えた領域を持った記録媒体がほしい場合には、部分的に加熱させる乾燥工程(たとえば、部分的に温風を当てる、プラテンを部分的に加熱させるなど)を設けることにより、目的の光沢を持った記録物を得ることが可能となる。
また、少し抑えた光沢が欲しい領域に対して光輝性インクで記録を行い(第1下地層形成工程を利用)、その後に乾燥工程を入れて、再度光輝性インクで高い光沢が欲しい領域に記録することで(第2下地層形成工程を利用)、目的の光沢を持った記録物を得ることが出来る。つまりこの場合は、最初に行われた下地層形成工程が第1下地層形成工程に該当し、最初に行われた下地形成工程と光輝性インクによって記録された後に行われる乾燥工程を合わせたのが、第2下地層形成工程に該当する。
1.3.記録媒体
本実施形態では、記録対象となる記録媒体は、特に限定されず、例えば、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体、ならびに粗面を有する記録媒体であっても好適に用いることが可能である。
「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、インクの受容層を備えていない、あるいは、インクの受容層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
インク非吸収性記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を有していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
インク低吸収性記録媒体としては塗工紙が挙げられ、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)等が挙げられる。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプン、ポリビニルアルコールなどの接着剤を混合して作る。塗料は、紙の製造工程の中でコーターという機械を使って塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m2以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に40g/m2前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙とは、20g/m2〜40g/m2程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。
ここで、粗面を有する記録媒体とは、記録領域となる記録媒体の表面粗さが、20〜100μmである記録媒体をいう。表面粗さは、例えば、表面粗さ計や光干渉型顕微鏡を用いて測定することが可能である。粗面を有する記録媒体として、例えば、XeroxP(富士ゼロックス社製;Ra=29.2)、プレイン・デザインペーパー ブラックペーパー(トチマン(株)社製;Ra=30.2)、スーパーファイン紙(セイコーエプソン社製;Ra=36.6)、およびBフルート段ボールシート(レンゴー社製;算術平均粗さRa=39.9μm)等が挙げられる。なお、前記記録媒体に対して、平滑面を有する記録媒体としては算術的表面粗さRaが3未満の記録媒体をいい、例えば、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製;Ra=1.1)、および写真用紙エントリー(セイコーエプソン社製;Ra=2.4)等が挙げられる。表面粗さの測定装置としては、段差・表面粗さ・微細形状測定装置P−15(KLA−Tencor社製)等がある。
2.インクセット
本願発明にかかるインクジェット記録用のインクセットは、記録媒体に対し、インクジェット記録装置を用いて、光輝性を有する画像の記録に用いられるインクセットであって、樹脂インクと、非水系光輝性顔料インク(以下、光輝性インクともいう)とを備える。また、上記インクセットとして、少なくとも上記樹脂インクおよび非水系光輝性顔料インクを備えたものを例示する。上記の各インクをそれぞれ単独または複数備えたインクセットとしてもよいし、さらに一または複数の他のインクを含むインクを備えたインクセットとしてもよい。インクセットに備えることができる他のインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のカラーインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
2.1.樹脂インク
本実施形態にかかる水系樹脂インクは、水溶性樹脂溶剤と、樹脂成分として、前記水溶性樹脂溶剤には相溶する樹脂を含んでいる。相溶とは、前記水溶性樹脂溶剤中に樹脂を混ぜると溶解あるいは粒子が膨潤する組み合わせを指す。なお、本発明において樹脂インクは、水系のインク(水分含有量が50%以上)、非水系(水分含有量が50%未満)のインクのいずれであってもよい。以下、水系のインクの場合を具体例にして各成分を説明する。
(1)水
水は、水性インクの主な媒体であり、好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いた水性インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
(2)水溶性樹脂溶剤
水溶性樹脂溶剤は、樹脂インクに同時に添加している樹脂と相溶する水溶性溶剤から選ばれる。用いる樹脂によって最適な組み合わせはあるが、例えば、水溶性の複素環式化合物、水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテル等が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、および2−ピロリドン等のピロリドン類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、および乳酸ブチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のオキシアルキレングリコールエーテル類、1,4−ジオキサン等の環式エーテル類が好ましい。特に、樹脂インクの保存安定性、十分な乾燥速度、と下地層の皮膜化促進の点で、ピロリドン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類が特に好ましい。
水溶性樹脂溶剤は後述する理由から、樹脂インクによる皮膜をさらに強化する為に有効である。
水溶性樹脂溶剤添加量は、樹脂インクの全量に対して、好ましくは1.0質量%〜50.0質量%、さらに好ましくは4.0質量%〜25.0質量%である。水溶性樹脂溶剤添加量が、1質量%未満である場合、樹脂インク中の樹脂および下地形成ワックスの皮膜形成に支障が生じ、結果的に樹脂インクの固化・定着が不充分となる場合がある。一方、水溶性樹脂溶剤添加量が50質量%を超えた場合、樹脂インクの保存安定性に劣化を生じる場合がある。
(3)樹脂
樹脂は、水溶性樹脂溶剤と相溶することで、樹脂インクの乾燥後に強固な樹脂膜を形成することができ、かつ樹脂の元々のガラス転移温度より低い温度で造膜することができる。
インクジェット記録装置に用いる場合には、水に不溶な樹脂を用いることで、樹脂インク中に十分な量の樹脂成分を添加しつつ、各インクの粘度を低く抑えることができ、高速記録において吐出安定性を確保することができるため好ましい。樹脂は、インクが、記録媒体上にヘッドから吐出され、乾燥されると、まずインク中の主成分である水などが代表例の溶媒が蒸発しはじめ、その結果インク中での水溶性樹脂溶剤が濃縮されることで、樹脂が溶解状態となる。最終的には水溶性樹脂溶剤成分の蒸発にともない、溶解していた樹脂(溶解している為、粒子ではなくなっている)が、強固な皮膜を形成する。
このような水不溶性の樹脂の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
樹脂は、微粒子粉末として水性インク中の他の成分と混合されても良いが、樹脂エマルジョンの形態でインク中に含まれることが好ましい。その理由は、樹脂粒子としてインク中に添加しても該樹脂粒子の分散が不十分となる場合があるため、分散性の観点からはエマルジョンの形態が好ましいからである。また、エマルジョンとしては、樹脂インクの保存安定性の観点から、アクリルエマルジョンが好ましく、スチレン−アクリル酸共重合体エマルジョンがさらに好ましい。
本願明細書において、「樹脂粒子」とは、水に不溶性の樹脂が主として水からなる分散媒中に粒子状に分散しているもの、あるいは水に不溶性の樹脂を主として水からなる分散媒中に粒子状に分散させたもの、更にはその乾燥物をも包含したものを意味する。また、「エマルジョン」というときは、ディスパージョン、ラテックス、サスペンジョンと呼ばれる固/液の分散体をも包含したものを意味するものとする。
樹脂をエマルジョンの状態で得る場合には、樹脂粒子を場合により界面活性剤と共に水に混合することによって調製することができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルの樹脂又はスチレン−(メタ)アクリル酸エステルの樹脂と、場合により(メタ)アクリル酸樹脂と、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常50:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合には、エマルジョンが形成されにくく、また前記範囲を越える場合には、インクの耐水性が低下したり、密着性が悪化したりする場合があるので好ましくない。
樹脂エマルジョンとして、市販の樹脂エマルジョンを利用することも可能であり、例えばマイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン;日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン;大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン;大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン;日本ゼオン株式会社製)、レザミンD−1060(ウレタン系樹脂エマルジョン;大日精化工業株式会社製)、またはサイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン;サイデン化学株式会社製)などを挙げることができる。
樹脂は、樹脂インク全量に対して、固形分換算で1質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましく、4質量%〜25質量%の範囲で含まれることがより好ましい。これら樹脂の含有量の好適範囲は、樹脂インクのインクジェット適正物性値、信頼性(目詰まりや吐出安定性等)の観点から上限値を規定し、本発明の効果(耐擦性等)をより有効に得る観点から下限値を規定したものである。
(4)ワックス
水系樹脂インクは、さらにワックスを添加してもよい。これにより、乾燥後のインク膜表面の摩擦抵抗を低減する特性を有する。このようなワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。この中で好ましいワックスの種類としては、ポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスであり、さらには、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対する耐擦性の観点から、ポリエチレンワックスがより好ましい。ワックスとしては市販品をそのまま利用することもでき、例えばノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
水系樹脂インクのワックス含有量は、樹脂インク中において、固形分換算で好ましくは0.5質量%〜6質量%であり、より好ましくは1質量%〜3質量%である。これらワックスの含有量の好適範囲は、樹脂インクのインクジェット適正物性値、信頼性(目詰まりや吐出安定性等)の観点から上限値を規定し、本発明の効果(耐擦性等)をより有効に得る観点から下限値を規定したものである。
上述した樹脂インクで層を形成しその上から光輝性顔料の層を記録した記録物は、光輝性顔料が表層で平滑に配列させることが可能となり、光沢が上昇する。また、これによって従来光輝性を発揮できなかった記録媒体にも光輝性を発揮させることが可能となる。さらに記録物としての耐擦性が良好となり、強固な下地層の形成が可能となる。耐擦性が良好となる理由はいまだ明らかではないが、下記のように推察される。樹脂は、記録媒体上に定着するとともに、乾燥後の被膜を堅固にする特性を有する。一方、ワックスは、前記皮膜表面の摩擦抵抗を低減する特性を有する。これにより、外部から擦れによって削れにくく、かつ記録媒体から剥がれにくい樹脂被膜を形成することができるため、記録物の耐擦性が向上するものと推察される。また、樹脂インクで層を形成していると、その樹脂インクがインク受容層としての機能をも発揮し、光輝性顔料の記録媒体上でのブリードを抑える効果があり良好な記録を行うことが可能となる。仮に、光輝性インク自体の定着性と乾燥性を仮に飛躍的に向上させることが可能となったに場合でも、光沢性確保の為に顔料粒子の平均粒径を大きめにする必要がある為、ヘッドから記録を行う際に記録信頼性が低下し、目詰まりや記録不良を一層起こす可能性もあるので、そういった課題を抱えない点から考慮しても樹脂インクの層を形成することは有利である。
(5)その他の成分
その他の成分として、樹脂インクは、必要に応じて、水溶性溶剤や、界面活性剤を含む。これらの添加量は、記録媒体やインクの種類に応じて適宜調整できる。さらに必要に応じて添加するものとして、保湿剤、防腐剤・防かび剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、金属トラップ剤などがあげられる。
(5−1)水溶性溶剤
水溶性溶剤は、後述する界面活性剤と相乗して、記録媒体に対する樹脂インクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用を有する。そのため、樹脂インクに水溶性溶剤を含有させることは、均一に下地層を形成できるという観点から好ましい。このような水溶性溶剤としては、1価アルコール、または多価アルコールおよびその誘導体が挙げられる。
1価アルコールとしては、特に炭素数1〜4の1価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、またはn−ブタノールなどを用いることができる。
多価アルコールおよびその誘導体としては、炭素数2〜6の2価〜5価アルコール、およびそれらと炭素数1〜4の低級アルコールとの完全または部分エーテルを用いることができる。ここで多価アルコール誘導体とは、少なくとも1個のヒドロキシル基がエーテル化されたアルコール誘導体であり、エーテル化されたヒドロキシル基を含まない多価アルコールそれ自体を意味するものではない。
これらの多価アルコールおよびそれらの低級アルキルエーテルの具体例としては、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,3−オクタンジオール、1,2−ペンタンジオール等のジオール類、モノ、ジ若しくはトリエチレングリコール−モノ若しくはジ−アルキルエーテル、モノ、ジ若しくはトリプロピレングリコール−モノ若しくはジ−アルキルエーテルが挙げられ、好ましくは1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、またはプロピレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
水溶性溶剤の含有量は、例えば、各色のインク全量に対して0.5質量%〜15.0質量%、好ましくは、1.0質量%〜8.0質量%である。
(5−2)界面活性剤
界面活性剤は、上述した水溶性溶剤と相乗して、記録媒体に対する色インクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用を有する。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
シリコン系界面活性剤は、記録媒体上でインクの記録ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有する。
シリコン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられ、BYK−348が好ましい。
シリコン系界面活性剤の含有量は、各色のインク全量に対して、好ましくは0.1質量%〜1.5質量%である。シリコン系界面活性剤の含有量が0.1質量%未満であると、記録媒体上でインクが均一に濡れ広がりにくいため、インクの記録ムラや滲みが発生しやすい。一方、シリコン系界面活性剤の含有量が1.5質量%を超えた場合、水性インクの保存安定性・吐出安定性が確保できない場合がある。
アセチレングリコール系界面活性剤は、他の界面活性剤と比較して、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する。これにより、アセチレングリコール系界面活性剤を含有する色インクは、表面張力およびヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。また、アセチレングリコール系界面活性剤を含有する色インクは、記録媒体に対して良好な濡れ性・浸透性を示すため、インクの記録ムラや滲みの少ない高精細な画像を得ることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、82、DF37、DF110D、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals.Inc.社製)、オルフィン(登録商標)B、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられ、サーフィノール104PG−50、DF110Dが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、各色のインク全量に対して、好ましくは0.05質量%〜1.0質量%である。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が0.05質量%未満であると、記録媒体上でインクが均一に濡れ広がりにくいため、インクの記録ムラや滲みが発生しやすい。一方、アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が1.0質量%を超えた場合、色インクの保存安定性・吐出安定性が確保できない場合がある。
特に好ましくは、シリコン系界面活性剤とHLB値が6以下のアセチレングリコール系界面活性剤とを同時に含む組み合わせである。
上述の水溶性溶剤と界面活性剤を組み合わせて、水性インクの表面張力を23.0mN/m〜40.0mN/mの範囲で用いることが好ましく、より好ましくは25.0mN/m〜35.0mN/mの範囲である。
(5−3)保湿剤
保湿剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2,3−ブタンジオール等の多価アルコール、または糖類および糖アルコール等が挙げられる。
(5−4)防腐剤・防かび剤
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)などが挙げられる。
(5−5)pH調整剤
pH調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩類その他燐酸塩等があげられる。
(5−6)溶解助剤
溶解助剤としては、尿素、チオ尿素、ジメチル尿素、テトラエチル尿素などがあげられる。
(5−7)酸化防止剤・紫外線吸収剤
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネート、などのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物等があげられる。
(5−8)金属トラップ剤
金属トラップ剤としては、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム等のキレート剤などがあげられる。
(5−9)重合性化合物、重合開始剤
樹脂インクは、活性化エネルギー線により重合反応により硬化させる場合には、従来より用いられている重合性化合物、重合開始剤等を有していても良い。重合開始剤としては、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンジル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ポリ塩化ポリフェニル、ヘキサクロロベンゼン等が挙げられる。
また、重合性化合物としては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピオペリン酸エステルネオペンチンルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、フタル酸水素−(2,2,2−トリアクロイルオキシメチル)エチル、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート、N−ビニルフォルムアミド、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンEO付加物トリアクリレート等が挙がられる。
2.2.非水系光輝性インク
非水系光輝性インク(以下、適宜光輝性インクという)は、光輝性顔料と、有機溶剤とを含有する。以下に非水系光輝性インクに含有される成分について説明する。
(1)光輝性顔料
光輝性インクに含有される光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や光輝性顔料があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方光輝性顔料としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さおよびコストの観点、から、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加する他の金属元素または非金属元素としては、光輝性を有するものであれば特に限定されるものではないが、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などを挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。また、光輝性インクに用いる後述の有機溶剤は、金属に対する反応性が低いものを適宜選択することで、本発明に用いる光輝性顔料は特殊な表面処理を必要としない。
本実施形態に係る光輝性顔料は、光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)が0.8〜1.2μmのものである。
光散乱法による球換算50%平均粒子径は、下記のようにして測定、導出されるものである。すなわち、分散媒中の粒子に光を照射することにより、発生する回折散乱光に関して、前方・側方・後方の各部位にディテクターを配置し測定し、計測される平均粒子径の積算百分率の分布曲線が50%の積算百分率の横軸と交差するポイントを50%平均粒子径(d50)とする。また、球換算平均粒子径とは、本来は不定形である粒子を、球形であると仮定し、測定結果より求めた平均粒子径を指している。測定装置としては、例えば、株式会社セイシン企業製 レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS−2000eなどが挙げられる。光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)が上記範囲にあることで、記録物上に高い光輝性を有する塗膜が形成できると共に、インクのノズルからの吐出安定性も高くなる。
光輝性顔料は、金属蒸着膜を破砕して作製されたものであると好ましく、また、平板状粒子であると好ましい。光輝性顔料が平板状粒子である場合、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとしたとき、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであると好ましく、R50/Z>5の条件を満たすものであると好ましい。
「平板状粒子」とは、略平坦な面(X−Y平面)を有し、かつ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。平板状粒子は金属蒸着膜を破砕して作製されたものであるため、略平坦な面と、略均一な厚みの金属粒子を得ることができる。従って、この平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZと定義することができる。
「円相当径」は、光輝性顔料の平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、当該光輝性顔料の粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、光輝性顔料の平板粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、その光輝性顔料の平板粒子の円相当径という。
前記平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50は、光輝性、記録安定性の観点から0.5〜3μmであることがより好ましく、0.75〜2μmであることがさらに好ましい。50%平均粒子径R50が0.5μm未満の場合は、光沢不足となる。一方、50%平均粒子径R50が3μmを超える場合、記録安定性が低下する。
また、前記円相当径の50%平均粒子径R50と厚みZとの関係においては高い光輝性を確保する観点からは、R50/Z>5である。R50/Zが5以下の場合は、光輝性が不足するという問題がある。
前記平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の最大粒子径Rmaxは、インクジェット記録装置におけるインクの目詰まり防止の観点から、10μm以下であることが好ましい。Rmaxを10μm以下にすることで、インクジェット記録装置のノズル、インク流路内に設けられたメッシュフィルターなどの目詰まりを防止することができる。
前記光輝性顔料の製造方法は、例えば、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属又は合金層とが順次積層された構造からなる複合化顔料原体の前記金属又は合金層と前記剥離用樹脂層の界面を境界として前記シート状基材より剥離し粉砕し微細化して平板状粒子を得る。そして、得られた平板状粒子のうち、光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)が0.8〜1.2μmのものを分取する。あるいは、得られた平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たすものを分取する。
前記光輝性顔料の平面上の長径X、短径Y及び円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、シスメックス株式会社製のフロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000Sを利用することができる。
前記光輝性顔料の粒度分布(CV値)は、下記の式で求められる。
CV値=粒度分布の標準偏差/粒子径の平均値×100 (式1)
ここで、得られるCV値は60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることが更に好ましい。CV値が60以下の光輝性顔料を選択することで、記録安定性に優れるという効果が得られる。
前記金属又は合金層は、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法によって形成されることが好ましい。
前記金属又は合金層の厚さは、好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは20nm以上100nm以下で形成される。これにより、平均厚みが、好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは20nm以上100nm以下の顔料が得られる。5nm以上にすることで、反射性、光輝性に優れ、光輝性顔料としての性能が高くなり、100nm以下にすることで、見かけ比重の増加を抑え、光輝性顔料の分散安定性を確保することができる。
前記複合化顔料原体における剥離用樹脂層は、前記金属又は合金層のアンダーコート層であるが、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロースアセテートブチレート(CAB)などのセルロース誘導体、アクリル酸重合体又は変性ナイロン樹脂が好ましい。上記の一種又は二種以上の混合物の溶液を記録媒体に塗布し、乾燥等を施して層が形成される。塗布後は粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
前記剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等により形成される。塗布・乾燥後、必要であれば、カレンダー処理により、表面の平滑化を行う。
剥離用樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層と界面で剥離しやすいものとなってしまう。
前記シート状基材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。好ましいシート状基材としては、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である。これらのシート状基材の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、工程等で取り扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
また、前記金属又は合金層は、特開2005−68250号公報に例示されるように、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。上記シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成する。
前記保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドまたはセルロース誘導体等が挙げられるが、ポリビニルアルコール又はセルロースアセテートブチレートなどのセルロース誘導体から形成されることが好ましい。上記樹脂一種または二種以上の混合物の水溶液を塗布し、乾燥等を施した層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
上記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、上記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
上記保護層の厚さは、特に限定されないが、50〜150nmの範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、また金属又は合金層との界面で剥離してしまう場合がある。
前記複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層と金属又は合金層と保護層の順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数の金属又は合金層からなる積層構造の全体の厚み、即ち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、金属又は合金−剥離用樹脂層−金属又は合金層、又は剥離用樹脂層−金属又は合金層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も、光輝性に優れており好ましいものである。また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層と金属又は合金層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記シート状基材からの剥離処理法としては、特に限定されないが、前記複合化顔料原体に対して液体(溶媒)を噴射し、噴射された後の複合化顔料原体の金属又は合金層を掻き取り収集する方法、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法、また液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い、剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。これらの方法では、剥離された金属又は合金層に加えて、剥離処理に用いた液体も回収することができる。かかる剥離処理法に用いられる液体(溶媒)としては、例えば、グリコールエーテル系若しくはラクトン系溶媒、あるいはそれらの混合物が挙げられる。剥離した金属又は合金層を粉砕し微細化する方法は、特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、超音波又はジェットミルなどを用いる従来公知の方法であればよい。こうして、光輝性顔料が得られる。
上記のようにして得られる顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、溶剤中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また、該顔料を用いたインクにおいては、前記剥離用樹脂層由来の樹脂は紙等の記録媒体に対する接着性を付与する機能も担う。
前記光輝性顔料のインク中の濃度は、インクセットの中で1種類だけがメタリックインクである場合には、0.5〜2質量%であることが好ましい。また、前記光輝性顔料のインク中の濃度が0.5質量%以上1.7質量%未満の場合、記録面を十分にカバーしきれないインク量を吐出することでハーフミラー様の光沢面、即ち光沢感は感じられるが、背景も透けて見えるような風合いを記録可能となり、記録面をカバーするに十分なインク量を吐出することで高光沢の光輝性面を形成することができる。そのため、例えば、透明記録媒体においてハーフミラー画を形成する場合や高光沢の光輝性面を表現する場合に適している。また、前記光輝性顔料のインク中の濃度が1.7質量%以上2.0質量%以下の場合、光輝性顔料が記録面にランダムに配列する為、高光沢は得られず、マット調の光輝性面を形成することができる。そのため、例えば、透明な記録媒体において遮蔽層を形成する場合に適している。
(2)有機溶剤
前記有機溶剤としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はフッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチル等)、又はエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)等を用いることができる。特に、前記有機溶剤は、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールエーテルを1種類以上含む、ことが好ましい。
アルキレングリコールエーテルは、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、そして2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルがあり、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。また、片方の水酸基だけを置換したモノエーテル型と両方の水酸基を置換したジエーテル型があり、これらを複数種組み合わせて用いることができる。特に、前記有機溶剤は、アルキレングリコールジエーテル、アルキレングリコールモノエーテル、及びラクトンの混合物であることが好ましい。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
またラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
このような好適な構成とすることにより、本発明の目的をより一層有効且つ確実に達成することができる。特に、上記有機溶剤の組合せとして、ジエチレングリコールジエチルエーテルと、γ−ブチロラクトン及び/又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルとの組合せがより好ましい。
(3)定着用樹脂
前記インクに用いられる定着用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリビニルブチラール、ポリアクリルポリオール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。
また、非水系のエマルジョン型ポリマー微粒子(NAD=Non Aqueous Dispersion)も定着用樹脂として用いることができる。これはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂等の微粒子が有機溶剤中に安定に分散している分散液のことである。例えば、ポリウレタン樹脂では三洋化成工業社製のサンプレンIB−501、サンプレンIB−F370、が挙げられ、アクリルポリオール樹脂ではハリマ化成社製のN−2043−60MEXが挙げられる。
樹脂エマルジョンは、記録媒体への顔料の定着性を一層向上させるため、インク中、0.1質量%以上10質量%以下添加することが好ましい。添加量が過剰であると記録安定性が得られず、過少であれば、定着性が不十分となる。
前記インク中の定着用樹脂は、ポリビニルブチラール、セルロースアセテートブチレート及びポリアクリルポリオールからなる群より選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、セルロースアセテートブチレートであることがより好ましい。このような好適な構成とすることにより、乾燥時の良好な耐擦性、定着性、高光輝性という好ましい効果を得ることができる。
(4)その他
前記インクは、少なくとも1種類以上のグリセリン、ポリアルキレングリコール、又は糖類を含むことが好ましい。これら1種類以上のグリセリン、ポリアルキレングリコール、又は糖類の合計量は、インク中0.1質量%以上10質量%以下添加されることが好ましい。このような好ましい構成とすることにより、インクの乾燥を抑え、目詰まりを防止しつつ、インクの吐出を安定化し、記録物の画像品質を良好にすることができる。ポリアルキレングリコールとしては、主鎖中にエーテル結合の繰り返し構造を有する線状高分子化合物であり、例えば環状エーテルの開環重合等によって製造される。
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体およびその誘導体等が挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれの共重合体も用いることができる。
ポリアルキレングリコールの好ましい具体例として、下式で表されるものが挙げられる。HO−(CnH2nO)m−H(上記式中、nは、1〜5の整数を表し、mは、1〜100の整数を表す)。なお、上記式中、(CnH2nO)mは、整数値nの範囲内において、一の定数または二種以上の数の組合せであってよい。例えば、nが3の場合は(C3H6O)mであり、nが1と4との組合せの場合は(CH2O−C4H8O)mである。また、整数値mは、その範囲内において、一の定数または二種以上の数の組合せであってよい。例えば、上記の例において、mが20と40との組合せの場合は(CH2O)20−(C2H4O)40であり、mが10と30の組合せの場合は(CH2O)10−(C4H8O)30である。さらに、整数値nとmとは上記の範囲内で任意に組み合わせてもよい。
糖類としては、ペントース、ヘキトース、ヘプトース、オクトース等の単糖類、あるいは二糖類、三糖類、四糖類 といった多糖類、またはこれらの誘導体である糖アルコール、デオキシ酸といった還元誘導体、アルドン酸、ウロン酸といった酸化誘導体、グリコセエンといった脱水誘導体、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。多糖類とは広義の糖を指し、アルギン酸やデキストリン、セルロース等の自然界に広く存在する物質も含む。
光輝性インクは、界面活性剤を含有してもよい。用いうる界面活性剤としては、たとえば、アセチレングリコール系界面活剤が挙げられる。具体的には、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が例示され、市販品としてはサーフィノール104、82、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals.1nc.より入手可能)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(日信化学社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(日本油脂株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、エマルゲンA−90、A−60(花王株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレン誘導体は単独、または混合して添加してよい。各界面活性剤は、たとえば、光輝性インクに揮発抑制性を付与することにより、インクカートリッジからプリンターヘッドにインク組成物を輸送するチューブ内での光輝性インクの蒸発を抑制してチューブ内での固形分の堆積を防止ないし軽減することができる。
さらにまた、界面活性剤として、室温、大気圧下で液状の非イオン性ポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。その具体例としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類であるニッサンノニオンP−208(日本油脂株式会社製)等のポリオキシエチレンセチルエーテル類、ニッサンノニオンE−202S、E−205S(日本油脂株式会社製)等のポリオキシエチレンオレイルエーテル類、エマルゲン106、108(花王株式会社製)等のポリオキシエチレンラウリルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類であるニッサンノニオンHS−204、HS−205、HS−206、HS−208(日本油脂株式会社製)等のポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ソルビタンモノエステル類であるニッサンノニオンCP−08R(日本油脂株式会社製)等のソルビタンモノカプリレート、ニッサンノニオンLP−20R(日本油脂株式会社製)等のソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル類であるニッサンノニオンOT−221(日本油脂株式会社製)等のポリオキシエチレンソルピタンモノステアレート類、フローレンG−70(共栄社化学株式会社製)等のポリカルボン酸系高分子活剤、エマルゲン707、709(花王株式会社製)等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類、ポエムJ−4581(理研ビタミン株式会社製)等のテトラグリセリンオレート類、アデカトールNP−620、NP−650、NP−660、NP−675、NP−683、NP−686(旭電化工業株式会社製)等のノニルフェノールエトキシレート、アデカコールCS−141E、TS−230E(旭電化工業株式会社製)等の脂肪族リン酸エステル類、ソルゲン30(第一工業製薬株式会社製等のソルビタンセスキオレート、ソルゲン40(第一工業製薬株式会社製)等のソルビタンモノオレート、ソルゲンTW−20(第一工業製薬株式会社製)等のポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ソルゲンTW−80(第一工業製薬株式会社製)等のポリエチレングリコールソルビタンモノオレートが例示される。
前記インクは、公知の慣用方法によって調製することができる。例えば、最初に、前述した光輝性顔料、分散剤、及び前記液媒を混合した後、必要に応じてボールミル、ビーズミル、超音波、又はジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、バインダー樹脂、前記液媒、及びその他の添加剤(例えば、分散助剤や粘度調整剤)を撹拌下に加えて顔料インクを得ることができる。
その他、複合化顔料原体を、一旦液媒中で超音波処理して複合化顔料分散液とした後、必要なインク用液媒と混合しても良く、また、複合化顔料原体を直接インク用液媒中で超音波処理してそのままインクとすることもできる。また、インク中の固形分濃度を調整するために、加圧ろ過、遠心分離等の従来公知の方法を用いることもできる。
前記インクの物性は特に限定されるものではないが、例えば、その表面張力は好ましくは20〜50mN/mである。表面張力が20mN/m未満になると、インクがインクジェット記録用プリンターヘッドの表面に濡れ広がるか、又は滲み出してしまい、インク滴の吐出が困難になることがあり、表面張力が50mN/mを越えると、記録媒体の表面において濡れ広がらず、良好な記録ができないことがある。
上記の有機溶剤を主成分とした光輝性インクと、樹脂インクとを併用することで、滲みがなく、高い光輝性を有する画像を得ることができる。その理由としては定かではないが、例えば、下地層に含まれる樹脂との相溶性が高い有機溶剤を用いることで、光輝性インク中の有機溶剤が吸収され、または下地層が光輝性インクに溶解することによって、特に配向した平板状光輝性顔料の平滑性が保持されるとともに、滲みが抑制され、さらに高い耐擦性が確保できているものと推察できる。
4.実施例および比較例
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
4.1.樹脂インクの調製
樹脂インクは、表1に記載の組成になるように、樹脂成分、水溶性有機溶媒、界面活性剤、ワックス、およびイオン交換水を混合し調製した。その後、常温で1時間混合撹拌して、表1に記載の樹脂インク1〜4を得た。
表1中で示した成分は、下記の通りである。なお、表中の単位は質量%である。
(1)樹脂成分
・スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂粒子、平均粒子径50nm、分子量55000、ガラス転移温度80℃、酸価130)
・ポリウレタン(レザミンD−2020、大日精化社製)
(2)水溶性有機溶媒
・1,2−ヘキサンジオール
・2−ピロリドン
・プロピレングリコール
(3)界面活性剤
・シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−348」、ポリエーテル変性シロキサン)
・アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、商品名「サーフィノール104PG−50」)
(4)ポリオレフィンワックス
・ポリエチレンワックス(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「AQUACER−515」)
4.2.光輝性顔料インクの調製
光輝性顔料インクに添加される光輝性顔料を得るために、まず以下のように光輝性顔料分散液を作成した。
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.0質量%及びジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥する事で、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。
次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
次に、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間である光輝性顔料分散液を作成した。
得られた光輝性顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、光輝性顔料分散液を濃縮し、その後、その光輝性顔料分散液の濃度調整を行い、5質量%濃度の光輝性顔料分散液1を得た。
次いで、株式会社セイシン企業製
レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS−2000eを用いて、光輝性顔料の光散乱法による球換算50%平均粒子径(d50)を測定した結果、1.001μmであった。
上記方法にて調製した光輝性顔料分散液1を用いて、表2に示す組成にて光輝性顔料インクを調製した。溶媒及び添加剤を混合・溶解し、インク分散媒とした後に、光輝性顔料分散液1をそのインク溶媒中へ添加して、更に常温・常圧下30分間マグネティックスターラーにて混合・撹拌して、光輝性顔料インク1〜5とした。
表2中で示した成分は、下記の通りである。なお、表中の単位は質量%である。
(1)光輝性顔料(固形分)
(2)有機溶剤
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDE)
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDM)
・γ−ブチロラクトン
・テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMB)
(3)樹脂成分
・セルロースアセテートブチレート(CAB、関東化学社製;ブチル化率35〜39%)
(4)界面活性剤
・BYK−UV3500(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)
4.3.評価用試料の作成
乾燥工程を含む第1下地層形成工程を用いた下地層と、乾燥工程を含まない第2下地層形成工程を用いた下地層の2種類の下地層を形成した。上記の2種類の下地層について、それぞれ光輝性層を付与した。以下に詳細を説明する。
4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成
実施例および比較例の各試料は、インクジェット記録装置として、インクジェットプリンターSP−300V(ローランドDG社製)を用いて作成した。該プリンターのシアンインクの代わりに上述の樹脂インクを、イエローインクの代わりに光輝性顔料インクを充填して使用した。なお、マゼンタインク、ブラックインクはそのままとした。また、該プリンターは、印字位置において、記録媒体を加熱することができるように、温度調節可能なローラーを取り付ける改造を行った。
まず、表3に示す記録媒体に、表3に示すduty(%)の所定パターンで、表3に示す樹脂インクを付与し、乾燥工程を設けて下地層を形成した。なお、100%duty(%)ごとに乾燥工程を設け、乾燥工程は50℃に加熱したプラテンによって行った。次に、形成した下地層上に、表3に示すduty(%)の所定パターンで、光輝性顔料インク1を付与し、画像を形成し記録物を得た(実施例1A〜7A、1B〜7B、1C〜7C)。また、比較例1〜7として、下地層を形成しないほかは、実施例1A〜6Aと同様にして記録物を得た。また、参考例1として、下地層を形成しないPVCフィルム上に、表3に示すduty(%)の所定パターンで、光輝性顔料インク1を付与し、画像を形成し記録物を得た。
また、表3に示す記録媒体上に、塗工装置Kハンドコーター(松尾産業社製、商品名)およびバーNo.7を用いて、樹脂インク4を乾燥膜厚が20μmとなるように下地層を形成した。なお、形成した下地層は乾燥工程(下地層を50℃で加熱)を設けた。その上に、表3に示すduty(%)の所定パターンで、光輝性顔料インク1を付与し、画像を形成し、記録物を得た(実施例1D〜7D)。
また、表3中で示した記録媒体は以下に示す通りである。
(1)PET1:リンテック社製、商品名「PET50A」
(2)PET2:リンテック社製、商品名「K2411
(3)合成紙:PP延伸加工フィルム、リンテック社製、商品名「ユポ80」
(4)キャスト紙:王子タック社製、商品名「Oミラー73/F41/U8C」
(5)コート紙:リンテック社製、商品名「NPコート_PW8E」
(6)普通紙:富士ゼロックス社製、商品名「XeroxP」
(7)上質紙:リンテック社製、商品名「55PW8R」
(8)PVC:ローランド社製、商品名「LLEX」
なお、上記の記録媒体において、PET1、PET2、合成紙、キャスト紙、およびコート紙は「インク非吸収性もしくは低吸収性の記録媒体」であり、普通紙、および上質紙は「インクを記録する面の算術平均粗さRaが20μm以上である記録媒体」に該当する。
4.3.2.第2下地層形成工程を用いた評価用試料の作成
上記普通紙および上質紙に、乾燥工程を含まない第2下地層形成工程によって下地層を形成したほかは、上記の「4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成」項と同様にして、評価用試料の作成を行った(実施例6Eおよび7E)。結果を表4に示す。
4.4.記録物の評価
(1)光沢度の評価
前記各実施例および各比較例、各参考例に係る記録物の記録面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
S :光沢度が401以上。
A :光沢度が291以上401未満。
B :光沢度が171以上291未満。
C :光沢度が51以上171未満。
D :光沢度が51未満。
(2)耐擦性試験
乾燥後の記録物を学振型摩耗堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子(荷重;300g)にて10回擦ることで、耐摩耗性評価を実施した。そして、樹脂インクの層を付与しなかった場合に対して、耐擦性の向上が見られた場合は「○」とし、耐擦性の変化が見られなかったものは「−」とした。
これらの結果を合わせて表3および4に示した。
表3および4から明らかなように、本発明のインクジェット記録方法によって得られた記録物では、光輝性または耐擦性に優れていたのに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
また、表3の実施例1A〜7A、1B〜7B、1C〜7C、および1D〜7Dならびに比較例1〜7、ならびに参考例1で使用した光輝性インク1を、光輝性インク2に変えたほかは上述の「4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成」項と同様にして、実施例8A〜14A、8B〜14B、8C〜14C、および8D〜14D、ならびに比較例8〜14、ならびに参考例2にかかる記録物を得た。得られた記録物について、上述の「光沢度の評価」および「耐擦性試験」を行ったところ、結果は表3に示す結果と同等であった。
また、表3の実施例1A〜7A、1B〜7B、1C〜7C、および1D〜7Dならびに比較例1〜7、ならびに参考例1で使用した光輝性インク1を、光輝性インク3に変えたほかは上述の「4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成」項と同様にして、実施例15A〜21A、15B〜21B、15C〜21C、および15D〜21D、ならびに比較例15〜21、ならびに参考例3にかかる記録物を得た。得られた記録物について、上述の「光沢度の評価」および「耐擦性試験」を行ったところ、結果は表3に示す結果と同等であった。
また、表3の実施例1A〜7A、1B〜7B、1C〜7C、および1D〜7Dならびに比較例1〜7、ならびに参考例1で使用した光輝性インク1を、光輝性インク4に変えたほかは上述の「4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成」項と同様にして、実施例22A〜28A、22B〜28B、22C〜28C、および22D〜28D、ならびに比較例22〜28、ならびに参考例4にかかる記録物を得た。得られた記録物について、上述の「光沢度の評価」および「耐擦性試験」を行ったところ、結果は表3に示す結果と同等であった。
また、表3の実施例1A〜7A、1B〜7B、1C〜7C、および1D〜7Dならびに比較例1〜7、ならびに参考例1で使用した光輝性インク1を、光輝性インク5に変えたほかは上述の「4.3.1.第1下地層形成工程を用いた評価用試料の作成」項と同様にして、実施例29A〜35A、29B〜35B、29C〜35C、および29D〜35D、ならびに比較例29〜35、ならびに参考例5にかかる記録物を得た。得られた記録物について、上述の「光沢度の評価」および「耐擦性試験」を行ったところ、結果は表3に示す結果と同等であった。
(3)下地層(樹脂インク層)の評価
上述の実施例1A〜3A、5A、および7A、ならびに比較例1〜3、5、7にかかる下地層について、上述の「(1)光沢度の評価」と同様の測定を行った。結果を表5に示す。なお、表5中、「光輝性層の60°光沢度」は表3に示した当該実施例および比較例の60°光沢度である。また、表5に示した「光輝性層の60°光沢度」を横軸とし、「下地層の60°光沢度」を縦軸にプロットした相関図を図2に示す。なお、実施例1A〜3A、5A、および7Aにかかる「光輝性層の60°光沢度」および「下地層の60°光沢度」から最小2乗法を用いて算出した近似式および相関係数を併せて示す。
図2から明らかなように、本発明のインクジェット記録方法によれば、優れた吸収性および優れた平滑性を有する下地層を種々の記録媒体に付与することが可能である。したがって、光沢度および耐擦性に優れた光輝性層を得ることができる。