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JP5770757B2 - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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JP5770757B2 JP2013011398A JP2013011398A JP5770757B2 JP 5770757 B2 JP5770757 B2 JP 5770757B2 JP 2013011398 A JP2013011398 A JP 2013011398A JP 2013011398 A JP2013011398 A JP 2013011398A JP 5770757 B2 JP5770757 B2 JP 5770757B2
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Description

本発明は、ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
セルロース繊維等のミクロフィブリル化植物繊維を充填剤としてゴム組成物に配合することで、ゴム組成物を補強し、モジュラス(複素弾性率)を向上させることができる。しかしながら、ミクロフィブリル化植物繊維は、自己凝集力が強く、ゴム成分との相溶性も悪いため、ゴム練り時における分散性が低い。そのため、配合しても破断特性や低燃費性が悪化する場合があり、ミクロフィブリル化植物繊維の分散性を向上させる方法が求められている。
特許文献1には、ミクロフィブリル化植物繊維を化学変性することで、ゴム成分とミクロフィブリル化植物繊維との相溶性を改善する方法が開示されている。しかし、この方法を用いたとしても、補強性やコストの面でカーボンブラック等の従来の充填剤に対する優位性がないという点で改善の余地があった。
また、車両の低燃費化を目的として、サイドウォールを薄層化、又はビード部を小型化し、タイヤを軽量化する場合、タイヤの剛性が低下し、操縦安定性が低下する傾向がある。そのため、サイドウォール、クリンチエイペックスや、タイヤの内部部材(内層サイドウォール、ストリップエイペックス、ビードエイペックス、タイガム、ベーストレッド等)のモジュラスを高め、操縦安定性を確保することが必要となる。
ゴム組成物のモジュラスを高める方法としては、硫黄を増量する方法や、シンジオタクチック結晶を含むブタジエンゴムを配合する方法が知られているが、これらの方法を使用した場合、破断伸びが低下し、充分な耐久性を確保できない場合がある。また、タイヤに使用されるゴム組成物は、乗り心地性に優れることも要求されるが、通常、ゴム組成物のモジュラスを高くすると、乗り心地性が低下する傾向がある。このように、操縦安定性は、破断伸びや乗り心地性と背反する関係にあり、従来の方法では、これらの性能をバランス良く改善することは困難であった。
特許第4581116号公報
本発明は、前記課題を解決し、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善でき、良好な加工性及び低燃費性も得られるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、ミクロフィブリル化植物繊維とを含むマスターバッチを用いて作製されたゴム組成物に関する。
上記ゴム組成物は、温度70℃、動歪み2%で測定した押出し方向の複素弾性率E*aと該押出し方向に直交する方向の複素弾性率E*bとの比(E*a/E*b)が1.05〜6.00であり、かつ上記E*aが7〜100MPaであることが好ましい。
上記マスターバッチにおいて、上記改質天然ゴム100質量部に対する上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が5〜30質量部であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、窒素吸着比表面積25〜200m/gのカーボンブラック及び/又は窒素吸着比表面積70〜300m/gのシリカを含有し、ゴム成分100質量部に対する上記カーボンブラック及び上記シリカの合計含有量が25〜80質量部であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、複素弾性率E*a及び複素弾性率E*bの両方を高くし、かつtanδを低くできるという面で、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の架橋樹脂を含有し、ゴム成分100質量部に対する上記架橋樹脂の合計含有量が1〜20質量部であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有し、ゴム成分100質量部に対する上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が0.2〜10質量部であることが好ましい。
Figure 0005770757
(式中、Rは、同一若しくは異なって、炭素数5〜15のアルキル基又はアミル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、1〜4の整数を示す。mは0〜300の整数を示す。)
上記ゴム組成物は、タイヤ部材に使用されることが好ましい。
上記タイヤ部材がサイドウォール、ベーストレッド、タイガム、ビードエイペックス、ストリップエイペックス、クリンチエイペックス又はウイングであることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、ミクロフィブリル化植物繊維とを含むマスターバッチを用いて作製したゴム組成物であるので、該ゴム組成物をサイドウォール等のタイヤ部材に使用することにより、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びがバランス良く改善され、かつ低燃費性も良好な空気入りタイヤが得られる。また、ミクロフィブリル化植物繊維の凝集塊を減らし、加工性を改善できる。更に、良好な操縦安定性を維持しながらサイドウォール及びビード部を薄層化することが可能となるため、車両の低燃費化を実現することができる。
実施例及び比較例の試験用タイヤを示す断面模式図である。
本発明のゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、ミクロフィブリル化植物繊維とを含むマスターバッチを用いて作製される。従来、ミクロフィブリル化植物繊維は、マスターバッチ中での分散は可能であっても、該マスターバッチをゴム組成物に配合した場合に、ゴム組成物中に均一に分散させることは困難であるという課題があった。本発明のゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムを用いてこの課題を解決したものである。上記改質天然ゴムは、天然ゴム特有の蛋白質やリン脂質からなる蜂の巣状のセルが除去されているため、フィラーを取り込みやすく、かつ他のポリマーとの相溶性が高いという性質を有する。そのため、ミクロフィブリル化植物繊維及び上記改質天然ゴムを含むマスターバッチを他のゴム薬品等と混練りすることにより、ミクロフィブリル化植物繊維が均一に分散したゴム組成物を調製できる。これにより、従来技術では困難であった操縦安定性と破断伸び及び乗り心地性との両立を実現することができ、また、良好な加工性及び低燃費性も確保することができる。
上記改質天然ゴム(HPNR:Highly Purified Natural Rubber)は、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、貯蔵中にゲル量が増加し、加硫ゴムのtanδが上昇して低燃費性が悪化したり、未加硫ゴムのムーニー粘度が上昇して加工性が悪化する。該リン含有量は、200ppm以下、好ましくは120ppm以下である。ここで、リン含有量は、例えばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
上記改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向があり、また、低燃費性が悪化するおそれもある。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
上記改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。20質量%を超えると、ムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向があり、また、低燃費性が悪化するおそれもある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×10rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
上記改質天然ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
ミクロフィブリル化植物繊維(セルロースナノファイバー)としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース、ホヤセルロース等の天然物に由来するものが挙げられる。ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記天然物を水酸化ナトリウム等の薬品で化学処理した後、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、二軸混錬押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。
上記マスターバッチにおいて、上記改質天然ゴム100質量部に対するミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、マスターバッチを配合したゴム組成物において、必要なミクロフィブリル化植物繊維を確保しようとすると、上記改質天然ゴムの量が多くなり過ぎて、架橋密度が低くなり、低燃費性が悪化する場合がある。また、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは26質量部以下である。30質量部を超えると、マスターバッチがTSR、BR、SBR等の他のゴム成分に比べて硬くなり過ぎて、マスターバッチと他のゴム成分とが混ざりにくくなり、ミクロフィブリル化植物繊維の分散性が低下し、破断伸び、低燃費性が悪化する場合がある。
上記マスターバッチは、例えば、ケン化天然ゴムラテックス及びミクロフィブリル化植物繊維の混合物を凝固させる工程(I)と、該工程(I)で得られた凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整する工程(II)を含む方法により製造することができる。つまり、先ず、NaOH等のアルカリでケン化処理を施した天然ゴムラテックス(ケン化天然ゴムラテックス)を調製した上で、該ケン化天然ゴムラテックスにミクロフィブリル化植物繊維を投入して撹拌することで配合ラテックス(混合液)を作製し、該配合ラテックスを凝固させた後に、液相を廃棄し、得られた凝固物を洗浄して天然ゴム中のリン量を低減することにより、リン量が200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR)を含む複合体が製造される。これにより、HPNR中にミクロフィブリル化植物繊維が均一に分散した複合体を製造できる。また、上記方法では、ケン化処理後にミクロフィブリル化植物繊維を投入しているため、アルカリ性が薄まり、ミクロフィブリル化植物繊維の損傷を抑えることができる。なお、ミクロフィブリル化植物繊維投入後は、短時間で次の作業、すなわち、撹拌、凝固に移ることが好ましい。
(工程(I))
天然ゴムラテックスはヘベア樹等の天然ゴムの樹木の樹液として採取され、ゴム分のほか水、タンパク質、脂質、無機塩類等を含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。本発明では、天然ゴムラテックスとして、ヘベア樹をタッピングして出てくる生ラテックス(フィールドラテックス)、遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックス、亜鉛華とTMTDとアンモニアによって安定化させたLATZラテックス等)等を使用できる。
天然ゴムラテックスのケン化処理は、天然ゴムラテックスに、NaOH等のアルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することにより行うことができる。なお、必要に応じて撹拌等を行っても良い。このように、ラテックス状態でケン化処理を行うことで、天然ゴムの各粒子が均一に処理され、効率的にケン化処理を行うことができる。ケン化処理を施すと、ケン化により分離したリン化合物が後述する工程(II)で洗浄除去されるので、調製されるマスターバッチに含まれる天然ゴム中のリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることもできる。
ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等の公知のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、ゴムを凝固させず良好にケン化できるという点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。ケン化処理において、アルカリ及び界面活性剤の添加量、ケン化処理の温度及び時間は、適宜設定すればよい。
工程(I)において、ミクロフィブリル化植物繊維は、水中に分散させた水溶液(ミクロフィブリル化植物繊維水溶液)の状態でケン化天然ゴムラテックスに投入してもよいし、ミクロフィブリル化植物繊維をそのままケン化天然ゴムラテックスに投入後、必要に応じて水で希釈してもよい。ミクロフィブリル化植物繊維を良好に分散できるという点から、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液をケン化天然ゴムラテックスに投入することが好ましい。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液中、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合(切断具合)は、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度で判断することができ、粘度が高いほど、繊維がほぐれている(繊維が切断されて短くなっている)ことを意味する。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは2.5mPa・s以上、更に好ましくは5.0mPa・s以上である。2.0mPa・s未満であると、繊維が充分にほぐれておらず、充分な補強性が得られないおそれがある。また、繊維塊が破壊核となり、破断伸びが低下するおそれもある。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、好ましくは10.0mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは8.0mPa・s以下である。10.0mPa・sを超えると、水溶液が撹拌されにくくなり、撹拌ローター周辺の繊維が局部的に粉砕され、均一な繊維の粉砕が困難になるおそれがある。また、ケン化天然ゴムラテックスとの混練りが困難になるおそれもある。
なお、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度は、ミクロフィブリル化植物繊維を0.5質量%、水を99.5質量%含むミクロフィブリル化植物繊維水溶液を、音叉型振動式粘度計によって常温(23℃)で測定した値である。
また、ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合は、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の撹拌速度、撹拌時間等によって調整することができる。撹拌速度が速く、撹拌時間が長いほど、繊維をほぐすことができる。また、撹拌に使用するホモジナイザーの機種、回転歯の形状、せん断能力を適切に選択することで、効率よく繊維をほぐすことが可能となる。
ケン化天然ゴムラテックスとミクロフィブリル化植物繊維との混合物は、これらを順次滴下、注入等を行った後、公知の方法で混合することで調製できる。
混合物を凝固する方法には、酸凝固、塩凝固、メタノール凝固等があるが、マスターバッチ中にミクロフィブリル化植物繊維を均一分散させた状態で凝固するためには、酸凝固、塩凝固又はこれらの併用が好ましく、酸凝固がより好ましい。凝固させるための酸としては、蟻酸、硫酸、塩酸、酢酸等が挙げられ、コスト面から、硫酸が好ましい。また、塩としては、例えば、1〜3価の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩等)が挙げられる。また、混合物の凝固は、酸又は塩の添加により混合物のpHを4〜9(好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5)に調整して固形分を凝固させることで実施されることが好ましい。
混合物の凝固を急激に行うと、ミクロフィブリル化植物繊維が毛玉状に固まってケン化天然ゴムラテックスに取り込まれ、ミクロフィブリル化植物繊維が分散しにくくなる傾向がある。従って、混合物の凝固は、ミクロフィブリル化植物繊維がケン化天然ゴムラテックスに緩やかに取り込まれるような条件で行うことが好ましい。このような観点から、混合物を凝固する際、混合物の温度は、40℃以下にすることが好ましく、35℃以下にすることがより好ましい。同様の観点から、上述した酸、塩、メタノール等の凝固剤は、段階的に投入する(全量を分割して投入する)ことが好ましい。
(工程(II))
工程(II)では、工程(I)で得られた凝固物(凝集ゴム及びミクロフィブリル化植物繊維を含む凝集物)を洗浄し、ゴム(天然ゴム)中のリン含有量を200ppm以下に調整(低減)する。ケン化処理後に洗浄処理を施すことにより、凝固物における天然ゴム中のリン量を200ppm以下に低減し、天然ゴム特有の蛋白質やリン脂質からなる蜂の巣状のセルを除去することができる。
洗浄方法としては、例えば、ゴム分を水で希釈した後に遠心分離する方法や、ゴム分を水で希釈した後に静置してゴムを浮遊又は沈殿させ水相のみを排出する方法が挙げられる。遠心分離する際は、まず天然ゴムラテックスのゴム分が5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水で希釈し、次いで5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよく、所望のリン含有量になるまで洗浄を繰り返せばよい。また、静置してゴムを浮遊又は沈殿させる場合も水の添加、撹拌を繰り返して、所望のリン含有量になるまで洗浄すればよい。
なお、洗浄方法はこれらに限定されず、pHが6〜7の範囲となるように炭酸ナトリウム等の弱アルカリ水で中和後、液相分を除去することで洗浄してもよい。
洗浄後、通常、公知の方法(オーブン、減圧等)で乾燥される。後述する本願実施例では、真空減圧下、40℃で12時間乾燥させた。乾燥後、2軸ロール、バンバリーミキサー等でゴム練りを行うと、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム(高純度化天然ゴム)及びミクロフィブリル化植物繊維を含むクラム状のマスターバッチが得られる。上記マスターバッチは、まとまり性、ハンドリング性を良くするため、圧延ロールで数cm厚みのシートに成型することが好ましい。なお、上記マスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
ミクロフィブリル化植物繊維は、押出し方向(トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、クリンチ、タイガム、ビードエイペックス、ストリップエイペックス等では、タイヤ周方向、すなわち、回転方向に相当する。)に配列するため、押出し方向を主として補強し、押出し方向に直交する方向(タイヤ径方向)への補強の寄与は少ない。この特性を利用して、乗り心地性に寄与するタイヤ径方向の複素弾性率E*を維持しながら、操縦安定性に寄与するタイヤ周方向の複素弾性率E*を高くすることができ、これにより、操縦安定性及び乗り心地性を両立させることができる。また、シンジオタクチック結晶を含むブタジエンゴムを配合する等の従来の方法でタイヤ周方向の複素弾性率E*を高くすると、破断伸びが大幅に低下する傾向があるが、本発明では、タイヤ周方向の複素弾性率E*を高くしても、良好な破断伸びを維持することができる。これらの作用により、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善することができる。
本発明のゴム組成物は、上記改質天然ゴム以外に他のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられ、NR、SBR、BRが好ましく、NR、SBRがより好ましい。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の上記改質天然ゴム及びNRの合計含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。5質量%未満であると、充分な破断伸びが得られない場合がある。また、上記改質天然ゴム及びNRの合計含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、耐亀裂成長性や耐リバージョン性が低下する場合がある。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、破断伸び、硬度、耐リバージョン性が低下する場合がある。また、SBRの含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。60質量%を超えると、充分な低燃費性が得られない場合がある。
本発明のゴム組成物において、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、ミクロフィブリル化植物繊維の相互作用が発生しにくく、高い複素弾性率E*が得られない場合がある。また、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、ミクロフィブリル化植物繊維の分散が困難となり、破断伸び、低燃費性が悪化する場合がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことが好ましい。これにより、タイヤ径方向(押出し方向に直交する方向)を適度に補強することができ、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善することができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは25m/g以上、より好ましくは80m/g以上である。25m/g未満では、充分な破断伸びが得られないおそれがある。該NSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは120m/g以下である。200m/gを超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは115m/g以上である。70m/g未満では、充分な破断伸びが得られないおそれがある。該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。300m/gを超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、操縦安定性、乗り心地性、破断伸び及び配合コストをバランス良く改善することができる。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、シリカの含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善することができる。また、シュリンクが少なく、押出し寸法安定性が良好である。
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善することができる。
本発明のゴム組成物は、レゾルシノール樹脂(縮合物)、変性レゾルシノール樹脂(縮合物)、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の架橋樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な破断伸びを維持しながら、タイヤ周方向の複素弾性率E*を向上させることができる。また、上記架橋樹脂によるタイヤ周方向の複素弾性率E*の向上効果は、ミクロフィブリル化植物繊維による向上効果を損なうことなく発揮される。そのため、上記架橋樹脂をミクロフィブリル化植物繊維とともに配合することで、タイヤ周方向の複素弾性率E*を更に高めることができる。
レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。具体的には、住友化学(株)製のレゾルシノール等が挙げられる。変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、インドスペック社製のペナコライト樹脂B−18−S、B−20、田岡化学工業(株)製のスミカノール620、ユニロイヤル社製のR−6、スケネクタディー化学社製のSRF1501、アッシュランド社製のArofene7209等が挙げられる。
クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール樹脂の末端のメチル基を水酸基に変性したもの、クレゾール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、田岡化学工業(株)製のスミカノール610、住友ベークライト(株)製のPR−X11061(クレゾールモノマー成分として、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールを使用して合成されたクレゾール樹脂で、クレゾール樹脂中に残存する遊離のクレゾール成分量(遊離のモノマー成分量)が、クレゾール樹脂100質量%中0.6質量%と、少ない樹脂)等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。また、変性フェノール樹脂としては、例えば、フェノール樹脂をカシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミン等を用いて変性した樹脂が挙げられる。
操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びをバランス良く改善できるという点から、上記架橋樹脂としては、変性レゾルシノール樹脂、変性フェノール樹脂が好ましく、変性フェノール樹脂がより好ましく、カシューオイル変性フェノール樹脂が更に好ましい。
本発明のゴム組成物において、上記架橋樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。1質量部未満では、上記架橋樹脂を配合した効果が充分に得られない傾向がある。また、上記架橋樹脂の合計含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、上記架橋樹脂の分散性が低下し、低燃費性、破断伸びが低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、メチレン供与体を含むことが好ましい。これにより、上記架橋樹脂を効率良く硬化させ、操縦安定性の改善効果を高めることができる。メチレン供与体としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)が好ましく、HMMPMEの部分縮合物がより好ましい。
本発明のゴム組成物において、上記メチレン供与体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満では、メチレン供給量が少なく、操縦安定性を充分に改善できないおそれがある。また、上記メチレン供与体の含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。5質量部を超えると、破断伸びが低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含むことが好ましい。これにより、通常の硫黄架橋に比べて熱的に安定な架橋構造を形成でき、操縦安定性、破断伸びを大きく向上できるとともに、良好な低燃費性も得られる。
Figure 0005770757
(式中、Rは、同一若しくは異なって、炭素数5〜15のアルキル基又はアミル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、1〜4の整数を示す。mは0〜300の整数を示す。)
mは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜300の整数であり、0〜100の整数が好ましく、3〜100の整数がより好ましい。x及びyは、高硬度が効率良く発現できる(リバージョン抑制)点から、1〜4の整数であり、ともに2が好ましい。Rは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数5〜15のアルキル基又はアミル基であり、更には炭素数8〜15のアルキル基が好ましい。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製することができ、特に制限されないが、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25等で反応させる方法等が挙げられる。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の市販品として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(式(1)中のR=C17、x=2、y=2、m:0〜100の整数)、TS3101(式(1)中のR=C1225、x=2、y=2、m:170〜210の整数)等が挙げられる。
本発明のゴム組成物において、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。0.2質量部未満であると、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物による硬度とtanδの改善効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。10.0質量部を超えると、破断伸びが低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物は、C5系石油樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な操縦安定性が得られる。C5系石油樹脂としては、ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂等が挙げられる。
C5系石油樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記範囲内であると、粘着性、破断伸びが良好に得られる。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
C5系石油樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、粘着性、破断伸びが良好に得られる。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、各種老化防止剤、硫黄、加硫促進剤等を適宜配合できる。
本発明のゴム組成物は、温度70℃、動歪み2%で測定した押出し方向(タイヤ周方向)の複素弾性率E*aと、温度70℃、動歪み2%で測定した押出し方向に直交する方向(タイヤ径方向)の複素弾性率E*bとの比(E*a/E*b)が、1.05〜6.00であることが好ましい。E*a/E*bを上記範囲内に調整することにより、操縦安定性、乗り心地性及び破断伸びがバランス良く得られる。E*a/E*bは、より好ましくは2.00〜6.00である。
本明細書において、タイヤ周方向、タイヤ径方向とは、具体的には特開2009−202865号公報の図1等に記載の方向である。
なお、本明細書において、E*a、E*bは、後述の実施例に記載の方法により測定される。
E*a/E*bは、ミクロフィブリル化植物繊維の量、ミクロフィブリル化植物繊維の柔軟さ、ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合、未加硫ゴム組成物の押出し圧力等により調整できる。具体的には、ミクロフィブリル化植物繊維をタイヤ周方向に均一な間隔で配向させるほど、また、ミクロフィブリル化植物繊維の量を増加させるほどE*a/E*bを増加できる。
なお、宇部興産(株)製のVCR617等のSPB(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶)含有BRを使用することによってもE*a/E*bを向上させることは可能であるが、ミクロフィブリル化植物繊維は、該SPB含有BRと比較して、E*a/E*bの向上効果が大きいという点で有利である。
良好な操縦安定性が得られるという点から、上記E*aは、好ましくは7〜100、より好ましくは30〜100である。また、良好な乗り心地性が得られるという点から、上記E*bは、好ましくは6〜26である。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤ部材に使用することができ、サイドウォール(特に内層サイドウォール)、ベーストレッド、タイガム、ビードエイペックス、ストリップエイペックス、クリンチエイペックス又はウイングに好適に使用できる。
なお、内層サイドウォールとは、多層構造を有するサイドウォールの内層部であり、具体的には、本明細書の図1や、特開2007−106166号公報の図1等に示される部材である。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、上記ゴム組成物を未加硫の段階でサイドウォール等の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴムラテックス:Muhibbah LATEKS社から入手したフィールドラテックスを使用
SBRラテックス:下記方法で調製
ミクロフィブリル化植物繊維:王子製袋(株)製のネオファイバー
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
凝集剤:花王(株)製のボイスC−60H(メタクリル酸エステル系ポリマー)
凝固剤:和光純薬工業(株)製の1%硫酸
NR:TSR20
IR:IR2200
SBR:住友化学(株)製のSBR1502
BR1:ランクセス社製のBUNA−CB25
BR2:宇部興産(株)製のVCR617(SPB含有BR)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN219(NSA:104m/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(NSA:40m/g)
シリカ1:デグッサ社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g)
シリカ2:ローディア社製のZ1085Gr(NSA:80m/g)
架橋樹脂1:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシノール樹脂(変性レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物))
架橋樹脂2:住友デュレツ社製のスミライトレジンPR12686(カシューオイル変性フェノール樹脂)
C5系石油樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂)(軟化点:102℃)
オイル:H&R社製のvivatec500
亜鉛華:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
20%オイル含有不溶性硫黄:フレキシス社製のクリステックスHSOT20(硫黄80質量%及びオイル分20質量%を含む不溶性硫黄)
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200
メチレン供与体1:住友化学(株)製のスミカノール507A(変性エーテル化メチロールメラミン樹脂(HMMPMEの部分縮合物)を65質量%、他にシリカとオイルを35質量%含有)
メチレン供与体2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(ヘキサメチレンテトラミン(HMT))
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
(ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の調製)
ミクロフィブリル化植物繊維を200倍(質量比)の水で希釈後、筒型ホモジナイザー(プライミクス(株)製のオートミクサー 20型、回転数8000rpm)を用いて表2に示す時間撹拌し、ミクロフィブリル化植物繊維を0.5質量%、水を99.5質量%含むミクロフィブリル化植物繊維水溶液を得た。表2に示す撹拌時間は、筒型ホモジナイザーによるミクロフィブリル化植物繊維の解繊時間を意味しており、この時間を変更し、ミクロフィブリル化植物繊維のほぐれ具合を調整した。ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の粘度を音叉型振動式粘度計((株)エー・アンド・デイ製のSV−10)を用いて常温(23℃)で測定し、表2に記載した。
(マスターバッチの調製)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。
次に、ケン化天然ゴムラテックスとミクロフィブリル化植物繊維水溶液とが乾燥時に所定の質量比率となるように計量、調整後、筒型ホモジナイザーを用いて、8000rpmの条件でこれらを1時間撹拌した。
次に、撹拌後の混合物1000gに対し、凝集剤1.5gを加え、筒型ホモジナイザーを用いて、300rpmで2分間撹拌した。
次に、筒型ホモジナイザーを用いて、450rpm、30〜35℃の条件で撹拌しながら凝固剤を段階的に加え、pHを6.8〜7.1に調整し、凝固物を得た。撹拌時間は1時間とした。得られた凝固物は、水1000mlで繰り返し洗浄した。
次に、数時間風乾させた凝固物を更に40℃で12時間真空乾燥し、マスターバッチ(MB)を得た。得られたMB(1)〜(11)を表2に示す。なお、MB(4)は天然ゴムラテックスの代わりにSBRラテックスを使用した。MB(5)はケン化処理を行わずに作製した。MB(11)は洗浄を繰返し行わず、洗浄回数を1回とした。
なお、SBRラテックスは以下の方法で調製した。使用した薬品を以下に示す。
水:蒸留水
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):和光純薬工業(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:和光純薬工業(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:和光純薬工業(株)製のスチレン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
分子量調整剤:和光純薬工業(株)製のtert−ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:和光純薬工業(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:和光純薬工業(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:和光純薬工業(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:和光純薬工業(株)製のN,N’−ジメチルジチオカルバメート
(SBRラテックスの調製)
表1の仕込み組成に従い、撹拌機付き耐圧反応器に水、乳化剤(1)、乳化剤(2)、電解質、スチレン、ブタジエン及び分子量調整剤を仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤及びSFSを溶解した水溶液と、EDTA及び触媒を溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤を添加して反応を停止させ、SBRラテックスを得た。
Figure 0005770757
MB(1)〜(11)に含まれるゴム分と、TSR20とについて、以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量及びゲル含有率を測定した。結果を表2に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、熱分解後ガスクロマトグラフで定量した。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(P−4010、日立製作所(株)製)を使用してリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDClに溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
Figure 0005770757
表2に示すように、HPNRを含むMB1〜3、6〜10は、TSR20に比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。また、31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークを検出しなかった。
(実施例及び比較例)
表3及び4の上段に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤及びアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及びアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を添加して練り込み、内層サイドウォール用の未加硫ゴム組成物を得た。
得られた内層サイドウォール用の未加硫ゴム組成物を、外層サイドウォール用の未加硫ゴム組成物、クリンチエイペックス用の未加硫ゴム組成物とともに3層コールドフィート押出機を用いて押出し成型した後、他のタイヤ部材と成型機上で貼り合わせて生タイヤカバーを製造し、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(205/65R15)を得た。得られた試験用タイヤの断面模式図を図1に示す。なお、外層サイドウォール2は、表5の上段に示す配合処方にしたがい、内層サイドウォール1と同様の方法で作製した。内層サイドウォール1及び外層サイドウォール2の仕上り厚みはいずれも1.25mmとした。上記試験用タイヤの性能を以下の試験により評価した。
(粘弾性試験)
得られた試験用タイヤから、タイヤ軸を中心として周方向が長辺となる様に短冊状のゴム試験片を切り出しゴム試験片1(サイズ:縦20mm、横3mm、厚さ2mm)を得た。また、タイヤ軸を中心として半径方向(ラジアル方向)が長辺となる様に短冊状のゴム試験片を切り出しゴム試験片2(サイズ:ゴム試験片1と同様)を得た。
得られたゴム試験片1、2を用いて、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%(長辺方向の歪)の条件下で、タイヤ周方向の複素弾性率E*a(MPa)、及びタイヤ径方向の複素弾性率E*b(MPa)を測定した。E*が大きいほど剛性が高いことを示す。
なお、E*aが目標値の範囲内であると、ハンドル応答性に優れ、操縦安定性が優れることを示す。E*bが目標値の範囲内であると、路面の凹凸吸収性に優れ、乗り心地性が優れることを示す。E*a/E*bが目標値の範囲内であると、過渡特性(操舵角度をつけてのコーナリングの直後に、ハンドルを直進に戻した際の車両戻りの良さ)が優れることを示す。
また、前述の評価方法によりゴム試験片1のtanδを測定した。tanδ(70℃)が小さいほど、低燃費性が優れることを示す。
(引張試験)
上記ゴム試験片1からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JlS K 6251 2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、常温にて引張試験を実施し、試験片の破断伸びEB(%)を測定した。破断伸びEB(%)が大きいほど、耐久性が優れることを示す。
(シート加工性)
各未加硫ゴム組成物について、押出し後の各未加硫ゴム組成物を所定のサイドウォールの形状に成形した成形品のエッジ状態、ゴムの焼け度合い、ゴム同士の粘着度合い、平坦さ、及びミクロフィブリル化植物繊維の凝集塊の有無を目視、触覚により評価し、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど、シート加工性が優れることを示している。
なお、エッジ状態については、最もエッジが真っ直ぐで滑らかな状態を良好とし、ゴムの焼け度合いについては、上記成形品から切り出した15cm角の2mmシートにおいて、ピッツ焼けゴム塊による凹凸がない状態を良好とし、平坦さについては、該シートが平坦で平面板に密着する状態を良好として評価した。凝集塊の目視は、ゴムシート断面で0.1個/cm(10個/100cm)を基準として評価した。
(操縦安定性、乗り心地性)
試験用タイヤを車両(3000cc)の全輪に装着させ、一般的な走行条件のテストコースにて実車走行を行なった。操舵時のコントロールの安定性(操縦安定性)及び乗り心地性をテストドライバーが官能評価し、比較例1を100として指数表示をした。操縦安定性指数が大きいほど操縦安定性が優れることを示し、乗り心地性指数が大きいほど乗り心地性が優れることを示す。
(転がり抵抗)
転がり抵抗試験機を用い、JIS標準中心リム、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で、JIS D 4234:2009に従い、上記試験用タイヤの転がり抵抗を測定し、以下の計算式から転がり抵抗の改善率(転がり抵抗の低下率)を算出した。
転がり抵抗の改善率=(比較例1の転がり抵抗−各配合の転がり抵抗)/(比較例1の転がり抵抗)×100
Figure 0005770757
Figure 0005770757
Figure 0005770757
表3及び4より、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、ミクロフィブリル化植物繊維とを含むMBを配合した実施例は、比較例1と比較して、操縦安定性、乗り心地性及び耐久性がバランス良く改善された。また、低燃費性、加工性も良好であった。
一方、上記MBを配合していない比較例2〜5は、操縦安定性、乗り心地性、破断伸び、加工性のいずれかが目標値を満たしておらず、性能のバランスが悪かった。
比較例6は、ミクロフィブリル化植物繊維を混練り時に投入しているため、ミクロフィブリル化植物繊維を充分に分散させることができず、加工性が著しく劣っていた。
比較例7及び8は、HPNRを含有しないマスターバッチを使用しているため、ミクロフィブリル化植物繊維を充分に分散させることができず、破断伸びや加工性が劣っていた。
比較例9及び10は、VCR617を配合し、良好な操縦安定性が得られているが、乗り心地性が劣っていた。また、破断伸びが著しく劣っていた。
比較例11は、ゴム中のリン含有量が多いマスターバッチを配合しているため、ミクロフィブリル化植物繊維を充分に分散させることができず、破断伸びや加工性が劣っていた。
なお、上記実施例では本発明を内層サイドウォールに使用した場合の結果について示しているが、ストリップエイペックス、ビードエイペックス、クリンチエイペックス等の他のタイヤ部材に用いても同様の効果が得られる。ストリップエイペックス、ビードエイペックス、クリンチエイペックスは走行時の歪みが少なく、破断、亀裂成長することは稀であるため、本発明をこれらに適用する場合、破断伸びの目標値は150%(好ましくは200%)程度である。ベーストレッド、ウイング、タイガムは走行時の歪みが前述の3部材よりも大きいため、破断伸びの目標値を300%(好ましくは350%)程度にする必要がある。架橋剤を減らし、E*を下げれば本発明を適用できる。
1:内層サイドウォール
2:外層サイドウォール
3:ストリップエイペックス
4:ベーストレッド
5:ビードエイペックス
6:クリンチエイペックス
7:ウイング
8:タイガム(ケースとインナーライナーの間に配置)

Claims (10)

  1. リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、天然物を水酸化ナトリウムで処理した後、機械的に摩砕ないし叩解することにより得られるミクロフィブリル化植物繊維とを含むマスターバッチを用いて作製されたゴム組成物。
  2. 温度70℃、動歪み2%で測定した押出し方向の複素弾性率E*aと該押出し方向に直交する方向の複素弾性率E*bとの比(E*a/E*b)が1.05〜6.00であり、かつ前記E*aが7〜100MPaである請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記マスターバッチにおいて、前記改質天然ゴム100質量部に対する前記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が5〜30質量部である請求項1又は2記載のゴム組成物。
  4. 窒素吸着比表面積25〜200m/gのカーボンブラック及び/又は窒素吸着比表面積70〜300m/gのシリカを含有し、
    ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラック及び前記シリカの合計含有量が25〜80質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の架橋樹脂を含有し、
    ゴム成分100質量部に対する前記架橋樹脂の合計含有量が1〜20質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有し、
    ゴム成分100質量部に対する前記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が0.2〜10質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
    Figure 0005770757
    (式中、Rは、同一若しくは異なって、炭素数5〜15のアルキル基又はアミル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、1〜4の整数を示す。mは0〜300の整数を示す。)
  7. 更に、前記改質天然ゴム以外のジエン系ゴムを含有する請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
  8. タイヤ部材に使用される請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物。
  9. 前記タイヤ部材がサイドウォール、ベーストレッド、タイガム、ビードエイペックス、ストリップエイペックス、クリンチエイペックス又はウイングである請求項記載のゴム組成物。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
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