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JP5686887B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電力変換装置に関し、安価且つ小型に電磁雑音の相互干渉を抑制する構造に関する。
直流電力を供給する蓄電装置は、バッテリやコンデンサ等の直流電力保持装置と、残電力容量や供給電力値を監視する制御監視回路等を備えて構成される。また、この蓄電装置が供給する直流電圧から交流電圧を生成するインバータ等の電力変換装置は、スイッチング素子等から成る主回路(パワーモジュール)と、スイッチング素子を駆動する信号を生成する駆動回路(ゲートドライバ)と、平滑化コンデンサと、駆動回路等へ送る動作信号を生成する制御回路等を備えて構成される。
この種の電力変換装置ではパワーモジュールが高速なスイッチングを行う事で主な雑音発生源となる為、制御回路基板はこれらパワーモジュールが発生する雑音の干渉を受けない為の回路的工夫及び構造的工夫が必要となってくる。
例えば特許文献1(特開2005−235929号)に開示された技術は、パワーモジュールと平滑化コンデンサを、その他の構成要素と電磁的且つ熱的に分断する構造とする事で、パワーモジュール及び平滑化コンデンサが発生する雑音をゲートドライバ及び制御回路へ混入する事を防ぎつつ、パワーモジュールが発生する熱をゲートドライバ及び制御回路へ干渉する事を防ぐようにしたものである。
また、特許文献2(特開2006−230064号)には、パワーモジュールと平滑化コンデンサ等を有する筐体と、ゲートドライバ及び制御回路基板を有する筐体を別の筐体とし、これらを組み合わせる事によって、パワーモジュールが発生する雑音がゲートドライバへ混入する事を防ぐ構造が示されている。
特開2005−235929号 特開2006−230064号
これらが示すように、電力変換器においては主回路が発生するノイズが制御回路へ伝播しないように工夫する必要があり、特許文献1(特開2005−235929号)に示された構成はゲートドライバ回路基板とパワーモジュールの間に電磁的な遮断部材を挿入する事でこのノイズ伝播を抑制しているが、ゲートドライバとパワーモジュールの間にはゲート信号を伝達するための配線部材が存在し、これを貫通させるための空孔を電磁遮断部材にあける必要がある。電磁遮断部材に空孔が存在すると、その空孔を鎖交するノイズ磁界によって電磁遮断部材にノイズ電流が流れる。ノイズ電流が流れると、電磁遮断部材に電位変動が生じ、制御回路基板へノイズが伝導してしまうという問題が生ずる。
また、特許文献2(特開2006−230064号)に示された構成では、パワーモジュールが発生する雑音がゲートドライバに混入する事を防ぐ為、各々を別のシールド筐体に実装しているが、上記に示したようにゲートドライバとパワーモジュールの間にはゲート信号を伝達するための配線部材が必要であり、それぞれの筺体にはこれを通すための貫通孔が存在している。この場合も同様に、貫通孔をノイズ磁界が鎖交することで、ノイズ電流が誘起され、筺体に電位変動が生じる。筺体は通常制御回路のGND(基準電位)であるため、この貫通孔に起因するノイズが制御回路基板のノイズとなり、誤動作や電力変換装置外部へのノイズ漏えいの原因となるという問題があった。
以上のように、構造を電磁的に遮断することでノイズの伝播を低減し改善することはできても、配線部材などのための貫通孔が存在するため、ノイズの遮断は完全ではなく、貫通孔を鎖交する磁界に起因して伝播するノイズを抑制できないという問題があった。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、構造の工夫によりノイズを効果的に遮断し、高信頼性且つ小型化・低コスト化が可能な車載用電力変換器を提供する事にある。
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)筺体と、スイッチング素子を備えてなるパワーモジュールと、前記スイッチング素子を駆動する信号を生成する駆動回路と、前記駆動回路へ送る動作信号を生成する制御回路基板と、前記制御回路基板を実装するベース板と、前記筺体と前記制御回路基板とを接続する接続部品とを備える電力変換装置であって、前記筺体には、隣り合う2つの開口部を備え、前記接続部品は、前記ベース板または前記筐体の開口部に備えられていることを特徴とする電力変換装置である。
パワーモジュールやゲートドライバ等の高圧電源系統が発生する雑音が制御回路基板へ混入する事を防ぎ、更に電力変換器外部との接続用ハーネスへ雑音が漏れ出る事を防ぐ。また、構造的に雑音伝播を抑制するため、雑音対策部品が不要となり、小型化且つ低コスト化を実現できる。
本発明に係る電力変換機の構造図 本発明に係る電力変換器の回路的動作の説明図 インバータ内部の回路構成及びベースの位置の説明図 本発明に係る電力変換機による効果を示す図 本発明に係る電力変換機の構造図 本発明に係る電力変換機の構造図 本発明に係る電力変換機の構造図
以下に本発明の実施の形態を、図1乃至7を用いて説明する。
以下に説明する実施例では、本発明が適用される電力変換装置として、特に熱サイクルや動作的環境などが大変厳しい車載用インバータ装置を例に挙げて説明する。車載用インバータ装置は、車載電動機(モータ)の駆動を制御する制御装置として車載電機システムに備えられており、車載電源を構成する車載バッテリから供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車載電動機に供給することにより、車載電動機の駆動を制御するものである。
尚、以下に説明する構成は、DC/DCコンバータ、直流チョッパなどの直流−直流電力変換装置、交流−直流電力変換装置、或いはこれら電力変換装置に接続された蓄電装置にも適用可能である。また、以下に説明する構成は、工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムに用いられる、或いは家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられる家庭電力変換装置に対しても適用可能である。特に低コスト化及び小型化を狙った電力変換装置への適用が望ましい。
図1、図5乃至7は本発明に係る電力変換器の構造において必要最小限の構成要素を示す図である。
図1は、本発明に係る電力変換器の構造図である。図1の右上図は本発明に係る電力変換器の断面図、図1の右下図は本発明に係る電力変換器の上面図、図1の左下図は本発明に係る電力変換器の上面図を拡大した図である。
図5は本発明に係る電力変換器の上面図、図6は側面図、図7は断面図である。本実施形態に係る電力変換器においては、筺体1113と、駆動回路へ送る動作信号を生成する制御回路基板102と、これを実装するためのベース板105、制御回路基板102を固定するための接続部品、高電圧及び高電流を伝送するためのバスバー210を有する。ベース板105は金属など制御回路基板102よりも高い導電性を有する材料とし、筺体1113及びベース105は全て物理的且つ電気的に接続されており、筐体(ケース)1113は車両等のGNDと接続する事によってベース105もGND電位となる。
制御回路基板102と電力変換器外部の機器を接続する為の外部接続用コネクタは制御回路基板102又はコネクタ専用の基板上に実装され、制御回路基板同様にベースより上方の空間に実装される。
図2は、本発明に係る電力変換器の回路的動作の説明図であり、この図を用いて雑音の発生機構を説明する。
高圧バッテリ202から出力される電圧は平滑化コンデンサ209及びパワーモジュール211の上下アームに印加されている。スイッチング素子は各々の相に対してプラス側とマイナス側にあるものとし、その中間の電位が負荷であるモータ217の各々の相につながっている。スイッチング素子のゲートはゲートドライバ208と接続されており、ゲートドライバ208を制御する為の信号は制御回路基板206から入力される。制御回路基板206及びゲートドライバ208の一部は低圧のバッテリ201により動作する為、制御回路基板206には低圧バッテリ201が接続されている。ゲートドライバ208が低圧の電源201を必要とする場合には制御回路基板206を経由して供給する事ができる。ゲートドライバ208には高圧バッテリ202の電源もきているため、DC−DCコンバータ等を用いて高圧から低圧を作り出しても良い。制御回路基板206は電力変換器の動作を制御すると共に、電力変換器の外部機器と信号のやり取りを行う必要がある為、制御回路基板206は外部機器216とハーネス214等を用いて接続されている。
制御回路基板206のGNDはケース205と電気的に接続されており、ケース205は電力変換器外部のGND212と接続されている。負荷であるモータ217と電力変換器はシールドケーブル215を用いて接続されており、ケーブルGND及びモータ筐体は同GND212に接続されている。高圧バッテリ筐体及び高圧DCケーブル204のGNDも同様に同GNDに接続されている。
この状態において、制御回路基板206はモータ217を動作させる為にPWM信号等の制御信号をゲートドライバ208へ出力する。ゲートドライバ208はこれら信号を受けてスイッチング素子のオン・オフを繰り返す。ある素子のプラス側(上アーム)がオンとなる場合、高圧バッテリから平滑化コンデンサへ供給された電荷はバスバー210、スイッチング素子211、ケーブル215を通り、モータ217へと流れ、他のマイナス側218がオンとなっている素子を通り、高圧バッテリ202へ戻ってくるように電流として流れる。これらPWM信号のスイッチング周波数は数十kHz以下のオーダであるが、パルス波形であるため、パルス立ち上がり、パルス立下り時には高周波成分が含まれており、これら高周波電流雑音が上記経路を流れる事になる。
この時、電力変換器とモータ217を接続するシールドケーブル215のシールドには両端がGNDへ接続されている為、モータ信号のループ電流がつくる磁界を打ち消す方向に電流が流れる。また、両端はGND電位である為、ケーブル長での共振にさえ留意すれば、このシールドケーブル215において上記電流が放射する電磁界は非常に小さいと考える事が出来る。高圧バッテリ202と電力変換器を接続するシールドケーブル204についても同様である。
しかし、電力変換器内部では、上記スイッチング雑音電流が流れるバスバー210、218がシールドされていない為、磁界は打ち消されず、強雑音磁界を電力変換器内部に発生させる。バスバー210、218をラミネートし、プラス側とマイナス側を近接させた状態で組み付ける事によって、上記スイッチング雑音電流により形成されるループを最小化し、放射雑音磁界を低減する事は可能であるが、外部ケーブルとの接続部等、構造的制約から離れてしまう箇所が発生し、雑音磁界の生成源となってしまう。バスバー210、218をシールド化する事で雑音磁界を抑制する事は可能であるが、平滑化コンデンサ209の接続部分における不平衡電流の発生や高コスト化といった問題に加え、シールド構造による寄生容量の増加によってPWM波形の劣化といった問題がある。
また、上記モータ駆動用の電流による雑音電磁界を抑制したとしても、実際にはモータ217、ケーブル215にはGNDに対して寄生容量が存在し、モータ駆動電流の一部はこれら寄生容量を介してGND213を流れ出た後、平滑コンデンサ209及び高圧バッテリ202へと戻っていく。この様な漏れ電流はモータ217へ流れていく電流経路と、高圧バッテリ202へと戻っていく電流(リターン電流)が物理的に離れた場所を流れる為、結果として電力変換器内部のバスバー210、218にはプラス側210とマイナス側218にアンバランスな電流が流れ、強磁界を発生させる。
図3は、インバータ内部の回路構成およびベースの位置の説明図である。図3を用いてインバータ内部の回路構成及び電磁的な分断機能として用いるベースの位置について詳細に説明する。図3は、電力変換器(図2のA)を拡大し、構成を詳細に記載している。
制御回路基板301(206)には、モータ217の回転角度を検知する為の角度検知回路302、モータ217へ流れている電流を検知する為の電流検知回路303、電力変換器外部の機器と通信を行うためのトランシーバ304、制御回路基板上のIC等へ電源を供給する為の電源回路306、これらを制御する為のマイクロコントローラ307、等が搭載される。これらは全て1V〜15V程度の弱電圧によって動作する。
ゲートドライバ基板318(208)には、制御回路基板206との電気的絶縁を行う為の絶縁素子315、パワーデバイス326を駆動する為のドライバ回路314、パワーデバイス326の温度や電圧を監視する為の温度・電圧検知回路313、これらゲートドライバ上の回路へ電源を供給する為の電源回路312、等が搭載される。
絶縁素子315からドライバ側の回路は15V〜数百Vの高圧で動作する回路が含まれ、パワーモジュール320上にはモータ217を駆動する為のパワーデバイス326が使用する相数に対応する数が搭載されており、これらは〜数百Vの高圧をスイッチングする。
平滑化コンデンサ324は各パワーデバイス326へ電荷を高速に供給する為にインバータ内部に搭載され、パワーデバイス326同様に〜数百Vの電圧が印加される。
図中では、高電圧が印加されるラインを、制御回路基板上の低電圧信号ラインに比較して太く表示している。
ここで、平滑化コンデンサ324とパワーデバイス326を接続するバスバー321はパワーデバイス326へ電荷を高速に供給する為に短くしインダクタンスを下げる必要がある。このバスバー321の寄生インダクタンスが大きいとスイッチング時の雑音が大きくなると共に、インダクタンスによる電圧降下が大きくなる事による放射雑音の増大、動作仕様の劣化等が生じてしまう。よって平滑化コンデンサ324とパワーモジュール320は必要に応じて冷却機構等を介し、実装配置上近接させる必要がある。
またドライバ回路314とパワーデバイス326を接続するゲート信号線322はパワーデバイス326を駆動する矩形信号を伝える為の信号線であり、この信号線を長くしてしまうと上記同様にインダクタンス増による信号波形の劣化や、信号線に重畳する雑音の増大による信号対雑音比(SN比:Signal to Noise ratio)の悪化が生じ、誤動作や性能劣化の原因となる。よってドライバ回路314とパワーデバイス326は短く接続する必要がある。
温度・電圧検知回路313についても同様に、これらとパワーモジュール326を接続する信号線が長いと検出精度の劣化を引き起こす為、これらの信号線も短くする必要がある。
また、ゲートドライバ用の電源回路312について、これは上記ドライバ回路314や各種検知回路313に用いられており、ドライバ回路のPWMゲートスイッチング信号をHigh/Low切り替える際に発生する切り替え雑音等が電源・GNDに重畳し易い。即ち、電源供給経路からの雑音放射を抑え、且つ同経路への雑音の混入を防ぐという目的から、ドライバ回路314や温度・電圧検知回路313と電源回路312を接続する電源供給経路317は短くする必要がある。これらが同基板上である場合には、電源供給経路317のインダクタンスを低減するという観点から、電源/GNDの供給経路は面(ランド)形状とする事が望ましい。
以上より、絶縁素子315、ドライバ回路314、温度・電圧検知回路313及びこれらへの電源回路312はこれらを近接して実装する為にも同一基板上に配置する事が望ましい。
一方で、角度検知回路302や電流検知回路303は電圧若しくは電流のアナログ値をデジタル値へ変換しマイクロコントローラ307へ信号線を介して伝えるという機能を有しており、これらアナログ値は雑音の重畳による性能劣化・誤動作を引き起こし易い。また、その他のマイクロコントローラ307、トランシーバ304及び電源回路306の一部等についてもゲートドライバ上のドライバ回路等に比較して5V以下の低い電圧で動作する為、ドライバ回路等と同等の雑音を受けた場合にはSN比がより低下し易い。
よって、絶縁素子315、ドライバ回路314、温度・電圧検知回路313及びこれらへの電源回路312と、マイクロコントローラ307、角度検知回路302、電流検知回路303、トランシーバ304、これらへの電源回路306及びフィルタ308を、ベース311によって電磁的に分断する事でゲートドライバ上の回路が発生する雑音が制御回路へ混入する事を防ぐ事ができ、即ち雑音による性能劣化を防ぐ事が可能となる。これを実現する形態為に、上記絶縁素子315、ドライバ回路314、温度・電圧検知回路313及びこれらへの電源回路312を有するゲートドライバ基板208と、マイクロコントローラ307、角度検知回路302、電流検知回路303、トランシーバ304、これらへの電源回路306及びフィルタ308を有する制御回路基板206は別基板とし、図1に示すようにゲートドライバ基板318はパワーモジュール211と積み重ね型実装構造とする等が考えられる。
また、マイクロコントローラ307からのPWM信号伝送経路が有する絶縁素子315について、これは、マイクロコントローラ307等とドライバ回路等が異なる電圧系統で動作し、ドライバ回路側が高圧で動作する為、ドライバ回路側で発生する高圧のサージ電圧等がマイクロコントローラ側へ混入する事を防ぐ為に、絶縁素子315を用いる。よって絶縁素子315とドライバ回路314を接続する信号線316はドライバ回路側の、マイクロコントローラ等よりも高い電圧系統で信号伝送を行うため、制御回路よりも比較的大きい雑音を発生し易い。よって、これら信号線316を出来るだけ短くする為に絶縁素子315とドライバ回路314は近接させる事が望ましい。一方で絶縁素子315とフィルタ308を接続する信号線309はマイクロコントローラ307を介して電源回路306によって供給される低電圧の信号系なので、これに雑音が重畳する事を防ぐ目的から信号線309も短くする事が望ましい。ここで、この信号線309に重畳した雑音はフィルタ308によってフィルタリングされる為、フィルタ308とマイクロコントローラ307を接続する信号線310は信号線309に比較して低雑音である。以上の様な理由から、信号線309を短くする為、ゲートドライバ基板318上において、制御回路基板301(図1の102)と接続する為のコネクタから絶縁素子315までの距離は絶縁素子315からドライバ回路314までの距離よりも短くする事が重要である。また、制御回路基板301上においては、ゲートドライバ基板318と接続する為のコネクタからフィルタ308までの距離はフィルタ308からマイクロコントローラ307までの距離よりも短くする事が重要である。
本実施形態においては、これら電力変換器内部のモータ駆動電流によって発生する雑音磁界をベース311(図1の105)によって遮蔽する。鉄など比透磁率が1よりも十分に高い材料をベース105に用いる場合、磁束はベース内に閉じ込められる為、ベース上方の空間へ雑音磁束は混入せず、望ましい。しかし、アルミ等の比透磁率が低い材料を用いたとしても、導電性があればベース105を鎖交しようとする磁束を打ち消す電流が流れる為、磁界の遮蔽効果は有する。また、ベース105は制御回路基板102のGNDと電気的に接続される為、ベース105は比透磁率の大小に関わらず導電性である事が望ましい。
次に、ベース105(219)の形状について図1および図2を用いて説明する。ベース105は制御回路基板102と、冷却機構及びパワーモジュール211及びゲートドライバ208等との間に組み付け、更にこのベース105に制御回路基板206をネジ止め等によって実装する事により、積み重ね型の高密度実装構造を実現するものである。
電力変換器全体が振動の大きい場所に搭載される場合、電力変換器の振動が制御回路基板206へ増大して伝わる事の無いように、ベース105の振動共振周波数は電力変換器が有する振動周波数帯域よりも高い値に設定する事が重要である。具体的にはベース105をケース1113へ組み付けるネジ等の固定点を増やし、振動共振周波数を高周波化する事が重要である。
ベース上に設けた突起は、制御回路基板上にある高発熱部品の裏面に押し当てる事によって、高発熱部品が発生する熱をベース105へ逃がす機能を有する。この時、高発熱部品からベース105へ伝わった熱をベース105から外気又は冷却水を有する冷却機構へ伝熱させる必要がある為、ベース105はケース1113若しくは冷却機構等の比較的温度の低い部位と熱的に結合している必要がある。即ち各々の部材が物理的に接触固定されているか、ヒートパイプ等の伝熱部材を用いてベース105はその他の部材と組み付けられている事が望ましい。更に、ベース105は制御回路基板上発熱部品の裏面に押し当てる際に、接触のばらつきによる熱抵抗再現性の劣化等を防ぐ事を目的として剛性の低いシート状伝熱材料をベース105と制御回路基板102の間に有する事が望ましい。この時、ベース105はGND電位である為、制御回路との電気的接触による短絡故障を防ぐ為、上記伝熱材料は導電性の無いものを用いる事が望ましい。
また、ベース上に設けた突起は、制御回路基板102上の部品裏面に押し当てる事により、制御回路基板102を支える支持部材の機能を果たし、耐振性を向上する役割も有する。よって発熱部品の裏面に放熱突起を配置した場合、放熱突起の近傍にあるネジを削除しても耐振性能低下等の影響が小さい。つまり、ネジ止め箇所を減らしていくと一般的に基板が有する振動の共振周波数が低くなる傾向にあるが、放熱突起を追加する事で基板支持箇所が増え、共振周波数は高くなり、耐振性能は向上する。この時、放熱突起は基板裏面から押し上げる方向のみの力を基板に加える事で支持する為、基板を固定するネジ用突起の高さより放熱突起の高さを基板上の部品及びはんだへのストレスが問題にならない範囲で高くする事が望ましい。
このように、放熱突起即ち発熱部品の制御回路基板102上レイアウトを最適化することによってネジの本数を削減する事が可能となるが、一般的に基板固有の最も低い振動共振時には基板固定用のネジいずれか2箇所を結ぶ中点に振動の腹が生じる為、放熱突起即ち発熱部品の位置は基板固定用のネジの中間位置に配置する事で耐振性能を向上できる。
以上を踏まえ、制御回路基板102を固定する為のネジの本数及び放熱突起の数について、耐振性確保という観点からは電力変換器が搭載される環境の振動条件や必要寿命、電力変換器の構造や制御回路基板のサイズ等、多数の要因によって決定される値であり、これらを考慮した振動のシミュレーション又は解析を行う事によって決定する事が望ましい。
放熱突起のサイズについては、放熱の対象である発熱部品のサイズに合わせて大きさを変更する事が望ましく、基本的に対象とする発熱部品が有する放熱用パッドのサイズよりも大きい事が望ましい。マイクロコントローラ等のBGA部品やパワートランジスタ等の高消費電力部品については放熱用のGNDピンや放熱用のフィンが設けられている事が多く、これらは基板側に接続用のパッド及びランドを設け、同ランド内に複数の貫通ビアを設ける事で部品が発生する熱を基板裏面へひく事が可能となる。基板裏面には表面同様にランドを設け、このランドが放熱突起の接触面積よりも大きくなるようにする。このランドは上述した放熱用シート103を介して放熱突起と密に接触しており、部品が発生した熱を裏面放熱突起へと伝える事が可能となる。
本発明に係る構造を図1を用いて説明する。複数ある基板固定用のネジのうち、少なくとも一つ以上を導電性のネジとし、また基板上に制御回路のGNDと接続するためのパターンを設け、基板をネジで固定すると制御回路のGNDとベース板が電気的に接続されるようにする。
また、ベース板105は導電性であり、ネジ等の接続部材を用いて筺体1113と接続される。よって、制御回路のGNDはベース板105を介して筺体電位と電気的に接続される。
一般に、筺体が電力変換装置全体のGND電位となり、制御回路のGNDをこの筺体のGNDと出来る限り低いインピーダンスで接続する事が望ましい。これは、GNDに対して流れる電流による電位変動を小さくするためである。よって、制御回路とベース板を電気的に接続点数は複数とする事が一般的であり、制御回路基板全体の電位を安定にするため、基板の外周端部を含めて一定間隔以下の距離にGND接続点を設ける事が望ましい。ベース板と筺体の接続点数も同様に複数とする事が望ましく、一般的である。ベース板と筺体は出来るだけ最短距離で接続するため、ベース板の周辺に設ける事が望ましい。
また、ベース105には、ベース105より上方の空間に搭載される制御回路基板102と、ベース105より下方に搭載されるゲートドライバ208を接続する為のケーブル又はハーネス等の接続部品を通す為の開口部404又はこれに相当する部位が必要となる。一般的に、この開口部404はベース板105端部と筺体1113の間に配置される。これにより、制御回路基板102上に実装されるコネクタは基板の周辺端部に実装出来、基板に開口部を設ける必要が無くなる。また、ベース板105の形状を簡略化出来る。更に、配線部材の接続等の作業が容易となる。
図1において、ベース板より下方の空間にはパワーモジュール等の主回路が配置及びこれらと電気的に接続されたバスバー210が配置される。図1では簡略化のため、バスバー210のみを示している。バスバー210はスイッチング雑音電流が流れることにより雑音電磁界を発生する。
図1の下図は本発明に係る電力変換器の上面図を示したものであるが、バスバー210により発生した雑音磁界が開口部404を鎖交すると、雑音磁界による誘導電流が開口部404周辺を流れる。誘導電流の向きは開口部404を鎖交する磁束を打ち消す方向である。誘導電流が流れると、ベース板105及び筺体1113に電位変動が生じる。ベース板105及び筺体1113に電位変動が生じると、制御回路基板102のGNDはネジ等の接続部品でこれらと接続されている為、基準電位の変動として制御回路に雑音が伝播してしまう。
これを抑制するため、制御回路基板102の接続点をより電位変動の小さい点に設ける事が重要となる。具体的には、図1に示すように、二つの開口部の共通の一辺において、誘導電流が打ち消しあう位置に制御回路基板102の接続点を設けることで上記電位変動が制御回路基板102へ伝播する事を防ぐことができる。誘導電流が打ち消しあう位置では、電流値が小さい為、電位変動も小さい。よって、GNDの電位変動として雑音が伝播する事を抑制できる。基板固定用のネジの位置を電流が打ち消しあう位置に設ける事が難しい場合、ベースの筺体接続部位に、図1のように溝を設ける事で電流の打ち消しあう位置を調整する事が有効である。
図4は開口部の一角に溝を設ける事で、誘導電流が打ち消しあう位置を調整した効果を電磁界解析により示したものである。周波数は10MHzとし、ベース板のモデルの下方に四角型ループ電流源を配置する事でベース板下方から上方へ磁界を発生させた。結果は表面電流の強度分布を示したものである。図4(a)の溝の無い場合、回路基板の接続位置となる接続点Aの表面電流強度が0.13A/m程度であるのに対し、溝を設けた図4(b)の場合では接続点Aにおける表面電流強度が0.03A/m程度以下になっており、誘導電流の打ち消し効果によって電流値が1/2以下となっている事がわかる。ベース板のインピーダンスが変わらないものとすると、表面電流の差はそのまま表面電位変動の差として考える事が出来る。即ち、このように溝を設け誘導電流の打ち消し位置に回路基板の接続点を設ける事で、回路基板のGNDの電位変動を1/2以下に抑制できる事を示唆している。具体的には、隣り合う2つの開口部の対称的な位置に溝を設けることで、回路基板のGNDの電位変動を1/2以下に抑制することができる。
開口部周辺に誘導される電流は、開口部の鎖交磁束強度及び開口面積に依存する。即ち、開口面積および鎖交磁束によって決まる誘導電流が二つの開口部で同等となるように構造を設計する必要がある。誘導電流が二つの開口部で同等でない場合、電流の打ち消し効果が得られない。具体的に、二つの開口部に鎖交する磁界強度は、雑音磁界を発生するバスバーや配線、モジュールを用いて電磁界解析によって求める事が可能である。二つの開口部を鎖交する磁界強度が異なる場合、これを考慮し、誘導電流が同等となるように二つの開口面積を決定する。
一方で、開口部を鎖交する雑音磁界が大きくなると、ベース板の上部に設置された制御回路基板に直接結合する影響が大きくなる為、開口面積は出来る限り小さくする事が望ましい。
ベースの筺体接続部位、即ちベース板と筺体との距離が長くなると接続部位の寄生インダクタンスが大きくなり、雑音電界による電位変動が生じる為、出来るだけ短くする事が望ましい。具体的には、対象としている最大周波数における波長の1/20程度以下とする事が望ましい。車両内で用いられる周波数はAMラジオ、FMラジオ、デジタルラジオ放送(DAB:Digital Audio Broadcast)、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)等が占有する320MHz程度を上限とする周波数である。この周波数上限値320MHzにおける波長の1/20から許容接続部長を求めると47mmとなる。また、開口部の長手方向の開口長さも、鎖交磁束抑制の観点から、同程度以下とすることが望ましい。
また、微小に打ち消すことの出来ない誘導電流による影響を低減するために、そもそも開口部を鎖交する磁界、即ち誘導電流値は小さくすることが望ましい。このため、開口部を鎖交する磁界を低減する構造として、バスバーの長手方向が開口部の中心軸方向と平行になるように実装することが望ましい。パワーモジュールや平滑化コンデンサについても、高圧・高電流の伝送経路の一部であり、雑音電磁界を発生させるため、出来る限り開口部から遠い位置に実装する事が望ましい。
開口部の鎖交磁束による誘導電流の経路を遮断するために、ベース板の開口部周辺の一部を絶縁体とすることで、誘導電流がループ形状で流れないようにしてもよい。ループ形状の電流経路が存在しない場合、誘導電流の大きさは低減される。よって、誘導電流によるベース板及び筺体の電位変動も小さくなり、低雑音効果がある。ベース板の一部に絶縁体を搭載する事が難しい場合等、ベース板を複数の部品に分け、これらを接続せず、隙間を空ける事によって誘導電流の経路を遮断してもよい。
上記述べたように、本願発明の一の形態は、(1)筺体と、スイッチング素子を備えてなるパワーモジュールと、前記スイッチング素子を駆動する信号を生成する駆動回路と、前記駆動回路へ送る動作信号を生成する制御回路基板と、前記制御回路基板を実装するベース板と、前記筺体と前記制御回路基板とを接続する接続部品とを備える電力変換装置であって、前記筺体には、隣り合う2つの開口部を備え、前記接続部品は、前記ベース板または前記筐体の開口部に備えられていることを特徴とする電力変換装置である。
また、本願発明の変形例は、(1)に記載の電力変換装置において、前記ベース板または前記ベース板と前記筺体の開口部の一角に溝が設けられていることを特徴とする電力変換装置である。
また、本願発明の変形例は、(1)または(2)に記載の電力変換装置において、前記ベース板または前記ベース板と前記筺体の開口部を囲む周縁の一部が絶縁体であることを特徴とする電力変換装置である。
また、本願発明の変形例は、(1)または(3)に記載の電力変換装置において、前記ベース板または前記ベース板と前記筺体の開口部が磁性体により構成されていることを特徴とする電力変換装置である。
制御回路基板・・・102、206、301、ベース板105、ゲートドライバ208、バスバー210、パワーモジュール211、モータ217、開口部404、筐体・・・1113

Claims (6)

  1. 筺体と、
    スイッチング素子を備えてなるパワーモジュールと、
    前記スイッチング素子を駆動する信号を生成する駆動回路と、
    前記駆動回路へ送る動作信号を生成する制御回路基板と、
    前記制御回路基板を実装するベース板と、
    前記筺体と前記制御回路基板とを接続する接続部品とを備える電力変換装置であって、
    前記ベース板と前記筐体との間に隣り合う2つの開口部を備え、
    前記接続部品は、前記隣り合う2つの開口部に共通する前記ベース板の一辺において、前記ベース板に流れる誘導電流が打ち消しあう位置に備えられていることを特徴とする電力変換装置。
  2. 請求項に記載の電力変換装置において、
    前記隣り合う2つの開口部の対称的な位置に溝が設けられていることを特徴とする電力変換装置。
  3. 請求項1または2に記載の電力変換装置において、
    前記隣り合う2つの開口部を囲む周縁の一部が絶縁体であることを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記隣り合う2つの開口部は、該2つの開口部を鎖交磁束が同等となるような構造であることを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記隣り合う2つの開口部は、前記ベース板の端部と前記筐体との間に備えられていることを特徴とする電力変換装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置を搭載した装置。
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