以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下、図1〜図14を参照しながら、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
<表面欠陥検査装置の全体構成について>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る表面欠陥検査装置10の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る表面欠陥検査装置の構成を示した説明図である。
本実施形態に係る表面欠陥検査装置10は、複数のローラ2からなる搬送ライン上を搬送される形鋼1を撮像して、撮像の結果得られる画像を画像処理することにより、形鋼1の表面に表面欠陥が存在するか否かを検査する装置である。
本実施形態に係る表面欠陥検査装置10は、図1に示したように、搬送ライン上の形鋼1を撮像する形鋼撮像装置100と、演算処理装置200と、を備える。
形鋼撮像装置100は、形鋼1を順次撮像して、形鋼のウェブ検査面の各位置における光切断画像を生成し、演算処理装置200に出力する装置である。この形鋼撮像装置100は、演算処理装置200によって、形鋼の撮像タイミング等が制御されている。
また、演算処理装置200は、形鋼撮像装置100によって生成された光切断画像を利用して後述するような縞画像を生成し、この縞画像に対して以下で説明するような画像処理を行うことで、形鋼1の表面に存在している可能性のある表面欠陥を検出する装置である。
以下では、形鋼の一例として、図2に示したようなH形鋼を例にとって、詳細な説明を行う。H型鋼は、ウェブ面の上下にフランジ面がもうけられており、ウェブ面とフランジ面とは、コーナーR部(以下、単に「R部」とも称する。)を介して接続されている。本実施形態に係る表面欠陥検査装置10は、ウェブ面とウェブ面の両端に位置するR部とを含む領域を、ウェブ検査面とする。ここで、ウェブの厚みをt1と表し、フランジの厚みをt2と表し、R部の半径をrと表すこととする。また、ウェブの高さをhと表すこととし、フランジの幅をwと表すこととする。また、フランジの端でのウェブ面と平行な面を、フランジ端面と称することとする。
[形鋼撮像装置100の構成について]
続いて、図3〜図6を参照しながら、本実施形態に係る形鋼撮像装置100の構成について、詳細に説明する。図3〜図6は、本実施形態に係る形鋼撮像装置100を示した説明図である。ここで、図3は、形鋼撮像装置100と形鋼1との位置関係を示した斜視図となっている。また、図4は、形鋼撮像装置100と形鋼1とを形鋼1の上方から見た場合の上面図であり、図5は、形鋼撮像装置100と形鋼1とを形鋼1の後方から見た場合の側面図であり、図6は、形鋼撮像装置100と形鋼1とを形鋼1の側方からみた場合の側面図である。
図3〜図6に示したように、本実施形態に係る形鋼撮像装置100は、レーザ光源101と、ロッドレンズ103と、遅延積分型撮像装置105と、フランジ照明装置107と、を備える。
本実施形態に係る表面欠陥検査装置は、形鋼の製造するための圧延工程において常に上面を向いて搬送されるウェブ面の表面欠陥を検査するための装置である。そのため、図3〜図6に示したように、レーザ光源101、ロッドレンズ103及び遅延積分型撮像装置105は、圧延工程において上側を向いていた面側に少なくとも設置されていればよい。また、図3〜図6において、フランジ照明装置107は、ローラ2に接していないフランジの上方に設置されているが、フランジ照明装置107は、ローラ2に接しているフランジの下方に設置されていてもよく、ローラ2に接していないフランジの上方とローラ2に接しているフランジの下方の両方に設置されていてもよい。
レーザ光源101は、例えば、連続的にレーザ発振を行うCWレーザ光源を用いることが可能である。レーザ光源101が発振する光の波長は、例えば、400nm〜800nm程度の可視光帯域に属する波長であることが好ましい。レーザ光源101は、後述する演算処理装置200から送出される照射タイミング制御信号に基づいて、レーザ光の発振を行う。
ロッドレンズ103は、レーザ光源101から射出されたレーザ光を、検査対象物である形鋼1のウェブ面の高さ方向に沿って扇状に広げるレンズである。これにより、レーザ光源101から射出されたレーザ光は線状レーザ光となり、形鋼1に照射されることとなる。ここで、図3に示したように、線状レーザ光の照射範囲は、図中の太線(LS)で示した範囲であるものとする。なお、本実施形態に係る形鋼撮像装置100では、レーザ光を扇状に広げることが可能なものであれば、シリンドリカルレンズやパウエルレンズ等のロッドレンズ以外のレンズを利用してもよい。
ここで、図3〜図6に示したように、レーザ光源101およびロッドレンズ103は、線状レーザ光が形鋼1のウェブ検査面に対して斜めに入射する(入射角:θ)ように配置されている。
検査対象物である形鋼1のウェブ検査面の線状レーザ光が照射された部分には、形鋼1のウェブ面の高さ方向に沿って線状の明るい部位が形成される。線状の明るい部分からの反射光(線状反射像)は、遅延積分型撮像装置105まで伝播し、遅延積分型撮像装置105によって撮像される。
遅延積分型(Time Delay Integration:TDI)撮像装置の一例である遅延積分型カメラ105は、搬送されている形鋼1の線状反射像(対応するレーザ照射装置によって生成されたもの)を撮像する。TDIカメラ105は、多数の光電変換素子がマトリクス状に配置された、2次元の受光面を備える。形鋼1の線状反射像が、TDIカメラ105のレンズを介して、1列分の幅で光電変換素子に入射すると、TDIカメラ105の各光電変換素子は、それぞれで蓄積した電荷を、光電変換素子と同じ行に位置し、かつ、一つ後ろの列に位置する光電変換素子へと転送する。この転送のタイミングは、全ての光電変換素子で同一であり、演算処理装置200から送出されるカメラシフトパルス信号によって制御される。すなわち、カメラシフトパルス信号が入力するたびに、各光電変換素子は電荷を一列ごとに転送する。最終列に位置する光電変換素子は、カメラシフトパルス信号が入力されると、蓄積している電荷を読み出して、演算処理装置200に出力する。これにより、演算処理装置200には、線状反射像に対応する光切断画像が出力されることとなる。
ここで、形鋼1は、形鋼の長手方向に沿って移動しているため、レーザ光源101からレーザ光を形鋼1に照射し、TDIカメラ105を用いて形鋼1の線状反射像を図5及び図6に示したカメラ走査方向に沿って一定時間撮像すると、形鋼1の長手方向の各位置における光切断画像を順次得ることができる。こうして得られた各光切断画像を順に配列することにより、TDIカメラ105が撮像した形鋼1の領域の全体画像を得ることができる。
一般に、TDIカメラ105では、電荷が転送される途中で、各光電変換素子に光が入射すると、入射した光の強度に対応する電荷が上乗せされることとなる。しかしながら、本実施形態に係る形状測定装置10では、上述したように、光電変換素子に1列分の幅の線状反射像が入射するため、電荷の転送途中で各光電変換素子に電荷が上乗せされることは、ほとんど生じない。また、レーザ光の波長だけを透過するような光学バンドパスフィルタをTDIカメラ105の前に設けてもよい。
また、線状レーザ光は周期的に変調され、線状レーザ光の強度が時間的に変化するため、TDIカメラ105の受光面での各行において、列方向の各光電変換素子に蓄積される電荷量(すなわち、受光強度)の分布も周期的に変化することとなる。このため、TDIカメラ105から出力される各光切断画像を縦にした状態で横方向に順に配列することにより得られる画像は、画像の横方向に沿って、各光切断画像の濃度(すなわち、強度に対応)が周期的に変化する縞画像となる。
フランジ照明装置107は、フランジの端部(端面)を照らすための装置である。フランジ照明装置107は、少なくともTDIカメラ105が線状レーザ光の照射されている領域を撮像する際に、フランジの端部を照明する。フランジ照明装置107は、発散光源であることが好ましいが、発散光源を用いた場合であっても、フランジが傘となるため、ウェブ検査面には何ら影響せず、外乱の要因とならない。
フランジ照明装置107がフランジの端部を照明することで、TDIカメラ105による撮像時には、前述したようなTDIカメラの撮像原理によりフランジの端面からの反射光(散乱光)が積算され、光量が飽和した状態となる。従って、TDIカメラ105による撮像画像では、フランジの端面に対応する部分は白抜けした画像となるため、輝度画像プロファイル計算等に、フランジ端面の輝度に対応した閾値を設定することで、フランジの外側位置(エッジ位置)を容易に計算することが可能となり、ウェブ検査面の範囲を容易に設定することが可能となる。
ここで、レーザ光源101(ロッドレンズ103を含む。)、TDIカメラ105、及び、フランジ照明装置107の配置について、図4〜図6を参照しながら説明する。
図4〜図6に示したように、レーザ光源101及びロッドレンズ103は、ウェブ検査面(ウェブ面)に対して、斜め方向から線状レーザ光を照射する。線状レーザ光の光軸と、TDIカメラ105のレンズの中心軸とのなす角(入射角)をθとする。また、線状レーザ光の投光角ψは、図6に示したように、少なくとも形鋼1のウェブ高さhを覆うだけの照射面が確保可能な角度であることが必要である。
TDIカメラ105の撮像領域LAは、図4に示したように、搬送方向に沿った幅の大きさはBであり、その高さ方向は、図6に示したように、ウェブの高さ方向に沿って走査することでウェブの高さhとなる。
図5に示したように、斜め方向から照射される線状レーザ光の照射領域がTDIカメラの撮像領域から外れる部分が存在する。従って、フランジ面の内面は、図4に示した領域q以内しか撮像されない。ここで、図4に示した領域qは、ウェブ面の表面から、フランジ面の内面に照射されている線状のレーザ光LSとTDIカメラ105の撮像領域LAの境界線との交点までに対応する領域である。このようなフランジ部分の領域は、ウェブ検査面の正確な検査を妨げる部分となりうる。そこで、本実施形態に係る演算処理装置200では、後で説明するような方法で図10に示す不感帯の大きさDを算出し、フランジ部分に対応する縞画像の領域を適切にマスクする。これにより、ウェブ検査面を正確に検査することが可能となる。
また、フランジ照明装置107は、TDIカメラ105の視野に入らない位置に設置されることが好ましい。その位置は、図5に示したように、フランジ照明装置107から最も近いフランジの端部と、他側のフランジ面に連なるR部の端部とを結ぶラインL(実際には、面となる。)よりも形鋼中心側に設けることが好ましい。このような位置にフランジ照明装置107を設けることで、R部及びウェブ面に照明が届かないようにしつつ、かつフランジ端部を適切に照明することが可能となる。
図7に、上述のようにして生成される縞画像の一例を示す。ただし、図7は、撮像される形鋼の高さ方向全域ではなく、上側部分のみを切り出した縞画像の一部であり、縞画像上で、下から上に向かって形鋼が搬送されている。したがって、レーザ光は、縞画像上、下側斜めから照射されている。ここで、縞とは、濃度変化の一周期分に相当する光切断画像のことである。このような縞画像では、縦方向、すなわち縞に直交する方向が検査対象物である形鋼1の長手方向に対応し、横方向、すなわち縞に平行な方向が、検査対象物である形鋼1のウェブ高さ方向に対応する。TDIカメラ105のカメラシフト周波数とレーザ光の変調周波数との比をM:1とすると、M個の光切断画像、すなわち横方向のM画素分が、一本の縞を構成することとなる。
図7から明らかなように、フランジ照明装置107によってフランジ端面が照明されているため、フランジ端面の光量が飽和しており、フランジ端面が白く抜けた画像となっている。従って、フランジ外側のエッジ位置(図2に示したフランジ上端の位置)は輝度閾値設定により容易に検出することが可能となる。
図7に示した領域aは、画像が白抜けしている領域であり、フランジ端面に対応する領域である。また、図7に示した領域bは、フランジ面の内側であり、画像の濃淡が暗くなっていることがわかる。また、図7に示した領域cは、フランジ面とウェブ面とを連結するR部に対応する領域であり、縞模様が湾曲していることがわかる。
ここで、線状レーザ光は、検査対象物である形鋼1の表面に斜めから入射する(入射角:θ)ので、例えば形鋼1に凹部が存在すると、線状レーザ光の反射点は縞画像上で上方向にずれることとなる。その結果、TDIカメラ105の光電変換素子上での光切断画像の位置も、右方向すなわち列方向にずれることになる。このため、縞画像において、この凹部で反射した線状レーザ光に対応する光切断画像は、凹部以外の平坦部で反射した線状レーザ光に対応する光切断画像よりも時間的に早く出力されることになる。したがって、TDIカメラ105から出力される1次元画像を順に配列することにより得られる2次元画像において、形鋼1に存在する凹部は、縞のずれとして認識することができる。
なお、線状レーザ光の形鋼1への入射角θは、任意の値に設定することが可能であるが、例えば45度とすることが好ましい。入射角を45度とすることで、検査対象物である形鋼1の深さ変化量が縞の移動量と等しくなり、縞の移動量から容易に形鋼1に存在する凹部の深さに関する情報を得ることができるためである。
以下に、本実施形態に係る形鋼撮像装置100の有する各装置について、その具体的な構成を列挙する。かかる構成は、あくまでも一例であって、本発明に係る形鋼撮像装置100が、以下の具体例に限定されるわけではない。
○レーザ照射装置
入射角θ=45度、投光角ψ=60度でレーザ光を照射。形鋼1(検査面)との距離=1040mm、線状レーザ光の照射幅=1200mm
○TDIカメラ
2048bits×96bits、カメラの撮影領域LA=2048mm×96mm(撮影分解能1.0mm×1.0mm)
○TDIカメラのカメラシフト周波数(=18.7kHz)とレーザ光の変調周波数(=4675Hz)との比が、M:1(=4:1)の一定周期で縞画像を撮像する。
[演算処理装置の全体構成について]
以上、形鋼撮像装置100の構成について説明した。続いて、再び図1に戻って、本実施形態に係る表面欠陥検査装置10が備える演算処理装置200の構成について、詳細に説明する。
本実施形態に係る演算処理装置200は、例えば図1に示したように、タイミング信号発生部201、画像処理部203、表示部205及び記憶部207を主に備える。
タイミング信号発生部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。タイミング信号発生部201は、所定の周波数ωをもつ正弦波形の信号を発生させ、発生させた正弦波形の信号を、レーザ光源101に送出する。レーザ光源101は、外部から入力される照射タイミング制御信号により、発振強度を連続的に変化させられるものであるため、タイミング信号発生部201から送出された正弦波形の信号を受信することで、正弦波形で出力が変化するレーザ光を発振することが可能となる。すなわち、タイミング信号発生部201は、発生させた正弦波形をレーザ光源101に送出することで、レーザ光源101が発するレーザ光を周期的に変調させることができる。
また、タイミング信号発生部201は、上記周波数ωのM倍の周波数をもつ矩形波形を発生させてカメラシフトパルス信号とし、発生させたカメラシフトパルス信号を、TDIカメラ105に送出する。
以上説明したように、タイミング信号発生部201は、形鋼撮像装置100に設けられたレーザ光源101及びTDIカメラ105の駆動を制御する駆動制御部であるといえる。
画像処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像処理部203は、形鋼撮像装置100(より詳細には、形鋼撮像装置100のTDIカメラ105)から取得した撮像データを利用して生成した縞画像に対して、以下で説明するような画像処理を行い、検査対象物である形鋼1の表面に存在する欠陥を検出する。画像処理部203は、形鋼1に対応する縞画像への画像処理が終了すると、得られた形鋼1の検査結果に関する情報を、表示部205に伝送する。
なお、この画像処理部203については、以下で改めて詳細に説明する。
表示部205は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示部205は、画像処理部203から伝送された、検査対象物である形鋼1の検査結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置に表示する。これにより、表面欠陥検査装置10の利用者は、搬送されている検査対象物(形鋼1のウェブ検査面)の表面欠陥に関する検査結果を、その場で把握することが可能となる。
記憶部207は、演算処理装置200が備える記憶装置の一例である。記憶部207には、本実施形態に係る演算処理装置200が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等が、適宜記録される。この記憶部207は、タイミング信号発生部201、画像処理部203、表示部205等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
[画像処理部について]
続いて、図8を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える画像処理部203について、詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る演算処理装置が有する画像処理部の構成を示したブロック図である。
本実施形態に係る画像処理部203は、図8に示したように、画像生成部209と、エッジ位置検出部225と、エッジ不感帯算出部227と、センタリング処理部229と、形状補正処理部231と、欠陥検出処理部233と、を主に備える。
画像生成部209は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像生成部209は、形鋼撮像装置100により生成された光切断像から構成される縞画像を利用して、形鋼1の表面の凹凸状態を表す複数の形状画像を生成する。
この画像生成部209は、A/D変換部211、プレフィルタ部213、直交正弦波発生部215、ローパスフィルタ部217,219、位相算出部221、振幅算出部223及び位相連続化処理部225を更に備える。
A/D変換部211は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。A/D変換部211は、TDIカメラ105から出力された各光切断像をA/D変換し、デジタル多値画像データとして出力する。かかるデジタル多値画像データは、記憶部207等に設けられた画像メモリに記憶される。これらのデジタル多値画像データを順に配置することにより、図7に示したような縞画像が形成される。
このような縞画像(又はデジタル多値画像データ)からは、搬送方向の各位置において、ウェブ高さ方向に沿った縞画像の濃度分布を表すデータが生成される。これらウェブ高さ方向に沿った縞画像の濃度分布を表すデータを、以下では、「スライス縞画像データ」と称することとする。搬送方向の各位置におけるスライス縞画像データは、記憶部207等に設けられた画像メモリから順次出力される。
プレフィルタ部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。プレフィルタ部213は、各スライス縞画像データに所定のフィルタ処理を施すことにより、各スライス縞画像データからノイズを除去し、縞の状態を鮮明にする。なお、プレフィルタ部213によるフィルタ処理は必ずしも行わなくてもよく、例えば縞画像に細かいノイズが多数生じているような場合にのみ行うようにすればよい。
プレフィルタ部213は、スライス縞画像データに対するノイズ除去処理が終了すると、搬送方向の各位置j(j=0,1,2,・・・)におけるスライス縞画像データIj(k)を出力する。ここで、k(k=0,1,2,・・・)は、ウェブ高さ方向の位置を表すパラメータである。このとき、搬送方向の位置jにおけるスライス縞画像データIj(k)は、正弦波的に変化すると仮定する。すなわち、Ij(k)は、以下に示す式101のように表されるものとする。
・・・(式101)
ここで、上記式101において、A(j,k)は、画素位置(j,k)におけるスライス縞画像データの振幅を表し、φ(j,k)は、画素位置(j,k)におけるスライス縞画像データの位相のずれを表す。
ここで、形鋼1の表面の凹みによって縞画像に発生する縞のずれの影響は、位相のずれφとして現れる。また、線状レーザ光の振幅は一定であるが、形鋼1の表面が汚れていたり、スケール疵のような模様状の疵があったりする場合には、その位置に対応する画素位置において振幅が変動することがある。このため、上記式101では、振幅Aを画素位置(j,k)に依存する形で表記している。なお、上記式101において、cosの項の次に1を加えているのは、スライス縞画像データ(濃度値)Ij(k)はマイナスにならないという条件を満たすためである。したがって、スライス縞画像データIj(k)は、0から2Aの間で変化することとなる。
直交正弦波発生部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。直交正弦波発生部215は、記憶部207等に予め生成されている直交する二つの基準正弦波データsin(2πk/M),cos(2πk/M)を発生する。以下では、前者の正弦波データを基準sinデータと称することとし、後者の正弦波データを基準cosデータと称することとする。
これら二種類の基準正弦波データは、それぞれ、プレフィルタ部213から出力されたスライス縞画像データIj(k)に乗算される。この乗算処理により、二つの出力Iaj(k)及びIbj(k)が生成されることとなる。Iaj(k)及びIbj(k)の詳細は、以下の式102及び式103の通りである。
・・・(式102)
・・・(式103)
ここで、上記式102で表される出力データIaj(k)は、後述するローパスフィルタ部217に入力され、上記式103で表される出力データIbj(k)は、後述するローパスフィルタ部219に入力される。
ローパスフィルタ部217,219は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。ローパスフィルタ部217,219は、上述の乗算処理で得られた出力Iaj(k),Ibj(k)について、所定のフィルタ処理を施すことにより、縞周波数成分及びその高調波成分を除去する。かかる処理により、入力されたデータIaj(k),Ibj(k)の中から、位相のずれφのみを含む成分を抽出することができる。ここで、ローパスフィルタ部217は、入力されたデータIaj(k)に対して、所定のフィルタ処理を施す処理部であり、ローパスフィルタ部219は、入力されたデータIbj(k)に対して、所定のフィルタ処理を施す処理部である。
ローパスフィルタ部217からの出力をLPF(Iaj(k))とし、ローパスフィルタ部219からの出力をLPF(Ibj(k))とすると、これらは、以下の式104及び式105のように表される。
・・・(式104)
・・・(式105)
ローパスフィルタ部217は、フィルタ処理によって得られたデータLPF(Iaj(k))を、後述する位相算出部221及び振幅算出部223に出力する。また、ローパスフィルタ部219は、フィルタ処理によって得られたデータLPF(Ibj(k))を、後述する位相算出部221及び振幅算出部223に出力する。
位相算出部221は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。位相算出部221は、ローパスフィルタ部217,219から出力された結果に基づいて、各画素位置(j,k)における位相のずれφ(j,k)を算出する。位相のずれφ(j,k)は、LPF(Iaj(k))及びLPF(Ibj(k))の値に応じて、以下の式107〜式109により算出することができる。
ここで、以下の式107は、LPF(Iaj(k))≧0の場合に位相算出部221が利用する式である。また、以下の式108は、LPF(Iaj(k))<0、かつ、LPF(Ibj(k))<0の場合に位相算出部221が利用する式である。また、以下の式109は、LPF(Iaj(k))<0、かつ、LPF(Ibj(k))≧0の場合に位相算出部221が利用する式である。
・・・(式107)
・・・(式108)
・・・(式109)
位相算出部221は、上記式107〜式109において、逆三角関数(arctan)の値域を−π/2〜+π/2とするとともに、LPF(Iaj(k)),LPF(Ibj(k))の符号についての情報を利用して、位相のずれφを−π〜+πの範囲で求めている。ここで、この範囲で求めた位相のずれを改めてφ’と表すこととする。この場合、上記式107〜式109で求めた位相のずれφ’は、形鋼1のウェブ検査面の表面の凹み(深さ)と周期的な関係があり、位相のずれφ’のある値をとるような深さは複数ある。したがって、かかる位相のずれφ’を用いたのでは、形鋼1のウェブ検査面の表面形状について正確な情報は得られない。このため、この位相のずれφ’から、形鋼1のウェブ検査面の表面の凹み(深さ)と比例関係にあるような位相のずれφを求める必要がある。深さと比例関係にある位相のずれφを得る処理は、後述する位相連続化処理部225によって行われる。
そこで、位相算出部221は、算出した位相のずれφ’に関する情報を、後述する位相連続化処理部225に出力する。なお、位相のずれφ’(j,k)を図示することで、画像を生成することができる。このような位相のずれφ’に基づいて生成される画像のことを、以下では位相画像と称することとする。位相のずれφ’(j,k)を図示する方法は、各種存在するが、例えば、位相のずれφ’が+πのときに画像が白くなり、位相のずれφ’が−πのときに画像が黒くなるような濃淡画像として図示することが可能である。
振幅算出部223は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。振幅算出部223は、ローパスフィルタ部217,219から出力された結果に基づいて、各画素位置(j,k)における振幅A(j,k)を算出する。振幅算出部223は、振幅A(j,k)を、以下の式110により算出する。
・・・(式110)
振幅算出部223は、このようにして算出した振幅Aに関する情報を、後述するエッジ位置検出部227に出力する。なお、振幅A(j,k)を図示することで、画像を生成することができる。このような振幅Aに基づいて生成される画像のことを、以下では振幅画像と称することとする。振幅A(j,k)を図示する方法は、各種存在するが、例えば、振幅Aが小さいほど画像が黒くなるような濃淡画像として図示することが可能である。
また、本実施形態に係る演算処理装置200では、このようにして生成することができる振幅画像を、形鋼の表面での粗度の相違を表す画像である輝度画像として利用する。
位相連続化処理部225は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。位相連続化処理部225は、例えば、図9に示したように、位相算出部221により算出された位相画像に基づいて、位相のずれφ’の不連続点を検出し、位相のずれφ’が滑らかに繋がるように、位相のずれφ’を補正する。
上述したように、位相算出部221で算出した位相のずれφ’の値域は、−π〜+πであるため、位相のずれφ’は、図9に示したように、−π及び+πで不連続となる。例えば、濃淡画像として表わされている位相画像において、白(又は黒)から黒(又は白)に変化している部分が、位相のずれφ’の不連続点に対応する。かかる位相画像をそのまま用いたのでは、形鋼1の表面形状を認識することは困難である。従って、位相のずれφ’の不連続点において位相のずれφ’が滑らかに繋がるように、位相のずれφ’を補正する必要がある。かかる補正(位相飛び補正)は、2πの範囲で定義された位相のずれφ’から形鋼1の表面の凹み(深さ)に比例する一義的な位相のずれφを求める処理である。
具体的には、位相連続化処理部225は、まず、位相のずれφ’の不連続点を検出するとともに、その不連続点において位相のずれφ’を補正する。位相のずれφ’が不連続であるかどうかは、一つの画素だけを参照したとしても判断が困難であり、隣り合う画素同士を参照して判断することが好ましい。そこで、位相連続化処理部225は、位相画像の縦方向の各位置において位相画像を横方向に沿って調べ、隣り合う画素での位相のずれφ’を比較する。その隣り合う画素において位相のずれφ’が大きく異なる場合には、当該画素間で位相のずれφ’が不連続であると判断し、これらの位相のずれφ’を補正する。ここで、形鋼1の表面における深さは、急激に変化しないため、位相のずれφ’が大きく異なるのは、位相のずれφ’が±2πだけ変化しているためであると考えられる。従って、位相連続化処理部225は、位相のずれφ’がその隣接する画素での位相のずれφ’と大きく異なっている画素を調べ、それらの位相のずれφ’を滑らかに繋げていくようにすればよい。
例えば、ある画素位置では、位相のずれφ’が+πに近い値であり、その右隣りの画素位置では、位相のずれφ’が−πに近い値である場合には、位相連続化処理部225は、当該右隣りの画素位置では位相のずれφ’が+2πだけ変化していると認識する。そして、位相連続化処理部225は、当該右隣りの画素位置における位相のずれφ’に+2πを加算することにより、位相のずれφ’を補正する。また、ある画素位置では、位相のずれφ’が−πに近い値であり、その右隣りの画素位置では、位相のずれφ’が+πに近い値である場合には、位相連続化処理部225は、当該右隣りの画素位置では位相のずれφ’が−2πだけ変化していると認識する。そして、位相連続化処理部225は、当該右隣りの画素位置における位相のずれφ’に−2πを加算することにより、位相のずれφ’を補正する。
位相連続化処理部225は、以上説明したような方法で、縦方向の各位置において横方向に沿って隣り合う画素を調べ、位相のずれφ’を補正した後、横方向の各位置において縦方向に沿って隣り合う画素を調べ、同様にして、位相のずれφ’を補正する。かかる補正後の各画素位置における位相のずれは、形鋼1の表面の凹み(深さ)に比例する一義的な位相のずれφである。
次に、位相連続化処理部225は、かかる補正後の位相のずれφに基づいて、新たに位相画像を作成する。この新たな位相画像は、形鋼1の表面形状を正確に表している。この新たな位相画像のことを、以下では、形状画像と称することとする。
位相連続化処理部225は、位相のずれが補正された形状画像を、後述するセンタリング処理部231に出力する。
エッジ位置検出部227は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。エッジ位置検出部227は、振幅算出部223により算出された振幅画像(輝度画像)に基づいて、1ライン毎に、左右(すなわち、H型鋼の上下)のフランジのエッジ位置を検出する。より詳細には、エッジ位置検出部227は、輝度画像の輝度値に着目し、輝度値が所定の閾値以上となっている部分を検出する。本実施形態に係る表面欠陥検査装置10では、フランジ端面がフランジ照明装置107によって照明されているため、フランジ端面を撮像した部分は、TDIカメラ105によって露光が積算されるために、常に露出が飽和した状態となっている。そのため、このような閾値処理により、エッジ位置を容易に検出することができる。エッジ位置検出部227が検出したエッジ位置に関する情報は、後述するエッジ不感帯算出部229に出力する。
エッジ不感帯算出部229は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。エッジ不感帯算出部229は、形鋼の形状に関する情報と、形鋼撮像装置と形鋼との位置関係に関する情報と、を利用して、形状画像におけるフランジ面(特に、フランジのウェブ面側)に対応する部分を不感帯として算出する。
以下に、図10を参照しながら、不感帯の算出方法について、具体的に説明する。
図10において、t1は、ウェブ厚を表し、t2は、フランジ厚を表し、rは、R部の半径を表す。また、Aは、フランジのウェブ面からの幅を表し、A=(1/2)×(w−t1)で算出される。ただし、wは、フランジ幅である。これらのデータは、形鋼(H型鋼)の形状に関する情報である。これらの形状に関する情報は、形鋼(H形鋼)の設計値であってもよく、形鋼(H形鋼)を実際に測定して得られた測定値であってもよい。これらの形状に関する情報は、表面欠陥検査装置10の利用者により入力されたものであってもよく、表面欠陥検査装置10以外の装置から取得したものであってもよい。
また、図10において、角度αは、ウェブ面とR部との交点と、TDIカメラの画像中央(水平線)とのなす角度であり、Bは、カメラ画像中心からフランジ上面までの高さであり、Lは、ウェブ検査面とカメラとの離隔距離である。これらのデータは、形鋼1とTDIカメラ105との位置関係に関する情報である。
エッジ不感帯算出部229は、これら形鋼の形状に関する情報と、形鋼とTDIカメラとの位置関係に関する情報とを利用して、以下の式111により、不感帯の幅Dを算出する。ここで、式111における角度αは、以下の式112から算出される値である。
・・・(式111)
・・・(式112)
また、下部フランジ部(ローラ2に接しているフランジ部)の不感帯については、同様に、カメラ画像中心とフランジ下面までの高さから算出してもよいし、形状に関する情報であるウェブ高さhからパラメータBを差し引いて求めてもよい。
エッジ不感帯算出部229は、エッジ位置検出部227により検出されたエッジ位置に関する情報と、算出した不感帯幅Dに関する情報とを利用して、1ライン毎に、形状画像において不感帯の端部(不感帯のウェブ面側の端部)に対応する位置を特定する。エッジ不感帯算出部229は、この不感帯の端部に対応する位置に関する情報を、後述するセンタリング処理部231に出力する。
厳密には、算出した不感帯幅Dから、画像上の不感帯の端部に対応する位置を特定する際には、カメラ位置からウェブ検査面までの距離とフランジ端部までの距離との相違に伴う補正を行う必要がある。しかしながら、形鋼のウェブ検査面からカメラ位置までの距離は、フランジ幅Aと比較して十分に大きいので、撮像される画像の画素サイズに比較すると実用上無視できる。
センタリング処理部231は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。センタリング処理部231は、エッジ不感帯算出部229から出力された不感帯の端部に対応する位置に関する情報に基づいて、位相連続化処理部225から出力された形状画像にセンタリング処理を実施する。
センタリング処理部231は、1ライン毎に、左右の不感帯端部の位置に基づいて、検査対象物である形鋼1のウェブ検査面のセンタ位置を算出し、形鋼1の長手方向(搬送方向)に揃えるようにする。かかるセンタリング処理により、形鋼1が搬送される間に横揺れしてしまったとしても、表面欠陥の検出精度を高めることができる。
センタリング処理部231は、センタリング処理後の形状画像を、後述する形状補正処理部233に出力する。
形状補正処理部233は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。形状補正処理部233は、センタリング処理後の形状画像のうち不感帯をのぞく部分(すなわち、表面欠陥検出対象部分)を、ウェブ面とR部とに分離し、R部に対応する形状画像を平坦化する補正を行う。
図11からも明らかなように、中央部分(ウェブ面、図11中の領域(2))は平坦である一方、フランジ面との付け根にはR部が存在するため、R部に対応する部分(図11中の領域(1)及び(3))の輝度レベルは、一様ではなくなる。かかる形状に由来する形状画像に対して、表面欠陥の判別を行うための処理を施しても、形鋼の表面の凹みや疵等の表面欠陥を抽出することは困難である。そこで、形状補正処理部233は、検査対象物である形鋼2の曲面形状を平面に焼き直す形状補正処理を実施する。
ただ、得られた形状画像の全面に対して偶関数等を用いた形状補正処理を施したとしても、R部に対応する部分については形状補正が成功するものの、平坦面に対応する部分では、R部の形状に引きずられて平面部が凹んだような形状に補正されてしまう。そこで、本実施形態に係る形状補正処理部233は、センタリング処理後の形状画像のうち不感帯をのぞく部分を、ウェブ面とR部とに分離し、R部に対応する形状画像にのみ平坦化処理を行う。
本実施形態に係る演算処理装置200では、不感帯の算出処理により上部フランジ及び下部フランジの位置を正確に算出することが可能となるため、R部とウェブ面との分離を容易に行うことが可能となる。R部は、図10に例示したように、不感帯に隣接しているので、R部の位置は、形状に関する情報(rの大きさに関する情報)と、不感帯端部の位置に関する情報と、を利用することで、容易に特定可能である。
また、統計処理等を用いた事前の検証により形状画像におけるR部に該当する部分の大きさをある程度把握できるのであれば、予め固定値を決定しておき、かかる固定値を利用してもよい。例えば、規格に則したH型鋼であれば、R部に該当する部分は8mm〜24mmとなると推察されるため、固定値として30mmを設定しておけば、R部に対応する部分を効率よく特定することが可能となる。
具体的には、センタリング処理後のR部に対応する形状画像に対して、1ライン毎に奇関数又はスプライン関数等の所定の関数によるフィッティング処理を施し、元データ(センタリング処理後のR部に対応する形状画像)との差分演算を行う。
続いて、フィッティング処理後のR部の形状画像を形鋼1の搬送方向(長手方向)に所定の長さだけ平均(積算)し、ローパスフィルタ処理を施して、元データ(フィッティング処理後のR部の形状画像)との差分演算(又は除算演算)を行う。このシェーディング補正により、表面欠陥候補となる凹凸情報を保持したまま、R部に対応する形状画像を平坦化することができる。
以上のように、形状補正処理部233は、R部に対応する形状画像への形状補正処理として、所定の関数によるフィッティング処理、更にはシェーディング補正という二段階の処理を行う。かかる形状補正処理によって、形状画像のうち不感帯をのぞいた部分の画像は、凹凸情報を保持したまま全て平坦となり、容易に後述する表面欠陥の検出処理を行うことが可能となる。以下では、形状補正処理後の形状画像のことを、深さ画像と称することとする。
形状補正処理部233は、形状補正処理が終了した深さ画像を、後述する欠陥検出処理部235へと出力する。
欠陥検出処理部235は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。欠陥検出処理部235は、形状補正処理部233から出力された、形状補正処理後の形状画像(深さ画像)に基づいて、検査対象物である形鋼1の表面に存在する凹みの深さdを算出し、検査対象物の形状を特定する。その後、欠陥検出処理部235は、検査対象物である形鋼1の形状を特定すると、形鋼1のウェブ検査面の表面に表面欠陥があるかないかを判断する。
ここで、TDIカメラ105における光電変換素子の列方向の撮影分解能をs(mm/画素)とし、線状レーザ光の垂直成分入射角をθとすると、線状レーザ光の反射点が長手方向にずれた距離h=d・tanθは、縞画像においてh/s画素に相当する。また、TDIカメラ105のカメラシフト周波数とレーザ光の変調周波数との比がM:1のとき、縞画像において横方向のM画素分が一本の縞を構成する。すなわち、縞がM画素分だけずれたときに、位相のずれは2πとなる。したがって、線状レーザ光Lの反射点が長手方向に距離hずれたときの縞画像データにおける位相のずれΔφは、M/2π=(h/s)/Δφの関係より、以下の式113のようになる。
d={M・s/(2π・tanθ)}・Δφ ・・・(式113)
従って、欠陥検出処理部235は、TDIカメラ105の撮影分解能や線状レーザ光の入射角θといった形鋼撮像装置100の設定値と、タイミング信号発生部201から取得した周波数の比Mと、形状補正処理部233から出力された深さ画像から得られる位相φと、上記式113とを用いて、検査対象物(形鋼1)のウェブ検査面の表面に存在する凹みの深さdを算出することができる。
厳密には、通常のレンズを用いた場合、撮影分解能sは深さdに応じて変化するため、補正を行う必要があるが、形鋼の凹みを測定する場合のように、レンズ作動距離に対して深さ変化が微小な場合は、かかる撮影分解能sの変化を実用上無視することができる。また、テレセントリックレンズを使えば、撮影分解能sを深さdによらず、一定とすることができる。
欠陥検出処理部235は、形鋼1のウェブ検査面の表面に存在する凹みの深さの算出が終了すると、得られた情報に基づいて、ウェブ検査面の表面に存在する表面欠陥(疵)の位置を特定する。
欠陥検出処理部235は、このようにして検出された表面欠陥(疵)に関する情報を、表示部205に出力したり、帳票出力したりする。
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理部203では、伸縮処理後の形状画像(深さ画像)を利用することで、形鋼1の表面形状を正確、かつ、容易に把握することができる。
また、欠陥検出処理部235は、上述の方法に換えて以下の方法でも、ウェブ検査面に存在する可能性のある表面欠陥を検出することが可能である。すなわち、欠陥検出処理部235は、まず、形状補正処理部233で得られた深さ画像を二値化処理する。二値化処理では、閾値を設定し、閾値内部分には0を、閾値を超える部分に1を与えて画像化する。
続いて、欠陥検出処理部235は、生成した二値化画像を用いて表面欠陥判別を行い、表面欠陥を検出する。また、欠陥検出処理部235は、二値化画像だけでなく、深さ画像の最大、最小深さ等に基づいて、表面欠陥判別を行ったり、振幅算出部223で得られた振幅画像(輝度画像)の最大輝度、最小輝度、平均輝度等に基づいて、表面欠陥判別を行ったりしてもよい。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
また、上記説明において、形鋼1としてH型鋼を例にとって説明を行ったが、ウェブ面とフランジ面とがR部を介して接続されているような形状を有する形鋼であれば、同様に処理を行うことが可能である。
本実施形態に係る表面欠陥検査方法は、例えば図12(a)に示したようなI型鋼に対しても適用可能であり、図12(b)に示したような溝形鋼にも適用可能であり、図12(c)に示したような、各種の山形鋼に対しても適用可能である。また、本実施形態に係る表面欠陥検査方法は、これらの形鋼のみならず、図12(d)に示したような形状を有するレールに対しても適用可能であり、鋼矢板に対しても適用可能である。
<表面欠陥検査方法の流れについて>
続いて、図13を参照しながら、本実施形態に係る表面欠陥検査方法の流れについて、簡単に説明する。図13は、本実施形態に係る表面欠陥検査方法の流れを示した流れ図である。
まず、表面欠陥検査装置10は、線状レーザ光が照射されている形鋼1を形鋼撮像装置100のTDIカメラ105で撮像して、縞画像を生成する(ステップS101)。その後、演算処理装置200の画像処理部203(より詳細には、画像生成部209)は、縞画像の信号に基づいて振幅及び位相を算出する(ステップS103)。
続いて、位相連続化処理部225は、位相算出部221によって生成された位相画像について位相連続化処理を実施し(ステップS105)、位相連続化処理が終了した位相画像(形状画像)を、センタリング処理部231に出力する。
他方、エッジ位置検出部227は、振幅算出部223によって生成された振幅画像に基づいて、エッジ位置の検出処理を実施する(ステップS107)。エッジ位置検出部227は、検出したエッジ位置を表す情報を、エッジ不感帯算出部229に出力する。
エッジ不感帯算出部229は、形鋼1の形状に関する情報と、形鋼と形鋼撮像装置との位置関係に関する情報と、を利用して、エッジ不感帯の幅Dを算出する(ステップS109)。その後、エッジ不感帯算出部229は、形鋼1の形状に関する情報と、算出したエッジ不感帯の幅Dに関する情報とを利用して、エッジ不感帯の端部に関する情報を算出し、センタリング処理部231に出力する。
センタリング処理部231は、エッジ不感帯の端部に関する情報を利用して、形状画像のセンタ位置を算出し、算出したセンタ位置に形状画像を合わせるセンタリング処理を実施する(ステップS111)。
センタリング処理部231は、センタリング処理後の形状画像(すなわち、深さ画像)を、形状補正処理部233に出力する。
形状補正処理部233は、不感帯に対応する部分をのぞいた深さ画像を、ウェブ面に対応する部分とR部に対応する部分とに分け、R部に対応する深さ画像に対して、形状補正処理を実施する(ステップS113)。これにより、R部に対応する深さ画像が平坦化され、より正確に表面欠陥を検出することが可能となる。
形状補正処理部233は、形状補正処理の終了した深さ画像を、欠陥検出処理部235に出力する。
続いて、欠陥検出処理部235は、形状補正処理の終了した深さ画像を利用して、ウェブ検査面の表面に存在しうる表面欠陥の検出処理を実施する(ステップS115)。
かかる流れで処理を行うことで、形鋼の表面形状を正確、かつ、容易に把握することが可能となり、微小な凹凸形状の疵や模様状の疵を高精度でかつ高速に同時に検出することができる。
(第2の実施形態)
搬送ライン上を搬送される形鋼の種別は1種類に限られるわけでなく、例えば以下の表1に示すように、互いに異なるサイズを有する複数種類の形鋼が搬送ライン上を搬送される場合がある。
上記表1に記載されているような各種の形鋼を、搬送ライン上で安定して搬送させるために、図14に示したように、スキッドS(あるいはガイド)による送り込みにより、テーブルロール2の端部から所定距離D(例えば、200mm)だけ内側に、上述のような各種形鋼のフランジ端部(例えば図14におけるフランジの左端)が重なるようになる。
このため、図14に示したように、形鋼Aのウェブ高さにあわせて形鋼撮像装置が設置されている搬送ラインに、形鋼撮像装置の視野中心よりも低いウェブ高さを有する形鋼(例えば、上記表1における形鋼B)が搬送された場合には、フランジが傘になり撮影できない領域が生じることとなる。
また、図14に示したように、形鋼Cのフランジ幅にあわせて形鋼撮像装置が設置されている搬送ラインに、形鋼Dのようなフランジ幅の狭い形鋼が搬送された場合には、形鋼撮像装置の焦点がウェブ面に合わなくなり、焦点ボケが生じることとなる。
このように、様々なサイズを有する形鋼が搬送ライン上を搬送される場合には、検査対象であるウェブ面位置が形鋼撮像装置の光学条件から外れてしまう場合があり、結果、検査面全面が撮像されなかったり、焦点ボケが生じたりして、正確な検査が実施できない場合がある。
そこで、以下で説明する本発明の第2の実施形態に係る表面欠陥検査装置は、形鋼撮像装置の撮像位置を移動させる移動制御装置を更に備えることで、撮像手段の一例であるTDIカメラとレーザ光源との光学系配置を維持したまま、形鋼撮像装置を形鋼のサイズにあわせて適切に移動させる。その結果、形鋼撮像装置は、検査対象である形鋼のウェブ面を適切に撮像することが可能となるので、複数種類の形鋼が搬送ライン上を搬送される場合であっても、正確に表面欠陥の検査を行うことが可能となる。
<表面欠陥検査装置の全体構成について>
まず、図15を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る表面欠陥検査装置10の全体構成について説明する。図15は、本実施形態に係る表面欠陥検査装置の構成を示した説明図である。
本実施形態に係る表面欠陥検査装置10は、複数のローラ2からなる搬送ライン上を搬送される形鋼1を撮像して、撮像の結果得られる画像を画像処理することにより、形鋼1の表面に表面欠陥が存在するか否かを検査する装置である。
本実施形態に係る表面欠陥検査装置10は、図15に示したように、搬送ライン上の形鋼1を撮像する形鋼撮像装置100と、演算処理装置200と、移動制御装置300と、を備える。
ここで、本実施形態に係る形鋼撮像装置100は、撮像位置を変化させるための任意の移動機構(図示せず。)が取り付けられている。形鋼撮像装置100に設けられた移動機構は、後述する移動制御装置300の制御により、水平方向(フランジ幅方向)及び上下方向(ウェブ高さ方向)に、レーザ光源101及びロッドレンズ103と、TDIカメラ105との間の相対的位置関係を維持したまま、撮像位置を移動させる。
なお、本実施形態において、形鋼撮像装置100のレーザ光源101及びロッドレンズ103と、TDIカメラ105とは、それぞれの光軸が、基準となる形鋼(例えば、搬送ライン上を搬送される形鋼のうち最大のウェブ高さを有するもの。以下の説明ではこれを形鋼aと呼ぶ。)のウェブ面を垂直に横切る水平面上に存在するように、予め配置されているものとする。以下では、この基準となる形鋼aにあわせたレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の位置を、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の基準撮像位置と称することとする。
本実施形態に係る形鋼撮像装置100は、以上述べた点以外では、本発明の第1の実施形態に係る形鋼撮像装置100と同様の構成を有しており、同様の効果を奏するものであるため、以下では、更なる詳細な説明は省略する。
また、本実施形態に係る演算処理装置200は、本発明の第1の実施形態に係る演算処理装置200と同様の構成を有し、同様の効果を奏するものであるため、以下では詳細な説明は省略する。
移動制御装置300は、形鋼撮像装置100に設けられた各種の移動機構を制御することで、形鋼撮像装置100の撮像位置の変更を制御する装置である。かかる移動制御装置300は、CPU、ROM、RAM、通信装置等を備えたコンピュータにより実現されてもよいし、形鋼撮像装置100に設けられた各種の移動機構を制御するための専用回路であってもよい。また、図15においては、移動制御装置300は、演算処理装置200とは異なる装置であるように図示されているが、演算処理装置200が移動制御装置300の機能を兼ね備えていてもよい。
移動制御装置300は、表面欠陥検査装置10のユーザによる入力操作や、移動制御装置300と通信可能な装置(例えば、製造管理用プロコン等)から出力された制御信号等により、搬送ライン上を搬送される形鋼のサイズが変更となる旨が通知されると、形鋼1のサイズが変更となる旨の情報を、形鋼撮像装置100及び演算処理装置200に通知する。
移動制御装置300は、形鋼1のサイズが変更となる旨の通知の取得とあわせて、変更後の形鋼1のサイズに関する情報を取得する。かかる変更後の形鋼のサイズに関する情報は、例えば、表面欠陥検査装置10のユーザによる入力操作や、移動制御装置300と通信可能な装置(例えば、製造管理用プロコン等)や、演算処理装置200等に格納されている各種データベース等から取得する。
移動制御装置300は、基準となる形鋼のサイズに関する情報、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の基準撮像位置に関する情報、及び、取得した変更後の形鋼のサイズに関する情報に基づいて、かかる形鋼の変更が所定の条件を満足するか否かを判断する。移動制御装置300は、形鋼の変更が所定の条件を満たすと判断した場合に、判断に利用した上述の情報に基づいて、形鋼撮像装置100の移動量(より詳細には、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量)を算出する。
以下では、図16を参照しながら、移動制御装置300が実施する所定の条件を満たすか否かの判断処理、及び、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量の算出処理について、具体的に説明する。
図16は、形鋼撮像装置100の移動量(より詳細には、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105)について説明するための説明図である。
図16において、形鋼aが基準となる形鋼であり、搬送される形鋼のうちで最大のウェブ高さhaを有しており、フランジ幅wa、ウェブ厚t1a、フランジ厚t2aを有しているものとする。また、かかる場合において、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の基準撮像位置は、図16に示したように、H0=(1/2)haとなっている。
また、図16において、形鋼bがサイズ変更後の形鋼に対応しており、ウェブ高さhb、フランジ幅wb、ウェブ厚t1b、フランジ厚t2bを有しているものとする。
かかる場合において、移動制御装置300は、まず、形鋼bについて、(hb−t2b)で表される値(すなわち、図16に示したように、上側のフランジのうちウェブに接続されている側の面までの高さH1)が、TDIカメラ105の視野中心を表す値(すなわち、H0)未満であるか否かを判断する。
かかる条件が成立する場合には、形鋼bのフランジが傘となって、形鋼bのウェブ検査面全面を撮像できなくなってしまうため、移動制御装置300は、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量を算出して、これらの機器の位置変更を制御する。また、かかる条件が成立しない場合(すなわち、H0≦H1である場合)には、サイズ変更後の形鋼のフランジにより撮像領域がさえぎられることはないため、移動制御装置300は、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動を実施しない。
移動制御装置300は、上述のような条件が成立する場合には、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の水平方向移動量MX及び上下方向移動量MYを算出する。ここで、水平方向移動量MXは、TDIカメラ105とウェブ検査面との離隔距離Lが一定となるように決定される。すなわち、移動制御装置300は、以下の式201により、水平方向移動量MXを算出する。水平方向移動量MXは、下記式201から明らかなように、形鋼aのウェブ検査面と、形鋼bのウェブ検査面との離隔距離を表している。また、移動制御装置300は、上下方向移動量MYを、図16から明らかなように、以下の式202により算出する。
MX=1/2(wa+t1a)−1/2(wb+t1b) ・・・(式201)
MY=H0−H1=(1/2)ha−(hb−t2b) ・・・(式202)
移動制御装置300は、水平方向移動量MX及び上下方向移動量MYを算出すると、形鋼撮像装置100(レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105)に設けられた移動機構に対して、算出したこれらの移動量を表す情報を送信する。これにより、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105は、サイズ変更後の形鋼(すなわち、形鋼b)のウェブ検査面全体を撮像可能な位置に、自身の位置を移動させることができる。形鋼撮像装置100は、位置変更が終了すると、その旨を演算処理装置200に通知する。これにより、サイズ変更後の形鋼である形鋼bに対する表面欠陥検査処理が開始されることとなる。
なお、サイズ変更後の形鋼に対する表面欠陥検査処理が終了すると、移動制御装置300は、基準撮像位置へと復帰する旨を指示する制御信号を、形鋼撮像装置100に対して送信する。
以上説明したようなレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の位置制御を実施することにより、搬送ライン上を搬送される形鋼のサイズが多種多様であり、ウェブ検査面の搬送位置が異なる場合であっても、形鋼撮像装置100の光学系配置が適切な位置に移動することとなる。その結果、様々なサイズの形鋼に対して、正確に表面欠陥検査処理を実施することが可能となる。
以上、図16を参照しながら、移動制御装置300によるレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動制御処理について説明した。
ここで、本実施形態に係る移動制御装置300は、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105に加えて、フランジ照明装置107の移動制御を行うことも可能である。
以下、図17を参照しながら、移動制御装置300によるフランジ照明装置107の移動制御処理について説明する。図17は、本実施形態に係るフランジ照明装置の移動量について説明するための説明図である。
なお、以下の説明では、図17に示したように、搬送ライン上を搬送される形鋼のうち最大のウェブ高さを有する形鋼(形鋼a)を撮像する際のレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の基準撮像位置の高さを高さ方向の原点とした座標系(u,v)を用いることとする。すなわち、図17に示した座標系(u,v)では、スキッドSの右端に対応し、かつ、形鋼aを撮像する際のレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の基準撮像位置の高さに対応する点を、原点として取り扱う。また、フランジ照明装置107の位置を、上記uv座標系を用いてFS(u,v)と表すこととする。
ここで、図17に示した形鋼は、ウェブ高さh、フランジ幅w、ウェブ厚t1、フランジ厚t2、コーナーR部の半径rとなっており、テーブルロール2の端部からDの位置に配設されているものとする。
かかる場合において、図17に示した形鋼に適したフランジ照明装置107の設置位置は、以下の3つの条件を全て満たす領域(図17において、斜線で示した領域)内の位置となる。
(1)フランジ照明装置107側のフランジの端部Mと、他側のフランジ面に連なるR部の端部Nとを結ぶ直線LEよりも形鋼中心側
(2)フランジ端部に垂直な直線L0よりも形鋼外側
(3)カメラ視野の外側(形鋼aを撮像する際のカメラ視野と直線L0との交点の高さVCよりも上側)
ここで、上記3つの条件を満たす形鋼aを基準としたフランジ照明装置107の初期設定位置座標を、FS(u0,v0)と表すこととする。かかる初期設定位置FS(u0,v0)において、v0は、v0>VCを満足するように予め設定された値となっている。
このような条件において、直線LE及び直線L0が、uv座標系においてどのように定式化されるかについて考える。
まず、直線LEに関し、座標M及び座標Nは、uv座標系において以下のように表される。
従って、直線LEを表すuv座標系での式は、以下の式251のようになる。ここで、以下の式251において、係数a及び係数bは、以下の式252及び式253で表される値である。
・・・(式251)
・・・(式252)
・・・(式253)
また、直線L0は、座標Mを通りウェブ高さ方向と平行な直線であるため、以下の式254のように表すことができる。
u=w ・・・(式254)
従って、図17に示した形鋼に対するフランジ照明装置107の位置は、以下の3つの条件式を全て満たす範囲内の位置として表すことができる。
(1)v>a・(u−w)+b
(2)u>w
(3)v>VC
ここで、式251を変形してuについて解くと、以下の式255を得ることができる。
・・・(式255)
従って、上記式255を考慮して、先述の(1)〜(3)の条件を整理すると、以下の式256及び式257のように表すことができる。
・・・(式256)
・・・(式257)
従って、本実施形態に係る移動制御装置300は、形鋼のサイズに応じてフランジ照明装置107に設けられた各種の移動機構を制御し、初期設定位置の座標FS(u0,v0)から、上記式256及び式267を共に満たすような位置FS(u,v)へとフランジ照明装置107を移動させればよい。
ここで、フランジ照明装置107の移動方法として、主に以下の2種類の方法が考えられる。
・フランジ照明装置107の高さ位置をレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105と連動して移動させ、フランジ照明装置107の水平方向の位置を水平方向に移動させる方法
・フランジ照明装置107の高さ位置をレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の高さ位置と連動させずに一定とし、水平方向にのみ移動させる方法
以下では、まず、移動制御装置300がフランジ照明装置107の高さ方向及び水平方向を移動させる場合について、具体的に説明する。
移動制御装置300に対して形鋼の形状に関する情報が入力されると、移動制御装置300は、取得した形鋼の形状に関する情報を利用して、先述のようにしてレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量MX及びMYを算出する。ここで、移動制御装置300は、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105を高さ方向(すなわち、v軸方向)に関してv軸負方向側にMYだけ移動させる場合、フランジ照明装置107についても、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の高さ方向の移動に連動させて、v軸負方向側にMYだけ移動させる。従って、フランジ照明装置107の高さ方向の座標vは、移動制御装置300の制御により、v=v0−MYに移動することとなる。
また、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向(すなわち、u軸方向)の位置を、上記式256を満たす位置、すなわち、w<u<(1/a)・(v0−MY−b)+wを満たす位置uまで移動させる。
なお、式256で表される条件が成立しない場合には、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向位置uを、上記式254で表される位置と上記式255で表される位置との中間位置となるように移動させればよい。すなわち、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向位置uを、以下の式258で表される位置に設定する。
・・・(式258)
従って、式256で表される条件が成立しない場合には、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の位置を以下で表される座標FSに設定して、フランジ照明装置107の移動制御を実施することとなる。
次に、移動制御装置300がフランジ照明装置107の水平方向のみを移動させる場合について、具体的に説明する。
移動制御装置300に対して形鋼の形状に関する情報が入力されると、移動制御装置300は、取得した形鋼の形状に関する情報を利用して、先述のようにしてレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量MX及びMYを算出する。ここで、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の高さ(すなわち、v軸方向の位置)については、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の高さ方向の移動に連動させず、初期設定位置のv座標であるv0のままで一定とする。
また、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向(すなわち、u軸方向)の位置を、上記式256を満たす位置、すなわち、w<u<(1/a)・(v0−b)+wを満たす位置uまで移動させる。
なお、式256で表される条件が成立しない場合には、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向位置uを、上記式254で表される位置と上記式255で表される位置との中間位置となるように移動させればよい。すなわち、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の水平方向位置uを、以下の式259で表される位置に設定する。
・・・(式259)
従って、式256で表される条件が成立しない場合には、移動制御装置300は、フランジ照明装置107の位置を以下で表される座標FSに設定して、フランジ照明装置107の移動制御を実施することとなる。
なお、上記説明では、形鋼撮像装置100が、移動機構を備えた1台のフランジ照明装置107を備えている場合について説明したが、形鋼撮像装置100は、複数台のフランジ照明装置107を備えていてもよい。形鋼撮像装置100が複数台のフランジ照明装置107を備えることで、上述のようなフランジ照明装置107の移動制御処理を実施することなく、形鋼のフランジ端部を適切に照明することが可能となる。
以下では、図18を参照しながら、形鋼撮像装置100が複数台のフランジ照明装置107を備える場合におけるフランジ端部の照明制御処理について、簡単に説明する。図18は、本実施形態に係るフランジ照明装置の変形例について説明するための説明図である。
図18に示したように、本実施形態に係る形鋼撮像装置100は、v>VCを満たすv=v0の高さに、u軸方向に沿って複数のフランジ照明装置107を有していてもよい。図18に示したようにアレイ状に照明装置を設けることで、以上説明したような移動制御を実施することなく、形鋼のフランジ端部を照明可能となる。
なお、かかる場合には、上述のようなフランジ照明装置107の移動制御を行うのではなく、フランジ照明装置107の点灯制御が行われることとなる。フランジ照明装置の点灯制御は、移動制御装置300が実施してもよいし、移動制御装置300の算出したレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量MX,MYを取得したタイミング信号発生部201が実施してもよい。以下では、移動制御装置300がフランジ照明装置107の点灯制御を行う場合を例にとって説明する。
フランジ照明装置107は、図18に示したように、u軸方向(すなわち、形鋼の搬送方向に垂直な方向)に沿って等間隔に、m台設けられているものとする。ここで、隣り合うフランジ照明装置107の間隔は、実際に搬送ライン上を搬送される形鋼のサイズに基づいて決定することが可能であり、例えば、搬送される形鋼のサイズに基づいて算出される(1/a)・(v0−b)の値の中で最小値と同等となるように決定すればよい。この際、フランジ照明装置107の配置間隔は、上記式256を満たす領域内に少なくとも1個のフランジ照明装置が配置されるように調整される。また、設置するフランジ照明装置の台数についても、搬送ライン上を搬送される形鋼のサイズを考慮して、適宜設定すればよい。ここで、各フランジ照明装置の位置座標を、FSm(um,v0)(m=1,2,・・・,m)と表すこととする。
かかる場合において、搬送される形鋼のサイズが変更になると、移動制御装置300は、取得した形鋼の形状に関する情報を利用して、先述のようにしてレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の移動量MX及びMYを算出する。続いて、移動制御装置300は、以下の式260を満たすu座標値umを特定する。
・・・(式260)
その後、移動制御装置300は、特定したu座標値umを利用して、位置座標FSm(um,v0)に存在するフランジ照明装置のみを点灯させるように、フランジ照明装置107の点灯制御を実施する。
以上、図17及び図18を参照しながら、移動制御装置300によるフランジ照明装置107の移動制御処理について説明した。
なお、上述の実施形態では、移動制御装置300がレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の撮像位置を制御する際の条件としてH0>H1が成立するか否かに着目し、H0≦H1である場合にはレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の撮像位置を変更しない場合について説明した。
しかしながら、移動制御装置300がレーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105の撮像位置を制御する際の条件は、上記例に限定されるわけではない。例えば、移動制御装置300は、形鋼の種別が切り替わる際に、ウェブ高さの中心位置が変化するか否かに着目して、撮像位置を制御するか否かを判断してもよい。かかる場合には、移動制御装置300は、現在搬送されている形鋼の種別やサイズを把握しておき、搬送される形鋼のサイズが変更となる場合には、ウェブ高さの中心位置が変化するか否かを判断する。移動制御装置300は、ウェブ高さの中心位置が変化すると判断した場合に、レーザ光源101及びロッドレンズ103、並びに、TDIカメラ105が常に形鋼のウェブ高さの中心位置となるように、これら機器の位置制御を行うことができる。
(ハードウェア構成について)
次に、図19を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図19は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。演算処理装置200のユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
なお、本発明の実施形態に係る移動制御装置300のハードウェア構成は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置及び表面欠陥検査方法では、遅延積分型撮像装置で得られた光切断画像を順に配列することにより得られる縞画像について、検査対象物の検査範囲を正確に決定することが可能となった。そのため、検査対象物がH形鋼のウェブ面のように横断面形状において両端部が低くなる又は高くなる曲線を有する長丈材である場合にも、凹凸を含む表面欠陥の検出精度を高めることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。