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JP5549565B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

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JP5549565B2
JP5549565B2 JP2010270285A JP2010270285A JP5549565B2 JP 5549565 B2 JP5549565 B2 JP 5549565B2 JP 2010270285 A JP2010270285 A JP 2010270285A JP 2010270285 A JP2010270285 A JP 2010270285A JP 5549565 B2 JP5549565 B2 JP 5549565B2
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Description

本発明は、原動機を備える車両に搭載され、該原動機からの動力を油圧駆動の摩擦係合要素を介して駆動輪側に伝達する動力伝達装置に関する。
従来、この種の動力伝達装置としては、アイドルストップ機能付きの自動車に搭載され、エンジンの動力により作動する機械式ポンプと、機械式ポンプからの吐出圧を調圧するリニアソレノイドバルブSLC1と、電磁ポンプと、機械式ポンプから油圧(モジュレータ圧)により作動しリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと発進用のクラッチC1(油圧サーボ)との接続と電磁ポンプの吐出ポートとクラッチC1との接続とを選択的に切り替える切替バルブと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、エンジンのアイドルストップ中には、エンジンの運転停止に伴って作動を停止している機械式ポンプに代えて電磁ポンプを駆動して油圧(ストロークエンド圧)をクラッチC1に作用させておくことにより、次のエンジン始動時に機械式ポンプからの油圧が立ち上がったときに直ちにクラッチC1を係合させることができ、車両の発進をスムーズに行なうことができるとしている。
特開2010−175039号公報
上述した動力伝達装置では、切替バルブは、通常時にはスプリングの付勢力によりスプールが一端側に移動して電磁ポンプの吐出ポートとクラッチC1とを接続し、スプリングの付勢力に打ち勝つ油圧が導入されるとスプールが他端側に移動してリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1とを接続するよう構成されている。エンジン始動時におけるクラッチC1の係合は、エンジンの回転速度が機械式ポンプによりスプリングの付勢力に打ち勝つ油圧(設定圧以上の油圧)を発生させる回転速度に至って、切替バルブの接続がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1との接続に切り替えられるのを待ってから行なわれる。このため、クラッチC1の係合には若干のタイムラグが発生し、この間にアクセルペダルが大きく踏み込まれてエンジントルクが急増したときには、クラッチC1の係合が間に合わずにエンジンの吹き上がりやクラッチ滑りが生じる場合がある。この点、切替バルブのスプリングとしてスプリング荷重の小さなものを用いてその設定圧を引き下げることにより、エンジン始動時に切替バルブの接続をリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1との接続に素早く切り替えることができる。しかしながら、エンジン停止時には機械式ポンプの吐出圧が設定圧よりも小さくなるまでリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1との接続が維持されるため、クラッチC1に作用させる油圧がストロークエンド圧よりも大幅に低下し、クラッチC1のピストン位置がストロークエンドから離れてしまう。電磁ポンプはその吐出能力が機械式ポンプに比して極めて低く、クラッチC1の再ストロークにある程度の時間を要することから、この間にアクセルペダルが大きく踏み込まれてエンジンが始動すると、クラッチC1の係合が間に合わなくなる。
本発明の動力伝達装置は、原動機の始動に伴う摩擦係合要素の係合と原動機の停止に伴う摩擦係合要素の係合の解除とを迅速に行なえるようにすることを主目的とする。
本発明の動力伝達装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力伝達装置は、
原動機を備える車両に搭載され、該原動機からの動力を油圧駆動の摩擦係合要素を介して駆動輪側に伝達する動力伝達装置であって、
前記原動機からの動力により駆動して油圧を発生させる機械式ポンプと、
該機械式ポンプからの油圧を調圧する調圧弁と、
電力の供給を受けて駆動して油圧を発生させる電動式ポンプと、
前記機械式ポンプからの油圧に基づき生成される信号圧により作動する1以上の切替弁により構成され、前記信号圧が設定圧以上のときには前記調圧弁の出力圧を前記摩擦係合要素の油圧サーボに供給可能な第1の状態とし、前記信号圧が前記設定圧未満のときには前記電動式ポンプからの油圧を前記油圧サーボに供給可能な第2の状態とする切替機構と、
前記機械式ポンプからの油圧を前記油圧サーボに供給可能なバイパス油路と、
前記バイパス油路に配置され、前記機械式ポンプから前記油圧サーボへの油圧の供給を許可し、前記電動ポンプから前記機械式ポンプへの油圧の供給を禁止する逆止弁と、
を備え、
前記切替機構は、さらに、前記第1の状態にあるときには前記バイパス油路を遮断し、前記第2の状態にあるときには前記バイパス油路を連通するよう構成されてなる
ことを要旨する。
この本発明の動力伝達装置では、機械式ポンプからの油圧に基づき生成される信号圧により作動する1以上の切替弁により構成され、信号圧が設定圧以上のときには調圧弁の出力圧を摩擦係合要素の油圧サーボに供給可能な第1の状態とし、信号圧が前記設定圧未満のときには電動式ポンプからの油圧を油圧サーボに供給可能な第2の状態とする切替機構を設け、機械式ポンプからの油圧を油圧サーボに供給可能なバイパス油路を形成し、機械式ポンプから油圧サーボへの油圧の供給を許可し電動式ポンプから機械式ポンプへの油圧の供給を禁止する逆止弁をバイパス油路に配置し、切替機構を、さらに第1の状態にあるときにはバイパス油路を遮断し、第2の状態にあるときには前記バイパス油路を連通するよう構成する。これにより、原動機の始動時には切替機構が第2の状態から第1の状態に切り替わるのを待たずに機械式ポンプからの油圧をバイパス油路を介して摩擦係合要素の油圧サーボに供給し、切替機構が第1の状態に切り替わったときには機械式ポンプからの油圧を調圧弁を介して油圧サーボに供給することができる。この結果、切替バルブの設定圧を適切なものに調整することにより、原動機の始動に伴う摩擦係合要素の係合と原動機の停止に伴う摩擦係合要素の係合の解除とを迅速に行なうことができる。ここで、「電動式ポンプ」には、電動機からの動力により作動する通常の電動式ポンプや電磁ポンプが含まれる。
こうした本発明の動力伝達装置において、前記切替機構は、前記機械式ポンプから吐出された油が流れる機械式ポンプ用油路に接続された第1の信号圧用ポートと前記バイパス油路の上流側に接続された第1の連絡ポートと前記バイパス油路の下流側に接続された第2の連絡ポートとが形成されると共に、前記第1の連絡ポートおよび前記第2の連絡ポートの連通と遮断とを行なうスプールと該スプールを付勢する付勢部材とを有し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用しているときには該油圧により前記スプールを一端側に移動させることにより前記第1の連絡ポートと前記第2の連絡ポートとの連通を遮断し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用していないときには前記付勢部材の付勢力により前記スプールを他端側に移動させることにより前記第1の連絡ポートと前記第2の連絡ポートとを連通するよう構成され、前記バイパス油路の下流側に、前記電動式ポンプから吐出された油が流れる電動式ポンプ用油路が接続されてなるものとすることもできる。この態様の本発明の動力伝達装置において、前記バイパス油路の下流側に逆止弁が取り付けられてなるものとすることもできる。さらに、これらの態様の本発明の動力伝達装置において、前記切替機構は、さらに、前記調圧弁から出力された油が流れる調圧弁用油路に接続された第1の入力ポートと前記電動式ポンプ用油路に接続された第2の入力ポートと前記油圧サーボに連通する油圧サーボ用油路に接続された出力ポートとが形成され、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用しているときには該油圧により前記スプールを一端側に移動させることにより前記第1の入力ポートと前記出力ポートとを連通すると共に前記第2の入力ポートと前記出力ポートとの連通を遮断し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用していないときには前記付勢部材の付勢力により前記スプールを他端側に移動させることにより前記第1の入力ポートと前記出力ポートとの連通を遮断すると共に前記第2の入力ポートと前記出力ポートとを連通する1つの切替弁により構成されてなるものとすることもできる。こうすれば、切替機構の各機能を1つの切替弁により実現することができるから、装置をより小型化することができる。また、この場合、前記機械式ポンプ用油路に取り付けられ、該機械式ポンプからの油圧の供給と遮断とが可能な供給弁を備え、前記切替機構は、さらに前記機械式ポンプ用油路に前記供給弁を介して接続された第2の信号圧用ポートが形成され、前記第2の信号圧用ポートに油圧が作用しているときには該油圧と前記付勢部材の付勢力とにより前記スプールを前記他端側に移動させることにより前記第2の状態とするよう構成されてなるものとすることもできる。こうすれば、切替機構が第1の状態にあるときに調圧弁に故障が生じて調圧弁から摩擦係合要素の油圧サーボに油圧を供給できなくなったときでも、供給弁により切替機構を第2の状態とすることにより、機械式ポンプからの油圧をバイパス油路を介して摩擦係合要素の油圧サーボに供給することができる。
また、本発明の動力伝達装置において、前記機械式ポンプが作動しているときには該機械式ポンプからの油圧が前記油圧サーボに供給されるよう前記調圧弁を制御し、前記機械式ポンプが作動していないときには前記電動式ポンプからの油圧が前記油圧サーボに供給されるよう該電動式ポンプを制御する制御手段を備えるものとすることもできる。
本発明の一実施例としての動力伝達装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。 変速機構30の作動表を示す説明図である。 変速機構30の各回転要素の回転速度の関係を示す共線図である。 油圧回路40の構成の概略を示す構成図である。 電磁ポンプ60の構成の概略を示す構成図である。 エンジン回転速度Neとライン圧PLとC1リレーバルブ70の動作状態と電磁ポンプ60の動作状態とC1圧の時間変化の様子を示す説明図である。 エンジン12の運転を停止する際のエンジン回転速度Neとライン圧PLとC1リレーバルブ70の動作状態と電磁ポンプ60の動作状態とC1圧とC1ピストンストロークの時間変化の様子を示す説明図である。 油圧回路40の動作を説明する説明図である。 変形例の油圧回路140の構成の概略を示す構成図である。
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例としての動力伝達装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は変速機構30の作動表を示す説明図である。
自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)15と、エンジン12のクランクシャフト14に接続されると共に左右の車輪19a,19bの車軸18a,18bに接続されてエンジン12からの動力を車軸18a,18bに伝達する動力伝達装置20と、動力伝達装置20を制御する自動変速機用電子制御ユニット(ATECU)16と、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(メインECU)90とを備える。なお、メインECU90には、シフトポジションセンサ92からのシフトポジションSPやアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキスイッチ96からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、メインECU90は、エンジンECU15やATECU16と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU15やATECU16と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
動力伝達装置20は、図1に示すように、エンジン12のクランクシャフト14に接続された入力側のポンプインペラ24aと出力側のタービンランナ24bとからなるロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ24と、トルクコンバータ24のタービンランナ24bに接続された入力軸21と車軸18a,18bにギヤ機構26とデファレンシャルギヤ28とを介して接続された出力軸22とを有し入力軸21に入力された動力を変速して出力軸22に出力する有段の変速機構30と、この変速機構30を駆動するアクチュエータとしての油圧回路40(図4参照)と、を備える。なお、実施例では、エンジン12のクランクシャフト14と変速機構30との間にトルクコンバータ24を介在させるものとしたが、これに限られず、種々の発進装置を採用し得る。
変速機構30は、6段変速の有段変速機構として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構とラビニヨ式の遊星歯車機構と三つのクラッチC1,C2,C3と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31はケースに固定されており、リングギヤ32は入力軸21に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構は、外歯歯車の二つのサンギヤ36a,36bと、内歯歯車のリングギヤ37と、サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア39とを備え、サンギヤ36aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構のキャリア34に接続され、サンギヤ36bはクラッチC3を介してキャリア34に接続されると共にブレーキB1を介してケースに接続され、リングギヤ37は出力軸22に接続され、キャリア39はクラッチC2を介して入力軸21に接続されている。また、キャリア39は、ワンウェイクラッチF1を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF1と並列に設けられたブレーキB2を介してケースに接続されている。
変速機構30は、図2に示すように、クラッチC1〜C3のオンオフ(係合と非係合)とブレーキB1,B2のオンオフとの組み合わせにより前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。後進の状態は、クラッチC3とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1,C2とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができる。また、前進1速の状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。この前進1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2がオンとされる。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができる。前進3速の状態は、クラッチC1,C3をオンとすると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。前進4速の状態は、クラッチC1,C2をオンとすると共にクラッチC3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。前進5速の状態は、クラッチC2,C3をオンとすると共にクラッチC1とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。前進6速の状態は、クラッチC2とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC1,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができる。また、ニュートラルの状態は、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2のすべてをオフとすることにより形成することができる。なお、図3に、変速機構30の各変速段における各回転要素の回転速度の関係を説明する説明図を示す。図中のS1軸はサンギヤ33の回転速度を示し、CR1軸はキャリア34の回転速度を示し、R1軸はリングギヤ32の回転速度を示し、S2軸はサンギヤ36bの回転速度を示し、S3軸はサンギヤ36aの回転速度を示し、CR2軸はキャリア39の回転速度を示し、R2軸はリングギヤ37の回転速を示す。
変速機構30におけるクラッチC1〜C3のオンオフ(係合と非係合)とブレーキB1,B2のオンオフは、油圧回路40により行なわれる。油圧回路40は、図4に示すように、エンジン12からの動力により作動しストレーナ41を介して作動油を吸引してライン圧用油路51に圧送する機械式オイルポンプ42と、機械式オイルポンプ42から圧送された作動油を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ44と、ライン圧PLから図示しないモジュレータバルブを介して生成されるモジュレータ圧PMODを調圧して信号圧として出力することによりレギュレータバルブ44を駆動するリニアソレノイドバルブSLTと、ライン圧用油路51に接続された入力ポート46aとドライブ圧用油路52に接続されたD(ドライブ)ポジション用出力ポート46bとR(リバース)ポジション用出力ポート46cなどが形成されDポジションにシフト操作されているときには入力ポート46aとDポジション用出力ポート46bとを連通すると共に入力ポート46aとRポジション用出力ポート46cとの連通を遮断しRポジションにシフト操作されているときには入力ポート46aとDポジション用出力ポート46bとの連通を遮断すると共に入力ポート46aとRポジション用出力ポート46cとを連通しN(ニュートラル)ポジションにシフト操作されているときには入力ポート46aとDポジション用出力ポート46bおよびRポジション用出力ポート46cとの連通を遮断するマニュアルバルブ46と、ドライブ圧用油路52に接続された入力ポート48aと出力ポート用油路53に接続された出力ポート48bとドレンポート48cとが形成されDポジション用出力ポート46bからの出力圧であるドライブ圧PDを入力ポート48aから入力し一部をドレンポート48cからドレンしながら調圧して出力ポート48bから出力するリニアソレノイドバルブSLC1と、吸入ポート用油路54を介してストレーナ41に接続された吸入ポート62aと吐出ポート用油路55に接続された吐出ポート62bとが形成されソレノイド61による電磁力によりピストン66を往復動させることにより作動油を吸入ポート62aから吸入すると共に吸入した作動油を吐出ポート62bから吐出する電磁ポンプ60と、リニアソレノイドバルブSLC1からの出力圧であるSLC1圧をクラッチC1の油圧サーボに供給するモードと電磁ポンプ60からの吐出圧をクラッチC1の油圧サーボに供給するモードとを選択的に切り替えるC1リレーバルブ70と、C1リレーバルブ70に信号圧を供給するためのオンオフソレノイドバルブS1などにより構成されている。ここで、図4では、クラッチC1に対する油圧の供給系についてのみを図示するものとしたが、クラッチC2,C3やブレーキB1,B2に対する油圧の供給系も周知のソレノイドバルブやリレーバルブにより同様に構成することができる。
C1リレーバルブ70は、図4に示すように、各種ポートが形成されたスリーブ72と、スリーブ72内を摺動して各ポート間の継断を行なうスプール74と、スプール端面を押圧するスプリング76と、を備える。スリーブ72には、各種ポートとして、モジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング76の付勢力と逆方向に押圧される信号圧として入力する第1の信号圧用ポート72aと、出力ポート用油路53に接続されSLC1圧を入力する入力ポート72bと、吐出ポート用油路55に接続され電磁ポンプ60からの吐出圧を入力する入力ポート72cと、クラッチC1のC1用油路56に接続された出力ポート72dと、チェック弁82が取り付けられたドレン用油路59に接続されたドレンポート72eと、ドライブ圧用油路52にバイパス油路の上流側57を介して接続された連絡ポート72fと、バイパス油路の下流側58に接続された連絡ポート72gと、オンオフソレノイドバルブS1を介して導入されるモジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング76の付勢力と同方向に押圧される信号圧として入力する第2の信号圧用ポート72hとが形成されている。バイパス油路の下流側58には、チェック弁84を介して電磁ポンプ60の吐出ポート用油路55が接続されている。このチェック弁84は、バイパス油路の下流側58から吐出ポート用油路55への油の流出は許容するが、吐出ポート用油路55からバイパス油路の下流側58への油の流入は禁止するようになっている。
このC1リレーバルブ70では、第1の信号圧用ポート72aにスプリング76の付勢力に打ち勝つ圧力(設定圧)以上のモジュレータ圧PMODが作用しているときには、モジュレータ圧PMODによりスプリング76が収縮する方向(図4中の右半分に示す位置)にスプール74を移動させる。この状態では、入力ポート72bと出力ポート72dとを連通し、入力ポート72cと出力ポート72dとの連通を遮断し、入力ポート72cとドレンポート72eとを連通し、連絡ポート72f,72g間の連通を遮断するため、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bが出力ポート用油路53,入力ポート72b,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1(油圧サーボ)に連通され、電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1との連通が遮断され、電磁ポンプ60の吐出ポート62bが吐出ポート用油路55,入力ポート72c,ドレンポート72e,ドレン用油路59を介してチェック弁82に連通され、バイパス油路の上流側57とバイパス油路の下流側58との連通が遮断されることになる。一方、第1の信号圧用ポート72aにスプリング76の付勢力に打ち勝つ圧力(設定圧)以上のモジュレータ圧PMODが作用していないときには、スプリング76の付勢力によりスプリング76が伸張する方向(図4中の左半分に示す位置)にスプール74を移動させる。この状態では、入力ポート72bと出力ポート72dとの連通を遮断し、入力ポート72cと出力ポート72dとを連通し、入力ポート72cとドレンポート72eとの連通を遮断し、連絡ポート72f,72g間を連通するため、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1との連通が遮断され、電磁ポンプ60の吐出ポート62bが吐出ポート用油路55,入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1に連通され、電磁ポンプ60の吐出ポート62bとチェック弁82との連通が遮断され、ドライブ圧用油路52がバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84を介して吐出ポート用油路55に連通されることになる。
図5は、電磁ポンプ60の構成の概略を示す構成図である。電磁ポンプ60は、図示するように、電磁力を発生させるソレノイド61と、中空円筒状のシリンダ62と、シリンダ62内に挿入されソレノイド61からの電磁力による押圧を受けて摺動可能なピストン66と、シリンダ62の端部に取り付けられたエンドプレート64と、エンドプレート64とピストン66との間に介在しピストン66に対してソレノイド61の電磁力の向きとは逆向きに付勢力を付与するスプリング68と、を備え、ソレノイド61を間欠的に駆動してピストン66を往復動させることにより油圧を発生させるピストンポンプとして構成されている。エンドプレート64には、吸入ポート62aからの作動油の流入は許可するがその逆流は禁止する吸入用の逆止弁が内蔵されており、ピストン66には、吐出ポート62bへの作動油の流出は許可するがその逆流は禁止する吐出用の逆止弁が内蔵されている。
ソレノイド61は、底付き円筒部材としてのケース61aに電磁コイル61b,可動子としてのプランジャ61c,固定子としてのコア61dが配置されており、電磁コイル61bに電流を印加することにより形成される磁気回路によってプランジャ61cを吸引することによりプランジャ61cの先端に当接するシャフト61eを押し出す。
シリンダ62は、その内壁とエンドプレート64とピストン66とにより囲まれる空間により第1のポンプ室69aが形成されている。シリンダ62は、ソレノイド61の電磁力によりピストン66が押し出されている状態から電磁力が解除されてスプリング68の付勢力によりピストン66が押し戻されると、第1のポンプ室69a内の容積が大きくなる方向に変化するため、第1のポンプ室69aが吸入ポート62a側の圧力よりも減圧されて作動油を吸入し、ソレノイド61の電磁力によりピストン66が押し出されると、第1のポンプ室69a内の容積が小さくなる方向に変化するため、第1のポンプ室69aが吐出ポート62b側の圧力よりも増圧されて作動油を吐出する。
また、シリンダ62は、ソレノイド61が取り付けられた付近に、全周に亘って彫り込まれた溝63aを挟んでピストン66の本体部分66aが摺動する摺動面63bとこの摺動面63bよりも小さい内径でピストン66のシャフト部66bが摺動する摺動面63cとが段差をもって形成されており、ピストン66が挿入された状態で溝63aとピストン66の本体部分66aの背面とにより囲まれる空間(第2のポンプ室69b)を形成する。この空間は、ソレノイド61の電磁力によりピストン66が押し出されると、容積が大きくなる方向に変化し、スプリング68の付勢力によりピストン66が押し戻されると、容積が小さくなる方向に変化する。また、ピストン66は、第1のポンプ室69a側から圧力を受ける受圧面積が第2のポンプ室69b側から圧力を受ける受圧面積よりも大きくなるため、ピストン66が往復動したときの第1のポンプ室69aの容積変化は第2のポンプ室69bの容積変化よりも大きくなる。したがって、ソレノイド61の電磁力によりピストン66が押し出されると、第1のポンプ室69aの容積が減少する分と第2のポンプ室69bの容積が増加する分との差分に相当する量の作動油が第1のポンプ室69aからピストン66に内蔵されている吐出用の逆止弁,第2のポンプ室69bを介して吐出ポート62bから吐出されることになり、ソレノイド61の電磁力を解除してスプリング68の付勢力によりピストン66が押し戻されると、第2のポンプ室69bの容積が減少する分の作動油が第2のポンプ室69bから吐出ポート62bから吐出されることになる。これにより、ピストン66の一回の往復動により吐出ポート62bから作動油を2回吐出することができるから、吐出ムラを少なくすることができると共に吐出性能を向上させることができる。
こうして構成された実施例の自動車10では、シフトレバーをDポジションとして走行しているときに、車速Vが値0,アクセルオフ,ブレーキスイッチ信号BSWがオンなど予め設定された自動停止条件の全てが成立したときにエンジン12を自動停止する。エンジン12が自動停止されると、その後、ブレーキスイッチ信号BSWがオフなど予め設定された自動始動条件が成立したときに自動停止したエンジン12を自動始動する。こうしたエンジン12の自動始動制御や自動停止制御は、メインECU90が各種検出信号を入力して自動始動条件の成立や自動停止条件の成立を判定し、判定結果に応じた制御指令をエンジンECU15やATECU16に送信することにより行なわれる。
いま、自動停止条件が成立してエンジン12を自動停止し、その後、自動始動条件が成立してエンジン12を自動始動する場合を考える。図6に、エンジン回転速度Neとライン圧PLとC1リレーバルブ70の動作状態と電磁ポンプ60の動作状態とC1圧の時間変化の様子を示す。時刻t1に自動停止条件が成立してエンジン12が自動停止すると、エンジン12の回転速度の低下に伴ってライン圧PL(モジュレータ圧PMOD)も低下し、時刻t2にモジュレータ圧PMODがC1リレーバルブ70の設定圧未満(ライン圧PLで所定圧Pv未満に相当)となると、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通した状態から電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通した状態に切り替わる。したがって、電磁ポンプ60を駆動しておくことにより、クラッチC1に油圧を作用させることができる。実施例では、クラッチC1のクラッチピストンをストロークエンドで保持するために必要な油圧をクラッチC1に作用させるものとした。そして、時刻t3にエンジン12の自動始動条件が成立すると、図示しないスタータモータによりエンジン12のクランキングが開始され、エンジン12の回転速度の上昇に伴ってライン圧PL(モジュレータ圧PMOD)も上昇する。このとき、C1リレーバルブ70はモジュレータ圧PMODが設定圧以上となるまで電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通すると共にリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1との連通を遮断した状態のままとなっているため、この間はリニアソレノイドバルブSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給することはできないが、このC1リレーバルブ70の状態ではドライブ圧用油路52をバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84を介して吐出ポート用油路55に連通させているため、ライン圧PL(ドライブ圧PD)が吐出ポート用油路55に導入されると共に吐出ポート用油路55から入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を介してクラッチC1に供給される(時刻t4)。したがって、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通する状態に切り替わるのを待ってからリニアソレノイドバルブSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給開始するもの(図6中の破線を参照)に比して、クラッチC1に作用させる油圧を早いタイミングで上昇させることができる(図6中の実線を参照)。時刻t5にモジュレータ圧PMODが設定圧以上となると、C1リレーバルブ70はリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通するため、リニアソレノイドバルブSLC1からのSLC1圧がクラッチC1に作用することになり、クラッチC1が完全に係合される。このようにエンジン12が自動停止している最中に電磁ポンプ60からクラッチC1に油圧を供給してクラッチC1をストロークエンド圧で待機させておくことにより、エンジン12が自動始動した直後にクラッチC1を迅速に係合させることができるから、発進をスムーズに行なうことができる。
ここで、C1リレーバルブ70のスプリング76を実施例に比して小さなスプリング荷重のものに置き換えた場合を考える。図7に、エンジン12の運転を停止する際のエンジン回転速度Neとライン圧PLとC1リレーバルブ70の動作状態と電磁ポンプ60の動作状態とC1圧とC1ピストンストロークの時間変化の様子を示す。この場合、C1リレーバルブ70の設定圧は低くなるため、エンジン12を始動する際には、機械式オイルポンプ42の吐出圧(モジュレータ圧PMOD)が実施例に比して低圧の状態からスプール72が移動する。このため、C1リレーバルブ70では、電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通した状態からリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通した状態への切り替わりが早くなり、エンジン12が始動を開始してから比較的早くリニアソレノイドバルブSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給できるようになるから、クラッチC1を素早く係合することができる。一方、エンジン12を停止する際には、スプリング76のスプリング荷重を小さくしたために、モジュレータ圧PMODが実施例に比して低圧の状態となるまでスプール72は移動しない。このため、C1リレーバルブ70では、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通した状態から電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通した状態への切り替わりが遅くなり、図7の破線で示すように、クラッチC1に作用する油圧がストロークエンド圧よりも大幅に低下し、クラッチC1のピストン位置がストロークエンドから離れてしまう。電磁ポンプ60は、吐出能力が機械式オイルポンプ42に比して極めて低く、クラッチC1の再ストロークさせるにはある程度の時間を要するため、この間にアクセルペダルが大きく踏み込まれてエンジン12が始動すると、クラッチC1の係合が間に合わなくなる。実施例では、スプリング76のスプリング荷重を、エンジン12を停止する際にリニアソレノイドSLC1からのSLC1圧がクラッチC1のピストンストロークに必要な油圧以上残存しているうちに、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通した状態から電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通した状態へ切り替わるよう設定するものとした。したがって、C1リレーバルブ70の切り替わりの際にクラッチC1に作用する油圧がストロークエンド圧よりも大幅に低下することはないから、上述した不都合は生じない。
いま、クラッチC1を係合して発進する際にC1リレーバルブ70のスプール74が電磁ポンプ60の吐出ポート62bとクラッチC1とを連通した状態でスティック(固着)している場合を考える。図8は、油圧回路40の動作を説明する説明図である。この場合、C1リレーバルブ70では、入力ポート72bと出力ポート72dとの連通の遮断により、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを遮断しているから、リニアソレノイドSLC1からのSLC1圧ではクラッチC1を係合させることはできない。しかしながら、この状態では、図8に示すように、C1リレーバルブ70は入力ポート72cと出力ポート72dとを連通すると共に連絡ポート72f,72g間を連通し、ドライブ圧用油路52がバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84,吐出ポート用油路55,入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1に連通した状態となるから、ドライブ圧PDがリニアソレノイドバルブSLC1をバイパスしてクラッチC1に供給される。したがって、C1リレーバルブ70のスプール74がスティックしてもクラッチC1を係合して発進することができる。
次に、クラッチC1を係合して走行する際にリニアソレノイドバルブSLC1に故障が生じた場合を考える。なお、クラッチC1を係合して走行する場合としては実施例では前進1速,前進2速,前進3速が該当する(図2の作動表参照)。この場合、C1リレーバルブ70の第2の信号圧用ポート72hには、オンオフソレノイドバルブS1を介してモジュレータ圧PMODが入力されるようになっている。オンオフソレノイドバルブS1がオンされて第2の信号圧用ポート72hにモジュレータ圧PMODが入力されると、スプール72には、スプリング76の付勢力と、第1の信号圧用ポート72aからスプリング76の付勢力と逆方向に作用するモジュレータ圧PMODと、第2の信号圧用ポート72hからスプリング76の付勢力と同方向に作用するモジュレータ圧PMODとが作用する。この状態では、C1リレーバルブ70は入力ポート72cと出力ポート72dとを連通すると共に連絡ポート72f,72g間を連通するため、ドライブ圧用油路52はバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84,吐出ポート用油路55,入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1に連通し、前述した図8と同様の状態となる。即ち、ドライブ圧PDがリニアソレノイドバルブSLC1をバイパスしてクラッチC1に供給されるのである。これにより、リニアソレノイドバルブSLC1に故障が生じてもオンオフソレノイドバルブS1をオンすることにより、クラッチC1を係合して走行することができる。
以上説明した実施例の動力伝達装置20によれば、ドライブ圧用油路52にリニアソレノイドバルブSLC1をバイパスしてバイパス油路の上流側57を接続すると共に電磁ポンプ60の吐出ポート用油路55にチェック弁84を介してバイパス油路の下流側58を接続し、C1リレーバルブ70を、第1の信号圧用ポート72aに作用するモジュレータ圧PMODが設定圧以上のときにリニアソレノイドバルブSLC1(出力ポート用油路53)とクラッチC1(C1用油路56)とを連通し電磁ポンプ60(吐出ポート用油路55)とクラッチC1との連通を遮断しバイパス油路の上流側57と下流側58との連通を遮断し、第1の信号圧用ポート72aに作用するモジュレータ圧PMODが設定圧以上でないときにリニアソレノイドバルブSLC1(出力ポート用油路53)とクラッチC1(C1用油路56)との連通を遮断し電磁ポンプ60(吐出ポート用油路55)とクラッチC1とを連通しバイパス油路の上流側57と下流側58とを連通するよう構成するから、エンジン12を始動する際に、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通する状態に切り替わる前でも機械式オイルポンプ42からの吐出圧をクラッチC1に供給することができる。この結果、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通する状態に切り替わるのを待ってからリニアソレノイドバルブSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給開始するものに比して、クラッチC1に作用させる油圧を早いタイミングで上昇させることができ、クラッチC1を素早く係合させることができる。
また、本発明の動力伝達装置20によれば、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを遮断している状態では、入力ポート72cと出力ポート72dとを連通すると共に連絡ポート72f,72g間を連通して、ドライブ圧用油路52をバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84,吐出ポート用油路55,入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1に連通させるから、C1リレーバルブ70のスプール74がスティックしてリニアソレノイドSLC1からのSLC1圧をクラッチC1に供給できないときでも、ドライブ圧PDをリニアソレノイドバルブSLC1をバイパスしてクラッチC1に供給することができ、クラッチC1を係合して発進することができる。
また、本発明の動力伝達装置20によれば、C1リレーバルブ70を、オンオフソレノイドバルブS1を介してモジュレータ圧PMODが入力する第2の信号圧用ポート72hを設けているから、クラッチC1を係合して走行する際にリニアソレノイドバルブSLC1に故障が生じたときにはオンオフソレノイドバルブS1をオンとして第2の信号圧用ポート72hにモジュレータ圧PMODを作用させることにより、C1リレーバルブ70の連絡ポート72f,72g間を連通し、ドライブ圧用油路52をバイパス油路の上流側57,連絡ポート72f,72g,バイパス油路の下流側58,チェック弁84,吐出ポート用油路55,入力ポート72c,出力ポート72d,C1用油路56を順に介してクラッチC1に連通することができる。これにより、リニアソレノイドバルブSLC1に故障が生じてもオンオフソレノイドバルブS1をオンすることにより、クラッチC1を係合して走行することができる。
実施例の動力伝達装置20では、リニアソレノイドバルブSLC1とクラッチC1との連通と電磁ポンプ60とクラッチC1との連通との切り替えと、バイパス油路の上流側57と下流側58との連通と遮断との切り替えを単一のバルブ(C1リレーバルブ70)により行なうものとしたが、これらの切り替えを別々のバルブにより行なうものとしてもよい。変形例の油圧回路140を図9に示す。変形例の油圧回路140は、図示するように、C1リレーバルブ70に代えて、C1リレーバルブ170とバイパスバルブ270とを備える。C1リレーバルブ170は、各種ポートが形成されたスリーブ172と、スリーブ172内を摺動して各ポート間の継断を行なうスプール174と、スプール端面を押圧するスプリング176と、を備える。スリーブ172には、各種ポートとして、モジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング176の付勢力と逆方向に押圧される信号圧として入力する第1の信号圧用ポート172aと、出力ポート用油路53に接続されSLC1圧を入力する入力ポート172bと、吐出ポート用油路55に接続され電磁ポンプ60からの吐出圧を入力する入力ポート172cと、クラッチC1のC1用油路56に接続された出力ポート172dと、チェック弁82が取り付けられたドレン用油路59に接続されたドレンポート172eと、オンオフソレノイドバルブS1を介して導入されるモジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング76の付勢力と同方向に押圧される信号圧として入力する第2の信号圧用ポート72hとが形成されている。一方、バイパスバルブ270も、同様に、各種ポートが形成されたスリーブ272と、スリーブ272内を摺動して各ポート間の継断を行なうスプール274と、スプール端面を押圧するスプリング276と、を備える。スリーブ272には、各種ポートとして、モジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング176の付勢力と逆方向に押圧される信号圧として入力する第1の信号圧用ポート272aと、ドライブ圧用油路52にバイパス油路の上流側57を介して接続された連絡ポート272fと、バイパス油路の下流側58に接続された連絡ポート272gと、オンオフソレノイドバルブS1を介して導入されるモジュレータ圧PMODをスプール端面がスプリング76の付勢力と同方向に押圧される信号圧として入力する第2の信号圧用ポート272hとが形成されている。
実施例の動力伝達装置20では、バイパス油路の上流側57をドライブ圧用油路52に接続すると共にバイパス油路の下流側58を吐出ポート用油路55に接続することにより、C1リレーバルブ70がリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポート48bとクラッチC1とを連通する状態に切り替わる前でもドライブ圧PDをバイパス油路を介してクラッチC1に供給できるようにしたが、バイパス油路の上流側57をライン圧用油路51に接続することによりライン圧PDをクラッチC1に供給できるようにするものとしてもよいし、バイパス油路の上流側57を出力ポート用油路53に接続することによりSLC1圧をクラッチC1に供給できるようにするものとしてもよい。
実施例の動力伝達装置20では、逆止弁84をバイパス油路の下流側58に取り付けるものとしたが、バイパス油路の上流側57に取り付けるものとしてもよい。
実施例の動力伝達装置20では、クラッチC1を係合して走行する際にリニアソレノイドバルブSLC1に故障が生じたときでもクラッチC1の係合を維持するために、C1リレーバルブ70にオンオフソレノイドバルブS1を介してモジュレータ圧PMODを入力する第2の信号圧用ポート72hを形成するものとしたが、これを省略するものとしてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「原動機」に相当し、クラッチC1〜C3やブレーキB1,B2が「摩擦係合要素」に相当し、機械式オイルポンプ42が「機械式ポンプ」に相当し、レギュレータバルブ44およびリニアソレノイドバルブSLC1が「調圧弁」に相当し、電磁ポンプ60が「電動式ポンプ」に相当し、C1リレーバルブ70が「切替機構」に相当し、バイパス油路の上流側57および下流側58が「バイパス油路」に相当し、チェック弁84が「逆止弁」に相当する。また、C1リレーバルブ70の第1の信号圧用ポート72aが「第1の信号圧用ポート」に相当し、連絡ポート72fが「第1の連絡ポート」に相当し、連絡ポート72gが「第2の連絡ポート」に相当し、スプール74が「スプール」に相当し、スプリング76が「付勢部材」に相当する。また、C1リレーバルブ70の入力ポート72bが「第1の入力ポート」に相当し、入力ポート72cが「第2の入力ポート」に相当し、出力ポート72dが「出力ポート」に相当する。また、オンオフソレノイドバルブS1が「供給弁」に相当し、第2の信号圧用ポート72hが「第2の信号圧用ポート」に相当する。ここで、「原動機」としては、内燃機関としてのエンジン12に限定されるものではなく、電動機など、如何なるタイプの原動機であっても構わない。「動力伝達機構」としては、前進1速〜6速の6段変速の変速機構30に限定されるものではなく、4段変速や5段変速,8段変速など、如何なる段数の変速機構を備えるものとしても構わない。また、「動力伝達機構」としては、自動変速機に限定されるものでもなく、例えば、エンジン12のクランクシャフト14にクラッチを介して直接にデファレンシャルギヤ28を介して車輪19a,19bに接続されるなど、摩擦係合要素を介して原動機からの動力を車輪側に伝達できるものであれば如何なるものであっても構わない。「電動式ポンプ」としては、電磁ポンプ60に限られず、電動機からの動力により作動する電動ポンプなど、電力の供給を受けて作動して油圧を発生させるものであれば、如何なるタイプのポンプであっても構わない。「調圧弁」としては、ライン圧PLから最適なクラッチ圧を生成してクラッチをダイレクトに制御するダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして構成するものとしたが、リニアソレノイドをパイロット制御用のリニアソレノイドとして用いて別途コントロールバルブを駆動することによりこのコントロールバルブによりクラッチ圧を生成してクラッチを制御するものとしても構わない。また、「バイパス油路」としては、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する機械式ポンプからの油圧として、レギュレータバルブ44により生成されたライン圧PLを供給するものに限定されるものではなく、エンジン始動時にライン圧PLと連動して上昇するものであれば、機械式ポンプからの油圧に相当し、例えば、リニアソレノイドSLC1からの出力圧(SLC1圧)やモジュレータ圧PMODを供給するようにしてもよい。また、「切替機構」としては、ライン圧PLを降圧したモジュレータ圧PMODを信号圧とするものに限定されるものではなく、機械式ポンプを油圧源とした油圧であれば、ライン圧PL、ソレノイドバルブで減圧された油圧など適宜変更可能である。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、自動車産業に利用可能である。
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、15 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、16 自動変速機用電子制御ユニット(ATECU)、18a,18b 車軸、19a,19b 車輪、20 動力伝達装置、21 入力軸、22 出力軸、24 トルクコンバータ、24a ポンプインペラ、24b タービンランナ、26 ギヤ機構、28 デファレンシャルギヤ、30 変速機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、36a,36b サンギヤ、37 リングギヤ、38a ショートピニオンギヤ、38b ロングピニオンギヤ、39 キャリア、40,140 油圧回路、41 ストレーナ、42 機械式オイルポンプ、44 レギュレータバルブ、46 マニュアルバルブ、46a 入力ポート、46b Dポジション用出力ポート、46c Rポジション用出力ポート、48a 入力ポート、48b 出力ポート、48c ドレンポート、51 ライン圧用油路、52 ドライブ圧用油路、53 出力ポート用油路、54 吸入ポート用油路、55 吐出ポート用油路、56 C1用油路、57 バイパス油路の上流側、58 バイパス油路の下流側、59 ドレン用油路、60 電磁ポンプ、61 ソレノイド、62 シリンダ、62a 吸入ポート、62b 吐出ポート、64 エンドプレート、66 ピストン、68 スプリング、69a 第1のポンプ室、69b 第2のポンプ室、70,170 C1リレーバルブ、72,172 スリーブ、72a,172a,272a 第1の信号圧用ポート、72b,172b 入力ポート、72c,172c 入力ポート、72d,172d 出力ポート、72e,172e ドレンポート、72f,72g 連絡ポート、72h,172h,272h 第2の信号圧用ポート、74,174 スプール、76,176 スプリング、82,84 チェック弁、90 メイン電子制御ユニット(メインECU)、92 シフトポジションセンサ、94 アクセルペダルポジションセンサ、96 ブレーキスイッチ、98 車速センサ、270 バイパスバルブ、272 スリーブ、272f,272g 連絡ポート、274 スプール、276 スプリング、SLT,SLC1 リニアソレノイドバルブ、S1 オンオフソレノイドバルブ、C1〜C3 クラッチ、B1,B2 ブレーキ、F1 ワンウェイクラッチ。

Claims (6)

  1. 原動機を備える車両に搭載され、該原動機からの動力を油圧駆動の摩擦係合要素を介して駆動輪側に伝達する動力伝達装置であって、
    前記原動機からの動力により駆動して油圧を発生させる機械式ポンプと、
    該機械式ポンプからの油圧を調圧する調圧弁と、
    電力の供給を受けて駆動して油圧を発生させる電動式ポンプと、
    前記機械式ポンプからの油圧に基づき生成される信号圧により作動する1以上の切替弁により構成され、前記信号圧が設定圧以上のときには前記調圧弁の出力圧を前記摩擦係合要素の油圧サーボに供給可能な第1の状態とし、前記信号圧が前記設定圧未満のときには前記電動式ポンプからの油圧を前記油圧サーボに供給可能な第2の状態とする切替機構と、
    前記電動式ポンプと前記切替機構とに接続された電動式ポンプ用油路と、
    前記電動式ポンプ用油路に接続され、前記機械式ポンプからの油圧を前記切替機構を介して前記電動式ポンプ用油路に供給するバイパス油路と、
    前記バイパス油路に配置され、前記機械式ポンプから前記油圧サーボへの油圧の供給を許可し、前記電動ポンプから前記機械式ポンプへの油圧の供給を禁止する逆止弁と、
    を備え、
    前記切替機構は、さらに、前記第1の状態にあるときには前記バイパス油路から前記電動式ポンプ用油路への油圧の供給を遮断し、前記第2の状態にあるときには前記バイパス油路から前記電動式ポンプ用油路へ油圧が供給されるよう構成されてなる
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  2. 請求項1記載の動力伝達装置であって、
    前記切替機構は、前記機械式ポンプから吐出された油が流れる機械式ポンプ用油路に接続された第1の信号圧用ポートと前記バイパス油路の上流側に接続された第1の連絡ポートと前記バイパス油路の下流側に接続された第2の連絡ポートとが形成されると共に、前記第1の連絡ポートおよび前記第2の連絡ポートの連通と遮断とを行なうスプールと該スプールを付勢する付勢部材とを有し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用しているときには該油圧により前記スプールを一端側に移動させることにより前記第1の連絡ポートと前記第2の連絡ポートとの連通を遮断し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用していないときには前記付勢部材の付勢力により前記スプールを他端側に移動させることにより前記第1の連絡ポートと前記第2の連絡ポートとを連通するよう構成され、
    前記バイパス油路の下流側に、前記電動式ポンプ用油路が接続されてなる
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  3. 請求項2記載の動力伝達装置であって、
    前記切替機構は、さらに、前記調圧弁から出力された油が流れる調圧弁用油路に接続された第1の入力ポートと前記電動式ポンプ用油路に接続された第2の入力ポートと前記油圧サーボに連通する油圧サーボ用油路に接続された出力ポートとが形成され、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用しているときには該油圧により前記スプールを一端側に移動させることにより前記第1の入力ポートと前記出力ポートとを連通すると共に前記第2の入力ポートと前記出力ポートとの連通を遮断し、前記第1の信号圧用ポートに前記設定圧以上の油圧が作用していないときには前記付勢部材の付勢力により前記スプールを他端側に移動させることにより前記第1の入力ポートと前記出力ポートとの連通を遮断すると共に前記第2の入力ポートと前記出力ポートとを連通する1つの切替弁により構成されてなる
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  4. 請求項記載の動力伝達装置であって、
    前記機械式ポンプ用油路に取り付けられ、該機械式ポンプからの油圧の供給と遮断とが可能な供給弁を備え、
    前記切替機構は、さらに前記機械式ポンプ用油路に前記供給弁を介して接続された第2の信号圧用ポートが形成され、前記第2の信号圧用ポートに油圧が作用しているときには該油圧と前記付勢部材の付勢力とにより前記スプールを前記他端側に移動させることにより前記第2の状態とするよう構成されてなる
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  5. 前記電動式ポンプは、電磁ポンプである請求項1ないしいずれか1項に記載の動力伝達装置。
  6. 前記機械式ポンプが作動しているときには該機械式ポンプからの油圧が前記油圧サーボに供給されるよう前記調圧弁を制御し、前記機械式ポンプが作動していないときには前記電動式ポンプからの油圧が前記油圧サーボに供給されるよう該電動式ポンプを制御する制御手段を備える請求項1ないしいずれか1項に記載の動力伝達装置。
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