ところで、上記した特許文献1に記載の加圧装置では、エアー等の流体を用いて、流体圧シリンダ内への流体の供給、流体シリンダ外への流体の排出を制御することにより、流体シリンダ内の圧力を調整して押圧体による被加圧体への押圧力を調整している。したがって、モータの回転を制御するサーボ機構による加圧装置の応答特性と比較すれば、流体圧シリンダを用いた加圧装置では応答特性が悪いという問題がある。したがって、加圧装置による被加圧体への加圧を開始するとき、または被加圧への加圧を停止するときに遅れが生じ、被加圧体を適切に加圧できないおそれがある。
一方、ボールねじを用いたサーボ機構による加圧装置では、モータの回転力をボールねじにより押圧体による加圧力に変換するように構成されているが、装置の構造上、所謂、バックラッシュ等の不具合が生じるおそれがある。したがって、流体圧シリンダを用いた加圧装置と同様に、加圧装置による被加圧体への加圧を開始するとき、または被加圧への加圧を停止するときに遅れが生じ、被加圧体を適切に加圧できないおそれがあった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被加圧体を適切に加圧することのできる技術を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、被接合物を適切に加圧することで、被接合物どうしを良好に接合することのできる技術を提供することを第2の目的とする。
上記した第1の目的を解決するために、本発明にかかる加圧装置は、上下方向に移動可能に設けられたマグネットモータシャフトと、前記マグネットモータシャフトが挿通された筒状のモータコイルとを有するシャフトモータと、前記マグネットモータシャフトの前記上下方向における下端に設けられ、前記マグネットモータシャフトと一体的に移動して被加圧体を前記マグネットモータシャフトの直下で押圧する押圧体と、前記マグネットモータシャフトの前記上下方向における上端に設けられ、前記マグネットモータシャフトを少なくとも前記マグネットモータシャフトおよび前記押圧体の合計重量とほぼ同じ牽引力で前記マグネットモータシャフトの直上方向に牽引して前記合計重量をキャンセルするキャンセル手段と、前記押圧体による前記被加圧体への加圧力を検出する加圧力検出手段と、前記モータコイルへの電流を制御して前記マグネットモータシャフトを上下方向に駆動する制御手段とを備え、前記キャンセル手段は、流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダ内にスライド可能に配設され、前記流体圧シリンダを第1および第2圧力室に分離するピストンヘッドと、一端が該ピストンヘッドに連結されて他端が前記流体圧シリンダ外に導出されて前記マグネットモータシャフトの上端と連結されて前記マグネットモータシャフトと同軸に配置されたピストンシャフトとを有するピストン体と、減圧弁を介して前記第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整して、前記マグネットモータシャフトの上端に前記ピストンシャフトを介して連結された前記ピストンヘッドをほぼ一定の前記牽引力で常に前記直上方向に牽引する流体回路とを備え、前記制御手段は、少なくとも前記押圧体による前記被加圧体の加圧時に、前記加圧力検出手段により検出される加圧力が前記被加圧体の材質に応じて予め設定された所定の加圧力となるように前記モータコイルへの電流を制御することを特徴としている(請求項1)。
また、本発明にかかる加圧方法は、上下方向に移動可能に設けられたマグネットモータシャフトと、前記マグネットモータシャフトが挿通された筒状のモータコイルとを有するシャフトモータと、前記マグネットモータシャフトの前記上下方向における下端に設けられ、前記マグネットモータシャフトと一体的に移動して被加圧体を前記マグネットモータシャフトの直下で押圧する押圧体と、前記マグネットモータシャフトの前記上下方向における上端に設けられ、前記マグネットモータシャフトを少なくとも前記マグネットモータシャフトおよび前記押圧体の合計重量とほぼ同じ牽引力で前記マグネットモータシャフトの直上方向に牽引して前記合計重量をキャンセルするキャンセル手段と、前記押圧体による前記被加圧体への加圧力を検出する加圧力検出手段とを備える加圧装置を用いて前記押圧体により前記被加圧体を加圧する加圧方法において、前記キャンセル手段が備える流体圧シリンダ内にスライド可能に配設されたピストンヘッドにより分離される前記流体圧シリンダの第1および第2圧力室に供給する流体の圧力を流体回路により調整して、他端が前記流体圧シリンダ外に導出されて前記マグネットモータシャフトの上端と連結されて前記マグネットモータシャフトと同軸に配置されたピストンシャフトの一端に連結された前記ピストンヘッドをほぼ一定の前記牽引力で常に前記直上方向に牽引し、少なくとも前記押圧体による前記被加圧体の加圧時に、前記加圧力検出手段により検出される加圧力が前記被加圧体の材質に応じて予め設定された所定の加圧力となるように前記モータコイルへの電流を制御することを特徴としている(請求項6)。
このように構成された発明では、少なくとも押圧体による被加圧体の加圧時に、加圧力検出手段により検出される加圧力が被加圧体の材質、形状、大きさ等に応じて予め適切に設定された所定の加圧力となるようにモータコイルへの電流を制御している。したがって、モータコイルへの通電によりマグネットモータシャフトが駆動されて、被加圧体は押圧体により予め設定された所定の加圧力で加圧されるため、確実に押圧体で被加圧体を加圧することができるとともに、被加圧体を押圧体で加圧しすぎることなく適切に加圧できる。
また、マグネットモータシャフトの上端に設けられたキャンセル手段により、少なくともマグネットモータシャフトおよび押圧体の合計重量とほぼ同じ牽引力で上方にマグネットモータシャフトを牽引して合計重量をキャンセルしている。したがって、被加圧体にはマグネットモータシャフトおよび押圧体の合計重量が押圧体を介して加わることがないため、モータコイルへ通電されることにより発生した加圧力(シャフトモータのトルク)のみを押圧体を介して被加圧体に加えることができる。そのため、特に、被加圧体が非常に小さい部品であったり、高加圧力を加えられないものであるときに、シャフトモータで発生した比較的小さい加圧力のみを被加圧物に精度よく加えることができるので非常に都合がよい。
また、所謂、リニアモータの一種であるシャフトモータを駆動することにより被加圧体を押圧体で加圧しているため、エアー等の流体を用いた流体シリンダによる加圧装置や、モータの回転力をボールねじにより押圧体の加圧力に変換するサーボ機構による加圧装置などと比較すれば、制御信号に対する応答特性が非常によい。また、シャフトモータは、マグネットモータシャフトと筒状のモータコイルとが非接触であり、さらに、モータコイルがコアを備えないコアレスのリニアモータであるため、コアありのリニアモータに発生する、所謂、コギングが発生せず、また、シャフトモータの構造上、ボールねじを用いたサーボ機構に発生するおそれのある、所謂、バックラッシュのような不具合も発生しない。
したがって、マグネットモータシャフト(押圧体)の移動制御時に、外乱となるコギングやバックラッシュが発生しないため、上記した従来の加圧装置に比べて、被加圧体への加圧を開始するときや、被加圧体への加圧を停止するときに遅れが生じるおそれがない。そのため、より精度よく、押圧体による被加圧体への加圧力が所定の加圧力となるように制御できるので、適切に被加圧体を加圧できずに被加圧体が破損したり、非常に高い加圧力で被加圧体を加圧することにより被加圧体が破壊したりするのを効果的に防止できる。
ところで、従来、シャフトモータはその位置決め精度の高さから、本願のマグネットモータシャフトを固定部とし、本願のモータコイルを移動部として位置決め装置または部品搬送装置のアクチュエータとして採用されていた。すなわち、シャフトモータは従来では、位置決め装置としてのX−Yステージのアクチュエータとして採用されたり、加工装置へ加工部品を搬送する部品搬送装置のアクチュエータとして採用されていた。しかしながら、本願発明者は、このようなシャフトモータの位置決め精度だけにではなく、シャフトモータの駆動時に移動部の移動状態を高精度に制御できることに着目した。そして、シャフトモータのモータコイルを固定部とし、マグネットモータシャフトを移動部とする従来なかった構成とし、従来では一切着目されていなかった移動部、すなわち、マグネットモータシャフトの移動状態を制御して荷重(トルク)制御を行うことにより、シャフトモータを加圧装置のアクチュエータとして採用したことが本願発明の大きな特徴の一つである。
このような構成とすることにより、シャフトモータが有する優れた制御特性に基づいて、従来の加圧装置では達成できなかった精度の高い荷重制御が行えるため、被加圧物に対して、より適切に加圧力を加えることができる。また、本願発明の加圧装置は、精度が非常に高い荷重制御に加え、従来通り、高い位置精度も有しているため、次のような特有の効果も奏することもできる。すなわち、マグネットモータシャフトに、その移動方向と同じ方向、または逆の方向に外乱としての外力が加えられても、シャフトモータは加えられた外力に抗してマグネットモータシャフトの現在の位置を維持する能力が非常に高い。したがって、例えば、被加圧物を押圧体で加圧するのに伴い被加圧体に生じる応力が増大しても、シャフトモータは、マグネットモータシャフトが増大した応力により本来の移動方向とは逆の方向に移動するのを防止でき、マグネットモータシャフトの加圧方向への適正な移動状態を維持できるため、本願発明による加圧装置は被加圧物を常に適切に加圧できる。このように、本願発明による加圧装置は、所謂、サーボ剛性が非常に高い。
また、マグネットモータシャフトが移動することで発生する加圧力は、マグネットモータシャフトの移動方向であるマグネットモータシャフトの直下で押圧体により直接的に被加圧物に加えられる。したがって、モータコイルが通電されることによりシャフトモータで発生したトルクを、非常に効率よく被加圧物に加えることができる。また、本願発明によるシャフトモータは、マグネットモータシャフトが移動するように構成されているため、移動部としてのマグネットモータシャフトの下端に押圧体を設けるだけで、シャフトモータで発生したトルクを押圧体に伝達することができ、マグネットモータシャフトに発生した駆動力を押圧体に伝達するのに特別な伝達機構を必要としないため簡易な構成とすることができる。
さらに、シャフトモータは、駆動対象であるマグネットモータシャフトに非接触で任意の方向に推進力を与えられるため、ボールねじなどの推進のための伝達機構を必要とせず、経時変化も少なく、保守性および信頼性に非常に優れており、これを用いた加圧装置の耐久性の向上を図ることができる。以上のように、当業者が主にシャフトモータの位置決め精度のみに着目していたところ、シャフトモータの駆動時に移動部の移動状態を非常に高精度に制御できることに着目し、さらに、シャフトモータの移動部を従来と異なるマグネットモータシャフトで構成して、シャフトモータを加圧装置のアクチュエータとして採用したことは、本願発明者の独自の着想によるものである。したがって、本願発明の加圧装置およびこの加圧装置を用いることによる加圧方法は、上記したように、従来着目されていたシャフトモータの位置精度特性だけにではなく、シャフトモータの移動部(マグネットモータシャフト)の移動状態の制御特性に着目し、かつ、シャフトモータの構成を従来なかった構成とすることで初めて成し得たものである。
なお、押圧体による被加圧体への加圧力は、被加圧体の材質、形状、大きさ等に応じて適切に設定すればよく、被加圧体を試験加圧することによって加圧力を決定してもよいし、被加圧体の材質の硬度等から算出される理論値を加圧力として設定してもよい。要は、被加圧体を確実に加圧変形できるとともに、該被加圧体を過剰な加圧力により破壊することのない加圧力であればよい。
ところで、加圧装置のアクチュエータとして、従来の流体を用いた流体圧シリンダや、ボールねじを用いたサーボ機構と比較すれば、本願のシャフトモータが生成することのできる加圧力(トルク)は小さいものとなる。そこで、前記キャンセル手段は、少なくとも前記押圧体による前記被加圧体の加圧時に、前記流体回路が、減圧弁を介して前記第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整して、前記マグネットモータシャフトの上端に前記ピストンシャフトを介して連結された前記ピストンヘッドをほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧することにより、前記マグネットモータシャフトをほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧する加圧力追加手段としての機能をさらに備える構成としてもよい(請求項2)。
このような構成とすれば、所定の形状に変形するのにシャフトモータが生成することのできるトルク以上の加圧力を必要をする被加圧体を加圧するときには、加圧力追加手段によりマグネットモータシャフトをほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧することができる。したがって、シャフトモータにより生成された加圧力に、加圧力追加手段による追加加圧力を追加して被加圧体に応じた適切な加圧力で被加圧体を加圧できるため、被加圧体を加圧して確実に変形できる。
なお、上記したように、本願の加圧装置が備えるシャフトモータは、非常に高い位置決め精度特性を有している。したがって、押圧体による被加圧体の加圧時、すなわち、マグネットモータシャフトの移動制御時に、追加加圧力手段によりマグネットモータシャフトを下方に加圧しても、マグネットモータシャフト(押圧体)の加圧方向への適正な移動状態を維持できる。
また、流体圧シリンダの第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整することによる差圧を利用してマグネットモータシャフトを上方に牽引するため、容易にほぼ一定の牽引力でマグネットモータシャフトを上方に牽引できる。また、流体圧シリンダを用いたキャンセル手段の構成上、キャンセル手段が、牽引力以外に摩擦力などの外乱を発生する可能性が極めて低いため、シャフトモータが生成するトルクのすべてを加圧力として押圧体に伝達することができ、押圧体による被加圧体への加圧力の制御をより高精度に行うことができる。また、このように構成されたキャンセル手段は、不要な摩擦力などを発生する構造を有さないため、耐久性に非常に優れている。また、不要な摩擦力などが発生しないため、特に低加圧力での圧力制御を高精度に行うことができ、被加圧体が変形するのに追従する押圧体の追従性が向上する。
また、流体圧シリンダの第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整することによる差圧を利用してマグネットモータシャフトを下方に押圧するため、容易にほぼ一定の追加加圧力でマグネットモータシャフトを下方に押圧できる。また、流体圧シリンダを用いた加圧力追加手段の構成上、加圧力追加手段が、追加加圧力以外に摩擦力などの外乱を発生する可能性が極めて低いため、加圧力追加手段が生成した追加加圧力と、シャフトモータが生成するトルクのすべてとを加圧力として押圧体に伝達することができ、押圧体による被加圧体への加圧力の制御をより高精度に行うことができる。また、このように構成された加圧力追加手段は、不要な摩擦力などを発生する構造を有さないため、耐久性に非常に優れている。また、不要な摩擦力などが発生しないため、特に低加圧力での圧力制御を高精度に行うことができ、被加圧体が変形するのに追従する押圧体の追従性が向上する。
また、前記制御手段は、前記押圧体による前記被加圧体の加圧時に、前記加圧力検出手段により検出される加圧力が予め設定された上限加圧力になれば、前記押圧体の下方への移動を停止するように前記モータコイルへの電流を制御するようにしてもよい(請求項3)。
このような構成とすれば、加圧されて被加圧体に生じる応力が増大するのに伴い、押圧体による被加圧体への加圧力が予め適切に設定された所定の上限加圧力になれば、押圧体による被加圧体への加圧を停止する。したがって、予め設定された所定の上限加圧力を超えて被加圧を加圧することにより、被加圧体が破損したり破壊したりするのを未然に防止できる。例えば、被加圧体が合金である場合等、製造過程で被加圧体の硬度にバラつきが生じることにより、押圧体が通常の停止位置に到達する前に、被加圧体に生じる応力が増大して押圧体による被加圧体への加圧力が予め設定された所定の上限加圧力となることがある。しかしながら、押圧体による加圧力が予め設定された所定の上限加圧力になれば、押圧体の下方への移動を停止するため、被加圧体が押圧体により所定の上限加圧力を超える加圧力で過剰に加圧されて破壊したりするのを未然に防止できる。
また、前記マグネットモータシャフトの位置を検出するシャフト位置検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記押圧体による前記被加圧体の加圧時に、前記シャフト位置検出手段によるシャフト位置検出信号に基づき前記押圧体が予め設定された位置に移動したことを検出すれば、前記押圧体の下方への移動を停止するように前記モータコイルへの電流を制御するようにしてもよい(請求項4)。
このような構成とすれば、押圧体による被加圧体の加圧時に、シャフト位置検出手段によるシャフト位置検出信号に基づき押圧体が予め設定された位置に移動したことを検出すれば、前記押圧体の下方への移動を停止するようにモータコイルへの電流を制御するため、押圧体が予め設定した位置を越えて移動することにより、被加圧体が過剰に加圧されて破損したりするのを確実に防止できる。
また、押圧体による被加圧体への加圧を停止した後に、押圧体を、被加圧体への加圧を停止した位置に所定時間、保持するようにモータコイルへの電流を制御してもよい。このような構成とすれば、被加圧体が押圧体によって加圧変形されて押圧体の移動を停止した後、所定の時間は押圧体が停止位置に保持されるため、押圧体を停止位置に保持する間に被加圧体の応力が除去されて、被加圧体を確実に塑性変形して所定の形状につぶれた状態とすることができる。
また、押圧体による被加圧体への加圧を停止した位置から、押圧体による被加圧体への加圧を開始した位置まで押圧体を復帰移動する間、押圧体の移動速度を、押圧体による被加圧体への加圧時の加圧方向へ移動するときの速度と異なる値となるようにモータコイルへの電流を制御してもよい。
このような構成とすれば、被加圧体への加圧を停止した位置から被加圧体への加圧を開始した位置まで押圧体を復帰移動する間、押圧体の移動速度を、加圧方向へ移動するときの速度と異なる値に制御することで、被加圧体を押圧体により加圧変形して押圧体の移動を停止した後、異なる値に設定された速度の大きさを超えない移動速度で徐々に押圧体による被加圧体への加圧力を除去することができる。したがって、被加圧体への押圧体による加圧力を徐々に除去する間に被加圧体の応力が徐々に除去されるため、加圧変形された被加圧体が残留応力によって所定の変形状態から元の形に戻るのを防止できる。なお、押圧体を復帰移動させる間の押圧体の速度は、被加圧体への押圧体による加圧力を徐々に除去することで被加圧体の応力を徐々に除去することのできる速度であればどのような速度であってもよいが、十分に遅い速度とするのがより好ましい。また、押圧体を接触位置まで復帰移動した後は押圧体の移動速度を任意に変更して、押圧体を所定の位置までさらに移動してもよい。
また、上記した第2の目的を解決するために、本発明にかかる接合装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の加圧装置を用いて、前記被加圧体としての被接合物どうしを加圧して接合する接合装置において、前記押圧体に対向配置されたステージを備え、一方の被接合物を前記押圧体で保持するとともに、他方の被接合物を前記ステージで保持し、前記制御手段は、前記押圧体を前記ステージに近接することで、前記被接合物の接合部どうしを加圧して接合することを特徴としている(請求項5)。
また、本発明にかかる接合方法は、請求項8に記載の加圧方法により被接合物どうしを加圧して接合する接合方法において、一方の被接合物を前記押圧体で保持するとともに、他方の被接合物を前記押圧体に対向配置されたステージで保持し、前記押圧体を前記ステージに近接することで、前記被加圧体としての前記被接合物の接合部どうしを加圧して接合することを特徴としている(請求項7)。
このように構成された発明では、押圧体により保持された一方の被接合物と、ステージに保持された他方の被接合物どうしを、所定の加圧力で加圧して、両被接合物の接合部どうしを徐々に押しつぶすことで、被接合物どうしを接合している。したがって、被接合物どうしを加圧する際、接合部が均一につぶれることにより接合部表面に付着した酸化膜や有機物層が除去されて現れた新生面どうしが良好に接触するため、接合部どうしを良好に接合できる。また、被接合物の材質、形状、大きさ等によって押圧体による加圧力を適切に設定しているため、被接合物が破壊したり破損したりするのを未然に防止できる。このように、被接合物どうしを適切に加圧することにより、被接合物を破損することなく、被接合物どうしを良好に接合することができる。
また、押圧体による被接合物の加圧を停止した後に、加圧を停止した位置に押圧体を所定の時間保持するようにモータコイルへの電流を制御すれば、停止位置に押圧体を保持している間に押しつぶれた接合部の応力が除去される。したがって、残留応力によって接合された被接合物どうしが再び剥がれるのを効果的に防止できる。
また、被接合物の接合後、押圧体をステージから離間させて接触位置まで復帰移動させる速度を制御する構成とすれば、押圧体による両被接合物の接合部への加圧力の除去速度を制御することができる。したがって、被接合物の接合後、押圧体による加圧力を被接合物から徐々に除去することができるため、加圧力を両被接合物から徐々に除去していく間に押しつぶされた接合部の応力が徐々に除去され、接合部がつぶれて現れた新生面どうしが接触することで接合した被接合物どうしが接合部の残留応力によって再び剥がれるのを効率よく防止できる。
なお、上記した接合装置および接合方法では、押圧体による被接合物への加圧力は、被接合物の接合部の材質、形状、大きさ等に応じて適切に設定すればよく、被接合物の試験加圧を行うことによって加圧力を決定してもよいし、接合部の材質の硬度等から算出される理論値であっても構わない。要は、接合部を確実に加圧して押しつぶすことができるとともに、接合部を過剰な加圧力によって破壊してしまわない加圧力であればよい。例えば、被接合物がSiウエハーであり、接合部(電極)としてSiウエハーにAuバンプが100個形成されたものである場合、1個のAuバンプあたりに0.3N(120MPa)の加圧力が加わるように30N(0.3N×100個)の加圧力を加えることができる。また、Auバンプの換わりにCuバンプが形成されている場合には、1個のCuバンプあたりに0.5N(200MPa)の加圧力が加わるように50N(0.5N×100個)の加圧力を加えることができる。
また、上記した押圧体による被加圧物への加圧を停止する押圧体の位置としては、例えば、50μmの高さのバンプを形成し、そのうちの先端部分30μmを加圧された際のつぶし代として、バンプが30μm以上つぶれない位置を加圧を停止する位置として設定することができる。
また、接合物の接合部どうしを押しつぶす間、超音波振動印加手段により両被接合物に超音波振動を印加してもよい。
このような構成とすれば、接合部を押圧体により押しつぶす間、超音波振動を印加するため、接合部が押しつぶれる過程で、接合部どうしが押し付けられた状態で超音波振動が印加されることにより、両接合部が相対的に振動することにより接合部間に相対振動が発生し、接合部どうしがこすり合って、接合部表面の埃、酸化膜、有機物層等が効率よく除去されるので、接合部に新生面を効率よく出現させることができ、より効率よく被接合物どうしを接合できる。なお、被接合物どうしを加圧するときの加圧力は、接合部が急速につぶれるのを防止して、接合部に均一に超音波振動エネルギーを与えることのできる速度であればよい。
例えば、この加圧力の値は、バンプの高さ、形状等から理論値として算出することができる。具体的には、50μmの高さのバンプを形成し、そのうちの先端部分30μmを加圧された際のつぶし代とした場合に、この30μmのつぶし代がつぶれる間に十分に超音波振動エネルギーを与えることのできる加圧力を所定の加圧力とすればよい。なお、所定の加圧力としては一定の加圧力である必要はなく、徐々に加圧力を単調増加するようにしてもよい。
また、両被接合物の接合部どうしを押しつぶす初期の段階では、接合部表面の酸化膜等が十分に除去されていないため接合部の接合部分である接合面積は小さい。そのため、被接合物どうしの接合力が小さいので、この状態で大きな超音波振動エネルギーを印加すると被接合物どうしが過剰に振動し、被接合物が破損したり、被接合物どうしの接合位置に位置ずれが生じる原因となる。したがって、接合の初期の段階(被接合物どうしの加圧を開始した段階)においては、比較的、小さい超音波振動エネルギーを印加するのが好ましい。
しかしながら、両被接合物の接合部どうしの加圧が進み、接合部表面の酸化膜等が除去されるのにつれて接合部表面の新生面が増大すると、接合部どうしが既に接合した部分である接合面積が大きくなり、被接合物どうしの接合力も大きくなる。そのため、被接合物の接合を開始した初期の段階に印加した、比較的、小さい超音波振動エネルギーでは両被接合物の両接合部が相対的に振動することによる接合部間の相対振動が十分に発生しなくなるので、被接合物に印加する超音波振動エネルギーを増大するのが好ましい。したがって、両被接合物の接合部どうしを押しつぶす間に印加する超音波振動エネルギーは、接合部が押しつぶれる過程で接合部に現れる新生面が増大して接合面積が増大するのに伴って増大させるのがより好ましい。
なお、具体的には、押圧体による加圧力を線形的に単調増加し両被接合物の接合部が押しつぶれる速度を制御することで接合部に現れる新生面(接合面積)が増大する速度を制御し、この新生面が増大するのに伴って、被接合物に印加する超音波振動エネルギーを増大すればよい。このようにすれば、接合部に現れる新生面が増大して接合面積が増大するのに伴って、被接合物に印加する超音波振動エネルギーを増大することができる。
また、両被接合物の接合部に対する加圧が終了して、接合部の押しつぶしが完了した後も超音波振動を印加し続けると、過剰な超音波振動を印加する原因となり、被接合物が破損するおそれがある。したがって、押圧体による被加圧体への加圧を停止した後は、両被接合物に超音波振動を印加するのを終了する制御を行ってもよい。このような構成とすれば、両被接合物に過剰な超音波振動エネルギーを印加することで被接合物が破損するのを防止することができる。
また、両被接合物の接合部どうしを押しつぶす間、加熱手段により両被接合物を加熱してもよい。
このような構成とすれば、加熱手段によって接合部を溶融させて被接合物どうしを接合することができる。したがって、より低い加圧力で被接合物どうしを接合することができる。なお、接合部の種類としてはハンダ等、比較的低温で溶融する金属を採用するのがより好ましい。
また、マグネットモータシャフトの回転を阻止するガイドをさらに備える構成でもよい。このような構成とすれば、マグネットモータシャフトの移動方向を1方向にのみ限定することができるため、位置精度を向上させることができる。
また、マグネットモータシャフトの少なくともガイドによりガイドされる部分の切断面が多角形状であって、ガイドの切断面はマグネットモータシャフトの切断面とほぼ同形状を有するとともにガイドの内周面に複数のローラーが設けられ、ピストンシャフトはガイドに挿通されている構成でもよい。
このような構成とすると、ガイドの剛性を向上させることができるため、比較的、強い加圧力で被加圧体を押圧体により加圧することができる。また、例えば、上記したような超音波振動、特に、マグネットモータシャフトの軸方向に対してほぼ垂直な方向へ振動する超音波振動を被加圧体に印加しながら被加圧体を加圧する場合等、ガイドの軸方向に対して横方向に力が加わる場合でも、ガイドを上記したような構成とすればガイドの剛性が高いため、効率よく超音波振動エネルギーを被加圧体に伝達することができる。したがって、例えば、上記した加圧装置を用いた接合装置で被接合物どうしを接合する場合には、被接合物に効率よく超音波振動エネルギーを伝達して被接合物どうしを接合することができる。なお、ガイドによってガイドされる部分はマグネットモータシャフトと一体構造であってもよいが、ガイドによってガイドされる部分とマグネットモータシャフトとが分離した構造でも構わない。また、マグネットモータシャフトとガイドとの間に摺動摩擦が発生しても、シャフトモータの優れた位置決め特性および移動精度特性により、確実に適切な加圧力で被加圧体を加圧できる。
また、マグネットモータシャフトの少なくともガイドによりガイドされる部分の切断面が多角形状であって、ガイドがエアーベアリングである構成でもよい。
このような構成とすれば、マグネットモータシャフトとエアーベアリングとの間の摺動摩擦を非常に小さなものとすることができる。したがって、比較的、弱い加圧力で精度よく被加圧体を押圧体により加圧することができる。また、マグネットモータシャフトとエアーベアリングとの間に摺動摩擦がほぼ発生しないため、シャフトモータで生成したトルクのすべてを被加圧体への加圧力とすることができ、非常に高精度に被加圧体を加圧することができる。なお、円柱形状のマグネットモータシャフトを、円筒形状のエアベアリングによりガイドするように構成してもよい。
また、被接合物がウエハーまたはウエハーを分割したチップである構成でもよい。ウエハーとは、例えば、Siのような金属、SiO2、ガラス、イオン酸リチウム、酸化物単結晶(LT)、セラミック系を含む酸化物等で構成され、チップは、一般的にウエハーをダイシングした個片のものを示し、トランジスタや抵抗、コンデンサ、リアクタンス等で構成される。なお、被接合物として、ウエハーどうしや、ウエハーに数百〜数千の接合部(バンプ)が形成されたものどうしを接合する場合、比較的、強い加圧力が必要である。したがって、これらの被接合物どうしを接合する場合には上記した複数のローラーを有するガイドを利用して、強い加圧力で超音波振動を印加して接合するのがより好ましい。
また、被接合物が光素子である構成でもよい。光素子としては、例えば、Ga−As素子等、様々なものがあり、周知のものであればどのようなものを採用しても構わない。なお、これらの素子は比較的微小な素子であり、強い加圧力を加えると破壊される素子が多い。したがって、これらの素子を接合する場合には上記したエアーベアリングを利用して、弱い加圧力で光素子の接合部を溶融して接合するのがより好ましい。
また、上記した接合装置および接合方法で、半導体デバイス、MEMSデバイスまたは光素子デバイスなどのデバイスを形成してもよい。上記した方法で種々のデバイスを形成することで、デバイスの作成過程でウエハー、チップ等を加圧するときに、加圧力を精度よく制御して接合部を均一に押しつぶすことができるので、高精度にデバイスを作成することができる。したがって、微細なバンプで構成される電極の接合が必要となる半導体デバイスやMEMSデバイス、光素子デバイス等を特に精度良く形成することができる。
請求項1、6に記載の発明によれば、少なくとも押圧体による被加圧体の加圧時に、加圧力検出手段により検出される加圧力が被加圧体の材質、形状、大きさ等に応じて予め適切に設定された所定の加圧力となるようにモータコイルへの電流を制御している。したがって、モータコイルへの通電によりマグネットモータシャフトが駆動されて、被加圧体は押圧体により予め設定された所定の加圧力で加圧されるため、確実に押圧体で被加圧体を加圧することができるとともに、被加圧体を押圧体で加圧しすぎることなく適切に加圧できる。また、流体圧シリンダの第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整することによる差圧を利用してマグネットモータシャフトを上方に牽引するため、容易にほぼ一定の牽引力でマグネットモータシャフトをその直上方向に牽引できる。
請求項2に記載の発明によれば、加圧力追加手段によりマグネットモータシャフトをほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧することができるので、シャフトモータにより生成された加圧力に、加圧力追加手段による追加加圧力を追加して被加圧体に応じた適切な加圧力で被加圧体を加圧できる。また、流体圧シリンダの第1および第2圧力室にそれぞれ供給する流体の圧力を調整することによる差圧を利用してマグネットモータシャフトを下方に押圧するため、容易にほぼ一定の追加加圧力でマグネットモータシャフトにより押圧体を直下に押圧できる。
請求項3に記載の発明によれば、押圧体の加圧方向への移動に伴い、加圧された被加圧体に生じる応力が増大することにより、押圧体による被加圧体への加圧力が予め適切に設定された上限加圧力になれば、押圧体による被加圧体への加圧を停止するため、予め設定された上限加圧力を超えて被加圧を加圧することで被加圧体が破損したり破壊したりするのを未然に防止できる。
請求項4に記載の発明によれば、押圧体による被加圧体の加圧時に、シャフト位置検出手段によるシャフト位置検出信号に基づき押圧体が予め設定された位置に移動したことを検出すれば、押圧体による被加圧体への加圧を停止するようにモータコイルへの電流を制御するため、押圧体が予め設定した位置を越えて移動することで被加圧体が過剰に加圧されて破損したりするのを確実に防止できる。
請求項5、7に記載の発明によれば、所定の加圧力で加圧することにより、接合部が均一につぶれることで、接合部表面に現れた新生面どうしが良好に接触するため、接合部どうしを良好に接合でき、さらに、被接合物の材質等に応じて押圧体による加圧力を適切に設定しているため、被接合物が破壊したり破損したりするのを未然に防止できる。
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。図1はこの発明にかかる接合装置の第1実施形態を示す図である。図2は図1に示す接合装置200における加圧装置100を示す拡大模式図であって、(a)は正面図、(b)はシャフトモータ112の構成を示す模式図である。図3は図2に示す加圧装置100のガイド108aを示す図である。図4は図1の接合装置200の第1動作例を示す動作説明図である。図5は図1の接合装置200を用いた被接合物どうしの接合の様子を示す模式図である。図6は被接合物の接合前と接合後の状態を示す模式図である。図7は図1の接合装置200の第2動作例を示す動作説明図である。図8は図1の接合装置200の第3動作例を示す動作説明図である。図1に示す接合装置200では、共振器7(本発明の「押圧体」に相当)が保持する一方の被接合物であり、半導体の接合面に金からなる金属電極(バンプ)20aを有するチップ(ウエハー)20と、共振器7に対向して配置されたステージ10が保持する他方の被接合物である金属電極(バンプ)22aを有する基板(ウエハー)22とを、加圧装置100によって、金属電極20aと金属電極22aとが接触するように加圧するとともに、振動子8および共振器7により超音波振動を印加することで、チップ20と基板22とを接合している。このように、本実施形態では、本発明の「被加圧体」として、被接合物であるチップ20および基板22を加圧している。
図1に示すように、接合装置200は、接合機構27と、ステージ10とステージテーブル12とを有する実装機構28と、位置認識部29と、搬送部30と、制御装置31とを備えている。また、接合機構27は、上下駆動機構25と、押圧体部26を有する加圧装置100とを備え、上下駆動機構25は上下駆動モータ1とボルト・ナット機構2により、上下ガイド3でガイドされながら加圧装置保持部6を上下動させるようになっている。加圧装置保持部6は、ヘッド逃がしガイド5で上下方向にガイドされ、自重をキャンセルするための自重カウンター4に牽引された状態でボルト・ナット機構2に連結されている。そして、この加圧装置保持部6に押圧体部26を有する加圧装置100が結合されている。また、加圧装置100が有する押圧体部26は、チップ20を吸着保持し、内部に共振器ヒーター9が埋設され、後述するシャフトモータ112が有するマグネットモータシャフト110の下端に加圧力センサ114を介して設けられ、マグネットモータシャフト110と一体的に移動してチップ20および基板22を押圧する共振器7と、振動子8とを備えており、共振器7の振動が阻害されないように配設されている。また、押圧体部26の高さは加圧装置保持部6に設けられた押圧体部高さ検出手段24によって検出することができる。また、加圧力センサ(本発明の「加圧力検出手段」に相当)114はロードセルなどにより構成されており、共振器7によるチップ20および基板22への加圧力を検出し、制御装置31に加圧力を検出した検出信号を出力するように構成されている。なお、加圧装置100の構成および動作については後で詳細に述べる。
また、実装機構28は、基板22を吸着保持し、内部にステージヒーター11を内蔵したステージ10と、チップ20に対する基板22の位置を調整するために平行・回転移動自在な移動軸を有するステージテーブル12とを備えている。そして、接合機構27はフレーム34に結合されて、フレーム34は加圧装置100の加圧中心の周辺を囲むように配設された4本の支柱13により架台35と連結されている。このように、共振器ヒーター9およびステージヒーター11により被接合物であるチップ20および基板22を加熱することができる。なお、支柱13およびフレーム34の一部は図示省略している。
また、位置認識部29は、対向配置されたチップ20と基板22の間に挿入して、上下のチップ20と基板22各々の位置認識用のアライメントマークを認識する上下マーク認識手段14と、発光点認識手段33と、チップ20、基板22および共振器7の振幅を検出する振幅検出器(図示省略)と、これらの認識手段14、33および振幅検出器を水平および/または上下移動させる認識手段移動テーブル15とを備えている。また、搬送部30は、基板22を搬送する基板搬送装置16および基板搬送コンベア17と、チップ20を搬送するチップ供給装置18およびチップトレイ19とを備えている。また、制御装置31は、本発明の「制御手段」として機能し、加圧装置100を制御するとともに、接合装置200全体の制御を行う操作部とを備えており、押圧体部高さ検出手段24からの検出信号によって上下駆動機構25を制御して押圧体部26の図1中の矢印Z方向の高さを調節することができる。なお、制御装置31の構成および動作については後で詳細に述べる。
続いて、図1および図2を参照して加圧装置100について詳細に述べる。図2(a)に示すように、加圧装置100は加圧機構101と押圧体部26とを備え、加圧機構101は、シャフトモータ112とエアシリンダ113とを備えている。また、シャフトモータ112は、矢印Zの方向である上下方向に移動可能に設けられたマグネットモータシャフト110と、マグネットモータシャフト110が挿通された筒状のモータコイル111とを有している。また、同図(b)に示すように、本実施形態では、マグネットモータシャフト110は、円筒状のステンレス筒内に磁石が配設されて成り、モータコイル111に制御装置31による制御に基づいて3相交流を通電することにより、マグネットモータシャフト110を任意に上下動することができる。
なお、本実施形態では、モータコイルに3相交流を通電することにより、マグネットモータシャフト110を移動するように構成されているが、所謂、直流ブラシレスモータと同様に直流電流によりシャフトモータ112を駆動してもよい。すなわち、ホール素子などを設けることによりマグネットモータシャフト110のモータコイル111に対する相対的な位置を検出して、検出したマグネットモータシャフト110のモータコイル111に対する相対位置に基づいて直流電流を擬似的な3相交流状のパルス電流に変換し、これをモータコイル111に通電することにより、マグネットモータシャフト110を移動するようにしてもよい。このように、シャフトモータ112の構成については、図2(b)に示す基本構造と同様の構造を有するものであれば、どのようなものであってもよく、シャフトモータ112の駆動形式については本実施形態で説明する駆動形式に限定されるものではない。
また、加圧装置100は、マグネットモータシャフト110のモータコイル111に対する相対的な位置を検出して、シャフト位置検出信号を制御装置31に出力する位置センサ(本発明の「シャフト位置検出手段」に相当)106を備えている。このような位置センサ106としては、種々のリニアセンサを採用することができるが、例えば、位置センサ106として磁気センサを採用すれば、位置センサ106は、マグネットモータシャフト110の移動に伴う磁気の変化を計測することで、マグネットモータシャフト110の位置を検出できる。また、マグネットモータシャフト110にリニアスケールを設け、このリニアスケールを位置センサ106により読取ることで、マグネットモータシャフト110の位置を検出するように構成することもできる。以上のように、位置センサ106としては、マグネットモータシャフト110の位置を確実に検出できるものであれば、どのようなものを採用してもよい。
また、エアシリンダ113は、マグネットモータシャフト110の上端に設けられ、流体圧シリンダ102と、流体圧シリンダ102内にスライド可能に配設され、流体圧シリンダ102の内部を第1および第2圧力室104a,104bに分割するピストンヘッド103aと一端がピストンヘッド103aに連結され他端が流体圧シリンダ102外に導出されてマグネットモータシャフト110の上端と連結されたピストンシャフト103bとを有するピストン体103と、減圧弁105bを介して第1および第2圧力室104a,104bにそれぞれ供給する圧縮空気の圧力を調整してピストンヘッド103aを駆動する流体回路105と、第1および第2圧力室104a,104bの差圧を検出して差圧検出信号を出力する圧力センサ107と、ピストンシャフト103bの回転を阻止するガイド108aとを備えている。このように、この実施形態では、流体として圧縮空気を用いてピストンヘッド103aを駆動している。
また、図1に示す制御装置31は、上記したように、本発明の「制御手段」として機能し、位置センサ106のシャフト位置検出信号および加圧力センサ114の加圧力検出信号に基づいて、モータコイル111に通電することによりシャフトモータ112を制御してマグネットモータシャフト110を上下方向に駆動する。具体的には、制御装置31は、位置センサ106のシャフト位置検出信号に基づきマグネットモータシャフト110に連結された共振器7(押圧体部26)の移動速度を算出する速度算出部31aと、加圧力センサ114の加圧力検出信号に基づき共振器7に保持されたチップ20がステージ10に保持された基板22に接触する接触位置を導出する接触位置導出部(図示省略)と、位置センサ106のシャフト位置検出信号に基づき移動中の共振器7(押圧体部26)の速度が急減する急減位置を導出する急減位置導出部(図示省略)と、上記した速度算出部31a、接触位置導出部、急減位置算出部、加圧力センサ114からの信号に基づき共振器7(押圧体部26)によるチップ20および基板22への加圧力と、共振器7の移動速度を制御する制御部(図示省略)としての機能を備えている。そして、制御装置31は、各検出信号および各導出信号に基づいて、モータコイル111に通電してシャフトモータ112を制御し、マグネットモータシャフト110を上下方向に駆動することで、共振器7およびステージ10に保持されたチップ20および基板22を任意の加圧力で加圧することができるとともに、押圧体部26を任意の移動速度でステージ10に近接、またはステージ10から離間することができる。
また、制御装置31は、圧力センサ107の差圧検出信号を受けて、流体回路105を制御してピストンヘッド103aを駆動する。具体的には、流体回路105は制御装置31により制御されて、常に一定圧の空気を第1圧力室104aに導入して、第1圧力室104aの圧力を一定に保持している。本実施形態では、制御装置31は流体回路105を制御して第1圧力室104aの圧力を調整することで、少なくともマグネットモータシャフト110および押圧体部26の合計重量とほぼ同じ牽引力で、ピストンヘッド103aを上方に押圧することで、マグネットモータシャフト110を上方にほぼ一定の牽引力で牽引してこの合計重量をキャンセルするように構成されている。
また、流体回路105は制御装置31からの信号に応じて減圧弁105bを調整し、調整された圧力および流量の空気を第2圧力室104bに導入することで第2圧力室104bの圧力を調整してピストンヘッド103aを下方に押圧することができる。そして、このようにピストンヘッド103aを下方に押圧することにより、マグネットモータシャフト110を下方に加圧することができる。
すなわち、制御装置31は流体回路105を制御して第1圧力室104aの圧力を調整することで、少なくともマグネットモータシャフト110および押圧体部26の合計重量とほぼ同じ牽引力で、ピストンヘッド103aを上方に牽引することで、マグネットモータシャフト110を上方にほぼ一定の牽引力で牽引してこの合計重量をキャンセルすることができる。また、制御装置31は流体回路105を制御して第2圧力室104bの圧力を調整することで、少なくとも共振器7によるチップ20および基板22の加圧時に、チップ20および基板22の種類に応じた適切な追加加圧力でピストンヘッド103aを下方に押圧することで、マグネットモータシャフト110をほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧することができる。以上のように、エアシリンダ113が、本発明の「キャンセル手段」、「加圧力追加手段」として機能している。
また、流体圧シリンダ102は、断面円形状の空間を有し、この空間に断面円形状のピストンヘッド103aが挿通されている。一方、図3に示すように、ガイド108aは断面多角形状(ここでは十角形状)であって、このガイド108aに、ほぼ同じ断面形状を有するピストンシャフト103bが軸方向にスライド自在に挿通されて、ピストンシャフト103bの回転が阻止されている。具体的には、図3(a)に示すように、この加圧装置100が備えるピストン体103のピストンシャフト103bは、その断面形状が多角形状を有し、図3(b)に示すように、このピストンシャフト103bが、その内周面に複数個の円柱状のローラー108a1が配設されたガイド108aに挿通されている。したがって、このピストンシャフト103bはガイド108aに対して軸方向にスライド可能であるとともに、その回転が阻止される。
以上のように、本実施形態における加圧装置100では、シャフトモータ112の制御系として、位置センサ106からのシャフト位置検出信号による位置フィードバック系、加圧力センサ114からの加圧力検出信号による加圧力フィードバック系が形成されている。すなわち、制御装置31は、シャフト位置検出信号、加圧力検出信号に基づいて、シャフトモータ112が備えるモータコイル111に通電してマグネットモータシャフト110の移動制御を行うことにより、共振器7(押圧体部26)の、高精度な位置決め制御、加圧力制御、移動速度制御を同時に行うことができる。なお、本実施形態では、制御装置31は、少なくとも共振器7によるチップ20および基板22などの被加圧体の加圧時に、加圧力センサ114により検出される加圧力が、チップ20および基板22などの材質に応じて予め設定された所定の加圧力となるようにモータコイル111への電流を制御するように構成されている。
また、本実施形態における加圧装置100では、エアシリンダ113の制御系として、圧力センサ107からの差圧検出信号による圧力フィードバック系が形成されている。すなわち、制御装置31は、差圧検出信号に基づいて、流体回路105が備える減圧弁105bを制御して第2圧力室104bへの流体(圧縮空気)の入出力制御を行うことにより、ピストン体103を上方または下方へ押圧することによる圧力制御を行うことができる。
ところで、従来のエアーを用いた加圧装置(以下「エアサーボ」と称する)のみで、押圧体部26の移動制御および押圧体部26による加圧力制御を行う構成であれば、その構成上、精度のよい制御を行うためには、押圧体部26の構成が変わり、マグネットモータシャフト110と押圧体部26との合計重量が変動すれば、エアサーボのゲイン調整を行わなければならず、非常にメンテナンスが面倒であった。ところが、上記した本実施形態の構成によれば、押圧体部26の移動制御および押圧体部26による加圧力制御をシャフトモータ112で行うため、マグネットモータシャフト110と押圧体部26との合計重量が変動しても、エアシリンダ113によるマグネットモータシャフト110の上方への牽引力、すなわち、第1圧力室104aのエアーの流量を制御して第1圧力室104a内の圧力を微調整するだけで、押圧体部26の移動状態を非常に精度よく制御できる。以上のように、本実施形態の構成によれば、押圧体部26の構成が変わっても、面倒なゲイン調整などの必要がなく、メンテナンスが非常に容易なものとすることができる。また、従来のシャフトモータと異なり、マグネットモータシャフト110が移動部として構成されているので、通電が必要な固定部としてのモータコイル111に容易にケーブルを配線することができる。
なお、圧力制御とは、第2圧力室104bに面したピストンヘッド103aの受圧面積をS2、そこに作用する圧力をP2とし、第1圧力室104aに面したピストンヘッド103aの受圧面積をS1(但し、S2>S1)、そこに作用する圧力をP1(ただし、P1>P2)とすると、圧力P=P2・S2−P1・S1の演算に基づいて、ピストンシャフト103bの他端に設けられるマグネットモータシャフト110に対して任意に設定された値に基づく圧力を与える制御である。
1.第1動作例
続いて、図1、2および図4を参照して接合装置200により被接合物を接合する第1動作例について説明する。まず、チップ20はチップ供給装置18によりチップトレイ19から共振器7に供給され、吸着保持される。また、基板22は、基板搬送装置16により基板搬送コンベア17からステージ10に供給され、吸着保持される。そして、接合面を対向保持されたチップ20と基板22との間に上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15により挿入され、対向保持されたチップ20と基板22各々の位置合わせ用アライメントマークの位置を上下マーク認識手段14により認識する。この後、チップ20の位置を基準として、ステージテーブル12を平行・回転移動することで基板22の位置を移動させてチップ20および基板22の位置のアライメントを行う。
次に、チップ20および基板22の接合位置が整合された状態(金属電極20a、22aの位置が合わされた状態)で、上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15により待避される。続いて、加圧装置保持部6が上下駆動機構25により下降され、チップ20(金属電極20a)と基板22(金属電極22a)が接触する直前で停止されて、その位置で保持される。なお、加圧装置保持部6の高さ方向(矢印Zの方向)の位置は押圧体部高さ検出手段24により検出されており、加圧装置保持部6が停止された後、制御装置31は加圧装置100の制御を開始し、押圧体部26をさらに下降させて、チップ20と基板22とを近接させる。また、制御装置31により、マグネットモータシャフト110および押圧体部26の合計重量とほぼ同じ牽引力で、マグネットモータシャフト110を上方に牽引するようにエアシリンダ113は制御されている。
制御装置31は図4(a)〜(c)に示すように、加圧装置保持部6を、押圧体部26の位置がステージ10からの位置(高さ)ZHとなる位置(待機位置)で停止させた後、加圧装置100の制御を開始して、時刻t0から押圧体部26の下降を予め設定された設定速度であるVDよりも少し速い速度の大きさで開始する。そして、時刻t1で押圧体部26の位置が高さZ0に達したときに加圧力センサ114からの加圧力検出信号に基づいて接触位置導出部によりチップ20と基板22との接触する接触位置Z0を検出し、その後、押圧体部26によるチップ20および基板22への加圧力制御と超音波振動の印加、押圧体部26の移動速度Vの制御を開始する。なお、接触位置導出部は、チップ20と基板22とが接触位置Z0で接触した際に、加圧力検出信号に基づいて加圧力が変化するのを検出することで接触位置Z0を検出することができる。
具体的には、チップ20が基板22に接触した時刻t1から、時刻t2において位置センサ106からの位置検出信号に基づいて急減位置導出部により検出される押圧体部26の移動速度(移動量)Vが急減する急減位置Z1までの間、すなわち、図4(c)の矢印DTの間、図4(b)に示すようにチップ20と基板22を、金属電極20a,22bの材質に応じたほぼ一定の加圧力P0で加圧する。そして、図4(c)に示すように押圧体部26の移動速度Vの大きさが予め設定された設定速度VD以下となるように制御を行う。また、図4(a)に示すように、押圧体部26が下降するのに伴い、金属電極20a、22a(接合部)がつぶれて接合面積Sが増大し、図4(b)に示すように、チップ20と基板22との間の接合面積が増大するのに伴い、チップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEを増大させる。
なお、図4(a)中、Smaxとは押圧体部26が急減位置Z1を超えてチップおよび基板22の破壊を招くおそれのある限界位置ZLまで移動した場合の接合面積の大きさである。また、図4(b)中、Emaxとはチップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEの最大値であり、同図中一点鎖線で示す超音波振動エネルギーEは、押圧体部26の位置が限界位置ZLに達したときに最大値Emaxとなるように増大させている。また、超音波振動を印加している間、図示省略された振幅検出器によりチップ20と基板22との間で相対的な振動が生じていることを確認しつつ超音波振動を印加するとともに、押圧体部26をステージ10へ近接(下降)させている。
また、押圧体部26の移動速度Vは、金属電極20a,22aが押しつぶされることに伴って増大する金属電極20a,22aの応力の大きさが加圧力P0の大きさに近づくにつれて急減し、押圧体部26は時刻t2において急減位置(停止位置)Z1で停止する。そして、押圧体部26が停止した時刻t2において、チップ20および基板22への超音波振動エネルギーEの印加を終了して、その後、時刻t3までの所定の時間STの間、押圧体部26の位置を急減位置(停止位置)Z1に保持する制御を行う。なお、この際、ヒーター9,11によりチップ20および基板22を加熱してアニーリングを行うことで、金属電極20a,22bとの間で拡散が生じ応力を除去することができる。
続いて、一定時間STの間、押圧体部26を急減位置(停止位置)Z1に保持した後、時刻t3において共振器7によるチップ20の吸着を解除し、急減位置(停止位置)Z1から待機位置ZHまで押圧体部26の復帰移動を開始する。この際、押圧体部26の移動が停止した位置Z1から接触位置Z0までの間、すなわち、時刻t3からt4までの間、押圧体部26の移動速度を、設定速度VDと異なる値VUに制御する。すなわち、図4(c)中、矢印UTの間、押圧体部26の移動速度の大きさがVU以下となる制御を行い、図4(b)に示すようにチップ20および基板22への加圧力Pを徐々に除去する。なお、この実施形態では、設定速度VDとVUの大きさを同じ値として制御を行っている。
そして、押圧体部26の位置が接触位置Z0に達した時刻t4から押圧体部26の移動速度の大きさをVUよりも大きくして、押圧体部26が待機位置ZHに達するまで移動させて、押圧体部26が待機位置ZHに達した時刻t5において押圧体部26の移動を停止させる。この後、チップ20が実装された状態でステージ10上に保持された基板22を基板搬送装置16により基板搬送コンベア17へ排出して一連の接合動作が終了する。
以上のように、この第1動作例では、少なくとも共振器7による加圧時に、押圧体部26が、チップ20(金属電極20a)と基板22(金属電極22a)との接触位置Z0から、金属電極20a,22aが加圧されて生じる応力が増大することにより押圧体部26の移動速度Vが急減する急減位置(停止位置)Z1まで移動する間、押圧体部26による加圧力Pを、金属電極20a,22aの材質、形状、大きさ等に応じて適切に設定されたほぼ一定の加圧力P0に保持しつつ、押圧体部26が予め設定された設定速度VD以下の移動速度で移動するように制御している。したがって、押圧体部26の移動に伴って、加圧されて金属電極20a,22aに生じる応力が増大して、この増大した応力が押圧体部26の加圧力P0に近づくにつれて、押圧体部26の加圧方向への移動速度(移動量)が急減するため、確実に押圧体部26でチップ20(金属電極20a)および基板22(金属電極22a)を加圧することができるとともに、チップ20および基板22を押圧体部26で加圧しすぎて破壊することがない。
また、上記した接触位置Z0から急減位置Z1までの間、押圧体部26は設定速度VDの大きさ以下の移動速度で移動してチップ20および基板22を加圧するため、図5(d)に示すように、金属電極20a,22aは図5(b)の状態で徐々につぶれていくため、金属電極20a,22aが急速につぶれることにより、押圧体部26が金属電極20a,22aの変形に追従して移動できないのを防止でき、金属電極20a,22aが不均一に変形するのを防止できる。したがって、チップ20(金属電極20a)および基板22(金属電極22a)を破損させることなく、適切に加圧することができる。
また、上記したように、金属電極20a,22a(接合部)がつぶれる速度を制御して、一定の設定速度VD以下で均一に押しつぶしているため、図6に示すように、金属接合部20a,22aに付着した酸化膜や有機物層等が除去されて現れた金属電極20a,22aの新生面どうしを良好に接触させ、これら金属電極20a,22aどうしを良好に接合することができる。
また、金属電極20a,22aを押圧体部26によって押しつぶす間、超音波振動を印加しているため、金属電極20a,22aどうしが押し付けられた状態で金属電極20a,22a間に相対振動が発生し、こすり合わせられて、金属電極20a,22a表面の埃、酸化膜、有機物層等が効率よく除去される。したがって、金属電極20a,22aに新生面をより効率よく出現させることができ、より効率よくチップ20と基板22とを接合することができる。
また、押圧体部26が急減位置(停止位置)Z1まで移動した後、チップ20および基板22に超音波振動を印加するのを終了しているため、チップ20および基板22に過剰な超音波振動エネルギーEを印加することで、チップ20および基板22が破損してしまうのを防止することができる。
また、押圧体部26の移動が急減位置(停止位置)Z1で停止して、金属電極20a,22bが押圧体部26によって押しつぶされた後、所定の時間STの間、押圧体部26を急減位置(停止位置)Z1に保持している。したがって、押圧体部26を急減位置(停止位置)Z1に保持している間に金属電極20a,22aの応力が除去されるので、図6に示すように、金属電極20a,22aを確実に塑性変形させて表面に新生面が現れた状態とすることができる。また、押圧体部26を急減位置(停止位置)Z1に保持している間に加熱してアニーリングを行っているので、より効率よく金属電極20a,22aの応力を除去することができる。したがって、金属電極20a,22aの残留応力によって、接合されたチップ20および基板22が再び剥がれてしまうことを効率よく防止することができる。
また、押圧体部26を、急減位置(停止位置)Z1から接触位置Z0まで復帰移動させる間、押圧体部26の移動速度Vの大きさがVU以下となるよう制御することで、押圧体部26によるチップ20および基板22への加圧力を徐々に除去しているため、加圧力がチップ20および基板22から徐々に除去される間に金属電極20a,22aの応力が徐々に除去されていくので、押しつぶされた金属電極20a,22aが残留応力によって押しつぶされた状態から元の形に戻ってしまい、再び剥がれてしまうことをさら効率よく防止することができる。
また、ガイド108aによりピストンシャフト103bの回転を阻止しているため、ピストンシャフト103bの移動方向を1方向にのみ限定することができるので、位置精度を向上させることができる。また、図3(b)に示すように、複数の円柱状のローラーが設けられたガイド108aを用いることで、ガイド108aの剛性を向上させることができるため、比較的、強い加圧力Pでチップ20および基板22を押圧体部26により加圧することができる。
また、エアシリンダ113によりマグネットモータシャフト110をほぼ一定の追加加圧力で下方に加圧することができるので、必要に応じて、シャフトモータ112により生成された加圧力に、エアシリンダ113による追加加圧力を追加してチップ20および基板22に応じた適切な加圧力これらを加圧できる。
また、エアシリンダ113によりエアーの差圧を利用することで、容易にほぼ一定の牽引力でマグネットモータシャフト110を上方に牽引でき、容易にほぼ一定の追加加圧力でマグネットモータシャフト110を下方に押圧できる。
なお、上記した接合装置200では、押圧体部26によるチップ20および基板22への加圧力P0は、金属電極20a,22aの材質、形状、大きさ等に応じて適切に設定すればよく、チップ20および基板22の試験加圧を行うことによって加圧力P0を決定してもよいし、金属電極20a,22aの材質の硬度等から算出される理論値として加圧力P0を設定してもよい。要は、金属電極20a,22aを確実に加圧して押しつぶすことができるとともに、金属電極20a,22aを過剰な加圧力によって破壊してしまわない加圧力P0であればよい。例えば、金属電極がAuバンプである場合で、チップ20および基板22との接合面間に50μm×50μmの面積を有するAuバンプが100個形成されている場合、1個のAuバンプあたりに0.3N(120MPa)の加圧力が加わるように30N(0.3N×100個)の加圧力を加えることができる。また、Auバンプの換わりにCuバンプが形成されている場合には、1個のCuバンプあたりに0.5N(200MPa)の加圧力が加わるように50N(0.5N×100個)の加圧力を加えることができる。
また、チップ20および基板22を加圧する際の押圧体部26の設定速度VDは、金属電極20a,22aが急速につぶれるのを防止して、金属電極20a,22aに均一に超音波振動エネルギーEを印加することのできる速度であればよい。例えば、この設定速度VDの値は、バンプ(金属電極20a,22a)の高さ、形状等から理論値として算出することができる。具体的には、50μmの高さのバンプを形成し、そのうちの先端部分30μmを加圧された際のつぶし代とした場合に、この30μmのつぶし代がつぶれる間に十分に超音波振動エネルギーEを与えることのできる移動速度を設定速度VDとすればよい。例えば、上記した形状のバンプがAuバンプである場合には、設定速度を約4mm/sとすることができる。
また、印加する超音波振動エネルギーEの増大のさせ方は、上記した方法に限定されず、指数関数的に増大させてもよいし、対数関数的に増大させても良い。要は、接合面積Sが増大するのに伴って、印加する超音波振動エネルギーEを増大させればよい。
また、実際に接合される接合界面での振幅(チップ20と基板22との間の「相対振動」)を常に接合に最適な値とする方法として、チップ20および基板22の振幅を検出する振幅検出器を複数設け、チップ20と基板22との間の振幅が任意の一定値となるように印加する超音波振動エネルギーEを制御してもよい。また、チップ20または基板22の振幅を振幅検出器により検出し、いずれか一方の振幅が任意の一定値となるように印加する超音波振動エネルギーEを制御してもよい。上述したように、金属電極20a,22a間の接合面積が増大すると、被接合物どうしの接合力が強くなるため、超音波振動エネルギーEを一定とすると徐々に被接合物間の振幅が小さくなる。そこで、チップ20と基板22との間で振幅が一定になるように印加する超音波振動エネルギーEを増大させることで、常に接合界面において一定の振幅が得られるのでより良好に接合を行うことができる。
また、チップ20および基板22間の振幅を求めるためには、複数の振幅検出器を設けて、チップ20および基板22の振幅を同時に測定することが好ましいが、1つの振幅検出器で順番にチップ20および基板22の振幅を測定した後、時間軸をずらして時間軸を重ねた状態で振幅差を計算することで、チップ20および基板22間の振幅を計測することもできる。また、チップ20および基板22が、共振器7およびステージ10に確実に保持されていれば、チップ20および基板22のいずれか一方の振幅を検出するだけでよい。
また、振幅検出器としては、うず電流式、静電容量式、光照射式または音波検出式等、周知のものであればどのようなものを用いても構わない。これらの手段を用いることにより、例えば、レーザードップラー測定器を使用する場合に比べ、低コスト化を達成することができる。
また、この実施形態では、被接合物が金属電極20a,22aを有するチップ20と基板22である場合について説明したが、被接合物としては半導体以外の材料でもよい。また接合部はAu、Al、Cu等が適するが、その他の金属や金属以外のものでも超音波振動を印加することで接合できるものであればよい。
また、被接合物としては、ウエハーをダイシングしたチップ等、どのような形態のものであってもよい。また、接合部としての金属電極は個々に独立した複数のバンプ形状であってもよいし、被接合物間のある領域を、被接合物どうしで封止可能につながった形状であってもよい。また、電極どうしの接合ではなく、被接合物の一方面の全面を接合部として接合してもよい。
また、接合装置の構成としては、図1に示すように被接合物を上下方向(Z方向)で重ね合わせて接合してもよいし、Z方向にほぼ直交する左右方向で重ね合わせて接合する構成でもよい。また、3つ以上の被接合物を重ね合わせて接合してもよい。
また、被接合物の接合面間に生じる「相対振動」とは、適切な加圧力下で、接合部の酸化膜等を除去して被接合物どうしを接合するために必要な振幅が印加されることにより生じる接合界面での滑りである。この「相対振動」の大きさは、接合部の材質、面積などにより異なるが、一例として、0.1μm〜0.5μm程度の振幅とすることができる。
次に、上記した「第1動作例」と異なる動作例である、「第2動作例」および「第2動作例」について説明する。なお、上記した「1.第1動作例」と異なる部分についてのみ説明を行い、その構成および動作が同一な内容については、その説明を省略する。以下で説明する「第2動作例」および「第3動作例」としても、上記した効果と同様の効果を奏することができる。
2.第2動作例
図1、2および図7を参照して接合装置200により被接合物を接合する第2動作例について説明する。図7に示す第2動作例が、上記した第1動作例と異なる点は、共振器7によるチップ20および基板22への加圧時に加圧力Pを徐々に増大し、加圧力センサ114により検出される加圧力が予め設定された加圧力PSになれば、共振器7によるチップおよび基板22への加圧を停止するようにモータコイル111への電流を制御する点である。また、この第2動作例および後述の第3動作例では、少なくともチップ20および基板22への加圧時における押圧体部26の移動速度に関する制御は行っていない。その他の構成および動作は、上記した第1動作例と同様であるため、その構成および動作の説明を省略する。
制御装置31は図7(a)〜(c)に示すように、加圧装置保持部6を、押圧体部26の位置がステージ10からの位置(高さ)ZHとなる位置(待機位置)で停止させた後、加圧装置100の制御を開始して、時刻t0から押圧体部26の下降を予め設定された設定速度であるVDよりも少し速い速度の大きさで開始する。そして、時刻t1で押圧体部26の位置が高さZ0に達したときに加圧力センサ114からの加圧力検出信号に基づいて接触位置導出部によりチップ20と基板22との接触する接触位置Z0を検出し、その後、押圧体部26によるチップ20および基板22への加圧力の制御および超音波振動の印加を開始する。なお、接触位置導出部は、チップ20と基板22とが接触位置Z0で接触した際に、加圧力検出信号に基づいて加圧力が変化するのを検出することで接触位置Z0を検出することができる。
具体的には、チップ20が基板22に接触した時刻t1から、時刻t2において加圧力センサ114からの加圧力信号に基づいて共振器7によるチップ20および基板22への加圧力が予め設定された加圧力PSとなるまでの間、すなわち、図7(c)の矢印DTの間、図7(b)に示すようにチップ20と基板22を、金属電極20a,22bの材質に応じて加圧力Pを徐々に増大しながら加圧する。また、図7(a)に示すように、押圧体部26が下降するのに伴い、金属電極20a、22a(接合部)がつぶれて接合面積Sが増大し、図7(b)に示すように、チップ20と基板22との間の接合面積が増大するのに伴い、チップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEを増大させる。
なお、図7(a)中、Smaxとは押圧体部26がチップおよび基板22の破壊を招くおそれのある限界位置ZLまで移動した場合の接合面積の大きさである。また、図7(b)中、Emaxとはチップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEの最大値であり、同図中一点鎖線で示す超音波振動エネルギーEは、押圧体部26の位置が限界位置ZLに達したときに最大値Emaxとなるように増大させている。また、超音波振動を印加している間、図示省略された振幅検出器によりチップ20と基板22との間で「相対振動」が生じていることを確認しつつ超音波振動を印加するとともに、押圧体部26をステージ10へ近接(下降)させている。
また、金属電極20a,22aが押しつぶされることに伴って増大する金属電極20a,22aの応力の大きさに応じて、押圧体部26による加圧力Pを増大することにより、押圧体部26はほぼ一定の速度で下降することとなる。そして、押圧体部26による加圧力が加圧力PSとなる時刻t2において、押圧体部26を停止する。そして、押圧体部26が停止した時刻t2において、チップ20および基板22への超音波振動エネルギーEの印加を終了して、その後、時刻t3までの所定の時間STの間、押圧体部26の位置を停止位置に保持する制御を行う。なお、この際、ヒーター9,11によりチップ20および基板22を加熱してアニーリングを行うことで、金属電極20a,22bとの間で拡散が生じ応力を除去することができる。
続いて、一定時間STの間、押圧体部26を停止位置に保持した後、時刻t3において共振器7によるチップ20の吸着を解除し、停止位置から待機位置ZHまで押圧体部26の復帰移動を開始する。この際、押圧体部26の移動を停止した位置から接触位置Z0までの間、すなわち、時刻t3からt4までの間、押圧体部26の移動速度を、設定速度VDと異なる値VUに制御する。すなわち、図7(c)中、矢印UTの間、押圧体部26の移動速度の大きさがVU以下となる制御を行い、図7(b)に示すようにチップ20および基板22への加圧力Pを徐々に除去する。なお、この実施形態では、設定速度VDとVUの大きさを同じ値として制御を行っている。
そして、押圧体部26の位置が接触位置Z0に達した時刻t4から押圧体部26の移動速度の大きさをVUよりも大きくして、押圧体部26が待機位置ZHに達するまで移動させて、押圧体部26が待機位置ZHに達した時刻t5において押圧体部26の移動を停止する。この後、チップ20が実装された状態でステージ10上に保持された基板22を基板搬送装置16により基板搬送コンベア17へ排出して一連の接合動作が終了する。
このような構成によれば、少なくとも押圧体部26によるチップ20および基板22の加圧時に、加圧力センサ114により検出される加圧力Pがチップ20および基板22の材質、形状、大きさ等に応じて予め適切に設定された所定の加圧力PSとなるまで、加圧力Pが単調増大するようにモータコイル111への電流を制御している。したがって、モータコイル111への通電によりマグネットモータシャフト110が駆動されて、チップ20および基板22は押圧体部26により予め設定された所定の加圧力Pで加圧されるため、確実に押圧体部26でチップ20および基板22を加圧することができるとともに、チップ20および基板22を押圧体部26で加圧しすぎることなく適切に加圧できる。
また、共振器7の加圧方向への移動に伴って加圧されたチップ20および基板22に生じる応力が増大するのに応じて、加圧力Pを単調増大するが、共振器7によるチップ20および基板22への加圧力が予め適切に設定された所定の加圧力PSになれば、共振器7の下方への移動を停止し、チップ20および基板22をさらに高い加圧力で加圧するのを停止するため、予め設定された所定の加圧力PSを超えてチップ20および基板22を加圧することでチップ20および基板22が破損したり破壊したりするのを未然に防止できる。
3.第3動作例
図1、2および図8を参照して接合装置200により被接合物を接合する第3動作例について説明する。図8に示す第3動作例が、上記した第1および第2動作例と異なる点は、共振器7によるチップ20および基板22への加圧時に加圧力Pを徐々に増大し、位置センサ106によるシャフト位置検出信号に基づき共振器7(押圧体部26)が予め設定された位置Z2に移動したことを検出すれば、共振器7の下方への移動を停止するようにモータコイル111への電流を制御する点である。その他の構成および動作は、上記した第1および第2動作例と同様であるため、その構成および動作の説明を省略する。
制御装置31は図8(a)〜(c)に示すように、加圧装置保持部6を、押圧体部26の位置がステージ10からの位置(高さ)ZHとなる位置(待機位置)で停止させた後、加圧装置100の制御を開始して、時刻t0から押圧体部26の下降を予め設定された設定速度であるVDよりも少し速い速度の大きさで開始する。そして、時刻t1で押圧体部26の位置が高さZ0に達したときに加圧力センサ114からの加圧力検出信号に基づいて接触位置導出部によりチップ20と基板22との接触する接触位置Z0を検出し、その後、押圧体部26によるチップ20および基板22への加圧力の制御および超音波振動の印加を開始する。なお、接触位置導出部は、チップ20と基板22とが接触位置Z0で接触した際に、加圧力検出信号に基づいて加圧力が変化するのを検出することで接触位置Z0を検出することができる。
具体的には、チップ20が基板22に接触した時刻t1から、時刻t2において位置センサ106からの位置検出信号に基づい共振器7が予め設定された位置Z2に移動するまでの間、すなわち、図8(c)の矢印DTの間、図8(b)に示すようにチップ20と基板22を、金属電極20a,22bの材質に応じて加圧力Pを徐々に増大する。また、図8(a)に示すように、押圧体部26が下降するのに伴い、金属電極20a、22a(接合部)がつぶれて接合面積Sが増大し、図8(b)に示すように、チップ20と基板22との間の接合面積が増大するのに伴い、チップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEを増大させる。
なお、図8(a)中、Smaxとは押圧体部26が設定位置Z2を超えてチップおよび基板22の破壊を招くおそれのある限界位置ZLまで移動した場合の接合面積の大きさである。また、図8(b)中、Emaxとはチップ20および基板22に印加する超音波振動エネルギーEの最大値であり、同図中一点鎖線で示す超音波振動エネルギーEは、押圧体部26の位置が限界位置ZLに達したときに最大値Emaxとなるように増大させている。また、超音波振動を印加している間、図示省略された振幅検出器によりチップ20と基板22との間で「相対振動」が生じていることを確認しつつ超音波振動を印加するとともに、押圧体部26をステージ10へ近接(下降)させている。
また、金属電極20a,22aが押しつぶされることに伴って増大する金属電極20a,22aの応力の大きさに応じて、押圧体部26による加圧力Pを増大することにより、押圧体部26はほぼ一定の速度で下降することとなる。そして、加圧力Pが設定された加圧力PSとなる前であっても、時刻t2において、共振器7の位置がZ2となれば押圧体部26を停止する。そして、押圧体部26が停止した時刻t2において、チップ20および基板22への超音波振動エネルギーEの印加を終了して、その後、時刻t3までの所定の時間STの間、共振器7の位置を設定位置(停止位置)Z2に保持する制御を行う。なお、この際、ヒーター9,11によりチップ20および基板22を加熱することによる熱拡散を行うことで、金属電極20a,22bとの間で拡散が生じ応力を除去することができる。
続いて、一定時間STの間、押圧体部26を設定位置Z2に保持した後、時刻t3において共振器7によるチップ20の吸着を解除し、設定位置Z2から待機位置ZHまで押圧体部26の復帰移動を開始する。この際、押圧体部26の移動を停止した位置Z2から接触位置Z0までの間、すなわち、時刻t3からt4までの間、押圧体部26の移動速度を、設定速度VDと異なる値VUに制御する。すなわち、図8(c)中、矢印UTの間、押圧体部26の移動速度の大きさがVU以下となる制御を行い、図8(b)に示すようにチップ20および基板22への加圧力Pを徐々に除去する。なお、この実施形態では、設定速度VDとVUの大きさを同じ値として制御を行っている。
そして、押圧体部26の位置が接触位置Z0に達した時刻t4から押圧体部26の移動速度の大きさをVUよりも大きくして、押圧体部26が待機位置ZHに達するまで移動させて、押圧体部26が待機位置ZHに達した時刻t5において押圧体部26の移動を停止する。この後、チップ20が実装された状態でステージ10上に保持された基板22を基板搬送装置16により基板搬送コンベア17へ排出して一連の接合動作が終了する。
このような構成によれば、共振器7によるチップ20および基板22の加圧時に、位置センサ106によるシャフト位置検出信号に基づき共振器7が予め設定された位置Z2に移動したことを検出すれば、共振器7の下方への移動を停止するようにモータコイル111への電流を制御するため、共振器7が予め設定した位置Z2を越えて移動することでチップ20および基板22が過剰に加圧されて破損したりするのを確実に防止できる。
なお、第2および第3動作例における制御を同時に行ってもよい。すなわち、共振器7によるチップ20および基板22への加圧力が予め設定された加圧力PSとなれば、または、共振器7の位置が予め設定された位置Z2となれば、共振器7の下方への移動を停止するようにモータコイル111への電流を制御すればよい。このような構成とすれば、上記した第2および第3動作例の効果を同時に奏することができる。
<第2実施形態>
続いて、図9および図10を参照して本発明の第2実施形態について詳述する。図9はこの発明にかかる接合装置200の第2実施形態における加圧装置100bの拡大模式図である。図10は図9に示す加圧装置100bのガイド108bを示す図である。この実施形態が、上記第1実施形態と大きく相違する点は、押圧体部260が、共振器7に替えてチップ保持ツールヒーター90を内蔵するチップ保持ツール(本発明の「押圧体」に相当)70により構成されており、ガイド108bがエアーベアリングで構成されている点である。また、押圧体部260をステージ10に近接させて金属電極20a,22aを押しつぶす間に、超音波振動を印加する代わりにチップ保持ツールヒーター90およびステージヒーター11によってチップ20および基板22を加熱している。なお、その他の構成および動作は上記第1実施形態と同様であるため、同一符号を付してその構成および動作の説明を省略し、以下、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図9に示すように、加圧装置100bはチップ保持ツールヒーター90を内蔵したチップ保持ツール70を備えており、金属電極20a,22aを押しつぶす間に、チップ保持ツールヒーター90およびステージヒーター11によりチップ20および基板22を加熱することで、金属電極20a,22aを溶融させてチップ20と基板22とを接合することができる。
また、図10(b)に示すように、加圧装置100bが備えるガイド108bは、空気導入口108b1を有しており、断面多角形状のピストンシャフト103bの周囲に形成された静圧空気軸受け部108b2(ガイド108bの内周面)に空気導入口108b1から空気を導入することで、摺動摩擦の無い状態でピストン体103が直線運動できるとともに、ピストン体103の回転を阻止することができる。したがって、シャフトモータ112およびエアシリンダ113による駆動系において、チップ保持ツール70を移動することによるチップ20および基板22に対する加圧力の制御の際に外乱となる摺動摩擦が発生する可能性を極めて低くできるため、比較的、弱い加圧力Pでチップ20および基板22を押圧体部260で加圧するときに、特に精度よく加圧することができる。このように、弱い加圧力Pで精度よくチップ20および基板22を加圧することができるため、チップ20として、加圧されることで破壊されやすい素子、例えば発光素子(光素子)等を精度よく加圧することができる。
<その他>
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、押圧体部26,260が急減位置Z1を超えてチップ(発光素子)20および基板22の破壊を招くおそれのある限界位置ZLまで移動する場合(図4参照)、押圧体部26,260を限界位置ZLを超えない位置で停止させる制御を行ってもよい。このような構成とすれば、押圧体部26,260が、チップ20および基板22の材質、高さ、形状、大きさ等から定まる、チップ20および基板22の破壊を招くおそれのある限界位置ZLまで移動する場合には、押圧体部26,260を限界位置ZLを超えない位置で停止させる。
したがって、例えば、チップ20および基板22の金属電極20a,22aの硬度や高さに製造過程でバラつきが生じ、押圧体部26,260が通常の急減位置(停止位置)Z1を超えて限界位置ZLまで移動する場合には、チップ20および基板22が押圧体部26,260による加圧によって破壊される前に、押圧体部26,260を限界位置ZLを超えない位置で停止するので、チップ20および基板22が破壊されることを未然に防止することができる。また、限界位置ZLとしては、例えば、50μmの高さのバンプを形成し、そのうちの先端部分30μmを加圧された際のつぶし代として、バンプが30μm以上つぶれない位置に限界位置ZLを設定することができる。
また、上記した第1実施形態において、超音波振動を印加するのと同時にチップ20および基板22を加熱して、金属電極20a,22aを溶融させて、チップ20と基板22とを接合してもよい。また、上記した第2実施形態において、押圧体部260を第1実施形態の押圧体部26とする構成として、発光素子(チップ)20および基板22とを超音波振動を印加しながら加熱して接合する構成としてもよい。
また、上記した第1および第2実施形態では、接触位置導出部は、押圧体が加圧方向へ移動中の加圧力検出信号に基づき、押圧体が被加圧体に(被接合物どうしが)接触する接触位置を導出しているが、接触位置を導出する方法としてはこの方法に限定されず、要は被接合物どうしが接触したことを検出することができれば、どのような方法であってもよい。
また、上記した第1および第2実施形態ではフレーム34に、加圧装置100が結合された上下駆動機構25を結合して接合機構27が構成されているが、上下駆動機構25を用いなくともフレーム34に押圧体部26を有する加圧装置100を直接結合して接合機構を構成してもよい。
また、上記した第1および第2実施形態では、ガイドおよびピストンシャフト103bは断面十角形状であるが、断面形状としては十角形状に限定されず、四角形状等、どのような形状であっても構わない。要は、確実にガイドによってピストンシャフト103bの回転を阻止することのできる形状であればどのような形状であってもよい。また、ガイドをマグネットモータシャフト110に設けてもよい。また、円筒状のガイドで、マグネットモータシャフト110が、その長軸方向にほぼ直交する方向へぶれるのを防止するようにしてもよい。
また、上記した第1および第2実施形態では、ピストンヘッド103aの受圧面積S1、S2を異なる面積としたが同じ面積としてもよい。要は、上記した圧力Pの演算に基づいて、任意の加圧力をピストンシャフト103bの他端に設けられたマグネットモータシャフト110に加えることができる構成であればよい。
また、上記した第1および第2実施形態では、被加圧物を加圧後、押圧体部26,260を停止する制御を行っているが、これを、押圧体部26,260による被加圧物への所定の加圧が完了した後、押圧体部26,260を停止しないで待機位置ZHまで移動する制御を行ってもよい。
また、上記した第1および第2実施形態では、この発明にかかる加圧装置を接合装置の加圧装置として用いているが、この加圧装置の適用対象としてはこれに限定されるものではない。すなわち、ガラス等の被加圧体を加圧することによってレンズに加工する等、被加圧体を特定の形に加工するプレス加工を行う装置全般に適用することができる。また、本発明にかかる接合装置は、プラズマによって表面活性化処理(親水化処理等)された後の被接合物(Siのような金属、SiO2、ガラス、イオン酸リチウム、酸化物単結晶(LT)、セラミック系を含む酸化物等で構成されるウエハー等)どうしを接合する際の接合装置として用いることもできる。
また、上記した第1および第2実施形態ではステージ10側がアライメント機能、押圧体部26,260側が上下駆動機能を有するように構成したが、アライメント機能、上下駆動機能はステージ10側、押圧体部26,260側にどのように組み合わせてもよく、また、重複するように構成してもよい。また、押圧体部26,260およびステージ10を上下方向(矢印Z方向)に配置しているが、配置方向としてはこれに限定されず、左右方向や斜め方向であってもよい。