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JP5484878B2 - アルカノールアミンを含む水性樹脂組成物 - Google Patents

アルカノールアミンを含む水性樹脂組成物 Download PDF

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JP5484878B2 JP2009280745A JP2009280745A JP5484878B2 JP 5484878 B2 JP5484878 B2 JP 5484878B2 JP 2009280745 A JP2009280745 A JP 2009280745A JP 2009280745 A JP2009280745 A JP 2009280745A JP 5484878 B2 JP5484878 B2 JP 5484878B2
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Description

本発明は、アルカノールアミンを含む水性樹脂組成物に関する。特に、本発明は、アルカリ増粘型の樹脂組成物の成分の中和に用いる中和剤としてアルカノールアミンを含む水性樹脂組成物に関する。
従来、工業用に用いられる塗料は、溶剤型塗料であり、希釈溶剤として有機溶剤を用いるため、塗料中に多量の有機溶剤を含んでいた。近年、環境に対する配慮から、有機溶剤の使用量を低減するため、水を希釈溶剤として用いる水性塗料が開発されている。しかし、水性塗料は造膜性が溶剤型塗料に劣り、得られる塗膜も、耐久性、密着性に劣る問題がある。
水性樹脂組成物において、樹脂成分の酸成分の中和剤として、アンモニアや有機アミン等の塩基性化合物の使用が、水性樹脂組成物にチクソトロピー性を付与し高度なアルカリ増粘性を発現することが知られている。例えば、特許文献1には、水性樹脂組成物の粘度の調整のために100%未満の中和率の水性樹脂を含む水性樹脂組成物に有機アミン、例えばジメチルエタノールアミン(bp135℃)を添加することが開示されており、水性樹脂組成物の粘度が上昇するという効果が記載されている。また、特許文献2には、ジメチルエタノールアミンを中和剤として使用した、側鎖に疎水性部位および親水性部位を有する樹脂を含む水性樹脂組成物が開示されており、固形分濃度が十分に高く、優れた塗装作業性を有し、かつ、優れた外観および耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜が得られるという効果が記載されている。
特開2008−143985号公報 特開2009−179787号公報
しかしながら、上記したような沸点が135℃のジメチルエタノールアミンを用いた場合には、塗膜の耐久性は未だ不十分であった。
そこで、本発明の目的は、水性樹脂組成物の成分として、塗膜の耐久性の低下を抑制・防止しうる中和剤を含む水性樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、水性樹脂組成物の酸成分(樹脂のカルボキシル基)の中和剤として、200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミン、特にモノアルキルジアルカノールアミンを用いることによって、塗膜の耐久性を向上できることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、カルボキシル基を有する水性樹脂、および前記樹脂のカルボキシル基の中和のための200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを含む水性樹脂組成物によって達成される。
本発明によれば、水性樹脂組成物の酸成分の中和剤として200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを用いることにより、耐久性の良好な塗膜を提供することができる。
本発明は、カルボキシル基を有する水性樹脂、および前記樹脂のカルボキシル基の中和のための200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを含む水性樹脂組成物に関する。本発明は、水性樹脂組成物の酸成分の中和剤として200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを用いることを特徴とする。ここで、アルカノールアミンは、塗膜乾燥温度より十分に高い沸点である、また、その蒸気圧は大気圧より十分に低く揮発しにくい性質を有している。このため、アルカノールアミンは、塗膜形成後も塗膜内に残存するため、耐久性の良好な塗膜を提供することができる。
本発明の水性樹脂組成物は、カルボキシル基を有する水性樹脂を含む。ここで、カルボキシル基を有する水性樹脂は、原料に酸成分としてカルボキシル基を有する単量体を含むものであればよく、例えば、アクリル系樹脂が好ましく使用される。
前記アクリル系樹脂は、以下に制限されないが、例えば、不飽和カルボン酸モノマーのホモポリマー、不飽和カルボン酸モノマーと不飽和カルボン酸エステルモノマーまたはスチレン系モノマーとの共重合によって得られる樹脂などが挙げられる。以下、本発明でカルボキシル基を有する水性樹脂として好ましく使用されるアクリル系樹脂を具体例として説明するが、本発明は、下記形態に限定されない。
前記不飽和カルボン酸モノマーは、カルボキシル基を有する不飽和モノマーであれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸類である、アクリル酸、メタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸およびビニル安息香酸等である。これらは、単独で用いても、適宜選択した2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、好ましい不飽和カルボン酸モノマーは、(メタ)アクリル酸であり、アクリル酸がより好ましい。これらの不飽和カルボン酸モノマーの存在により、中和剤としてのアルカノールアミンによってアルカリ増粘効果が得られる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
前記不飽和カルボン酸エステルは、特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類である、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、アセトニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−トアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオール−1,4−(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、グリシジル(メタ)アクリレート等である。これらは、単独で用いても、適宜選択した2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、好ましい不飽和カルボン酸エステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルであり、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルがより好ましい。
前記スチレン系モノマーは、特に制限されない。例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタレン等である。これらのうち、好ましいスチレン系モノマーは、スチレン、α―メチルスチレンであり、スチレンがより好ましい。
上記各モノマーの組成は、アクリル系樹脂の所望の構造によって決定される。例えば、アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸モノマーとスチレン系モノマーとの2元共重合体である場合には、不飽和カルボン酸モノマーの量が、不飽和カルボン酸モノマーとスチレン系モノマーとの合計質量 100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは3〜5質量部である。また、アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸モノマーと不飽和カルボン酸エステルモノマーとの2元共重合体である場合には、不飽和カルボン酸モノマーの量が、不飽和カルボン酸モノマーと不飽和カルボン酸エステルモノマーとの合計質量 100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは3〜5質量部である。さらに、アクリル系樹脂が不飽和カルボン酸モノマー、不飽和カルボン酸エステルモノマーとスチレン系モノマーとの3元共重合体である場合には、不飽和カルボン酸モノマーの量が、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和カルボン酸エステルモノマーとスチレン系モノマーとの合計質量 100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3.5質量部であり、スチレン系モノマーの量が、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和カルボン酸エステルモノマーとスチレン系モノマーとの合計質量 100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部である。モノマーの量が上記範囲を外れると、増粘性や耐久性が低くなり所望の塗膜が得られない場合がある。これらのうち、アクリル系樹脂が、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和カルボン酸エステルモノマーとスチレン系モノマーとの3元共重合体であることが好ましい。
すなわち、本発明の水性樹脂組成物は、ポリスチレン含有(メタ)アクリル樹脂と水とを含み、前記水性樹脂組成物の酸成分の中和剤としてアルカノールアミンを用いることが特に好ましい。
前記単量体の重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、前記モノマーを(共)重合することによるアクリル系樹脂の製造方法であってよい。一般的な乳化重合法とは、例えば、上記単量体組成物を、水の中で予め乳化しておき、これを加熱攪拌下、重合開始剤とともに滴下する方法等である。
前記乳化剤は、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤であり、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含む。前記カチオン性乳化剤は、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩および/または4級アンモニウム塩等であり、前記アニオン性乳化剤は、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルスルホコハク酸ジナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸塩または硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素(不飽和)二重結合とを分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等であり、前記ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物等であり、前記両性乳化剤は、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等であり、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール;カルボキシル基変性ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;変性デンプン;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸およびその塩;カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩;アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩;スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩;ポリイタコン酸およびその塩;アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体;ゼラチン;アラビアゴム;カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物である。これらは、単独で用いても、適宜選択した2種以上を組み合わせて用いても良い。乳化剤の添加量は、特に制限されないが、モノマーの合計質量 100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。このような量の乳化剤存在下であれば、モノマーを十分乳化できる。
乳化重合時に使用するラジカル重合開始剤としては、熱または還元性物質などによりラジカル分解してラジカル重合性不飽和単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等を使用できる。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイト、ベンゾイルパーオキサイド、o−メトキシベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、メチルプロパンイソ酪酸ジメチルなどのアゾ系化合物などが挙げられる。また、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物などの無機過酸化物である。有機または無機過酸化物は、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤を形成してもよい。還元剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、ロンガリットなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、適宜選択した2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の添加量は、特に制限されず、目的とする乳化重合物の所望の分子量に応じて適宜調整できる。重合開始剤の添加量は、モノマーの合計質量 100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部、特に好ましくは0.3〜1.5質量部である。このような量の重合開始剤存在下であれば、モノマーを十分重合できる。
乳化重合の反応温度は、ラジカル重合が起こりうる温度であれば、限定はされないが、85℃以下が好ましく、好ましくは75〜85℃であり、より好ましくは75〜80℃である。以上のようにして乳化重合することによって、上記のラジカル重合性ビニル単量体成分が乳化重合した乳化重合物を含む水性エマルションが得られる。
また、このようにして得られた乳化重合物(カルボキシル基を有する水性樹脂)は、粒子状、微粒子状、粉末状、不定形、柱状、角状など、いずれの形状で得られてもよいが、粒子状、微粒子状、粉末状が好ましく、粒子状、微粒子状がより好ましい。また、乳化重合物(カルボキシル基を有する水性樹脂)の大きさもまた特に制限されない。例えば、乳化重合物(カルボキシル基を有する水性樹脂)が粒子状、微粒子状である場合には、重量平均粒子径が、0.05〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。なお、本明細書における「重量平均粒子径」は、下記方法によって測定される値を意味する。すなわち、エマルジョンを希釈したサンプルをレーザー回折式粒度分析計にて測定を行った。
得られる水性エマルションは、乳化重合物の濃度が、以下に制限されないが、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%である。
水性エマルションの粘度は、特に制限されないが、ブルックフィールド型(B型)回転粘度計により測定した25℃、6rpmの条件での粘度が1000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100〜800mPa・sである。
本発明では、このように合成した水性樹脂に中和剤として200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを添加する。当該アルカノールアミンの添加により、水性樹脂のカルボキシル基が適度に中和されて、水性樹脂組成物にアルカリ増粘効果の発現、安定性の向上をもたらすことができる。前記200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンとしては、以下に制限されず、ジアルキルモノアルカノールアミン、モノアルキルジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンのいずれでもよいが、モノアルキルジアルカノールアミンが好ましい。より好ましくは、N−メチルジエタノールアミン(MDA:bp247℃)、N−エチルジエタノールアミン(MED:bp249℃)、N−n−ブチルジエタノールアミン(MBD:bp265℃)、N−t−ブチルジエタノールアミン(tBDEA:bp270.4℃)が使用される。モノアルキルジアルカノールアミンは、その沸点が塗膜乾燥温度より十分に高く中和剤としての蒸気圧が大気圧より低く揮発しにくい。このため、本発明の水性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する場合には、塗膜形成後であってもアルカノールアミンが塗膜内に残存し乾燥工程で塗膜組成の変化が少なく、耐水性の良好な塗膜構造物を提供することができる。なお、上記アルカノールアミンは、単独で用いても、適宜選択した2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、中和剤として使用される200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンの添加量は、上記したような効果が達成できる量であれば特に制限されない。好ましくは、アルカノールアミンの添加量は、水性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部であり、より好ましくは0.8〜3質量部であり、特に好ましくは1〜2質量部である。または、本発明に係るアルカノールアミンを、水性樹脂組成物のpHが7.0〜8.5、より好ましくは8.0〜8.5となる程度に、水性樹脂に添加してもよい。
また、本発明において、本発明の水性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する場合の塗膜の乾燥温度及び乾燥時間などの塗膜形成条件には、特に制限はなく、任意の温度で任意の時間をかけて乾燥させることができる。好ましくは、上記水性樹脂とアルカノールアミンを所定量混合した後、この混合物を、ガラス等の適当な基材上に、乾燥後の厚みが0.5〜4.0ミル(メートル換算値でおよそ12.5〜100μm)になるように、塗布し、これを80〜110℃で1〜5分間、加熱、乾燥する方法が使用できる。水性樹脂(特に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンの乳化重合エマルション)に、中和剤としてアルカノールアミンを用いて塗膜を形成する場合には、塗膜中にそれらの塩基性化合物であるアルカノールアミンが残存していても、耐水性を悪化せずに塗膜化することができるが、塗膜の厚みが薄いまたは乾燥温度が高い若しくは長いと塗膜の白化剥離の原因となる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により、限定されるものではない。
(実施例1)
攪拌器、温度計、サーモスタット、還流冷却器及び定量ポンプを備えた500mlのセパラブルフラスコに、イオン交換水を100質量部仕込み、窒素気流中で攪拌する。別の容器に、イオン交換水105質量部、モノマーとして、アクリル酸ブチル100質量部、メタクリル酸メチル70質量部、スチレン30質量部、アクリル酸4質量部、乳化剤として、Newcol 707SF(日本乳化剤株式会社製ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩)4.1質量部を添加し、プレ乳化液を調製した。プレ乳化液に、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを1.0質量部添加した後、プレ乳化液1質量部を反応容器内に添加し、80℃にて0.5時間、初期重合を行った。初期重合終了後、残りのプレ乳化液を80℃で3時間かけて定量ポンプを用いて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間同温度にて熟成を行った。
熟成終了後、室温(25℃)まで冷却し、200メッシュのナイロンクロスで濾過した後、10%のN−メチルジエタノールアミン水溶液を24質量部加えたところ、重量平均粒子径0.135μm、不揮発分(樹脂固形分)50質量%の水性エマルションを得た。
(実施例2)
実施例1において、中和剤としてN−エチルジエタノールアミンを使用する以外は、実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例3)
実施例1において、初期重合時に投入するプレ乳化液の添加量を1質量部から5質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例4)
実施例3において、中和剤としてN−エチルジエタノールアミンを使用する以外は、実施例3と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例5)
実施例1において、アクリル酸の添加量を4質量部から6質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例6)
実施例5において、中和剤としてN−エチルジエタノールアミンを使用する以外は、実施例5と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例7)
実施例5において、初期重合時に投入するプレ乳化液の添加量を1質量部から5質量部に変更する以外は、実施例5と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(実施例8)
実施例7において、中和剤としてN−エチルジエタノールアミンを使用する以外は、実施例7と同様の方法で乳化重合を行い、水性エマルションを得た。
(比較例1)
実施例1において、中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミンを使用する以外は、実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、比較水性エマルションを得た。
(比較例2)
実施例3において、中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミンを使用する以外は、実施例3と同様の方法で乳化重合を行い、比較水性エマルションを得た。
(比較例3)
実施例5において、中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミンを使用する以外は、実施例5と同様の方法で乳化重合を行い、比較水性エマルションを得た。
(比較例4)
実施例7において、中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミンを使用する以外は、実施例7と同様の方法で乳化重合を行い、比較水性エマルションを得た。
<評価方法>
上記実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた水性エマルションおよび比較水性エマルションのアルカリ増粘性を下記の方法で評価した。また、各例で得られた水性エマルションを使用して、塗膜を形成し、その物性を下記の試験方法で評価した。結果を表1に示す。
<アルカリ増粘性>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた各水性エマルションの各中和剤で中和する前の粘度とpHを8に調整した時の粘度の比からアルカリ増粘率を評価した。粘度測定は、B型粘度計(ロータNo.4)を用い、25℃で60rpmと6rpmに於ける粘度を測定した。
Figure 0005484878
<塗膜形成方法>
上記実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた水性エマルションおよび比較水性エマルション(樹脂固形分 50%)を、それぞれ、各中和剤でpHを8に調整した後、乾燥後の膜厚が3ミルとなるように、ガラス板上に塗膜化し、110℃で1分間乾燥させたものを試験片とした。
<耐水白化性、剥離性評価>
25℃の水中に試験片を24時間浸漬させ、塗膜状態を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎ :24時間後でも初期と変化なし。
○ :12時間以内に白化または剥離した。
× :1時間以内に白化または剥離した。
Figure 0005484878
表1から明らかなように、200〜300℃の沸点を有するアルカノールアミンを中和剤として使用した本発明の水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜は、塗膜白化剥離性能に影響を受けることなく、高いアルカリ増粘効果を示し、チクソトロピー性能も良好である。一方、比較例1〜4においては、実施例に比べて上記性能は劣っていた。

Claims (2)

  1. 不飽和カルボン酸モノマーの含有量がモノマーの合計質量100質量部に対して0.1〜5質量部であるアクリル系樹脂、および200〜300℃の沸点を有するジアルキルモノアルカノールアミン、またはモノアルキルジアルカノールアミンを水性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して0.5〜5質量部、または水性樹脂組成物のpHが7.0〜8.5になるように含む塗料用水性樹脂エマルジョン組成物(ただし、ポリウレタン樹脂を含むものを除く)。
  2. 前記モノアルキルジアルカノールアミンが、モノメチルジアルカノールアミンまたはモノエチルジアルカノールアミンである、請求項に記載の水性樹脂組成物。
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