本発明のシーラー用樹脂エマルションは、前記したように、内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションである。
本発明のシーラー用樹脂エマルションは、前記内層がスチレン85〜100重量%および当該スチレン以外の単量体0〜15重量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させてなる重合体(I)で形成され、前記外層がカルボキシル基含有単量体6〜25重量%および当該カルボキシル基含有単量体以外の単量体75〜94重量%を含有する単量体成分Bを乳化重合させてなり、ガラス転移温度が40℃以下である重合体(II)で形成され、重合体(I)と重合体(II)との重量比〔重合体(I)/重合体(II)〕が25/75〜75/25であり、前記エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有量が50〜100重量%である。
なお、本発明においては、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、エマルション粒子には前記内層および前記外層以外の層が形成されていてもよい。
前記内層を形成する重合体(I)は、スチレン85〜100重量%および当該スチレン以外の単量体0〜15重量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させることによって得られる。
単量体成分Aにおけるスチレンの含有量は、耐ブロッキング性および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、85〜100重量%である。したがって、単量体成分Aは、スチレンのみで構成されていてもよい。また、単量体成分Aには、耐ブロッキング性および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、0〜15重量%の範囲内で、スチレン以外の単量体が含有されていてもよい。
スチレン以外の単量体としては、例えば、スチレン以外の芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン以外の芳香族系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン以外の芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
したがって、スチレン以外の単量体としては、たとえば、スチレン以外の芳香族系単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン以外の単量体のなかでは、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、エチレン性不飽和単量体が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体がより好まく、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
単量体成分Aを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分Aおよび重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化剤の量は、単量体成分A100重量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上、特に好ましくは3重量部以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10重量部以下、より好ましくは6重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下、特に好ましくは4重量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の量は、単量体成分A100重量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体成分Aの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Aを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分A100重量部あたり、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
単量体成分Aを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Aを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分Aを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして単量体成分Aを乳化重合させることにより、内層を形成する重合体(I)がエマルション粒子の形態で得られる。
重合体(I)は、架橋構造を有していてもよい。重合体(I)の重量平均分子量は、重合体(I)が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体(I)の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
次に、重合体(I)からなる内層を形成させた後、当該内層の表面にカルボキシル基含有単量体6〜25重量%および当該カルボキシル基含有単量体以外の単量体75〜94重量%を含有する単量体成分Bを乳化重合させ、ガラス転移温度が40℃以下である重合体(II)からなる外層を形成させる。
単量体成分Bを乳化重合させる際には、重合体(I)の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後、単量体成分Bを乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、重合体(I)からなる内層を形成させた後、重合体(II)からなる外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明のシーラー用樹脂エマルションの製造方法においては、重合体(I)からなる内層を形成させた後、重合体(II)からなる外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成させる操作が含まれていてもよい。
単量体成分Bに用いられるカルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体の含有量は、密着性を向上させ、塗膜の収縮皺を防止する観点から、6重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から、25重量%以下である。
単量体成分Bに用いられるカルボキシル基含有単量体以外の単量体の例として、芳香族系単量体、前記単量体成分Aに用いられるスチレン以外の単量体で例示された、カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン以外の芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、前記した、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体以外の単量体のなかでは、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートは、塗膜の耐透水性を向上させる観点から好ましい。
単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体以外の単量体の含有量は、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から、75重量%以上であり、密着性を向上させ、塗膜の収縮皺を防止する観点から、94重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
単量体成分Bを乳化重合させる方法および重合条件は、前記単量体Aを乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして単量体成分Bを乳化重合させることにより、外層を形成する重合体(II)が前記内層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、重合体(II)からなる外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる表面層がさらに形成されていてもよい。
重合体(II)は、架橋構造を有していてもよい。重合体(II)の重量平均分子量は、重合体(I)が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体(II)の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、好ましくは100万以下、より好ましくは70万以下である。
重合体(II)のガラス転移温度は、造膜性を向上させる観点から、40℃以下、好ましくは30℃以下である。なお、重合体(II)のガラス転移温度は、耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは0℃以上である。重合体(II)のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(重量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
重合体のガラス転移温度は、例えば、スチレンの単独重合体では100℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、ヒドロキシエチルメタクリレート単独重合体では55℃、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(TMSMA)単独重合体では70℃である。
重合体のガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値であるが、重合体のガラス転移温度の実測値は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。重合体のガラス転移温度の実測値は、例えば、その示差走査熱量の測定によって求めることができる。
示差走査熱量の測定装置としては、例えば、セイコーインスツル(株)製、品番:DSC220Cなどが挙げられる。また、示差走査熱量を測定する際、示差走査熱量(DSC)曲線を描画する方法、示差走査熱量(DSC)曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行なう方法、目的のピーク温度を求める方法などには特に限定がない。例えば、前記測定装置を用いた場合には、当該測定装置を用いることによって得られたデータから作図すればよい。その際、数学的処理を行なうことができる解析ソフトウェアを用いることができる。当該解析ソフトウェアとしては、例えば、解析ソフトウェア〔セイコーインスツル(株)製、品番:EXSTAR6000〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、このようにして求められたピーク温度には、上下5℃程度の作図による誤差が含まれることがある。
なお、エマルション粒子自体のガラス転移温度は、塗膜硬度を高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。
重合体(II)の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、重合体(I)のSP値よりも高いことが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。また、重合体(I)のSP値と重合体(II)のSP値の差は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。本発明では、エマルション粒子は、SP値が低いスチレンが多量で使用されている重合体(I)と、SP値が高いカルボキシル基含有単量体が使用されている重合体(II)で構成されているので、内層と外層とが明確に分離されているという理想的な構造を有する。
SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論によって定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
重合体(I)と重合体(II)との重量比〔重合体(I)/重合体(II)〕は、耐ブロッキング性および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、25/75以上、好ましくは35/65以上であり、耐凍害性を向上させる観点から、75/25以下、好ましくは65/35以下である。
エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有量は、耐ブロッキング性、塗膜の耐透水性、耐凍害性および密着性を向上させる観点から、50重量%、好ましくは65重量%以上であり、エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有量が多いほど好ましく、その上限値は100重量%である。
本発明においては、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレンの含有量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは70重量%以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは85重量%以下である。したがって、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレン以外の単量体の含有量は、造膜性を向上させる観点から、好ましくは15重量%以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは30重量%以下である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明のシーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
なお、本明細書において、シーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量は、シーラー用樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔シーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔シーラー用樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明のシーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度は、塗膜硬度を高める観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
なお、本明細書において、シーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上にシーラー用樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
以上のようにして得られる本発明のシーラー用樹脂エマルションは、耐ブロッキング性および造膜性に優れているので、例えば、窯業系建材などの無機質建材用シーラーに有用である。
無機質建材としては、例えば、窯業系基材、金属系基材などが挙げられる。窯業系基材は、例えば、瓦、外壁材などの用途に使用される。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
このような無機質建材は、一般に、その内部に水が透しやすので、劣化しやすいという性質を有する。そのため、無機質建材の表面および裏面には、一般に、シーラーと呼ばれている下塗り材が塗布されている。その無機質建材の表面には、通常、所望の意匠を付与するために、上塗り塗料が塗布されている。本発明のシーラー用樹脂エマルションは、これらのうち、下塗り材に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
実施例1
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水145部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、スチレン440部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水145部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート160部、メチルメタクリレート125部、スチレン160部およびアクリル酸55部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pH〔(株)堀場製作所製、品番:F−23を用いて23℃で測定、以下同様〕を8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同様)の金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例2
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水85部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、スチレン285部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水205部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液80部、2−エチルヘキシルアクリレート190部、スチレン435部、アクリル酸40部およびメタクリル酸35部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液57部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を150分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例3
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水205部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液80部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、スチレン665部およびアクリル酸15部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液57部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を150分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水85部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート150部、スチレン110部およびアクリル酸40部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例4および5
実施例1において、単量体成分を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例6
実施例3において、単量体成分を表1に示すように変更したこと以外は、実施例3と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。得られたシーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例7
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水100部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、メチルメタクリレート10部、スチレン315部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水100部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート125部、スチレン200部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水100部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、スチレン190部およびアクリル酸40部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
次に、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例8および9
実施例7において、単量体成分を表1に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例10
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水70部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、スチレン245部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を60分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水140部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート145部、スチレン300部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水85部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート95部、スチレン170部およびアクリル酸35部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液29部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
実施例11〜18
実施例7において、単量体成分を表1に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。得られたシーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
なお、以下の表に記載の略号は、以下のことを意味する。
〔表中の略号の意味〕
St:スチレン
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
TMSMA:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
また、表に記載の用語は、以下のことを意味する。
〔内層中のSt量〕
内層の原料として使用されている単量体成分Aにおけるスチレンの含有率(%)
〔外層中のカルボン酸量〕
外層の原料として使用されている単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体の含有率(%)
〔層構成比〕
内層を構成している重合体(I)と外層を構成している重合体(II)との重量比〔重合体(I)/重合体(II)〕
〔内外層合計量〕
エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有率(%)
〔外層Tg〕
外層を構成している重合体(II)のガラス転移温度(℃)
〔トータルSt量〕
エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレンの含有率(%)
〔トータルTg〕
エマルション粒子のガラス転移温度(℃)
〔MFT〕
シーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度(℃)
〔不揮発分量〕
樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率(質量%)
〔平均粒子径〕
エマルション粒子の平均粒子径(nm)
また、以下の表において、層1〜層5は重合順序を示している。また、表中の単量体成分において、「−」は、その単量体が使用されていないことを意味する。
比較例1
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水290部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液120部、2−エチルヘキシルアクリレート130部、メチルメタクリレート50部、スチレン800部およびアクリル酸20部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液86部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を240分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。
得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例2および3
比較例1において、単量体成分を表3に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例4および5
実施例1において、単量体成分を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例6
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水245部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液80部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、メチルメタクリレート30部、スチレン700部およびアクリル酸20部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液69部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液48部を180分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水60部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、メチルメタクリレート30部、スチレン50部およびアクリル酸20部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液17部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液12部を60分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例7〜9
実施例1において、単量体成分を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例10
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水60部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、スチレン175部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液17部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液12部を60分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水245部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液80部、2−エチルヘキシルアクリレート257部、メチルメタクリレート30部、スチレン425部、アクリル酸55部およびメタクリル酸33部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液69部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液48部を180分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例11
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水60部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、スチレン180部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液17部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液12部を60分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水195部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート280部、スチレン310部およびアクリル酸10部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液49部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液38部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水60部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート130部、スチレン50部およびアクリル酸20部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液20部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を60分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例12
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水30部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液20部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、スチレン80部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液9部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6部を30分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水100部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート155部、スチレン115部およびアクリル酸30部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液26部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液18部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水180部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート90部、スチレン505部およびアクリル酸5部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液52部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液36部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例13〜15
実施例7において、単量体成分を表3に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例16
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水35部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液20部、2−エチルヘキシルアクリレート4部、メチルメタクリレート4部、スチレン120部およびアクリル酸2部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液9部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6部を30分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水95部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート125部、スチレン200部およびアクリル酸5部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液26部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液18部を90分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水160部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート165部、スチレン310部、アクリル酸40部およびメタクリル酸25部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液52部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液36部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
比較例17
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水800部を仕込んだ。
滴下ロートに、脱イオン水95部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液40部、2−エチルヘキシルアクリレート125部、スチレン200部およびアクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の5%にあたる71部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液14部をフラスコ内に添加し、乳化重合を開始した。
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液25部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液18部を90分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
その後、脱イオン水160部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液60部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、メチルメタクリレート15部、スチレン500部およびアクリル酸10部からなる2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液52部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液36部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
次に、脱イオン水35部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液20部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、メチルメタクリレート74部およびアクリル酸16部からなる3段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液9部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6部を60分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。
その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
実験例
分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、脱イオン水210部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−97〕200部、炭酸カルシウム〔竹原化学工業(株)製、軽質炭酸カルシウム〕600部、タルク〔日本タルク(株)製、品番:MICROACE S−3〕200部、消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕10部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をディスパー攪拌下で混合した後、3000min-1にて60分間攪拌することによって熟成を行ない、100メッシュの金網で濾過し、不揮発分量が75質量%である白色の顔料ペーストを得た。なお、顔料ペーストにおける不揮発分量は、シーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量と同様の方法で求めた。
各実施例または各比較例で得られたシーラー用樹脂エマルション82部をホモディスパーにより1500min-1で分散させながら、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1、3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕とブチルセロソルブとを等重量で混合することによって得られた混合溶液をその造膜温度が0〜5℃となるように前記シーラー用樹脂エマルションに添加し、混合物を得た。
得られた混合物に前記で得られた顔料ペースト47部を添加し、さらに不揮発分量が50質量%となるように適量の希釈水および適量の消泡剤〔シリコーン系消泡剤、サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕を添加した後、BM型粘度計〔東京計器(株)製〕で回転速度30min-1における25℃での粘度が1000mPa・sとなるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕を添加し、この回転速度で30分間攪拌することにより、シーラー塗料を得た。このシーラー塗料を室温で1日以上経過放置した。
次に、このシーラー塗料をスポンジロールコーターでフレキシブルボード〔日本テストパネル(株)製〕に90g/m2の量で塗布し、熱風乾燥機にて100℃で10分間乾燥させることにより、試験板を得た。得られた試験板を用いて以下の物性を評価した。その結果を表5に示す。
<耐透水性>
試験板に形成された塗膜上にロート(直径:10cm)を載置し、両者の接触部をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールし、JIS K5400に規定の「ロート法」に準拠して24時間経過後の減水量を測定し、以下の評価基準に基づいて耐透水性を評価した。
(評価基準)
◎:0.03mL/cm2未満
○:0.03mL/cm2以上、0.05mL/cm2未満
△:0.05mL/cm2以上、0.10mL/cm2未満
×:0.10mL/cm2以上
<耐ブロッキング性>
2枚の試験板(7×15cm)を60℃の雰囲気中で1時間放置した後、各試験片の塗膜が形成されている面同士を重ね合わせ、その上に300g/cm2の荷重をかけ、その状態で60℃の温度にて24時間静置させた後、各試験板を分離し、塗膜表面の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:変化なし
○:塗膜表面のわずかな艶変化のみ
△:塗膜の剥がれ箇所がわずかにある
×:塗膜の剥がれ箇所が多数ある
<耐凍害性>
試験板の側面および塗膜が形成されていない背面をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールした後、凍結融解試験機を用い、大気中で−20℃に冷却することによって2時間凍結した後に20℃の水中に2時間浸漬する操作を1サイクルとし、100サイクルごとに拡大倍率が30倍のルーペを用いて塗膜面のクラックの発生状態を観察しながら前記操作を300サイクル行ない、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:300サイクルでも問題なし
○:200サイクルで問題がないが、300サイクルでクラックが発生
△:100サイクルで問題がないが、200サイクルでクラックが発生
×:100サイクルでクラックが発生
<密着性>
試験板の塗膜をカッターナイフで2mm角の碁盤目が100個形成されるようにカットし、セロハン粘着テープ〔ニチバン(株)製、品番:CT405AP−18〕をこの碁盤目に貼り付け、JIS K5400に準拠して剥離試験を行ない、残存している碁盤目数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:残存している碁盤目が90個以上
△:残存している碁盤目が70〜89個
×:残存している碁盤目が69個以下
<耐マッドクラック性>
前記で得られたシーラー塗料をスポンジロールコーターでフレキシブルボード〔日本テストパネル(株)製〕に250g/m2の量で塗布し、ただちに熱風乾燥機にて130℃で5分間乾燥させることにより、試験板を得た。得られた試験板の塗膜を目視にて観察し、塗膜の収縮皺(マッドクラック)の発生の有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:収縮皺の発生なし
△:収縮皺がわずかに発生
×:収縮皺が多量に発生
<耐擦り傷性>
スチールウール(#0000)を耐摩耗試験機〔(株)井元製作所製、品番:IMC−154A〕にセットし、そのスチールウールの上に200gの重りを載せ、試験板の表面をスチールウールで10往復擦った後、その表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:傷なし
△:薄い傷あり
×:深い傷あり
<環境に対する負荷>
一般に、シーラー用樹脂エマルションに造膜性を付与するために最低造膜温度が0〜5℃となるように調整されている。この最低造膜温度を調整する際には造膜助剤が使用されているが、造膜助剤は揮発性物質であることから、環境負荷を軽減させる観点から、その造膜助剤の使用量を極力低減させることが望まれる。
そこで、シーラー用樹脂エマルションに必要とされる造膜助剤の量によって環境に対する負荷を評価した。その評価基準は、以下のとおりである。
(評価基準)
◎:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が3%未満
○:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が3%以上5%未満
△:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が5%以上10%未満
×:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が10%以上
なお、物性において「×」の評価が1つでもあるシーラー用樹脂エマルションは、シーラー塗料への使用に適していない。
表5に示された結果から、各実施例で得られたシーラー用樹脂エマルションは、いずれも、耐透水性、耐ブロッキング性および耐凍害性に優れた塗膜を形成することがわかる。また、一定量の顔料を配合しても造膜性が低下することなく、耐透水性および耐凍害性に優れた塗膜を形成することができるので、各実施例で得られたシーラー用樹脂エマルションは、経済的価値が高く、しかも造膜性に優れており、造膜助剤の使用量を大幅に低減させることができるので、環境面にも優れていることがわかる。