以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[第1の本実施の形態:ハイブリッド硬化体]
第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、(i)X線小角散乱法(SAXS)を用いて測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットにより求められる相分離構造のサイズ(Rg)が50nm以下であること、(ii)下記式(1):
(数4)
緩和指標=(200℃におけるT2)/(25℃におけるT2)・・・(1)
(式中、T2は固体1H−NMRのソリッドエコー法によって得られる緩和時間である)
で表される緩和指標が1.2〜10であること、及び(iii)黄色度(YI)が30以下であることを満足し、シリコーンを含有する。
本発明者らは、特定の測定法によって得られる相分離構造を満たし、特定の分子運動性の指標を有するハイブリッド硬化体が、応力緩和性に優れ、着色がなく、且つ耐熱性に優れるため、IC封止材、エポキシ樹脂系積層板、塗料、接着剤、及び電気・電子材料のコーティング剤などへの利用に最適であることを見出した。また、上記硬化体とフィラーと組み合わせた場合に、光学欠陥がなく、平滑性に優れ、割れ難く、耐熱性に優れ、且つ熱膨張の小さな複合透明シート(光学シート)が得られることを見出した。以下、第1の本実施の形態について具体的に説明する。
本実施の形態に係るハイブリッド硬化体(以下、単に「硬化体」ともいう)は、少なくともシリコーン及び有機化合物を含有する硬化体である。ここで、本明細書における「硬化体」とは、液状の樹脂組成物を架橋反応によって硬化されてなるものを意味する。架橋反応の種類は、以下に制限されないが、例えば、化学結合でもよいし、相互作用により擬似的に架橋を形成してもよい。ここで、本明細書における「シリコーン」とは、有機基(アルキル基及びアリール基などの非反応性基、並びに反応性有機官能基などの有機化合物からなる反応性官能基)を含有し、さらに、ケイ素原子に直接結合した水酸基(シラノール)を含有してもよい化合物を意味する。
本実施の形態におけるシリコーンの主鎖骨格に存在するシロキサン結合は、耐熱性に優れる点で有利である。また、シロキサン結合は、ミクロな運動性が良好なことから緩和性に優れ、さらに、シリコーンの主鎖骨格と側鎖とがミクロに相分離して有機基の運動を抑制することができる点でも有利である。さらに、前記シリコーンは、水素基(シラノール)を含有する場合、水素結合などによって一層緻密で強固な構造を作りやすくなるため、好適である。
本実施の形態において、樹脂組成物中のシリコーンの比率は、以下に制限されないが、1〜99質量%であることが好ましく、10〜95質量%であることがより好ましく、20〜85質量%であることがさらに好ましく、30〜80質量%であることがさらにより好ましい。上記した範囲内の場合、耐熱性を向上させることができるとともに、靭性に優れる。なお、本明細書における樹脂組成物に対するシリコーンの比率(以下、単に「シリコーン比率」ともいう。)は、29Si−NMRやGPCの結果を総合的に判断することによって算出できる。
また、本実施の形態において、硬化体中の無機成分の比率は、以下に制限されないが、1〜99質量%であることが好ましく、2〜75質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜25質量%であることがさらにより好ましい。なお、本明細書における無機成分の比率(以下、単に「無機比率」ともいう。)は、熱重量分析を用いて、樹脂組成物の質量に対する、有機化合物を完全に炭化させた後の質量の百分率で求めることができる。また、本明細書における「無機成分」とは、ケイ素以外のものも含む成分を意味する。
シリコーンと有機化合物とは本質的に非相溶なものであり、これらを含有する硬化体は通常、相分離構造を形成する。ここで相分離構造とは、局所的に、シリコーン、又は有機化合物由来成分が存在していることを意味する。前記有機化合物由来成分の局在が顕著である場合、温度上昇に伴う分子運動によるガラス転移を示し、弾性率の低下を招く。これに対し、シリコーンと有機化合物との相分離を抑制し、有機成分の分子運動をシリコーンによって抑制することにより、かかる弾性率の低下を効果的に防ぐことができる。通常、相分離構造は透過型電子顕微鏡(TEM)等により直接観察することができる。しかし、直接観察による相分離構造のサイズと、有機化合物の耐熱性との間には、直接の相関性が認められない。これは、かかる観察結果が有機成分と無機成分との界面の状態を反映していないことが原因であると考えられる。
本発明者らは、X線小角散乱法(SAXS)を用いて測定される散乱プロファイル(以下、「小角X線散乱プロファイル」ともいう。)のギニエ(Guiner)プロットにより求められる相分離構造のサイズ(Rg)こそが、シリコーンと有機化合物との界面も含む相分離構造の情報を与え、結果的に、かかるRgが耐熱性と相関性があることを見出した。以下、小角X線散乱プロファイル及びRgについて詳細に説明する。
図1は、ハイブリッド硬化体の小角X線散乱プロファイルを示すグラフである。図1は、硬化体の小角X線散乱(SAXS)プロファイルであり、横軸のsは逆空間における散乱ベクトルの大きさを示しており、長さの逆数の次元を有する。さらに、sは波長(λ)及び回折角(θ)を用いた上で、s=2sinθ/λという関係式を満たす。また、縦軸は散乱強度を示す。
図2は、図1で示された小角X線散乱プロファイルのギニエ則に基づく、小角散乱プロファイルに対するギニエプロットの低角度部分の直線近似を示すグラフである。図2は、図1において示されたSAXSプロファイルのギニエ則に基づき、小角散乱プロファイルに対するギニエプロットの低角度部分の直線近似を示している。それによって得られる直線の「傾き」及び「切片」から、相分離構造サイズを求めることができる。なお、散乱強度I(q)と相分離構造サイズ(慣性半径)Rgとの関係は、I(q)≒exp[-{Rg(2/3)}q2]という関係式を満たすものである。
Rgは50nm以下であり、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。Rgが上記範囲内の場合、ハイブリッド硬化体の耐熱性が一層向上するため好ましい。
ここで、本明細書における「ハイブリッド硬化体の耐熱性が優れる」とは、温度上昇に伴う弾性率の低下が小さいことを意味する。室温付近という低温の弾性率と加熱時の弾性率との差が小さい場合、硬化体を熱加工する時に精度良く加工できるため、好ましい。耐熱性を表す指標の一例として、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率の温度依存性が挙げられる。例えば、下記式(5)で表される弾性率比が15以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましく、6以下であることがさらにより好ましい。
(数5)
弾性率比=E0,25’/E0,250’・・・(5)
上記式中、E0,25’は動的粘弾性測定による25℃における硬化体の貯蔵弾性率であり、E0,250’は動的粘弾性測定による250℃における硬化体の貯蔵弾性率である。
また、耐熱性を表す指標の一例として、動的粘弾性測定における25〜250℃中のtanδの最高値が挙げられる。tanδは、0.075以下であることが好ましく、0.065以下であることがより好ましく、0.060以下であることがさらに好ましく、0.050以下であることがさらにより好ましい。
次に、本実施の形態における「緩和指標」とは、有機成分の分子運動性に関係するパラメーターであり、下記式(1)で表される。
(数6)
緩和指標=(200℃におけるT2)/(25℃におけるT2)・・・(1)
上記式中、T2は、固体1H−NMRのソリッドエコー法によって得られる緩和時間である。
ソリッドエコー法によって得られる緩和時間T2が短いほど、運動が遅い(例えば、高分子結晶やガラス状態など)ことを表している一方、T2が長いほど、運動性が良いことを表している。ソリッドエコー法は、デッドタイムを考慮すると、緩和時間の短い成分を測定するのに適している。本実施の形態において、緩和時間が複数測定される場合には、一番短い緩和時間をT2として採用することとする。緩和指標は1.2〜10であり、1.3〜9であることが好ましく、1.4〜7であることがより好ましく、1.5〜5であることがさらに好ましく、1.7〜3であることがさらにより好ましい。緩和指標が上記範囲内の場合、分子運動性に優れるため、硬化時や冷熱衝撃による歪みがかかりにくい。歪みがかかりにくいと、ボイドやクラックの発生などが殆ど生じないため好適である。また、緩和指標が上記範囲内の場合、ハイブリッド硬化体の耐熱性が向上し得る。さらに、運動性に優れる場合、粘度がより低くなり、応力緩和性に優れる。このように、本実施の形態に係る硬化体、及び後述する樹脂組成物は、上記範囲という特定の緩和指標を満たす場合、一層応力緩和性に優れる。
本実施の形態における黄色度(YI)は、3mm厚のサンプルをコニカミノルタ(株)製のSPECTROPHOTOMETER CM−3600dを用いて測定して得られる値を意味する。YIは30以下であり、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましく、5以下であることがさらにより好ましい。YIが上記範囲内の場合、着色している程に高いとは判定されない(換言すれば、透明性が高いと判定できる)。そのため、本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、多様な用途に使用できる。
本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、耐湿性に優れていることが好ましい。本実施の形態において耐湿性は、硬化体を水中で100℃2時間加熱した後に、100℃真空乾燥を行い完全に水分を除去した後の外観の変化や重量変化で判断することができる。重量変化は20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがさらにより好ましい。
シリコーン中にアルコキシ基が存在すると、加水分解によってアルコールが遊離し得る。そのため、硬化体の下記式(6)で表されるアルコキシ比率が50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましい。アルコキシ比率が上記範囲内の場合、耐湿性が良好となり、アルコールが殆ど遊離しないため、好適である。
(数7)
アルコキシ比率=(Si−O−Cの結合数)/(Si−O−Xの結合数)・・・(6)
上記式中、Siはケイ素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、及びXは任意の原子をそれぞれ示す。
上記Si−O−C結合やSi−O−X結合の数は、NMR、IR及びNIRで測定することができ、本実施の形態ではそれらの中で最も高い測定値を採用する。換言すれば、NMR、IR及びNIRでそれぞれ結合数を測定し、その中で最も多い結合数(測定値)を採用するというものである。その理由は、NMR、IR、NIRのいずれの方法であってもほぼ同様の結果が一般には得られるが、一方で、他のピークと重なって測定しにくい場合もあり、重なったピークを差し引くと小さい値になる場合があるからである。そのため、測定の信頼度を極力高めるため、一番大きな値を採用するものである。
本実施の形態に係るハイブリッド硬化体の硬化方法は、以下に制限されないが、例えば、逐次重合型でもよく、連鎖重合型でもよい。また、単独の反応で硬化させてもよいし、複数の反応を組み合わせて硬化させてもよいが、少なくとも連鎖重合型の反応を用いることが好ましい。なぜなら、一般に、逐次重合よりも連鎖重合の方が速度が大きいため、連鎖重合の方が相分離を有意に抑制できる傾向にあるからである。中でも、酸素の影響を受けないという観点から、酸発生剤を用いたカチオン重合が好ましい。このように、本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、酸発生剤を使用した連鎖重合型の反応(さらに好ましくはカチオン重合)により硬化されたものであることがより好ましい。
本明細書における「酸発生剤」とは、熱又はエネルギー線によりカチオン種を発生させて、重合を開始させる化合物を意味する。前記化合物としては、以下に制限されないが、例えば、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、芳香族オニウム塩などの各種オニウム塩が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記第四級アンモニウム塩としては、以下に制限されないが、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホフォフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−ベンジルトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びN,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
上記スルホニウム塩としては、以下に制限されないが、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート、及びジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネートが挙げられる。
上記ホスホニウム塩としては、以下に制限されないが、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びテトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
上記芳香族オニウム塩としては、以下に制限されないが、例えば、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、及び特公昭52−14279号公報に開示された化合物が挙げられる。
本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、成形性向上の観点から、液状の樹脂組成物を、熱又はエネルギー線で硬化することによって得られることが好ましい。ここで、前記「液状」とは、流動性があることをいう。前記流動性の指標となる粘度としては、1〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、1〜100,000mPa・sであることがより好ましく、1〜20,000mPa・sであることがさらに好ましく、1〜5,000mPa・sであることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、成形性が有意に向上するため好適である。なお、本明細書における「粘度」の測定は、E型粘度計を用いて行う。
上記の熱又はエネルギー線による硬化は、有機化合物が架橋反応を起こしてもよく、シリコーンが架橋反応を起こしてもよく、両方の反応を起こしてもよい。相分離サイズをより小さくする観点から、有機化合物とシリコーンとが共に架橋反応を起こすことが好ましい。熱又はエネルギー線により、樹脂組成物中の官能基が架橋反応を起こしてもよいし、熱又はエネルギー線に反応する硬化剤を共存させてもよい。中でも、硬化体の構造をコントロールする観点から、熱又はエネルギー線に反応する硬化剤を使用することが好ましい。
熱で硬化する場合の温度は、以下に制限されないが、30〜300℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましく、120〜220℃であることがさらに好ましい。上記範囲内の場合、有機物の分解を防止できるとともに、硬化に要する時間を有意に短縮できる。一般に、エポキシ樹脂などの熱硬化においては、異常反応を抑制するために、低温からの段階的な温度上昇による硬化が採用され得る。しかし、本実施の形態においては、有機成分と無機成分との相分離を抑制する必要があるため、硬化速度が大きいほど好ましく、初発温度を高温にしておくことも好ましい。特に、後述するシリコーン中にシラノール基(反応性官能基の1種)が存在している場合には、脱水反応を一層進みやすくするという観点から、初期温度を、好ましくは100℃以上として、より好ましくは120℃以上として、硬化する。また、2種以上の反応性官能基が存在している場合には、反応を一層促進させる観点から、最も反応性の低い官能基が反応する温度以上に初期温度を設定することが好ましい。また、系内を均質に硬化させることで、相分離を抑制しやすくなる。なお、官能基の反応温度は示差走査熱量測定(DSC測定)によって求めることができる。
硬化時の雰囲気としては、以下に制限されないが、空気、窒素などの不活性ガス、及び真空が挙げられる。中でも、酸素による酸化反応を抑制する観点から、不活性ガス又は真空の雰囲気が好ましい。
加熱方法としては、以下に制限されないが、熱風、赤外線や電磁波などが好適に利用できる。
本実施の形態におけるエネルギー線とは、以下に制限されないが、例えば、紫外線、近紫外線、可視光線及び意近赤外線などの光、並びに電子線である。副反応が起こりにくいという観点から、エネルギー線の種類として、好ましくは光であり、より好ましくは紫外線である。
エネルギー線の発生源は、以下に制限されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、UVランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、及び電子線照射機などの各種の光源が挙げられる。
エネルギー線による硬化の手法は、特に制限されることはないが、通常、エネルギー線刺激により重合開始剤が分解することで重合開始種が発生し、対象物質の重合性官能基を重合するという経過を辿る。
エネルギー線による硬化に用いられる重合開始剤としては、以下に制限されないが、発生する活性種の相違により、下記の3つに大別できる。これらの重合開始剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
1.エネルギー線の照射によりラジカルを発生するもの。
2.エネルギー線の照射によりカチオンを発生するもの(エネルギー線が光である場合、光酸発生剤と呼ばれる)。
3.エネルギー線の照射によりアニオンを発生するもの(エネルギー線が光である場合、光塩基発生剤と呼ばれる)。
エネルギー線による硬化に用いられる重合開始剤の具体例としては、以下に制限されないが、ベンゾイン類及びベンゾインアルキルエーテル類(ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等);アセトフェノン類(アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モノフォリノ−プロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等);アントラキノン類(2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等);チオキサントン類(2,4−ジメチルチオサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等);ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等);ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等);キサントン類;安息香酸エステル類(エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート等);アミン類(トリエチルアミン、トリエタノールアミン等);並びに、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、アンモニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、アルソニウム塩化合物、スチボニウム塩化合物、オキソニウム塩化合物、セレノニウム塩化合物、及びスタンノニウム塩化合物が挙げられる。
[第2の本実施の形態:樹脂組成物]
第2の本実施の形態に係る樹脂組成物は、液状であって、熱又はエネルギー線により硬化され、上記第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体を生成するシリコーン含有のハイブリッド樹脂組成物と換言することができる。即ち、本実施の形態に係る樹脂組成物は、上記ハイブリッド硬化体の原料であり、樹脂組成物とハイブリッド硬化体とは、ほぼ共通の特徴を有する。本実施の形態に係る樹脂組成物は、硬化剤を含有してもよい。本実施の形態における硬化剤とは、前記樹脂組成物を硬化させるために用いられる物質であり、以下に制限されないが、例えば、酸無水物系化合物、酸発生剤、塩基発生剤、アミン系化合物、アミド系化合物、及びフェノール系化合物があり得る。着色性を低減する(透明性を向上する)観点から、酸発生剤又は酸無水物系化合物が好ましく、酸発生剤がより好ましい。これら硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の酸無水物系化合物の中でも、反応性向上の観点から、カルボン酸無水物が好ましい。また、上記の酸無水物系化合物には脂環式酸無水物が含まれる。加熱時の着色をより少なくするという観点から、前記カルボン酸無水物の中でも脂環式カルボン酸無水物が好ましい。
前記脂環式カルボン酸無水物の具体例としては、以下に制限されないが、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸(存在比:70/30)、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物/ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物が挙げられる。
前記脂環式カルボン酸無水物以外の脂環式酸無水物の具体例としては、以下に制限されないが、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
また、上記の酸発生剤の具体例は、上述した通りである。一方、上記の塩基発生剤としては、以下に制限されないが、例えば、o−アシルオキシム、ベンゾイルオキシカルボニル誘導体、ベンゾイルカルバメート及びベンゾインカルバメート等の光活性のカルバメート、o−カルバモイルオキシム等のオキシムエステル化合物、第4級アンモニウムテトラフェニルホウ酸塩などのアンモニウム化合物、ベンゾイン化合物、ジメトキシベンジルウレタン化合物、オルソニトロベンジルウレタン化合物、芳香族系スルホンアミド、α−ラクタム、N−(2−アリールエテニル)アミド、N−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロキシピリジン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピペリジン、
1、3−ビス(N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル)プロパン、N、N’−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、並びにo−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミン等がある。
さらに、上記で列挙したもののさらなる具体例としては、以下に制限されないが、例えば、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノンN−シクロヘキシルカルバメ−ト、ニトロベンジルN−シクロヘキシルカルバメート、3,5−ジメトキシベンジルN−シクロヘキシルカルバメート、ジベンゾインイソホロンジカルバメート、1−(2−ニトロフェニル)エチル シクロヘキシルカーバメート、2,6−ジニトロベンジル シクロヘキシルカーバメート、1−(2,6−ジニトロフェニル)エチル シクロヘキシルカーバメート、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−1−メチルエチル シクロヘキシルカーバメート、1−ベンゾイル−1−フェニルメチル シクロヘキシルカーバメート、2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル シクロヘキシルカーバメート、1,2,3−ベンゼントリイル トリス(シクロヘキシルカーバメート)、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカーバメート、α−(シクロヘキシルカーバモイルオキシイミノ)−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル、N−(シクロヘキシルカーバモイルオキシ)スクシンイミド、N−シクロヘキシル−2−ナフタレンスルホンアミド、N−シクロへキシルp−トルエンスルホンアミド、及びN−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミドが挙げられる。
さらに、上記した硬化剤のうち、アミン系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物の具体例としては、以下に制限されないが、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとから合成されるポリアミド樹脂、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド化合物との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、ビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類又はフェノール類との縮合物、及びビフェノール類、並びにこれらの変性物、イミダゾール誘導体、3フッ化硼素−アミン錯体、及びグアニジン誘導体が挙げられる。
ここで、アミン系化合物を含有する硬化剤(以下、単に「アミン系硬化剤」という。)を用いる場合、アミン系化合物を相当な量使用するよりも微量だけ使用する方が好ましい。なぜなら、アミン系化合物を微量だけ使用すると、本実施の形態に係るハイブリッド硬化体の着色を効果的に避けることができるとともに、微量のアミン系化合物が硬化を補助及び促進することができるためである。なお、前記「微量」とは、上記の効果を十分に発揮させるという観点から、樹脂組成物中3,000ppm以下であることが好ましい。
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。前記硬化促進剤とは、硬化反応の促進を目的に使用される硬化触媒を意味し、1種単独で用いても、複2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記硬化促進剤は、特に制限されることはないが、反応性と加熱時の着色とのバランスの観点から、三級アミン類及びその塩を選択することが好ましい。
硬化促進剤の具体例としては、以下に制限されないが、下記のものが挙げられる。
1.三級アミン類として、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
2.イミダゾール類として、2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、及び2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1')〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
3.有機リン系化合物として、ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、及び亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
4.四級ホスホニウム塩類として、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、及びテトラフェニルホスホニウムテトラッフェニルボレート等が挙げられる。
5.ジアザビシクロアルケン類として、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及びその有機酸塩などが挙げられる。
6.有機金属化合物として、オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、及びアルミニウムアセチルアセトン錯体などが挙げられる。
7.四級アンモニウム塩類として、テトラエチルアンモニウムブロマイド、及びテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
8.金属ハロゲン化合物として、三フッ化ホウ素及びホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物、塩化亜鉛、並びに塩化第二錫などが挙げられる。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、耐熱性に優れ、且つ均質な構造を形成しやすいという観点から、反応性官能基を有するシリコーンと、前記反応性官能基を有するシリコーンとは異なる、エポキシ基を有する有機化合物とを含有することが好ましい。反応性官能基を有するシリコーンとエポキシ基を有する有機化合物との質量組成比は、5:95〜99:1であることが好ましく、より好ましくは15:85〜95:5であり、さらに好ましくは20:80〜90:10であり、さらにより好ましくは30:70〜85:15である。上記範囲内の場合、樹脂組成物の耐熱性及び靭性が向上し得る。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、エポキシ当量が100〜20,000g/eqであることが好ましく、100〜10,000g/eqであることがより好ましく、100〜5,000g/eqであることがさらに好ましく、100〜2,000g/eqであることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、硬化速度が一層大きくなり得る。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、エポキシ基の中でも反応性が高いため、相分離サイズをより小さくできるという観点から、環式脂肪族エポキシ基を有することが好ましい。前記観点について詳細にいえば、以下の3点に分節できる。1点目として、硬化速度が速く、相分離が進行する前に相を固定できる点が挙げられる。2点目として、シリコーンがシラノール基を含有している場合に反応することができる点が挙げられる。3点目として、水の付加が起こりやすく、これによって生じる水酸基とシリコーン中のシラノール基とが水素結合することができる点が挙げられる。ここで、環式脂肪族エポキシ基とは、例えば脂肪族環とエポキシ環とから構成される多環式のエポキシ基であり、一般には、不飽和基を有する環状体をエポキシ化することによって得られる。環式脂肪族エポキシ基として、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、及びシクロペンテンオキサイド基が挙げられる。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、反応性官能基を有するシリコーン及びエポキシ基を有する有機化合物の少なくとも一方が環式脂肪族エポキシ基を有することが好ましい。だが、環式脂肪族エポキシ基以外のエポキシ基をさらに有していてもよい。かかるエポキシ基として、以下に制限されないが、例えば、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミン基、及び複素環式エポキシ基が挙げられる。全エポキシ基に対する環式脂肪族エポキシ基の割合は、10〜100mol%であることが好ましく、30〜100mol%であることがより好ましく、50〜100mol%であることがさらに好ましく、75〜100mol%であることがさらにより好ましい。
各種用途へ適用するにあたっては、樹脂組成物にポリオールを併用して使用することも可能である。そのようなポリオールとしては、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
反応性官能基を有するシリコーンは、有機化合物との相溶性を向上させる観点から、ケイ素、酸素、炭素及び水素を構成元素とすることが好ましい。さらに、チタニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、アルミニウムやインジウム等の金属を更なる構成元素として含んでもよい。中でも、原料の種類が豊富であり、且つ構造設計の自由度が高いという観点から、シリコーンであることがより好ましい。反応性官能基としては、以下に制限されないが、例えば、環状エーテル基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基が挙げられる。また、前記反応性官能基として、以下に制限されないが、Si−OOCR(Rはアクリロキシ基、アセチル基、アセトキシ基、カルボキシル基、及びアジペート基など)、Si−NR(アミノ基)、Si−H、Si−O−Ph(フェノキシ基)、Si−O−N=C(オキシム基)、Si−N=C−O(アミド基)、Si−O−BO2(ホウ酸塩)、Si−OSO2−(スルフォネート基)、Si−O−PO3(燐酸塩)、Si−PO3(フォスファイト基)、Si−F、Si−Cl、Si−I、Si−Br、Si−C≡C、Si−(O−C2H4)3−N(シラシトン)、Si−NHCOO(カーバメート基)、Si−C(=CH2)−COO−、並びにSi−NH−CO−NH(尿素基)も例示的に挙げられる。
上記の中でも、反応性が高いという観点から、環状エーテル基を有するシリコーンが好ましい。前記環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルを有する有機基のことをいい、通常、3〜6員環の構造を有する環状エーテル基を意味する。中でも、環歪エネルギーが大きく且つ反応性が高いという観点から、3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、3員環の環状エーテル基がより好ましく、3員環のエポキシ基がさらに好ましい。前記環状エーテル基としては、以下に制限されないが、例えば、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル及びγ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、並びにβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基などのオキシラン基を有する炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基が挙げられる。
上記の中でも、原料を安価に入手しやすいという観点から、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などの、C1〜C3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基及びオキシラン基を有するC5〜C8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
また、上記の反応性官能基を有するシリコーンは、シラノール基を有することが好ましい。前記シラノール基とは、Si原子に直接結合している水酸基を意味する。シラノール基は、金属などの表面と結合し、接着性に優れるため、好適である。加えて、シラノール基は、有機化合物と反応して架橋を形成し得る。これは、上記した第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体の耐熱性が向上し得るため、好適である。
シラノール基を有するシリコーンは、シラノール基の導入が容易であるという観点から、加水分解反応及び縮合反応によって合成されることが好ましい。さらに、反応が緩やかに進んで制御しやすいという観点から、アルコキシシランを原料として合成されることがより好ましい。
加水分解反応及び縮合反応の原料としてのシランは、下記式(7)で表すことができる。
(化4)
R1 aSi(OX)4−a・・・(7)
上記式中、R1は同一の又は異なる有機基を表し、OXは同一の若しくは異なる加水分解性基又は水酸基を表し、aは0〜3の整数である。)
有機基を表すR1としては、特に制限されることはないが、上述の反応性官能基である有機基の他に、例えば、アリール基、水素原子やアルキル基が挙げられる。
上記アルキル基とは、以下に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル基(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル等)、ヘキシル基(n−ヘキシル、i−ヘキシル等)、ヘプチル(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル基(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル基(n−デシル、i−デシル等)、及びドデシル基(n−ドデシル、i−ドデシル等)といった、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基をいう。中でも、無機成分の比率が低くなりすぎないという観点から、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基及びn−ヘキシル基がより好ましい。また、これらの水素原子又は主鎖骨格の一部又は全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基及びフッ素などのハロゲン原子、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基、アミノ基並びにヒドロキシル基よりなる群から選択された1種以上の基で置換されていてもよい。
上記アリール基とは、芳香族炭化水素(単純芳香環又は多環芳香族炭化水素)から誘導された官能基又は置換基を意味する。アリール基としては、かかる意味に適合するものであれば、特に制限されることはないが、高次構造における立体障害を考慮すると、フェニル基やベンジル基が好ましいといえる。
上記したOXの一選択肢である加水分解性基としては、以下に制限されないが、例えば、アルコキシ基、クロル基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、及びアミノ基が挙げられる。中でも、反応がマイルドで制御しやすいという観点から、アルコキシ基が好ましい。前記アルコキシ基の中でも、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基である。
上記アルコキシシランのうち、前記反応性官能基を有するシランの割合は、5〜100mol%であることが好ましく、10〜99mol%であることがより好ましく、20〜98mol%であることがさらに好ましく、30〜95mol%であることがさらにより好ましい。
前記アルコキシシランとしては、以下に制限されないが、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメトキシイソプロポキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロパン−1−チオール、トリメトキシ(プロピル)シラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メトキシルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシルジプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシロキシトリメチルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、オクチルオキシトリメチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルオキシトリメチルシラン、及びジエトキシドデシルメチルシランが挙げられる。また、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、並びにそれらの部分縮合物も好適に使用できる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコキシシランを加水分解及び縮合することによって、シリコーンが得られるが、その時の反応温度は、特に制限されることはないが、好ましくは130℃以下、より好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃である。上記範囲内の場合、樹脂組成物の変質を効果的に防止できる。また、加水分解及び縮合の反応時間は、特に制限されることはなく、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。上記範囲内の場合、未反応物質の残存量を効果的に少なくすることができる。
加水分解及び縮合の際の水の添加量は、特に制限されることはないが、下記式(8)におけるOX2に対して、1〜5,000mol%であることが好ましく、10〜500mol%であることがより好ましく、20〜200mol%であることがさらに好ましく、40〜80mol%であることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、反応が進行しやすくなるとともに、系内に水と反応する官能基があったとしても副反応の発生を防止でき、これにより脱水の際のエネルギーコストを効果的に低減させることができるため、好適である。
(化5)
R1 aSi(OX2)4−a・・・(8)
上記式中、R1は同一の又は異なる有機基を表し、OX2は同一の又は異なる加水分解性基又は水酸基を表し、aは0〜3の整数である。
加水分解反応及び縮合反応の際の水の添加方法は、特に制限されることはなく、一括で添加してもよいし、連続的に添加してもよい。また、大量に水を使用する場合には、水中へシラン等の原料を投入してもよい。
水は、加水分解反応で消費され、縮合反応で生成される。これに伴い、系中の水量、及び加水分解で生成するアルコール等の濃度が変化するため、不均質な構造のシリコーンになる場合がある。このような状況を避ける観点から、加水分解反応及び縮合反応の速度に合わせて少量ずつ水を添加していくことが好ましい。加水分解によって生成するアルコール等は、系内に戻してもよいが、反応速度を大きくして生産性を上げる観点から、系外に除去することが好ましい。
本実施の形態において、加水分解及び縮合は、無溶剤下でも、溶剤中でも行うことができる。反応温度を厳密にコントロールしたい場合には、溶剤を使用して還流下で反応させることが好ましい一方、反応速度をできるだけ上げたい場合には、無溶剤下で反応させることが好ましい。
上記溶剤としては、シラン化合物に含まれる官能基に対して非活性である溶剤である限り、特に制限されない。よりランダムな構造のシリコーンを合成する場合には、使用するシラン化合物及びその加水分解物、並びに水を溶解させることのできる溶剤を用いることが好ましい。また、シリコーンの組成に偏りを持たせたい場合には、シラン化合物及びその加水分解物、並びに水のいずれかを溶解させず、相分離するような溶剤を用いてもよい。かかる溶剤として、以下に制限されないが、例えば、ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素系、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族系、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系、並びにメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール及びn−ブタノール等のアルコール系のものが挙げられる。
溶剤の添加量としては、特に制限されることはないが、シラン化合物の合計量(質量換算)に対して、好ましくは20倍量以下、より好ましくは15倍量以下、さらに好ましくは10倍量以下である。上記範囲内の場合、分子量がより大きくなる傾向であり、エネルギーコストの観点からも好適である。
本実施の形態においては、エポキシ基を有する有機化合物などの有機化合物を共存させた状態で反応を行うことが好ましい。即ち、上記シリコーンと前記有機化合物とを混合することにより、本実施の形態に係る樹脂組成物を製造することが好ましい。有機化合物や合成するシリコーンの粘度が高いために均質に混ぜることが困難である場合、両者の共存下で溶剤を使用して反応させた方が好ましい一方で、後から均質に混ぜることが可能である場合には、有機化合物は加えない状態で反応させた方が、反応速度が上がりやすいため好適である。特に、有機化合物に水酸基が存在する場合、シリコーンの加水分解反応及び縮合反応と競合して、有機化合物の水酸基とシリコーンとの間で縮合反応が起こり、Si−O−C結合が生成され得る。Si−O−C結合が残存する場合、耐湿性が低下するため、水酸基を有する化合物は共存させない方が好ましい。水酸基を有する化合物を共存させる必要がある場合には、水を添加してSi−O−C結合を完全に加水分解することが好ましい。
本実施の形態においては、加水分解反応及び縮合反応に寄与する触媒を加えてもよい。前記触媒としては、従来公知の加水分解反応及び縮合反応を促進させるものであれば、以下に制限されないが、例えば、金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等)、有機金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等の有機酸化物、有機酸塩、有機ハロゲン化物、アルコキシド等)、無機塩基(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、有機塩基(アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等)、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸など)、及び有機酸(酢酸、ギ酸、グリコール酸など)が挙げられる。上記の中でも、加水分解反応性が高く、且つ高次構造をコントロールしやすいという観点から、酸類及び有機金属が好ましく、より好ましくは有機酸、無機固体酸及び有機錫、さらに好ましくは錫の有機酸塩、及び無機固体酸である。
これらの触媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、有機酸で反応させた後に、錫などの有機酸塩を加えて反応を加速してもよい。また、錫などの有機酸塩で反応させた後に、無機塩基で処理することも可能である。この場合の無機塩基としては、濾過などで簡便に除去できるという観点から、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の多価カチオンの水酸化物が好適である。最終的に無機塩基で処理することは、縮合率を容易に高めることができるため、好適である。一方、最初から無機塩基のみで反応させることは、加水分解反応がやや遅く進行し得るため、できれば避けることが好ましい。また、通常、塩基触媒による縮合は、平衡反応であって、エネルギー的に安定な構造に落ち着くため、高次構造をコントロールしにくい場合がある。予め他の触媒で反応させた後に無機塩基で短時間処理した場合、シロキサン結合の分解反応よりも縮合反応の方が優先的に進むため、最初の触媒で形成した高次構造を維持しながら縮合率を向上させることができ、好適である。
上記の有機錫とは、錫原子に少なくとも一つの有機基が結合しているものを指す。その構造としては、モノ有機錫、ジ有機錫、トリ有機錫やテトラ有機錫などが挙げられ、中でも、反応を制御しやすい観点から、ジ有機錫が好ましい。また、加水分解及び縮合時のオキシラン環の開環を抑制でき、並びに樹脂組成物の分子量の制御が容易であるという観点から、前記有機錫の中でも有機錫カルボン酸塩が好ましい。
前記有機錫としては、以下に制限されないが、例えば、四塩化錫、モノブチル錫トリクロライド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫トリクロライド、テトラn−オクチルチン、テトラn−ブチルチン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ステアレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫・ケイ素エチル反応物、ジブチル錫塩とシリケートの化合物、ジオクチル錫塩とシリケートの化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソノニル3−メルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジドデシルメルカプト、ジオクチル錫バーサテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレート)、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、オクチル酸錫、及びステアリン酸錫が挙げられる。これらの中でも、反応を制御しやすいという観点から、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、及びジオクチル錫ジアセテートが好ましい。
上記固体酸触媒としては、以下に制限されないが、例えば、アンバーリスト15(商品名、オルガノ社製)、ダイヤイオンPK(商品名、三菱化学社製)及びピュロライトCT(商品名、ピュロライト社製)などのイオン交換樹脂、ナフィオン(商品名、デュポン社製)などのフッ化スルホン樹脂、活性白土、硫酸ジルコニア、並びにゼオライトが挙げられる。これらの中でも、価格面からは活性白土が好ましく、取り扱いやすさの面からはイオン交換樹脂が好ましい。前記固体酸触媒は、反応後に反応系から除去することができるため、好適に用いることができる。触媒を除去することにより、意図しない縮合反応を抑制することができる。前記固体酸触媒の除去方法としては、以下に制限されないが、例えば、減圧濾過、加圧濾過及び常圧濾過が挙げられる。
上記の触媒の添加量は、特に制限されることはないが、シラン化合物に対して、0.0005〜50mol%であることが好ましく、0.001〜5mol%であることがより好ましく、0.005〜3mol%であることがさらに好ましく、0.01〜1mol%であることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、触媒を添加したことによる効果が十分に得られるとともに、反応のコントロールがより容易となり得る。
上記ハイブリッド硬化体の原料となる、本実施の形態に係る樹脂組成物に関し、アルコキシシランの加水分解及び縮合によって合成されるシリコーンの平均組成は、下記式(2)で表される。
(化6)
R1 aSi(OX)bO(4−a−b)/2・・・(2)
上記式中、R1は同一の又は異なる有機基を表し、OXは同一の若しくは異なる加水分解性基又は水酸基を表し、a及びbはそれぞれ独立して0〜3の整数である。)
その際、前記シリコーンの縮合率は下記式(3)で表される。
(数8)
縮合率=100×{(4−a−b)/(4−a)}・・・(3)
式(3)で表されるシリコーンの縮合率は、30〜99%であることが好ましく、50〜98%であることがより好ましく、70〜97%であることがさらに好ましく、85〜96%であることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、加水分解性基やシラノール基の残存量を有意に少なくすることができるため、成形時におけるボイド等の発生を効果的に防止できる。加えて、シラノール基による接着力が有意に向上し得る。接着性の観点から、一般式(3)におけるOXのうち、水酸基(OH)である割合は30%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、75%以上であることがさらにより好ましい。
また、上記ハイブリッド硬化体の原料となる、本実施の形態に係る樹脂組成物の製造に関し、下記式(4)で表されるD体の構造単位を、原料であるアルコキシシランの総量のうち、5〜99mol%含むことが好ましく、10〜95mol%含むことがより好ましく、20〜90mol%含むことがさらに好ましく、30〜90mol%含むことがさらにより好ましい。D体の構造単位は運動性に優れるため、粘度がより低く、応力緩和性に優れ、結果として硬化歪みを解消しやすい。特に運動性の観点から、R1R2はメチル基及びエチル基の少なくとも一方を含むことが好ましく、R1R2がメチル基を含むことがより好ましい。R1R2がメチル基のアルコキシシランの量は、全アルコキシシランのうち5〜70mol%であることが好ましく、5〜50mol%であることがより好ましく、5〜30mol%であることがさらに好ましい。
(化7)
R1R2Si(OX)2・・・(4)
上記式中、R1及びR2は同一の又は異なる有機基を表し、OXは同一の又は異なる加水分解性基、又は水酸基を表す。
このように、上記式(4)で表されるD体の構造単位を上記した範囲で含むアルコキシシランを加水分解及び縮合してシリコーンを得、かかるシリコーンを有機化合物と混合することが、本実施の形態に係る樹脂組成物を製造するに当たり、好適である。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、保存安定性に優れることが好ましい。本実施の形態における保存安定性とは、前記樹脂組成物を密閉容器中、60℃で72時間保存した場合の粘度変化で表される。前記保存安定性を表す、初期の粘度に対する72時間後の粘度の比は、0.90〜3.0であることが好ましく、0.95〜2.0であることがより好ましく、0.99〜1.5であることがさらに好ましく、1.0〜1.1であることがさらにより好ましい。上記範囲内の場合、低分子の遊離を効果的に抑制できる結果、揮発分量を有意に低減させることができ、加えて経時的な物性変化を防止できる。
保存安定性を向上させる方法として、以下に制限されないが、第1に触媒を除去及び失活させる方法、第2にシラノールを封止する方法が考えられる。前記第1の方法として、固体触媒を用いた場合には濾過などの手段が有効である。酸触媒や塩基触媒を用いた場合には中和などの手段が有効である。また、触媒を活性炭などで吸着除去することも可能である。前記第2の方法として、シラノール基と反応する化合物であれば特に制限なく使用できるが、シラノールの封止後に加水分解されにくい基とすることが好ましい。例えば、アルコール類であれば高級アルコールの方が好ましく、また、3置換のケイ素化合物は好ましい。
前記3置換のケイ素化合物の置換基としては、以下に制限されないが、例えば、アルキル基及びアリール基、並びに各種の反応性基が挙げられる。具体的に説明すると、疎水性を高めたい場合にはアルキル基が好ましく、硬化前の有機化合物との相溶性を高めたい場合にはアリール基が好ましく、硬化時の相分離を抑制するためには有機化合物と反応し得る反応性基を導入するのが好ましい。
3置換のケイ素化合物を導入する手段としては、以下に制限されないが、一般に、シリル化剤と呼ばれる化合物を好適に使用することができる。前記シリル化剤として、以下に制限されないが、例えば、トリメチルスルホキソニウムアイオダイド、2,2,2−トリフルオロ−1−トリメチルシロキシ−N−トリメチルシリルエタンイミン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、及びメトキシトリメチルシランが挙げられる。前記シリル化剤は、トリメチルシリル基を導入するための化合物であるが、アリール基や反応性官能基を有する類似の化合物も同様に「シリル化剤」として使用できる。これらの化合物(試薬)は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。合成後のシリコーンをこれらの試薬で処理してもよいし、分子量を調整するために加水分解反応及び縮合反応の途中で使用してもよい。その際、加水分解反応及び縮合反応を促進するための触媒を使用してもよい。
ここで、加水分解反応及び縮合反応の条件としては、以下に制限されないが、水や溶媒などを除去した後にこれらの反応を行うことが好ましい。水が存在している場合、3置換のケイ素化合物のシラノール体が不純物として生成する場合がある。溶媒が存在している場合、反応効率が低下する可能性がある。また、樹脂組成物が高粘度の場合には、反応試薬を過剰に用いてシリル化した後に、残存しているシリル化剤を回収することが好ましい。
反応性官能基としてエポキシ基を有する有機化合物は、以下に制限されないが、その分子内にオキシラン環を有していればよい。高度な架橋構造を形成するには、1分子中に2個以上のオキシラン環を含むことが好ましい。上記のエポキシ基を有する有機化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせても用いてもよい。以下に制限されないが、例えば、架橋硬化反応によって得られるエポキシ樹脂、エポキシ基含有(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ基含有熱硬化型ポリイミド樹脂、エポキシ基含有ユリア樹脂、エポキシ基含有メラミン樹脂、及びエポキシ基含有不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも、反応性が高く、且つ相分離構造を制御しやすいという観点から、エポキシ樹脂及びエポキシ基含有(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
前記エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、100〜1,000g/eqであることが好ましく、より好ましくは100〜700g/eq、さらに好ましくは100〜500g/eqであり、さらにより好ましくは100〜300g/eqである。上記範囲内の場合、分子運動性に優れ、且つ硬化速度を増大させることができる。なお、前記エポキシ当量の測定方法は、後述する実施例で用いたものと同じ方法である。
また、前記エポキシ樹脂は、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以下の液体であることが好ましく、より好ましくは100,000mPa・s以下の液体であり、さらに好ましくは10,000mPa・s以下の液体であり、さらにより好ましくは1,000mPa・s以下の液体である。上記範囲内の場合、製造条件の制限を回避できるため、製造がより容易となって好適である。
前記エポキシ樹脂の種類は、以下に制限されないが、例えば、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、及びハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。中でも、容易に入手可能であり、且つ硬化体として良好な物性を付与できるという観点から、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、及び環式脂肪族エポキシ樹脂が好ましく、環式脂肪族エポキシ樹脂がより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の環式脂肪族エポキシ樹脂とは、環式脂肪族エポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限されることはないが、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基及びシクロペンテンオキサイド基などを有するエポキシ樹脂が挙げられる。なお、環式脂肪族エポキシ基については上述した通りである。環式脂肪族エポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、及び1,2,8,9−ジエポキシリモネンが挙げられる。
上記のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に制限されることはない。かかる多官能エポキシ樹脂の骨格としては、以下に制限されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,6−ジ(t−ブチル)ハイドロキノン、ピロガロール、及びジイソプロピリデン等の骨格を有するフェノール類;1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;並びにフェノール化ポリブタジエンが挙げられる。上記の中でも、透明性と流動性に優れるタイプのものが多く市販され安価に入手可能であり、且つ硬化体とした時に耐冷熱衝撃性に優れるという観点から、ビスフェノールA骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂として、上述したポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂を使用する場合の繰り返し単位は、以下に制限されないが、好ましくは50未満、より好ましくは0.001〜5、さらに好ましくは0.01〜2である。上記範囲内の場合、流動性が一層向上し、実用上有利となる。
上記ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及びナフトール類などの各種フェノールを原料とするノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、並びにキシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、及びフルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂などの各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
上記芳香族エポキシ樹脂の核水素化物としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール等)のグリシジルエーテル化物、各種フェノール(フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類など)の芳香環を核水素化したもの、及びノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物の核水素化物が挙げられる。
上記脂肪族系エポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、及びキシリレングリコール誘導体などの多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。
上記複素環式エポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、イソシアヌル環及びヒダントイン環などの複素環を有する複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。
上記グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、以下に制限されるものではなく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂が挙げられる。
上記グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、及びジアミノメチルベンゼン誘導体などのアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
上記ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、及びクロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
本実施の形態に係る樹脂組成物(第2の本実施の形態)及びその硬化体(第1の本実施の形態)には、本実施の形態に所望の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、各種の有機樹脂、無機充填剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、シリコーン系化合物、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、酸化防止剤、及び光安定剤などを適宜添加することができる。その他、樹脂用の一般的な添加剤(可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤、発泡剤、抗菌・防カビ剤、導電性フィラー、防曇剤、架橋剤など)として市販されているものを、配合してもよい。
ここで、上記有機樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリイミド樹脂が挙げられる。中でも、反応性の高い有機基を有するものが有利であるという観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
上記レベリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、並びにチタン系カップリング剤が挙げられる。これらのレベリング剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記無機充填剤としては、以下に制限されないが、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、及び二硫化モリブデン等が挙げられる。中でも、好ましくはシリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウムである。硬化体の物性を考慮すると、より好ましくはシリカ類である。
上記滑剤としては、以下に制限されないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸などのマグネシウム、カルシウム、カドミウム、バリウム、亜鉛、鉛などの金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられる。これらの滑剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)とを有する両親媒性物質を意味する。また、その種類としては、以下に制限されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記シリコーン系化合物としては、以下に制限されないが、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン縮合物、シリコーン部分縮合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ポリシロキサンが挙げられ、その両末端、片末端又は側鎖に有機基を導入して変性したものも含まれる。その変性の方法として、以下に制限されないが、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、フェノール変性、シラノール変性、ポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性、及びジオール変性が挙げられる。
上記反応性希釈剤としては、以下に制限されないが、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アルキルフェノールのモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6―ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アルカン酸グリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。一方、非反応性希釈剤としては、以下に制限されないが、例えば、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等の高沸点溶剤が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、以下に制限されないが、例えば、トリフェニルホスフェート、及びフェニルイソデシルホスファイトなどの有機リン系酸化防止剤、ジステアリル−3,3’−チオジプロピネートなどの有機イオウ系酸化防止剤、並びに2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
上記光安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ニッケル系、及びトリアジン系などの紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
これまで説明してきたように、本実施の形態に係る樹脂組成物及びその硬化体は、耐熱性、透明性、接着性及び応力緩和性に優れ、且つボイドやクラックといった欠陥のないという極めて有利な効果を発揮する。このような観点から、前記樹脂組成物及びその硬化体の用途としては、以下に制限されないが、例えば、電子材料(碍子類、交流変圧器、開閉機器等の注型及び回路ユニット、各種部品のパッケージ、IC・LED・半導体等の封止材、発電器、モーター等の回転機コイル、巻線含浸、プリント配線基板、絶縁ボード、中型碍子類、コイル類、コネクター、ターミナル、各種ケース類、電気部品類等)、塗料(防蝕塗料、メンテナンス、船舶塗装、耐蝕ライニング、自動車・家電製品用プライマー、飲料・ビール缶、外面ラッカー、押出チューブ塗装、一般防蝕塗装、メンテナンス途装、木工製品用ラッカー、自動車用電着プライマー、その他工業用電着塗装、飲料・ビール缶内面ラッカー、コイルコーティング、ドラム・缶内面塗装、耐酸ライニング、ワイヤーエナメル、絶縁塗料、自動車用プライマー、各種金属製品の美装兼防蝕塗装、パイプ内外面塗装、電気部品絶縁塗装等)、複合材料(化学プラント用パイプ・タンク類、航空機材、自動車部材、各種スポーツ用品、炭素繊維複合材料、アラミド繊維複合材料等)、土木建築材料(床材、舗装材、メンブレン、滑り止め兼薄層舗装、コンクリート打ち継ぎ・かさ上げ、アンカー埋め込み接着、プレキャストコンクリート接合、タイル接着、コンクリート構造物の亀裂補修、台座のグラウト・レベリング、上下水道施設の防蝕・防水塗装、タンク類の耐蝕積層ライニング、鉄構造物の防蝕塗装、建築物外壁のマスチック塗装等)、接着剤(金属・ガラス・陶磁器・セメントコンクリート・木材・プラスチック等の同種又は異種材質の接着剤、自動車・鉄道車両・航空機等の組み立て用接着剤、プレハブ用複合パネル製造用接着剤等:一液型、二液型、シートタイプを含む。)、航空機・自動車・プラスチック成形の治工具(プレス型、ストレッチドダイ、マッチドダイ等樹脂型、真空成形・ブロー成型用モールド、マスターモデル、鋳物用パターン、積層治工具、各種検査用治工具等)、改質剤・安定剤(繊維の樹脂加工、ポリ塩化ビニル用安定剤、合成ゴムへの添加剤等)等、封止剤(半導体用途、発光ダイオード(LED)の用途、液晶用途)が挙げられる。
上記封止材とは、液体や気体等の物質(異物)が、部品の内部に入り込まないように封止するための材料のことをいう。前記物質(異物)には、温度、湿気やホコリ等の物理的衝撃なども含まれる。
これらの用途において、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂やガラス等からなる他の部材を併用してもよい。
また、本実施の形態に係る樹脂組成物及びその硬化体は、半導体・LED周辺材料(レンズ材、基板材、ダイボンド材、チップコート材、積層板、光ファイバー、光導波路、光フィルター、電子部品用の接着剤、コート材、シール材、絶縁材、フォトレジスト、エンキャップ材、ポッティング材、光ディスクの光透過層や層間絶縁層、プリント配線板、積層板、導光板、反射防止膜等)等の用途にも利用できる。
上記レンズ材の例としては、以下に制限されないが、光学機器用レンズ、自動車ランプ用レンズ、メガネレンズ、CD・DVD等のピックアップ用レンズ、及びプロジェクター用レンズが挙げられる。
LED封止材の用途としては、以下に制限されないが、ディスプレイ、電光表示板、信号機、ディスプレイのバックライト(有機ELディスプレイ、携帯電話、モバイルPC等)、自動車の内外装証明、イルミネーション、照明器具及び懐中電灯といった広い分野へ展開することができる。
本実施の形態に係る樹脂組成物及びその硬化体には、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、他の物質が添加されてもよい。かような他の物質の例としては、以下に制限されないが、溶剤、油脂、油脂加工品、天然樹脂、合成樹脂、顔料、染料、色素、剥離剤、防腐剤、接着剤、脱臭剤、凝集剤、洗浄剤、脱臭剤、pH調整剤、感光材料、インク、電極、めっき液、触媒、樹脂改質剤、可塑剤、柔軟剤、農薬、殺虫剤、殺菌剤、医薬品原料、乳化剤・界面活性剤、防錆剤、金属化合物、フィラー、化粧品・医薬品原料、脱水剤、乾燥剤、不凍液、吸着剤、着色剤、ゴム、発泡剤、着色剤、研磨剤、離型剤、凝集剤、消泡剤、硬化剤、還元剤、フラックス剤、皮膜処理剤、鋳物原料、鉱物、酸・アルカリ、ショット剤、酸化防止剤、表面被覆剤、添加剤、酸化剤、火薬類、燃料、漂白剤、発光素子、香料、コンクリート、繊維(カーボンファイバー、アラミド繊維、ガラス繊維など)、ガラス、金属、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、及び粘稠剤が挙げられる。
[第3の本実施の形態:複合透明シート]
第3の本実施の形態に係る複合透明シートは、上記第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体とフィラーとを含有する。また、前記複合透明シートは、前記樹脂組成物とフィラーとを混合し、熱又はエネルギー線で硬化しながらシート状にプレスすることにより得られる。
上記の硬化体及び樹脂組成物はそれぞれ、耐熱性及び成形性に優れるため、フィラーと複合化することによって、熱膨張率が低く、温度変化に伴う弾性率の変化が小さく、且つ平滑性に優れた複合透明シートが得られる。前記フィラーは、透明性向上の観点から、可視光波長よりも小さなフィラーであるか、又は可視光領域に吸収のないフィラーであることが好ましい。
上記した本実施の形態の樹脂組成物は無機成分を含むため、フィラーを均質に分散させやすいという利点がある。したがって、本実施の形態に係る複合透明シートは、高度に複合化して形成されており、熱膨張率が低く、温度変化に伴う弾性率の変化が小さく、平滑性に優れ、光線透過率が高く、且つ面内の光学的物性のバラツキが少ないのである。
前記フィラーとしては、以下に制限されないが、例えば、炭素繊維、セルロース類、無機化合物及びガラスが挙げられる。中でも、耐熱性に優れるという観点から、無機化合物及びガラスが好ましく、ガラスがより好ましい。フィラーの形状としては、以下に制限されないが、例えば、粒子状、不定形、繊維状や網目状などから自由に選ぶことができる。また、シート平面の線膨張係数(後述)を低減する観点から、フィラーが連続相を形成することが好ましく、具体的には繊維状又は網目状の形状を用いることが好適である。これらのフィラーは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記フィラーの含有量は、得られる複合透明シートに対して、1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。上記範囲内の場合、複合化による低線膨張化の効果が大きくなるとともに、成形性が有意に向上し得る。
上記無機化合物としては、以下に制限されないが、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、及び二硫化モリブデンが挙げられる。好ましくは、シリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び珪酸カルシウムである。硬化体の物性を考慮すると、シリカ類がより好ましい。
上記ガラスフィラーとしては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、及びミドルガラスが挙げられる。中でも、線膨張係数(後述)の低減効果が一層高いという観点から、ガラス繊維、ガラスクロス、及びガラス不織布が好ましく、ガラスクロスがより好ましい。ガラスの種類としては、以下に制限されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、及び石英ガラスが挙げられる。中でも、樹脂としての屈折率制御が容易で、且つ入手が容易であるという観点から、Sガラス、Tガラス及びNEガラスが好ましい。ガラスクロスの厚み、織り密度及び織り組織は、目的とするシリコーン・エポキシのハイブリッド系ガラスクロス複合体シートに応じて選択され得る。また、樹脂含浸性や表面凹凸を改良するという観点から、ガラスクロスの糸束を物理的に開繊することは好適且つ有効な手法である。
フィラーの表面に、シランカップリング剤、各種界面活性剤、及び無機酸による洗浄などの処理を施すことは、フィラーと樹脂との界面における濡れ性、親和性及び密着性を高めることとなるため、好ましい。
本実施の形態に係る複合透明シートは、その具体的な用途として表示素子用基板としての利用が考えられるために実用上の性能の一つとして透明性に優れることが好ましい。そのために、硬化体又は樹脂組成物とフィラーとの屈折率の差が可能な限り小さいことが好ましい。ここで屈折率とは、ナトリウムD線(波長589.2nm)を用いて測定された値(nD)が用いられる。前記硬化体又は樹脂組成物とフィラーとの屈折率の差は、0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。上記範囲内の場合、透明性が向上し得る。
上記第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体のアッベ数は、シートの色収差を最小にするという観点から、40以上であることが好ましい。ここで、アッベ数と色収差との関係は、前記シートを構成する上記硬化体とフィラーとの屈折率の差によって生ずる光波長の分散性又は分光性に起因するものである。そして、色収差が大きいほどシートを通して見える像が「にじ色」になり表示基板としての性能を著しく低下させる。そこで、かかる色収差の程度の指標として、アッベ数が用いられる。アッベ数Vは下記式(9)によって表され、アッベ数が高い数値であるほど色収差が小さくなるという関係にある。
(数9)
アッベ数(V)=(nD−1)/(nF−nC)・・・(9)
上記式中、nD、nF及びnCは、材料の波長がそれぞれD−589.2nm、F−486.1nm及びC−656.3nmの光に対する屈折率である。
上記のハイブリッド硬化体の屈折率やアッベ数を調整するためには、以下に制限されないが、有機化合物の構造を変えること、シリコーンの構造を変えること、分子体積を変えること、及び添加剤を加えることといった手段を組み合わせて実行することができる。特に、屈折率の高いガラスになるよう屈折率を調整するためには、チタンやジルコニウム等の高屈折微粒子を添加することが好ましく、また、チタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシド等を使用してアルコキシシランと縮合させることも好ましい。
本実施の形態に係る複合透明シートが呈する透明性とは、可視光線の波長領域での光線透過率が60%以上であり、好ましくは80%以上であることを意味する。前記可視光線の波長領域とは、400〜800nmである。
上記複合透明シートは、耐熱性及び接着性に優れた硬化体と、フィラーとが高度に複合化されているため、一層高い耐熱性を有する。ここで、「複合透明シートの耐熱性」とは、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率の変化が小さく、例えば、下記式(10)を満たすものを意味する。
(数10)
E1’25/E1’250≦1.8・・・(10)
上記式中、E1’25は動的粘弾性測定における25℃での透明樹脂シートの貯蔵弾性率を表し、E1’250は動的粘弾性測定における250℃での透明樹脂シートの貯蔵弾性率を表す。
上記透明樹脂シートの動的粘弾性が上記の関係式を満たすということは、温度変化によるシートの強度の低下が小さいことを示す。その結果、加熱によるシートの膨張や変形の度合いが小さくなる。
本実施の形態に係る複合透明シートは、光学的欠陥を有さない、即ち光学特性に優れることが好ましい。前記光学的欠陥とは、一般にボイドと呼ばれる空隙や、屈折率の異なる異物のことをいう。ボイドの原因については、第1の原因として、硬化前の樹脂組成物とフィラーとを混ぜたときに混入する空気、第2の原因として、硬化時に発生するガス、そして第3の原因として、硬化時や温度サイクルを受けた時に生じる歪みが考えられる。第1の原因については、樹脂組成物とフィラーとを混合する時に温度を上げて低粘度化することや、真空脱泡を行うこと等の方法により低減することができる。第2の原因については、樹脂組成物中から余分な揮発分を除去しておくことや、ガスを発生する副次的反応を抑制すること等の方法により低減することができる。特に、シリコーン中にアルコキシ基が大量に残存する場合には、この第2の原因により発生するボイドが問題となり得るため、上記方法がとりわけ効果的である。第3の原因については、硬化時の温度条件や温度サイクルの条件を調整することや、樹脂中に応力緩和成分を導入すること等の方法により低減することができる。上記の硬化体や樹脂組成物は、上述した特定の緩和指標を満たす場合、一層応力緩和に優れる。そのため、前記複合透明シートはボイドを生じにくくなる。
本実施の形態に係る透明樹脂シートは、線膨張係数が小さいことが好ましい。本実施の形態における「線膨張係数」とは、25〜250℃における平均の線膨張係数のことを指す。線膨張係数は、1〜40ppmであることが好ましく、1〜30ppmであることがより好ましく、1〜20ppmであることがさらに好ましく、1〜12ppmであることがさらにより好ましい。上記第1の本実施の形態に係るハイブリッド硬化体は、シリコーンを含有しつつ相分離を抑制しているため、フィラーとの界面が強固である。また、上記第2の本実施の形態に係る樹脂組成物は上述した特定の緩和指標を有し、樹脂組成物とフィラーとの界面を柔軟に変化させることができる。これらの特徴から、前記ハイブリッド硬化体は、フィラーと複合化した場合に、顕著に線膨張係数を低減できる。
また、熱膨張係数はガラス転移温度の前後で急激に変化するのが通常であるが、ガラス転移温度を跨ぐような熱履歴が加わると、断線などの問題が起きやすくなってあまり好ましくない。前記複合透明シートのガラス転移温度前後での線膨張係数の差は、20ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることがさらにより好ましい。上記のハイブリッド硬化体は、熱による弾性率の変化が少なく、熱による熱膨張係数の変化も小さい傾向にあるため、好ましい。
本実施の形態に係る複合透明シートを、回路基板や表示素子基板などとして用いる場合、これらの基板の厚さは、好ましくは5〜2,000μmであり、より好ましくは10〜1,000μmであり、さらに好ましくは15〜200μmであり、さらにより好ましくは15〜80μmである。かかる基板の厚さが上記範囲内の場合、平坦性に優れるとともに、ガラス基板などと比較して基板の軽量化を図ることができる。このように、前記複合透明シートは、ガラス基板を代替することのできるものである。
シートの加工の際には、耐クラック性も重要となる。上記のハイブリッド硬化体は上述した特定の緩和指標を有することから、熱だけでなく物理的な衝撃も緩和することができる。加えて、フィラーと硬化体との界面が強固であるため、結果的に、前記ハイブリッド硬化体は耐クラック性に極めて優れる。
液晶などの用途の場合、シートの複屈折も重要となる。シートの面内複屈折は5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることがさらに好ましく、1nm以下であることがさらにより好ましい。硬化樹脂の場合、複屈折は応力に起因した歪みによって生じる。これに対し、上記ハイブリッド硬化体は応力緩和性に優れ、且つ歪みの程度が極めて小さいため、複屈折の発生を効果的に抑制できる。
本実施の形態に係る複合透明シートの製造方法は、特に制限されることはないが、泡などの異物が少なく、且つ均一な成形体を得やすいという観点から、上記樹脂組成物とフィラーとを混合する工程と、樹脂を硬化する工程とを有することが好ましい。以下に制限されないが、例えば、樹脂組成物とフィラーとを直接混合し、必要な型に注型した後で架橋させる方法、樹脂組成物を溶剤に溶解し、フィラーを分散させ、キャストした後に架橋させる方法、及び樹脂組成物をガラスクロスやガラス不織布に含浸させた後に架橋させる方法が挙げられる。
また、場合によっては、樹脂組成物とフィラーとを混合し、熱又はエネルギー線で硬化しながらシート状にプレスすることによって、シート表面を平滑化することも好ましい。ここで、エポキシ基が存在する場合、一般に高温下では酸素による劣化が生じやすいため、プレス加工は真空下、又は酸素を有さない不活性ガス下で行うことが好ましい。
また、本実施の形態に係る複合透明シートは、透明性に優れた各種の基板(表示素子用基板)に適用できる。その際、表面粗度を改善する目的、さらには組み立て工程における機械的又は化学的な損傷からの保護を目的として、前記基板の表面に、硬化性樹脂ワニスを塗布して硬化させた硬化皮膜を形成してもよい。前記硬化性樹脂ワニスとしては、以下に制限されないが、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のアクリル酸エステルを含有する光硬化性樹脂、o−クレゾールノボラック型及びビスフェノール型などのエポキシ樹脂、ウレタン、アクリル酸エステル及び不飽和ポリエステル等を含有する熱硬化性樹脂、並びに電子線硬化性樹脂が挙げられる。中でも、生産性などを向上させる観点から、光硬化性樹脂が好ましい。また、前記硬化皮膜は、実質的に透明で、光学的に等方性であることが好ましい。上記の基板に前記硬化皮膜を形成させる方法としては、以下に制限されないが、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、及びキスロールコート法が挙げられる。また、必要に応じて、樹脂のコート層、水蒸気や酸素に対するガスバリア層、及び透明電極層などを上記複合透明シートに設けてもよい。
また、上記複合透明シートを製造するに際し、上述の通り、前記樹脂組成物は、着色性を低減する(透明性を向上する)観点から、酸発生剤をさらに含有することが好ましい。
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例における物性の評価を以下で説明する。
[物性の評価]
<X線小角散乱法(SAXS)を用いた相分離構造サイズの測定>
X線小角散乱測定装置は、概略的にいえば、小角分解能を達成するためのブロックコリメータ光学系、空気散乱を排除する全真空チャンバー、及び検出器でダイレクトビーム位置とサンプル透過後のビーム強度とを同時に測定する半透過ビームストッパー等から一般的には構成される。しかし、測定対象物及びその性状、並びに測定対象のスケール等によって適宜、上記構成の取捨選択を行った。
(測定とデータの扱い)
測定対象とするサンプルに対してX線が散乱した強度は存在する電子密度全てを積分することにより得られ、下記式(11)で表される。
(数11)
・・・(11)
上記式中、qはθを散乱角度とすると散乱ベクトルであり、下記式(12)で表される。
(数12)
q=4πsin(θ/2)/λ・・・(12)
上記式(11)中、rは実空間での距離、δρは粒子などの相分離領域部分の密度、及びρaveは平均密度とする。サンプルを充填又は支持するキャピラリーや溶媒などは、X線を散乱する媒体となり得る。そのため、予め、前記キャピラリーや溶媒などをブランクとして測定し、吸収補正を行った後に散乱強度から差し引いた(即ち、上記式(11)における右辺第一項を差し引くことに相当する)。例えば、サンプル濃度が1質量%以下という希薄な系では、サンプルの相分離間相互作用は考えなくてよく、あたかも相分離成分のみが真空中に分散している状態とみなすことができるため、理想的な散乱プロファイルと比較した上での相分離構造(形状)に対する議論が可能となる。
(ギニエの法則に基づくデータの解析方法)
かかる方法を用いることにより、界面の情報を含んだ平均的な相分離構造の大きさを推定した。散乱体内部の密度が均一であると仮定し、形状(球体、ロッド状、板状など)を仮定し、且つ相分離構造が単分散であると仮定した。その上で、得られたデータ(散乱プロファイル)の低角度部分に対する線形直線近似を行った。具体的には、先に示した計算によって得られた散乱プロファイルに対してかかる解析方法を適用すると、近似された直線が得られ、その傾きから慣性半径(Rg)を計算した。実空間距離(r)と慣性半径(Rg)との間で、相分離構造が球体であると仮定した場合に、下記式(13)のような関係式が成り立つ。
(数13)
r=Rg×(5/3)1/2・・・(13)
<緩和時間の測定及び緩和指標の算出>
1H核の緩和時間の測定を以下の方法で行った。
JNM−MU25A核磁気共鳴装置(JEOL製)を用い、SolidEcho法のパルスを使用して、室温及び200℃における緩和時間T2を測定した。そして、上記の式(1)にT2の測定値をあてはめて、緩和指標を算出した。
<エポキシ当量(WPE)>
JIS K 7236:2001(エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方)に従って測定した。
<ハイブリッド硬化体の動的粘弾性スペクトルの測定>
セイコーインスツルメント株式会社製EXSTAR6000を使用し、2mm厚のサンプルを、1分間に5℃の割合で−120℃から300℃まで温度を上昇させ、曲げモードで測定した。
<ハイブリッド硬化体の耐熱性>
上述の通り、ハイブリッド硬化体の耐熱性の指標として、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率の温度依存性が挙げられる。そこで、上記した式(5)で表される弾性率比を算出することにより、ハイブリッド硬化体の耐熱性を求めた。
<黄色度(YI)>
YIは、3mm厚のサンプルをコニカミノルタ製のSPECTROPHOTOMETER CM−3600dを用いて測定した。その際、“ASTM D1925−70(1988):Test Method for Yellowness Index of Plastics”に準じて求めた。
<屈折率の測定>
アタゴ社製のアッベ屈折率計DR−M2を用いて、23℃で589nmの屈折率を測定した。
<複合透明シートの動的粘弾性スペクトルの測定>
レオメトリック社製RSAIIを用いて、1分間に5℃の割合で20℃から300℃まで温度を上昇させ、シートサンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。チャック間距離は20〜30mm、サンプル幅2〜4mm、測定周波数1Hz、歪み量は0.05%にし、引張りモードで測定した。
<複合透明シートの線膨張係数の測定>
セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS120を用いて、1分間に5℃の割合で30℃から330℃まで温度を上昇させ、線膨張率を測定した。チャック間の距離は10mm、サンプル幅2mm、荷重10gにし、引張りモードで測定した。下記式(14)に従い、50℃と300℃との間での平均のサンプル長さの変化率ΔLを線膨張係数とした。
(数14)
ΔL={(L300−L50)/L50}/(300−50)・・・(14)
上記式中、50℃でのサンプル長をL50、300℃でのサンプル長をL300とした。
<全光線透過率の測定>
JIS K−7105に準拠して測定した。
<光学的欠陥(ボイド)の観察>
マイクロスコープを用い、斜方から照明をあてて反射される散乱光を観察した。
<柔軟性>
シートを折り曲げた感触を評価した。ここで、柔軟性の評価は、下記表4に示すように、○と×とで行っている。「○」は、シートの両端を持って曲げた時に全体としてきれいに曲がる場合の評価に相当し、「×」は、シートの両端を持って曲げた時に、局所的に端部で曲がるか、又は折れてクラックが発生する場合の評価に相当する。また、「○」や「×」といった、樹脂シートの柔軟性に関する評価基準を、図3として視覚的且つ概略的に示した。即ち、図3は、後述する実施例14及び15並びに比較例8の樹脂シートの柔軟性に関する評価基準を示す概略図である。
[原材料]
次に、本発明に係る樹脂組成物を製造した「製造例」、並びに本発明に係るハイブリッド硬化体を製造した「実施例」、及びその対照区である「比較例」のそれぞれにおいて使用した原材料について、以下の1〜9で説明する。
1.エポキシ樹脂
(1)エポキシ樹脂A:ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、「BisA」という)
旭化成エポキシ株式会社製のAERを用いた。また、上記の方法により測定したエポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):187g/eq
・粘度(25℃):14.3Pa・s
(2)エポキシ樹脂B:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(以下、「脂環エポ」という)
ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイド2021Pを用いた。また、上記の方法により測定したエポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):131g/eq
・粘度(25℃):227mPa・s
(3)エポキシ樹脂C:水素化ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、「水添BisA」という)
ジャパンエポキシレジン株式会社製のYX8000を用いた。また、上記の方法により測定したエポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):205g/eq
・粘度(25℃):1,150mPa・s
2.アルコキシシラン化合物
(1)アルコキシシラン化合物A:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「GPTMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−403を用いた。
(2)アルコキシシラン化合物B:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下、「ECETMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−303を用いた。
(3)アルコキシシラン化合物C:3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(以下、「GPMDMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−402を用いた。
(4)アルコキシシラン化合物D:フェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−103を用いた。
(5)アルコキシシラン化合物E:ジフェニルジメトキシシラン(以下、「DPDMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−202SSを用いた。
(6)アルコキシシラン化合物F:フェニルメチルジメトキシシラン(以下、「PMDMS」という)
アズマックス株式会社製のSIP6740を用いた。
(7)アルコキシシラン化合物G:ジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」という)
信越化学工業株式会社製のKBM−22を用いた。
(8)アルコキシシラン化合物H:テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という)
信越化学工業株式会社製のKBE−04を用いた。
3.溶剤
テトラヒドロフラン(安定剤不含タイプ、和光純薬工業株式会社製)を用いた(以下、「THF」という)。
4.加水分解用及び縮合用触媒
(1)ジブチル錫ジアセテート(商品名:ジブチルすずジアセタート、東京化成株式会社製)を用いた(以下、「DBTDA」という)。
(2)酢酸として、和光純薬工業株式会社製のものを用いた。
(3)固体酸触媒として、イオン交換樹脂(AMBERLYST 15DRY、オルガノ株式会社製)を用いた。
(4)水酸化バリウム(商品名:無水水酸化バリウム、和光純薬工業株式会社製)を用いた。
(5)チタン触媒(Ti(OPr)4)(商品名:オルトチタン酸テトライソプロピル、東京化成株式会社製)を用いた。
(6)ジブチル錫ジラウリレートとして、和光純薬工業株式会社製のものを用いた(以下、「DBTDL」という)。
5.硬化剤
(1)熱カチオン硬化剤(CP−77、株式会社ADEKA製)を用いた。
(2)光カチオン硬化剤(SP−170株式会社ADEKA製)を用いた。
(3)アミン硬化剤(4、4’―ジアミノジフェニルメタン、和光純薬工業株式会社製)を用いた(以下、「DDM」という)。
6.シリル化剤
(1)トリメチルシラノール(LS−310、信越化学工業株式会社製)を用いた。
(2)ヘキサメチルジシラザン(Strem Chemicals Inc.社製)を用いた。
次に、樹脂組成物を製造した「製造例」について詳細に説明する。
[製造例1]
GPTMS 150g、PMDMS 142.5g、THF 146.3g及び水酸化バリウム 1.21gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、75gの水を一括で添加し、10時間還流を続けた。室温に冷却した後、水酸化バリウムを0.2μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を80℃で5時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン1を得た。
[製造例2]
GPTMS 75g、PMDMS 71.25g、THF 73.13g及びDBTDA 1.243gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、37.49gの水を一括で添加し、7時間還流を続けた。80℃で5時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン2を得た。
[製造例3]
GPTMS 75g、PMDMS 71.25g、THF 73.13g及びDBTDA 1.243gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、37.49gの水を一括で添加し、7時間還流を続けた。水酸化バリウム0.909gを加えて、さらに20分間撹拌を続けた。室温に冷却した後、水酸化バリウムを0.2μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を80℃で5時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン3を得た。
[製造例4]
水酸化バリウムと同時に、20gのトリメチルシラノールを加えた点以外は、製造例3と同様の操作を行い、シリコーン4を得た。
[製造例5]
GPTMS 150g、PMDMS 14.25g、イオン交換樹脂(AMBERLYST 15DRY)10g、及び水125gをフラスコに入れ、エバポレーターにセットした。オイルバスの温度を80℃とし、100kPaで生成するメタノールを留去しながら7時間反応させた後、イオン交換樹脂を濾過で除去した。得られた濾液を80℃で5時間エバポレートし、残ったメタノール及び水を除去して、シリコーン5を得た。
[製造例6]
GPTMS 24.25g、PMDMS 23.00g及びエタノール22.76gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、0.1M塩酸5.05gを添加して加水分解反応を開始した。1.5時間後に反応溶液の29Si−NMRを測定し、加水分解反応が進行していることを確認した。予め、別の容器にTi(OPr)4 10.75gを秤量し、同一の質量のエタノールを用いて希釈しておき、この希釈液を、加水分解後の溶液に20分間かけて室温でゆっくりと滴下し、そのまま室温で22時間攪拌した。エバポレーターを用いて、得られた液を室温で1.5時間濃縮して、シリコーン6を得た。
[製造例7]
GPTMS 55g、PMDMS 52g、THF 53.5g及び酢酸0.31gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、22.86gの水を一括で添加し、7時間還流を続けた。その後、80℃で5時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン7を得た。
[製造例8]
GPTMS 75g、PMDMS 71.25g及びDBTDA 1.243gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。32gの水を5時間かけて添加し、生成するメタノールを除去しながら反応を10時間続けた。さらに80℃で5時間エバポレートし、残ったメタノール及び水を除去した。その後、ヘキサメチルジシラザンを30g加えて、発生するアンモニアを除去しながら80℃で5時間反応させた。その後80℃で8時間エバポレートし、残ったヘキサメチルジシラザンを除去して、シリコーン8を得た。
[製造例9]
ECETMS 45g、DMDMS 13.12g及びDBTDA 0.92gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、9gの水を一括で添加し、4時間還流を続けた。室温まで冷却した後、脂環エポ41gを加え、均質になるまで撹拌した。その後80℃で2時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン9を得た。
[製造例10]
GPTMS 205g、GPMDMS 9.61g、PTMS 58.7g、PMDMS 258g、TEOS 64.8g、脂環エポ408g、DBTDL 8.46g及びTHF 288gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、155gの水を一括で添加し、9時間還流を続けた。その後80℃で10時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン10を得た。
[製造例11]
ECETMS 38.73g、DPDMS 37.65g、DMDMS 29.16g、PMDMS 18.06g、DBTDA 1.14g及びTHF 62.16gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、20gの水を一括で添加し、9時間還流を続けた。その後、室温まで冷却し、脂環エポ54gを投入し、均質に混ぜた後、80℃で7時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン11を得た。
[製造例12]
GPMDMS 50g、DBTDA 0.32g及びTHF 20gを、攪拌子を投入したフラスコに入れ、オイルバスにセットし、室温で混合攪拌した。溶液が均一に混合された後、オイルバスを80℃に加熱した。還流が始まった後、4gの水を一括で添加し、9時間還流を続けた。その後80℃で7時間エバポレートし、溶媒、メタノール及び水を除去して、シリコーン12を得た。
以上の製造例1〜12により得られた各シリコーン(1〜12)の物性を下記表1に纏めた。
表1中、縮合率は、上述した式(3)を用いて得られた値である。また、保存安定性は、上述した通り、樹脂組成物を密閉容器中60℃で72時間保存した場合の粘度変化で表される。具体的には、上記保存安定性の値は、初期の粘度に対する72時間後の粘度の比である。また、D体の構造単位の比率は、29Si−NMRにより求めた。
次に、ハイブリッド硬化体を製造した実施例、及びその比較例について詳細に説明する。
[実施例1〜8、12]
下記表2に示したように、上記製造例1〜9で得られたシリコーンとエポキシ樹脂とを完全に混合させた。その際、シリコーンとエポキシ樹脂とが混ざりにくい場合には、THFに溶解させて混合した後にTHFを留去した。得られた樹脂組成物に所定の硬化剤を加えた(表2参照)。その後、型枠に流し込み、表2に示した所定の条件で硬化を行った。上記各実施例で得られたハイブリッド硬化体の物性を下記表3に示す。
[実施例9〜11、13]
上記表1に示したように、上記製造例9〜11で得られた「シリコーン」は、シリコーンとエポキシ樹脂とを含有しており、樹脂組成物といえる。そのため、改めて実施例の中でエポキシ樹脂は添加しなかった(表2参照)。前記樹脂組成物に所定の硬化剤を加えた(表2参照)。その後、型枠に流し込み、表2に示した所定の条件で硬化を行った。上記各実施例で得られたハイブリッド硬化体の物性を下記表3に示す。
[比較例1〜6]
比較例2、4及び6においては、下記表2に示したように、製造例(2、12)のシリコーンと、エポキシ樹脂とを完全に混合させた。混ざりにくい場合には、THFに溶解させて混合した後にTHFを留去した。一方、比較例1、3及び5においては、上記表1に示したように、そもそもシリコーンを用いていない。
得られた樹脂組成物(比較例2、4及び6)又はエポキシ樹脂(比較例1、3及び5)に所定の硬化剤を加えた(表2参照)。その後、型枠に流し込み、表2に示した所定の条件で硬化を行った。上記各比較例で得られた硬化体の物性を下記表3に示す。
比較例1は、脂環エポのみであり、耐熱性に劣っていることを確認した。また、緩和指標が小さく、硬化体の中にクラックが入っているものもあった。
比較例2は、シリコーンとエポキシ樹脂との相分離構造のサイズ(Rg)が極めて大きいため、シリコーンによる耐熱性改善の効果が非常に小さいことを確認した。
比較例3は、BisAエポキシのみであり、耐熱性に劣ることを確認した。
比較例4は、アミン硬化であり、強く着色していることを確認した。また、脂環エポは、アミン系硬化剤と反応性が悪く、相分離しており耐熱性に劣ることも確認した。
比較例5は、水添BisAエポキシのみであり、耐熱性に劣ることを確認した。さらに、比較例2に比して、顕著に着色が目立つことも確認した。
比較例6は、アミン硬化であり、顕著に着色していることを確認した。
さらに、実施例9及び比較例1で得られた(ハイブリッド)硬化体の耐熱性を詳細に比較した。図4は、(ハイブリッド)硬化体の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。即ち、温度(横軸)に対する貯蔵弾性率E’(左縦軸)とtanδ(右縦軸)との関係を示した。図4より、高温領域において、実施例9の方がE’は安定して高く、tanδは安定して低い値を示しており、より耐熱性に優れていることが分かる。なお、比較例1では、高温領域において、E’が低下していき、tanδが急激に高くなることが分かる。
[比較例7]
10gのコンポセランE202C(荒川化学株式会社製)、及び1gのCP77を混合した。その後、真空脱泡を試みたところ、大量の泡が発生した。泡の発生が収まらないため、10分後に脱泡を停止し、型枠に流し込んで90℃で1時間、続いて180℃で1時間、続いて200℃で10分、硬化させた。結果として、メトキシ基の残量が多いため、泡の発生が激しく、測定に適した硬化体は得られなかった。
[実施例14、15]
実施例10(実施例14用)、実施例11(実施例15用)における樹脂組成物(硬化前の液状物)を、Tガラス系ガラスクロス(日東紡製;ガラス繊維径:5μm及び集束数:200本を、織密度:縦60本/25mm及び横46本/25mmで平織りして得た厚さ100μmのものを、開繊処理及びカチオン系シランカップリング処理したもの;屈折率1.520)にそれぞれ含浸させた。次に、これらを、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら、150℃で1時間、続いて200℃で1時間、熱硬化した。前記熱硬化について説明すると、前記樹脂組成物に、実施例14では実施例10で用いた硬化剤、及び実施例15では実施例11で用いた硬化剤をそれぞれ加えた。その後、型枠に流し込み、上記の表2に示した該当条件で硬化を行った。このようにして、樹脂シート(複合透明シート)を得た。得られた樹脂シートはいずれも、厚さ100μmで、屈折率は1.524であり、透明であった。緩和指標のより大きな実施例11における樹脂組成物を使用した方が、線膨張係数が小さくなる傾向であった。樹脂シートの物性の測定結果を下記表4に示す。また、図5もかかる傾向を示している。
図5は、複合透明シートの線膨張係数(TMA)の測定結果を示すグラフである。傾きが線膨張係数に相当する。図より、温度全域に亘って、実施例14の方が線膨張係数が小さくなる傾向であることが分かる。
[比較例8]
比較例1で得られた樹脂組成物(硬化前の液状物)を用いて、実施例14と同様にして樹脂シートを得た。緩和指標が小さいため、成形時にボイドが発生し、外観が白っぽいことを確認した(図6)。樹脂シートの物性の測定結果を下記表4に示す。図6は、比較例8のボイドの観察結果を示す光学顕微鏡写真である。白く見える点がボイドを示す。なお、図6に示した尺度は、50.00μmである。
[比較例9]
実施例9で得られた樹脂組成物(硬化前の液状物)を用いて、実施例14と同様にして樹脂シートを得た。屈折率が一致していないため、目視でガラスが見えて不透明であった。