JP5297598B2 - 硬化性エポキシ樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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特許文献6にはチタネート系カップリング剤を併用してチタンアルコキシドとエポキシ樹脂を複合化した硬化性樹脂組成物が開示されている。しかし、一般にチタネート系カップリング剤は黄色〜褐色に着色しており、光学材料を目的とした樹脂組成物の調製に用いるには適さない。
以上の特許文献3〜8に開示されたすべてのエポキシ樹脂組成物については、金属酸化物との複合化により強度、耐湿性、耐熱性、抗菌性等の物性が付与されているが、屈折率などの光学特性については何ら記載がない。
特許文献11には、メルカプト基およびアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物とエポキシ化合物との反応生成物、およびチタン酸エステルからなるプライマー組成物が開示されている。このチタン酸エステルは該有機ケイ素化合物の加水分解触媒として添加されたものであり、屈折率などの光学特性に対する効果については何ら記載がない。
すなわち、本発明は、以下に記載する通りの硬化性エポキシ樹脂組成物、その硬化物及びその製造方法を提供するものである。
(2)(1)の硬化性エポキシ樹脂組成物を加水分解縮合反応を含む工程により硬化させて得られる硬化物。
(3)波長589.3nmにおける屈折率が1.59以上であることを特徴とする(2)記載の硬化物。
(4)(2)又は(3)に記載の硬化物からなる光学部材。
(5)エポキシ樹脂(a−1)のエポキシ基に対し、1分子中に1個のメルカプト基と少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルコキシ基を同時に有するシラン化合物(a−2)を反応させてアルコキシシリル基変性エポキシ樹脂(A)を製造する工程、および該(A)を、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1つの金属アルコキシドおよび/またはその加水分解部分縮合物(B)および水(C)の共存下に加水分解縮合反応する工程を含み、前記(A)成分に対する前記(B)成分の使用量が、前記金属アルコキシド由来の金属の含有量が硬化物中の金属酸化物に換算して5〜50質量%となる量である硬化物の製造法。
<(A)成分>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する(A)成分のアルコキシシリル基変性エポキシ樹脂は以下に説明する(a−1)成分と(a−2)成分とを反応させることによって得られる。
[(a−1)成分:エポキシ樹脂]
本発明の(a−1)成分として用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであり、公知のエポキシ樹脂が使用できる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テトラフェニロールエタン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、メチルカテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール系のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらフェノール系グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の芳香環を水添して得られる水添エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールなどのアルコール系のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロ無水フタル酸やダイマー酸などを原料としたグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントイン、イソシアヌル酸、ジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物などの脂環式エポキシ樹脂;1,3−ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラキス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどのエポキシシリコーン化合物等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。これらの中で特にビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好適に使用される。
本発明の(a−2)成分として用いられる1分子中に1個のメルカプト基及び少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルコキシ基を同時に有するシラン化合物は、メルカプト系シランカップリング剤として通常市販されているものであり、それらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。具体例を示すと、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。メルカプト基は、エポキシ基に対する反応性が高い上、反応・硬化後も着色が生じない、硫黄原子の効果により高い屈折率が期待できるという点で1級アミノ基などよりも好適に使用される。
以上述べた(a−1)成分と(a−2)成分の付加反応は核磁気共鳴分析法(1H−NMR法)やフーリエ変換赤外分光分析法(FT−IR法)などの分析手法により追跡することができる。
本発明の(B)成分は、高い屈折率を付与するための成分であり、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属アルコキシドおよび/またはその加水分解部分縮合物である。金属アルコキシドの具体例としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンt−ブトキシド、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムn−テトラブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの中でも特にチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシドが適度な反応性を有し、かつ高屈折率化に有利であることから良好に使用できる。
(C)水は(A)成分のアルコキシシリル基と加水分解反応させて、アルコキシシリル基の一部又は全部をシラノール基に変えるために添加される。そして、(A)成分のアルコキシシリル基及び上記のようにして生成したシラノール基は(B)成分との間で加水分解縮合を行うことで本発明の硬化物が得られる。
この際、(A)成分に対する(C)水の添加量は、(A)成分中のアルコキシシリル基1モルに対し1〜3モルとすることが好ましい。
上記のように、(A)成分と(C)成分の混合物に(B)成分を添加し、(A)成分のアルコキシシリル基ないしシラノール基と(B)成分の間で加水分解縮合を行うことで硬化物を得る。この際縮合を促進する目的で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレートなどの縮合触媒を添加することができる。反応は20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは50〜100℃の範囲で行われ、縮合反応によって生ずる水、アルコール、残存する溶媒を除去しながら1〜100時間、好ましくは2〜50時間の範囲で硬化させる。硬化方法に制限はないが、例えばコーティング、キャスティング、ポッティングなどの方法で所定の形状に賦型し、オーブンや熱プレスなどで加熱硬化することができる。
物性の測定は以下に述べる方法により行った。
(1)付加反応の追跡
フーリエ変換核磁気共鳴分析装置(日本電子(株)製、JNM−GSX)を用いて1H−NMRスペクトルを測定することにより行った。磁場強度は400MHz、積算回数は32回である。測定溶媒には重クロロホルム(CDCl3)を、内部標準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
フーリエ変換赤外分光分析装置(Perkin Elmer社製、SPECTRUM2000)を用い、KBr法によりIRスペクトルを測定することにより行った。
アッベ屈折計(アタゴ(株)製、NAR−2T)を用いて測定を行った。光源としてNa線単色光(589.3nm)、試験片とプリズム間の中間液としてイオウヨウ化メチレン(nD=1.78)を用いた。試験片は硬化物を8×20×3mmの直方体状片に切り出し、耐水研磨紙2000番で研磨後、さらにアルミナで研磨したものを用いた。
硬化物の相構造を観察するために透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1210)を使用した。ウルトラミクロトーム((株)ライカ製、REICHERT ULTRACUT E)およびダイヤモンドナイフ(住友電工(株)製、SUMI KNIFE SK1045)を用い、厚さ50nmの超薄膜片を作製し、この薄膜片を銅メッシュ上に載せ観察した。
(1)アルコキシシリル基変性エポキシ樹脂の合成
グローブボックス内でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、MW=380)10.0質量部に3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン10.6質量部とジメチルベンジルアミン0.41質量部を加え60℃で撹拌した。変性反応に伴う発熱が認められ、発熱がなくなるまで1時間撹拌を続けた。
得られたメルカプトシラン変性エポキシ樹脂の構造を確認するため、FT−IRを測定したところ、4530cm−1に現れるエポキシ基の伸縮振動のピークと2568cm−1に現れる−SH基の伸縮振動のピークが完全に消失していることが確認された。また1H−NMR測定においても−SH基(1.35ppm)と、エポキシ基の3級水素(3.35ppm)のピークが消失していることが確認され、エポキシ基とメルカプト基が定量的に反応していることが判った。さらには3−メルカプトプロピルトリメトキシシランに由来するメトキシ基は未反応のまま残存していることが判った。
上記(1)で調製したメルカプトシラン変性エポキシ樹脂1モルを基準として、水6モル、塩酸(HCl)0.4モル、イソプロパノール14.8モルを加え室温で5秒間撹拌した。続いてジブチルスズジラウレート0.012モル、チタンテトライソプロポキシド1.05モル(硬化物中のチタンの理論含有量が酸化チタン(TiO2)換算で9.0質量%となる量)を加え、さらに5秒間撹拌した。得られた溶液を型に入れ大気圧下で2日間静置して揮発成分を除去した後、80℃の恒温槽内で48時間反応させ、厚さ約2mmの硬化物を得た。この硬化物は着色もなく透明性に優れたものであった。
上記(2)で得た硬化物のFT−IRを測定し、Si−O−Si結合に由来する1034cm−1の吸収とSi−O−Ti結合に由来する920cm−1の吸収が確認された。また硬化物のTEM観察を行ったところ、無機成分の凝集と考えられるドメイン構造は見られず均一な構造が確認された。Si−O−Ti結合の生成によりチタンが系中に均一に相溶し、優れた透明性が得られたと推定された。
実施例1と同じ手順に従い、チタンの理論含有量が酸化チタン(TiO2)換算でそれぞれ2.8、5.2質量%となるようにチタンテトライソプロポキシドを加え硬化させた。得られた硬化物はいずれも着色がなく透明性に優れたものであった。
実施例1において、チタンテトライソプロポキシドは使用せず、メルカプトシラン変性エポキシ樹脂のみを加水分解縮合し、硬化させた。
実施例1〜3および比較例1で得られた硬化物の屈折率を表1にまとめた。本発明の方法を用いることにより、硬化物の透明性を維持したまま高い屈折率が付与できることが分かる。
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤からなる硬化物中にチタンテトライソプロポキシドを複合化する従来の方法を検討した。
窒素を充填したグローブボックス内においてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、MW=380)に化学当量のテトラエチレンペンタミンと、チタンテトライソプロポキシドを酸化チタン(TiO2)換算で、6.0質量%(比較例3)および10.0質量%(比較例4)になるように添加し、減圧下70℃で均一になるまで撹拌した。チタンテトライソプロポキシドを加えない混合物も同時に調製した(比較例2)。得られた混合物を厚さ3.2mmのスペーサーを挟んだガラス板の間に流し込み、減圧下70℃で4時間、常圧100℃で4時間、150℃で4時間硬化させた。その後さらに減圧下190℃で4時間後硬化を行い硬化物を得た。
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに、3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて実施例1の操作を繰り返した。しかしチタンテトライソプロポキシドを添加する前にゲル化が生じ、チタンテトライソプロポキシドを均一に混合することはできなかった。
以上のように、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランで変性したエポキシ樹脂とチタンアルコキシドを組み合わせることにより、透明性に優れ高い屈折率を有する硬化物が得られることが判った。
Claims (5)
- エポキシ樹脂(a−1)のエポキシ基に対し、1分子中に1個のメルカプト基および少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルコキシ基を同時に有するシラン化合物(a−2)を反応させて得られるアルコキシシリル基変性エポキシ樹脂(A)、チタンアルコキシド、及びジルコニウムアルコキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1つの金属アルコキシドおよび/またはその加水分解部分縮合物(B)、水(C)を必須成分とし、前記(A)成分に対する前記(B)成分の使用量が、前記金属アルコキシド由来の金属の含有量が硬化物中の金属酸化物に換算して5〜50質量%となる量である硬化性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を加水分解縮合反応を含む工程により硬化させて得られる硬化物。
- 波長589.3nmにおける屈折率が1.59以上であることを特徴とする請求項2記載の硬化物。
- 請求項2又は3に記載の硬化物からなる光学部材。
- エポキシ樹脂(a−1)のエポキシ基に対し、1分子中に1個のメルカプト基および少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルコキシ基を同時に有するシラン化合物(a−2)を反応させてアルコキシシリル基変性エポキシ樹脂(A)を製造する工程、および該(A)を、チタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1つの金属アルコキシドおよび/またはその加水分解部分縮合物(B)および水(C)の共存下に加水分解縮合反応する工程を含み、前記(A)成分に対する前記(B)成分の使用量が、前記金属アルコキシド由来の金属の含有量が硬化物中の金属酸化物に換算して5〜50質量%となる量である硬化物の製造法。
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