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JP5319845B2 - 含浸塗工タイプ和紙テープ基材 - Google Patents

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Description

本発明はマスキング用途に適している粘着テープの支持体である和紙テープ基材に関し、引き裂き強度を増加させ、作業性を向上させる含浸塗工タイプ和紙テープ基材に関する。
車両、建築などのあらゆる塗装時のマスキング用として、紙粘着テープが広く使用されている。紙粘着テープには、引きはがし時に簡単に切れないように十分な強度が要求される。この紙粘着テープの支持体としては、木材パルプに合成繊維を混抄した原紙片面に、粘着剤層の下塗層として、合成樹脂を塗布し、反対面に剥離剤の目止め層及びペイントのしみ込み防止層として合成樹脂を塗布した構成のもの(以下 塗工タイプ和紙テープ基材)が知られている。また、木材パルプに合繊繊維を混抄した原紙に、合成樹脂を含浸乾燥し、その含浸紙の片面に剥離剤目止め層及びペイントのしみ込み防止層として、合成樹脂を塗布したもの(以下 含浸塗工タイプ和紙テープ基材)が知られている。
塗工タイプ和紙テープ基材は、原紙厚さ方向に合成樹脂が十分に存在しないため、粘着剤塗布工程での液の裏抜けの問題から粘着剤に制限があり、また、マスキングテープとしての柔軟性が含浸塗工タイプ和紙テープ基材より劣り、曲面の被着体に貼りにくい問題点がある。含浸塗工タイプ和紙テープ基材は粘着剤に制限が少なく、マスキングテープにとって重要である再剥離性に優れ、環境を考慮した水系アクリル粘着剤を使用できる為、現在ではマスキング用途の和紙テープの支持体として、含浸塗工タイプ和紙テープ基材に移行している。
和紙とは、機械抄きで得られる薄く、高強度な平面紙の事である。
テープ基材に用いられる和紙の材料としては伝統的な和紙とは異なり、木材クラフトパルプのような化学蒸解パルプが主に用いられるが、楮や三椏、マニラ麻等の繊維を用いても良い。また、強度を改善するためにポリエステル繊維やビニロン繊維等の合成繊維を混抄することも可能である。機械抄きの和紙に明確な定義はないが、概ね厚さ100μm以下、米坪60g/m以下、密度0.7g/cm以下である。
含浸塗工タイプ和紙テープ基材に対して、クレープ紙タイプのマスキングテープは、基材が厚いため塗装が厚くなるほか、クレープによる凹凸によって塗装端面が滲むため美しい仕上がりにならない。一方、和紙を基材としたマスキングテープは、クレープ紙と比較して薄く平滑であるため、塗装の見切りラインを美しく仕上げることができる。含浸塗工タイプ和紙テープ基材は手切れ性がある一方で十分な強度があるので作業性が良い。さらに、追従性と伸びに優れ、曲面への貼り付けも容易である。
また、テープ基材の強度、特に引き裂き強度が低いと、引きはがし時においてテープが切れて作業効率を落とす原因となる。
その対策として、和紙テープ基材にはビニロンやPETなど繊維長3mm以上の合成繊維を混抄して強度を高めている。しかし、これら合成繊維は天然繊維に比べて高価である。基材の強度を高めるためには、繊維長のより長い繊維を用いるか、合成繊維量を増やすしかなかった。だが、繊維長を長くすると結束を生じやすくなることから、製造上の限界がある。また、コストの面から合成繊維量にも限界がある。
特許文献1では剥離時のテープ切れを防ぐために、引き裂き強度の高いフィルム基材をマスキングテープに用いることを提案している。
また、特許文献2は、繊度5〜60dtexの熱可塑性ポリマー繊維からなる基布と不織布を貼り合わせることで引き裂き強度に優れた和紙調の繊維製品を作ることを提案している。その中で、高い引き裂き強度を得るためには繊度が5dtex以上必要であることを指摘している。さらに、特許文献3でも同様に、強度保持のためには一定以上の繊度が必要であることを指摘している。
特開2007−31552号公報 特開2006−289723号公報 特開平6−200462号公報
本発明は、高価な合成繊維を用いることなしに、マスキングテープの引き裂き強度を改善し、作業効率を落とさない含浸塗工タイプ和紙テープ基材を提供することを課題とする。
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意研究の結果、マーセル化針葉樹パルプを機械抄き和紙に用いることで課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)繊維分がマーセル化針葉樹パルプのみからなる機械抄き和紙を用いたことを特徴とするマスキングテープ用含浸塗工タイプ和紙テープ基材、
(2)機械抄き和紙にエマルジョン系樹脂を和紙に対して20重量%以上含浸したことを特徴とする請求項1記載のマスキングテープ用含浸塗工タイプ和紙テープ基材、を提供する。
本願発明により、合成繊維を使用しなくても、マスキングテープの引き裂き強度を改善し、作業効率を向上させる含浸塗工タイプ和紙テープ基材を得ることができる。また、従来よりも合成繊維の使用量を抑えても、十分なマスキングテープの引き裂き強度を得ることができる。
本発明で用いられる原紙には、マーセル化処理した針葉樹パルプ単独、又はクラフトパルプとマーセル化処理した針葉樹パルプを混合して抄造した和紙が挙げられる。一般的に円網抄紙機にて抄造するが、長網抄紙機、傾斜金網抄紙機、短網タイプや円網と短網のコンビネーションタイプ等でもよい。上記クラフトパルプは強度の点で針葉樹が望ましい。上記マーセル化針葉樹パルプを混合するときの比率は5重量%以上、望ましくは10重量%以上が好ましい。5重量%未満の場合、十分な引き裂き強度が得られない。マーセル化針葉樹パルプの重量加重平均繊維長は1.5mm以上であることが望ましい。さらに好ましくは、2.0mm以上である。1.5mm未満だと、引き裂き強度向上効果が小さくなる。
本発明における和紙とは、クレープ紙でないことであり、機械抄きで得られる薄く、高強度な平面紙の事である。
パルプのマーセル化は、既知の方法で行うことができる。クラフトパルプや、サルファイトパルプなどの化学パルプを強アルカリに浸漬した後、残留アルカリを除去することでマーセル化パルプを得ることができ、パルプは木材、非木材を問わず使用できる。また、蒸解方法も特に限定されない。アルカリ水溶液としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物あるいは炭酸塩等のアルカリ水溶液を使用できるが、強アルカリのものが好ましい。強アルカリの場合、水溶液への浸漬は室温で10分〜24時間程度処理すれば良い。アルカリ水溶液の濃度は一般的には9重量%以上50重量%以下である。マーセル化処理によって多量のアルカリ分が残存するため、アルカリ処理後に水や酸水溶液による洗浄によってアルカリ分を除くことが好ましい。酸水溶液としては、希硫酸、希塩酸、希硝酸、リン酸の鉱酸又はこれらの酸性塩、例えば、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸亜鉛等の水溶液を用いることができる。
また、市販されているものとしては、商品名:ポロサニア−J-HP(Porosanier −J-HP、会社名:レヨニア社)が知られている。これは針葉樹をクラフト法でパルプ化した後に苛性ソーダでマーセル化処理を施したものである。
マーセル化処理によって、単繊維強度が増加し、剛直になることが知られている。また、膨潤によりパルプ繊維断面が真円形に近くなる。繊維間の水素結合が形成されにくくなるため、マーセルパルプを使用した紙は嵩高な低密度の紙となる。
本発明によると、マーセル化針葉樹パルプを用いることで、必要な引裂強度を得ることができるが、さらに、強度が必要な場合は、合成繊維を混抄することもできる。マーセル化針葉樹パルプによる引裂強度向上効果により、合成繊維を単独で混抄するのに比べ、混抄する合成繊維の量を抑えることができる。合成繊維としては、ビニロン、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン、アクリルが使用でき、その中でも特に合成繊維の離解性の点でビニロン、ポリエステルが好ましい。引き裂き強度の点では熱融着型(バインダー)繊維よりも、融着しない主体繊維の方が好ましい。木材パルプとの合成繊維混抄比率は3〜50重量%が好ましい。合成繊維混抄比率が3重量未満の場合、合成繊維を混抄する効果が低くなり、50重量を超えると著しくコスト高となるばかりが、手切れ性が悪くなる。
合成繊維の繊維長は3〜6mmが好ましい。3mm未満であると基材の強度が十分得られない。6mmを超えると結束を生じやすくなり、和紙を抄造するのが難しくなる。
原紙の坪量は、25〜40g/mが好ましい、坪量が25g/m 未満では、支持体としたときに十分な強度が得られず、テープが切れ易くなる。また、坪量が40g/m を超えると、腰が強くなるため被着体の密着性が悪くなる。なお、強度付与のために湿潤紙力剤、紙力増強剤および紙力剤助剤を内添もしくは外添によって加えることができる。
本発明に記載している樹脂のガラス転移点温度は、樹脂モノマー組成比と各モノマーのガラス転移点温度から算出したものである。
本発明で用いられる含浸紙は、上記原紙にエマルジョン系樹脂を含浸、乾燥したものである。用いられる樹脂としては、アクリル酸エステル系、スチレンーブタジエンゴム系、メチルメタクリレートーブタジエンゴム系のエマルジョン等が挙げられ、単独あるいは混合して用いることができる。中でも、含浸紙の強度、柔軟性を持たせるため、ガラス転移点温度が25℃以下のエマルジョン樹脂が好ましい。ガラス転移点温度が25℃より高いと、基材の引き裂き強度が十分に得られず、テープ切れの原因となる。
樹脂の含浸量は、原紙に対して、20重量%以上が好ましい、樹脂量が20重量%未満では、支持体としての強度が不十分であり、粘着剤塗布工程での液の裏抜け等の懸念点がある。
含浸方法は、抄造後にオンラインでサイズプレスなどによる含浸する方法、一旦抄造乾燥巻き取り後にオフラインでディップ含浸する方法の何れでも良い。
本発明の含浸塗工タイプテープ基材には、ブロッキング防止や溶剤の浸透を防ぐなどの目的で、樹脂層を設ける。上記含浸紙の片面に設ける樹脂は、ガラス転移点温度が0〜40℃のエマルジョン系樹脂である。樹脂のガラス転移点温度が0℃より低いと、高温高湿下での手切れ性悪化が改善されない点、テープ基材をロール状態に巻き取った時のブロッキングが懸念される。40℃より高い樹脂を使用すると、樹脂皮膜性が悪く、剥離剤の目止め効果、ペイントのしみ込み防止効果が十分得られない。
樹脂としては、アクリル酸エステル系、スチレンーブタジエンゴム系、アクリロニトリルーブタジエンゴム系、メチルメタクリレートーブタジエンゴム系、酢酸ビニル系のエマルジョン等が挙げられ、単独あるいは混合して用いることができる。
上記樹脂の塗工量(乾燥坪量)は好ましくは2〜20g/mである。塗工量が2g/m未満では、溶剤の浸透を十分に防げず、好ましくない。ただし、テープの構成や用途によっては2g/m 未満でも良い。また、20g/m を超えると、コスト高になる。
上記樹脂の塗工は、抄紙機に備えているオンマシン塗工あるいは抄紙後、オフマシン塗工のいずれもが可能である。塗工方式は特に限定されることはなく、例えば、エアナイフコータ、ロッドコータ、ブレードコータなどのコータ及びその他の塗工方式が利用できる。
以上説明した本発明の含浸塗工タイプテープ基材を用いて、公知の方法により剥離剤、粘着剤を塗布することにより、マスキング用途の和紙テープが得られる。マスキングテープは再剥離性テープであり、一般に粘着力が低いものである。従って、本発明の樹脂層の上に剥離剤を設けなくとも、巻き戻しは比較的容易であり、樹脂層を剥離層とし、省略することも可能である。
本発明の和紙テープ基材は、マスキング用途のテープの支持体として好適に用いることができる。
以下に、本発明の実施例を挙げる。手抄きシートは円筒シートマシンで作製した。引き裂き強度測定はJIS P−8116法に準じ、23℃-50%の雰囲気下で行った。実際の製品は、前述の抄紙機によって製造されるが、得られる傾向は手抄きシートによる比較と変わらない。
塗工層が基材の強度に与える影響は小さいので、実施例および比較例では原紙に樹脂を含浸しただけの、未塗工の基材を用いた。
(マーセル化)
市販のマーセル化針葉樹パルプ 商品名:ポロサニア−J-HP(Porosanier −J-HP、会社名:レヨニア社)の他、針葉樹クラフトパルプを独自にマーセル化処理したものも用意した。離解後に脱水したパルプ(固形60g)に20wt%NaOH水溶液となるように水200mLと苛性ソーダを加えて良く撹拌した。30分放置し搾水した。その後、水で洗い希硫酸で中和した。さらに水で洗浄し脱水してマーセル化針葉樹パルプを得た。
(繊維長測定)
マーセル化針葉樹パルプの繊維長測定は繊維長測定機 カヤーニFS‐200(メッツォオートメーション(株)製)を用いておこなった。
参考例1)
市販の針葉樹マーセル化パルプとして ポロサニア‐J‐HP(Porosanier‐J-HP、会社名:レヨニア社)を用意した。このマーセル化パルプ5重量と市販の針葉樹クラフトパルプ(NBKP1とする)95重量%を混抄し、35g/mの手抄きシートを作製した。これにアクリル系エマルジョン/SBRエマルジョン=50/50の混合液を含浸剤として含浸紙乾燥重量に対して25〜30重量%になるように含浸乾燥し、含浸テープ基材を得た。
参考例2)
マーセル化パルプ ポロサニア‐J‐HPの混抄比率を10重量%、NBKP1を90重量%に変えた以外は参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
参考例3)
マーセル化パルプ ポロサニア‐J‐HPの混抄比率を20重量%、NBKP1を80重量%に変えた以外は参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
(実施例
マーセル化パルプ ポロサニア‐J‐HPの比率を100重量%に変えた以外は参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
参考
参考例1で用いたNBKP1を前述の方法でマーセル化した。このマーセル化パルプ(マーセル化NBKP1 とする)20重量%にNBKP1 80重量%を加えて混抄し、35g/mの手抄きシートを作製した以外は、参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
(実施例
参考において、マーセル化NBKP1の比率を100重量%に変えた以外は参考と同様にして含浸テープ基材を得た。
参考
参考において、マーセル化に用いる針葉樹クラフトパルプを別のものに変えた(このマーセル化パルプをマーセル化NBKP2 とする)。その他は、参考と同様にして含浸テープ基材を得た。
(実施例
参考において、マーセル化NBKP2の比率を100重量%に変えた以外は参考と同様にして含浸テープ基材を得た。
(参考例
合成繊維として(株)クラレ製ビニロン繊維VPB‐102(5mm)を10重量%、マーセル化パルプとしてポロサニア‐J‐HPを10重量%、NBKP1 80重量%で混抄し、35g/mの手抄きシートを作製したほかは参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
(比較例1)
マーセル化処理していないNBKP1の比率を100重量%として手抄きシートを作製したほかは参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
(比較例2)
マーセル化処理をしていないNBKP2の比率を100重量%として手抄きシートを作製したほかは参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
(比較例3)
合成繊維として(株)クラレ製ビニロン繊維VPB‐102(5mm)10重量%とNBKP1 90重量%で混抄し、35g/mの手抄きシートを作製したほかは参考例1と同様にして含浸テープ基材を得た。
実施例、参考例、比較例により得られた含浸和紙テープ基材の引き裂き強度比を表1に示す。
Figure 0005319845
*引き裂き強度比:比較例1の引き裂き強度を1とした時の値。値が大きいほど切れにくい
*パルプの繊維長は重量加重平均繊維長である。合成繊維についてはカット長。

Claims (2)

  1. 繊維分がマーセル化針葉樹パルプのみからなる機械抄き和紙を用いたことを特徴とするマスキングテープ用含浸塗工タイプ和紙テープ基材。
  2. 機械抄き和紙にエマルジョン系樹脂を和紙に対して20重量%以上含浸したことを特徴とする請求項1記載のマスキングテープ用含浸塗工タイプ和紙テープ基材。
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