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JP5316365B2 - ターボ型流体機械 - Google Patents

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Description

本発明は、ターボ型流体機械に係り、特に、遠心圧縮機あるいは遠心送風機など高性能を維持し小型化に好適なターボ型流体機械に関するものである。
ターボ型流体機械の1つである回転する羽根車によって流体を圧縮する遠心圧縮機は、従来から様々なプラントに広く用いられている。最近では、エネルギー問題や環境問題のため、その運用費などを含めたライフサイクルコストが重要視される傾向にあり、広い作動範囲で高効率を達成する圧縮機が求められている。
回転数一定の運転を考えた場合、圧縮機の作動範囲は、小流量側での運転限界であるサージ限界と、大流量側での運転限界であるチョーク限界に挟まれた領域として定義される。
ところで、圧縮機の流量をサージ限界以上に減少させた場合、流れが圧縮機内部で剥離し、吐出圧力や流量の変動が生じるため、安定に運転することができない。
また、チョーク限界以上に大流量化しようと圧縮機の吐出圧を下げても、流れが圧縮機内部で音速に達し、チョーク限界以上に流量を増やすことができない。
一般に、従来のターボ型流体機械であるターボ型圧縮機あるいは送風機においては、羽根車の下流には運動エネルギーを圧力エネルギーに変換するため羽根なしディフューザや羽根付きディフューザが設けられている。
ディフューザの下流には、ディフューザから吐出される流れを集めるためのスクロールケーシングあるいは次段に流れを導くための戻り流路が設けられている。
また、従来の遠心圧縮機のディフューザとしては、羽根車の下流に、向かい合う一対のディフューザ板で流路壁面を構成し、流路幅が下流に向かって一定であるような羽根なしディフューザが知られている。しかしながら、羽根なしディフューザを用いた遠心圧縮機は、作動範囲は広いが効率が低いという欠点があった。
また、一対のディフューザ板の間に高さが一定で流路幅とほぼ等しい案内羽根を円型翼列状に設けたディフューザ、いわゆる羽根付きディフューザも知られている。この羽根付きディフューザを用いた遠心圧縮機は、設計流量点の効率は高いが、作動範囲は狭いという欠点があった。
そこで、改良されたディフューザとして、例えば特開平11−82389号公報には、ディフューザの側板側流路壁面を、流路幅が下流に向かって大きくなるように傾けるとともに、ディフューザの側板側と心板側との両方の流路壁面上に高さがディフューザ出口幅の40〜60%に形成された案内羽根を設けた構成が開示されている。
この特開平11−82389号公報に記載されたディフューザの構成では、流路幅が下流に向かって拡大されて形成されているため、平行壁羽根なしディフューザの場合よりも半径方向の圧力勾配が大きくでき、かつ、流路壁面上に案内羽根が付いているため、大きくなった圧力勾配下であっても流路壁面上での逆流を防止することが可能となるものである。
特開平11−82389号公報
しかしながら、特開平11−82389号公報に記載されたディフューザには、拡大する流路壁面に案内羽根を設置する適切な角度についての開示はなく、よって案内羽根を単に設置するだけでは却ってディフューザの性能を劣化させる可能性があった。また、案内羽根を単に設置するだけでは案内羽根が流路壁面上の逆流を防ぐための整流板としての機能を十分に果たせず、ディフューザの作動範囲が狭くなってしまう可能性があった。
ところで、一般にディフューザについては、圧縮機のコスト低減のため小形化の要求が強い。従来の案内羽根なし、あるいは案内羽根付きディフューザでディフューザ出口径を小さくして小形化を図った場合は、ディフューザの流路幅が一定であるため、ディフューザ出口の流速が高くなる。ディフューザ下流の要素(例えば、スクロール、戻り流路等)の損失はディフューザ出口の運動エネルギー(動圧)に比例するから、下流の前記要素の損失が増加して圧縮機の効率が低下するという問題点があった。
本発明の目的は、ディフューザ内の逆流を防止すると共にディフューザの流れを幅方向に一様化させ、ディフューザの作動範囲を広く確保して圧縮機の効率を維持し、流体機械を小形化するターボ型流体機械を提供することにある。
本発明のターボ型流体機械は、羽根車と、羽根車の下流に位置しており、対向する一対の側板側ディフューザ板と心板側ディフューザ板とによってディフューザの流路壁面を構成すると共に、その流路幅が下流に向かって大きくなるように形成されたディフューザとを備えたターボ型流体機械において、前記ディフューザの対向する側板側ディフューザ板と心板側ディフューザ板の両流路壁面に、流路幅より高さが低い円弧状の案内羽根を複数の翼列状にそれぞれ設置し、ディフューザ出口における前記二つの案内羽根の羽根高さの和が前記ディフューザの出口流路幅の30〜70%の範囲となるように設定し、側板側ディフューザ板の流路壁面の半径方向からの傾き角をθ、この側板側ディフューザ板の壁面上に設置された案内羽根の入口の周方向からの入口羽根角をβs,in、心板側ディフューザ板の流路壁面の半径方向からの傾き角をθ、この心板側ディフューザ板の壁面上に設置された案内羽根の入口の周方向からの入口羽根角をβh,inとした場合に、上記4つの角度が次式を満たし、
Figure 0005316365
前記式のKが、K<0の関係を満たすように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、ディフューザ内の逆流を防止すると共にディフューザの流れを幅方向に一様化させ、ディフューザの作動範囲を広く確保して圧縮機の効率を維持し、流体機械の小形化を達成するターボ型流体機械が実現できる。
本発明の第1実施例に係る遠心圧縮機の構造を示す断面図。 図1に示した第1実施例の遠心圧縮機におけるディフューザ部を示す断面図。 図2に示した第1実施例のディフューザ部を半径方向に示した断面図。 比較例の遠心圧縮機におけるディフューザ部における子午面の流速を示す図。 図4の比較例のディフューザ部における子午面の流線を示す図。 図1乃至図3に示した第1実施例のディフューザ部における子午面の流速を示す図。 図6の実施例のディフューザ部における子午面の流線を示す図。 別の比較例である遠心圧縮機におけるディフューザ部における子午面の流速を示す図。 図8の比較例のディフューザ部における子午面の流線を示す図。 本発明の第2実施例に係る遠心圧縮機におけるディフューザ部について子午面の流速を示す図。 図10に示した第2実施例のディフューザ部における子午面の流線を示す図。 図10に示した第2実施例のディフューザ部におけるディフューザ壁面の傾き角と案内羽根の入口羽根角度を示す概念図。 図10に示した第2実施例のディフューザ部におけるディフューザ壁面の傾き角と案内羽根の入口羽根角度との関係を示す関係図。
本発明の第1実施例のターボ型流体機械である遠心圧縮機について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例に係る遠心圧縮機100の構造を示す断面図であり、図2は、図1に示した遠心圧縮機100のディフューザの案内羽根の詳細である。
図1に示すように、本実施例の遠心圧縮機100は、ケーシング16の内部に、回転駆動する回転軸5と、この回転軸5の外周側に設置され、側板8と心板6との間に作動流体11の流れを案内する相互に離間して配設された複数枚の羽根7を有する羽根車1とが備えられている。
前記ケーシング16の内部で、羽根車1の下流となる該羽根車1の半径方向外方には、案内羽根12、13を有するディフューザ2が設けられている。
ディフューザ2の下流となる前記ケーシング16の内部には、ディフューザ2から吐出された作動流体11の流れの向きを変えるためのリターンベンド3、およびリターンベーン4が設けられている。
羽根車1の上流となる前記ケーシング16の内壁には、吸込み管15である。
ディフューザ2は、作動流体11を流下させるように対向して流路壁面を形成する向かい合う一対の側板側ディフューザ板14と心板側ディフューザ板9を備え、更に側板側ディフューザ板14の流路壁面に円形翼列状に取り付けられた案内羽根12と、心板側ディフューザ板9の流路壁面に円形翼列状に取り付けられた案内羽根13とから構成されている。
心板側ディフューザ板9の流路壁面は、ディフューザ2の流路幅が下流に向かって大きくなるように、半径方向に対し傾きをもって形成されている。
また、側板側ディフューザ板14の流路壁面上に取り付けられた円弧状の案内羽根12と、心板側ディフューザ板9の流路壁面上に取り付けられた円弧状の案内羽根13との高さの合計は、ディフューザ2の流路幅より小さく、羽根高さは該ディフューザ2の流路の入口から出口に向かって、すなわち下流に向かって高くなるように形成されている。
図1に示した本実施例の遠心圧縮機100の場合、ディフューザ2の出口における、案内羽根12と案内羽根13の羽根高さの合計は、ディフューザ2の出口流路幅の約60%に相当している。
図2及び図3は図1に示した本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ部2の詳細であり、図3は図2のA−A方向の矢視図である。図2及び図3に示したディフューザ部2では、側板側ディフューザ板14に設置した案内羽根12の接線方向から測った入口における入口羽根角度をβs,in、出口における出口羽根角度をβs,out、と称する。
同様に、心板側ディフューザ板9に設置した案内羽根13の接線方向から測った入口における入口羽根角度をβh,in、出口における出口羽根角度をβh,outと呼ぶことにする。
このとき、本実施例のディフューザ部2における側板側ディフューザ板14に設置した案内羽根12、及び心板側ディフューザ板9に設置した案内羽根13は、案内羽根12の入口羽根角度βs,in、及び出口羽根角度βs,outが、それぞれ心板側ディフューザ板9に設置した案内羽根13の入口羽根角度βh,in、及び出口羽根角度βh,outよりも大きくなるように設定されている。
すなわち、側板側ディフューザ板14の案内羽根12は心板側ディフューザ板9の案内羽根13よりも半径方向に立った形に設置されている。
さらに各案内羽根12及び各案内羽根13ごとに、入口羽根角度βs,in、入口羽根角度βh,inが、出口羽根角βs,out、出口羽根角βh,outよりもそれぞれ小さくなるように設定されている。
また、複数個設置された各案内羽根12、及び各案内羽根13の前縁は、羽根車1の出口のごく近傍、例えば羽根車1の外半径の1〜1.05倍の半径位置に、その周方向位置をずらせた態様でそれぞれ設置されている。
本実施例の遠心圧縮機100を運転すると、作動流体11は吸込み管15を通じてケーシング16の内部の羽根車1に吸い込まれ、回転軸5の駆動によって回転する羽根車1内でエネルギーを与えられたのち、羽根車1から吐き出される。羽根車1から吐き出された高速の作動流体11は羽根車1の下流側となるケーシング16の内部に設けたディフューザ2に流入する。
このディフューザ2によって作動流体11の流れは減速されて整流されたのち、ディフューザ2の下流側に位置するケーシング16の内部のリターンベンド3、および前記リターンベンド3の下流側に位置するリターンベーン4に流入した後に、前記作動流体11はリターンベーン4から排出される。
本実施例による遠心圧縮機100の作用効果について、図6及び図7に示した本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ部2の構成を参照にして、比較のために図4及び図5に示した比較例である前記本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ部2の側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9に案内羽根を備えていないディフューザ2の構成とを比較しながら以下に説明する。
遠心圧縮機100の各ディフューザ2を示した図4乃至図7は、遠心圧縮機100の羽根車1の下流側に設置したディフューザ2の流路形状とディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れ(子午面速度)分布を示すもので、ディフューザ2の流路幅が上流から下流に向かって大きくなっている構成である。
このうち、比較例のディフューザ2を示した図4及び図5が、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9に案内羽根を備えていない場合の遠心圧縮機におけるディフューザ2の流路形状と、ディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れを示している。
そして、図6及び図7が本実施例のディフューザ2である側板側ディフューザ板14に案内羽根12を設置し、心板側ディフューザ板9に案内羽根13を設置した場合の遠心圧縮機100におけるディフューザ2の流路形状と、ディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れを示したものである。
まずは、本実施例の遠心圧縮機100がもたらす作用効果の原理を説明するため、現象が比較的簡単な、ディフューザの流路幅を形成する側板側ディフューザ板14の壁面と、心板側ディフューザ板9の壁面とが下流側に向かってほぼ対称に広がっている図3図6及び図7に示した場合の遠心圧縮機100のディフューザ2を用いて説明する。
図6及び図7の本実施例のディフューザ2に示すように、ディフューザ2の内部を流れる作動流体11の流れは、ディフューザ2の流路の中央部分を流れる流速の速い主流域と、ディフューザ2の側板側の壁面と心板側の壁面との両壁面上に発達した流速の遅い境界層域とに分けることができる。
角運動量保存の法則により、流速の速い前記主流域を流れる作動流体11の主流21の周方向速度はディフューザ2の外周側へ行くほど減速する。
また、質量保存の法則により、作動流体11の主流21の半径方向速度はディフューザ2の外周側へ行くほど減速する。
これらの効果により、ディフューザ2の流路を流れる作動流体11の主流21の流速はディフューザ2の外周側へ行くほど低下し、その分、作動流体11の圧力が上昇する。
図6及び図7の本実施例のディフューザ2と、比較例の図4及び図5のディフューザ2に、作動流体11の主流21の流線と、ディフューザ2の側板側の壁面と心板側の壁面との両壁面近傍の境界層域内を流れる境界層流22の流線をそれぞれ示す。
図5に示したように、比較例のディフューザ2においては、流速の速い主流21に比べて流速の遅い境界層域内を流れる境界層流22の流れは、主流21の圧力勾配に打ち勝てず、主流21よりも急激に半径方向の流速が減速するため、主流21の流線よりも早めに周方向を向く流れの流線となる。そして、ディフューザ2の出口に近づくにつれ、境界層域内を流れる境界層流22の流れの半径方向速度の減速が顕著となり、ついには剥離や逆流が発生することになる(図4及び図5)。
このような逆流は、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面と心板側ディフューザ板9の壁面との壁面近傍の境界層域で発生し、ディフューザ2の流路幅の拡大が急激なほど顕著となる。
また、逆流は、ディフューザ2の流路幅の拡大の仕方に係らず、案内羽根12、13を備えていないディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面や心板側ディフューザ板9の壁面であるディフューザ2の壁面で発生する。
逆流が発生すると、ディフューザ2の流路となる有効流路面積が小さくなるためディフューザ2での減速は小さくなり、主流21の圧力回復量が減少してディフューザ2の性能が劣化することになる。
また、ディフューザ2の下流の要素(リターンベンド3、リターンベーン4等)での損失は、ディフューザ2の出口の流れの運動エネルギー(動圧)に比例するため、リターンベンド3やリターンベーン4での損失も増加することになる。その結果、遠心圧縮機の性能は大幅に低下する。
これに対して、本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ2においては、図3(b)図6及び図7に示したように、逆流が発生しそうな側板側ディフューザ板14と、心板側ディフューザ板9との壁面上に、ディフューザ2の流路幅よりも高さが低く、ディフューザ2の出口における羽根高さが出口流路幅の約60%である円弧状の案内羽根12及び案内羽根13がそれぞれ相互に離間して複数個設けられている。
図7に示したように、本実施例のディフューザ2においては、これらの案内羽根12、13が境界層近傍の境界層流22の流れを主流21の流れに沿うように整流化してくれるため、境界層の剥離や逆流が回避され、ディフューザ2の損失が低減できる。
さらに、逆流が防止されたことにより、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面と、ディフューザ2の心板側ディフューザ板9の壁面の壁面近傍にも流体が流れるようになるため、主流域を流れる主流21の流体の子午面速度が減少する。
ゆえに、ディフューザ2の出口の流速は、案内羽根12及び案内羽根13が備えていない場合の比較例の図4及び図5の場合に比べて大幅に小さくなり、その分だけ流体の圧力が向上するので、遠心圧縮機100の性能向上に寄与する。
また、本実施例のディフューザ2においては、ディフューザ2の減速が大きくなるのでディフューザ2の出口の動圧も小さくなり、リターンベンド3やリターンベーン4の損失も減少するので遠心圧縮機の性能は大幅に向上することになる。
また、ディフューザで逆流が発生せずに減速が得られるので、その結果、遠心圧縮機の大幅な小形化が可能になる。
本実施例のディフューザ2は、下流へ行くほど流路幅が大きくなっているため、作動流体11の主流21の流れ角はディフューザ2の出口が近づくにつれ周方向を向く傾向にある。すなわち、ディフューザ2出口の流れ角は入口よりも小さくなる。
本実施例のディフューザ2における側板側ディフューザ板14に設けた円弧状の案内羽根12、及び心板側ディフューザ板9に設けた円弧状の案内羽根13は、各案内羽根ごとに、入口羽根角βs,in、βh,inが出口羽根角βs,out、βh,outよりもそれぞれ小さくなるように設定されている。
よって、作動流体11の主流21の状況に合わせて、境界層域の流れを適切に整流化することができ、案内羽根を設置したことによる主流部の損失の増大を招くことなく、壁面境界層の剥離、逆流を防ぐことができる。その結果、遠心圧縮機100の性能を改善できることは、上に述べた通りである。
本実施例のディフューザ2では、案内羽根12、13の前縁位置が、ディフューザ2の上流側に位置する羽根車1の出口、すなわちディフューザ2の入口部に近接して配設してあるため、羽根車1の内部で発達した境界層があったとしても、ディフューザ2の入口部から逆流を適切に防ぐことができる。
本実施例のディフューザ2においては、上記した構成にすることで、図4及び図5の比較例のディフューザでは生じていた境界層域を流れる境界層流2の流れの急速な転向が抑制され、ディフューザ2での減速を増加させて圧力回復を向上させることができる。
さらに、本実施例のディフューザ2においては、案内羽根12、13の前縁位置が周方向にずれて設置された構成を採用しているため、案内羽根12及び案内羽根13の前縁が羽根車1の羽根7と同時に干渉することがなく、よって大きな騒音の発生を抑える効果もある。
本実施例のディフューザ2では、案内羽根12、13のディフューザ2の出口における案内羽根12、13の羽根高さはディフューザ2の出口の流路幅の約60%に形成された例を説明したが、円弧状の案内羽根12、13は、ディフューザ2の出口における羽根高さが該ディフューザ2の出口流路幅の30〜70%の範囲に形成されたものであれば、前述と同様の効果が期待される。
この案内羽根12、13の羽根高さは、ディフューザ2の心板側ディフューザ板9及び側板側ディフューザ板の壁面上に発達した境界層厚さよりも高くすることが必要であるだが、案内羽根12、13の羽根高さをあまり高くしすぎると主流21の衝突損失の増大を招くことになるため、流れの状況にあわせた上記した範囲の適度な羽根高さを設定することが重要である。
本実施例によれば、ディフューザ内の逆流を防止すると共に、側板側の案内羽根と心板側の案内羽根の入口羽根角を適切に設定してディフューザの流れを幅方向に一様化させ、ディフューザの作動範囲を広く確保して圧縮機の効率を維持し、流体機械の小形化を達成するターボ型流体機械が実現できる。
次に本発明の第2実施例である遠心圧縮機100におけるディフューザ2について説明する。
本実施例である遠心圧縮機100のディフューザ2は、先に説明した第1実施例の遠心圧縮機100のディフューザ2と基本的な構成が同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
遠心圧縮機100の各ディフューザ2を示した図8乃至図11は、遠心圧縮機100の羽根車1の下流側に設置したディフューザ2の流路形状とディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れ(子午面速度)分布を示すもので、ディフューザ2の流路幅が上流から下流に向かって大きくなっている構成である。
このうち、本実施例のディフューザ2を示した図10及び図11と、比較例のディフューザ2を示した図8及び図9が、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9が、半径方向に対して非対称的に傾斜して形成されている場合におけるディフューザ2の流路形状と、ディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れをそれぞれ示している。
即ち、側板側ディフューザ板14は半径方向に傾斜のない壁面として配設されているのに対して、この側板側ディフューザ板14に面した心板側ディフューザ板9の壁面が半径方向に傾斜した壁面として形成されている。
更に、比較例のディフューザ2を示した図8及び図9が、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9に案内羽根を備えていない場合の遠心圧縮機におけるディフューザ2の流路形状と、ディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れを示している。
そして、図10及び図11が本実施例のディフューザ2である側板側ディフューザ板14に案内羽根12を設置し、心板側ディフューザ板9に案内羽根13を設置した場合の遠心圧縮機100におけるディフューザ2の流路形状と、ディフューザ2の内部を流れる作動流体の流れを示したものである。
本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ2を構成する非対称的に傾斜した側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面に、案内羽根12及び案内羽根13をそれぞれ設置した場合においても、そのディフューザ2による作用効果は原理的に先に説明した図4乃至図7のディフューザ2の場合と基本的に同様である。
しかしながら、本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ2では、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面に配設した案内羽根12及び案内羽根13の効果を十分に引き出すためには、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面の傾斜が非対称的に形成されていることを考慮した工夫が更に必要となる。
つまり、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面が、半径方向に対して非対称的に傾斜している場合、図8及び図9の比較例に示すように、ディフューザ2を流れる作動流体11の主流21のうち、傾斜の大きい心板側ディフューザ板9の壁面に近い側の主流21hは子午面流速の減速が大きく、傾斜の小さい側板側ディフューザ板14の壁面に近い側の主流21sは子午面流速の減速が小さい。
すなわち、主流21の平均的な流線は、側板側ディフューザ板14の壁面に近い側は流線21sのように径方向に立った流線となり、心板側ディフューザ板9の壁面に近い側の流線21hは周方向に寝た流線となる。
このため、比較例の図8及び図9に示すように、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面上に案内羽根が設置されていない構成のディフューザ2の場合、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面近傍の境界層を流れる境界層流22の流れが、前記主流21s、21hの圧力勾配に耐え切れずに剥離し、逆流を引き起こすことになる。
上記した比較例のようなディフューザ2の壁面近傍の境界層を流れる境界層流22の剥離や、逆流を防ぐためには、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面上に案内羽根を設置し、境界層内部の流れも主流に沿った流れとすることが有効である。
ただし、ディフューザ2の壁面が非対称的に傾斜して形成されている場合、上述のように主流の流れがディフューザ2の高さ方向に変化するため、その流れの状況に合わせた案内羽根の設置が重要となる。
そこで、適切な案内羽根の設置を実現するため、本発明の第2実施例である遠心圧縮機100のディフューザ2では、図10及び図11に示したように、傾斜の小さい側板側ディフューザ板14の壁面上に設置した円弧状の案内羽根12の入口羽根角は、傾斜の大きい心板側ディフューザ板9の壁面に設置した円弧状の案内羽根13の入口羽根角に比べて径方向に立った角度で設置されている。
すなわち、案内羽根12は、側板側ディフューザ板14の壁面に近い側の主流21sの流線に、案内羽根13は、心板側ディフューザ板9の壁面に近い側の主流21hの流線に沿うように、それぞれ入口羽根角を変えて設置されている。
このように本発明の実施例のディフューザ2においては、案内羽根12の入口羽根角βs,inを、案内羽根13の入口羽根角βh,inよりも大きくなるように設定することで、前記案内羽根12、13を主流21s、21hの流線に沿った流れにそれぞれ設置することができる。この結果、側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面近傍の境界層域を流れる境界層流22の剥離を防ぐと同時に、主流21s、21hの流れ角と案内羽根12及び案内羽根13の各配設角度との不一致による損失の発生を防ぐことが可能となる。
本実施例の遠心圧縮機100のディフューザ2を構成する側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面に配設した案内羽根12及び案内羽根13と、前記側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の各壁面の傾き具合との関係を図12及び図13に示す。
図12は本実施例におけるディフューザ壁面の傾き角と案内羽根の入口羽根角度を示す概念図であり、図13は本実施例におけるディフューザ壁面の傾き角と案内羽根の入口羽根角度との関係を示す関係図であり、θは羽根車1の側板側に近い側板側ディフューザ板14の壁面における半径方向から傾斜した側板側ディフューザ板14の傾き角であり、θは羽根車1の心板側に近い心板側ディフューザ板9の壁面における半径方向から傾斜した心板側ディフューザ板9の傾き角である。但し、側板側ディフューザ板14の傾き角θ、及び心板側ディフューザ板9の傾き角θは、ともにディフューザ2の流路幅が広がる向きに傾く方向を正として表示している。
本実施例のディフューザ2を構成する側板側ディフューザ板14及び心板側ディフューザ板9の壁面にそれぞれ配設した案内羽根12及び案内羽根13は、案内羽根12の入口羽根角βs,in、案内羽根13の入口羽根角βh,inが式(1)の関係を満たすように関係付けられている。
Figure 0005316365
ここで、Kは羽根車1の出口の流れ状態に応じて設定されるべき定数であり、K<0の値をとる。より限定的には、標準的な遠心圧縮機における流れの場合、−2<K<0の値をとる。
前記式(1)は、ディフューザ2を構成する側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θsと、心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θhとの非対称性が大きいほど、案内羽根12の入口羽根角βs,inと、案内羽根13入口羽根角βh,inに大きな差をつけることを意味している。
このことは、側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θと、心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θとの非対称性が大きいほど、ディフューザ2の入口の幅方向に流れの非一様性が誘起されるという物理的な変化に対応している。
ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θと心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θとを合計した傾き角の合計値θ+θは、6°から12°の間の値に設定することが、ディフューザ2の壁面での圧力回復を最大化する上で適切であり、特に、傾き角の合計値θ+θが、8°前後に設定することがディフューザ2における圧力回復量と作動範囲のバランスの観点から望ましい。
また、傾き角の合計値θ+θを、12°よりも大きくすると、ディフューザ2の壁面上で流れが剥離しやすく、ディフューザ2の流路を拡大した割にはディフューザ2の壁面近傍の境界層域を流れる境界層流の剥離によるブロッケージの効果が大きく、実質的な流路拡大効果が生まれなくなる。
また、傾き角の合計値θ+θを、6°よりも小さくした場合は、ディフューザ2の壁面の拡大量が小さく、ディフューザ2による圧力回復の効果が小さい。
これに対して、傾き角の合計値θ+θを、8°前後に設定した場合には、ディフューザ2による圧力回復量が大きく、また広い流入角の範囲の流れに対してディフューザ2の壁面近傍の境界層域を流れる境界層流が剥離しにくく、この結果、高い効率と広い作動範囲のディフューザ2を実現しやすい。
遠心圧縮機の羽根車1の出口流れが一様であると想定した場合、ディフューザ2の入口流れは、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θと、心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θとの非対称性が大きければ大きいほど、ディフューザ2の幅方向の非一様性が強まるという性質を持つ。
前記傾き角の合計値θ+θが、6°から12°の間の範囲にある場合には、ディフューザ2の入口における案内羽根12の入口羽根角βs,inと案内羽根13の入口羽根角βh,inとの差Δβ(Δβ=βs,in−βh,in)は、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θsと、心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θhとの傾き角の差θs−θhの絶対値と同程度であることが流れ解析から判明しており、式(1)のKを−1前後として、ディフューザ2の案内羽根12の入口羽根角βs,in、及び案内羽根13の入口羽根角βh,inをそれぞれ設定することが、効率が高く、作動範囲の広いディフューザ2を構成する上で有効である。
羽根車1の内部流れの影響により、羽根車1の出口の流れは、一般に、側板8側の流れが遅く、心板6側の流れが速くなりがちである。この場合は、特に、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θsをθ0°、心板側ディフューザ板9の傾き角θをθh=8°と設定することで、羽根車1で生じた偏流を一様に近づける効果がある。
羽根車1の出口の流れの非一様性を、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θと、心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θとを非対称な傾きにしてキャンセルすることにより、流れが一様に近づくため、ディフューザ2の入口における案内羽根12の入口羽根角βs,inと、案内羽根13の入口羽根角βh,inとの差をそれほど大きくする必要がなくなる。
よって、羽根車1の出口の非一様性が強い場合、−1<K<0として、ディフューザ2の案内羽根12及び案内羽根13を設置することで、効率が高く、作動範囲の広いディフューザ2を構成することができる。
また、ディフューザ2の側板側ディフューザ板14の壁面の傾き角θ及び心板側ディフューザ板9の壁面の傾き角θを、θ0°、もしくはθ0°と設定した場合のディフューザ2においては、傾きの無い平面上の側板側ディフューザ板14の壁面に案内羽根12を設置、若しくは傾きの無い平面上の心板側ディフューザ板9の壁面に案内羽根13を設置することになり、傾き角θ0°、若しくは傾き角θ0°である円錐面上の壁面に案内羽根12、若しくは案内羽根13を設置することに比べて構造がシンプルであるので製作コストを削減できる。
案内羽根12及び案内羽根13をディフューザ2を構成する側板側ディフューザ板14の壁面及び心板側ディフューザ板9の壁面からそれぞれ削り出して製作する場合、ディフューザ2を構成する前記側板側ディフューザ板14の壁面及び心板側ディフューザ板9の壁面が平面の場合は二軸の加工機であれば加工できるが、このディフューザ2の前記各壁面が円錐面の場合には5軸の加工機でないと、案内羽根12及び案内羽根13を削りだすことができない。
よって、加工コストに格段の差が現れる。また、案内羽根12及び案内羽根13を別途製作しておき、これらの案内羽根12及び案内羽根13を溶接などで前記側板側ディフューザ板14の壁面及び心板側ディフューザ板9の壁面に接合してディフューザ2を製作する場合は、案内羽根12及び案内羽根13を円錐面に形成されている前記側板側ディフューザ板14の壁面及び心板側ディフューザ板9の壁面に溶接して接合することは、案内羽根12及び案内羽根13の位置決めや接着が難しく、平面に形成された前記壁面への溶接に比べて製造コストが大幅に増加することになる。
さらに、平面に形成された前記壁面に案内羽根12、若しくは案内羽根13を配設する場合、案内羽根12、13の形状を特に平面に垂直な線要素からなる形状にした方が、点切削ではなく線切削によって案内羽根12、13の羽根形状を削りだせるため、加工時間の短縮や、加工コストの低減を得ることができる。
また、案内羽根12、13の羽根形状を単純な円弧で構成するようにすれば、NC加工機に入力するプログラムも簡素化でき、製作コストの低減に寄与できる。
なお、上記した本実施例の遠心圧縮機100は、ディフューザ2の上流側に側板8及び心板6を有する羽根車1が設置された構成として、ディフューザ2の原理、及び作用効果を説明したが、側板8及び心板6のないオープンな形状の羽根車1であってもディフューザ2には同様な作用効果を期待できる。
本実施例によれば、ディフューザ内の逆流を防止すると共に、側板側の案内羽根と心板側の案内羽根の入口羽根角を適切に設定してディフューザの流れを幅方向に一様化させ、ディフューザの作動範囲を広く確保して圧縮機の効率を維持し、流体機械の小形化を達成するターボ型流体機械が実現できる。
本発明は遠心圧縮機あるいは遠心送風機など高性能を維持し小形化に好適なターボ型流体機械に適用可能である。
1:羽根車、2:ディフューザ、3:リターンチャネル、4:リターンベーン、5:回転軸、6:心板、7:羽根、8:側板、9:心板側ディフューザ板、、11:作動流体、12:案内羽根、13:案内羽根、14:側板側ディフューザ板、15:吸込み管、16:ケーシング、21:主流、21s:主流、21h:主流、22:境界層流、100:遠心圧縮機、θ:ディフューザ壁面傾き角、β:羽根角度。

Claims (9)

  1. 羽根車と、羽根車の下流に位置しており、対向する一対の側板側ディフューザ板と心板側ディフューザ板とによってディフューザの流路壁面を構成すると共に、その流路幅が下流に向かって大きくなるように形成されたディフューザとを備えたターボ型流体機械において、
    前記ディフューザの対向する側板側ディフューザ板と心板側ディフューザ板の両流路壁面に、流路幅より高さが低い円弧状の案内羽根を複数の翼列状にそれぞれ設置し、ディフューザ出口における前記二つの案内羽根の羽根高さの和が前記ディフューザの出口流路幅の30〜70%の範囲となるように設定し、
    側板側ディフューザ板の流路壁面の半径方向からの傾き角をθ、この側板側ディフューザ板の壁面上に設置された案内羽根の入口の周方向からの入口羽根角をβs,in、心板側ディフューザ板の流路壁面の半径方向からの傾き角をθ、この心板側ディフューザ板の壁面上に設置された案内羽根の入口の周方向からの入口羽根角をβh,inとした場合に、上記4つの角度が次式を満たし、
    Figure 0005316365
    前記式のKが、K<0の関係を満たすように設定されていることを特徴とするターボ型流体機械。
  2. 請求項1に記載のターボ型流体機械において、
    1≦|K|≦2
    であることを特徴とするターボ型流体機械。
  3. 請求項1または請求項2に記載のターボ型流体機械において、
    前記ディフューザに設置した前記案内羽根の周方向から測った羽根角度における出口羽根角度が入口羽根角度よりも小さくなるように構成したことを特徴とするターボ型流体機械。
  4. 請求項1に記載のターボ型流体機械において、
    6°≦θ+θ12°を満たすように構成したことを特徴とするターボ型流体機械。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のターボ型流体機械において、
    前記傾き角θ0°、若しくは前記傾き角θ0°を満たすように構成したことを特徴とするターボ型流体機械。
  6. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のターボ型流体機械において、
    前記案内羽根の形状が前記側板側ディフューザ板及び心板側ディフューザ板の壁面に垂直に設けられていることを特徴とするターボ型流体機械。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のターボ型流体機械において、
    側板側ディフューザ板の壁面に設置した案内羽根の前縁位置と、心板側ディフューザ板の壁面に設置した案内羽根との前縁位置を、周方向にずらしてそれぞれ配設したことを特徴とするターボ型流体機械。
  8. 請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のターボ型流体機械において、
    側板側ディフューザ板の壁面に設置した案内羽根の前縁位置と、心板側ディフューザ板の壁面に設置した案内羽根との前縁位置を、羽根車の外径の1.05倍よりも内周側に設置したことを特徴とするターボ型流体機械。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のターボ型流体機械において、
    前記案内羽根のキャンバー線が一円弧で構成されていることを特徴とするターボ型流体機械。
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