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JP6362980B2 - ターボ機械 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の遠心羽根車または斜流羽根車と、段落間に設けられるリターンガイドベーンとを備えた多段の圧縮機、ブロア、ファン、ポンプなどのターボ機械に関する。
多段の遠心型ターボ機械は、同一の回転軸に取り付けられた多数の遠心羽根車または斜流羽根車と、各羽根車の下流側に併設されたディフューザ、リターンガイドベーンから構成される段落を積み重ねた形式となっている。
このうち、リターンガイドベーンは、ディフューザを出た後の流れが持つ旋回速度成分を静圧として回収しつつ、次段羽根車に流れを整流して渡す機械要素である。多段の遠心型ターボ機械全体の運転効率を改善するためには、羽根車、ディフューザ、リターンガイドベーンといった個々の機械要素の効率改善の他に、次段へ悪影響を残さないように流れを整流して受け渡していくことが重要である。リターンガイドベーンは、要素としての効率改善と次段羽根車への均一な流れの提供という2つの役割を持つ。
リターンガイドベーンは、製作の容易性から、2次元翼を用いたものが多く使用される。しかし2次元形状では効率改善に限界があるため、3次元翼化の検討が行われている。例えば、特許文献1では、ガイドベーンの前縁部において、側壁部の羽根角を円周方向に対して寝かせると共に、中央部の羽根角を円周方向に対して立てるとともに、ガイドベーン出口部においては、側壁部の羽根角を羽根車の回転方向に向けて傾斜させ、中央部の羽根角は羽根車の反回転方向に向けて傾斜させる形状について述べられている。本事例によれば、流れの流入角とリターンガイドベーンの入口羽根角を3次元的にマッチングさせるとともに、リターンガイドベーンの流出流れの方向を揃えることにより、効率が改善することができると記載されている。
特開平9-203394
上記の特許文献1は、リターンガイドベーンの1つの3次元化の方策について述べている。しかし、次のような理由で、本ガイドベーンがターボ機械の効率改善につながらない場合がある。
特許文献1ではガイドベーンへの流入流れ角が、ハブ側からシュラウド側に向かって、小さい値から始まって一度大きい値を取り、再度小さい値を取るという状況を想定しているが、実際の流入流れ角はハブ側からシュラウド側に向けて、小さい値から大きい値へ変化する略単調増加な分布となる場合が多い。この違いを図1に示すが、上記特許文献1が想定する流れ角分布が101、本発明の流れ角分布が102である。特許文献1とは流入条件が異なるため、ガイドベーン前縁の最適な羽根角分布が特許文献1とは変わる。また、特許文献1ではガイドベーンの前縁部と出口部において、ベーン形状を3次元化することが記載されているが、両者の中間の部分では、2次元的な形状を残したままとなっている。リターンガイドベーン周りの流れは、流れの剥離などを伴う複雑な流れ構造を有することが通常で、もしベーンの途中で流れが剥離し、ベーン出口側が剥離泡に含まれてしまう場合には、ベーン出口部で羽根角を調整したとしても、もはや有効に流れを偏向することができない。
このような背景から、上記した中間部分においても、三次元化したベーン形状を構成することで、多段ターボ機械の効率改善に結びつく、より有効なリターンガイドベーンの形状を提供することが目的である。
上記課題を解決するために、本発明は、同一軸に少なくとも一つ以上の羽根車と、前記羽根車の下流側に併設されたリターンガイドベーンとを備えるターボ機械において、前記リターンガイドベーンの前縁部において円周方向から測ったリターンガイドベーン羽根角が、ハブ側に対してシュラウド側が大きくなるようにリターンガイドベーン形状を形成することを特徴とする。
本発明によれば、リターンガイドベーンの前縁における流入流れ角にリターンガイドベーンの羽根角を合わせることで、負圧面側の境界層流れを制御し、低エネルギー流体が局所的に集積することを防ぎ、流れ分布を一様化することができる。また、流れの剥離が抑制され、流れの一様性が改善されることで、翼全体を通じて流れをガイドすることが可能となり、旋回速度成分を静圧として十分に回収するとともに、次段羽根車への残留予旋回(リターンガイドベーン出口における流れの周方向)を取り除くことが可能となる。
ゆえに、機械要素としてのリターン要素の静圧回復量を増大させるだけでなく、次段羽根車へ均一な流れの提供が可能になることから多段のターボ機械全体としての効率改善も可能となる。
さらに、設計流量点において次段に均一な流れを提供できることは、流量が変化した場合の流入流れの急な悪化(流入流れのハブからシュラウドに向けての流れ角度分布の急な変化)も抑制できることを意味しているため、非設計点性能も改善できる。
リターンガイドベーン入口における流れ角分布を示した図である。 多段遠心型ターボ機械の例としての遠心圧縮機の断面図である。 従来技術の一例の2次元のリターンガイドベーンの斜視図である。 図3で羽根入口角を流入流れにマッチングさせたガイドベーンの斜視図である。 本発明の実施例となるリターンガイドベーンの斜視図である。 図3のリターンガイドベーンの流れ解析結果を示した図である。 図5のリターンガイドベーンの流れ解析結果を示した図である。
本発明に係わる実施例について、多段遠心圧縮機を例にとって、以下に説明する。尚、本発明の対象は遠心型ターボ機械であればよく、特に多段圧縮機に限定されるものではない。
図2は多段遠心圧縮機200の縦断面図である。多段遠心圧縮機200は、初段201と第2段202とからなる。初段羽根車208および第2段羽根車211は同一の回転軸203に取り付けられて、回転体を構成する。
回転軸203は、回転軸203や羽根車208、211を収容する圧縮機ケーシング206に取り付けられたジャーナルベアリング204やスラストベアリング205により、回転自在に支持されている。
初段羽根車208の下流側には、羽根車208で圧縮された作動ガスの圧力を回復し半径方向外向きの流れを形成するディフューザ209と、このディフューザ209で半径方向外向きにされた作動ガスの流れを半径方向内向きにして第2段羽根車211に導くリターンガイドベーン210とが配置されている。2段羽根車211の下流には同様にディフューザ212と、2段ディフューザ212で圧力上昇した作動ガスをまとめて機外へ送りだすためのコレクタまたはスクロールと呼ばれる回収手段213が配置されている。リターンガイドベーン210は、ハブ210aと、シュラウド210bとの間に周方向に複数枚配置された羽根として設置されているものである。
吸込ノズル207から流入した作動ガスは、初段の羽根車208、羽根付きディフューザ209、リターンガイドベーン210、第2段の羽根車211、羽根付きディフューザ212の順に通過して、コレクタやスクロールといった回収手段213に導かれる。図2にはディフューザとして羽根付きディフューザを示してあるが、ベーンレスディフューザとしてもよい。
本発明はリターンガイドベーン210の3次元形状に関するものである。以下に、圧縮機の効率改善につながる形状の具体的実施例について説明する。
まず図3は、従来技術である2次元のリターンガイドベーン301の形状を示している。ハブ側302からシュラウド側303に向かう方向をスパン方向と定義する時、翼面はスパン方向に並ぶ直線要素306の集合体として定義される。羽根車の回転方向307に対して、流れは308に示す方向でガイドベーンに流入するが、その流れを受ける翼面の腹側を正圧面305と呼び、逆の背側を負圧面304と呼ぶ。本ガイドベーンでは流入流れの方向308は2次元的でスパン方向に変わらないことを想定している。
図4は、図3に示した従来技術のガイドベーンの入口角を、図1に示したスパン方向の流入流れ角分布にマッチングするように、ひねりを加えたガイドベーン402である。翼面は、ハブ側402からシュラウド側403に向かうスパン方向に並んだ直線要素406の集合体として定義されるが、翼にひねりがあるために、直線要素は位置によって傾いていくのが特徴である。羽根車の回転方向407に対して、流れはハブ側では408、シュラウド側では409に示した方向となっていて、ねじれた形でガイドベーンに流入しているが、羽根の入口角とマッチングさせているため、流れは翼面からはがれにくい。ここでも、流れを受ける翼面の腹側を正圧面405と呼び、反対側を負圧面404と呼ぶ。
図5は、図4のガイドベーンに、さらに翼面の湾曲を加えたもので、本発明の実施例であるリターンガイドベーン501を示したものである。翼面は、ハブ側502からシュラウド側503に向かうスパン方向に並んだ曲線要素506の集合体として定義される。図4の場合と同様に、羽根車の回転方向507に対して、流れはハブ側では508、シュラウド側では509に示した方向に、ねじれてガイドベーンに流入している。流れを受ける翼面の腹側を正圧面505と呼び、反対側を負圧面504と呼ぶが、曲線要素506は負圧面が凹面となるように定義されているのが本発明の特徴である。また、ガイドベーン501の前縁510は、スパン方向中央部が上流側にせり出すように湾曲させた形状となっているのが別の特徴である。なお、本特徴は図4の実施例にも当然適用可能である。
翼の負圧面を凹面にすると、負圧面上において、スパン方向中央部がハブやシュラウドといった側壁部よりも圧力が低くなり、圧力面上ではこれとは逆の圧力分布となる。すると、負圧面で発達する境界層は、矢印511で示されるように、高い圧力から低い圧力に向かう勾配の方向に向かって流される。図3に示した2次元形状のガイドベーンでは、翼負圧面とハブ、シュラウド面が接するコーナー部309に境界層が集まりやすいため、コーナー部で流れが剥離してしまうことが多い。しかし、図5に示した本発明によれば、コーナー部から離れる方向に境界層流れを導くため、剥離を抑制できる。また、ベーン前縁部510のハブ、シュラウド部において形成されるくさび状のすき間512においては、流れが周りこむことにより、513で例示したような縦渦が発生するため、コーナー部の低速流れ高速な主流と撹拌し剥離を抑制できる効果もある。
このように、本発明によれば、流れを途中で剥離させることなく、翼面に沿わせて有効に流れを転向させることができるようになるため、リターンガイドベーン流入時に持っていた旋回速度成分を十分に取ることができ、静圧回復量を増大させることができる。同時に、コーナー部に局所的に低エネルギー流体が蓄積することを抑制することができるため、リターンガイドベーン出口における流れの一様性が改善され、次段羽根車は理想的な流入条件で運転することができる。
図6,7は、それぞれ図3、5に示したリターンガイドベーンに対する流れ解析の結果で、等速度を示す場所を等高線として線として示している。即ち図6,7において筋のように見える線上では、流れの流速は同じであり、その線が筋状にきれいに並んでいれば流れは均一であり、線が交差しているところでは流れが乱れていることになる。可視化の都合上、シュラウド壁面は取り除いて表示してある。両図には、壁面近傍の境界層流れの方向を示す限界流線601、701と、リターン出口面、即ち次段羽根車入口面における絶対流速の等高線分布602、702を示してある。等高線は両図で同じ間隔で描いてある。
図6から、従来形状では、ハブ側と負圧面のコーナー部603において、等高線が複雑に交差しており、それは流れが剥離していることを示している。また、次段羽根車の入口面における絶対流速602は、流速の分布が一様ではなく非一様性が大きく、流速の絶対値も大きいことから残留予旋回が取り切れていないことがわかる。一方で図7から、本発明では、ハブ側と負圧面のコーナー部703での等高線の交差はなくなっており流れの剥離は解消されていることがわかる。このように境界層の集積が抑制され、剥離が防止される。さらに、次段羽根車入口における流速分布702を図6の602と比較すると、絶対流速分布の一様性(流速の最大値と最小値の差)が明らかに改善されており、流速の絶対値も小さくなっていることから旋回速度が十分に取れていることがわかる。
図6の流れ場を基準として図7の流れ場を評価すると、リターンガイドベーン部の全圧損失係数は2.9%、圧力回復係数は82%改善する結果となった。図7の方が図6の場合よりも旋回速度の回収が進むため、静圧回復の程度を表す圧力回復係数は大幅に改善される結果となり、本発明の有効性が示された。
このように、本発明のリターンガイドベーン形状によれば、流入流れと羽根角度をマッチングさせ、かつ負圧面を湾曲化させることで境界層流れを制御することができるため、剥離を抑制することができる。よって、リターンガイドベーンの本来の形状に沿って有効に流れを転向させることが可能となり、結果として圧力回復係数が改善したり、次段羽根車への流入流れの均一性を増したりすることができる。次段羽根車への流入流れの整流化は、次段の効率改善も期待できる。さらには、設計流量点で流れ極限まで一様化しているため、流量が変化した場合にも、次段羽根車への流入流れは急には悪化しにくいと考えられるため、ターボ機械の作動範囲の拡大にも効果がある。
図5に示した形状では、ベーン前縁の中央部を上流側に張り出させることと、負圧面を凹面にすることを同時に実施したが、これらはどちらか一方の実施であってもかまわない。
また、図4から図5への翼の湾曲を追加する場合に、リターンガイドベーンの翼厚みを変更していないため、負圧面を凹面にすると、正圧面が同時に凸面になった。しかしながら、境界層が発達しやすいのは主に、減速流れを伴う負圧面側である。このような理由から、正圧面を負圧面と一緒に動かして凸面とする必要はないことがわかる。したがって、正圧面側は湾曲させずに直線要素のままとし、負圧面側だけ曲線要素化するような構成も、本発明は想定する。
尚、上記では、残留予旋回は出来るだけ取るという主旨の説明を行った。その場合には、リターンガイドベーンの形状は、例えば、リターンガイドベーンの出口における羽根角はハブもシュラウドも円周方向から測って略90゜に揃え、前縁において羽根角はハブとシュラウドでずれているのを、流れ方向に徐々に出口に向かって出口における羽根角に合うように変化させ、ハブ側とシュラウド側の羽根角のずれを小さくする。あるいは、ターボ機械の用途によっては意図的に残留予旋回速度を残したい場合もある。そのような場合には、出口の羽根角は90゜以外の角度で、ハブ側とシュラウド側で若干ずらしてもよい。このような場合にも本発明は有効であり、流れの剥離を抑制して、狙った分量だけの流れの転向を実現することができる。
本発明は段落間に配置されるリターンガイドベーンを対象に説明したが、ターボ機械には吸込ノズルやサイドストリームといった部位があり、これらの箇所でもガイドベーンが使われることがある。このようなガイドベーンにおいても本発明の主旨は有効である。
101 公知例の流入流れ角分布
102 本発明の流入流れ角分布
200 多段遠心圧縮機
201 初段
202 第2段
203 回転軸
204 ジャーナルベアリング
205 スラストベアリング
206 圧縮機ケーシング
207 吸込ノズル
208 初段羽根車
209 初段ディフューザ
210 初段リターンガイドベーン
210a ハブ側
210b シュラウド側
211 第2段羽根車
212 第2段ディフューザ
213 コレクタまたはスクロール等の回収手段
301 従来技術のリターンガイドベーン
302 ハブ側
303 シュラウド側
304 負圧面
305 正圧面
306 直線要素
307 羽根車回転方向
308 流入流れの方向
309 コーナー部
401 流入角をマッチングさせたリターンガイドベーン
402 ハブ側
403 シュラウド側
404 負圧面
405 正圧面
406 直線要素
407 羽根車回転方向
408 ハブ側の流入流れの方向
409 シュラウド側の流入流れの方向
501 本発明のリターンガイドベーン
502 ハブ側
503 シュラウド側
504 負圧面
505 正圧面
506 曲線要素
507 羽根車回転方向
508 ハブ側の流入流れの方向
509 シュラウド側の流入流れの方向
510 ガイドベーン前縁
511 圧力勾配
512 くさび状の隙間部
513 縦渦
601 限界流線
602 リターン出口絶対流速分布
603 コーナー部
701 限界流線
702 リターン出口絶対流速分布
703 コーナー部

Claims (5)

  1. 同一軸に少なくとも一つ以上の羽根車と、前記羽根車の下流側に併設されたリターンガイドベーンとを備えるターボ機械において、
    前記リターンガイドベーンの前縁部において円周方向から測ったリターンガイドベーン羽根角が、ハブ側に対してシュラウド側が大きくなるようにリターンガイドベーン形状を形成し、かつ、前記リターンガイドベーンの前縁部において、前記リターンガイドベーン羽根角がハブ側からシュラウド側に向かって増加し、前記ハブ側と前記シュラウド側の間で前記シュラウド側の羽根角より大きくなった後、前記シュラウド側の羽根角まで減少するように形成することを特徴とするターボ機械。
  2. 請求項1に記載のターボ機械において、
    流れを受ける前記リターンガイドベーンの翼面の腹側を正圧面、反対側を負圧面として、
    隣り合う前記リターンガイドベーンの翼面の正圧面に対して、前記リターンガイドベーンの前縁部から出口部にかけて曲線要素で構成し負圧面が凹面になるように湾曲して形成することを特徴とするターボ機械。
  3. 請求項1に記載のターボ機械において、
    前記前縁部は、前記ハブ側と前記シュラウド側の間が流れの上流側にせり出すように湾曲して形成することを特徴とするターボ機械。
  4. 請求項2又は請求項3に記載のターボ機械において、
    流れを受ける前記リターンガイドベーンの翼面の腹側を正圧面、反対側を負圧面として、
    前記リターンガイドベーンの正圧面は、前記リターンガイドベーンの前縁部から出口部にかけて、曲線要素で構成するように形成することを特徴とするターボ機械。
  5. 請求項2又は請求項3に記載のターボ機械において、
    前記リターンガイドベーンの正圧面は、前記リターンガイドベーンの前縁部から出口部にかけて、直線要素で構成するように形成することを特徴とするターボ機械。
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