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JP5313051B2 - 蓚酸ジルコニウムゾル - Google Patents

蓚酸ジルコニウムゾル Download PDF

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JP5313051B2
JP5313051B2 JP2009130145A JP2009130145A JP5313051B2 JP 5313051 B2 JP5313051 B2 JP 5313051B2 JP 2009130145 A JP2009130145 A JP 2009130145A JP 2009130145 A JP2009130145 A JP 2009130145A JP 5313051 B2 JP5313051 B2 JP 5313051B2
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Description

本発明は、蓚酸ジルコニウムゾルに関する。
光触媒体は、光を照射されることで活性を示す触媒であって、例えばWO98/15600パンフレット、特開2003−105262号公報、特開平9−328336号公報、特開2004−59686号公報、WO01/023483パンフレット、特開平11−209691号公報、WO99/028393パンフレットなどに開示されるように、バインダー成分と共に基材に塗布して、塗膜として使用されている。
しかし、従来の光触媒体コーティング液から形成される塗膜は、基材への密着強度が必ずしも十分ではなく、このため、コーティング液中の光触媒体に対するバインダー成分の使用量を多くする必要があった。バインダー成分の使用量が多いと、光触媒体が十分にその活性を発現しにくくなる。
金属化合物の微粒子を分散質とするゾルをバインダーとして使用する場合、ゾルは分散性が優れているため、光触媒体との均一な混合が容易であり、膜の構造を均一化でき、強力なバインダー能力を発揮して、良質の光触媒体の塗膜を与えることが期待できる。
かかる金属化合物の微粒子のなかでも、ジルコニウム化合物微粒子はZr原子同士がOH基を介して重合しやすい性質をもつため、光触媒体コーティング液のバインダーとして高い適性を持つと考えられる。光触媒のバインダーとしての適性が高いと考えられるジルコニウム化合物のゾルとしては、特許文献1に開示されるゾル、すなわち、X線回折的に非晶質であり、平均粒子径が10nmのZr−O系粒子を分散質とし、pH3.2、1モルのZrに対して0.4グラム当量の硝酸を含有するゾルが挙げられる。このZr−O系粒子を分散質とするゾルは、分散質が非晶質であることや平均粒子径が10nmであることなど、光触媒体コーティング液のバインダーとして高い適正が期待できる。
しかし、特許文献1に開示されるゾルは、光触媒体コーティング液のバインダーとして最適であるとは言いがたい。
特開2007−70212号公報
本発明は上記の問題点を鑑みなされたものであって、その目的とするところは、光触媒体塗料の優れたバインダーとして機能するゾルを提供することにある。
本発明者等は上記の問題点について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
(1)蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾルであって、蓚酸/Zrモル比が1.2〜3であり、分散質の粒子径D50が10〜100nmであることを特徴とする蓚酸ジルコニウムゾル。
(2)水酸化ジルコニウムの分散液へ蓚酸を添加することにより、上記(1)の蓚酸ジルコニウムゾルを製造する方法であって、蓚酸の添加を2回に分けて行うことを特徴とする蓚酸ジルコニウムゾルの製造方法。
(3)水酸化ジルコニウムの分散液へ蓚酸/Zrモル比が0.8〜1.0となるように蓚酸を添加し、得られた水酸化ジルコニウムと蓚酸の混合物を加熱処理した後、さらに蓚酸/Zrモル比が1.2〜3.0となるように蓚酸を添加し、該混合物を再び加熱すること
を特徴とする前記(2)記載の製造方法。
(4)光触媒活性を有する被膜を形成するための光触媒体コーティング液であって、(i)光触媒体、(ii)蓚酸ジルコニウム、(iii)非晶質Zr−O系粒子、(iV)シリコンアルコキシド、及び(V)溶媒を含み、(i)が表面が互いに同じ極性に帯電している光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子か、もしくは、リン酸(塩)で表面処理された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子、であり、(i)の全固形分に対する(ii)〜(iV)の含有量が、酸化物換算((ii)および(iii)はZrO2、(iV)はSiO2)で、それぞれ0.020〜0.20質量倍、0.020〜0.40質量倍、及び0.040〜0.22質量倍である光触媒体コーティング液。
(5)基材の表面に前記(4)に記載の光触媒体コーティング液を塗布し、分散媒を揮発させることを特徴とする光触媒機能製品の製造方法。
本発明の蓚酸ジルコニウムゾルによれば、バインダー成分として光触媒体コーティング液に添加することにより、光触媒体の機能を阻害することなく、少ない添加量で、十分な密着力を示す塗膜を形成することができる。
本発明において、粒子径D50とはレーザードップラー法によってゾルの粒子径測定を行ったときの体積換算累積頻度が50%となる粒子径を意味する。
〔蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾル〕
本発明のゾルは蓚酸ジルコニウムを分散質とする。この蓚酸ジルコニウムの蓚酸/Zrモル比は特に限定されず、例えば、95Zr−Zirconium oxalate(CAS.No.50291−68−4)、Zirconium oxalate(CAS.No.14536−19−7)、Zirconium oxide oxalate(CAS.No.34156−70−2)、Zr(C240.69(OH)2.69・xH2O(CAS.No.34156−70−2)、Zr(C240.8(OH)2.4・99H2O(CAS.No.34156−70−2)、Zr(OH)(HC243・7H2O(CAS.No.34156−70−2)等既知の化合物が例示される。分散質の蓚酸ジルコニウムの構造としては、OH基を介して重合されたZr原子に蓚酸イオンが配位しているような構造が考えられる。その証拠に、本発明のゾルは大きくとも約−20mVの負のゼータ電位を有する。これはアニオンである蓚酸イオンの配位によって、Zr原子の重合体が負電荷を帯びていることによると推測される。
ここで、配位した蓚酸イオンが完全に脱離して、Zr原子がOH基を介した重合構造の骨格だけとなっても、光触媒体のバインダーとして機能を発揮できるため、そのような化学種がゾルに含まれていても構わない。
分散質の蓚酸ジルコニウムの粒子径D50は10〜100nm、好ましくは10〜80nmである。このような粒子径D50が必要である理由は、光触媒体塗膜となったとき高い可視光透過率を確保するため、また、光触媒体の粒子径と同等の粒子径とすることで光触媒塗膜の均一化し、高い密着性や膜強度を得るためである。光触媒体コーティング液に粒子径D50が10nm未満の蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾルが処方された場合、塗膜の形成過程で蓚酸ジルコニウムが結晶として析出し成長するなどして膜の不均一化の原因となるため好ましくない。また、100nmを超えると可視光の白色散乱が強くなり光触媒塗膜やその基材の外観を損ねたり、光触媒塗膜の緻密性が低下し十分な強度や密着性が得られないため好ましくない。
本発明のゾルは蓚酸/Zrモル比が1.2〜3.0の蓚酸を含有する。そのうち一部は上記のようにOH基によって重合したZr原子に配位していると考えられる。上記モル比が1.2未満の場合は、分散質が均一に分散せず、目的のゾルとならない。これは分散質の蓚酸ジルコニウムが分散に十分なだけの負の表面電位を持つには、蓚酸ジルコニウム中のZr原子に対する蓚酸イオンの配位が一定量以上必要であるためと考えられる。ゾルに含有される蓚酸/Zrモル比によってゼータ電位の制御が可能であるため、必要なゼータ電位に応じて蓚酸/Zrモル比を1.2〜3.0とすればよい。蓚酸/Zrモル比に伴ってゼータ電位は低下するので、分散質の蓚酸ジルコニウムの静電気的反発力は大きくなり、結果として、粘度が低下するなどの効果が得られる。
蓚酸/Zrモル比が3.0を超える場合、光触媒体塗膜の不純物が増大させ、光触媒機能を妨害する可能性があるため好ましくない。
ゾルの粒子径D50が10〜100nm、好ましくは10〜80nmとなる限り、分散媒は用途に応じて適当に選択すればよい。通常水、エタノール、メタノール等およびそれらの混合物が使用される。
また、ゾル中に含まれるジルコニウムおよび蓚酸以外の不純物成分は極力少ないことが好ましいが、光触媒体や光触媒体塗膜の機能を阻害しない範囲内であれば含有されても問題ない。
以下に、本発明の蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾルの製造方法、蓚酸ジルコニウムをバインダーの一成分とする光触媒体コーティング液、およびその光触媒体コーティング液を塗布した光触媒機能製品の製造方法、について、詳細に説明する。
〔蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾルの製造方法〕
本発明の特徴は水酸化ジルコニウムの分散液へ2回に分けて蓚酸を添加することである。本発明で使用する水酸化ジルコニウムは、通常市販されているものでも、オキシ塩化ジルコニウムの水溶液を水酸化ナトリウムなどの塩基で中和し、十分に洗浄して不純物を除去して得られるものでもよい。用いる水酸化ジルコニウムの不純物は、水酸化ジルコニウムのZrO2換算濃度に対する相対濃度として1重量%以下であることが好ましい。1重量%を超える場合、ゾル中の不純物濃度も増大し、光触媒体塗膜へ悪影響する可能性があるため好ましくない。
次に、水酸化ジルコニウムを通常は水に分散し水酸化ジルコニウムの分散液とする。この分散液のZrO2換算濃度は5〜15重量%であることが好ましい。5%未満の場合は、非効率であり、15%を超える場合、粒子径の制御が困難になるため不適当である。
次に、上記分散液に1回目の蓚酸添加を行う。蓚酸の供給源としては通常、蓚酸二水和物を粉末のまま使用するが、これを水に溶解したものを用いてもなんら構わない。
1回目に添加される蓚酸の量は蓚酸/Zrモル比が0.8〜1.0であることが好ましい。この蓚酸/Zrモル比が0.8未満であっても、1.0を超えても、ゾルの粒子径D50が粗大化するため好ましくない。1回目の蓚酸添加量が上記範囲内に限定され、その範囲外において粒子径D50が粗大化する理由は、1回目の蓚酸添加によってゾルの分散質となる蓚酸ジルコニウムの基本骨格が形成されるためと考えられる。すなわち、1回目の蓚酸添加後、上記で説明したような蓚酸イオンに配位されたZr原子がOH基を介した重合体が形成されるが、その大きさが1回目の蓚酸添加量によって決定されると考えられる。
1回目の蓚酸添加後、水酸化ジルコニウムの分散液は通常、加熱されることが好ましい。
上記のように1回目の蓚酸添加後は分散質となる蓚酸ジルコニウムが形成される反応が起こると考えられるが、加熱によってその反応速度を上げることで、製造効率を高めることができる。加熱は70〜95℃で10〜30分程度行えばよい。加熱不足によって上記反応が十分進行していない場合は、最終的に得られるゾルの粒子径D50が粗大化する原因となる。
上記の加熱後、2回目の蓚酸添加を行う。2回目の蓚酸添加はゾル中の蓚酸/Zrモル比が1.2〜3.0になるような量を添加する。例えば、1回目の蓚酸添加において蓚酸/Zrモル比で1.0の蓚酸を添加した場合は、2回目の蓚酸添加において蓚酸/Zrモル比で0.2〜2.0の蓚酸を添加すればよい。この2回目の蓚酸添加によって、1回目の蓚酸添加後形成された分散質の蓚酸ジルコニウムの基本骨格から最終的にゾルの分散質となる蓚酸ジルコニウムの粒子が完成される。すなわち、ゾルの分散質となる蓚酸ジルコニウムの粒子が生成し、本発明のゾルが完成されるには最低限、蓚酸/Zrモル比が1.2の蓚酸が必要である。2回目の蓚酸が添加された液の粒子径D50を測定して10〜100nmであれば、分散質となる蓚酸ジルコニウムの粒子が完成されたと判断できる。
上記の説明のように、蓚酸ジルコニウムのZr原子への蓚酸イオンの配位数によって、分散質の蓚酸ジルコニウムのゼータ電位が決定されるため、最終的にゾルの分散質となる蓚酸ジルコニウムの粒子を完成させるために必要な蓚酸よりも多い量の蓚酸は必要とされるゼータ電位に応じて添加すればよい。
2回目の蓚酸添加後は加熱処理をすることが好ましい。加熱は70〜95℃で10〜30分程度行えばよい。加熱処理によって上記のゾルの分散質となる蓚酸ジルコニウムの粒子の完成が促進され、ゾルを効率的に製造できる。
以下、本発明の光触媒体コーティング液について詳細に説明する。
本発明の光触媒体コーティング液は、(1)光触媒体、(2)蓚酸ジルコニウム、(3)非晶質Zr−O系粒子、(4)シリコンアルコキシド及び(5)溶媒を含み、(1)が表面が互いに同じ極性に帯電している光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子か、もしくは、リン酸(塩)で表面処理された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子、であり、(1)の全固形分に対する(2)〜(4)の含有量が、酸化物換算((2)および(3)はZrO、(4)はSiO)で、それぞれ0.020〜0.20質量倍、0.020〜0.40質量倍および0.040〜0.22質量倍であることを特徴とする。
本発明の光触媒体は、分散媒中に分散された光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の表面が互いに同じ極性に帯電しているか、もしくは、酸化チタン粒子はリン酸(塩)で表面処理されているため、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子は互いに凝集することがなく、このため固液分離することがない。また、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子を互いに凝集させることなく基材に塗布することができるので、本発明の光触媒体分散液を塗布することにより形成される光触媒体塗布膜は、高い光触媒活性を示す。
〔光触媒体酸化チタン粒子〕
本発明の光触媒体分散液を構成する光触媒酸化チタン粒子とは、光触媒作用を示し粒子状の酸化チタンであって、例えばメタチタン酸粒子、結晶型がアナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型などである二酸化チタン〔TiO2〕粒子などが挙げられる。
メタチタン酸粒子は、例えば以下の方法1により得ることができる。
方法1:硫酸チタニルの水溶液を加熱することにより加水分解する方法
二酸化チタン粒子は、例えば以下の方法2−1〜方法2−3のいずれかの方法により得ることができる。
方法2−1:硫酸チタニルまたは塩化チタンの水溶液を加熱することなく、これに塩基を加えることにより沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法
方法2−2:チタンアルコキシドに水、酸の水溶液または塩基の水溶液を加えて沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法
方法2−3:メタチタン酸を焼成する方法
これらの方法2−1〜方法2−3により得られる二酸化チタン粒子は、焼成する際の焼成温度、焼成時間により、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型のものとして得る
ことができる。
光触媒酸化チタン粒子の粒子径は、平均分散粒子径で、光触媒作用の点で、通常20nm〜150nm、好ましくは40nm〜100nmである。
光触媒酸化チタン粒子のBET比表面積は、光触媒作用の点で、通常100m2/g〜500m2/g、好ましくは300m2/g〜400m2/gである。
〔光触媒体酸化タングステン粒子〕
光触媒酸化タングステン粒子とは、光触媒作用を示し、粒子状の酸化タングステンであって、通常は三酸化タングステン〔WO3〕粒子が挙げられる。三酸化タングステン粒子は、例えばタングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法により得ることができる。また、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法により得ることもできる。
光触媒酸化タングステン粒子の粒子径は、平均分散粒子径で、光触媒作用の点で、通常50nm〜200nm、好ましくは80nm〜130nmである。
光触媒酸化タングステン粒子のBET比表面積は、光触媒作用の点で、通常5m2/g〜100m2/g、好ましくは20m2/g〜50m2/gである。
光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との使用量比は、質量比で通常4:1〜1:8、好ましくは2:3〜3:2である。
〔表面の帯電〕
本発明で用いる光触媒体コーティング液において、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子は、表面が互いに同じ極性に帯電しており、具体的には共にプラスに帯電しているか、または表面が共にマイナスに帯電している。
上記の方法1により得たメタチタン酸粒子や、上記の方法2−1〜方法2−3により得た二酸化チタン粒子は通常、その表面がプラスに帯電している。
これに対して、タングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法により得た酸化タングステン粒子や、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムなどを加熱することにより熱分解して得られた酸化タングステン粒子は、その表面がマイナスに帯電している。このため、表面がプラスに帯電している上記の光触媒酸化チタン粒子と、表面がマイナスに帯電した上記の光触媒酸化タングステン粒子とを用いる場合は、例えば光触媒酸化チタン粒子の表面をマイナスに帯電させて、本発明の光触媒体分散液に用いればよい。
表面がプラスに帯電した光触媒酸化チタン粒子の表面をマイナスに帯電させるには、該光触媒酸化チタン粒子の表面をマイナスに帯電させうる表面処理剤が分散媒に溶解された溶液中に分散させればよい。かかる表面処理剤としては、例えばジカルボン酸、トリカルボン酸などのような多価カルボン酸、などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば蓚酸などが、トリカルボン酸としては、例えばクエン酸などが挙げられる。多価カルボン酸およびリン酸として遊離酸を用いてもよいし塩を用いてもよい。塩としては、例えばアンモニウム塩などが挙げられる。かかる表面処理剤として、好ましくは蓚酸、蓚酸アンモニウムなどが挙げられる。
上記表面処理剤の使用量は、TiO2換算の光触媒酸化チタン粒子に対して、表面を十分に帯電させ得る点で、通常0.001モル倍以上、好ましくは0.02モル倍以上であり、経済性の点で、通常0.5モル倍以下、好ましくは0.3モル倍以下である。
上記表面処理剤が分散媒に溶解された溶液中に、表面がプラスに帯電している光触媒酸化チタン粒子を分散させることにより、表面処理溶液に溶解した表面処理剤が光触媒酸化チタン粒子の表面に吸着し、これにより、表面をマイナスに帯電させることができる。
光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の表面の帯電は、それぞれを溶媒中に分散させたときのゼータ電位により測定することができる。ゼータ電位の測定に用いられる溶媒としては、塩酸を加えて水素イオン濃度をpH3.0とした塩化ナトリウム水溶液〔塩化ナトリウム濃度0.01モル/L〕が用いられる。溶媒の使用量は、光触媒酸化チタン粒子または酸化タングステン粒子に対して通常10000質量倍〜1000000質量倍である。
〔リン酸(塩)〕
本発明の光触媒コーティング液はリン酸(塩)を含み、リン酸(塩)は光触媒酸化チタン粒子の表面近傍に存在する。リン酸(塩)としては、リン酸、もしくはそのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これらの中でも特に、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸アンモニウム塩が好ましい。なお、リン酸(塩)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の光触媒コーティング液においては、前記リン酸(塩)の含有量は、前記酸化チタン粒子に対して0.001〜0.2モル倍である。好ましくは、0.01モル倍以上、0.1モル倍以下である。リン酸(塩)の含有量が0.001モル倍未満であると、分散液中の粒子の凝集を充分に抑制することができず、一方、0.2モル倍を超えて用いても、その量に見合っただけのさらなる効果は得られないので、経済的に不利となる。
〔蓚酸ジルコニウム〕
本発明の光触媒体コーティング液は、蓚酸ジルコニウムを含む。蓚酸ジルコニウムの使用量は、酸化ジルコニウム(ZrO)換算で、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対して0.020〜0.20質量倍である。蓚酸ジルコニウムの蓚酸/Zrモル比は1.2〜3.0のものを用いるのが好ましい。
〔非晶質Zr−O系粒子〕
本発明の光触媒体コーティング液は、非晶質Zr−O系粒子を含有する。非晶質Zr−O系粒子としては、例えば市販のゾル(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製)などを用いることができる。非晶質Zr−O系粒子の含有量は、酸化物換算(ZrO)で、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子に対して0.020〜0.40質量倍である。
〔シリコンアルコキシド〕
本発明の光触媒体コーティング液は、シリコンアルコキシドを含み、シリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、ケイ酸メチル(テトラメトキシシラン)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシランや、シリコンアルコキシドの加水分解物や重合物等があげられる。シリコンアルコキシドの含有量としては、酸化ケイ素(SiO)換算で、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子に対して0.040〜0.22質量倍である。
〔分散媒〕
分散媒としては通常、水を主成分とする水性媒体、具体的には水の使用量が50質量%以上で含むものが用いられ、水を単独で用いてもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの水溶性アルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
分散媒の使用量は、光触媒酸化チタン粒子、光触媒酸化タングステン粒子、蓚酸ジルコニウム、およびシリコンアルコキシドの酸化物換算の合計量に対して、通常5質量倍〜200質量倍、好ましくは10質量倍〜100質量倍である。分散媒の使用量が5質量倍未満では、光触媒酸化チタン粒子、光触媒酸化タングステン粒子および蓚酸ジルコニウムが沈降し易くなり、200質量倍を超えると容積効率の点で不利である。
本発明の光触媒体コーティング液は、コーティング液から揮発成分を揮発させて得られる固形分の含有量が通常0.5重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜20重量%、より好ましくは2重量〜10重量%程度となるように水や溶媒で希釈されて用いられる。固形分含有量が0.5重量%未満では、十分な厚さの塗膜を形成しにくくなり、また固形分含有量が30重量%を超えると、得られる塗膜の透明性が損なわれ易くなる。
本発明の光触媒体コーティング液は、例えば光触媒体を単独で溶媒に分散させた光触媒体分散液と、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、およびシリコンアルコキシドからなるバインダー液を混合する方法で製造することができる。
〔光触媒体分散液〕
本発明の光触媒体分散液の水素イオン濃度は通常pH0.5〜pH8.0、好ましくはpH1.0〜pH7.0である。水素イオン濃度がpH0.5未満では酸性が強すぎて取扱いが面倒であり、pH8.0を越えると光触媒酸化タングステン粒子が溶解するおそれがある。光触媒体分散液の水素イオン濃度は通常、酸を加えることにより調整できる。酸としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、蓚酸などが使用できる。
〔光触媒体分散液の製造〕
本発明で用いる光触媒分散体が、表面が互いに同じ極性に帯電している光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の場合、例えば、表面がプラスに帯電している光触媒酸化チタン粒子を、上記表面処理剤が分散媒に溶解された溶液中に分散させたのち、表面がマイナスに帯電している光触媒酸化タングステン粒子と混合することにより、本発明出用いる光触媒体分散液を得ることができる。
さらに、本発明で用いる光触媒体分散液が、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、およびリン酸(塩)を含むものである場合、例えば、光触媒酸化チタン粒子を、リン酸(塩)が分散媒に溶解された溶液中に分散させたのち、光触媒酸化タングステン粒子と混合することにより、本発明で用いる光触媒体分散液を得ることができる。
分散処理は、例えば媒体撹拌式分散機を用いる通常の方法により行うことができる。光触媒酸化タングステン粒子は、そのまま混合されてもよいが、通常は分散媒中に分散させた状態で混合され、好ましくはさらに分散処理を施してから、混合される。分散処理は、例えば媒体撹拌式分散機を用いる通常の方法により行うことができる。
〔電子吸引性物質またはその前駆体〕
本発明の光触媒体コーティング液は、光触媒体の表面に担持されることにより電子吸引性を発揮しうる電子吸引性物質またはその前駆体を含んでいてもよい。電子吸引性物質が光触媒体の表面に担持されることにより、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
かかる電子吸引性物質としては、例えばCu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、Rh、Coなどの金属、好ましくはCu、Pt、Au、Pdなどが挙げられる。また、これらの金属の酸化物および水酸化物も挙げられる。
電子吸引性物質の前駆体とは、光触媒体の表面で電子吸引性物質に遷移しうる化合物である。かかる前駆体としては、例えば上記金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、りん酸塩などが挙げられ、具体的には、例えばCuの前駆体としては、硝酸銅〔Cu(NO3)2〕、硫酸銅〔CuSO4〕、塩化銅〔CuCl2、CuCl〕、臭化銅〔CuBr2、CuBr〕、沃化銅〔CuI〕、沃素酸銅〔CuI26〕、塩化アンモニウム銅〔Cu(NH4)2Cl4〕、オキシ塩化銅〔Cu2Cl(OH)3〕、酢酸銅〔CH3COOCu、(CH3COO)2Cu〕、蟻酸銅〔(HCOO)2Cu〕、炭酸銅〔CuCO3)、蓚酸銅〔CuC24〕、クエン酸銅〔Cu2647〕、リン酸銅〔CuPO4〕等が;Ptを含む前駆体として、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C21446Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕、ジニトロジアミン白金〔Pt(NO2)2(NH3)2〕等が;Auを含む前駆体として、塩化金〔AuCl〕、臭化金〔AuBr〕、沃化金〔AuI〕、水酸化金〔Au(OH)2〕、テトラクロロ金酸〔HAuCl4〕、テトラクロロ金酸カリウム〔KAuCl4〕、テトラブロモ金酸カリウム〔KAuBr4〕、酸化金〔Au23〕等が;Pdを含む前駆体として、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH(NO〕、テトラアンミンパラジウム塩化物〔Pd(NHCl〕、テトラアンミンパラジウム臭化物〔Pd(NHBr〕、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸〔(Pd(NH)(PdCl)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NHPdCl〕等が、それぞれ挙げられる。
これらの電子吸引性物質はそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いられる。かかる電子吸引性物質またはその前駆体を用いる場合、その使用量は、金属原子換算で、光触媒体粒子の合計量100質量部に対して通常0.005質量部〜0.6質量部、好ましくは0.01質量部〜0.4質量部である。使用量が0.005質量部未満では、電子吸引性物質の使用による光触媒活性の向上が十分ではなく、0.6質量部を越えると、却って光触媒作用が不十分なものとなり易い。
かかる電子吸引性物質またはその前駆体を含む光触媒体コーティング液は、例えば上記と同様にして光触媒体分散液を混合したのち、電子吸引性物質またはその前駆体を加える方法により得ることができる。また前駆体を加えた場合には、その後、光照射を行おこなってもよい。照射される光としては、可視光線でもよいし紫外線でもよい。光照射を行うことにより、前駆体を電子吸引性物質に変換することができる。光触媒体の光励起可能な波長の光を照射した場合、光励起によって生成した電子によって前駆体が還元され、電子吸引性物質として光触媒体粒子表面に担持される。
〔添加剤〕
本発明の光触媒体コーティング液は、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の分散性を損なわない範囲で、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば光触媒作用を向上させる目的で添加されるものが挙げられ、具体的には、シリカゾル、水ガラス、などの珪素化合物、非晶質アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ度類金属水酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、リン酸塩、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。これらの添加剤はそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いられる。
かかる添加剤を含む光触媒体コーティング液は、例えば光触媒体、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、シリコンアルコキシド及び溶媒を混合し、そこに添加剤を加える方法により得ることができる。
〔光触媒体層の形成〕
本発明の光触媒体コーティング液を基材の表面に塗布し、分散媒を揮発させることにより、基材表面に、光触媒体粒子を含み、光触媒作用を示す光触媒体層が形成された光触媒機能製品を製造することができる。
光触媒体コーティング液が、電子吸引性物質またはその前駆体を含む場合、電子吸引性物質またはその前駆体は、光触媒体粒子の表面に担持され、前駆体を用いた場合には、担持された前駆体は、担持されたのち、電子吸引性物質に遷移する。
この光触媒機能製品は、通常、その表面に光触媒体を実用に耐えうる強度で保持しているものである。ここで用いられる光触媒体には、粒子、繊維、薄片など各種形状のものが適用でき、その大きさは用途、表面性状に応じて適宜選択すればよい。また、光触媒体を、光触媒機能製品の表面に膜とする場合、その膜厚も数100nm〜数mmまで適宜選択して形成すればよい。光触媒体は、プラスチック、金属、セラミックス、木材、コンクリート、紙のような材料からなる光触媒機能製品の内表面および外表面のうち、可視光線が照射される面であって、かつ悪臭物質が発生する箇所と連続または断続して空間的につながる面に保持されていることが好ましい。
〔光触媒機能製品〕
光触媒機能製品の例としては、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車内装材(自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車の天井材)、衣類やカーテン等の繊維製品があげられる。
これらの光触媒機能製品は、蛍光灯、ナトリウムランプのような可視光源からの光照射により高い触媒作用を示すものであり、例えば、この光触媒機能製品を照明のある屋内住環境に設置すれば、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
なお、各実施例における測定法は、以下のとおりである。
1.粒子径D50(非晶質Zr−O系粒子のゾル)
粒度分布測定装置(商品名“UPA150”、日機装製)を用いて、ゾルの体積換算粒度分布において累積頻度が50%となる粒子径を測定した。
2.ゼータ電位(非晶質Zr−O系粒子のゾル)
ゼータ電位測定装置(商品名“ELS−Z2”、大塚電子製)を用いてゾルのゼータ電位を測定した。
3.BET比表面積
光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置〔湯浅アイオニクス社製「モノソーブ」〕を用い窒素吸着法により測定した。
4.平均分散粒子径(nm)(光触媒体分散液)
サブミクロン粒度分布測定装置〔コールター社製「N4Plus」〕を用いて試料の粒度分布を測定し、この装置に付属のソフトで、自動的に単分散モード解析して得られた結果を平均分散粒子径とした。
5.結晶型
X線回折装置〔リガク社製「RINT2000/PC」〕を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶型を決定した。
6.ゼータ電位(光触媒体)
レーザーゼータ電位計〔大塚電子社製「ELS−6000」〕を用い、塩酸を加えて水素イオン濃度をpH3.0に調整した塩化ナトリウム水溶液〔塩化ナトリウム濃度0.01モル/L〕中に光触媒酸化チタン粒子または光触媒酸化タングステン粒子を分散させて、ゼータ電位を測定した。光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子のそれぞれの使用量に対する塩化ナトリウム水溶液の使用量は、250000質量倍とした。このゼータ電位がプラスであれば、光触媒体の表面はプラスに帯電しており、マイナスであれば表面はマイナスに帯電している。
7.耐擦れ性試験
基板との耐擦れ性は、12枚に重ねたチーズクロス(サマーズ社製)を消しゴム摩擦試験機(三光製作所製)に固定し、試料が塗布されたガラス基板を10往復して擦った後、塗膜の状態を目視により下記5段階で評価した。
A:塗膜に全く傷がない
B:塗膜に1〜9本の傷がついている
BC:塗膜に10〜19本の浅い傷がついている
C:塗膜に10〜19本の傷がついている
D:塗膜に20〜30本の傷がついている
E:塗膜に30本以上の傷がついている
8.光触媒活性
〔アセトアルデヒド分解能の測定〕
光触媒活性は、蛍光灯の光の照射下でのアセトアルデヒドの分解反応における一次反応速度定数を測定することにより評価した。
まず、光触媒活性測定用のサンプルを作製した。すなわち、ガラス製シャーレ(外径70mm、内径66mm、高さ14mm、容量約48mL)に、得られた光触媒体コーティング液を、底面の単位面積あたりの固形分換算の滴下量が1g/m2となるように滴下し、シャーレの底面全体に均一となるように展開した。次いで、このシャーレを110℃の乾燥機内で大気中1時間保持することにより乾燥させて、ガラス製シャーレの底面に光触媒体コーティング層を形成した。この光触媒体コーティング層に、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定サンプルとした。
得られた光触媒活性測定サンプルをガスバッグ〔内容積1L〕に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にし、その後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス600mLを封入した。さらに1%アセトアルデヒドを含む窒素ガス3mLを封入し、暗所で室温下、1時間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定サンプル近傍での照度が1000ルクス〔照度計「T−10」(ミノルタ社製)で測定〕になるようにガスバッグを設置し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。測定サンプル近傍の紫外光の強度は6.5μW/cm2〔トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定〕であった。蛍光灯照射後よりガスバッグ内のガスを1.5時間毎にサンプリングして、アセトアルデヒドの残存濃度をガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC−14A」)にて測定し、照射時間に対するアセトアルデヒドの濃度から一次反応速度定数を算出し、これをアセトアルデヒドの分解能とした。一次反応速度定数が大きいほど、アセトアルデヒドの分解能は大きい。
参考例1〔光触媒酸化チタン粒子とその分散液の調製〕
光触媒酸化チタン粒子として、硫酸チタニルの水溶液を加水分解し、濾取して得られたメタチタン酸ケーク〔TiO換算でチタン成分を42質量%含む〕を用いた。
蓚酸(和光純薬工業製)2.70gを水60.2gに溶解させて蓚酸水溶液を得た。この蓚酸水溶液に、上記のメタチタン酸ケーク57.1gを加え、混合して混合物を得た。この混合物における蓚酸の使用量は、メタチタン酸1モルに対して0.1モルである。媒体攪拌式分散機〔五十嵐機械製作所社製「4TSG−1/8」〕を用い、以下の条件で、この混合物の分散処理を行って、光触媒酸化チタン分散液を得た。
分散媒体:外径0.05mmのジルコニア製ビーズ 380g
処理温度:20℃
処理時間:3時間
回転数 :2000rpm
得られた光触媒酸化チタン分散液における光触媒酸化チタン粒子の平均分散粒子径は85nmであった。水素イオン濃度はpH1.6であった。こ光触媒酸化チタン分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、この固形分のBET比表面積を測定したところ、325m2/gであった。得られた光触媒酸化チタン分散液の固形分の結晶型はアナターゼ型であった。なお、分散処理の前の混合物と、分散処理の後の光触媒酸化チタン分散液の固形分のX線回折スペクトルをそれぞれ測定し、比較したところ、分散処理による結晶構造の変化は見られなかった。得られた光触媒酸化チタン分散液中の光触媒酸化チタン粒子のゼータ電位は−19.9mVであった。
参考例2〔光触媒酸化タングステン粒子とその分散液の調製〕
イオン交換水4kgに酸化タングステン粉末〔純度99.99%、高純度化学社製〕1kgを加えて混合して混合物を得た。媒体攪拌式分散機〔コトブキ技研社製、「ウルトラアペックスミル UAM−1」〕を用い、以下の条件で、この混合物の分散処理を行って、光触媒酸化タングステン分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速 :0.25L/min
処理時間:合計約50分
得られた光触媒酸化タングステン分散液における光触媒酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は96nmであった。水素イオン濃度はpH2.2であった。この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、この固形分のBET比表面積は37m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物と、分散処理の後の光触媒酸化タングステン分散液の固形分のX線回折装置スペクトルをそれぞれ測定し、比較したところ、どちらも結晶型はWOであり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。光触媒酸化タングステン分散液中の光触媒酸化タングステン粒子のゼータ電位は、−25.5mVであった。
実施例1〔蓚酸ジルコニウムの調製〕
水酸化ジルコニウム100g( ZrO2換算で31g )を水100gに添加しよく撹拌し分散液とした。次に、1回目の蓚酸添加として、該分散液へ蓚酸二水和物31.7g( 蓚酸/Zrモル比=1.0 )を添加し、90℃で15分間加熱した。次に、2回目の蓚酸添加として該分散液へ蓚酸二水和物15.8g(蓚酸/Zrモル比=0.5)を添加し、90℃で15分間加熱しゾルを得た。ZrO2換算で0.5重量%に希釈した時の該ゾルのゼータ電位は−61mVで粒子径D50は65nmであった。
実施例2〔蓚酸ジルコニウムの調製〕
実施例1で得られたゾル100g( ZrO換算で約12g )に500gの水を加え、500gの分散媒を除去するまで限外ろ過膜( 分画分子量:6000 )を用いて限外ろ過を行う操作を4回繰り返して100gのゾルを得た。限外ろ過によって除去した分散媒の蓚酸濃度から計算した該ゾル中の蓚酸/Zrモル比は1.3であった。また、ZrO換算で0.5重量%に希釈した時の該ゾルのゼータ電位は−48mVで粒子径D50は70nmであった。
実施例3
〔光触媒体分散液の調製〕
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液と、参考例2で得た光触媒酸化タングステン分散液とを、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との使用量比が1:1(質量比)で、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量が、分散液に対して5重量%となるように混合した。この光触媒体分散液に固液分離は見られなかった。
〔光触媒体コーティング液の調製〕
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.067gを水0.815gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.214gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.104gを添加した。こうして得られたバインダーに、上の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ0.031質量倍、0.094質量倍、及び0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を、十分に脱脂したスライド硝子に塗布した後、スピンコーター(商品名“1H−D7”、ミカサ製)を用いて、300rpmで3分間回転させて、過剰の分散液を取り除いた後、この硝子板を110℃で乾燥して、スライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成した。その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はBCであった。
実施例4
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.114gを水0.713gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.322gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.052gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ0.053質量倍、0.14質量倍、及び0.063質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はBCであった。
実施例5
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.201gを水0.824gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.072gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.104gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.094質量倍、0.032質量倍、及び0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はCであった。
実施例6
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.227gを水0.706gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.215gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.052gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.106質量倍、0.094質量倍、及び0.063質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はBCであった。
参考例3〔光触媒酸化チタン粒子とその分散液の調製〕
リン酸二水素アンモニウム(和光特級試薬)20.7gを水5.39kgに溶解させ、得られたリン酸二水素アンモニウム水溶液に、硫酸チタニルの加熱加水分解により得られたメタチタン酸の固形物(ケーキ)(TiO2として固形分濃度46.2質量%)1.49kgを混合した。このとき、リン酸二水素アンモニウムの量は、メタチタン酸1モルに対して0.02モルであった。得られた混合物を、媒体攪拌式分散機(寿工業(株)製「ウルトラアペックスミル UAM−1」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化チタン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速8.1m/秒
流速:0.25L/分
処理温度:20℃
合計処理時間:約76分
得られた酸化チタン粒子分散液中の酸化チタン粒子の平均分散粒子径は96nmであり、分散液のpHは8.2であった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は330m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の分散液の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はアナターゼ型であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。この時点で、得られた分散液を20℃で12時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
参考例4〔光触媒酸化タングステン粒子とその分散液の調製〕
イオン交換水4kgに、粒子状の光触媒体である酸化タングステン粉末(日本無機化学製)1kgを加えて混合して混合物を得た。この混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1」)を用いて下記の条件で分散処理して、酸化タングステン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
合計処理時間:約50分
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は118nmであった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は40m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の分散液の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はWO3であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。この時点で、得られた分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
参考例5〔非晶質Zr−O系粒子の調製〕
水酸化ジルコニウム(ZrO換算で30重量%含有)300gを純水1070gに分散し、適度に攪拌しながらそこへ67.5重量%硝酸126gを添加し反応分散液を調製した。このとき反応分散液のジルコニウム濃度はZrO換算で6重量%であり、1モルのZrに対する硝酸(HNO)のグラム当量数は1.85であった。次に、該分散液を95℃まで加熱し、24時間保持した後静置して自然冷却し、非晶質のゾルを得た。さらに、該ゾルの限外ろ過処理によって該ゾル中の硝酸を除去し、ジルコニウム濃度を濃縮することで、ジルコニウム濃度がZrO換算で10重量%であり、pHが3.2、ケルダール法によって測定された1モルのZrに対する硝酸(HNO)のグラム当量数が0.4のゾルを得た。該ゾルの粒度分布測定より、ゾルの粒子径D50は15nmであった。また、該ゾルを100℃で恒量まで乾燥したもののX線回折パターンは特定の結晶系に帰属されなかった。
上記の非晶質Zr−O系粒子を分散質とするゾル1000gに対して、64gの無水クエン酸を添加し、次に、120gの25重量%アンモニア水を添加することで塩基性ゾルを得た。さらに、該ゾルへ水を添加して限外ろ過処理によって該ゾルを精製、濃縮する操作を繰り返すことでジルコニウム濃度がZrO換算で15重量%であり、pHが8.6のゾルを得た。
該ゾルの粒子系分布は、上記非晶質Zr−O系粒子を分散質とするゾルとほぼ同じで、粒子径D50は12nmであり、また、該ゾルを100℃で恒量まで乾燥したもののX線回折パターンは、上記非晶質Zr−O系粒子を分散質とするゾルとほぼ同様であり、特定の結晶系に帰属されなかった。
実施例7
〔光触媒体分散液の調製〕
参考例3で得た光触媒酸化チタン分散液と、参考例4で得た光触媒酸化タングステン分散液とを、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との使用量比が1:1(質量比)で、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量が、分散液に対して5重量%となるように混合した。尚、この際、分散液中の濃度が40重量%となるようにエタノールを添加した。この光触媒体分散液に固液分離は見られなかった。
〔光触媒体コーティング液の調製〕
実施例1で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:12.5重量%)0.072gを蓚酸二水和物水溶液(蓚酸二水和物として5重量%)0.0074gと水0.604gの混合液に分散し、参考例5の非晶質Zr−O系粒子の分散液(濃度14.6重量%)0.185gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.031gを添加した。こうして得られたバインダーに、上記の光触媒体分散液(濃度5重量%)2.1g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.086質量倍、0.257質量倍、及び0.086質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を、十分に脱脂したスライド硝子に塗布した後、スピンコーター(商品名“1H−D7”、ミカサ製)を用いて、1000rpmで10秒間回転させ、引き続き3000rpmで10秒間回転させて、過剰の分散液を取り除いた後、この硝子板を110℃で乾燥して、スライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成した。その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はCであった。
比較例1
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液に代えて、市販の酸化チタン分散液〔石原産業社製、「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒径50nm〕を用いた以外は、実施例3と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。この光触媒体分散液100質量部中の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計量は5質量部であった。この光触媒体分散液は、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。なお、この酸化チタン分散液〔STS−01〕に含まれる酸化チタン粒子のゼータ電位は+40.1mVであった。
得られた光触媒体分散液を用いた以外は、実施例3と同様に操作して、光触媒体コーティング液を調製した。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.031質量倍、0.094質量倍、及び0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はEであった。
比較例2
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液に代えて、市販の酸化チタン分散液〔石原産業社製、「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒径50nm〕を用いた以外は、実施例3と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。この光触媒体分散液100質量部中の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計量は5質量部であった。この光触媒体分散液は、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
得られた光触媒体分散液を用いた以外は、実施例4と同様に操作して、光触媒体コーティング液を調製した。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.053質量倍、0.14質量倍、及び0.063質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はDであった。
比較例3
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液に代えて、市販の酸化チタン分散液〔石原産業社製、「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒径50nm〕を用いた以外は、実施例3と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。この光触媒体分散液100質量部中の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計量は5質量部であった。この光触媒体分散液は、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
得られた光触媒体分散液を用いた以外は、実施例5と同様に操作して、光触媒体コーティング液を調製した。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.094質量倍、0.032質量倍、及び0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はEであった。
比較例4
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液に代えて、市販の酸化チタン分散液〔石原産業社製、「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒径50nm〕を用いた以外は、実施例3と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。この光触媒体分散液100質量部中の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計量は5質量部であった。この光触媒体分散液は、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
得られた光触媒体分散液を用いた以外は、実施例6と同様に操作して、光触媒体コーティング液を調製した。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.106質量倍、0.094質量倍、及び0.063質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はEであった。
比較例5
水0.810gに非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.286gを添加し、更に高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.104gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、非晶質Zr−O系粒子とケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.13質量倍、及び0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はDであった。
比較例6
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.033gを水0.903gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.107gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.156gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.015質量倍、0.047質量倍、及び0.19質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はBCであった。
比較例7
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.101gを水0.908gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.0357gを添加した。その後、更にそこに高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.156gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.047質量倍、0.016質量倍、及び0.19質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はCであった。
比較例8
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.268gを水0.828gに分散し、更に高純度正ケイ酸エチル(多摩化学製)0.104gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例3の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウムとケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でどちらも0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はDであった。
比較例9
実施例2で得られた蓚酸ジルコニウム(ZrO換算濃度:11.2重量%)0.268gを水0.646gに分散し、非晶質Zr−O系粒子の分散液(商品名:ZSL−10T,第一稀元素化学製,濃度10.5重量%)0.286gを添加した。こうして得られたバインダーに、実施例1の光触媒体分散液(濃度5重量%)4.8g加え、光触媒体コーティング液を得た。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウムと非晶質Zr−O系粒子の重量は、酸化物換算どちらも0.13質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例3と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はEであった。
比較例10
参考例1で得た光触媒酸化チタン分散液に代えて、市販の酸化チタン分散液〔石原産業社製、「STS−01」、硝酸含有、平均分散粒径50nm〕を用いた以外は、実施例7と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。この光触媒体分散液100質量部中の光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計量は5質量部であった。この光触媒体分散液は、保管中に凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
得られた光触媒体分散液を用いた以外は、実施例7と同様に操作して、光触媒体コーティング液を調製した。光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子の合計量に対し、蓚酸ジルコニウム、非晶質Zr−O系粒子、及びケイ酸エチルの重量は、酸化物換算でそれぞれ、0.086質量倍、0.257質量倍、及び0.086質量倍であった。
上で得られた光触媒体コーティング液を用いて、実施例7と同様にしてスライド硝子の片面全体にバインダー含有光触媒体膜を形成し、その後塗膜の密着性を調べたところ、塗膜の状態はDであった。
実施例8
塗膜の密着性がBC〜Cであった実施例3〜7、及び比較例6、7の光触媒体コーティング液を用いて光触媒活性の評価を行ったところ、表1の結果となった。
表1
Figure 0005313051
実施例9
実施例3〜7の光触媒体コーティング液を天井材に塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例10
実施例3〜7の光触媒体コーティング液をタイルに塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例11
実施例3〜7の光触媒体コーティング液をガラスに塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例12
実施例3〜7の光触媒体コーティング液を壁紙に塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例13
実施例3〜7の光触媒体コーティング液を壁材に塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例14
実施例3〜7の光触媒体コーティング液を床に塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
実施例15
実施例3〜7の光触媒体コーティング液を自動車内装材(自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車の天井材)に塗布・乾燥すると、屋内照明による光照射により、トルエン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、更に黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。

Claims (5)

  1. 蓚酸ジルコニウムを分散質とするゾルであって、蓚酸/Zrモル比が1.2〜3であり、分散質の粒子径D50が10〜100nmであることを特徴とする蓚酸ジルコニウムゾル。
  2. 水酸化ジルコニウムの分散液へ蓚酸を添加することにより、請求項1に記載の蓚酸ジルコニウムゾルを製造する方法であって、蓚酸の添加を2回に分けて行うことを特徴とする蓚酸ジルコニウムゾルの製造方法。
  3. 水酸化ジルコニウムの分散液へ蓚酸/Zrモル比が0.8〜1.0となるように蓚酸を添加し、得られた水酸化ジルコニウムと蓚酸の混合物を加熱処理した後、さらに蓚酸/Zrモル比が1.2〜3.0となるように蓚酸を添加し、該混合物を再び加熱することを特徴とする請求項2記載の製造方法。
  4. 光触媒活性を有する被膜を形成するための光触媒体コーティング液であって、(1)光触媒体、(2)蓚酸/Zrモル比が1.2〜3であり、分散質の粒子径D50が10〜100nmである蓚酸ジルコニウムゾル、(3)非晶質Zr−O系粒子、(4)シリコンアルコキシド及び(5)溶媒を含み、(1)が表面が互いに同じ極性に帯電している光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子か、もしくは、リン酸(塩)で表面処理された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子、であり、(1)の全固形分に対する(2)〜(4)の含有量が、酸化物換算((2)および(3)はZrO、(4)はSiO)で、それぞれ0.020〜0.20質量倍、0.020〜0.40質量倍および0.040〜0.22質量倍である光触媒体コーティング液。
  5. 基材の表面に請求項4に記載の光触媒体コーティング液を塗布し、分散媒を揮発させることを特徴とする光触媒機能製品の製造方法。
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