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JP5376500B2 - 酸素イオン伝導性セラミック膜材およびその製造方法 - Google Patents

酸素イオン伝導性セラミック膜材およびその製造方法 Download PDF

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JP5376500B2 JP2008309846A JP2008309846A JP5376500B2 JP 5376500 B2 JP5376500 B2 JP 5376500B2 JP 2008309846 A JP2008309846 A JP 2008309846A JP 2008309846 A JP2008309846 A JP 2008309846A JP 5376500 B2 JP5376500 B2 JP 5376500B2
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Description

本発明は、酸素イオン伝導性に優れたセラミック膜を備えるセラミック膜材の製造方法に関する。詳しくは、特定の結晶面を有する基材上に特定の結晶方位に配向させた結晶配向セラミック膜を備えるセラミック膜材と、その製造方法に関する。
酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。)伝導性を有する酸素イオン伝導体として、いわゆるペロブスカイト型構造の酸化物セラミックスが知られている。ペロブスカイト型酸化物は、酸素イオン伝導体であることに加え、電子伝導性を兼ね備えた酸素イオン−電子混合伝導体(以下、単に「混合伝導体」という。)であるため、かかる酸化物からなる緻密なセラミック材、典型的には膜状に形成されたセラミック材(セラミック膜)は、例えば一方の面に供給された酸素含有ガス(空気等)から酸素を他方の面に選択的に透過させる酸素分離膜材として好適に利用され得る。
ペロブスカイト型酸化物から構成される酸素分離膜は、基材(典型的には多孔質構造をもつ膜支持体)上に形成されて、酸素分離膜エレメントとして用いられ得る。このような構成の酸素分離膜エレメントは、一方の面から他方の面に供給された酸素イオンによって当該他方の面に供給された炭化水素(メタンガス等)を酸化させて合成液体燃料(メタノール等)を製造するGTL(Gas To Liquid)技術、あるいは燃料電池分野で好適に使用することができる(特許文献1〜5参照)。
ペロブスカイト型酸化物からなるセラミック膜を基材上に形成する方法として、典型的には、該セラミック膜の構成材料を用いて調製されたスラリーに基材を浸漬するディップコーティング法、またはシート成形、プレス成形、または押出成形等が挙げられる。このような方法により得られるセラミック膜は、複数の結晶方位面が混在したランダムな配向(無配向)の多結晶構造を有する。しかし、無配向性あるいは配向性が低い結晶構造は、イオンおよび電子の伝導経路が長くなるためイオンや電子の伝導は非効率となり得る。したがって、かかる構造を備えるセラミック膜では、ペロブスカイト型酸化物が有し得る高い混合伝導性が最大限に発揮されにくい。
特許第2813596号公報 特開平8−173776号公報 特許第3456436号公報 特開2001−93325号公報 特開2002−12472号公報 特開平10−279355号公報 特開2000−351665号公報 特開2005−97041号公報 特開2006−28001号公報 特開2006−137657号公報 特開平9−293520号公報 特開2005−171269号公報
ここで、ペロブスカイト型酸化物からなる多結晶セラミックスにおいて特定の結晶面または結晶軸を配向させることにより、かかる特定の結晶面または結晶軸に依存する特性(結晶方位依存性、例えばイオン伝導性や圧電性等)を向上させる技術、あるいは、そのような特性を備えた結晶配向性のセラミックスについては、例えば特許文献6〜10等により種々提案されている。しかし、かかる技術の適用対象は粉体あるいはバルク体であり、例えば数百nm〜数μmの膜厚のセラミック膜には適していない。
また、特許文献11および12には、パルスレーザアブレーション堆積法を採用して、イオン(または電子)伝導性セラミック膜を形成する方法が記載されている。しかし、この技術により得られるセラミック膜は、結晶方位が特定されていないため、イオン伝導性を大きく向上させ得る結晶方位には配向していない可能性が高く、かかるイオン伝導性は十分には発揮されない。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために創出されたものであり、ペロブスカイト型の酸素イオン伝導体から構成されて酸素イオン伝導性がより一層向上し得るセラミック膜材を提供することを目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明によって、基板と、該基板上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えた酸素イオン伝導性セラミック膜材の製造方法が提供される。この方法は、以下の工程(I)〜(III)を包含することを特徴とする。すなわち、(I)上記基板を用意する工程を包含する。ここで、該基板は、所定の結晶面に配向した金属材料またはセラミック材料からなることを特徴とする。(II)上記セラミック膜を構成するための原料を用意する工程を包含する。ここで、該セラミック膜は、一般式:
A1−xAexBO3−δ (1)
(ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)およびCa(カルシウム)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなることを特徴とする。および(III)蒸着法により、上記基板の上記結晶面上に上記セラミック膜を配向度が20%以上となるように結晶配向させた状態で形成する工程を包含する。ここで、上記蒸着法は、パルスレーザアブレーション堆積法およびイオンビーム蒸着法のいずれか一方であることを特徴とする。
かかる方法により得られる酸素イオン伝導性セラミック膜材では、そのセラミック膜が結晶配向した状態で基板上に形成されるため、無配向膜と比較して酸素イオンの伝導経路が短縮されて、酸素イオン伝導の効率化が図られ得る。この結果、本発明に係る方法によって得られる酸素イオン伝導性セラミック膜材では、従来の膜形成方法(例えばディップコーティング)により得られる無配向なセラミック膜を備えるセラミック膜材に比べて、酸素イオン伝導性(性能)が向上し得る。なお、本明細書中で「膜」とは、特定の厚みに限定されず、ここで開示される酸素イオン伝導性セラミック膜材において「酸素イオン伝導体」として機能する膜状もしくは層状の部分をいう。また、本明細書中の「基板」とは、特定の厚みあるいは形状に限定されず、上記酸素イオン伝導性セラミック膜材において、上記セラミック膜を形成させるための土台となる部分をいう。
また、上記基板上に上記セラミック膜を形成する際に用いる手法としては、物理気相蒸着法(PVD)あるいは化学気相蒸着法(CVD)を好ましく採用することができる。物理気相蒸着法の好適例としては、パルスレーザアブレーション堆積法(以下、「PLD法」という。)やイオンビーム蒸着法等が挙げられる。かかる手法を用いることにより、上記基板上に結晶配向したセラミック膜を好ましく形成することができる。
また、上記酸素イオン伝導体は、ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素として少なくともFe(鉄)およびTiを包含することを特徴とする。
かかる態様によると、セラミック膜を構成する酸素イオン伝導体におけるペロブスカイト結晶構造の一部(Bサイトの一部)に、Feが取り込まれている。このことにより、この酸素イオン伝導体(すなわちセラミック膜)の酸素イオン伝導性がさらに向上し得る。
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記基板として、ニッケル製の基板であって、その(典型的には面心立方構造の){100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えた基板を使用することを特徴とする。上記セラミック膜は、かかる基板の{100}面上に形成され得る。
あるいは、ここに開示される製造方法の別の好ましい一態様では、上記基板として、チタン酸ストロンチウム製の基板であって、そのペロブスカイト型構造の(100)面に配向している基板を使用することを特徴とする。上記セラミック膜は、かかる基板の(100)面上に形成され得る。
かかる態様によると、上記基板のいずれかを使用することにより、該基板上にセラミック膜を酸素イオン伝導性が向上し得る結晶方位に配向させた状態で、形成(成長)させることができる。
以下、基板およびセラミック膜の結晶構造における結晶面(格子面)と方位(方向)を記述する際には、ミラー指数の面指数と方位指数を用いる。結晶面は(hkl)(ここで、h,k,lは整数である。)で表わす。立方晶系の構造において空間群の対称性の観点から等価である6面をまとめて{hkl}と総称する。方位指数についても面指数と同様に[uvw](ここでu,v,wは整数である。)で表わし、立方晶系において等価である6方向をまとめて<uvw>と総称する。
本発明に係る方法により、上記のように結晶配向したセラミック膜を備え、より向上した酸素イオン伝導性を有するセラミック膜材を製造することができる。すなわち、本発明は、他の側面として、高い酸素イオン伝導性を有する好ましい酸素イオン伝導性セラミック膜材を提供する。
ここに開示される酸素イオン伝導性セラミック膜材の好ましい一態様では、ニッケル製の基板であって、{100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えたニッケル製の基板と、該基板の{100}面上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えている。そして、上記セラミック膜は、一般式:A1−xAeBO3−δ(ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなり、(a00)面および/または(aa0)面(ここで、aは1以上の整数である。)に配向度が20%以上で配向していることを特徴とする。
かかる構成の酸素イオン伝導性セラミック膜材では、上記(a00)面または(aa0)面に選択的に配向した状態のセラミック膜が形成されており、より一層高い酸素イオン伝導性を有する。したがって、かかる構成の酸素イオン伝導性セラミック膜材によると、良好な酸素イオン伝導性を発揮し得る。
また、ここに開示される酸素イオン伝導性セラミック膜材の別の好ましい一態様では、チタン酸ストロンチウム製の基板であってペロブスカイト型構造の(100)面に配向している基板と、該基板の(100)面上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えている。そして、上記セラミック膜は、一般式:A1−xAeBO3−δ(ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなり、(a00)面(ここで、aは1以上の整数である。)に配向度が20%以上で配向していることを特徴とする。
かかる構成の酸素イオン伝導性セラミック膜材では、上記(a00)面に選択的に配向した状態のセラミック膜が形成されており、より一層高い酸素イオン伝導性を有する。したがって、かかる構成の酸素イオン伝導性セラミック膜材によると、良好な酸素イオン伝導性を発揮し得る。
このような構成を備える酸素イオン伝導性セラミック膜材は、該膜材を支持する多孔質支持体を備えることにより、酸素分離膜エレメントとして使用することができる。すなわち、かかる酸素分離膜エレメントは、ここに開示される酸素イオン伝導性セラミック膜材と、該膜材の基板が形成されていない側のセラミック膜表面上に形成された多孔質支持体とを備える酸素分離膜エレメントであって、酸素イオン伝導性がより一層向上した酸素分離膜エレメントである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ターゲット作製時の原料粉末の混合方法や成形方法、または成形体の焼成方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明により提供される製造方法は、基板と、該基板上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えた酸素イオン伝導性セラミック膜材の製造方法であって、所定の結晶面に配向した金属材料またはセラミック材料からなる基板上に、結晶配向させた状態でセラミック膜を形成することで特徴づけられる製造方法である。かかる製造方法は、上述したように、上記記基板を用意する工程と、上記セラミック膜を構成するための原料を用意する工程、および所定の蒸着法により、上記基板の上記結晶面上に上記セラミック膜を結晶配向させた状態で形成する工程とを包含する。
また、上記セラミック膜は、結晶配向した一般式(1):A1−xAeBO3−δ(以下、単に「一般式(1)」という。)で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなることで特徴づけられる膜である。ここで、上記Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素(例えばLa(ランタン))であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素(例えば、Sr)であり、上記Bは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素(例えばTi(チタン)および/またはFe)である。また、0<x<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。
また、本発明により提供される酸素イオン伝導性セラミック膜材は、そのセラミック膜が所定の結晶面に配向していることにより、ディップコーティング等の従来の膜形成技術で形成されるセラミック膜に比べてより一層向上した酸素イオン伝導性能を有していることを特徴とする膜材である。
ここに開示される技術で好適に使用される基板としては、金属またはセラミックの固体材料からなる基板であることが好ましく、かかる固体材料を構成する結晶体(典型的には多結晶体)において、その結晶構造における所定(特定)の結晶面が一定の方向性をもって配列している(すなわち該特定の結晶面に配向している)固体材料からなる基板が好ましい。より好ましくは、かかる基板上に形成されるセラミック膜が酸素イオン伝導性を向上させ得る結晶方位に配向しているような基板である。このような基板として、例えば、典型的には面心立方構造を有するニッケル製の基板であって、その{100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えた基板が挙げられる。かかる基板は加熱処理により容易に作製できるので好ましい。この基板を用いた場合には、上記{100}面上に上記セラミック膜を好ましく形成することができる。また、別の好適例としては、ペロブスカイト型構造を有するチタン酸ストロンチウム製の基板であって、その(100)面に配向している基板が挙げられる。かかる基板を用いた場合には、上記(100)面上に上記セラミック膜を好ましく形成することができる。これらのような基板を用い、且つ該基板の特定の結晶面(配向面)上にセラミック膜を形成すると、セラミック膜自体もある特定の結晶面に配向し得る。
かかる基板の厚さ寸法としては、好ましくは50μm〜10mm、より好ましくは100μm〜5mmであり、さらに好ましくは200μm〜1mmである基板を用いることができる。
上記のような基板上に形成されるセラミック膜については、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト型構造をとるものであることが好ましい。かかるセラミック膜は、特定の構成元素のものに限られないが、かかるセラミック膜を(後述の酸素分離膜エレメントにおける)酸素分離膜として適用する場合には、酸素分離膜の一方の側(酸素供給側)と他方の側(酸素透過側)とを短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく、一方から他方へと連続的に酸素イオンを透過させることができるとともに、酸素イオンの透過速度を上げることができるため好ましい。この種のセラミックスとしては、典型的には上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物である。上記一般式(1)における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類及び置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、本明細書中では酸素原子の数を3−δと表示する。当該分野において酸素原子の数を便宜的に3として表示している場合もあるが、異なる化合物を表しているわけではない。
一般式(1)のAは、上記ペロブスカイト型酸化物のAサイトを構成する元素であり、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素の組合せとする。好ましくはLaである。AeはSr,Ca及びBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素の組合せである。一般式(C)のxは、0≦x≦1であることが好ましい。一般式(C)のAおよびAeとして2種以上の元素を選択し、ペロブスカイト型構造の一部の原子を置換する(すなわち、Aで構成され得る部分の一部をAeで置換する)ことによって、Aサイトに格子欠陥が導入される。Aサイトの格子欠陥は、結晶構造中の酸素移動性の向上に寄与する。Aサイトの置換量は、格子欠陥の量と構造の安定化とのバランスを考慮して調節すると良い。
また、一般式(1)のBは、上記ペロブスカイト型酸化物のBサイトを構成する元素であって、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり得る。かかるBとして、例えば、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),Ga(ガリウム),Ti(チタン),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Al(アルミニウム),Cu(銅),In(インジウム),Sn(錫),Zr(ジルコニウム),V(バナジウム),Cr(クロム),Zn(亜鉛),Ge(ゲルマニウム),Sc(スカンジウム)およびY(イットリウム)からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。上記Bとして、好ましくはFeを包含する。さらに好ましくは、FeとTiを含み得る。上記BサイトにFeを含むことにより、酸素イオン伝導性が向上する。また、上記BサイトにTiを含むことにより、結晶構造の強度が向上する。このため、ここに開示されるセラミック膜は、BサイトにFeおよびTiを包含することで、酸素イオン伝導性と膜強度とを高いレベルで両立し得る。
かかるペロブスカイト型酸化物として、例えば、式:(La1−pSr)(Ti1−qFe)O3−δ(但し0<p<1、0<q<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物(以下「LSTF酸化物」ともいう。)が好ましく挙げられる。具体例として、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δが挙げられる。
上記のようなペロブスカイト型構造をもつ酸素イオン伝導体からなるセラミック膜は、物理気相蒸着(PVD)法または化学気相蒸着(CVD)法を用いることにより上記基板上に形成することができる。PVD法は、熱、レーザ光、電子ビームなどによる物理的作用(熱源)を利用して薄膜原料である固体物質を蒸気化し、基板上に堆積させて薄膜を形成する方法である。かかるPVD法は、薄膜原料の気化方法により分類すると蒸発系とスパッタ系に大別される。蒸発系のPVD法は、薄膜原料を加熱して蒸発させ、蒸発温度より低い温度の基板表面で凝結、固化させ薄膜にする方法である。かかる方法の一好適例として、イオンビーム蒸着法が挙げられる。イオンビーム蒸着法では、イオン発生器で薄膜原料をイオン化し、イオン銃(イオン発生器で発生させたイオンを加速して放出する装置)から放出された薄膜原料イオンを照射することにより、該イオンを基板上に堆積させて薄膜を形成することができる。
一方、スパッタ系のPVD法は、薄膜原料物質を加熱して蒸発させ、蒸発温度より低い温度の基板表面で凝結、固化させ薄膜にする蒸発系のPVD法や、高エネルギーの原子や分子をターゲットに衝突させて蒸発させて(スパッタさせて)基板表面に堆積させる方法である。かかる方法の一好適例としてはパルスレーザアブレーション堆積(PLD)法が挙げられる。PLD法は、パルスレーザアブレーション法、もしくはパルスレーザ堆積法と呼ばれることもある。PLD法ではターゲットにパルスレーザを照射することにより、順次ターゲット材料からそれぞれ蒸気(典型的にはパルスレーザ照射によりターゲットから発生した分子、原子、イオン、ナノ又はミクロンサイズの微小粒子(クラスター)等をいう。)を発生させ、この蒸気を一定の温度に保持した基板上に堆積させてターゲット材料成分を含む薄膜を形成することができる。
また、CVD法は、薄膜構成原子を含む化合物ガスを原料として、化学反応を利用して薄膜化する方法であり、熱CVD、プラズマCVDあるいは光CVD等が挙げられる。
以下、上記蒸着法の一例として上記PLD法を用いて上記結晶配向したセラミック膜を形成する場合について説明する。
上記セラミック膜を形成するために使用され得るターゲットとして、パルスレーザを照射して蒸発可能なセラミック膜原料であって、上記セラミック膜の構成元素を含むセラミック膜原料から構成されるものを好ましく用いることができる。また、かかるターゲットは、例えば、上記セラミック膜の構成元素を含む無機材料(典型的には該構成元素の酸化物あるいは炭酸塩)を適当な配合比で混合し、焼成することにより得られた焼結体を好ましく用いることができる。上記各無機材料の配合比については、レーザ照射により蒸気化した上記ターゲットが基板上に堆積したときに上記セラミック膜が目標とする組成比となるように決定される。例えば、上記セラミック膜としてLSTF酸化物の一つであるLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δからなる薄膜を基板上に形成する場合には、酸化ランタン(La)粉末、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末、二酸化チタン(TiO)粉末、および三酸化二鉄(Fe)の各原料粉末のそれぞれを、上記LSTF酸化物全体を1モルとして、構成元素のLaが0.6モル、Srが0.4モル、Tiが0.1モルおよびFeが0.9モルそれぞれ含まれるように決定された配合比で混合し、当該混合物を適当な方法(例えばプレス成形や押出成形)により成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、所望する形状のターゲット(セラミック体)を得る。また、かかる場合の焼成温度は、典型的には1000℃〜1800℃(好ましくは1200℃〜1600℃)である。
上記ターゲットの大きさは、特に制限されないが、一般的な蒸着装置(PLD装置)に好適に使用されるためには、直径が1mm〜1000mm程度、特に100mm〜500mmで、厚さが0.5mm〜10mm、特に2mm〜5mm程度の円盤状であることが好ましい。
また、ターゲットの表面粗さ(Ra値)は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは1nm〜50μm程度、さらに好ましくは1nm〜10μm程度、特に1nm〜5μm程度のRaのターゲットを好適に使用することができる。また、表面粗さの最大値(Rmax値)は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは1nm〜50μm、さらに好ましくは1nm〜10μmである。
上記セラミック膜を形成する際に使用し得るパルスレーザとしては、ターゲットに照射してターゲットからセラミック膜原料の蒸気(典型的には微小クラスター)を発生可能なパワーを有するレーザであって、前記所定範囲の周波数を有するものであれば、特に制限なく、その用途に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、ナノ秒パルスレーザが挙げられ、このうち、KrFレーザ、ArFレーザ、XeClレーザ等のエキシマレーザ、YAGレーザ、あるいはルビーレーザが好適である。
パルスレーザの周波数は、概ね500Hz以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1Hz〜100Hz、さらに好ましくは1Hz〜80Hz、特に好ましくは1Hz〜50Hzである。
照射エネルギー(エネルギー密度)は、特に限定されないが、一般的なPLD法において用いられている範囲が好適である。例えば、100mJ/cm〜2000mJ/cm、好ましくは500mJ/cm〜1500mJ/cm、より好ましくは500mJ/cm〜1000mJ/cm、例えば800mJ/cm±100mJ/cmである。しかしながら、より高いエネルギーを使用可能な装置であれば、さらに高いエネルギーを用いることができる。
上記セラミック膜の製膜雰囲気としては、約1×10−6Pa〜約1×10Pa(例えば、5×10−7Torr〜1Torr)内であることが好ましく、より好ましくは1×10−4Pa〜1×10Pa、さらに好ましくは1×10−3Pa〜50Pa、特に好ましくは2×10−3Pa〜30Pa(例えば、0.02mTorr〜0.2Torr)であるような低圧(真空)雰囲気である。
このときの雰囲気ガスは、特に限定されない。例えば、酸素ガスや大気等の酸化性ガス、または窒素(N)ガスやアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスであってもよい。このうち不活性ガス、特にArガスが好ましい。
パルスレーザの照射時間は、所望のセラミック膜の厚さ、パルスレーザの照射回数や周波数等によって適宜選択することができる。例えば、1秒間〜30000秒間、好ましくは10秒間〜10000秒間、より好ましくは50秒間〜5000秒間、さらに好ましくは100秒間〜3000秒間である。
ターゲットから蒸発したセラミック膜成分を堆積させる際の基板の温度は、かかる基板の機械的強度が保持し得る温度であれば特に限定されないが、好ましくは1000℃以下、より好ましくは500℃〜1000℃、さらに好ましくは600℃〜900℃、例えば750℃±50℃である。また、このような温度を略一定に保持することにより、結晶配向性を制御しつつ上記セラミック膜を形成することができる。
基板上への堆積により形成された上記セラミック膜の厚さについては、特に限定されず、用途に応じて種々の厚さ寸法をとることができる。例えば、かかるセラミック膜を酸素分離膜として用いる場合には、0.1μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μm、さらに好ましくは0.3μm〜2μmである。これらの範囲内であれば、酸素分離膜エレメントにおける酸素分離膜の緻密性が維持される程度に膜厚が十分に薄くなっているので、上記膜厚が酸素透過速度の律速となることはない。
上記のような条件下でPLD法を用いることにより、以下のような結晶配向性を有するセラミック膜を基板上に得ることができる。かかるセラミック膜では、該膜を構成するペロブスカイト型構造の多結晶体のうちの全部または一部が、その構造の特定の結晶面(結晶軸)を特定の方向に沿わせるように配列(すなわち、該結晶面に配向)している。典型的には、この特定の結晶面が上記セラミック膜の表面に対して平行になるように配向している。かかるセラミック膜が配向する結晶面(配向面)は、特に上記セラミック膜が形成される(成長する)上記基板表面における結晶面の配向性(配向面)によって左右され得る。したがって、上記セラミック膜が酸素イオン伝導性を向上させ得る結晶配向性を有する表面をもつ基板が好ましく選択され得る。たとえば、上述したニッケル製の基板であって、{100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えた基板を用いると、該基板の{100}面上に形成されるセラミック膜は、(a00)面および(aa0)面に配向する。ここで、このセラミック膜における(a00)面のおよび(aa0)面の各配向度はいずれも10%以上(典型的には20%以上)である。また、上述のペロブスカイト型構造のチタン酸ストロンチウム製の基板であって、その(100)面に配向している基板を用いると、該基板の(100)面上に形成されるセラミック膜は、配向度100%で(a00)面に配向する。なお、上記aは1以上の整数であり、上記配向度とは、上記セラミック膜のX線回折強度(の測定値)から従来公知のLotgering法により算出される平均配向度をいう(特許文献8参照)。
上記のようにして、セラミック膜を所定の結晶面に配向させて形成することにより、配向していないセラミック膜に比べてより一層高い酸素イオン伝導性を備えたセラミック膜を得ることができる。すなわち、かかる結晶配向性を備えるセラミック膜は、高い酸素イオン伝導性(酸素透過性)を必要とする膜(例えば酸素分離膜)として好ましく用いることができる。したがって、ここに開示される技術によると、上記基板と該基板上に形成された結晶配向性を有するセラミック膜とから構成されるセラミック膜材であって、より一層高い酸素イオン伝導性を有するセラミック膜材を得ることができる。
このような構成を備える酸素イオン伝導性セラミック膜材は、該膜材を支持する多孔質支持体を備えることにより、酸素分離膜エレメントとして使用することができる。すなわち、ここで開示される酸素イオン伝導性セラミック膜材は、酸素分離膜エレメントのような高い酸素イオン伝導性を必要とする用途に適する膜材である。
かかる酸素分離膜エレメントは、上記酸素イオン伝導膜材からなる酸素分離膜の表面の一部または全体が多孔質支持体によって支持されている。この多孔質支持体が設けられていても、その内部を気体が容易に透過できるので、酸素透過速度を下げることなく酸素分離膜エレメント全体の機械的強度を増すことができる。
多孔質支持体として、従来のこの種の膜エレメントで採用されている種々の性状のセラミック多孔質体を使用できる。また、膜エレメントの使用温度域(通常500℃以上、典型的には800℃〜1000℃)において安定な耐熱性を有する材質から成るものが好ましく用いられる。例えば、ペロブスカイト型構造の酸素分離膜と同様の組成を有するセラミック多孔体、あるいはマグネシア、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を主体とするセラミック多孔体を用いることができる。あるいは、金属材料を主体とする金属質多孔体を用いてもよい。特に限定しないが、使用する多孔質支持体の水銀圧入法に基づく平均細孔径は0.1μm〜20μm程度が適当であり、水銀圧入法に基づく気孔率は5%〜60%程度が適当である。
酸素分離膜エレメントの製造については、例えば、上記酸素イオン伝導性セラミック膜材におけるセラミック膜側の表面に多孔質支持体を従来公知の方法(例えば拡散接合)により貼り合わせるように接合した後、必要に応じて該酸素イオン伝導性セラミック膜材を構成する基板を除去することにより、上記多孔質支持体上にセラミック膜を備えた酸素分離膜エレメントを得ることができる。あるいは、上記基板を除去せずに利用することもできる。例えば、かかる基板として好適例の一つである上記ニッケル製基板を用いた場合には、この基板の表面を酸化処理すると酸化ニッケルが生じる。このような基板を有する酸素分離膜エレメントでは、上記酸化ニッケルが存在する該基板側の表層部が、(例えば炭化水素の)酸化反応を促進する酸化触媒層として機能し得る。したがって、上記基板を酸化触媒層として利用できる構成の好ましい酸素分離膜エレメントを得ることができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1>
基板として、ニッケル製の基板であって、その面心立方構造における{100}面が圧延面に平行であり、<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えた基板(以下、「Ni{100}<001>基板」という。)を用意した。
次いで、以下のようにターゲットを作製した。すなわち、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δの組成となるような配合比で酸化ランタン(La)粉末、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末、二酸化チタン(TiO)粉末、およびFe粉末のそれぞれを混合した。次に、この混合物をPLD装置にセット可能な形状に成形し、酸化性雰囲気下(大気中)で、焼成した。焼成温度は1400℃〜1600℃であった。
次に、PLD装置に上記基板およびターゲットを所定位置にセットし、パルスレーザをターゲットに照射した。これにより蒸気化したターゲット成分を上記基板上に堆積させて、セラミック膜を上記基板上に形成した。上記パルスレーザは、波長248nm、パルス幅30nsのKrFレーザを用いた。また、当該レーザのパルスエネルギーは、450mJ/パルス、およびその周波数は30Hzであった。製膜条件は、0.04PaのAr雰囲気下で、エネルギー密度0.8J/cmで上記レーザを20分間ターゲットに照射した。上記基板は750℃に維持した。上記セラミック膜の膜厚は0.9μmであった。
上記基板上にセラミック膜が形成された膜材において、上記基板側にLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δのペロブスカイト型酸化物(LSTF酸化物)からなる板状の多孔質支持体を拡散接合により接合した。
上記セラミック膜の組成をEDX組成分析により調べたところ、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δのペロブスカイト型酸化物からなることが確認された。
次に、X線回折装置(XRD)を用いて上記セラミック膜を測定し、当該膜の結晶構造解析を行った。この結果を図1に示す。図1に示されるように、上記セラミック膜では、(a00)面のピークおよび(aa0)面のピークが現れた。したがって、当該セラミック膜は、上記の2つの結晶面に配向した状態で上記Ni{100}<001>基板上に形成されていることが分かった。なお、上記結晶面におけるaは、図1ではa=1または2を示す。また、図1の横軸は回折角度[度]、縦軸は回折線強度(任意単位)を示す。
また、このXRD測定により得られたX線回折強度から、Lotgering法を用いて上記セラミック膜の(a00)面および(aa0)面の各配向度[%]を算出した。この結果、(a00)面の配向度は20%、(aa0)面の配向度は25%であった。
以上より、PLD法を用いてNi{100}<001>基板上に形成されたセラミック膜は、(a00)面および(aa0)面に配向したLSTF酸化物からなることがわかった。
<実施例2>
基板として、チタン酸ストロンチウム製の基板であって、そのペロブスカイト型構造における(100)面に配向している基板(以下、「SrTiO(100)基板」という。)を用いた。それ以外は、上記実施例1と同じ手順で、PLD法を用いてSrTiO(100)基板上にセラミック膜を形成した。また、得られた膜材において、上記基板側にLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δのペロブスカイト型酸化物(LSTF酸化物)からなる板状の多孔質支持体を拡散接合により接合した。
上記セラミック膜の組成をEDX組成分析により調べたところ、実施例1と同様に、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δのペロブスカイト型酸化物からなることが確認された。
次に、X線回折装置(XRD)を用いて上記セラミック膜を測定し、当該膜の結晶構造解析を行った。この結果を図2に示す。図2に示されるように、上記セラミック膜では、(a00)面のピークが現れた。したがって、当該セラミック膜は、上記(a00)面に配向した状態で上記SrTiO(100)基板上に形成されていることが分かった。なお、上記結晶面におけるaは、図2ではa=1または2を示す。図2の横軸は回折角度[度]、縦軸は回折線強度(任意単位)を示す。
また、このXRD測定により得られたX線回折強度から、Lotgering法を用いて上記セラミック膜の(a00)面の配向度[%]を算出した結果、(a00)面の配向度は100%であった。
以上より、PLD法を用いてSrTiO(100)基板上に形成されたセラミック膜は、(a00)面に配向したLSTF酸化物からなることがわかった。
<比較例>
まず、多孔質支持体を作製した。すなわち市販のLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δ粉末(平均粒径約50μm)に、一般的なバインダおよび分散剤を適量添加して、これらを混練した。次に、かかる混練物をプレス成形により外径約20mmで厚さが3mm程度の円筒形状に成形し、1400℃で焼成した。これにより、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δ製の多孔質支持体(以下、「LSTF支持体」という。)を作製した。
次に、市販のLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δ粉末(平均粒径約1μm)に一般的なバインダ、分散剤、可塑剤および溶媒をそれぞれ適量ずつ混合し、かかるスラリー状の混合物中に上記LSTF支持体を浸漬して、ディップコーティングした。そして、80℃で乾燥した後、大気雰囲気で1400℃まで昇温し、当該温度で3時間保持する焼成をおこなった。これにより、LSTF支持体上にLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δ膜(LSTF膜)を形成した。
次に、X線回折装置(XRD)を用いて上記LSTF膜(セラミック膜)を測定し、当該膜の結晶構造解析を行った。この結果を図3に示す。図3の横軸は回折角度[度]、縦軸は回折線強度(任意単位)を示す。図3に示されるように、上記セラミック膜では各種の結晶面に由来するピークが現れ、当該膜は特定の結晶面には配向しておらず、無配向膜であることが分かった。
上記実施例1、実施例2および比較例で得られたそれぞれの膜材について、それぞれの電気伝導度を測定することにより、それぞれの酸素イオン伝導性について評価した。まず、上記実施例1,2および比較例に係る膜材の各膜表面に電極となる白金ペーストを塗布した後、電流端子および電圧端子を上記電極部分に接続するための白金線を取り付けて850℃〜1100℃で10分間〜60分間焼き付け、任意の酸素分圧と温度に調整可能な装置内で、直流四端子法で各酸素分圧に対する導電率を測定することにより、酸素イオン伝導度[S/cm]を求めた。一定の温度条件(900℃)下における電気伝導度の測定結果を表1に示す。
Figure 0005376500
表1に示されるように、セラミック膜が所定の結晶面に配向している実施例1および実施例2では、比較例に比べて酸素イオン伝導度が2倍近く上回っていることが確認された。これにより、無配向なセラミック膜よりも上記結晶面に配向しているセラミック膜では、酸素イオン伝導性がより一層向上することがわかった。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、さらに別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えうるものである。
実施例1に係る酸素イオン伝導性セラミック膜材のセラミック膜のX線回折スペクトルである。 実施例2に係る酸素イオン伝導性セラミック膜材のセラミック膜のX線回折スペクトルである。 比較例に係るセラミック膜のX線回折スペクトルである。

Claims (7)

  1. 基板と、該基板上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えた酸素イオン伝導性セラミック膜材の製造方法であって:
    前記基板を用意する工程、ここで、該基板は、所定の結晶面に配向した金属材料またはセラミック材料からなることを特徴とする;
    前記セラミック膜を構成するための原料を用意する工程、ここで、該セラミック膜は、一般式:
    1−xAeBO3−δ (1)
    (ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなることを特徴とする;および、
    蒸着法により、前記基板の前記結晶面上に前記セラミック膜を配向度が20%以上となるように結晶配向させた状態で形成する工程、ここで前記蒸着法は、パルスレーザアブレーション堆積法およびイオンビーム蒸着法のいずれか一方であることを特徴とする;
    を包含する、製造方法。
  2. 前記蒸着法は、パルスレーザアブレーション堆積法であって、1×10−6Pa〜1×10Paの不活性ガス雰囲気下、周波数が1Hz〜100Hzで、エネルギー密度が100mJ/cm〜2000mJ/cmのパルスレーザを用いて行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記基板として、ニッケル製の基板であって、その{100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えた基板を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記基板として、チタン酸ストロンチウム製の基板であって、そのペロブスカイト型構造の(100)面に配向している基板を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、酸素イオン伝導性セラミック膜材。
  6. ニッケル製の基板であって、{100}面が圧延面に平行であり<001>軸が圧延方向に平行である構造を備えたニッケル製の基板と、該基板の{100}面上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えた酸素イオン伝導性セラミック膜材であって、
    前記セラミック膜は、
    一般式:
    1−xAeBO3−δ (1)
    (ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなり、
    (a00)面または(aa0)面(ここで、aは1以上の整数である。)に配向度が20%以上で配向していることを特徴とする、酸素イオン伝導性セラミック膜材。
  7. チタン酸ストロンチウム製の基板であってペロブスカイト型構造の(100)面に配向している基板と、該基板の(100)面上に形成された酸素イオン伝導体からなるセラミック膜とを備えた酸素イオン伝導性セラミック膜材であって、
    前記セラミック膜は、
    一般式:
    1−xAeBO3−δ (1)
    (ただし、Aは、Ln(ランタノイド)から選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Bは、少なくともFeおよびTiを包含するペロブスカイト型構造を構成し得る2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされるペロブスカイト型の酸素イオン伝導体からなり、
    (a00)面(ここで、aは1以上の整数である。)に配向度が20%以上で配向していることを特徴とする、酸素イオン伝導性セラミック膜材。
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