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JP2008021466A - 水素透過構造体、水素デバイス、及び燃料電池 - Google Patents

水素透過構造体、水素デバイス、及び燃料電池 Download PDF

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JP2008021466A
JP2008021466A JP2006190914A JP2006190914A JP2008021466A JP 2008021466 A JP2008021466 A JP 2008021466A JP 2006190914 A JP2006190914 A JP 2006190914A JP 2006190914 A JP2006190914 A JP 2006190914A JP 2008021466 A JP2008021466 A JP 2008021466A
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良子 神田
Tatsutama Boku
辰珠 朴
Osamu Mizuno
修 水野
Satoshi Aoyama
智 青山
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Toyota Motor Corp
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】水素透過性基材とプロトン伝導性膜とからなる水素透過構造体において、水素透過性基材とプロトン伝導性膜との界面における水の発生を低下し、界面剥離を抑制した水素透過構造体を提供するとともに、この水素透過構造体を用いた水素デバイス及び燃料電池を提供する。
【解決手段】水素透過性基材及びプロトン伝導性膜からなる水素透過構造体であって、該プロトン伝導性膜が、酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物で構成されるとともに、該酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物が、幅60nm以下で、水素透過性基材表面に垂直方向の柱状結晶をなしていることを特徴とする水素透過構造体、並びにこの水素透過構造体を用いた水素デバイス及び燃料電池。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水素透過性能を有する基材(以下、「水素透過性基材」と言う。)とプロトン伝導性の固体電解質膜(以下、「プロトン伝導性膜」と言う。)からなる水素透過構造体に関し、さらにこの水素透過構造体を用いた水素デバイス及び燃料電池に関する。
水素透過性基材上にプロトン伝導性膜を形成した水素透過構造体は、水素を、選択的に検出分離する機能や、電気エネルギーを出力する機能を有しており、水素燃料電池(以下、単に「燃料電池」とも言う。)、水素センサ、水素ポンプ、廃棄ガス中のNOを除去する装置等、いわゆる水素デバイスとしての広範な用途が考えられている。特に、電気エネルギーを得ることができる燃料電池としての用途が、車用、家庭用、携帯電気器具用等に脚光を浴びている。
例えば、SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁(非特許文献1)には、水素透過性基材の材料としてパラジウム(Pd)又はPdを含む金属が、又、プロトン伝導性膜の材料としてアルカリ土類金属及びセリウム等の金属を含む酸化物が開示され、これらからなる水素透過構造体が記載されている。
プロトン伝導性膜を形成する酸化物の中でも、一般式ALO(式中、Aはアルカリ土類金属を表し、Lは、セリウム、チタン、ジルコニウム等の4価元素である。)で表される基本組成を有し、ペロブスカイト型結晶構造を持つ複合酸化物(以下、「ペロブスカイト構造酸化物」と言う。)は、耐熱性に優れ、プロトン伝導性を示す等、優れた特性を有するので、種々の材料が開発されている。特に、4価元素Lの一部を3価元素Mで置換した組成のペロブスカイト構造酸化物は、優れたプロトン伝導性を有するものとして種々提案されている。
燃料電池においては、水素透過構造体の水素透過性基材側に接する水素が、この水素透過性基材中を透過してプロトン伝導性膜に達し、そこで電子を放出してプロトンになる。このプロトンは、プロトン伝導性膜中を透過して酸素電極側に達し、そこで電子を得るとともに酸素電極側にある酸素と結合して水を生成し系外に放出される。水素透過性基材側及び酸素電極側での電子の授受により起電力を生じ、電池として機能する。
しかし、プロトン伝導性膜としてペロブスカイト構造酸化物膜を用いた場合、このペロブスカイト構造酸化物膜は、プロトン伝導性とともに酸化物イオン伝導性も有している。燃料電池等の水素デバイスでは、プロトン伝導性膜(ペロブスカイト構造酸化物膜)側には酸素又は空気が供給されるが、該ペロブスカイト構造酸化物膜の酸化物イオン伝導性によっては、水素透過性基材とプロトン伝導性膜との界面にまで酸化物イオンが伝導し、その界面において水素透過性基材を透過してきた水素と反応し水が生成する。
この生成した水は、界面にある空孔に溜まり、水素透過性基材とプロトン伝導性膜の界面剥離を助長する。さらに、該界面周辺の変質も助長する。結果として、電気エネルギーの出力が低下し、安定した運転を得ることができない。同様な問題は、燃料電池のみならず、同じ基本構造の水素透過構造体を用いた水素デバイスでも生じる。
このような、界面での剥離を抑制する手段の一例として、水素透過性基材とプロトン伝導性膜との界面に、酸化防止層を島状に設けることが、特開2005−327586号公報(特許文献1)に開示されている。
特開2005−327586号公報 SOLID STATE IONICS、162−163(2003)
しかし、特許文献1に記載の手段によっても、界面における空孔を皆無にすることは困難であり、発生する水による界面の剥離を十分に防ぐことができない。
本発明は、水素透過性基材とプロトン伝導性膜の界面における水の発生を抑制し、水素透過性基材とプロトン伝導性膜の界面剥離を減少させた水素透過構造体を提供することを課題とする。
本発明はさらに、この水素透過構造体を用い、安定した性能を有する水素デバイス及び燃料電池を提供する。
本発明者は、鋭意検討の結果、プロトン伝導性膜を、酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物の柱状結晶により形成することにより、プロトン伝導性膜のプロトン伝導度を上げる(プロトン透過抵抗を低下)ことができ、その結果として、水素透過性基材とプロトン伝導性膜との界面での剥離を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は、その請求項1として、
水素透過性基材及びプロトン伝導性膜からなる水素透過構造体であって、
該プロトン伝導性膜が、化学式AL1−X3−αで表される酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物で構成され、
該酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物が、水素透過性基材表面に略垂直方向に配向し、その幅が60nm以下の柱状結晶をなしていることを特徴とする水素透過構造体を提供する。
前記化学式AL1−X3−αにおいて、Aはアルカリ土類金属を表す。アルカリ土類金属の中でも、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選ばれる1種又は2種以上が好ましく選択される。Lは、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)から選ばれる1種又は2種以上の4価元素を表す。
Mは3価元素であり、4価元素Lの一部をMで置換することによりプロトン伝導性を発現する。Mとしては、ネオジム(Nd),ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、イッテルビウム(Yb)、スカンジウム(Sc)、ガドリウム(Gd)、サマリウム(Sm)、及びプラセオジム(Pr)が好ましく例示され、A、Lの元素の種類に基づき、1種以上の元素が適宜選択される。式中のA、L及びMとして、前記の元素等の中から適宜選択することにより、高いプロトン伝導性と電子絶縁性を両立させることができる。
Xは、Lに対するMの置換比率を表し、0.05〜0.35であり、好ましくは0.05〜0.25である。Xが0.05未満の場合、高いプロトン伝導性を得ることができない。Xが0.35を越える場合は、ペロブスカイト構造が不安定になり、水に対する安定性が低下する。
又、αは、ペロブスカイト構造酸化物における酸素欠損の程度を示す指数であり、0.15〜1.00の範囲内である。αが0でないので、このペロブスカイト構造酸化物は、酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物である。αが0.15未満の場合には、欠損量が少なく十分なプロトン伝導性を得られない。また、αが1.00を越える場合には、結晶を保つことができない。αは、例えば、成膜時の真空度を変えることにより調整することができる。
本発明の水素透過構造体を構成するプロトン伝導性膜は、前記の酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物を主成分とするが、さらに本発明の趣旨を損なわない範囲で、Sr(ScNb)Oのような混合ペロブスカイト型、SrTiOのような層状ペロブスカイト型、LaZrのようなパイロクロア型等の酸化物をさらに含んでいても良い。
本発明の水素透過構造体は、プロトン伝導性膜が、前記の酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物より構成されるとともに、その酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物が、水素透過性基材表面に略垂直方向に配向した柱状結晶をなしていることを特徴とする。
ここで、柱状結晶とは、立方晶、正方晶、斜方晶等の単位格子が、柱状に粒成長したものであり、本発明の水素透過構造体では、プロトン伝導性膜が水素透過性基材と接する面を底面として、その直交方向に粒成長していることを特徴とする。図1は、プロトン伝導性膜の端面を示すSEM写真(60000倍)であり、写真の下部が水素透過性基材と接する面側であるが、この写真より明らかなように、柱状の結晶が、写真の下部より他方の表面まで伸びている。その結果、柱状結晶粒同士が互いに接する界面(結晶の粒界)も水素透過性基材と接する面に略垂直(すなわち、プロトン伝導性膜の厚さ方向)に配向し、他方の表面まで連続している。本発明においては、この結晶の粒界が、プロトン伝導性膜の厚さ方向に配向し、水素透過性基材と接する面から他方の表面まで連続していることを特徴とする。
結晶の粒界は、結晶粒内に比べ構成原子の整合性が悪いために、ポテンシャルが高く、その結果プロトン伝導性が高い。特に、酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物の結晶の場合には、ドープ(置換)された前記Mで表される3価イオンが、この粒界に集まり、この粒界に集まった3価イオンMによりプロトン伝導性が上昇するので、プロトン伝導性がより高くなる。
前記のように、結晶の粒界はプロトン伝導性膜の厚さ方向に配向しているので、この方向への高いプロトン伝導性(すなわち、低いプロトン透過抵抗)が得られる。そして、柱状の幅をより小さくする(より細い柱状結晶を形成させる)と、プロトン伝導性膜面の単位面積あたりの結晶粒界の数、すなわち粒界密度が増加するので、プロトン伝導性がさらに向上し、プロトン透過抵抗を下げることができる。
充分な粒界密度を達成し、プロトン透過抵抗が低く界面での剥離が抑制されたプロトン伝導性膜を形成するためには、結晶の幅は60nm以下である。結晶の幅が60nmを越えると粒界密度が小さくなり、界面剥離を防止するために充分なプロトン伝導性が得られない。ここで、結晶の幅とは、柱状結晶を、プロトン伝導性膜の表面に平行な面で切った断面の径を意味する。断面は通常、柱状結晶の長さ方向(プロトン伝導性膜の厚さ方向)で一定ではないので、より具体的には径の長さ方向の平均を意味する。又、断面は通常円形でないが、この場合は、断面と同じ断面積の円の直径を、この断面の径とする。なお、結晶の幅は、通常、30nm以上である。
本発明の水素透過構造体において、前記プロトン伝導性膜の表面が粗いと、緻密な成膜が得られにくくなり、膜欠陥ができ界面に空洞を生じるおそれがある。すると、界面で水を生成しやすくなり、界面剥離を招きやすくなる。
そこで、界面剥離を低減するためには、プロトン伝導性膜の表面粗さは、最大高さ(Rmax)が50nm以下で、かつ算術平均粗さ(Ra)が20nm以下であることが好ましい。表面粗さがRmax=50nm又はRa=20nmを超えると、プロトン透過抵抗が上昇し、剥離を生じやすくなる場合がある。
一方、製造しやすさ(コスト)を考慮すると、Rmaxは10nm以上で、かつRaは1nm以上が好ましい。請求項2は、この好ましい態様に該当し、前記の水素透過構造体であって、前記プロトン伝導性膜の表面粗さが、Rmaxが10〜50nm、かつRaが1〜20nmであることを特徴とする水素透過構造体を提供するものである。表面粗さがRmax=10〜20nm、Ra=1〜10nmであるとより好ましい。
プロトン伝導性膜の厚さは、0.02μm〜2μmが好ましい。厚さが0.02μm未満では、ピンホール等の膜の欠陥が生じやすい。ピンホール等が存在すると、水素ガスがプロトン化せずに膜を抜けてしまうので、電流が出力されない。2μmより厚くなると、プロトン透過抵抗が大きくなりプロトン伝導性が低下し出力が低下する。
プロトン伝導性膜を形成する方法は、特定の手段に限定されず、イオンプレーティング法、スパッタリング法、パルスレーザーディポジション法(PLD法)、物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD法)等の気相法が挙げられ、又、ゾルゲル法、電気泳動法、泳動電着法等の湿式法を用いることもできる。結晶性のよい緻密な膜を得るためには、450℃以上の温度下、酸化性雰囲気で行う方法、又は、450℃未満の温度、例えば室温で成膜を実施し、その後450℃以上の温度でアニールする方法が好ましい。
ペロブスカイト構造酸化物の結晶の形状や幅、又、プロトン伝導性膜の表面粗さは、成膜時の水素透過性基材、成膜温度(基板温度)、成膜速度、成膜時の雰囲気、与えるエネルギー等様々な条件により変動するので、これらの条件を調整することにより、結晶の形状、幅、プロトン伝導性膜の表面粗さを調整し、本発明の範囲内や好ましい範囲内にすることができる。
例えば、イオンプレーティング法においては、基板温度、高周波出力、DCバイアス電圧(成膜速度)等を調整して行われる。ここで、基板温度、高周波出力、DCバイアス電圧は、膜の緻密さとともに結晶の幅を制御する(例えば、高周波出力が大きいほど結晶の幅が太くなる)ので、これらを調整することにより、本発明の範囲内の幅の柱状結晶を得ることができる。又、真空度も結晶の柱の太さに影響を与える。
以上のようにして、ペロブスカイト構造酸化物層よりなるプロトン伝導性膜が水素透過性基材の表面上に形成されて、水素透過構造体が構成される。水素透過性基材としては、水素透過性の金属の薄膜(水素透過性金属箔)が利用できる。
水素透過性基材を構成する水素透過性金属箔としては、Pd、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等の箔が挙げられる。中でも、Pdの箔や、Pdを主体として、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)等との合金の箔、すなわちPdを含んだ金属箔が好適である。又、V、Nb又はTaの箔の表面に、PdやPdを主体とする合金を被覆したもの、又はV、Nb又はTaの合金の箔に、PdやPdを主体とする合金を被覆したもの等を用いてもよい。V、Nb又はTaの合金の一例としては、ニッケル(Ni)、Ti、コバルト(Co)、クロム(Cr)等との合金が例示される(請求項3)。
水素透過性能を上げるためには、水素透過性基材は薄いほど好ましいが、その上に形成するペロブスカイト構造酸化物膜の構造維持のための支持能力が必要であることを考慮すると、20μm以上で1mm未満が好ましい。
得られた水素透過構造体は、優れたプロトン伝導性を有し、水素分離及び水素検出の機能や、特に中温域以上の温度でのプロトンイオンの輸送機能等に優れている。又、プロトン伝導性膜と水素透過性基材との間の密着性に優れ、界面剥離やそれによる出力の低下の問題が抑制されたものであるので、電極等の機能部材を組み合わせることによって、各種水素デバイスとして好適に用いられる(請求項4)。水素デバイスとしては、燃料電池、水素センサ、水素ポンプ、廃棄ガス中のNOを除去する装置等が挙げられる。中でも、地球環境に優しいクリーンなエネルギー供給源として期待されている燃料電池として好適に用いられる(請求項5)。
燃料電池は、通常、水素透過構造体を構成するプロトン伝導性膜の上に酸素電極(カソード電極。なお、水素透過性基材がアノード電極となる。)が設けられ、プロトン伝導性膜が水素透過性基材及び酸素電極間に挟まれた構造を有している。酸素電極としては、Pd、Pt、Ni、ルテニウム(Ru)やそれらの合金からなる薄膜状の電極、貴金属や酸化物伝導体からなる厚膜状の電極、及び貴金属や酸化物伝導体を含み多孔質状の多孔質電極が好ましく例示される。薄膜状の酸素電極は、Pd、Pt、Ni、Ruやそれらの合金を、プロトン伝導性膜の上に、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法等により成膜して得ることができる。通常その厚みは、0.01〜10μm程度であり、好ましくは0.03〜0.3μm程度である。
厚膜状の酸素電極は、例えば、Ptペースト、Pdペースト、酸化物伝導体ペースト等をプロトン伝導性膜の上に塗布し、焼付けることにより形成することができる。このようにして形成された電極は一般的には多孔質の電極となる。酸化物伝導体としては、例えば、La−Sr−Co系、La−Sr―Fe系及びSr−Pr−Co系の複合酸化物等が挙げられる。塗布される層の厚みは、通常5〜500μm程度である。
従来の燃料電池では、プロトン伝導性膜の酸化物イオン伝導性のために、プロトン伝導性膜と水素透過性基材の界面間で水を生じ、界面剥離等の問題を生じていたが、本発明の燃料電池では、界面間での水の発生や剥離等の問題が抑制されている。
本発明の水素透過構造体は、プロトン伝導性膜と水素透過性基材からなるが、プロトン伝導性膜でのプロトン伝導性が高く、又、水素透過性基材からプロトン伝導性膜へのプロトン透過抵抗が小さい結果、界面での水の生成が抑えられ、界面での剥離や界面周辺での材質の変質が抑制されている。その結果、優れたプロトン伝導性が得られるとともに、界面剥離や変質による出力の低下が小さく、プロトン伝導性の安定性に優れている。
従って、この優れた特徴を有する水素透過構造体を、例えば、水素デバイスの一つである燃料電池に用いた場合、高い電池出力が得られるとともに、その出力の経時による低下が小さく、安定してその性能を持続させることができる。この優れた特徴を有する水素透過構造体を、燃料電池以外の各種の水素デバイスに使用した場合でも、その優れたプロトン伝導性とその安定性に基づく優れた性能を発揮することができる。
次の本発明を実施するための形態を、実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
15mm角、厚さ0.1mmのPd基材(水素透過性基材)上に、高周波イオンプレーティング法を用いて、SrZr0.8In0.23−α(膜形成後、X線光電子分光分析(XPS)を用いてαを測定したところ、0.15<α<1.0であることが確認された。以下、同様に確認した。)組成のペロブスカイト構造酸化物膜(プロトン伝導性膜)を形成した。
ここで、基板加熱は600℃、使用したガスは酸素ガス1sccm、Arガス1sccmで、またSr源、Zr源、In源としてはそれぞれの酸化物を用いEB照射により蒸発させた。高周波は13.56MHz、出力200W、基材側にはDCバイアス−1000Vを印加、EB出力はエミッション電流200mAにて、膜厚モニタで膜厚をコントロールしながら、0.1μmの膜厚の成膜を実施した。
同装置内で引き続き、酸素ガス20sccm、Arガス1sccmにし、前記と同じ酸化物を用いEB照射により蒸発させて、前記の膜の上にさらに成膜を行った。この時、高周波、DCバイアスはかけず、エミッション電流200mAにて膜厚モニタで膜厚をコントロールしながら、1.9μmの成膜を実施して水素透過構造体を得た。
得られたプロトン伝導性膜は柱状結晶により形成されていたが、ほとんどの柱状結晶は、幅30nm〜60nmの範囲内(平均45nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたってPd基材面に対して略垂直方向に連続して伸びていた。また、プロトン伝導性膜の表面粗さは、Rmax=30nm、Ra=10nmであった。なお、結晶の幅は、走査電子顕微鏡(FE−SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)、又、表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、観測、測定した値である。
(実施例2)
15mm角、厚さ0.1mmのPd基材(水素透過性基材)上に、高周波イオンプレーティング法を用いて、SrZr0.8In0.23−α(0.15<α<1.0)組成のペロブスカイト構造酸化物膜(プロトン伝導性膜)を形成した。
ここで、基板加熱は600℃、使用したガスは酸素ガス1sccm、Arガス1sccmで、またSr源、Zr源、In源としてはそれぞれの酸化物を用いEB照射により蒸発させた。高周波は13.56MHz、出力200W、基材側にはDCバイアス−1000Vを印加、EB出力はエミッション電流200mAにて、膜厚モニタで膜厚をコントロールしながら、0.1μmの膜厚の成膜を実施した。
一度、基材温度を室温まで下げ、同装置内で引き続き、酸素ガス20sccm、Arガス1sccmにし、前記と同じそれぞれの酸化物を用いEB照射により蒸発させて、前記の膜の上にさらに成膜を行った。この時、高周波は13.56MHz、出力200W、基材側にはDCバイアス−1000Vを印加、EB出力はエミッション電流200mAにて、膜厚モニタで膜厚をコントロールしながら、1.9μmの膜厚の成膜を実施した。その後、基板温度を600℃まで上げ、600℃で2時間アニールし、水素透過構造体を得た。室温で蒸着し、その後600℃でアニールすることによって、高密度の結晶性のよい膜を得ることができる。
得られたプロトン伝導性膜は柱状結晶により形成されていたが、ほとんどの柱状結晶は、幅45nm以下の範囲内(平均30nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたって、Pd基材面に対して垂直方向に連続して伸びていた。又、その表面粗さは、Rmax=20nm、Ra=5nmであった。
(実施例3)
プロトン伝導性膜の組成をBaZr0.8Yb0.23−α(0.15<α<1.0)とした以外は、実施例1と同様にして、水素透過構造体を得た。このプロトン伝導性膜を形成するほとんどの柱状結晶は、幅30〜60nmの範囲内(平均45nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたって、Pd基材面に対して略垂直方向に連続して伸びていた。又、その表面粗さは、Rmax=30nm、Ra=10nmであった。
(実施例4)
プロトン伝導性膜の組成をBaZr0.8Yb0.23−α(0.15<α<1.0)とした以外は、実施例2と同様にして、水素透過構造体を得た。又、このプロトン伝導性膜を形成するほとんどの柱状結晶は、幅45nm以下の範囲内(平均30nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたって、Pd基材面に対して略垂直方向に連続して伸びていた。又、その表面粗さは、Rmax=20nm、Ra=5nmであった。
(比較例1)
15mm角、厚さ0.1mmのPd基材(水素透過性基材)上に、高周波イオンプレーティング法を用いて、SrZr0.8In0.23−α(0.15<α<1.0組成のペロブスカイト構造酸化物膜(プロトン伝導性膜)を形成した。
ここで、基板加熱は600℃、使用したガスは酸素ガス1sccm、Arガス1sccmで、またSr源、Zr源、In源としてはそれぞれの酸化物を用いEB照射により蒸発させた。高周波は13.56MHz、出力200W、基材側にはDCバイアス−1000Vを印加、EB出力はエミッション電流200mAにて、膜厚モニタで膜厚をコントロールしながら、2μmの膜厚の成膜を実施した。
ほとんどの柱状結晶は、幅60nm以上(平均80nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたって、Pd基材面に対して略垂直方向に連続して伸びていた。また、その表面粗さは、Rmax=60nm、Ra=15nmであった。
(比較例2)
プロトン伝導性膜の組成をBaZr0.8Yb0.23−α(0.15<α<1.0)とした以外は、比較例1と同様にして、水素透過構造体を得た。ほとんどの柱状結晶は、幅60nm以上(平均80nm程度)で、プロトン伝導性膜の厚さ全体にわたって、Pd基材面に対して略垂直方向に連続して伸びていた。また、その表面粗さは、Rmax=60nm、Ra=15nmであった。
(電池評価試験)
実施例1〜4、及び比較例1〜2で得られた各水素透過構造体のプロトン伝導性膜上に、ステンレスマスクを通して、2mm角、厚さ0.1μmのPd電極を電子ビーム蒸着で形成し試験体(燃料電池)を得た。この試験体のPd基材側に0.4L/分で水素ガスを、又、プロトン伝導性膜、Pd電極側に0.4L/分で空気を、500℃で100時間流し、0.5Vでの電池出力(電流密度)を、初期並びに100時間後で測定した。測定結果を表1に示す。
(剥離強度試験)
前記電池評価試験後の試験体のプロトン伝導性膜の、Pd電極側の面に、スタッド(接着面の直径2.7mm、長さ15mmの純アルミニウム製棒)を接着し、引張試験機を用いて、水素透過性基材とプロトン伝導性膜との間の剥離強度を求めた。測定結果を表1に示す。
Figure 2008021466
表より明らかなように、実施例1〜4では、100時間駆動後も電池出力(電流密度)が、初期の値からほとんど低下せず、燃料電池として長寿間安定して機能することが示されている。又、実施例1〜4では、100時間駆動後も、水素透過性基材とプロトン伝導性膜間の膜剥離は観測されず、充分な剥離強度を示している。
一方、プロトン伝導性膜が、その厚さ方向に配向した柱状結晶で構成されてはいるが、柱状の幅が60nmを越え、かつプロトン伝導性膜表面の粗さも本発明の範囲外である比較例1〜2では、実施例1〜4と比べ明らかに初期の電池出力が低く、100時間駆動後には電池出力が認められない。又、100時間駆動時点では既に膜剥離を生じており、燃料電池として用いることに問題があることが示されている。
プロトン伝導性膜の端面を示すSEM写真である。

Claims (5)

  1. 水素透過性基材及びプロトン伝導性膜からなる水素透過構造体であって、
    該プロトン伝導性膜が、化学式AL1−X3−α(式中、Aは、アルカリ土類金属を表し、Lは、セリウム、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる1種以上の元素を表し、Mは、ネオジム,ガリウム、アルミニウム、イットリウム、インジウム、イッテルビウム、スカンジウム、ガドリウム、サマリウム及びプラセオジムから選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、0.05〜0.35であり、αは、0.15〜1.00である。)で表される酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物で構成され、
    該酸素欠損型ペロブスカイト構造酸化物が、水素透過性基材表面に略垂直方向に配向し、その幅が60nm以下の柱状結晶をなしていることを特徴とする水素透過構造体。
  2. 前記プロトン伝導性膜の表面粗さが、最大高さ(Rmax)が10〜50nm、かつ算術平均粗さ(Ra)が1〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載の水素透過構造体。
  3. 前記水素透過性基材が、パラジウム箔もしくはパラジウムを主体とする合金箔、又は、バナジウム、ニオブもしくはタンタルを含む金属箔の表面に、パラジウム膜もしくはパラジウムを主体とする合金膜を有する金属箔であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水素透過構造体。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の水素透過構造体を用いることを特徴とする水素デバイス。
  5. 請求項1ないしは請求項3のいずれかに記載の水素透過構造体を用いることを特徴とする燃料電池。
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