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JP5235282B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質及び電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質及び電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極活物質及び電池に関する。更に詳しくは、電池の放電電圧の増加によりエネルギー密度を向上しうる非水電解質二次電池用正極活物質及び電池に関する。
ポータブル電子機器用の二次電池として、リチウム二次電池が実用化されており、広く用いられている。その正極活物質としては、LiCoO2に代表される層状遷移金属酸化物が主に用いられている。しかし、これらの層状遷移金属酸化物は満充電状態において、150℃前後の比較的低温にて酸素脱離を起こしやすく、これが引火性電解液の酸化発熱反応を引き起こすことで電池の熱暴走反応のトリガーとなっている。
一方、3価/4価の酸化還元反応の代わりに2価/3価の酸化還元反応を用いることで熱安定性を改善し、更に中心金属の周りに電気陰性度の大きなヘテロ元素のポリアニオンを配することで高放電電圧を確保した系としてオリビン型LiCoPO4やLiMnPO4、LiFePO4等のリン酸塩(リン酸オリビン)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながらLiCoPO4を正極活物質として用いる非水電解質二次電池は、満充電に5V以上の電圧の印加を必要とし、電解液の酸化分解を併発するため、現時点では使用可能な電解液が存在しないという課題があった。また、リン酸ポリアニオンの大きな分子量のため、一連のLiMPO4型リン酸オリビンを活物質として含む正極の理論容量はいずれも約170mAh/gにとどまっていた。
更に、LiMPO4型リン酸オリビンに類似する正極活物質として、単位格子中に二個のリチウム原子を有するLi2FeSiO2やLi2MnSiO4等の活物質が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。
岡田重人、荒井創、山木準一、電気化学及び工業物理化学,65,No.10,802-808(1997) R. Dominko, et al., Electrochem. Commun., 8, 217 (2006). 特願2001−266882号公報
しかし、上記公報で提案された電池は、動作電位が3.5Vから2.4Vと低いという課題があった。
そのため本発明は、リン酸オリビンを含む正極よりも理論容量を増加し、かつ動作電位の高い、可逆容量密度に優れた電池特性をもつ非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記の課題を達成するために、リン酸オリビンLiMPO4について種々の改良検討を重ねた。その結果、リン酸ポリアニオンPO4のヘテロ元素を5価のリンよりも電気陰性度の小さな4価のケイ素Siで置換することによって、理論容量を増加できることを見い出し本発明に至った。更に、本発明者等は、充電電圧を引き下げた場合、2価/3価だけでなく、3価/4価の2段のレドックス反応を充放電に利用しうることも見出している。
かくして本発明によれば、一般式(Ia):Li2-xCo1-yM'ySiO4(式中、M'はNi、V、Tiであり、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質が提供される。
更に、本発明によれば、一般式(Ib):Li2-xMn1-yM''ySiO4(式中、M''はNi3+、Ni4+、Sc、Y、Zr、Nb、Mo、Agであり、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質が提供される。
また、本発明によれば、一般式(II):Li2-xCo1-yMnySiO4(式中、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質が提供される。
更に、本発明によれば、一般式(I):Li2-XMSiO4(式中、Mは少なくともCo又はMnを含む遷移金属を表し、Xは0≦X≦2を表す)で表される固溶体化合物と、炭素材料とを含む混合物を、不活性雰囲気中で300〜500℃で熱処理することで、前記固溶体化合物と前記炭素材料に由来する炭素成分とを含む非水電解質二次電池用正極活物質を製造することを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記正極活物質を含む正極を備えることを特徴とする非水電解質二次電池が提供される。
本発明によれば、高安全性及び大容量の実用性の高い非水電解質二次電池を提供できる。また、上記二次電池用の正極活物質及び正極を提供できる。
また、CoをNi、Mn、Fe等の遷移金属(特に、Mn)に部分置換することにより放電電圧を高電圧から低電圧に連続的に平行移動できる。そのため、使用回路や使用電解液に最適の充放電電圧の二次電池を自由に設計できる。
本発明の二次電池は大型電池の用途にも使用できる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。以下では、非水電解質二次電池用正極活物質を正極活物質、非水電解質二次電池用正極を正極、非水電解質二次電池を二次電池と称する。(1)正極活物質
正極活物質には、一般式(I):Li2-XMSiO4 (一般式(Ia):Li 2-x Co 1-y M' y SiO 4 、一般式(Ib):Li 2-x Mn 1-y M'' y SiO 4 )で表され、ケイ酸オリビンと称される固溶体化合物が含まれている。Mは少なくともCo又はMnを含む遷移金属であり、Co単独又はMn単独であってもよいが、CoとMnとの混合物や、Co及びMn以外の他の遷移金属との混合物であってもよい。他の遷移金属としては、Fe、V、Ti、Ni等が挙げられる。特に、MにCoが含まれることで、動作電位を高くでき、その結果、エネルギー密度を向上できる。M'はNi、V又はTiであり、M''はNi 3+ 、Ni 4+ 、Sc、Y、Zr、Nb、Mo又はAgである。
Xは0≦X≦2の範囲から任意に選ばれる。通常はX=2の化合物が合成され初期状態の組成となる。また、X=2の場合、二次電池の組み立て直後において、放電から開始できるので、充電が不要となる利点がある。
Li2MSiO4の基本骨格を図1に示す。図1に示すようにLi2MSiO4は、斜方晶の結晶対称性をもち、Li3PO4と類似の結晶構造を有している。図中、丸印がリチウム、四面体は各々SiO4とMO4を示す。具体的には、Li2MSiO4は、中心金属MがSiO4(ケイ酸基)によって取り囲まれる形で孤立した構造を有している。
また、正極活物質は、一般式(II):Li2-XCo1-yMnySiO4(式中、Xは0≦X≦2を表し、Yは0≦Y≦1を表す)で表される固溶体化合物であることが好ましい。Coの一部を安価なMnで置換することで、低コストの正極活物質を提供できる。
上記Li2MSiO4は、色々な合成法により合成可能であるが、以下の実施例に示すような通常の固相合成法(すなわち、Li、M及びSiのそれぞれの酸化物の混合物を焼成する方法)によっても量産可能である。
正極活物質の形状は、特に限定されないが、粒状であることが好ましい。具体的には、0.1〜100μmの平均粒径を有する粒状物であることが好ましい。この平均粒径は、レーザ回折・散乱法により測定した値である。
次に、正極活物質は、炭素成分を含むことが好ましい。この炭素成分は、上記一般式(I):Li2-XMSiO4又は一般式(II):Li2-XCo1-yMnySiO4で表される固溶体化合物と共に不活性雰囲気中で熱処理されて得られた炭素成分である。この炭素成分は、通常、固溶体化合物の表面をコートするように存在している。炭素成分を備えることで、正極活物質の導電性を向上できる。
固溶体化合物と炭素成分との重量比は、1:0.01〜0.50の範囲であることが好ましい。0.25より多い場合、アニール後の炭素の残量の増加のために、正極中の固溶体化合物の体積分率が低下し電池のエネルギー密度が低下するので好ましくない。0.05より少ない場合、還元能力が低下し導電性向上の効果が得にくいので好ましくない。より好ましい重量比は、1:0.05〜0.25の範囲である。
炭素成分の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、固溶体化合物と炭素材料とを機械的に混合することで、固溶体化合物の表面に炭素材料を付着させ、次いで不活性雰囲気中で熱処理することで付着した炭素材料から炭素成分を得ることができる。ここで、機械的に混合する方法としては、例えば、乾式遊星ミルによる方法が挙げられる。また、熱処理は、300〜500℃で、1〜12時間(例えば、500℃前後で1時間程度)行うことが好ましい。更に、不活性雰囲気とは、固溶体化合物及び炭素材料に対して、反応性のほとんどない不活性ガス雰囲気を意味し、そのような不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。
(2)正極
正極は、上記正極活物質のみからなっていてもよく、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、結着剤、導電剤等が挙げられる。
結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が挙げられる。
導電剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、アセチレンブラック、カーボン、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等が挙げられる。
正極は、1〜1000μmの厚さであることが好ましく、10〜200μm程度の厚さであることがより好ましい。厚すぎると導電性が低下する傾向にあり、薄すぎると容量が低下する傾向にある。
なお、正極は、活物質の充填密度を上げるためローラープレス等により圧密してもよい。
正極の作製方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、上記正極活物質を、必要に応じて結着材及び導電材と混合した後、得られた混合体をステンレス鋼製の支持体上に圧着成形する方法、混合体を金属製容器に充填する方法等により得ることができる。他の方法として、例えば、上記混合体を有機溶剤(例えば、N-メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)と混合してスラリーを得、このスラリーをアルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅等の金属基板上に塗布・乾燥する方法によっても正極を作製できる。
なお、正極活物質には、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の正極活物質(例えば、LiCoO2、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFePO4、Li2FeSiO2、Li2MnSiO4等)が更に含まれていてもよい。
(3)二次電池
二次電池は、上記正極と非水電解質とを使用すること以外は、公知の非水電解質二次電池における構成要素を使用できる。二次電池は、通常、正極及び負極、両極間の非水電解質とからなる。
負極には、負極活物質が含まれている。負極活物質としては、公知の負極活物質を使用することが可能である。負極活物質として、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料や、リチウム金属、あるいはリチウムと他の金属の合金(例えば、アルミニウム-リチウム合金)等のほか、リチウム金属イオンを吸蔵・放出することが可能な材料(例えば、Li2.5Co0.5N、Li4Ti512等)が上げられる。
負極の作製は公知の方法に従えばよく、例えば、前記正極と同様にして作製できる。例えば、上記負極活物質を、必要に応じて上記正極の欄に記載した結着材及び導電材と混合した後、得られた混合体をステンレス鋼や銅製の支持体(集電体)上に圧着成形する方法により得ることができる。他の方法として、例えば、上記混合体を上記正極の欄に記載した有機溶剤と混合してスラリーを得、このスラリーを銅等の金属基板上に塗布・乾燥する方法によっても負極を作製できる。
非水電解液は通常、電解質及び非水溶媒を含む。非水溶媒としては、特に制限されず、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの代表的なものとして、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルホルメート、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、エチルメチルカーボネート、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
非水電解液は、上記溶媒に、負極活物質中のリチウム金属イオンが、正極活物質又は正極活物質及び負極活物質と電気化学反応するための移動を行うことができる電解質を含んでいてもよい。電解質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiB(C654 、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33、LiN(SO3CF32等が挙げられる。また、公知の固体電解質、例えば、ナシコン構造を有するLiTi2(PO43等も使用できる。
本発明の二次電池には、他の構成部材(例えば、セパレータ、電池ケース等)が含まれていてもよい。他の構成部材には、公知の非水電解質二次電池に使用されるものをいずれも使用できる。
例えば、正極と負極との間にセパレータを使用してもよい。この場合は、微多孔性の高分子フィルムを用いることがこのましい。具体的には、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子よりなるセパレータを使用できる。化学的及び電気化学的安定性の点から、セパレータはポリオレフィン製であることが好ましく、電池セパレータの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが望ましい。
セパレータがポリエチレンからなる場合、高温形状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。このポリエチレンの分子量の下限は、好ましくは50万、更に好ましくは100万、最も好ましくは150万である。他方、分子量の上限は、好ましくは500万、更に好ましくは400万、最も好ましくは300万である。分子量が大きすぎると、流動性が低すぎて加熱された時、セパレータの孔が閉塞しない場合がある。ここでの分子量は、クロマトグラフィー法により測定した数平均分子量を意味する。
電池は、上記構成部材を用いて公知の方法に従って組み立てればよい。電池の形状は、特に制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等種々の形状、サイズを適宜採用できる。
(4)電池の充放電方法
本発明においては、正極活物質(Li2-XMSiO4)における遷移金属Mの2価/3価間の酸化還元反応、及び3価/4価間の酸化還元反応を利用して二次電池の充放電を行える。従来のリン酸オリビン(LiMPO4等)のような正極活物質では、3価/2価の酸化還元反応しか利用できなかった。これに対して、本発明においては、ケイ酸ポリアニオンの導入により、2価/3価のみならず3価/4価の酸化還元反応を利用することができ、その分充放電容量を上昇できる。
更には、4価でも安定に存在する遷移金属の導入量を調製することによって、容量を自由に設計できる利点もある。例えば、MとしてVやTi等の4価でも安定に存在する遷移金属の配合割合を変化させれば、3.5Vと2.5V間での容量を自由に設計できる。
本発明においては非水系二次電池の充放電の際に、4価でも安定に存在するCoやNi等の遷移金属の4価/3価の酸化還元反応及び3価/2価の酸化還元反応を利用することが好ましい。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。なお、実施例において電池の作製及び測定は、アルゴン雰囲気下のドライボックス内で行った。
図2は実施例及び比較例で製造した電池の一具体例であるコイン型電池の断面図であり、図中、1は封口板、2はガスケット、3は正極ケース、4は負極、5はセパレータ、6は正極合剤ペレットを示す。
実施例1
正極活物質用の固溶体化合物としてLi2Co1-yMnySiO4を以下の方法により合成する。
まず、出発原料にリチウム源としてLi2CO3、コバルト源としてCo3O4、マンガン源としてMnC2O4・2H2O、ケイ酸源として二酸化ケイ素SiO2を化学量論比(原子比Li:Co+Mn:Si=2:1:1)で混合した。得られた混合物を、大気中、650℃で12時間仮焼後、1100℃で24時間の本焼成を2回行うことで、単相のLi2Co1-yMnySiO4粉末(平均粒径50μm)である固溶体化合物を合成した。
なお、y=0、y=0.25、y=0.5、y=0.75、y=1.0の5種の固溶体化合物を合成し、それぞれを固溶体化合物a1、a2、a3、a4、a5とする。
得られた固溶体化合物a1のX線回折図を図3に、固溶体化合物a5のX線回折図を図4に示す。図3及び4から、1回目の本焼成後ではわずかな不純物ピークの混入が2θ=36°付近に認められるが、2回目の本焼成後は完全な単相が得られた。図3に示す粉末X線回折パターンと格子定数(表1)は、文献値(ICDD No.24-611)とよく一致し、結晶群Pmnbの斜方晶と同定された。
実施例2
80mlの遊星ボールミルのジルコニアポットにジルコニア製のボールと、実施例1で得られた固溶体化合物a1とアセチレンブラック(電気化学工業社製デンカ ブラック)を70:25の重量比で混合したものを10g入れ、密封した。その後、密封したポットをフリッチュ(FRITSCH)社製遊星型ボールミルにセットし、200rpmで24時間運転させ、乾式混合を行った。この方法で、固溶体化合物の表面を炭素成分でコートした正極活物質を得た。この正極活物質をb1とする。
次に、正極活物質b1を、アルゴン気流中、300℃、500℃、700℃の温度で1時間アニールした。アニール温度に応じて得られた試料をそれぞれ正極活物質b1c、b1d、b1eとする。これらの試料のX線回折図を図5に示す。
コート後、アニール前の場合、炭素が回りにコートされたためLi2CoSiO4本来のピークがほとんど見られなくなった。300℃のアニール処理後の正極活物質b1cでは、ピークの回復が見られた。但し、500℃では、炭素の還元作用により析出したCo金属のピークが観測されはじめ、700℃アニールの正極活物質b1eでは、Li2CoSiO4のピークが消滅しCoとLi2SiO3のみのピークが観測された。
固溶体化合物a5についても、上記と同様の手順で炭素成分で表面をコートして正極活物質b5を得、得られた正極活物質b5を、アルゴン気流中300℃、500℃、700℃の温度で1時間アニールした。アニール温度に応じて得られた試料をそれぞれ正極活物質b5c、b5d、b5eとする。これらの試料のX線回折結果を図6に示す。
コート後、アニール前の場合、炭素が回りにコートされたためLi2MnSiO4本来のピークがほとんど見られなくなった。300℃のアニール処理後の正極活物質b5cでは、ピークの回復が不十分であるのに対し、500℃、700℃とアニール温度の上昇につれてLi2MnSiO4のピークが回復した。また正極活物質b1cのアルゴンアニール処理でみられた炭素還元によるCoやLi2SiO3のピークは、Li2MnSiO4の場合にはみられなかった。
実施例3
次に、固溶体化合物a1、a2、a3、a4、a5それぞれを、実施例2と同様の手順で炭素成分で表面をコートして正極活物質b1、b2、b3、b4、b5を得た。正極活物質b1〜b3について300℃、b4とb5について500℃とすること以外は、実施例2と同様の手順でアニール処理した。アニール処理後の正極活物質をそれぞれc1、c2、c3、c4、c5とする。
上記正極活物質b1〜b5及びc1〜c5それぞれを、結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)と共に重量比95:5重量比で混合した。得られた混合物を、ロール成形することで、10種の正極合剤ペレット6(厚さ0.5mm、直径15mm)を得た。
次に、ステンレス製の封口板1上に金属リチウムの負極4を加圧配置したものをポリプロピレン製ガスケット2の凹部に挿入した。負極4の上にポリプロピレン製で微孔性のセパレータ(セルガード社製セルガード)5、正極合剤ペレット6をこの順序に配置した。次いで、電解液として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの1:1混合溶媒にLiPF6を溶解させた1規定溶液を適量注入して含浸させた。この後に、ステンレス製の正極ケース3を被せてかしめることにより、図2に示す厚さ2mm、直径23mmのコイン型リチウム電池を作製した。
正極活物質b1〜b5及びc1〜c5を用いたコイン型リチウム電池の放電容量を表2に示す。また、正極活物質b1、c1、b5及びc5を用いたコイン型リチウム電池の室温における充放電曲線を図7、8、9、10に示す。電流密度は充放電共に0.2mA/cm2とし、4.5Vにて定電流充電から定電圧充電モードに切り替え、放電終止電圧を2Vにしてサイクル可逆性を測定した。
表2、図7及び9から、炭素成分でコートしただけの正極活物質b1〜b5を使用した電池は少ないながらも放電容量を有することがわかる。
また、表2、図8及び10から、アルゴンアニール処理をおこなった正極活物質c1〜c5を使用した電池は、60〜130mAh/g程度の放電容量が得られている。よって、アルゴンアニール処理により大幅に放電容量が向上する事がわかる。
Li2MSiO4の結晶構造を示す。 コイン型電池の概略構造断面図を示す。 実施例1のLi2CoSiO4(a1)のX線回折図である。 実施例1のLi2MnSiO4(a5)のX線回折図である。 実施例2の正極活物質b1、b1c、b1d、b1eのX線回折図である。 実施例2の正極活物質b5、b5c、b5d、b5eのX線回折図である。 実施例3の正極活物質b1を使用した電池の充放電曲線図である。 実施例3の正極活物質c1を使用した電池の充放電曲線図である。 実施例3の正極活物質b5を使用した電池の充放電曲線図である。 実施例3の正極活物質c5を使用した電池の充放電曲線図である。
符号の説明
1 封口板
2 ガスケット
3 正極ケース
4 負極
5 セパレータ
6 正極合剤ペレット

Claims (5)

  1. 一般式(Ia):Li2-xCo1-yM'ySiO4(式中、M'はNi、V、Tiであり、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
  2. 一般式(Ib):Li2-xMn1-yM''ySiO4(式中、M''はNi3+、Ni4+、Sc、Y、Zr、Nb、Mo、Agであり、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 一般式(II):Li2-xCo1-yMnySiO4(式中、xは0≦x≦2を表し、yは0≦y<1を表す)で表される固溶体化合物と、該固溶体化合物と共に不活雰囲気中で300〜500℃で熱処理されて得られた炭素成分とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
  4. 一般式(I):Li2-xMSiO4(式中、Mは少なくともCo又はMnを含む遷移金属を表し、xは0≦x≦2を表す)で表される固溶体化合物と、炭素材料とを含む混合物を、不活性雰囲気中で300〜500℃で熱処理することで、前記固溶体化合物と前記炭素材料に由来する炭素成分とを含む非水電解質二次電池用正極活物質を製造することを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1つに記載の正極活物質を含む正極を備えることを特徴とする非水電解質二次電池。
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