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JP5233286B2 - 膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

膜電極接合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池を構成する膜電極接合体の製造方法に関する。
燃料電池の一形態として固体高分子型燃料電池が知られている。固体高分子型燃料電池は他の形態の燃料電池と比較して作動温度が低く(−30℃〜100℃程度)、低コスト、コンパクト化が可能なことから、自動車の動力源等として期待されている。
図4に示すように、固体高分子型燃料電池は、膜電極接合体(MEA)4を主要な構成要素とし、それをガス流路5を備えたセパレータ6,6で挟持することにより、単セルと呼ばれる1つの燃料電池Aを形成している。膜電極接合体4は、イオン交換膜である固体電解質樹脂膜1の両面にアノード側およびカソード側触媒層2,2を積層した構造を持つ。触媒層2は、電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物で形成される。触媒には主に白金系の金属が用いられ、該触媒を担持する導電体にはカーボン粉末が主に用いられる。通常、触媒層2の外面にカーボンペーパーまたはカーボンクロス等からなる拡散層3,3が形成され、触媒層2と拡散層3および電解質膜1とを合わせて膜電極接合体と呼ぶこともある。
電解質膜1と触媒層2の積層は、例えば、シート状に作成した触媒層2と電解質膜1とを積層して熱圧プレスする、あるいは電解質膜1に触媒用インクを塗布して乾燥処理するような手順で、通常、行われる。
より高性能、高耐久性を持つ膜電極接合体とするために、電解質膜と触媒層の積層面に高い界面結合が得られることが望まれており、そのための方法として、特許文献1には、固体高分子電解質膜の表面に適宜の手段により凹凸を形成し、該凹凸面に触媒層を圧着して、電解質膜の表面凹凸を触媒層の表面内部に食い込ませて、両者を密着させることが記載されている。また、特許文献2には、拡散層(電極基材)として使用するカーボンペーパーを固体高分子電解質膜と触媒層との積層体に対して加熱圧着し、電解質膜と触媒層との界面にカーボンペーパーの持つ凹凸による凹凸を形成して、高い密着性を得ることが記載されている。
特開2007−26836号公報 特開平9−63622号公報
特許文献1や2に記載のように、電解質膜と触媒層との接合界面を凹凸面とすることにより、両者間の密着性が良好となり、また高い界面結合が得られることから、耐久性のある膜電極接合体が得られるものと期待できる。しかし、両者とも、流動性のない状態の電解質膜および触媒層を直接、あるいは電極基材であるカーボンペーパーを介して、圧着して一体化するようにしており、電解質膜あるいは触媒層に強制変形加工に伴う機械的ストレスによる劣化が生じるのを避けられない。また、一方の凹凸形状に対して、他方側が追従しきれず、両者の界面に微少な隙間が残存してしまう場合もある。このような隙間は界面結合強度を低下させ、膜電極接合体の発電機能の低下を引き起こす。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電解質膜と触媒層との間の界面接合を隙間のないより完全なものとし、それにより、高性能かつ高耐久性の膜電極接合体を得ることのできる、膜電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、電解質膜と触媒層とを接合して形成する膜電極接合体の製造方法であって、電解質膜と触媒層のいずれか一方における接合面に凹凸形状を形成し、他方を溶融した状態または溶液の状態として前記接合面に接合させ、接合界面において前記溶融した状態または溶液の状態にある他方に生じる毛細管現象を接合のための一手段として利用して両者を一体化させることを特徴とする。
上記の製造方法では、一方の接合面に形成された凹凸形状内に、溶融した状態または溶液の状態である他方が毛細管現象を利用して入り込む。それにより、接合界面に隙間のない状態で両者は一体化する。また、強制変形加工を伴わないので、機械的なストレスがかかって接合面に凹凸形状を形成した側の部材が劣化するようなこともない。それにより、高性能かつ高耐久性の膜電極接合体を得ることのできる。
本発明による製造方法において、好ましくは、溶融した状態または溶液の状態とする側の部材の粘度が0.01〜10000PaS、より好ましくは0.1〜1000PaSの状態で前記接合を行う。従来知られた膜電極接合体を構成する膜状の電解質膜または触媒層に対して、溶融した状態または溶液の状態の触媒層用材料または電解質用材料の粘度が上記の範囲であれば、毛細管現象による凹凸形状への入り込みが確実に進行する。粘度が0.01未満のものは、凹凸形状の部分を越えてさらに内部まで入り込んでしまうので好ましくなく、10000PaSを越えるものは充分な毛細管効果が得られない。
本発明による製造方法において、好ましくは、前記凹凸はμmオーダーの凹凸である。その範囲の大きさの凹凸であることにより、前記溶融した状態または溶液の状態である側の部材の毛細管現象による入り込みは、一層確実となる。
本発明による製造方法において、より好ましい態様では、前記凹凸を形成する部材が触媒層であり、溶融した状態または溶液の状態とした部材が電解質膜である。その場合、電解質膜は多孔質補強膜に電解質樹脂を含浸させた補強膜型電解質膜であってもよい。
本発明による製造方法において、膜電極接合体を構成する電解質膜および触媒層の材料に制限はなく、従来公知の電解質膜および触媒層を形成する材料を適宜選択して用いることができる。電解質膜を構成する電解質樹脂は、高分子鎖末端が−SOHであるH型電解質樹脂、および高分子鎖末端が−SOFであるF型電解質樹脂のいずれであってもよい。F型電解質樹脂を用いる場合には、接合処理の後に、膜電極接合体に対して加水分解処理が施され、プロトン伝導性が付与される。前記したように、補強膜型電解質膜を用いる場合には、補強膜として、例えば延伸したPTFE多孔質膜が好適である。触媒層の材料には、上記した電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物が用いられる。触媒には主に白金系の金属が用いられ、該触媒を担持する導電体にはカーボン粉末が主に用いられる。
電解質膜と触媒層のいずれか一方における接合面に凹凸形状を形成する方法は任意であるが、例えば、凹凸面へ材料を塗布し乾燥させる方法、既存の膜面に凹凸型をプレスする態様、既存の膜面に機械的な切削加工を施す方法、などを例示できる。いずれにしても、形成する凹凸はμmオーダーの凹凸、好ましくは、1〜8μm程度の深さとピッチの凹凸である。
本発明によれば、電解質膜と触媒層との積層界面に隙間がなく界面結合力の大きい膜電極接合体が得られる。そのために、本発明の製造方法で製造される膜電極接合体は高発電性能と高耐久性を備えたものとなる。
以下、図面を参照しながら本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による膜電極接合体を製造する方法の一例を説明する模式図であり、図2(a)(b)は、従来法により膜電極接合体を製造する場合の2つの態様を示す模式図である。
図1において、10は触媒層であり、例えば、インク状あるいはペースト状の電解質樹脂と触媒担持導電体とを含む触媒混合物をスプレー法などにより基材上に塗布し、それを乾燥して得られたものであり、電解質膜との接合面となる面には、膜面に凹凸型をプレスする等の手段により、μmオーダーの多数の凹凸11、好ましくは、1〜8μm程度の深さとピッチの凹凸11が形成されている。20は電解質膜用の電解質樹脂または電解質樹脂前駆体であり、溶媒により粘度調整を行い溶液の状態にあるH型電解質樹脂、または加熱することにより溶融した状態となったF型電解質樹脂(電解質樹脂前駆体)である。
膜電極接合体を製造するに際し、図1(a)に示すように、両者を対向した姿勢とし、図1(b)に示すように、前記溶融した状態または溶液の状態にあるF型電解質樹脂またはH型電解質樹脂20に対して、前記触媒層10の凹凸11を形成した面を軽く押し付ける。それにより、図1(c)に拡大して示すように、溶融した状態または溶液の状態にあるF型電解質樹脂またはH型電解質樹脂20は、前記凹凸11内に毛細管現象により入り込んでいき、両者は界面に隙間のない状態で、一体に接合する。
その積層体を、H型電解質樹脂溶液を用いた場合には、乾燥処理を行うことにより、また、溶融状態のF型電解質樹脂を用いた場合には、加水分解処理後に乾燥処理を行うことにより、膜電極接合体が製造される。このようにして製造した膜電極接合体では、電解質膜と触媒層との接合界面が隙間のない強固な接合となっている。
なお、図2(a)は、上記のようにして製造した触媒層10と、あらかじめ製造した電解質膜20aとを積層し、プレスにより積層一体化した場合を示す。この製造方法では、凹凸形状11がμmオーダーのファインピッチであるときには、電解質膜20aが凹凸に馴染みきらず、界面に隙間12が発生する。また、プレスすることにより、触媒層10と電解質膜20aの双方に損傷が生じるのを避けられない。
図2(b)は、表面にμmオーダーの多数の凹凸21を有するあらかじめ製造した電解質膜20bの前記凹凸面側に、図1(a)で説明した触媒層インクを塗布して、触媒層10を積層する場合を示している。この場合も、凹凸形状21がμmオーダーのファインピッチであるときには、触媒層インクが、凹凸に馴染みきらず、やはり界面に隙間12が発生する。
上記のように、図2(a)および(b)に示す従来法による製造方法では、電解質膜と触媒層との積層面に高い界面強度が得られず、膜電極接合体の長寿命化が得られないのに対し、図1に示す本発明の方法では、強い界面結合を持つ高性能、長寿命化した膜電極接合体が得られる。
以下、実施例と比較例により本発明を説明する。
[実施例1]
1)PTFEファインパウダーからビード押出し、ロール圧延の通常の方法にて製造した厚み18mm、50mm×50mmサイズのPTFEテープを多軸延伸機にセットし、昇温し30倍に延伸加工を行い、厚み0.020mmの多孔体膜を得た。
2)1)で得られた多孔体膜両面に、電解質樹脂の前駆体高分子(F型電解質樹脂)(高分子鎖末端が−SOF、デュポン社製高分子NE111F)を押出し成形機にて厚み12μmに作製した薄膜を貼り付けた。
3)上記膜を、230℃真空環境下にて5kg/cmの圧力にて含浸処理を行い膜を得た。
4)ドクターブレード法によりPTFEシート上に塗工したカソード用触媒層およびアノード用触媒層のそれぞれ、5μmピッチにて凹凸を5μm深さで表面に形成したNi金型でプレス加工を行い、触媒層表面に凹凸を形成した。
5)3)で得た膜両面に、表面を凹凸化した上記カソード用触媒層およびアノード用触媒層を貼り合わせ、低圧熱プレス(0.1kg/cm以下、250℃)にて加熱を行い、膜の電解質樹脂前駆体高分子を溶解(熱溶融)させ、膜と触媒層の定着を行い、膜電極接合体を作製した。なお、溶解(熱溶融)した電解質樹脂前駆体高分子の粘度は、800PaS程度である。
6)上記膜電極接合体を、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液とアルコールの混合溶液での加水分解後、1mol/L硫酸水溶液で高分子鎖末端を酸型(−SOH)に変換した。
7)イオン交換された純水により洗浄後、乾燥して膜電極接合体を得た。
[実施例2]
1)実施例1と同様の多孔体膜および、表面を凹凸化したカソード用触媒層およびアノード用触媒層を作製した。
2)カソード用触媒層またはアノード用触媒層の凹凸面に上記多孔質膜を貼り合わせ、粘度を0.5PaSに調整した電解質樹脂溶液(高分子鎖末端が−SOH、デュポン社製溶液DE2020)を多孔体膜状からキャストし、すぐにアノード用触媒層またはカソード用触媒層の凹凸面を多孔質体膜側として重ね合わせて、電解質樹脂の多孔体膜への含浸と凹凸面への充填を行った。
3)2)で得た積層体を、80℃にて30分乾燥させることにより、膜電極津背剛体を得た。
[比較例1]
1)PTFEファインパウダーからビード押出し、ロール圧延の通常の方法にて製造した厚み18mm、50mm×50mmサイズのPTFEテープを多軸延伸機にセットし、昇温し30倍に延伸加工を行い、厚み0.020mmの多孔体膜を得た。
2)1)で得られた多孔体膜両面に、電解質樹脂の前駆体高分子(F型電解質樹脂)(高分子鎖末端が−SOF、デュポン社製高分子NE111F)を押出し成形機にて厚み12μmに作製した薄膜を貼り付けた。
3)上記膜を、230℃真空環境下にて5kg/cmの圧力にて含浸処理を行い膜を得た。
4)上記膜を、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液とアルコールの混合溶液での加水分解後、1mol/L硫酸水溶液で高分子鎖末端を酸型(−SOH)に変換した。
5)イオン交換された純水により洗浄後、乾燥して電解質膜を得た。
6)実施例1,2と同様の表面を凹凸化したカソード用触媒層およびアノード用触媒層を作製した。
7)5)で得た電解質膜の両面に、表面を凹凸化した上記カソード用触媒層およびアノード用触媒層を貼り合わせ、熱プレス(5kg/cm、150℃)を行い膜電極接合体を作製した。
[比較例2]
1)PTFEファインパウダーからビード押出し、ロール圧延の通常の方法にて製造した厚み18mm、50mm×50mmサイズのPTFEテープを多軸延伸機にセットし、昇温し30倍に延伸加工を行い、厚み0.020mmの多孔体膜を得た。
2)1)で得られた多孔体膜両面に、電解質樹脂の前駆体高分子(F型電解質樹脂)(高分子鎖末端が−SOF、デュポン社製高分子NE111F)を押出し成形機にて厚み12μmに作製した薄膜を貼り付けた。
3)上記膜を、230℃真空環境下にて5kg/cmの圧力にて含浸処理を行い膜を得た。
4)上記膜に、5μmピッチにて凹凸を5μm深さで表面に形成したNi金型でプレス加工を行い、膜表面に凹凸を形成した。
5)上記膜を、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液とアルコールの混合溶液での加水分解後、1mol/L硫酸水溶液で高分子鎖末端を酸型(−SOH)に変換した。
6)イオン交換された純水により洗浄後、乾燥して電解質膜を得た。
7)上記電解質膜表面に、触媒層インクを塗布乾燥することで、膜電極接合体を得た。
[評価試験1]
各実施例および比較例の膜電極接合体の断面を切断し、電解質膜と触媒層との界面を電子顕微鏡にて観察を行った。その結果、比較例1および比較例2では、部分的に膜・触媒層界面に隙間が存在することが確認された。一方、実施例1および実施例2では、同様の隙間は確認できなかった。これは、本発明の方法により膜電極接合体を作製することで、電解質膜と触媒層との界面接合性が良好になることを示している。
[評価試験2]
次に、各実施例および比較例の膜電極接合体にて、電池性能の評価を行った。その結果を図3に示した。図3に示すように、実施例1,2に比べて、比較例1,2とも電流密度が大きい部分でのフラッティングによると思われる電圧の落ち込みが大きい。この落ち込みは、比較例1,2では、界面に隙間が存在することで、そこに発電により生成した水が溜まり、それにより発電が阻害されたために生じたと推測される。
[評価]
評価試験1、2の結果から、本発明の製造方法により作られた膜電極接合体は、比較例の膜電極接合体よりも、電解質膜と触媒層の界面の接合性が向上し、電池性能も向上することがわかる。本発明による膜電極接合体を使用することで、高性能で、耐久性に優れた電池を提供することができる。
本発明による膜電極接合体を製造する方法の一例を説明する模式図 従来法により膜電極接合体を製造する場合の2つの態様を説明する模式的。 本発明により製造された膜電極接合体を用いた燃料電池と、従来法により製造された膜電極接合体を用いた燃料電池との発電性能を示すグラフ。 固定高分子型燃料電池を説明するための図。
符号の説明
10…触媒層、11…触媒層に形成されたμmオーダーの凹凸、20…電解質膜用の電解質樹脂(溶媒により粘度調整を行い溶液の状態にあるH型電解質樹脂)または電解質樹脂前駆体(加熱することにより溶融した状態となったF型電解質樹脂)、12、22…界面に形成される隙間

Claims (2)

  1. 電解質膜と触媒層とを接合して形成する膜電極接合体の製造方法であって、触媒層側の接合面に凹凸形状を形成し、電解質膜側の接合面を溶融した状態または溶液の状態でありかつ粘度が0.1〜1000PaSの状態として前記触媒層側の接合面に接合させ、接合界面において前記溶融した状態または溶液の状態にある電解質膜側の前記触媒層側に生じる毛細管現象を接合のための一手段として利用して両者を一体化させることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  2. 前記触媒層側の接合面の凹凸がμmオーダーの凹凸であることを特徴とする請求項1記載の膜電極接合体の製造方法。
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