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JP5288888B2 - 水中油滴型水性ボールペン用インク組成物 - Google Patents

水中油滴型水性ボールペン用インク組成物 Download PDF

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JP5288888B2 JP2008145150A JP2008145150A JP5288888B2 JP 5288888 B2 JP5288888 B2 JP 5288888B2 JP 2008145150 A JP2008145150 A JP 2008145150A JP 2008145150 A JP2008145150 A JP 2008145150A JP 5288888 B2 JP5288888 B2 JP 5288888B2
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Description

本発明は、水性ボールペン用インク組成物に関し、具体的にはインク性状が水中油滴のエマルションである水性ボールペン用インク組成物に関する。
ボールペンは大別して水性インクを用いる水性ボールペンと油性インクを用いる油性ボールペンの2種類がある。一般的に、水性インクは粘度が低いために水性ボールペンは筆記時のインク流出量が多く、鮮明な描線が得られ、線割れ、かすれ、及びボテ現象の発生が起こり難い。さらに、またインクの粘度が低いために、軽い書き味を有している。しかし反面、流出量が多いことから、描線が滲みやすく、筆記時にガリツキ感を有するという欠点を有する。これに対し、油性ボールペンは水性ボールペンと比較してインク粘度が高いため、描線の滲みが無く、筆記時のガリツキ感が少ない。しかし、筆記時の流出量が少なく、粘度も高いため、書き味の重いものが多く、又線割れやカスレが発生し易く、未転写インクによる「ボテ」現象が生じるものが多い。
水性ボールペンの上記欠点を解消すべく、水性ボールペンインクにチキソトロピー性を付与して描線滲みを少なくしたゲルインクボールペンが開発されている(特許文献1)。特許文献1以外にも、ゲルインク関連技術が開示されている数多くの特許文献がある。しかし、現行のゲルインクボールペンは、描線滲みに関しては改善されているが、ガリツキ感の改善は依然として不十分である。
また、油性インクの粘度を低下させて書き味を向上させた油性ボールペンも開発されているが、流出量が多くなるので、乾燥性が悪化し、裏抜け、ボテの原因となる。
特許文献2には、有機溶剤に水を分散させW/O型有機溶剤を用いた低粘度の油性ボールペンインクが記載されている。しかし、このインクは、保存安定性に問題があり、またインク組成の大半は有機溶剤であるため、流量を増やした場合はやはり裏抜けが発生した。
特許文献3には、あらかじめ顔料を水性成分に含有させ、それを油性成分と混合することで、顔料が分散された水性成分からなる水滴が油性成分中に分散されたW/O型エマルションインクを用いることで、書き味等を改善させたボールペンインクが開示されているが、長期保存後も筆記は可能であっても、水滴が合一して局在化してしまう等の安定性に欠けている。また、組成中油性成分の量が多いので、水性ボールペンのような筆記流出量では、裏抜け、描線乾燥性の悪化が顕著であった。
また、特許文献4には、ポリマー、前記ポリマーを溶解する溶剤からなるポリマー溶液に顔料を分散させた着色した組成物を水中に乳化分散して成る、消しゴムで消去できる筆記用インクが記載されている。しかし、このインクは着色材が顔料であり、分散粒子が非常に高粘度のため、ボールペンに用いると筆記性は悪く、また分散粒子が合一し易く、沈降してしまい、保存安定性にも問題があった。
特許文献5には、水溶性染料を含有する水溶性インクと、油溶性染料を含有する油溶性インクからなるインク組成物を、筆記する際に振とうさせて不安定なエマルジョンを形成し、その筆記線が短く不規則に連続的に変化する筆記具用多色インクが記載されている。このインクは、静置状態では2層に分離する旨記載されており、通常のボールペンインクとしては不適当である。
特表昭62−501914号公報 特開2004−115611公報 特開2007−327003公報 特開昭55−152768号公報 特開2004−323618公報
上述したように、水性ボールペン、油性ボールペンは、それぞれ長所と欠点を有している。両者の長所を兼ね備えた新規なボールペンインク組成物を提供することが本発明の目的である。
本発明者は、鋭意研究を行った結果、インク組成物を、水中油滴型エマルションとすることにより、前記課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)有機溶剤中に少なくとも着色材としての染料を溶解させた油性溶液から成る油性相及び少なくとも水を含む水性相から得られる水中油滴型エマルションから成る水性ボールペン用インク組成物である。
(2)前記油性溶液の粘度が25℃、剪断速度3.83/秒において1000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする(1)記載の水性ボールペン用インク組成物である。
(3)前記油性溶液の全溶剤中、分子骨格中に芳香環1つ以上有する溶剤が質量基準で50%以上を占め、且つ分子骨格中に芳香環を1つ以上有する乳化剤を含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の水性ボールペン用インク組成物である。
(4)前記乳化剤が少なくともエチレンオキサイド付加モル数が40以上の芳香族系乳化剤を含むことを特徴とする(3)に記載の水性ボールペン用インク組成物である。
(5)前記油性溶液の染料を含む固形分濃度が質量%で30〜70%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物である。
(6)前記油性溶液の溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物。
(7)水に対する25℃における溶解度が質量%で1%以下であり、且つ分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が、前記油性溶液の全溶剤中、質量基準で50%以上を占めていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物。
(8)インク組成物中に占める油性相成分の割合が、質量%で10〜50%である(1)〜(7)のいずれか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物。
本発明の水性ボールペン用インク組成物は水中油滴型のエマルション(乳化物)である。水性相により、高流出量で且つ軽い書き味を実現され、油性相の油膜により、描線滲みや裏抜けが無く、ガリツキ感の無い書き味が実現された。本発明は、水性ボールペンインクと油性ボールペンインクの長所を兼ね備え、なお且つ保存安定性のよい水中油滴型水性ボールペンインク組成物を提供する。
本発明のインク組成物は、水−油系エマルションであり、油滴が水に分散している水中油滴型の構成を有する。以下に、本発明のインク組成物の成分を詳細に説明する。
油性相は、有機溶剤中に少なくとも着色材としての染料を溶解させた油性溶液から成っている。油性溶液の溶剤としては、分子骨格中に芳香環を有する溶剤が染料の溶解性の点から好ましく、芳香環を有するものであればいずれも用いることができる。好ましくは油性溶液の全溶剤に対し、分子骨格中に芳香環を有する溶剤が、質量基準で50%以上使用することが好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
特に、染料に対する溶解性に加え、水と相溶しないこと、形成された乳化物の保存安定性が良いこと、安全性が高いことを考慮すると、更に好ましい溶剤は分子内に一つ以上の芳香環を有し、且つ溶剤の水への溶解度は、25℃において1g/l00g以下のものが好ましい。溶解度が1g/l00gを超えると、不安定なエマルションとなり経時的に相分離を生じる場合がある。油性溶液において、分子内に一つ以上の芳香環を有し且つ溶剤の水への溶解度が25℃において1g/l00g以下の溶剤が全溶剤の質量基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
乳化物の安定性を考慮した場合、最も好ましい溶剤は25℃における水への溶解度が0.1g/100g以下の分子内に一つ以上の芳香環を有する溶剤である。全溶剤の質量基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
また、比較的低揮発性の溶剤が好ましく、染料を溶解させる作業上の安全性の観点から、また高温時の乳化物の内圧上昇による不安定化を抑制する観点からも、沸点が200℃以上の溶剤が好ましい。
溶剤は、以下に示す溶剤の例から選ばれる1種類の溶剤からなることができ、又は複数種の溶剤からなることができる。
本発明の油性溶液に用いることができる溶剤の例としては、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、キシレン、トルエン等が挙げられる。特にこれらの中で、25℃における水への溶解性が1g/100g以下である、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、液状のキシレン樹脂、トルエン、キシレン等が好ましい溶剤として挙げられる。最も好ましくは、これらの中で、25℃における水への溶解性が0.1g/100g以下である、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等の他、液状のキシレン樹脂、トルエン、キシレン等が好ましい溶剤として挙げられる。
また、染料を溶解させる作業上の安全性の観点から、また高温時の乳化物の内圧の上昇による不安定化を抑制する観点からも、沸点が200℃以上の溶剤が好ましく、好ましい溶剤としては、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。
また、本発明の油性溶液において、これら芳香環を有する溶剤のほかに、任意の補助溶剤を含むことができる。例えば、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、炭化水素類から選ばれる溶剤を用いることができるが、水と無限に相溶する溶剤は水性相への拡散、合一を引き起こすため、多く使用すべきではない。油性溶液中の全溶剤の質量%で10%以内に留めるべきである。
アルコール類としては、炭素数が2以上の脂肪族アルコールが好ましく、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノールやその他多種多様な高級アルコール等が挙げられる。
また、多価アルコールとしては分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
炭化水素類としては、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類やシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類が挙げられる。
また、以上に挙げた溶剤の他に以下に挙げる補助溶剤を添加することも可能である。それらの例として、多価アルコール類誘導体があり、ソルビタン脂肪酸系、ポリグリセリン高級脂肪酸系、ショ糖脂肪酸系、プロピレングリコール脂肪酸系等の誘導体も挙げられる。
エステル類の補助溶剤としては例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート等、種々のエステルが挙げられる。
また、分子内に水酸基を持たない補助溶剤として、ジエーテルやジエステルを用いることができ、具体的には、例えば、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
本発明のインク組成物に用いる着色材は染料である。使用する染料が上述した溶剤に溶解するものであれば一般的な油性インク組成物に使用されているいずれの染料も使用することができる。本発明に係る油溶性染料として、通常の染料インク組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料、造塩染料、樹脂に染料を染着した染料等の中から任意のものを使用することができる。これらの中で、有機溶剤に溶解しやすい造塩染料等のアルコール可溶染料、油溶染料等が、溶解性、乳化物の安定性の面から好ましい。特に好ましい染料は油溶染料である。染料の配合量は、油相側インク総量の質量基準で30〜70%の範囲となることが好ましく、特に好ましくは、インク総量の質量基準で40〜60%の範囲である。
一般的な油性インク組成物に使用されている造塩染料としては、バリファーストカラー(登録商標、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロン染料、アイゼンSOT染料(登録商標名、保土谷化学工業(株)製)がある。
樹脂に染料を染着した染料としては、keiko−Colot MPI−500シリーズ、keiko−Colot MPI−500Cシリーズ、keiko−Colot NKS−1000シリーズ(日本蛍光化学(株)製)がある。
着色材は染料と組み合わせて、乳化物の安定性を維持できる範囲で少量の顔料を用いることができる。
顔料を用いる場合、顔料の量は、油性溶液の質量基準で10%以下であることが好ましく、10%を超えると、乳化物の安定性に不具合を起こす。染料と組み合わせて用いることができる顔料には、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料等各種有機顔料を使用することができる。
本発明のインク組成物を調製するための油性溶液には、粘度を調整するため、樹脂を用いることができる。前記油性溶液の粘度は、乳化剤を含まない状態で25℃、剪断速度3.83/秒において1000〜1,000,000mPa・sが好ましい。粘度が、1000mPa・s未満であると、筆記にガリツキ感が生じる上、乳化物の安定性に難があり、1,000,000mPa・sを超えると重い筆感となり、ボールペンのインク組成物としては好ましくない。25℃、剪断速度3.83/秒において3,000〜500,000mPa・sの範囲が特に好ましい。
本発明のインク組成物に用いることができる樹脂の具体的な例として、ケトン樹脂、スルホアミド樹脂、マレイン酸樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂等の天然及び合成樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。
前記油性溶液の染料及びその他の添加物の量は、固形分濃度として全油性溶液の質量基準で30〜70%であることが好ましい。固形分濃度が、30%未満であると、着色力に難があり、70%を超えると染料の溶解が困難となり、ボールペンのインク組成物としては好ましくない。固形分濃度が40%〜60%の範囲が特に好ましい。
水性相は水を溶剤とする水溶液であり、具体的には精製水を用いる。また水性相は、低温時でのインキ凍結防止や、ペン先でのインキ乾燥防止などを目的とする添加剤を含むことができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられ、単独或いは混合して使用することができる。その使用量は、水性相の質量基準で、0〜50%、好ましくは0〜30%である。50%以上添加すると乳化物の安定性に不具合を起こす。
水性相は前述の油性溶液と混合して、安定なエマルションを形成するために乳化剤を含有する。本発明に係る油性溶液の主溶剤と混合して、長期的に安定なエマルションを形成する乳化剤は、分子骨格中に芳香環を1つ以上有する乳化剤である。
分子骨格中に芳香環を1つ以上有する乳化剤は、親油基である芳香環が油性相の染料溶液に対して親和性が高いため、長期的に安定なエマルションを形成すると考えられる。
本発明のインク組成物に用いることができる、芳香族系乳化剤としては、芳香環を1つ以上有しているものであれば、特に制限は無い。乳化剤は通常エチレンオキサイド(EO)付加モル数によって、その性質を変えることができる。油性溶液に用いる主溶剤と関連して、エチレンオキサイド付加モル数が40mol以上のものが好ましい。長鎖のエチレンオキサイド鎖により、粒子の合一を抑制するためである。
前述のエチレンオキサイド付加モル数が40mol以上の乳化剤と、油性相への配向が強いエチレンオキサイド付加モル数が5〜15molの乳化剤とを組み合わせて用いることができる。油性相へ配向の強いものと水性相へ配向の強い乳化剤を組み合わせることにより、界面のミセル濃度が高まり、乳化物の安定性が増すと考えられるからである。
HLB値については、非イオン性界面活性剤については少なくともHLB値が15以上の乳化剤を1種以上用いることが好ましい。エチレンオキサイド付加モル数が多くても、HLB値が低い場合は、油性相側に乳化剤が取り込まれすぎてしまうからである。
エチレンオキサイド40mol以上を有する乳化剤としては、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤で、エチレンオキサイド鎖40mol以上付加したもの、及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤を挙げることができる。エチレンオキサイド付加モル数については40mol以上、且つ200mol以下が好ましい。200mol以上付加した乳化剤の場合、粘度上昇が著しく、使用に不適当な場合が生じる。
また、エチレンオキサイド付加モル数5〜15のものとしては、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤で、エチレンオキサイド鎖5〜15mol付加したもの、及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のアルキルフェノール型非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
乳化剤は分子内に芳香環を有する界面活性剤以外に、他の構造を有する任意の乳化剤を追加して添加することができる。例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル(C10〜C18)エステル等の直鎖炭化水素型非イオン性界面活性剤、ソルビタン誘導体等が挙げられる。乳化剤の量は、油性溶液の質量基準で5〜150%であることが好ましく、10〜100%であることが最も好ましい。
乳化剤以外に、水性相は水性ボールペンに通常使用される各種の添加剤、例えば、防錆剤、防腐剤、PH調整剤、潤滑剤、保湿剤等を含有することができる。
本発明の水中油滴型水性ボールペン用インク組成物中に占める油性相成分の割合は、質量%で10〜50%である。油性相成分の割合が10%より小さいと、着色力、筆記性で満足な性能が得られないだけでなく、一般的にエマルションは希薄系では不安定であり、乳化物の安定性が損なわれるために好ましくない。また、油性相成分の割合が50%より大きいと、流動性が損なわれて粘度上昇する結果、筆感が悪くなり、また油性インクに性質が近づくため、描線の裏抜け等の原因となり好ましくない。油性相成分の好ましい割合は、質量%で10〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。
本発明の水性ボールペン用インク組成物の乳化方法は従来技術において知られている種々の乳化方法、例えば、転相乳化方法、D相乳化方法、PIT乳化方法、機械的な乳化方法を用いることができる。例えば、転相乳化方法においては、本発明の水性ボールペン用インク組成物は以下の工程により製造される:
a)有機溶剤中で、少なくとも着色材としての染料を含む油性溶液成分を攪拌して、固形分を溶解させる工程、
b)水性溶液成分に乳化剤を加えて攪拌して溶解させる工程、
c)工程aで得られた油性溶液に、工程bで得られた水性溶液を徐々に添加して油中水滴型エマルション得る工程、
d)攪拌しながら、さらに水性溶液を添加して相転移を経て水中油滴型エマルションを得る工程。
油性溶液と水性溶液との攪拌混合は、例えば、混合撹拌機により各成分を均一に混合する方法や、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモミキサー、ディスパー、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等の分散機を用いて各成分を分散混合する方法を用いることができる。このとき、油相成分と水性相成分とを同時に撹拌混合あるいは分散混合してもよく、また各成分を順次撹拌混合あるいは分散混合しても構わない。
以下、最も代表的な実施例により、本発明の好適態様とその優れた効果を具体的に説明する。尚、以下において、部はすべて質量部であり、%はすべて質量%である。
実施例1〜16については以下の通り調製を行った。まず、表1に記載の油性溶液成分を攪拌しながら50℃〜60℃の温度に加温して、これらの成分を完全に溶解させた。表中の油性溶液粘度はこの溶液の値である。油性相への配向が強い乳化剤を配合する場合は、当該油性溶液に添加し常温で攪拌した。一方、これとは別に乳化剤を加えた表2に記載の水性溶液成分(顔料にあってはビーズミル等で分散する前工程処理を施した分散体)を攪拌しながら溶解・分散させた。そして油性溶液中に対して水性溶液を攪拌しながら徐々に添加することによって、w/oからo/wに転相させて水中油滴型の乳化物を得た。その後、必要に応じてホモジナイザー、高圧ホモジナイザーで更なる微粒化を行い、最後に添加剤類を添加、溶解させて本発明のインク組成物を得た。
実施例1〜16の生成された組成物を三菱鉛筆(株)製UMR−07リフィールに軸に組込み後、以下の評価を行った。
比較例1〜3については、油性インクについては三菱鉛筆(株)製SA−07Nリフィールに、ゲルインクについては三菱鉛筆(株)製UMR−07リフィールに、水性インクについては三菱鉛筆(株)製UB157軸にそれぞれインクを充填し、評価を行った。各インク組成物の成分を表4に示す。
<評価>
(a)筆感軽さ検査
筆記用紙に5周丸書きし、筆感の軽さ官能検査して、以下のように判定した。
◎:非常に軽い。○:軽い。△:普通。◆:重い。×:使用に耐えない。
(b)ガリツキ感検査
aの筆感軽さ検査時の筆記のガリツキ感を以下のように判定した。
◎:全く気にならない。○:やや感じるが問題ない。△:やや気になる。◆:かなり気になる。×気になる。
(c)描線品位試験
(a)の筆感軽さ検査時の描線のカスレ、線割れ、筆記ボテを検査して、以下のように判定した。
◎:全く観察されない。○:ほとんど観察されない。△:やや観察される。◆:かなり観察される。×:使用に耐えない。
(d)裏抜け性検査
(a)の筆感軽さ検査時の紙面の裏抜けについて検査して、以下のように判定した。
◎:裏抜けがない。○:若干裏抜け気味だが、使用上問題ない。△:やや裏抜けが気になる。◆:かなり裏抜けしている×。:使用に耐えない。
(e)描線滲み性検査
(a)の筆感軽さ検査時の紙面の滲みについて、以下のように判定した。
◎:滲まない。○:若干の滲みあるが、気にならない。△:やや滲みが気になる。◆:かなり滲んでいる。×:使用に耐えない。
(f)保存安定性検査
ペン体を50℃の条件下で1ヶ月放置し、筆記性を確認した。
◎:初期と変化無し。○:初期と比較して僅かな変化はあるが、筆記に問題なし。△:描線の劣化は観察されるが、筆記可能。◆:描線の劣化が著しい。×:筆記できない。
上記試験の結果を表3及び表5に示す。これらの結果から、本発明のインク組成物が、比較例インク(油性インク、ゲルインク、水性インク)に比べて、優れた結果を示すことがわかる。
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Claims (7)

  1. 有機溶剤中に少なくとも着色材としての染料を溶解させた油性溶液から成る油性相及び少なくとも水を含む水性相から得られる水中油滴型エマルションから成る水性ボールペン用インク組成物であって、
    前記油性溶液が、少なくともエチレンオキサイド付加モル数が40以上の芳香族系乳化剤を含む水性ボールペン用インク組成物
  2. 前記油性溶液の粘度が25℃、剪断速度3.83/秒において1000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の水性ボールペン用インク組成物。
  3. 前記油性溶液の全溶剤中、分子骨格中に芳香環を1つ以上有する溶剤が質量基準で50%以上を占めることを特徴とする請求項1又は2記載の水性ボールペン用インク組成物。
  4. 前記油性溶液の染料を含む固形分濃度が質量%で30〜70%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
  5. 前記油性溶液の溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
  6. 水に対する25℃における溶解度が質量%で1%以下であり、且つ分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が、前記油性溶液の全溶剤中、質量基準で50%以上を占めていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
  7. インク組成物中に占める油性相成分の割合が、質量%で10〜50%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
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