JP4553435B2 - 水性エマルジョン型インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク組成物に関し、セルロースを乳化剤もしくは乳化助剤として含有する水性エマルジョン型インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水性インクは、水性ボールペン、サインペンなどの筆記用具からインクジエットプリンター用や印刷用まで幅広く使用されている。一般に水性インクに要求される性能としては、耐水性、非蒸発性、保存安定性、保水性などが挙げられるが、筆記用具に用いる場合は、それらに加え、均一の太さで滑らかな筆記を可能とし、また、たれを生じないような適度な粘度と流動性を有すること、ペン先で詰まりを起こさない事が要求される。
【0003】
しかしながら、界面活性剤を含有した水溶性インク組成物を用いて、紙(例えば、慣用のコピー用紙など)などの吸収面(水性インクを吸収又は浸透することができる面)に塗布(筆記)すると、顔料(着色剤)が紙内部に浸透し、時間の経過とともに(例えば、筆記直後から筆記数分後にかけて)、印字や画像などの塗膜(以下、単に 「塗膜」と称する)の発色濃度が低下する。また、塗膜が滲み易くなるなどの問題も生じている。
【0004】
これらの問題を解決する試みとして、特開平10−46069号公報に、水中油型エマルジョンインクが開示されている。また特開平11−35867号公報に、油溶性シリコンで構成されている水中油型エマルジョンインクが開示されている。
しかしながら、これらの水中油型エマルジョンインクは、熱安定性が悪い(高温になるとエマルジョンの破壊等が発生するので。)、インク製造時の発泡等が発生する等の問題がある。また、印字面の鮮映性も満足できるものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱安定性に優れ、紙等への定着性に優れた水性エマルジョン型インク組成物を提供する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、WO99/28350において、微粒化された低結晶性のセルロースを分散媒体中に高度に分散させ、透明性の高い分散体を得る技術を確立した。さらに、このセルロースを水性インクに適用することにより、優れた乳化安定性、及びペン先での流出安定性を有し、且つ広範な温度条件で安定な水性エマルジョン型インクとなることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) セルロースを乳化剤または乳化助剤として0.02〜6.0重量%含み、これと着色剤、油性原料を30〜50重量%及び水を必須成分とする水性エマルジョン型インク組成物、
(2) セルロースが平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であることを特徴とする上記(1)の水性エマルジョン型インク組成物、
である。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性エマルジョン型インク組成物は、セルロースを乳化剤または乳化助剤として0.02〜6.0重量%含み、これと着色剤、油性原料及び水とを必須成分とするものである。
本発明において用いるセルロースは、微結晶セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、粉末セルロース、再生セルロース球形粒子等の微細セルロースであれば全て用いることができるが、セルロースの平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下で、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下のセルロースであることが、乳化特性に優れることから好ましい。
【0009】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物の製造に際して、該セルロースは後述する製造方法で得られる分散媒体に、分散したセルロース分散体として供給することが特に好ましい。該セルロース分散体は、好適な場合には、水溶性高分子水溶液に匹敵するほどの透明性を持ち、セルロースが高度に分散媒体に分散した状態となし得るものであり、乳化剤または乳化助剤として、優れた乳化安定性とペン先での流出安定性を有し、且つ広範な温度条件で安定な水性エマルジョン型インク組成物の提供を可能にするものである。
【0010】
本発明において、セルロースの平均粒子径、平均重合度および各種結晶成分の分率は以下のようにして評価した。セルロースの平均粒子径は、本発明の組成物の原料となるセルロースの水分散体に関して、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限検出値は0.02μm)で測定した。分散媒体中のセルロース粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、次の工程で試料を調製した。セルロース濃度が約0.5%になるように分散体を水で希釈した後、回転速度15000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間混合処理を行い均一な懸濁液を作る。次いでこの懸濁液に超音波処理を30分間施して得られた水分散試料を粒度分布測定装置のセルに供給し、再び超音波処理(3分間)を行った後、粒径分布を測定した。
【0011】
本発明の平均粒子径は、Mie散乱理論式から算出される体積換算の粒度分布から求められる重量平均粒子径に相当する。
本発明でいうセルロースの各結晶成分の分率および平均重合度の測定は、分散体を減圧乾燥法等の手段で乾燥して、乾燥セルロース試料として行った。セルロースI型は天然セルロースに見られる結晶形、セルロースII型は再生セルロースにおいて主に観測される結晶形(ただし、再生の条件によって結晶成分の分率は制御可能である。)である。
【0012】
セルロースI型及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよびχII)は、広角X線回折法(理学電機(株)社製ロータフレックスRU−300を使用)により下記手順で算出した。セルロースI型結晶成分の分率(χI)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0゜における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1から、下記(1)式によって求められる値を用いた。
【0013】
同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h0 *とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 *から、下記(2)式によって求められる値を用いた。
χI=h1/h0 (1)
χII=h1 */h0 * (2)
図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。
【0014】
本発明で規定する平均重合度(DP)は、上述の乾燥セルロース試料をカドキセンに溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(3)および換算式(4)により算出した値を採用した。
[η]=3.85×10-2×MW 0.76 (3)
DP=MW/162 (4)
本発明では、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、より好ましくは0.06以下で、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下、より好ましくは0.3以下であり、さらに構成する粒子の平均粒子径が5μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下のセルロースを用いることが好ましい。
【0015】
この条件を満たすセルロースが、水性エマルジョン型インク組成物において優れた能力を示す理由は、微粒子化されており、高い分散性を示すため、元々油性化合物との親和性に優れるセルロースの潜在的性質が引き出され、乳化剤や乳化助剤として高い能力を有すること、さらには低結晶性でありアモルファス領域を多く含むため、従来のセルロース素材に比べ、水分を取り込み易く(高い保水性)、かつこれらを満足するものが透明性に優れているため、インク色調に影響を与えないこと等を挙げることができる。当然の事ながら、平均粒径が小さいものほど高い分散性を有する。この様なセルロースは、本発明の水性エマルジョン型インク組成物において水等の分散媒体に極めて高度に分散しているだけでなく、各種配合成分との混合性も極めて良好である。さらに、セルロースの平均重合度(DP)が100以下であれば、上記特性を更に一層向上させるので好ましい。
【0016】
さらに本発明の水性エマルジョン型インク組成物において、乳化剤または乳化助剤としてのセルロースの含量は0.02〜6.0重量%の範囲であることが必要であるが、乳化剤としてセルロース以外に通常の界面活性剤を使用しない場合には、セルロースの含有率は0.5〜3.0重量%であると好適に水性エマルジョン型インクを与えることができ、好ましい。また、1.0〜2.0重量%であるとより好適に水性エマルジョン型インク組成物を与えることができることからさらに好ましい。
また、本発明の水性エマルジョン型インク組成物において、乳化剤あるいは乳化助剤として含有されるセルロ―スは粘度調製剤や沈降防止剤、安定剤としての機能も併せ持つ。また、紙と同一成分であるセルロースを含有しているため、きわめて優れた定着性が発現される。
【0017】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物において、セルロースは乳化剤または乳化助剤として作用するが、例えば乳化のための界面活性剤を全く含まない場合、あるいは界面活性剤を含んでいてもセルロース含有量に対して極めて少量である場合にはセルロースは乳化剤の主体(すなわち主乳化剤)として作用する。界面活性剤の配合量によっては、界面活性剤が主乳化剤として作用し、セルロースは乳化のための補助剤あるいは乳化エマルジョンを安定化させる乳化安定剤などの乳化助剤として作用する。セルロースを乳化助剤として使用した場合にもインキ組成物の紙への定着性等の効果は十分に期待される。
【0018】
また、乳化のための助剤としてセルロース以外の界面活性剤や乳化性能を有する各種添加剤を含んでいても構わない。粘度調整剤や沈降防止剤などセルロースのもつ乳化剤や乳化助剤以外としての性能を活かすためには、使用するセルロース以外の界面活性剤等の乳化剤の量はセルロースの含量以下であることが望ましい。
【0019】
界面活性剤として、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)などの非イオン性の界面活性剤やアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤,塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性界面活性剤,アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
さらに界面活性剤以外の乳化性能を有する化合物として、ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,カルボキシビニルポリマーなどに代表される高分子乳化剤などを挙げることができるが、乳化性能を有する化合物であればこれに限定されることなく使用することができる。界面活性剤などの乳化性能を有する添加剤は、単独であっても2種以上を併用しても構わないが、非イオン性の化合物はセルロース分散体との相溶性に優れるので特に望ましい。
【0021】
本発明でいう油性原料としては、ヒマシ油、アマニ油、トール油、大豆油等の植物油、スピンドル油、流動パラフィン、ギア油、機械油、マシン油等の石油系油、エチレン、プロピレン、ブテン等の不飽和炭化水素の重合によって得られた合成油、ジメチルシリコン、モノメチルシリコン、フェニルシリコンアルキル変性シリコン、アミノ変性シリコン等のシリコン油が用いられる。また、日本石油化学製のアイゾール300、出光石油化学製のIPソルベント1628、IPソルベント2028、エクソン化学社製のアイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM等も好ましく用いられる。
【0022】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物はこのような油性原料の配合量が30〜50重量%の範囲である。
また、本発明の水性エマルジョン型インク組成物は、水中油型エマルジョンと油中水型エマルジョンの2種類の形態をとり得るが、セルロースの親水性が親油性よりも高いことを考慮すれば、水中油型エマルジョンがより好適である。
【0023】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物に用いる着色剤としては、水に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。該染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、アシッドレッドM−81(C.I.27290)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42535)、アシッドブルーPG(C.I.42655)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
【0024】
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42 555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)バイオレットBB(C.I.27905)ダイレクトディープブラックEX(C.I.3023 5)カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0025】
顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、既に界面活性剤を用いて 微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等 が用いられ、例えば、C.I.Pigment 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社 製〕C.I.Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕C.I.Pigment Yellow 81〔品名: TC YellowFG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕C.I.Pigment Red220/166〔品 名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
【0026】
また、蛍光顔料も用いることができ、蛍光顔料として、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が挙げられる。その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペンに用いる酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、熱変色性マイクロカプセル顔料、香料又は香料カプセル顔料なども使用できる。
着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中に1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の範囲で用いられる。
【0027】
水性エマルジョン型インク組成物を形成する水相として通常、水、水溶性有機溶剤及びその他の水溶性添加剤からなる。本発明で使用される水溶性有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が用いられる。上記水溶性有機溶剤の含有量について特に制限はないが、水相全重量の5〜30重量%、更に好ましくは、10〜20重量%が好適な範囲である。30重量%を超すと、水相と油相に分離せず、エマルジョンとはならないため不都合である。
【0028】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物には、更にこの他、必要に応じて粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもかまわない。
本発明のセルロースの調製は、次のようにして行う;セルロースを50重量%以上溶解させる能力のある鉱酸(例えば硫酸水溶液)にセルロースを溶解させて、かかる溶液を水中に再沈させて得られるセルロース凝集体の酸分散液を加温し、固相で50〜100℃の温度範囲で加水分解処理を施す。反応時間は温度に応じて異なるが、約5分〜180分の範囲にあることが望ましい。この工程により得られた分散液を濾過、水洗を繰り返すことにより精製する。この間に希薄なアンモニア水のようなアルカリ水溶液などにより中和を行っても構わない。ただし、その際にも中和後、さらに水洗し、中和によって生じる中和塩を洗い流すのが好ましい。
【0029】
こうして得られたpHの値が2以上、好ましくは4以上のゲル状物をそのまま、あるいはエタノールなどの有機溶媒と混合あるいは置換した後、微細化処理を施すことによりセルロースの水分散体あるいは有機溶媒への分散体を調製する。この際の微細化処理としては超高圧ホモジナイザーやビーズミルあるいは超音波処理などの適用が有効である。最後の微細化処理は必要に応じて複数回行っても構わない。この際の原料セルロースとしては、木材パルプや綿等の天然セルロースが好適に使用できるが再生セルロースであっても構わない。
【0030】
本発明の水性エマルジョン型インク組成物は、常法のエマルジョンの調製方法に従って調製することができる。乳化剤であるセルロースの分散性を高めるために、各種配合成分をブレンダーなどの簡易混合装置で予備混合したものを高圧型ホモジナイザーあるいは超高圧ホモジナイザーのような強力な乳化能を有する装置で処理するか、あるいは、予め各種成分を配合したセルロースを含む水相を高圧型ホモジナイザーあるいは超高圧ホモジナイザーのような強力な混合装置にて処理したものを乳化原料として用いると、極めて油滴径の小さな、理想的な水性エマルジョンインクを得ることができる。
【0031】
セルロースを乳化助剤として使用する場合には、上述した方法で調製したセルロースの分散体を予め界面活性剤等の乳化剤と混合しておき、常法にて乳化させてもよいし、他の乳化剤を用いて乳化させた後にセルロースの分散体を添加、混合しても構わない。
本発明の水性エマルジョン型インク組成物は、ボールペン、マーキングペン等の筆記具用インク、凸版印刷、孔版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷インク、インクジェットプリンターインクとして好適に使用することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の、水性エマルジョン型インキ組成物を実施例により具体的に説明する。
<セルロース分散体の調製>
木材パルプを65重量%硫酸へパルプ含率4重量%となるように−5℃で溶解させ、このセルロース/硫酸溶液1に対し重量比で2.7相当の水中へセルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾過、水洗してペースト状のセルロースの水分散体を得た。得られたゲル状物中のセルロース濃度は6.0重量%であった。次いでこのゲル状物をイオン交換水で希釈してセルロース濃度4.0重量%とした後、ブレンダーで15,000rpmの回転速度で5分間混合した。次いでこの希釈液を超高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH型,みづほ工業(株)製)にて操作圧力175MPaで4回処理して透明性の高いゲル状のセルロース分散体を得た。記述の方法で評価したセルロースの平均粒子径は0.24μm,セルロース粒子のセルロースI型結晶成分およびセルロースII型成分の分率は、それぞれ、0.03および0.16であった。このセルロース微粒子の透明な水分散体をJ1とする。
【0033】
【実施例1及び比較例1】
<水性ボールペン用インク>
水性ボールペン用インクとして以下の組成の水性エマルジョン型インク組成物を調製した。実施例1はセルロースとして上記セルロース分散体を用いた。なお、数値はエマルジョン全体に対する重量%で示す。
着色剤: カーボンブラック 10.0
油性原料: シリコン油 30.0
セルロース:分散体J1として供給 0.5(固形分)
その他、添加剤等:
ポリエチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
安息香酸ナトリウム 0.8
水:残余
セルロース、ポリエチレングリコール、グリセリン、安息香酸ナトリウム及び水をホモジナイザーで事前分散した後、カーボンブラック及びシリコン油を添加し、10000rpmにて10分間乳化操作して、水性エマルジョン型インクを得た。
【0034】
また、比較例1としてセルロースの代わりにポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン系界面活性剤)を1.0重量%用いた以外は実施例1と同様にして水性エマルジョン型インク組成物を得た。
実施例1及び比較例1の水性エマルジョン型インク組成物を水性ボールペンに充填し以下のテストを行った。
(1)耐キャップオフ性能試験
各水性ボールペン5本を用いて、キャップをはずした状態で室温(20〜27℃)、湿度55〜75%RHの 条件下に横置き、10日間放置後、紙面に筆記して、筆記できる(インキが筆記先端部から流出する。)ようになるまでに何回の空筆記を要するかを調べた。
(2)筆記感
各水性ボールペン5本ずつを紙面に筆記し、その筆記感を調べた。
(3)筆跡の滲み
上記筆記感を調べた紙面の筆跡の滲み具合を目視により調べた。
(4)筆跡の裏抜け
上記筆記感を調べた紙面の裏側の、インキの裏抜けの度合いを目視により調べた。また、実施例1、比較例1の水性エマルジョン型インク組成物をガラス製透明サンプル瓶に入れ、以下の保存安定性テストを実施した。
(5)インクの熱安定性
乳化処理により水性エマルジョン型インク組成物を調製した後、雰囲気温度60℃にて14日間放置後、同様に乳化状態の変化を目視により判定した。
(1)〜(5)のテスト結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
テスト結果の評価の記号の内容は以下のとおり。
(1)耐キャップオフ性
◎:5本すべて即筆記可能となる。
○:5本のうち少なくとも1本が、1行(連続丸書き約15cm、以下同じ)以内で筆記可能となる。
△:5本のうち少なくとも1本が、1行以上3行以内で筆記可能となる。
×:5本のうち少なくとも1本が、筆記できるまでに3行以上の空筆記を要する。
(2)筆記感
○:滑らかに筆記できる。
△:滑らかさに欠けるが筆記できる程度である。
×:滑らかでなく、ざらついた筆感を有する。
(3) 筆跡の滲み
○:筆跡は滲まない。
△:若干滲む
×:滲みがひどい。
(4)筆跡の裏抜け
○:紙面の裏側から筆跡が視覚されない。
△:若干、紙面の裏側から筆跡が視覚される。−
×:紙面の裏側から筆跡が判読される。
(5)インクの熱安定性
○:変化なし。
△:一部に油水分離が見られる。
×:明らかに油水分離が見られる。
以上のごとく、本発明の水性エマルジョン型インク組成物を使用することにより、汎用の非イオン性界面活性剤配合エマルジョンインクと比較して、耐キャップオフ性、筆記感、筆跡の滲み、筆跡の裏抜け、熱安定性のいずれもが優れていた。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、熱安定性に優れ、紙等への定着性に優れた水性エマルジョン型インク組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】広角X線回折図におけるセルロースI型結晶成分の分率χIおよびII型結晶成分の分率χIIの求め方の説明図である。
Claims (2)
- セルロースを乳化剤または乳化助剤として0.02〜6.0重量%含み、これと着色剤、油性原料を30〜50重量%及び水を必須成分とする水性エマルジョン型インク組成物。
- セルロースが平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の水性エマルジョン型インク組成物。
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