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JP5130337B2 - 多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器及び多孔質シリカ板体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器及び多孔質シリカ板体並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリコン融液を凝固して多結晶シリコンインゴットを製造するための角形(角槽型)シリカ容器に関する。
太陽電池(ソーラー発電デバイス)は近年、急速に需要が増加しており、より低コストで高い変換効率を有する太陽電池が求められている。
太陽電池の光起電部を構成する材料の一つとして多結晶シリコンがある。多結晶シリコンは、シリコン融液を冷却して凝固させることにより、多結晶シリコンのインゴット(塊)として製造されることが多い。シリコン融液を凝固して多結晶シリコンインゴットを製造するための容器として、シリカ(二酸化珪素)製容器や黒鉛製容器が用いられている。
容器内で凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造するための容器においては、シリコン融液が凝固した際に多結晶シリコンインゴットが該容器と融着(付着)することを防止するため、その内表面に予め離型層を形成することが知られている。離型層を形成するための離型剤としては、様々な材料が使用されている。例えば、特許文献1には、石英ガラスからなるシリコン溶融用容器の内層に、Si、Si、Si+SiO又はSi+Si+SiOを含む離型剤スラリーから、離型層を形成するとすることが記載されている。また、特許文献2には、内面に窒化珪素を含有する離型材層を形成した、二酸化珪素よりなるシリコン鋳造用鋳型が記載されている。
また、多結晶シリコンインゴットを製造する際に、できるだけ結晶方向性が揃った多結晶シリコンインゴットを製造することが求められている。例えば、特許文献3には、ルツボ内の底面に、3C−SiC等の種結晶を配置するための複数の溝又は円錐若しくは角錐の窪み部が形成されている多結晶半導体製造用ルツボが記載されている。特許文献3にはさらに、その溝の側面と垂直な面とのなす角、あるいは円錐若しくは角錐の窪み部の側面と中心線とのなす角を50〜70°に形成することが記載されている。
特開2005−271058号公報 特開2005−125380号公報 特開2006−219336号公報
前述のように、容器内でシリコン融液を凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造するための容器には、その内表面に予め離型層を形成することが一般的である。しかしながら、離型剤として、多結晶シリコンインゴットに不純物となるような材料を用いた場合には、離型層が剥離してシリコン融液に取り込まれる等の理由により、多結晶シリコンインゴットへの不純物混入が不可避であるという問題があった。
その一方で、離型剤を使用しないとすると、シリコン融液が凝固した際に多結晶シリコンインゴットが該容器と融着し、冷却時、取り外し時等に多結晶シリコンインゴットの表面部分が破損するという問題があった。この結果として、例えば、多結晶シリコンインゴットから太陽電池を製造するような場合には、製造する太陽電池の品質の劣化や、歩留まりの低下により、製造する太陽電池のコスト高につながってしまう。
また、特許文献3のように、底面に溝や窪みが形成されたルツボ内でシリコン融液を凝固させた場合、離型性が悪いことがあった。
また、より多くの受光面積を得るため、太陽電池も大型化させる必要があり、より大きな多結晶シリコンインゴットを得るためには、シリコン融液を収容するシリカ容器も大型化しなければならない。このような大きなシリカ容器の製造には、大型の装置が必要となり、容器製造コストの著しい増大をもたらす。
本発明はこれらのような問題に鑑みてなされたもので、シリコン融液及び多結晶シリコンインゴットへの不純物汚染を十分に防止することができる能力を有し、かつ、離型性に優れるとともに、できるだけ結晶粒の大きさ及び結晶軸方位が揃った多結晶シリコンインゴットを製造することができる、きわめて低コストの多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器を構成する多孔質シリカ板体及びその製造方法を提供することをも目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、シリコン融液を凝固して多結晶シリコンインゴットを製造するための角形シリカ容器であって、多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を組み合わせて構成されたものであり、少なくとも前記角形シリカ容器の側部をなす前記多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度が、前記角形シリカ容器の内表面部分よりも外表面部分において高く、前記角形シリカ容器の底部をなす前記多孔質シリカ板体の内表面部分は、溝又は穴を所定間隔で複数有しており、前記溝又は穴の側面の少なくとも一部が、鉛直方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器を提供する。
このようなシリカ容器であれば、少なくとも容器側部をなす多孔質シリカ板体の内表面部分のかさ密度を外表面部のかさ密度よりも低くすることにより、収容したシリコン(シリコン融液及び多結晶シリコンインゴット)への不純物汚染を抑制しながらも、容器自体の強度を保ちつつ、離型性に優れた、低コストの多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器とすることができる。また、容器底部をなす多孔質シリカ板体の溝又は穴の存在により、容器内でシリコン融液から凝固する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。しかも、このようなシリカ容器は、板体を組み合わせたものなので、一体物に比べ容器製造コストを著しく低減できる。
この場合、前記多孔質シリカ板体のかさ密度が1.60〜2.20g/cmであり、少なくとも前記角形シリカ容器の側部をなす前記多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度が、内外それぞれの表面から深さ3mmまでにおけるかさ密度について0.05g/cm以上の差を有することが好ましい。
このように、多孔質シリカ板体のかさ密度を1.60〜2.20g/cmとし、少なくとも角形シリカ容器の側部をなす多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度を、内外それぞれの表面から深さ3mmまでにおけるかさ密度について0.05g/cm以上の差を有することとすれば、容器の内表面部分の強度を低下させすぎずに、離型性を向上させることができる。
また、前記角形シリカ容器の内表面部分の少なくとも一部に、前記多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤が含有されているものであることが好ましい。この場合、前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、前記角形シリカ容器の内表面から深さ2mmまでにおいて、各元素の合計値として50〜5000wt.ppmの濃度で添加されているものであることが好ましい。また、前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、各元素の合計値として50〜5000μg/cmの濃度で塗布されているものであることも好ましい。
このように、角形シリカ容器の内表面部分の少なくとも一部に、多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤が含有されているものとすれば、より効果的に離型性を高くすることができるとともに、収容したシリコンへの不純物汚染を十分に防止することができる。また、離型促進剤としてのCa、Sr、Baの濃度が上記のようなものであれば、さらに効果的である。
また、本発明は、多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体であって、かさ密度が1.60〜2.20g/cmであり、両平行平面の少なくとも一方の表面部分の一部は、溝又は穴を所定間隔で複数有しており、前記溝又は穴の側面の少なくとも一部が、前記表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることを特徴とする多孔質シリカ板体を提供する。
このような多孔質シリカ板体であれば、板体を組み合わせて構成される角形シリカ容器のうち、底部をなす板体とすることができる。そのようにして構成された角形シリカ容器は、溝又は穴の存在により、容器内でシリコン融液から凝固する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。
この場合、前記溝又は穴の形状が、溝の場合はV形であり、穴の場合は円錐形又は角錐形であることが好ましい。また、前記溝又は穴の側面には、一部表面と垂直の方向に沿う垂直壁が存在することが好ましい。
板体の溝又は穴をこのような形状とすれば、この板体を組み込んで構成した角形シリカ容器を用いて製造する多結晶シリコンインゴットの結晶粒の大きさ及び結晶軸方位をより整わせやすくできる。
また、前記溝又は穴の開口部の寸法が、溝の場合は幅が5〜20mmであり、穴の場合は最小長さが5〜20mmであることが好ましい。
このような溝又は穴の開口部の寸法とすれば、板体を組み込んで構成した角形シリカ容器を用いて製造する多結晶シリコンインゴットの結晶粒の大きさ及び結晶軸方位をより整わせやすいものとなる。ここで、穴の開口部の最小長さとは、開口部の形状に接する最小幅の平行線の間隔のことである。
また、前記溝又は穴が形成された表面部分の一部に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤が含有されていることが好ましい。この場合、前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、前記表面から深さ2mmまでにおいて、各元素の合計値として50〜5000wt.ppmの濃度で添加されているものであることが好ましい。また、前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、各元素の合計値として50〜5000μg/cmの濃度で塗布されているものであることも好ましい。
このように、板体の溝又は穴が形成された表面部分の一部に多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤が含有されているものとすれば、この板体を組み込んで角形シリカ容器を構成した場合に、離型性を高くすることができるとともに収容したシリコンの不純物汚染を十分に防止することができる。また、離型促進剤としてのCa、Sr、Baの濃度が上記のようにすれば、さらに効果的である。
また、本発明は、多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を製造する方法であって、第一の原料粉として粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉を作製する工程と、第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する工程と、前記第一の原料粉と、前記第二の原料粉と、水とを含む混合スラリーを作製する工程と、前記混合スラリーを、型枠内で脱水及び乾燥し、両平行平面のうち一方の表面部分に溝又は穴を所定間隔で複数有する多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する仮成形工程と、前記仮成形体を、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で、前記溝又は穴を形成した面とは反対側の面から加熱して焼成し、多孔質シリカ板体とする焼成工程とを含むことを特徴とする多孔質シリカ板体の製造方法を提供する。
また、本発明は、多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を製造する方法であって、第一の原料粉として粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉を作製する工程と、第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する工程と、前記第一の原料粉と前記第二の原料粉と有機バインダーとを混合させ、混合粉を作製する工程と、前記混合粉を型枠内に導入し、50〜200℃に加熱して前記有機バインダーを溶融することにより、両平行平面のうち一方の表面部分に溝又は穴を所定間隔で複数有する多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する工程と、前記仮成形体を、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で、前記溝又は穴を形成した面とは反対側の面から加熱して焼成し、多孔質シリカ板体とする焼成工程とを含むことを特徴とする多孔質シリカ板体の製造方法を提供する。
このようにして製造した多孔質シリカ板体は、板体を組み合わせて構成される角形シリカ容器のうち、底部をなす板体とすることができる。そのようにして構成された角形シリカ容器は、溝又は穴の存在により、容器内でシリコン融液から凝固する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。
また、少なくとも前記仮成形工程の後に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤を、前記仮成形体の両平行平面のうち前記溝又は穴を形成した面の少なくとも一部に塗布し、乾燥させることによって前記離型促進剤を添加することにより、前記離型促進剤を含有させることが好ましい。また、少なくとも前記焼成工程の後に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤を、前記仮成形体の両平行平面のうち前記溝又は穴を形成した面の少なくとも一部に前記離型促進剤を塗布することにより、前記離型促進剤を含有させることも好ましい。
このようにして離型促進剤の含有を行うことにより、効率的に多孔質シリカ板体に離型促進剤を含有させることができる。また、このように離型促進剤を含有させた多孔質シリカ板体を組み込んだ角形シリカ容器において、離型性を高くすることができる。
これらの場合、前記離型促進剤をCa、Sr、Baのいずれか1以上とすることが好ましい。
このように、離型促進剤をCa、Sr、Baのいずれか1以上とすれば、製造した多孔質シリカ板体を組み込んだ角形シリカ容器において、より効果的に離型性を高くすることができるとともに、シリコン融液及び多結晶シリコンインゴットへの不純物汚染を十分に防止することができる。
また、本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法では、前記混合スラリー又は前記混合粉を作製する前に、前記第二の原料粉から、前記第二の原料粉が集合してなる粒径5〜500μmの顆粒体を作製し、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記混合スラリー又は前記混合粉を作製することができる。
このように、第二の原料粉を顆粒体としてから混合スラリー又は混合粉を作製すれば、粒径が細かい第二の原料粉の取り扱いを簡便にすることができる。
また、本発明は、上記のいずれかの多孔質シリカ板体の製造方法によって製造した多孔質シリカ板体を底部に組み込んで角形シリカ容器とすることを特徴とする角形シリカ容器の製造方法を提供する。
このように、上記のいずれかの多孔質シリカ板体の製造方法によって製造した多孔質シリカ板体を底部に組み込んだ角形シリカ容器であれば、溝又は穴の存在により、容器内でシリコン融液から凝固する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。また、このようなシリカ容器は、板体を組み合わせたものなので、一体物に比べ容器製造コストを著しく低減できる。
本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器は、収容したシリコン(シリコン融液及び多結晶シリコンインゴット)への不純物汚染を抑制しながらも、容器自体の強度を保ちつつ、離型性に優れた多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器とすることができる。また、本発明に係るシリカ容器は、板体を組み合わせたものなので、一体物に比べ容器製造コストを著しく低減できる。また、容器内でシリコン融液から凝固する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。
また、本発明に係る多孔質シリカ板体であれば、そのような多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器の底部をなす多孔質シリカ板体とすることができる。
また、本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法に従えば、そのようなシリカ板材を安価に製造することができる。
こうして、本発明により、高品質で低コストの角形の多結晶シリコンインゴットを提供することができ、これは特に太陽電池用としてきわめて好適である。
本発明に係る角形シリカ容器の一例を示す図であり、(a)は概略上面図であり、(b)は概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の他の一例を示す図であり、(a)は概略上面図であり、(b)は概略断面図である。 本発明に係る多孔質シリカ板体の形状の一例を示す斜視図である。 本発明に係る角形シリカ容器の設置例を示す図であり、(a)は概略上面図であり、(b)は概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体の形状の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体の形状の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体の形状の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体の形状の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体に形成する溝又は穴の断面形状の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体に形成する溝又は穴の断面形状の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体に形成する溝又は穴の断面形状の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器の底部をなす板体に形成する溝又は穴の断面形状の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る角形シリカ容器のさらに他の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法の一例の概略を示すフローチャートである。 本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法の別の一例の概略を示すフローチャートである。 本発明に係る多孔質シリカ板体の焼成を行う焼成炉の一例を示す概念図である。 本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器に具備することができる板材の貫通孔の形状を示す概略図である。 底部板体に形成された溝又は穴からの結晶成長の様子を模式的に示した説明図である。 本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器により多結晶シリコンインゴットを成長させた様子を模式的に示す断面図である。
本発明では、例えば太陽電池用として好適な角形の多結晶シリコンインゴットを得ることができる、多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器について、以下のようなことを課題とした。
第一に、優れた離型性を有する角形シリカ容器とすることである(離型性の向上)。これはすなわち、角形シリカ容器内に収容したシリコン融液の凝固により多結晶シリコンインゴットを製造した際に、多結晶シリコンインゴットの角形シリカ容器への融着(付着)を抑制し、特に、多結晶シリコンインゴットを角形シリカ容器から取り外しやすいものとすることである。
第二に、不純物汚染を防止できる角形シリカ容器とすることである。これはすなわち、角形シリカ容器に含有されている各種不純物金属元素が、多結晶シリコン製造時の高温度下においても、収容したシリコン(シリコン融液及び多結晶シリコンインゴット等)へ移動、拡散することを抑制することであり、その結果、シリコン融液及び多結晶シリコンインゴットへの不純物汚染を十分に防止することである。特に、離型剤そのものによる不純物汚染を防止する必要がある。
第三に、できるだけ結晶粒の大きさ及び結晶軸方位が揃った多結晶シリコンインゴットを製造できる容器とすることである。すなわち、製造する多結晶シリコンインゴットの結晶品質を向上させることである。
第四に、上記の優れた離型性、不純物汚染の防止、及び製造する多結晶シリコンインゴットの結晶品質の向上を低コストで実現することである。これはすなわち、角形シリカ容器の製造のために、部品コストを低減し、また、安価なシリカ原料を使用することができるようにし、シリカ原料の溶融、焼結温度を比較的低温度下で行い、角形シリカ容器の製造の際のエネルギー消費を少なくすることである。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器の一例の概略を示した。図1(a)は概略上面図であり、図1(b)は概略断面図である。
図1(a)及び図1(b)に図示したように、本発明に係るシリカ容器10の形状は角形(角槽型とも呼ばれる)である。角形シリカ容器10は、側部(側壁部ともいう)と底部とからなり、平行平板状の多孔質シリカ板体を組み合わされて構成される。具体的には、図1(a)及び図1(b)に示したように、4つの側部及び1つの底部が、それぞれ、側部をなす多孔質シリカ板体(本明細書中では、「側部板体」ともいう)11及び底部をなす多孔質シリカ板体(本明細書中では、「底部板体」ともいう)21がそれぞれ平行平板状の多孔質シリカ板体からなり、本発明に係る角形シリカ容器10は、これらを組み合わせて構成される。
本発明に係る角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体の組み合わせ方法は特に限定されないが、組み合わせた際に内側に倒れてこないようにすることが好ましい。例えば、図1に示したように、平行平板状の多孔質シリカ板体の各々の組み合わせ部分を斜面として、該斜面同士を向かい合わせるようにして組み合わせることができる(すり合わせ(すりガラス接合)タイプ)。
図2には、本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器の別の一例の概略を示した。図2(a)は概略上面図であり、図2(b)は概略断面図である。図2に示したように、平行平板状の多孔質シリカ板体の各々の組み合わせ部分を嵌合可能に形成し、組み合わせることもできる(嵌め合わせタイプ)。
上記のように、本発明に係る多孔質シリカ板体は平行平板状であるが、本発明の説明において、平行平板状とは平板状の形状の表面のうち、面積の大きい2つの平らな表面が略平行であることを意味する。ただし、後述のように、板体の表面上に穴又は溝が形成されていることもあり、本発明の説明においては、平行平板状とは、そのような穴又は溝が形成された形状を含む。また、平板状の形状の周縁部において組み合わせのための形状が作り込まれていてもよい。
図3(a)〜図3(c)には、側部板体11の形状の例を示した。
本発明に係る多孔質シリカ板体は、図3(a)のような形状、すなわち、角形シリカ容器10を組み立てた際に内表面12となる表面及び角形シリカ容器10を組み立てた際に外表面13となる表面が略平行の形状である。その他、上記のように、平板状の形状の周縁部において組み合わせのための形状が作り込まれていてもよい。図3(b)に示した側部板体11の形状は、図1(a)及び(b)のものに相当し、図3(c)に示した側部板体11の形状は、図2(a)及び(b)のものに相当する。
このように、多孔質シリカ板体が組み合わされて構成された、本発明に係る角形シリカ容器10は、シリコン融液を凝固して角形の多結晶シリコンインゴットを製造するための容器である。したがって、容器全体を一体的に製造する場合に比べ、著しく製造コストを低減できる。また、製造される多結晶シリコンインゴットが角形であれば、これをスライスして角形の多結晶シリコンウエーハを得ることができ、円柱状の多結晶シリコンインゴットをスライスしたウエーハを太陽電池とする場合に比較して受光面積の無駄がなく、きわめて好適である。
本発明に係る角形シリカ容器10は、さらに、少なくとも角形シリカ容器の側部をなす多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度が、角形シリカ容器の内表面部分よりも外表面部分において高い。すなわち、側部板体11は、側部内表面12に相当する表面部よりも側部外表面13に相当する表面部の方がかさ密度が高い。
さらに、本発明に係る角形シリカ容器10は、図1(b)及び図2(b)に図示したように、角形シリカ容器の底部板体21の内表面部分に、溝又は穴31を所定間隔で複数有している。図1(a)及び図2(a)においては、図の見やすさのため、角形シリカ容器の底部板体21の溝又は穴を省略している。この溝又は穴31の側面の少なくとも一部は、鉛直方向(底部板体21の表面と垂直の方向)に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されている。
なお、本発明の説明において、多孔質シリカ板体を組み立てて角形シリカ容器とした場合の、角形シリカ容器の内表面に相当する面を、単に「多孔質シリカ板体の内表面」のように表現することがある。同様に、多孔質シリカ板体を組み立てて角形シリカ容器とした場合の、角形シリカ容器の外表面に相当する面を単に「多孔質シリカ板体の外表面」と表現することもできる。
離型性向上のために、角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体のうち、側部板体11のかさ密度を上記のようにし、内表面部分の気泡量を多くする(すなわち、気孔率を増大させる)。このように気泡量を多くすることにより、シリコン融液が凝固した際の多結晶シリコンインゴットの角形シリカ容器10との融着(付着)を抑制し、角形シリカ容器10から、多結晶シリコンインゴットを破損することなく取り外しやすくなる。また、外側のかさ密度は高いので、容器の強度を十分に保つことができる。
角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体のうち、また、底部板体21についても、底部内表面22に相当する表面部よりも底部外表面23に相当する表面部の方がかさ密度が高くなるようにすれば、より離型性を向上させることができるので好ましい。ただし、後述する種結晶の成長を良好に促進させるためには、種結晶成長用の溝や穴の表面粗さを小さくして、滑らかな表面とする方が好ましい場合もある。そのような場合には、底部板体21のみ内側部分のかさ密度の方を高く設定することも可能であるし、底部板体21の内外表面部分のかさ密度を同程度としてもよい。
さらに、角形シリカ容器10を構成する各多孔質シリカ板体のかさ密度が1.60〜2.20g/cmであり、角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体のうち、少なくとも側部板体11の両平行平面の表面部分のかさ密度が、内外それぞれの表面から深さ3mmまでにおけるかさ密度について0.05g/cm以上の差を有することが好ましい。このようにすれば、容器の内表面部分の強度を低下させすぎずに、離型性を向上させることができる。
なお、多孔質シリカ板体のかさ密度は1.70〜2.00g/cmの範囲とすることがさらに好ましい。また、側部板体11の両平行平面の表面部分のかさ密度の差は、0.1g/cm以上とすることがさらに好ましい。
また、角形シリカ容器10の側部板体11の、容器内表面部分のかさ密度は、1.60〜1.90g/cmとすることが好ましく、1.65〜1.85g/cmとすることが更に好ましい。容器内側部分のかさ密度が1.90g/cm以下の値であれば、多結晶シリコンインゴットと角形シリカ容器10の融着が強くなりすぎることがなく、離型性を十分に持たせることができる。一方、かさ密度1.60g/cm以上の値であれば、離型性をより向上させることができ、容器内側部分の強度が低下しすぎることもない。
前述のように、本発明に係る角形シリカ容器の底部板体の内表面部分は、溝又は穴を所定間隔で複数有している。この溝又は穴の側面の少なくとも一部は、底部板体の表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されている。本発明に係る角形シリカ容器10の底部板体21の溝又は穴について、図5から図12までを参照してより詳しく説明する。
図5に本発明に係る角形シリカ容器10の底部をなす多孔質シリカ板体(底部板体21)の形状の一例として、底部板体21に溝が形成されている場合の概略を示した。図5(a)は底部板体21の上面図であり、図5(b)は底部板体21の断面図である。符号22は底部板体21の内表面を示している。図5(a)及び図5(b)には、底部板体21の内表面部分に、溝31aが形成されている場合を示した。この場合、溝31aの側面の少なくとも一部が、底部板体21の表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることが必要である。このような溝31aの存在により、本発明に係る角形シリカ容器を用いて、シリコン融液から凝固して多結晶シリコンインゴットを製造する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。
さらには、溝31aの形状がV形であること、すなわちV型溝であることが好ましい。
また、溝31aの側面には、一部表面と垂直の方向に沿う垂直壁が存在することが好ましい。垂直壁の深さ(表面と垂直の方向の長さ)は、3〜20mmとすることがより好ましい。また、溝31aの幅は、5〜20mmであることが好ましい。
このように溝31aを設計すると、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさ及び各結晶粒の結晶軸方位をより確実に揃えることができる。
図6〜図8にはそれぞれ、本発明に係る角形シリカ容器を構成する底部板体21の形状の一例として、底部板体21に穴が形成されている場合の概略を示した。図6(a)、図7(a)、図8(a)はそれぞれ底部板体21の上面図であり、図6(b)、図7(b)、図8(b)はそれぞれ底部板体21の断面図である。符号22は底部板体21の内表面を示している。
図6(a)及び図6(b)には、底部板体21の内表面部分に角錐形の穴31bが形成されている場合を示した。
図7(a)及び図7(b)には、底部板体21の内表面部分に円錐形の穴31cが形成されている場合を示した。
図8(a)及び図8(b)には、底部板体21の内表面部分に円錐形の穴31dが密集して形成されている場合を示した。
底部板体21に形成する穴は、図9〜図12に図示したような角錐形又は円錐形にすることが好ましいが、これらに限られるものではない。ただし、穴の側面の少なくとも一部が、底部板体21の表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることが必要である。なお、穴の形状としての上記角錐形や円錐形も幾何学的に正確な形状には限定されず、開口部の形状が楕円である等、類似するものでも構わない。また、角錐形も図6に示した四角錐に限らず、任意の多角錐でもよい。
穴の側面には、一部表面と垂直の方向に沿う垂直壁が存在することが好ましい。垂直壁の深さ(表面と垂直の方向の長さ)は、3〜20mmとすることがより好ましい。
穴の開口部の寸法は、最小長さが5〜20mmであることが好ましい。ここで、穴の開口部の最小長さとは、開口部の形状に接する最小幅の平行線の間隔のことである。例えば、図6で示したような四角錐形の穴31bの場合、開口部は正方形であり、開口部の最小長さは一辺の長さである。また、図7、図8で示したような円錐形の穴31c、31dの場合、開口部は円であり、開口部の最小長さは直径である。
これらのような穴の存在により、本発明に係る角形シリカ容器を用いて、シリコン融液から凝固して多結晶シリコンインゴットを製造する際に、多結晶シリコンインゴットの各結晶粒の大きさを適度に整わせ、また各結晶粒の結晶軸方位を一定方向に整わせることができる。
本発明に係る角形シリカ容器10の底部をなす板体(底部板体)21に形成される溝又は穴は、所定間隔で形成される。ここでいう間隔とは、溝又は穴の最深部等、代表する位置の間隔のことである。例えば図8に示したように、隣り合う溝又は穴の開口部同士が接するように形成されていてもよい。
図9から図12に、本発明に係る角形シリカ容器10の底部をなす板体(底部板体)21に形成する溝又は穴の断面形状の概略断面図を示した。
前述のように、本発明に係る角形シリカ容器を構成する底部板体21に形成される溝又は穴31は、溝又は穴の側面の少なくとも一部が、表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面32で形成されることが必要である。すなわち、斜面32は、鉛直方向となす角度(交差角度θ)が15〜60°である。ここで、斜面32の鉛直方向に対してなす角度とは、図9から図12に図示したように、斜面32の断面形状が鉛直方向に対してなす角度のことである。
なお、斜面32の鉛直方向に対する角度は、30°以上50°未満であることがより好ましい。
また、前述のように、溝又は穴31には垂直壁33が存在することが好ましい(図10及び図12参照)。また、図11及び図12に示したように、平底34が存在していてもよい。
また、図4に本発明に係る角形シリカ容器10の設置例を示した。図4(a)は概略上面図であり、図4(b)は概略断面図である。
図4に示したように、角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体は、カーボン製等のサセプタ80により固定することができる。
本発明では、角形シリカ容器10の内表面部分の少なくとも一部、すなわち、多孔質シリカ板体の内表面部分の一部に、多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤が含有されていることが好ましい。
本発明に係る角形シリカ容器10に用いる離型促進剤としては、以下の3種類のタイプが使用できる。
第一に、再結晶タイプ、すなわち、シリカ容器10の内表面部を微細に再結晶させることにより、離型性を向上させるものである。本発明に特に好適なものとして、具体的には、アルカリ土類金属元素Ba、Ca、Srを挙げることができ、このうち、Baが最も好ましい。この他に、ムライト3Al・2SiO〜2Al・SiO、スピネルMgAl等を挙げることができる。
第二に、発泡タイプ、すなわち、例えば1400℃以上のような高温下で、シリカと反応してシリカが発泡することにより、離型性を向上させるものである。具体的には炭化珪素SiC、窒化珪素Si等を挙げることができる。
第三に、非反応タイプ、すなわち、例えば1400℃以上のような高温下で、シリカともシリコンとも反応しないことで離型性を向上させるものである。具体的には、炭素C、ジルコニアZrO、ベリリアBeO、マグネシアMgO、カルシアCaO、トリアThO、タングステンW等を挙げることができる。
これら離型促進剤の3種類のタイプのうち、再結晶タイプを用いることが本発明において最も好ましい。この場合、Ca、Sr、Baのうち1以上が、角形シリカ容器10の内表面部分の少なくとも一部、すなわち、多孔質シリカ板体の内表面部分の一部に、内表面から深さ2mmまでにおいて、各元素の合計値として50〜5000wt.ppmの濃度で添加されているものであることが好ましい。50wt.ppm以上であれば離型性の向上が認められ、5000wt.ppm以下であれば、十分な離型性が認められつつ、かつ多結晶シリコンインゴットを離型剤で汚染することもなくなるために好ましい。各元素の合計値が300〜3000wt.ppmの範囲がより好ましい。また、離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、角形シリカ容器10の内表面部分の少なくとも一部に、各元素の合計値として50〜5000μg/cmの濃度で塗布されているものであることも好ましい。50μg/cm以上であれば離型性の向上が認められ、5000μg/cm以下であれば、十分な離型性が認められつつ、かつ多結晶シリコンインゴットを離型剤で汚染することもなくなるために好ましい。各元素の合計値が300〜3000μg/cmの範囲がより好ましい。
再結晶タイプ、特にCa、Sr、Baを、このように角形シリカ容器10の内表面部分に含有させることにより、シリコン融液を角形シリカ容器10に収容し、徐々に冷却して凝固させ、多結晶シリコンインゴットとする製造過程において、該角形シリカ容器10の内表面層がシリカガラスからクリストバライトやオパール等の微結晶相に転移し、マイクロクラックの生成を引き起こすことができる。その結果、冷却、凝固された多結晶シリコンインゴットと角形シリカ容器10の内表面との融着を少なくすることができるため、角形シリカ容器10から多結晶シリコンインゴットを取り外す際、多結晶シリコンインゴットを破損したり、多結晶シリコンインゴットの表面部分に凹凸の形成や進行性クラックを発生させたりすることなく取り外すことが可能となる。
Li、Na、K等のアルカリ金属元素に比較して、アルカリ土類金属元素Ca、Sr、Baは、偏析係数との相関関係で、融液からの凝固により製造された多結晶シリコンインゴットへの取り込みが少なく、すなわち多結晶シリコンインゴットへの工程汚染を少なくすることができる。特にBaは多結晶シリコンインゴットへの拡散汚染が少ない点から離型促進剤として最も好ましい。
角形シリカ容器10の内表面部分のうち、離型促進剤を含有させる範囲は、上記のように角形シリカ容器10の内表面部分の少なくとも一部であればよいが、角形シリカ容器10のうち、シリコン融液を収容及び凝固する高さまでの内表面部分全体とすることがより好ましく、角形シリカ容器10の内表面部分全体とすることがさらに好ましい。
また、角形シリカ容器10は、そのAl濃度(Al元素濃度)が5〜500wt.ppmであり、OH基濃度が5〜500wt.ppmであることが好ましい。不純物汚染防止のため、角形シリカ容器10にAl元素と同時にOH基を含有させることが好ましい。Al濃度は10〜100wt.ppmとすることがさらに好ましく、OH基濃度は30〜300wt.ppmとすることがさらに好ましい。
これらAl、OH基が、多孔質シリカ板体中の不純物金属元素、特に、光照射下における多結晶シリコンのキャリアライフタイムを低下させたり、多結晶シリコンインゴットを太陽電池材料とした場合に、変換効率を低下させると考えられるLi、Na、K等のアルカリ金属元素やTi、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Au等の遷移金属元素のシリカ中の移動、拡散を防止する。そのメカニズムの詳細は不明であるが、Al原子はSi原子と置換することにより、その配位数の違いから、不純物金属元素の陽イオン(カチオン)を取り込み、シリカガラスネットワーク中の電荷バランスを保つという作用から、吸着、拡散防止するものと推定される。また、OH基は、水素イオンと不純物金属イオンが置換することにより、これら不純物金属元素を吸着ないし拡散防止する効果が生ずるものと推定される。
Alの濃度が5wt.ppm以上であれば、十分な不純物汚染防止効果が認められる。一方、Alの濃度が500wt.ppm以下であれば、AlやAl自体による、製造する多結晶シリコンインゴットへの汚染を抑制することができる。
また、OH基の濃度が5wt.ppm以上であれば、十分な不純物汚染防止効果が認められる。一方、OH基の濃度が500wt.ppm以下であれば、多孔質シリカ板体の高温度下での粘性度が低下しすぎることもない。OH基は、SiとOのシリカガラス網目構造すなわちガラスネットワークの終端部(ネットワークターミネーター)となるものである。この理由により、OH基の高濃度の含有は、高温度下における多孔質シリカ板体の変形を引き起こしやすくするものと考えられる。
上記AlとOH基の不純物汚染防止効果はAl又はOH基のいずれか1種でもある程度は認められるが、この2種の組み合わせによって大幅に効果が向上する。このことにより、角形シリカ容器10を構成する多孔質シリカ板体の原料となるシリカ粉の純度が、SiO99.9〜99.999wt.%と比較的低純度であっても、本発明の目的により合致する角形シリカ容器10を製造することが可能となる。より具体的には、例えばシリカ原料粉の純度(SiOの純度)が99.99wt.%以上であり、Li、Na、Kの各々の濃度が5wt.ppm以下であり、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Auの各々の濃度が0.1wt.ppm以下である場合、AlとOH基を同時に適量含有させることにより、多結晶シリコンインゴットを、工程汚染を十分に防止して製造することが可能となる。このように工程汚染が十分に防止された多結晶シリコンインゴットでは各々の結晶粒の大きさがより均一に整っている。このような多結晶シリコンインゴットからソーラー発電デバイス(太陽電池)を製造すれば、その光電変換効率を大幅に高めることが可能となる。
本発明に係る角形シリカ容器のさらに別の実施形態の概略断面図を図13に示す。
この実施形態では、角形シリカ容器10を構成する底部板体21より高い位置に、丸形又は角形の貫通孔42が所定間隔で複数形成されている板材41が配置されている。
このような板材41の上面図を図17に示した。
貫通孔42は、図17(a)に示したように長方形とすることができる。この場合、貫通溝ということもできる。また、図17(b)のように配置することもできる。
また、貫通孔42は、図17(c)に示したように円形、図17(d)に示したように正方形とすることもできる。
これらの貫通孔42の側壁は垂直壁が好ましく、テーパー角度は付けない方が良い。
このような板材41の材質は耐熱性セラミックスも使用できるが、シリカガラス材が好ましい。ただしこの場合、必ずしも多孔質シリカからなるものに限定されず、例えば透明〜半透明なシリカガラス材も使用できる。
なお、角形シリカ容器10内を構成する底部板体21より高い位置に、板材41を配置するには、スペーサー51等を用いることができる。
このような板材41により、より結晶軸方位や結晶粒の大きさが揃った多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となる。
板材41を具備した角形シリカ容器10を用いて多結晶シリコンインゴットの製造を行う際の結晶成長の様子を図19に模式的に示した。見やすさのために、図19には底部板体21の溝又は穴や板材41の貫通孔については図示していない。板材41により、角形シリカ容器10を構成する底部板体21から成長する多結晶について、結晶成長方向を絞り込むことができるので、より結晶軸方位や結晶粒の大きさが揃った多結晶シリコンインゴットを製造することが可能となる。
このような板材41は、結晶成長方向を絞り込むという意味で、ネッキングプレートと呼ぶことができる。
以上説明したような多孔質シリカ板体を製造する方法を説明する。
まず、製造時の低コスト化のため、従来のような高純度シリカ原料粉(高純度水晶粉、高純度石英粉、超高純度合成シリカガラス粉)は必ずしも使用しないで、上記のように、シリカ純度SiO99.9〜99.999wt.%の比較的低純度のシリカ原料粉を使用することが好ましい。
また、従来のようなカーボン電極放電加熱溶融法(アーク溶融法)による超高温度下(推定温度は2000〜2300℃)での溶融処理ではなく、1方向からの加熱手段を有する炉内にて溶融処理を行う。処理温度は1200〜1500℃、好ましくは1300〜1400℃においてシリカ原料粉を焼結し多孔質シリカ板体を製造する。次いでそれら板体を組み合わせることによりシリカ容器を製造する。焼成時の雰囲気はNガス、Heガス、Arガス等の不活性ガスを主成分とし、Oガスを好ましくは1〜30vol.%混合したガス雰囲気とする。コストの点ではNガスを不活性ガスとするのが最も好ましい。
そのため、シリカ原料粉は低コストの結晶質天然石英粉のみではなく、例えば、非晶質シリカ粉(溶融天然石英ガラス粉、合成シリカガラス粉)と結晶質天然石英粉を混合して原料粉とする。また、シリカ原料粉の粒径を大きいもの、例えば、粒径0.03〜3mmの比較的大粒径の原料粉のみならず、高活性である粒径0.1〜10μmの微少粒径の合成シリカガラス原料の2種類とを混合して原料粉とするのが好ましい。
以下では、本発明に係る多孔質シリカ板体を製造する方法を、図面を参照してさらに具体的に説明する。
(I)第1の態様
本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法の一例(第1の態様、湿式法)の概略を図14に示した。
まず、図14の(a−1)に示したように、原料粉を作製する。具体的には、第一の原料粉として、粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉と、第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する。第一の原料粉と第二の原料粉はそれぞれ、後述する混合スラリーの作製前に調整すればよい。
このうち、第一の原料粉は、本発明に係る角形シリカ容器10(図1、2参照)を構成する多孔質シリカ板体の主な構成材料となるものである。第一の原料粉としては、低コスト化のため、従来のような高純度シリカ原料粉(高純度水晶粉、高純度石英粉、超高純度合成シリカガラス粉)を使用せず、シリカ純度SiO99.9〜99.999wt.%の比較的低純度のシリカ粉原料を使用することが好ましい。この第一の原料粉は例えば以下のようにして珪石塊を粉砕、整粒することにより作製することができるが、これに限定されない。
まず、直径10〜100mm程度の天然珪石塊(天然に産出する水晶、石英、珪石、珪質岩石、オパール石等)を大気雰囲気下、600〜1000℃の温度域にて1〜10時間程度加熱する。次いで該天然珪石塊を水中に投入し、急冷却後取出し、乾燥させる。この処理により、次のクラッシャー等による粉砕、整粒の処理を行いやすくできるが、この加熱急冷処理は行わずに粉砕処理へ進んでもよい。
次いで、該天然珪石塊をクラッシャー等により粉砕、整粒し、粒径を0.03〜3mm、好ましくは0.1〜1mmに調整して天然珪石粉を得る。
次いで、この天然珪石粉を、傾斜角度を有するシリカガラス製チューブから成るロータリーキルンの中に投入し、キルン内部を塩化水素(HCl)又は、塩素(Cl)ガス含有雰囲気とし、700〜1100℃にて1〜100時間程度加熱することにより高純度化処理を行う。ただし高純度を必要としない多結晶シリコンインゴット製造用途では、この高純度化処理を行わずに次処理へ進んでもよい。
以上のような工程後に得られる第一の原料粉は結晶質のシリカ粉である。コストの点からも、このような天然結晶質シリカ粉を、第一の原料粉とすることが好ましい。
第一の原料粉の粒径は、上記のように、0.03〜3mm、好ましくは0.1〜1mmとする。
第一の原料粉のシリカ純度は、99.9wt.%以上とすることが好ましく、99.99wt.%以上とすることがさらに好ましい。特に、Li、Na、Kの各々の濃度を5wt.ppm以下とし、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Auの各々の濃度を0.1wt.ppm以下とすることが好ましい。また、本発明に係る角形シリカ容器の製造方法であれば、第一の原料粉のシリカ純度を99.999wt.%以下と比較的低純度のものとしても、製造される角形シリカ容器は、シリコン融液や多結晶シリコンインゴットへの不純物汚染を十分に防止することができる。そのため、従来よりも低コストで多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器を製造することができることになる。
第一の原料粉としては、粒径が0.03〜3mmであればよく、非晶質溶融天然石英ガラス粉、合成シリカガラス粉等を上記の結晶質シリカ粉に代えて又は混合して使用してもよい。このようなガラス質のシリカ粉であれば、焼成温度を低下させることができるので、コスト面で有利になることもある。
第二の原料粉は、本発明に係る角形シリカ容器10の多孔質シリカ板体を第一の原料粉とともに構成する材料となるものである。
第二の原料粉として、粒径0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmのシリカガラス粉、好ましくは球状シリカガラスを作製する。球状シリカガラスの製法には湿式法のゾルゲル法(アルコキシド法)と乾式法の溶融法(溶射法)がある。又は、代わりの材料として四塩化珪素(SiCl)等のケイ素化合物原料の火炎加水分解法によるシリカガラス微粉体、いわゆるスート粉を作製する。この場合のスート粉の粒径は、上記と同様に0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmとする。
第二の原料粉のシリカ純度も、99.9wt.%以上とすることが好ましく、99.99wt.%以上とすることがさらに好ましい。特に、Li、Na、Kの各々の濃度を5wt.ppm以下とし、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Auの各々の濃度を0.1wt.ppm以下とすることが好ましい。上記のゾルゲル法、溶射法により製造したシリカガラス粉や、スート粉であれば、高純度のものを得やすいので好ましい。
第二の原料粉を作製した後、後述する混合スラリーを作製する前に、第二の原料粉から、第二の原料粉が集合してなる粒径5〜500μmの顆粒体を作製することができる。このように第二の原料粉を顆粒体とすることで、第二の原料粉の取り扱いが簡便になるので好ましい。
第二の原料粉を顆粒体とするには、例えば以下のような手順により行うことができる。
まず、第二の原料粉に、融点200℃以下の有機バインダー、例えばパラフィン系バインダー(融点40〜70℃)又はステアリン酸系バインダー(融点70〜150℃)を重量比率1〜10wt.%好ましくは2〜5wt.%混合し、1〜10/secのせん断速度における粘性値10〜100mPa・secとなるように純水を加え(水分率として10〜40%程度)、その後20〜30μmに設定されたメッシュフィルターにより異物を除去して顆粒体作製用のスラリー(懸濁液)を作製する。
この顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、バインダーコーティングされた顆粒体を作製する。混合スラリーの乾燥方法は特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)に投入してバインダーが表面にコーティングされている第二の原料粉の顆粒体を作製することができる。このスプレードライヤーは円柱状のホッパー型チャンバーと該チャンバーの上部に設置された顆粒体作製用混合スラリーを噴霧する装置(アトマイザー)と、該チャンバーの横に設置された熱風給気ダクトと該チャンバー下部に設置された顆粒体捕集口からなる。熱風給気ダクトから流出する空気温度は使用するバインダーの融点より高く設定する必要があり、100〜250℃の範囲に設定する。これにより作製される顆粒体は、バインダーが表面にコーティングされた第二の原料粉の集合体であり、粒径5〜500μmの範囲で所定の平均粒径に設定することが可能である。
以上のようにして第一の原料粉、第二の原料粉をそれぞれ作製する。本発明では、第一の原料粉、第二の原料粉、及び後述する、第一の原料粉と第二の原料粉と水とを混合した混合スラリーの少なくとも一つにAl元素を添加(ドーピング)する。このことにより、多孔質シリカ板体にAl元素を含有させることができる。これにより、上記したように、Li、Na、K等のアルカリ金属元素やTi、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Au等の遷移金属元素の多孔質シリカ板体中の移動、拡散を防止することができ、また、角形シリカ容器10の耐熱変形性を向上させることができる。
第一の原料粉及び第二の原料粉の少なくともいずれか一方にAl元素を添加するには、水やアルコールに可溶性のAl化合物溶液に原料粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。添加するAlの量は、製造後の角形シリカ容器10の多孔質シリカ板体中のAl濃度が5〜500wt.ppmとなるようにし、10〜100wt.ppmとなるようにすることが好ましい。
次に、図14の(a−2)に示したように、第一の原料粉と、第二の原料粉と、水とを含む混合スラリーを作製する。第二の原料粉は、上記のように顆粒体の状態で混合させて混合スラリーとすることもできる。
この混合スラリーの作製は、具体的には下記のように、(1)第一の原料粉と第二の原料粉の混合、(2)混合スラリーの作製、(3)スラリーの均質混合、(4)スラリーの真空脱ガス、等の各サブステップを経て行うことができるが、これに限定されるものではない。
(1)第一の原料粉と第二の原料粉の混合
まず、第一の原料粉を主原料とし、第二の原料粉を、好ましくは5wt.%〜50wt.%、より好ましくは10〜30wt.%の範囲で均一に混合する。ここでの原料粉の混合比率により、混合スラリーを作製する際の第一の原料粉と第二の原料粉との配合比が決まる。製造コストを低減させる目的からは、なるべく第一の原料粉の第二の原料粉に対する比率を高くする必要がある。第二の原料粉の混合比率が5wt.%以上であれば、成形、焼成後の多孔質シリカ板体の空隙が少なくなり、密度が十分に高く、その結果多孔質シリカ板体の寸法精度や耐熱性を向上させることができる。また、第二の原料粉の混合比率が50wt.%以下であれば、成形、焼成後の多孔質シリカ板体の空隙を十分確保でき、離型性をより高めることができる。混合手法としては、比較的量が少ない場合、V型ミキサーを用いることもできるが、この手法に限定されるわけではない。
(2)スラリー(混合水溶液)の作製
上記で作製した第一の原料粉と第二の原料粉との混合粉を、主原料として95〜80wt.%、純水を5〜20wt.%として混合スラリーとする。角形シリカ容器10作製中の不純物汚染には注意が必要であり、多孔質シリカ板体中のLi、Na、Kの各濃度が5wt.ppm以下となるように混合スラリーを作製することが好ましく、1wt.ppm以下とすることがさらに好ましい。
本発明では、上記のように第一の原料粉、第二の原料粉、及び混合スラリーの少なくとも一つにAl元素を添加することが好ましい。混合スラリーにAl元素を含有させるためには、水やアルコールに可溶性のAl化合物、例えば、微量の硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれかを、純水やアルコールに溶解混合することなどによって行うことができる。添加するAlの量は、製造後の角形シリカ容器10の多孔質シリカ板体中のAl濃度が5〜500wt.ppmとなるようにし、10〜100wt.ppmとなるようにすることが好ましい。
なお、混合スラリーとした状態でAl元素を添加する代わりに、混合スラリーを作製する前に、混合する前の水にAl元素を添加することにより、混合スラリーにAl元素を添加してもよい。
また、この混合スラリーには、さらに必要に応じて分散剤(例えばポリアクリル酸塩)、消泡剤(例えばポリエチレングリコール)、潤滑剤(例えばステアリン酸、ワックス)、結合剤(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリステレンアクリル系レジン、パラフィン系ワックス、エポキシレジン、メチルセルロース、エチルセルロース)等を適量混合することができる。
(3)スラリーの均質混合
円筒状シリカガラス容器及びシリカガラスボールから成るボールミルの中に混合スラリーを投入し1〜2時間混合する。作製された混合スラリーの密度(比重)は1.6〜2.1g/cm好ましくは1.7〜2.0g/cmとし、粘性度は1〜10/secのせん断速度において300〜3000mPa・secとすることが好ましい。
(4)スラリーの真空脱ガス
シリカガラスチャンバー内に混合スラリーを設置し、室温下にて10Pa以下の真空度で5〜30分間真空脱ガス処理を行う。ただし、この処理は製造された角形シリカ容器の用途によっては行わない場合もある。
このようにして混合スラリーを作製した後、図14の(a−3)に示したように、混合スラリーを型枠内に導入する。
次に、図14の(a−4)に示したように、混合スラリーを型枠内で脱水及び乾燥し、多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する(仮成形工程)。具体的には、型枠内に入った混合スラリーをクリーンオーブン内に入れ、室温から5〜20℃/時で昇温後、50〜200℃にて10〜100時間保持して、水分を蒸発させ乾燥させる(鋳込み成形)。このときの型としては、石膏等の多孔質セラミック製型や多孔質プラスチック製型を用いることができる。
底部板体については、以下のように仮成形工程を行う。
底部板体の仮成形体の両平行平面のうち一方に、種結晶の成長を良好に促進するための溝又は穴を形成する。底部板体の仮成形体に形成する溝又は穴は、焼成後の底部板体において、図5から図12までを参照して説明した、前述のような形状、間隔となるようにする。
この溝又は穴の形成は、例えば、型の形状自体を溝又は穴を形成するように構成することによって行うことができる。また、いったん仮成形体を作製してから、その後、表面を研削することにより溝又は穴を形成してもよい。
ここで、上記の種結晶の成長を良好に促進するための溝又は穴を形成した面の反対側の面が、焼成工程で加熱される面となる。
ただし、上記の溝又は穴を形成する面とは反対側の面にも別の目的で溝又は穴を形成してもよい。この溝又は穴は、焼成工程におけるソリ、曲がりやワレが発生しづらくするためのものであり、形状、間隔等は必要に応じて設定することができる。焼成工程での加熱面は、このような溝又は穴を形成した側の面となる。
一方、側部板体については、以下のように仮成形工程を行う。
底部板体の仮成形体とは異なり、種結晶の成長を良好に促進するための溝又は穴を形成する必要はない。ただし、仮成形体の両平行平面のうち一方に、焼成工程におけるソリ、曲がりやワレが発生しづらくするための溝又は穴を形成することが好ましい。
ここで溝又は穴を形成した面の側は、後述する焼成工程で加熱される面となる。
このようにして多孔質シリカ板体の仮成形体を作製した後、焼成して多孔質シリカ板体とする(焼成工程)のであるが、本発明では、多孔質シリカ板体の両平行平面のうち、シリカ容器10として組み立てた際に内表面となる表面部分の少なくとも一部に、多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤を含有させることが好ましい。この離型促進剤の含有は、仮成形工程の後に、離型促進剤を仮成形体の両平行平面のうち焼成工程において加熱される面とは反対側の面の少なくとも一部に塗布し、乾燥させることにより行うこともできるし、後述するように、焼成工程の後に、離型促進剤を多孔質シリカ板体の両平行平面のうち焼成工程において加熱された面とは反対側の面の少なくとも一部に離型促進剤を塗布することにより行うこともできる。離型促進剤の含有の具体的な方法は後述する。
仮成形工程の後、図14の(a−5)に示したように、多孔質シリカ板体の仮成形体を、焼成して多孔質シリカ板体とする(焼成工程)。この焼成工程は、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で行う。さらに、多孔質シリカ板体の仮成形体の両平行平面のうち一方の側から加熱して焼成し、該加熱した側の表面部分のかさ密度がその反対側の表面部分のかさ密度よりも高い多孔質シリカ板体とする。
この焼成工程には、例えば、図16に示したような一方向加熱電気炉等の焼成炉を用いることができる。
図16に示した一方向加熱電気炉401は、例えば、高純度アルミナボード等からなる上部保温材411及び下部保温材412、二珪化モリブデン等からなるヒーター421、吸気口431、排気口432、多孔質シリカ板体の仮成形体を搬送する耐熱性ベルトコンベアー441等を具備する。
この焼成炉を用いて多孔質シリカ板体の仮成形体の焼成を行うには、以下のようにする。まず、仮成形工程まで行った多孔質シリカ板体の仮成形体141を、耐熱性ベルトコンベアー441に載せ、一方向加熱電気炉401内に搬送する。次いで、吸気口431及び排気口432を用いて、炉内をN(窒素)ガス、He(ヘリウム)ガス、Ar(アルゴン)ガス等の不活性ガスを主成分とするO(酸素)ガス含有雰囲気とする。次いで、ヒーター421により、室温から1000℃に至るまで50℃/時〜500℃/時にて昇温し、仮成形体に含まれているバインダー等の有機物質を酸化、燃焼、除去する。次いで1000℃から1200〜1500℃に至るまでは、20℃/時〜200℃/時にて昇温し、引き続き1200〜1500℃好ましくは1250〜1350℃の範囲の所定温度にて、1〜10時間保持し、仮成形体中の第一の原料粉と、第二の原料粉を焼結させる。これらの加熱は、ヒーター421により、仮成形体の一方向から行われる。焼成雰囲気は、コストの点ではNガスを不活性ガスとするのが最も好ましい。
焼成工程におけるOガス含有量は、各種有機物(バインダー、分散剤、消泡剤、潤滑剤、結合剤等)を酸化除去する目的から1〜30vol.%が好ましい。Oガス含有量が1vol.%以上であれば、有機バインダーの除去をより効果的に行うことができる。また、Oガス含有量が30vol.%以下であれば、有機バインダー除去に十分であり、ヒーター材の消耗を低減したり、焼成のためのガスのコストも抑制することができ、工業上好ましい。
このとき、底部板体については、種結晶の成長を良好に促進するための溝又は穴を形成した面の反対側の面から加熱する。ソリ、曲がりやワレが発生しづらくするための溝又は穴を形成した場合には、該溝又は穴の側の面が加熱面となる。
一方、側部板体については、ソリ、曲がりやワレが発生しづらくするための溝又は穴を形成した場合には、溝又は穴を形成した面の側から加熱して焼成する。
このように、多孔質シリカ板体の仮成形体は連続的に一方向から加熱、焼成されるため、多孔質シリカ板体の焼成面(ヒーター側の面)はかさ密度が高くなり、反対面はかさ密度が低くなる。
焼成後、多孔質シリカ板体は耐熱性ベルトコンベアー441で炉外へ搬出され冷却される。
以上のようにして、多孔質シリカ板体を製造するのであるが、上記のように、本発明では、多孔質シリカ板体の両平行平面のうち、シリカ容器10として組み立てた際に内表面となる表面部分の少なくとも一部に、多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤を含有させることが好ましい。ただし、角形シリカ容器10に収容するシリコンへの汚染を極力避けたい場合等は離型促進剤を含有させなくともよい。
離型促進剤を含有させる具体的な方法として、まず、仮成形工程の後に、仮成形体の両平行平面のうち焼成工程において加熱される面とは反対側の面の少なくとも一部に離型促進剤を塗布し、乾燥させる。以下に離型促進剤を含有させる具体的な方法を例示して説明する。
例えば再結晶タイプのCa、Sr、Ba等のアルカリ土類金属元素の場合、水又はアルコールに溶解するこれら元素化合物である塩化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等を選出し、仮成形体の両平行平面のうち焼成工程において加熱される面とは反対側の面(底部板体においては、溝又は穴を形成した面)に対してスプレー方式、エアーブラシ方式、ローラー方式、又は刷毛塗り方式等により、塗布、乾燥させることにより添加処理を行うことができる。離型促進剤が添加処理された仮成形体は、焼成工程にて、不活性ガスを主成分とするOガス含有雰囲気にて、1200〜1500℃で焼成されることになる。焼成工程によりこれら離型促進剤は表面の少なくとも2mm厚に含有されることになる。含有濃度としてはCa、Sr、Baのアルカリ土類金属元素の合計値として50〜5000wt.ppmとすることが好ましく、100〜1000wt.ppmとすることがさらに好ましい。
離型促進剤を含有させる具体的な別の方法として、焼成工程の後に、多孔質シリカ板体の両平行平面のうち焼成工程において加熱された面とは反対側の面の少なくとも一部に離型促進剤を塗布することにより行う方法を説明する。
上記の焼成工程前の離型促進剤の添加の代わりに、焼成工程の後に、多孔質シリカ板体の少なくとも一部に塗布(コーティング)することにより離型促進剤を含有させることができる。Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属元素の少なくとも1種以上の化合物混合溶液を焼成後の多孔質シリカ板体の両平行平面のうち焼成工程において加熱された面とは反対側の面(底部板体においては、溝又は穴を形成した面)の少なくとも一部上にスプレー方式、エアーブラシ方式等により塗布、乾燥させることにより、塗布処理を行う。塗布濃度としては、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属元素合計値として50〜5000μg/cmとすることが好ましく、100〜1000μg/cmとすることがさらに好ましい。
OH基濃度の調整は、第一の原料粉の種類の選定、乾燥工程や焼結工程の雰囲気、温度、時間条件を変化させることによって行い、多孔質シリカ板体に5〜500wt.ppmの濃度で含有されるようにすることが好ましい。また、30〜300wt.ppmの範囲とすることがさらに好ましい。
(II)第2の態様
本発明に係る角形シリカ容器10の製造方法の別の一例(第2の態様、乾式法)の概略を図15に示した。
まず、図15の(b−1)に示したように、原料粉を作製する。具体的には、第一の原料粉として、粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉と、第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する。これらの原料粉は、第1の態様の際と同様にして作製することができる。
第二の原料粉を作製した後、後述する混合粉を作製する前に、第二の原料粉から、第二の原料粉が集合してなる粒径5〜500μmの顆粒体を作製することができることも、第1の態様と同様である。このように第二の原料粉を顆粒体とすることで、第二の原料粉の取り扱いが簡便になるので好ましい。
この実施態様(第2の態様)においては、第一の原料粉、第二の原料粉、及び後述する、第一の原料粉と第二の原料粉と有機バインダーとを混合した混合粉の少なくとも一つにAl元素を添加(ドーピング)することが好ましい。このことにより、多孔質シリカ板体にAl元素を含有させることができる。これにより、上記したように、Li、Na、K等のアルカリ金属元素やTi、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Au等の遷移金属元素の多孔質シリカ板体中の移動、拡散を防止することができ、また、角形シリカ容器10の耐熱変形性を向上させることができる。
第一の原料粉及び第二の原料粉の少なくともいずれか一方にAl元素を添加するには、水やアルコールに可溶性のAl化合物溶液に原料粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。添加するAlの量は、製造後の多孔質シリカ板体中のAl濃度が5〜500wt.ppmとなるようにすることが好ましく、10〜100wt.ppmとなるようにすることがさらに好ましい。
次に、図15の(b−2)に示したように、第一の原料粉と、第二の原料粉と、有機バインダーとを混合させ、混合粉を作製する。第二の原料粉は、上記のように顆粒体の状態で混合させて混合粉とすることもできる。
この混合は、有機バインダーを除いた比率として、第一の原料粉を主原料とし、第二の原料粉を、好ましくは5wt.%〜50wt.%、より好ましくは10〜30wt.%の範囲で均一に混合する。混合粉中の有機バインダーの比率は重量比率1〜10wt.%とすることが好ましい。
製造コストを低減させる目的からは、なるべく第一の原料粉の第二の原料粉に対する比率を高くする必要がある。第二の原料粉の混合比率が5wt.%以上であれば、成形、焼成後の多孔質シリカ板体の空隙が少なくなり、密度が十分に高く、その結果多孔質シリカ板体の寸法精度や耐熱性を向上させることができる。また、第二の原料粉の混合比率が50wt.%以下であれば、成形、焼成後の多孔質シリカ板体の空隙を十分確保でき、離型性をより高めることができる。混合手法としては、比較的量が少ない場合、V型ミキサーを用いることもできるが、この手法に限定されるわけではない。
上記のように、第一の原料粉及び第二の原料粉の少なくともいずれかにAl元素を添加する代わりに、又はそれに加えて、混合粉に対してAl元素を添加してもよい。この場合、水やアルコールに可溶性のAl化合物溶液に混合粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。添加するAlの量は、製造後の角形シリカ容器10の多孔質シリカ板体中のAl濃度が5〜500wt.ppmとなるようにし、10〜100wt.ppmとなるようにすることが好ましい。
次に、図15の(b−3)、(b−4)に示したように、混合粉を型枠内に導入し、50〜200℃に加熱して有機バインダーを溶融することにより、多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する。作製方法としては、ホットプレス法や射出成形法等が利用できる。
具体的には、まず、混合粉を型枠内へ導入し、内壁部の形状に合わせて所定の形状に形成する。次いで、型枠内の混合粉を加圧(プレス)し、0.1〜1MPaの所定の圧力に調整しつつ、混合粉の温度が50〜200℃の所定の温度に達するまで昇温し、ある程度圧密してバインダーが溶着するまで保持する。次いで室温まで放冷し原料の多孔質シリカ板体の仮成形体を得る。
底部板体については、以下のように仮成形工程を行う。
底部板体の仮成形体の両平行平面のうち一方に、種結晶の成長を良好に促進するための溝又は穴を形成する。底部板体の仮成形体に形成する溝又は穴は、焼成後の底部板体において、前述のような形状、間隔となるようにする。
この溝又は穴の形成は、例えば、型の形状自体を溝又は穴を形成するように構成することによって行うことができる。また、いったん仮成形体を作製してから、その後、溝又は穴を形成してもよい。
ここで、上記の溝又は穴を形成した面の反対側の面が、焼成工程で加熱される面となる。
ただし、上記の溝又は穴を形成する面とは反対側の面にも溝又は穴を形成してもよい。この溝又は穴は、焼成工程におけるソリ、曲がりやワレが発生しづらくするためのものであり、形状、間隔等は必要に応じて設定することができる。焼成工程での加熱面は、このような溝又は穴を形成した側の面となる。
一方、側部板体については、以下のように仮成形工程を行う。
底部板体の仮成形体とは異なり、溝又は穴を形成する必要はない。ただし、仮成形体の両平行平面のうち一方に、焼成工程におけるソリ、曲がりやワレが発生しづらくするための溝又は穴を形成することが好ましい。
ここで溝又は穴を形成した面の側は、後述する焼成工程で加熱される面となる。
このようにして多孔質シリカ板体の仮成形体を作製した後、焼成して多孔質シリカ板体とする(焼成工程)のであるが、本発明では、多孔質シリカ板体の両平行平面のうち、シリカ容器10として組み立てた際に内表面となる表面部分の少なくとも一部に、多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤を含有させることが好ましい。第1の態様と同様に、仮成形工程の後に、離型促進剤を仮成形体の両平行平面のうち焼成工程において加熱される面とは反対側の面(底部板体においては、溝又は穴を形成した面)の少なくとも一部に塗布し、乾燥させることにより行うことができる。また、焼成工程の後に、多孔質シリカ板体の両平行平面のうち焼成工程において加熱された面とは反対側の面(底部板体においては、溝又は穴を形成した面)の少なくとも一部に離型促進剤を塗布することにより行うこともできる。
次に、図15の(b−5)に示したように、多孔質シリカ板体の仮成形体を、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で、仮成形体の両平行平面のうち一方の側から加熱して焼成し、多孔質シリカ板体とする(焼成工程)。
この工程は、上記した第1の態様の焼成工程と同様にして行うことができる。
以上のようにして、多孔質シリカ板体を製造するのであるが、第1の態様と同様に、離型促進剤の含有を、焼成工程の後に、離型促進剤を多孔質シリカ板体の両平行平面のうち焼成工程において加熱された面とは反対側の面の少なくとも一部に離型促進剤を塗布することにより行うこともできる。
これらのようにして製造した平行平板状の多孔質シリカ板体を、例えば、図4に示したように、カーボン製等のサセプタ80内で組み合わせて角形シリカ容器10とする。この場合、多孔質シリカ板体の密度の高い方が外側にくるように配置する。このような配置で全体を加熱すると、多孔質シリカ板体同士が溶着し、簡単に角形シリカ容器10を一体化させることができる。
本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器を用いて多結晶シリコンインゴットの製造を行う方法の一例を説明する。
まず、本発明に係る角形シリカ容器に原料である溶融シリコンを投入する。次に、溶融シリコンを加熱保温し所定温度の融液とする。
次に、角形シリカ容器の底部から冷却を進め、シリコンの結晶を成長させる。このときの容器底部における結晶成長の様子を、図18を参照して説明する。
図18(a)には、本発明に係る角形シリカ容器の底部にある溝又は穴のように、その斜面が鉛直方向に対してなす角度(交差角度θ)が15〜60°の範囲である場合を模式的に図示した。この場合、容器底部からの冷却初期には、溝又は穴の最深部が、溝又は穴の形状から最も冷却されやすくなっている。そのため、まず、この溝又は穴の最深部に、固体である種結晶301から結晶成長が開始する。図18(a)のように交差角度θが15〜60°の範囲である場合には、種結晶301から複数の結晶が成長しても、成長過程で単結晶化(多結晶シリコンインゴット全体では多結晶となる)しやすい。この現象は、溝又は穴に垂直壁も存在する場合にはより顕著である。
一方、図18(b)に模式的に図示したように、交差角度θが15°より小さい場合、種結晶301から複数の結晶が成長し、そのまま拡大して結晶粒の小さい多結晶体となってしまう。
シリコン融液を凝固して多結晶シリコンインゴットを製造した後、角形シリカ容器から多結晶シリコンインゴットを取り出す。本発明では、角形シリカ容器のかさ密度の制御により、多結晶シリコンインゴットと角形シリカ容器との融着を抑制することができるので、多結晶シリコンインゴットを取り出し易く、また、破損を防止することができる。
その後、取り出した多結晶シリコンインゴットを所定の厚さにスライス、研磨して、多結晶シリコン基板とする。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図14に示した本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法(第1の態様)に従い、以下のように多孔質シリカ板体を製造し、さらに角形シリカ容器を製造した。
まず、第一の原料粉を以下のように作製した。
天然珪石を50kg準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、粒径0.1〜1.0mm、シリカ(SiO)純度99.99wt.%、総重量40kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
また、以下のように、第二の原料粉を作製し、これを顆粒体の状態とした。
第二の原料粉として、溶融法によって球状非晶質シリカ粉を作製した。粒径0.2〜5μm、重量10kgとした。
このようにして作製した第二の原料粉を、以下のようにしてバインダーコーティングされた顆粒体とした。第二の原料粉の10kgに対して、パラフィン系バインダー(融点55℃)50g、ステアリン酸系バインダー(融点100℃)50g、純水2.5kgを混合して、顆粒体形成用混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤーにより乾燥させ、バインダーコーティングされた顆粒体を作製した。このバインダーコーティングされた第二の原料粉の顆粒体の顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉85wt.%に対して顆粒体状の第二の原料粉を15wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と顆粒体状の第二の原料粉の混合粉90重量部に対して純水10重量部、さらに、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)を少量混合してスラリー状とした。次に、円筒型シリカガラス製容器、及びシリカガラスボールから成るボールミルにて1時間、このスラリーを均一混合した。この均一混合したスラリーに、密度が1.8〜1.9g/cm、1〜10/secのせん断速度にて粘度が約500〜1000mPa・secになるように、純水を適量加えて調整した。次に、このスラリーを容器に入れ、シリカガラスチャンバー内に設置し、室温にて10Paの真空にて3分間真空脱ガス処理を行った。このようにして混合スラリーとした。
次に、石膏製の型の中に混合スラリーを導入した。
このとき、底部板体の仮成形体は、鋳込み成形後の仮成形体の一方の表面に複数の円錐形の穴を形成可能な石膏製の型の中に混合スラリーを導入して鋳込み成形を行った。ここで形成した円錐形の穴の寸法は直径10mm、側面(斜面)が仮成形体の表面に垂直の方向となす角度は45°、間隔は15mmとした。
次に、型枠内へ導入した混合スラリーをクリーンオーブン中にて100℃で10時間保持し、その後室温まで冷却し、平行平板状の多孔質シリカ板体の仮成形体を作製した。
次に、多孔質シリカ板体の仮成形体を型枠から取り外した。
この多孔質シリカ板体の仮成形体を、図16に示したような一方向加熱電気炉401内に設置した。
次いで、酸素20vol.%、窒素80vol.%の雰囲気下にて、室温から1000℃まで500℃/時間の昇温速度で約2時間かけて昇温、1350℃まで200℃/時間の昇温速度で昇温した後、1350℃にて3時間保持した。このようにして、多孔質シリカ板体の仮成形体を焼成して多孔質シリカ板体を製造した。
なお、多孔質シリカ板体の寸法は、縦400mm×横400mm×厚さ15mmとなるようにした。
このようにして製造した平行平板状の多孔質シリカ板体の周辺部を加工し、図4のように5枚を組み合わせて角形シリカ容器10とした。
(実施例2)
実施例1と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、多孔質シリカ板体の仮成形体の複数の円錐形の穴を形成した表面部全体に塩化バリウムを塗布し、焼成工程においてこの面とは反対側の面を加熱面として一方向加熱を行った。
(実施例3)
実施例1と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、混合スラリーに塩化アルミニウムAlClを少量混合した。
(実施例4)
実施例1と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、混合スラリーに塩化アルミニウムAlClを少量混合し、また、多孔質シリカ板体の仮成形体の複数の円錐形の穴を形成した表面部全体に塩化バリウムを塗布し、焼成工程においてこの面とは反対側の面を加熱面として一方向加熱を行った。
(実施例5)
図15に示した本発明に係る多孔質シリカ板体の製造方法(第2の態様)に従い、以下のように多孔質シリカ板体を製造し、さらに角形シリカ容器を製造した。
まず、第一の原料粉及び第二の原料粉を、実施例1の際と同様にして作製した。また、第二の原料粉を実施例1の際と同様にして顆粒体とした。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉85wt.%に対して顆粒体状の第二の原料粉を15wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と顆粒体状の第二の原料粉との混合粉の中に有機バインダーを少量混合して混合粉とした。
次に、射出成形器のシリンダー内へ導入した混合粉をシリンダー中にて100℃で保持しつつ、別のセラミック製型枠内へ射出成形し、平行平板状の多孔質シリカ板体の仮成形体を作製した。このとき、底部板体については、複数の円錐形の穴を形成可能なセラミック製型枠内へ混合粉を導入し、仮成形体を作製した。ここで形成した円錐形の穴の寸法、間隔は、実施例1と同様に直径10mm、角度45°、そして15mm間隔とした。
次に、この多孔質シリカ板体の仮成形体を、図16に示したような一方向加熱電気炉401内に設置した。
次いで、酸素20vol.%、窒素80vol.%の雰囲気下にて、室温から1000℃まで500℃/時間の昇温速度で約2時間かけて昇温、1350℃まで200℃/時間の昇温速度で昇温した後、1350℃にて3時間保持した。このようにして、多孔質シリカ板体の仮成形体を焼成して多孔質シリカ板体を製造した。
なお、多孔質シリカ板体の寸法は、縦400mm×横400mm×厚さ15mmとなるようにした。
このようにして製造した平行平板状の多孔質シリカ板体の周辺部を加工し、5枚を組み合わせて角形シリカ容器10とした。
(実施例6)
実施例5と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、多孔質シリカ板体の仮成形体の一方の表面部全体に塩化バリウムを塗布し、焼成工程においてこの面とは反対側の面を加熱面として一方向加熱を行った。
(実施例7)
実施例5と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、混合粉に塩化アルミニウムAlClを少量混合した。
(実施例8)
実施例5と同様に角形シリカ容器の製造を行った。ただし、混合粉に塩化アルミニウムAlClを少量混合し、また、多孔質シリカ板体の仮成形体の一方の表面部全体に塩化バリウムを塗布し、焼成工程においてこの面とは反対側の面を加熱面として一方向加熱を行った。
(比較例1)
以下のようにして、角形シリカ容器を製造した。
まず、第一の原料粉を以下のように作製した。
天然珪石を50kg準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、高純度化処理を行い、粒径0.1〜1.0mm、シリカ(SiO)純度99.999wt.%、総重量40kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
また、以下のように、第二の原料粉を作製し、これを顆粒体の状態とした。
第二の原料粉として、溶融法によって球状非晶質シリカ粉を作製した。粒径0.2〜5μm、重量10kgとした。
このようにして作製した第二の原料粉を、以下のようにしてバインダーコーティングされた顆粒体とした。第二の原料粉の10kgに対して、パラフィン系バインダー(融点55℃)50g、ステアリン酸系バインダー(融点100℃)50g、純水2.5kgを混合して、顆粒体形成用混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤーにより乾燥させ、バインダーコーティングされた顆粒体を作製した。このバインダーコーティングされた第二の原料粉の顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉60wt.%に対して顆粒体状の第二の原料粉を40wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と顆粒体状の第二の原料粉の混合粉90重量部に対して純水10重量部、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)を少量混合してスラリー状とした。次に、円筒型シリカガラス製容器、及びシリカガラスボールから成るボールミルにて1時間、このスラリーを均一混合した。この均一混合したスラリーに、密度が1.8〜2.0g/cm、粘度が1〜10/secせん断速度にて約500〜1000mPa・secになるように、純水を適量加えて調整した。次に、このスラリーを容器に入れ、シリカガラスチャンバー内に設置し、室温にて10Paの真空にて3分間真空脱ガス処理を行った。このようにして混合スラリーとした。
次に、角形(角槽形)の形状とすることができる角形型枠内へ混合スラリーを導入した。
次に、角形型枠内へ導入した混合スラリーをクリーンオーブン中にて150℃で5時間保持し、その後室温まで冷却し、角形(角槽形)形状の多孔質シリカ基体の仮成形体を作製した。
次に、二珪化モリブデンヒータを具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉内に多孔質シリカ基体の仮成形体を設置した。そして、酸素20vol.%、窒素80vol.%の雰囲気下にて、室温から1000℃まで500℃/時間の昇温速度で約2時間かけて昇温、1400℃まで200℃/時間の昇温速度で昇温した後、1400℃にて3時間保持した。このようにして、多孔質シリカ基体の仮成形体を焼成して、角形シリカ容器を製造した。
なお、多孔質シリカ基体の寸法は、内寸が幅400mm×奥行き400mm×高さ400mmとなるようにし、厚さ15mmとなるようにした。
(比較例2)
以下のようにして、角形シリカ容器を製造した。
まず、第一の原料粉及び第二の原料粉を、比較例1の際と同様にして作製した。また、第二の原料粉を比較例1の際と同様にして顆粒体とした。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉60wt.%に対して顆粒体状の第二の原料粉を40wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と顆粒体状の第二の原料粉の混合粉の中に有機バインダーを少量混合して混合粉とした。
次に、角形型枠内へ混合粉を導入した。
次に、角形型枠内へ導入した混合粉をクリーンオーブン中にて500℃で5時間保持し、その後室温まで冷却し、角形(角槽形)形状の多孔質シリカ基体の仮成形体を作製した。
次に、二珪化モリブデンヒータを具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉内に多孔質シリカ基体の仮成形体を設置した。そして、酸素20vol.%、窒素80vol.%の雰囲気下にて、室温から1000℃まで500℃/時間の昇温速度で約2時間かけて昇温、1400℃まで200℃/時間の昇温速度で昇温した後、1400℃にて5時間保持した。このようにして、多孔質シリカ基体の仮成形体を焼成して、角形シリカ容器を製造した。
[実施例及び比較例における評価方法]
各実施例及び比較例において用いた原料粉、並びに、製造した多孔質シリカ板体及び角形シリカ容器の物性、特性評価を以下のようにして行った。
かさ密度の測定方法:
多孔質シリカ板体の表面部分から50mm×50mm×3mmの板状サンプルを切り出し、該サンプルの重量(g)を測定した。
次いで、純水の入った水槽中に該サンプルを浸漬させて、該サンプルの重量減を測定することにより、該サンプルの体積(cm)を求めた。これらの2つの数値からかさ密度(g/cm)を計算した。
各原料粉の粒径測定方法:
光学顕微鏡又は電子顕微鏡で各原料粉の二次元的形状観察及び面積測定を行った。次いで、粒子の形状を真円と仮定し、その面積値から直径を計算して求めた。この手法を統計的に繰り返し行い、粒径の範囲の値とした(この範囲の中に99wt.%以上の原料粉が含まれる)。
金属元素濃度分析:
所定の位置からシリカサンプル片を切り出し、フッ化水素酸水溶液で溶解させるサンプル調整を行った。特に離型促進剤の濃度分析においては、角形シリカ容器の内表層部分から20mm×20mm×2mmのサンプルを複数枚切り出し、分析用シリカサンプル片とした。含有金属元素濃度が比較的低い場合は、プラズマ発光分析法(ICP−AES、Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectroscopy)又はプラズマ質量分析法(ICP−MS、Inductively Coupled Plasma − Mass Spectroscopy)で行い、含有金属元素濃度が比較的高い場合は、原子吸光光度法(AAS、Atomic Absorption Spectroscopy)で行った。
OH基濃度測定:
角形シリカ容器から粒径10〜100μmの粉状サンプルを作製し、赤外線拡散反射分光光度法で行った。OH基濃度への換算は、以下文献に従う。
Dodd,D.M. and Fraser,D.B.(1966) Optical determination of OH in fused silica. Journal of Applied Physics, vol.37, P.3911.
角形シリカ容器から多結晶シリコンインゴットへの不純物拡散防止効果:
角形シリカ容器の中へSi純度99.9999999wt.%の高純度シリコン溶融体を投入し、室温まで冷却して寸法400mm×400mm×300mmの多結晶シリコンインゴットを作製した。次いで、該インゴットの表面から5mm深さの位置でシリコン片のサンプリングを行い、これを酸性溶液処理することにより溶液状サンプルとした後、ICP−AESにて、Na濃度分析を行った。Na濃度値によって、角形シリカ容器から多結晶シリコンインゴットへの不純物拡散防止効果を評価した。
不純物拡散防止効果大 ○(Naの濃度が10wt.ppb未満)
不純物拡散防止効果中 △(Naの濃度が10wt.ppb以上100wt.ppb未満)
不純物拡散防止効果小 ×(Naの濃度が100wt.ppb以上)
離型性評価:
前記同様に多結晶シリコンインゴットを作製し、次いで角形シリカ容器の4カ所の側壁角部及び4カ所の側壁と底部の角部の溶着している部分をカッターにて切断し、該インゴットから角形シリカ容器の4つの側壁及び底板を剥がし取った。該インゴット表面に残存する凹凸やクラック等が、角形シリカ容器の内表面と接触した位置から内部方向にどのくらいの深さまであるのかをスケールにより測定することで離型性の評価を行った。
離型性良好 ○(深さ2mm未満)
離型性中程度 △(深さ2mm以上5mm未満)
離型性悪い ×(深さ5mm以上)
多結晶シリコンインゴットの品質評価:
前記作製した多結晶シリコンインゴットをスライスし、断面を観察した。
結晶粒の大きさ、結晶成長方向の均一性の観点から、従来と比較して(比較例1が基準)、評価した。
品質良好 ○(結晶粒寸法5〜50mmが全体の面積の70%以上を占め、成長結晶の結晶方位が一定方向に整っている)
品質中程度 △(結晶粒寸法5〜50mmが全体の面積の30〜70%程度であり、成長結晶の結晶方位の整いが中間レベルである)
品質悪い ×(従来と同程度)
製造コスト(相対的)評価:
角形シリカ容器の製造コストを調べた。
基準を比較例1とし、特にシリカ原料粉コスト、粉体成形コスト、成形体の焼成コスト等の合計値を相対的に評価した。
コストが低い ○(50%以下)
コストが中程度 △(50〜90%程度)
コストが大きい ×(比較例1を100%とする)
実施例1〜8、比較例1〜2で製造したそれぞれの角形シリカ容器の製造条件と、測定した物性値、評価結果をまとめ、下記の表1〜6に示す。表6は各実施例の多孔質シリカ板体及び各比較例の多孔質シリカ基体の不純物遷移金属元素濃度(単位wt.ppb)を示したものである。
Figure 0005130337
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Figure 0005130337
表1〜6からわかるように、本発明に係るシリカ容器の製造方法に従った実施例1〜8
では、離型性に優れた多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器を、低コストで製造することができた。また、実施例1〜8では、結晶粒の大きさ及び結晶軸方位が揃った多結晶シリコンインゴットを製造することができた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
10…本発明に係る多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器、
11…側部板体、 12…側部内表面、 13…側部外表面、
21…底部板体、 22…底部内表面、 23…底部外表面、
31…溝又は穴、 31a…溝、 31b…角錐形の穴、
31c、31d…円錐形の穴、 32…斜面、 33…垂直壁、 34…平底、
41…貫通孔の形成された板材、 42…貫通孔、 51…スペーサー、
80…サセプタ、
301…種結晶、
401…一方向加熱電気炉、411…上部保温材、 412…下部保温材、
421…ヒーター、 431…吸気口、 432…排気口、
441…耐熱性ベルトコンベアー。

Claims (19)

  1. シリコン融液を凝固して多結晶シリコンインゴットを製造するための角形シリカ容器であって、
    多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を組み合わせて構成されたものであり、
    少なくとも前記角形シリカ容器の側部をなす前記多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度が、前記角形シリカ容器の内表面部分よりも外表面部分において高く、
    前記角形シリカ容器の底部をなす前記多孔質シリカ板体の内表面部分は、溝又は穴を所定間隔で複数有しており、
    前記溝又は穴の側面の少なくとも一部が、鉛直方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器。
  2. 前記多孔質シリカ板体のかさ密度が1.60〜2.20g/cmであり、
    少なくとも前記角形シリカ容器の側部をなす前記多孔質シリカ板体における両平行平面の表面部分のかさ密度が、内外それぞれの表面から深さ3mmまでにおけるかさ密度について0.05g/cm以上の差を有することを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器。
  3. 前記角形シリカ容器の内表面部分の少なくとも一部に、前記多結晶シリコンインゴットの離型を促進する離型促進剤が含有されているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器。
  4. 前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、前記角形シリカ容器の内表面から深さ2mmまでにおいて、各元素の合計値として50〜5000wt.ppmの濃度で添加されているものであることを特徴とする請求項3に記載の多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器。
  5. 前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、各元素の合計値として50〜5000μg/cmの濃度で塗布されているものであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の多結晶シリコンインゴット製造用角形シリカ容器。
  6. 多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体であって、
    かさ密度が1.60〜2.20g/cmであり、
    両平行平面の少なくとも一方の表面部分の一部は、溝又は穴を所定間隔で複数有しており、
    前記溝又は穴の側面の少なくとも一部が、前記表面と垂直の方向に対して15〜60°の角度をなす斜面で形成されていることを特徴とする多孔質シリカ板体。
  7. 前記溝又は穴の形状が、溝の場合はV形であり、穴の場合は円錐形又は角錐形であることを特徴とする請求項6に記載の多孔質シリカ板体。
  8. 前記溝又は穴の側面には、一部表面と垂直の方向に沿う垂直壁が存在することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の多孔質シリカ板体。
  9. 前記溝又は穴の開口部の寸法が、溝の場合は幅が5〜20mmであり、穴の場合は最小長さが5〜20mmであることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の多孔質シリカ板体。
  10. 前記溝又は穴が形成された表面部分の一部に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤が含有されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載の多孔質シリカ板体。
  11. 前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、前記表面から深さ2mmまでにおいて、各元素の合計値として50〜5000wt.ppmの濃度で添加されているものであることを特徴とする請求項10に記載の多孔質シリカ板体。
  12. 前記離型促進剤としてCa、Sr、Baのうち1以上が、各元素の合計値として50〜5000μg/cmの濃度で塗布されているものであることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の多孔質シリカ板体。
  13. 多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を製造する方法であって、
    第一の原料粉として粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉を作製する工程と、
    第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する工程と、
    前記第一の原料粉と、前記第二の原料粉と、水とを含む混合スラリーを作製する工程と、
    前記混合スラリーを、型枠内で脱水及び乾燥し、両平行平面のうち一方の表面部分に溝又は穴を所定間隔で複数有する多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する仮成形工程と、
    前記仮成形体を、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で、前記溝又は穴を形成した面とは反対側の面から加熱して焼成し、多孔質シリカ板体とする焼成工程と
    を含むことを特徴とする多孔質シリカ板体の製造方法。
  14. 多孔質シリカからなる平行平板状の多孔質シリカ板体を製造する方法であって、
    第一の原料粉として粒径0.03〜3.0mmのシリカ粉を作製する工程と、
    第二の原料粉として粒径0.1〜10μmのシリカ粉を作製する工程と、
    前記第一の原料粉と前記第二の原料粉と有機バインダーとを混合させ、混合粉を作製する工程と、
    前記混合粉を型枠内に導入し、50〜200℃に加熱して前記有機バインダーを溶融することにより、両平行平面のうち一方の表面部分に溝又は穴を所定間隔で複数有する多孔質シリカ板体の仮成形体を作製する工程と、
    前記仮成形体を、不活性ガスを主成分とし、Oガスを含有する雰囲気にて、1200〜1500℃の温度で、前記溝又は穴を形成した面とは反対側の面から加熱して焼成し、多孔質シリカ板体とする焼成工程と
    を含むことを特徴とする多孔質シリカ板体の製造方法。
  15. 少なくとも前記仮成形工程の後に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤を、前記仮成形体の両平行平面のうち前記溝又は穴を形成した面の少なくとも一部に塗布し、乾燥させることによって前記離型促進剤を添加することにより、前記離型促進剤を含有させることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の多孔質シリカ板体の製造方法。
  16. 少なくとも前記焼成工程の後に、多結晶シリコンの離型を促進する離型促進剤を、前記仮成形体の両平行平面のうち前記溝又は穴を形成した面の少なくとも一部に前記離型促進剤を塗布することにより、前記離型促進剤を含有させることを特徴とする請求項13ないし請求項15のいずれか一項に記載の多孔質シリカ板体の製造方法。
  17. 前記離型促進剤をCa、Sr、Baのいずれか1以上とすることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の多孔質シリカ板体の製造方法。
  18. 前記混合スラリー又は前記混合粉を作製する前に、前記第二の原料粉から、前記第二の原料粉が集合してなる粒径5〜500μmの顆粒体を作製し、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記混合スラリー又は前記混合粉を作製することを特徴とする請求項13ないし請求項17のいずれか一項に記載の多孔質シリカ板体の製造方法。
  19. 請求項13ないし請求項18のいずれか一項に記載の多孔質シリカ板体の製造方法によって製造した多孔質シリカ板体を底部に組み込んで角形シリカ容器とすることを特徴とする角形シリカ容器の製造方法。
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