以下、本発明に係る自動変速機の制御装置1について、図面に沿って説明する。
[自動変速機の概略構成]
まず、本発明を適用し得る自動変速機3の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン、フロントドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機3は、エンジン2に接続し得る自動変速機の入力軸8を有しており、該入力軸8の軸方向を中心としてトルクコンバータ4と、自動変速機構5とを備えている。
上記トルクコンバータ4は、自動変速機3の入力軸8に接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bとを有しており、該タービンランナ4bは、上記入力軸8と同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸10に接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が係合されると、上記自動変速機3の入力軸8の回転が自動変速機構5の入力軸10に直接伝達される。
上記自動変速機構5には、入力軸10上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース9に一体的に固定されている不図示のボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸10の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチ(第2摩擦係合要素)C−1及びクラッチ(第3摩擦係合要素)C−3に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、バンドブレーキからなるブレーキB−1に接続されてミッションケース9に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸10の回転が入力されるクラッチ(第1摩擦係合要素)C−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース9に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、出力軸12を介してカウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、不図示のカウンタシャフト、ディファレンシャル装置を介して駆動車輪13(図5参照)に接続されている。
[自動変速機における各変速段の動作]
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構5の作用について図1及び図2に沿って説明する。なお、図3に示す速度線図において、縦軸方向はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転速度を示しており、横軸方向はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤSPの部分において、縦軸は、図3中左方側から順に、サンギヤS1、キャリヤCR1、リングギヤR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、縦軸は、図3中右方側から順に、サンギヤS3、リングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1ST)では、図2に示すように、クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
前進2速段(2ND)では、図2に示すように、クラッチC−1が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
前進3速段(3RD)では、図2に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−3の係合によりキャリヤCR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にキャリヤCR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
前進4速段(4TH)では、図2に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−2が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−2に係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進3速段より高い減速回転となってリングギヤR2に出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
前進5速段(5TH)では、図2に示すように、クラッチC−2及びクラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
前進6速段(6TH)では、図2に示すように、クラッチC−2が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進5速段より高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
後進1速段(REV)では、図2に示すように、クラッチC−3が係合され、ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ11から出力される。
なお、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、クラッチC−1、クラッチC−2、及びクラッチC−3、が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤSPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となり、かつ、入力軸10とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸10とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸10とカウンタギヤ11との動力伝達が切断状態となる。
[油圧制御装置の概略構成]
つづいて、自動変速機の油圧制御装置6について説明する。まず、油圧制御装置6における図示を省略した、ライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧、レンジ圧等の生成部分について、大まかに説明する。なお、これらライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧、レンジ圧の生成部分は、一般的な自動変速機の油圧制御装置と同様なものであり、周知のものであるので、簡単に説明する。
本油圧制御装置6は、例えば図示を省略したオイルポンプ、マニュアルシフトバルブ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ及びリニアソレノイドバルブSLT等を備えており、例えばエンジンが始動されると、上記トルクコンバータ4のポンプインペラ4aに回転駆動連結されたオイルポンプがエンジンの回転に連動して駆動されることにより、不図示のオイルパンからストレーナを介してオイルを吸上げる形で油圧を発生させる。
上記オイルポンプにより発生された油圧は、スロットル開度に応じて調圧出力されるリニアソレノイドバルブSLTの信号圧PSLTに基づき、プライマリレギュレータバルブによって排出調整されつつライン圧PLに調圧される。このライン圧PLは、マニュアルシフトバルブ(レンジ切換えバルブ)、ソレノイドモジュレータバルブ、及び詳しくは後述するリニアソレノイドバルブSLC3等に供給される。このうちのソレノイドモジュレータバルブに供給されたライン圧PLは、該バルブによって略々一定圧となるモジュレータ圧PMODに調圧され、このモジュレータ圧PMODは、上記リニアソレノイドバルブSLTや、詳しくは後述するソレノイドバルブS1,S2等の元圧として供給される。
なお、上記プライマリレギュレータバルブから排出された圧は、例えばセカンダリレギュレータバルブにより更に排出調整されつつセカンダリ圧PSECに調圧され、このセカンダリ圧PSECが、例えば潤滑油路やオイルクーラ等に供給されると共にトルクコンバータ4にも供給され、かつロックアップクラッチ7の制御にも用いられる。
一方、マニュアルシフトバルブ(不図示)は、運転席(不図示)に設けられたシフトレバーに機械的(或いは電気的)に駆動されるスプールを有しており、該スプールの位置がシフトレバーにより選択されたシフトレンジ(例えばP,R,N,D)に応じて切換えられることにより、上記入力されたライン圧PLの出力状態や非出力状態(ドレーン)を設定する。
詳細には、シフトレバーの操作に基づきDレンジにされると、該スプールの位置に基づき上記ライン圧PLが入力される入力ポートと前進レンジ圧出力ポートとが連通し、該前進レンジ圧出力ポートよりライン圧PLが前進レンジ圧(Dレンジ圧)PDとして出力される。シフトレバーの操作に基づきR(リバース)レンジにされると、該スプールの位置に基づき上記入力ポートと後進レンジ圧出力ポートとが連通し、該後進レンジ圧出力ポートよりライン圧PLが後進レンジ圧(Rレンジ圧)PREVとして出力される。また、シフトレバーの操作に基づきPレンジ及びNレンジにされた際は、上記入力ポートと前進レンジ圧出力ポート及び後進レンジ圧出力ポートとの間がスプールによって遮断されると共に、それら前進レンジ圧出力ポート及び後進レンジ圧出力ポートがドレーンポートに連通され、つまりDレンジ圧PD及びRレンジ圧PREVがドレーン(排出)された非出力状態となる。
[油圧制御装置における変速制御部分の詳細な構成]
ついで、油圧制御装置6における主に変速制御を行う部分について図4に沿って説明する。なお、本実施の形態においては、スプール位置を説明するため、図4中に示す右半分の位置を「右半位置」、左半分の位置を「左半位置」という。
本油圧制御装置6は、上述のクラッチC−1の油圧サーボ41、クラッチC−2の油圧サーボ42、クラッチC−3の油圧サーボ43、ブレーキB−1の油圧サーボ44、ブレーキB−2の油圧サーボ45の、計5つの油圧サーボのそれぞれに係合圧として調圧した出力圧を直接的に供給するための4本のリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLB1を備えており、また、リンプホーム機能を達成すると共に、リニアソレノイドバルブSLC2の出力圧をクラッチC−2の油圧サーボ42又はブレーキB−2の油圧サーボ45に切換える部分(故障時油圧供給切換え部)として、ソレノイドバルブS1、ソレノイドバルブS2、第1クラッチアプライリレーバルブ21、第2クラッチアプライリレーバルブ22、C−2リレーバルブ23、B−2リレーバルブ24等を備えて構成されている。
図4に示す油路a1、油路a4、油路a5には、上述したマニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポート(不図示)が接続されて前進レンジ圧PDが入力し得るように構成されており、また、油路lには、該マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)が接続されて後進レンジ圧PREVを入力し得るように構成されている。また、油路dには、プライマリレギュレータバルブ(不図示)からのライン圧PLが入力されており、さらに油路g1には、モジュレータバルブ(不図示)からのモジュレータ圧PMODが入力されて構成されている。
このうちの油路a1は、油路a2を介して詳しくは後述する第1クラッチアプライリレーバルブ21のポート21eに接続されていると共に、チェックバルブ50とオリフィス60とが配設されている。また、該油路a1は、油路a3を介してアキュムレータ30に接続されていると共に、上記リニアソレノイドバルブSLC1に接続されている。該アキュムレータ30は、ケース30cと、該ケース30cの内部に配設されたピストン30bと、該ピストン30bを付勢するスプリング30sと、該ケース30c及びピストン30bの間に形成された油室30aとを有して構成されている。
上記リニアソレノイドバルブSLC1は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路a1を介して上記前進レンジ圧PDを入力する入力ポートSLC1aと、該前進レンジ圧PDを調圧して油圧サーボ41に制御圧PSLC1を係合圧PC1として出力する出力ポートSLC1bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC1は、非通電時に入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとを遮断して非出力状態となり、制御部(ECU)70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとの連通する量(開口量)を該指令値に応じて大きくし、つまり指令値に応じた係合圧PC1を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートSLC1bは、油路b1を介して後述の第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22cに接続されている。
一方、リニアソレノイドバルブSLC2は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路a4などを介して上記前進レンジ圧PDを入力する入力ポートSLC2aと、該前進レンジ圧PDを調圧して油圧サーボ42に制御圧PSLC2を係合圧PC2(又は係合圧PB2)として出力する出力ポートSLC2bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC2は、非通電時に入力ポートSLC2aと出力ポートSLC2bとを連通した出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC2aと出力ポートSLC2bとの連通する量を該指令値に応じて小さくし(即ち開口量を絞り)、つまり指令値に応じた係合圧PC2(又はPB2)を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bは、油路c1を介して後述の第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22fに接続されている。
リニアソレノイドバルブSLC3は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路dなどを介して上記ライン圧PLを入力する入力ポートSLC3aと、該ライン圧PLを調圧して油圧サーボ43に制御圧PSLC3を係合圧PC3として出力する出力ポートSLC3bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC3は、非通電時に入力ポートSLC3aと出力ポートSLC3bとを連通した出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC3aと出力ポートSLC3bとの連通する量を該指令値に応じて小さくし(即ち開口量を絞り)、つまり指令値に応じた係合圧PC3を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC3の出力ポートSLC3bは、油路e1を介してクラッチC−3の油圧サーボ43に接続されている。また、該油路e1には、チェックバルブ53とオリフィス63とが配設されていると共に、油路e2を介してC−3ダンパ33の油室33aが接続されている。なお、該C−3ダンパ33は、上述したアキュムレータ30と同様の構成であって、一般的なダンパ装置であるので、その詳細説明は省略する。
リニアソレノイドバルブSLB1は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路a5などを介して上記前進レンジ圧PDを入力する入力ポートSLB1aと、該前進レンジ圧PDを調圧して油圧サーボ44に制御圧PSLB1を係合圧PB1として出力する出力ポートSLB1bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLB1は、非通電時に入力ポートSLB1aと出力ポートSLB1bとを遮断して非出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLB1aと出力ポートSLB1bとの連通する量(開口量)を該指令値に応じて大きくし、つまり指令値に応じた係合圧PB1を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLB1の出力ポートSLB1bは、油路f1を介してブレーキB−1の油圧サーボ44に接続されている。また、該油路f1には、チェックバルブ54とオリフィス64とが配設されていると共に、油路f2を介してB−1ダンパ34の油室34aが接続されている。
ソレノイドバルブS1は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路g1,g2を介して上記モジュレータ圧PMODを入力する入力ポートS1aと、非通電時(即ちOFF時)に該モジュレータ圧PMODを略々そのまま信号圧PS1として出力する出力ポートS1bとを有している。該出力ポートS1bは、油路h1,h2を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21aに接続されており、また、油路h1,h3を介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の油室22aに接続されていると共に、油路h4を介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24cに接続されている。
ソレノイドバルブS2は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路g1,g3を介して上記モジュレータ圧PMODを入力する入力ポートS2aと、通電時(即ちON時)に該モジュレータ圧PMODを略々そのまま信号圧PS2として出力する出力ポートS2bとを有している。該出力ポートS2bは、油路iを介してB−2リレーバルブの油室24aに接続されている。
第1クラッチアプライリレーバルブ21は、2つのスプール21p,21qと、該スプール21pを図中上方に付勢するスプリング21sと、該スプール21p,21qを離間する方向に付勢するスプリング21tとを有していると共に、該スプール21qの図中上方に油室21aと、スプール21pの図中下方に油室21dと、両スプール21p,21qの間に油室21cと、スプール21qのランド部の径の差違(受圧面積の差違)により形成された油室21bとを有しており、さらに、入力ポート21eと、入力ポート21fと、入力ポート21gと、入力ポート21hと、出力ポート21iと、出力ポート21jと、ドレーンポートEXとを有して構成されている。
該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、スプール21p,21qが左半位置にされた際に、入力ポート21eと出力ポート21jとが連通されると共に、入力ポート21eと出力ポート21iとが遮断され、右半位置にされた際には、入力ポート21eと出力ポート21iとが連通されると共に出力ポート21jとドレーンポートEXとが連通されるように構成されている。また、スプール21pが左半位置にされた際には、入力ポート21hが遮断され、スプール21qが右半位置にされた際には、入力ポート21gが遮断されるように構成されている。
上述のように油室21aは、油路h1,h2を介して上記ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bに接続されており、上記油室21bは、入力ポート21fより油路b4を介して後述する第2クラッチアプライリレーバルブ22の出力ポート22iに接続されている。上記入力ポート21eには、油路a1,a2を介して前進レンジ圧PDが入力されており、スプール21pが左半位置の際に該入力ポート21eに連通する出力ポート21jは、油路jを介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22hに接続されている。また、スプール21pが右半位置の際に該入力ポート21eに連通する出力ポート21iは、油路k1,k2を介して入力ポート21gと、油路k1,k2,k3を介して入力ポート21hとにそれぞれ接続され、つまり該出力ポート21iは、スプール21p,21qの位置に拘らず、油室21cに接続されている。さらに、該出力ポート21iは、油路k1を介して後述の第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに接続されている。そして、上記油室21dには、油路c5を介してC−2リレーバルブ23の出力ポート23cが接続されており、該油路c5には、チェックバルブ55とオリフィス65とが配設されている。
第2クラッチアプライリレーバルブ22は、スプール22pと、該スプール22pを図中上方に付勢するスプリング22sとを有していると共に、該スプール22pの図中上方に油室22aと、該スプール22pの図中下方に油室22bとを有しており、さらに、入力ポート22cと、出力ポート22dと、入力ポート22eと、入力ポート22fと、出力ポート22gと、入力ポート22hと、出力ポート22iとを有して構成されている。
該第2クラッチアプライリレーバルブ22は、スプール22pが左半位置にされた際に、入力ポート22cと出力ポート22d及び出力ポート22iとが連通され、かつ入力ポート22fと出力ポート22gとが連通されると共に、入力ポート22eと入力ポート22hとがそれぞれ遮断され、右半位置にされた際には、入力ポート22eと出力ポート22dとが連通され、かつ入力ポート22hと出力ポート22gとが連通されると共に、入力ポート22cと出力ポート22iと入力ポート22fとが遮断されるように構成されている。
上述のように油室22aは、油路h1,h3を介して上記ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bに接続されていると共に、油路h4を介して後述するB−2リレーバルブ24の入力ポート24cに接続されている。上記入力ポート22cは、油路b1を介して上記リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートSLC1bに接続されており、スプール22pが左半位置の際に該入力ポート22cに連通する出力ポート22dは、油路b2を介してクラッチC−1の油圧サーボ41に接続されている。該油路b2には、チェックバルブ51とオリフィス61とが配設されると共に、油路b3を介してC−1ダンパ31の油室31aが接続されている。また同様にスプール22pが左半位置の際に該入力ポート22cに連通する出力ポート22iは、油路b4を介して上記第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21fに接続されると共に、油路b4,b5を介して油室22bに接続されている。一方、入力ポート22fは、油路c1を介して上記リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bに接続されており、また、入力ポート22hは、油路jを介して上記第1クラッチアプライリレーバルブ21の出力ポート21jに接続されている。スプール22pが左半位置の際に該入力ポート22fに連通し、かつスプール22pが右半位置の際に該入力ポート22hに連通する出力ポート22gは、油路c2を介して後述するC−2リレーバルブ23の入力ポート23bに接続されている。該油路c2には、チェックバルブ52とオリフィス62とが配設されていると共に、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aが接続されている。
C−2リレーバルブ23は、スプール23pと、該スプール23pを図中上方に付勢するスプリング23sとを有していると共に、該スプール23pの図中上方に油室23aを有しており、さらに、入力ポート23bと、出力ポート23cと、出力ポート23dと、出力ポート23eと、ドレーンポートEXとを有して構成されている。
該C−2リレーバルブ23は、スプール23pが左半位置にされた際に、入力ポート23bと出力ポート23c及び出力ポート23eとが連通され、かつ出力ポート23dとドレーンポートEXとが連通され、右半位置にされた際には、入力ポート23bと出力ポート23dとが連通され、かつ出力ポート23c及び出力ポート23eとドレーンポートEXとが連通されるように構成されている。
上記油室23aは、油路h5を介して後述するB−2リレーバルブ24の出力ポート24bに接続されている。入力ポート23bは、油路c2を介して上記第2クラッチアプライリレーバルブ22の出力ポート22gに接続されており、該入力ポート23bにスプール23pが左半位置の際に連通する出力ポート23eが油路c3を介してクラッチC−2の油圧サーボ42に接続されている。また、同様に該入力ポート23bにスプール23pが左半位置の際に連通する出力ポート23cは、油路c5を介して上記第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21dに接続されており、また、該油路c5には、チェックバルブ55とオリフィス65とが配設されている。そして、該入力ポート23bにスプール23pが右半位置の際に連通する出力ポート23dは、油路mを介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24eに接続されている。
B−2リレーバルブ24は、スプール24pと、該スプール24pを図中上方に付勢するスプリング24sとを有していると共に、該スプール24pの図中上方に油室24aを有しており、出力ポート24bと、入力ポート24cと、入力ポート24dと、入力ポート24eと、出力ポート24fと、出力ポート24gと、ドレーンポートEXとを有して構成されている。
該B−2リレーバルブ24は、スプール24pが左半位置にされた際に、入力ポート24dと出力ポート24f及び出力ポート24gとが連通され、かつ出力ポート24bとドレーンポートEXとが連通されると共に、入力ポート24cが遮断され、右半位置にされた際には、入力ポート24cと出力ポート24bとが連通され、かつ入力ポート24eと出力ポート24gとが連通されると共に、入力ポート24d、ドレーンポートEXとが遮断されるように構成されている。
上記油室24aは、油路iを介して上記ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bに接続されている。上記入力ポート24dは、油路lを介して後進レンジ圧PREVが出力されるマニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)に接続されており、また、上記入力ポート24eは、油路mを介して上記C−2リレーバルブ23の出力ポート23dに接続されており、該入力ポート24dにスプール24pが左半位置の際に連通し、該入力ポート24eにスプール24pが右半位置の際に連通する上記出力ポート24gは、油路nを介してブレーキB−2の油圧サーボ45に接続され、つまり該ブレーキB−2の油圧サーボ45は、マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)、又はリニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bに接続されている。また、上述のように入力ポート24cは、油路h4、上記第2クラッチアプライリレーバルブ22の油室22a、油路h1,h3を介してソレノイドバルブS1の出力ポートS1bに接続されており、該入力ポート24cにスプール24pが右半位置の際に連通する出力ポート24bは、油路h5を介して上記C−2リレーバルブ23の油室23aに接続されている。なお、上記入力ポート24dにスプール24pが左半位置の際に連通する出力ポート24fは、不図示の油路を介してプライマリレギュレータバルブの油室に接続されており、プライマリレギュレータバルブに後進レンジ圧PREVを作用させて後進時にライン圧PLを上昇させるように構成されている。
[自動変速機の制御装置の構成]
ついで、本発明の要部である自動変速機の制御装置1の構成について説明をする。本実施形態の自動変速機は、図5に示すように、制御部(ECU)70を有しており、上述したエンジン2及び油圧制御装置6の各リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLB1などに接続されている。また、該制御部70には、エンジン2からエンジン回転速度信号及びエンジントルク信号が出力されると共に、アクセル開度センサ66、入力軸回転速度センサ(入力軸回転速度検出手段)67、出力軸回転速度(車速)センサ(出力軸回転速度検出手段)68及びレンジ信号を出力する変速操作部69などの各種センサが接続されている。なお、出力軸12の回転速度は、上記出力軸回転速度センサ68によって検出する他に、車速から演算して求めるなど、出力軸12の回転速度が分かればどのような手段を用いて算出してもよい。
そして、上記制御部70には、油圧指令手段71、変速判定手段72、変速マップmap、変速操作部69からのレンジ信号に基づいてシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段73、変速段選択手段74、ND係合手段75、トルクリミテーション実行手段76、ギヤ比不一致判定手段77、オーバーレブ判定手段79、オーバーレブ回避手段80、アップシフト禁止手段81、フェール判定手段82及びフェールセーフ実行手段83が備えられている。
上記変速段選択手段74は、シフトレンジ検出手段73によりシフトレンジがニュートラルレンジから前進走行レンジへと切換ったことを検出すると、車輌の走行状態(アクセル開度センサ69により検出されるアクセル開度及び出力軸回転速度センサ68により検出される車速)に基づき変速マップmapを参照しつつ、適切な変速段を判定する。即ち変速段選択手段74は適切な変速段として、図6に示すように、通常走行時に前進1速段及び前進2速段の範囲内は前進1速段を、前進3速段の範囲内は前進3速段を、前進4〜6速段の範囲内は前進5速段を選択する。そして、ND係合手段75は、前記変速段選択手段74によって変速段が選択されると油圧指令手段71に電気指令を与えてこの選択された変速段への係合制御を実行する。
上記前進5速段への係合制御は、詳しくは後述するがソレノイドS1が故障することによって前進3速段が形成される虞があり、ギヤ比不一致判定手段77は、前進5速段への係合制御中の入力軸回転速度に基づいて、実際のギヤ比が前進5速段のギヤ比に対して所定値以上高くなったか否かを判定し、それにより変速段が設定された前進5速段よりも低速側の変速段(低速段)を形成している可能性の有無を判定している。なお、この所定値は、エンジントルク及び回転速度の変動などに起因して生じる誤差を考慮したものであり、その値以上離れた場合には前進5速段を形成しているものではないと判定できる値に決められる。
また、トルクリミテーション実行手段76は、シフトレンジ検出手段73によってニュートラルレンジから前進走行レンジへ切換わったことが検出された際の入力軸8の回転速度が高い場合、エンジン2の回転速度を制限して入力軸回転速度を減速させる。
オーバーレブ判定手段79は、上記ギヤ比不一致判定手段77によって他の変速段が形成されている可能性があると判定された場合に、出力軸回転速度(車速)がエンジンの許容回転速度(エンジンリミット)を前進3速段のギヤ比で除した値よりも大きいかどうかを判定しており、これにより、前進5速段の代わりに前進3速段が形成された際にオーバーレブするが否かが判定される。
オーバーレブ回避手段80は、オーバーレブ判定手段79によってオーバーレブすると判定されると、前進5速段への係合制御を中断してニュートラル状態にすると共に、該ニュートラル状態を、車速が前進4速段において急激なエンジンブレーキが掛からずに安定して走行可能な所定車速になるまで維持し、該所定車速まで車速が低下すると前進4速段へと移行させる。なお、前進4速段は、誤って前進3速段が形成された際に、安全に移行することができる変速段の内、最も高い変速段である。
ギヤ比が変化する上記前進5速段への係合制御時では正確に実際の変速段と目標とする変速段とが異なるというフェールを判定することができないため、ND係合手段75による前進5速段への係合制御が終了すると、アップシフト禁止手段81は、一定時間、変速判定手段72が前進6速段へのアップシフトすることを禁止しており、フェール判定手段82は、このアップシフトが禁止されている間に、実際のギヤ比が本当に前進5速段のギヤ比を形成しているかを判定し、前進5速段のギヤ比を形成している場合は正常と判定し、前進5速段のギヤ比を形成していない場合は上記フェールと判定する。
フェールセーフ実行手段83は、フェール判定手段82によって故障の判定がなされると、実際の変速段を認識し、該実際の変速段から各変速段へと変速制御を実行する。即ち、変速マップmapには、アクセル開度と車速とに対応したアップシフト変速線及びダウンシフト変速線(変速点)が記録されており、その時点のアクセル開度及び車速に基づいて、これらの変速線から変速段を判定し、その変速段を油圧指令手段71に出力する。なお、判定された変速段が変速不能の場合、隣接する変速可能な変速段のうち高速段側の変速段へと移行させる。
油圧指令手段71は変速段が設定されると、クラッチやブレーキの油圧サーボに係合圧が供給されるように、上記リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLB1に電気指令を与え、つまり正常時における走行中は、入力トルクに安全率を加味したトルク容量となるようにクラッチやブレーキが係合され、特にエンジン2のエンジントルクが変動したり、道路状況などにより駆動車輪13からトルク変動を受けたりしたとしても、クラッチやブレーキに滑りが生じないように係合される。
[油圧制御装置の動作]
次に、本実施の形態に係る油圧制御装置6の作用について説明する。
例えば運転手によりイグニッションがONされると、本油圧制御装置6の油圧制御が開始される。まず、シフトレバーの選択位置が、例えばPレンジ又はNレンジである際は、制御部70の電気指令によってノーマルオープンタイプであるリニアソレノイドバルブSLC2、リニアソレノイドバルブSLC3、及びソレノイドバルブS1に通電され、それぞれの入力ポートと出力ポートとを遮断する。ついで、例えばエンジンが始動されると、エンジン回転に基づくオイルポンプ(不図示)の回転により油圧が発生し、該油圧は、上述のようにプライマリレギュレータバルブやソレノイドモジュレータバルブによって、ライン圧PLやモジュレータ圧PMODにそれぞれ調圧出力され、不図示のマニュアルシフトバルブの入力ポートと油路dを介してリニアソレノイドバルブSLC3の入力ポートSLC3aとにライン圧PLが入力されると共に、油路g1,g2,g3を介してソレノイドバルブS1,S2の入力ポートS1a,S2aにモジュレータ圧PMODが入力される。
[N−D時(前進1速段)における動作]
続いて、例えば運転手がシフトレバーをNレンジ位置からDレンジ位置にすると、マニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポートから油路a1,a4,a5に前進レンジ圧PDが出力され、該前進レンジ圧PDは、油路a1を介してリニアソレノイドバルブSLC1に、油路a4を介してリニアソレノイドバルブSLC2に、油路a5を介してリニアソレノイドバルブSLB1、油路a1,a2を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21にそれぞれ入力される。
上記油路a1には、チェックバルブ50とオリフィス60とが配設されており、前進レンジ圧PDによりチェックバルブ50が開かれるため、リニアソレノイドバルブSLC1に対する前進レンジ圧PDの供給は、排出時に比して急速となる。また、油路a1に供給された前進レンジ圧PDは、油路a3を介してアキュムレータ30の油室30aに入力され、該アキュムレータ30によって、リニアソレノイドバルブSLC1に供給される前進レンジ圧PDの蓄圧を行う。
また、油路a2より前進レンジ圧PDが入力ポート21eに入力される第1クラッチアプライリレーバルブ21は、ソレノイドバルブS1がONされて信号圧PS1が出力されていないため、Dレンジに切換えた当初(N−Dシフトの当初)は、スプリング21sの付勢力により左半位置にされており、出力ポート21jから油路jに前進レンジ圧PDを出力するが、同様にソレノイドバルブS1がONされて信号圧PS1が出力されていないため、スプリング22sの付勢力により左半位置にされている第2クラッチアプライリレーバルブ22にあって、入力ポート22hが遮断された状態となる。
ついで、例えば制御部70により前進1速段が判断されると、該制御部70の電気制御によりリニアソレノイドバルブSLC1がONされ、入力ポートSLC1aに入力されている前進レンジ圧PDを調圧制御して、制御圧PSLC1を係合圧PC1として徐々に大きくなるように出力ポートSLC1bから出力し、該制御圧PSLC1(係合圧PC1)が油路b1を介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22cに入力される。
すると、左半位置にされている第2クラッチアプライリレーバルブ22は、入力ポート22cに入力された制御圧PSLC1を、出力ポート22iより出力すると共に、出力ポート22dからも出力する。該出力ポート22iより出力した制御圧PSLC1は、油路b4,b5を介して油室22bに入力され、第2クラッチアプライリレーバルブ22を左半位置にロックすると共に、油路b4を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21bに入力され、スプール21p,21qをスプリング21sの付勢力に反して図中下方へ押圧して、該第1クラッチアプライリレーバルブ21を右半位置に切換える。
スプール21p,21qが右半位置に切換えられた第1クラッチアプライリレーバルブ21は、第2クラッチアプライリレーバルブ22の出力ポート22iより出力された制御圧PSLC1により、スプール21qをスプリング21tの付勢力に反して図中下方へ押圧しているが、入力ポート21eより入力された前進レンジ圧PDが、出力ポート21iより出力され、油路k1,k2,k3及び入力ポート21hを介して油室21cに入力されるため、該スプール21qは、該油室21cに作用する油圧とスプリング21tの付勢力とにより、図中上方に切換えられ、つまりスプール21pとスプール21qとが離間した状態でロックされる。なお、油路k1から第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに入力される前進レンジ圧PDは、該入力ポート22eにおいて遮断される。
そして、上述のようにリニアソレノイドバルブSLC1から第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22cに入力された制御圧PSLC1は、出力ポート22dから油路b2を介して油圧サーボ41に係合圧PC1として出力され、上記クラッチC−1が係合される。これにより、上記ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
また、上記油路b2には、チェックバルブ51及びオリフィス61が配設されており、係合圧PC1(制御圧PSLC1)を油圧サーボ41に供給する際はチェックバルブ51を閉じて、該オリフィス61だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ油圧サーボ41から係合圧PC1を排出する際はチェックバルブ51を開いて供給する場合に比して急速に排出するようになっている。さらに、油路b2に供給された係合圧PC1は、油路b3を介してC−1ダンパ31の油室31aに入力され、該C−1ダンパ31によって、油圧サーボ41に給排される係合圧PC1の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
[前進1速段のエンジンブレーキにおける動作]
また、例えば制御部70により前進1速段のエンジンブレーキが判断されると、該制御部70からの電気指令により、ソレノイドバルブS2がONされ、かつソレノイドバルブS1がOFFされ、さらに、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御される。該ソレノイドバルブS2がONされると、油路g1,g3を介して入力ポートS2aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS2として出力ポートS2bより出力されて、油路iを介してB−2リレーバルブ24の油室24aに入力され、スプール24pがスプリング24sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、該B−2リレーバルブ24が右半位置にされる。
また、ソレノイドバルブS1がOFFされると、油路g1,g2を介して入力ポートS1aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS1として出力ポートS1bより出力されて、油路h1,h2を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21aと、油路h1,h3を介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の油室22aと、油路h4を介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24cとに入力され、さらに、右半位置にされたB−2リレーバルブ24の出力ポート24bから油路h5を介してC−2リレーバルブ23の油室23aにも入力される。
すると、該C−2リレーバルブ23は、油室23aに入力された信号圧PS1によりスプール23pがスプリング23sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、右半位置にされる。なお、第1クラッチアプライリレーバルブ21は、該信号圧PS1が油室21aに入力されるため、該スプール21qが図中下方に切換えられ、右半位置にされるが、スプール21pは、上記前進1速段の際と同じ右半位置のままであって、特に影響はない。また、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、油室22aに該信号圧PS1が入力されるが、上述した油室22bの係合圧PC1とスプリング22sの付勢力とが打勝つため、スプール22pは左半位置にロックされたままである。
そして、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御され、制御圧PSLC2が出力ポートSLC2bから出力されると、該制御圧PSLC2は、油路c1を介して左半位置にロックされた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22fに入力され、係合圧PB2として出力ポート22gより油路c2に出力される。
該油路c2に出力された係合圧PB2は、右半位置にされているC−2リレーバルブ23の入力ポート23bに入力され、出力ポート23dより出力される。さらに、該係合圧PB2は、油路mを介して右半位置にされているB−2リレーバルブ24の入力ポート24eに入力され、出力ポート24gから出力されて、油路nを介して油圧サーボ45に入力され、上記ブレーキB−2が係止される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
なお、上記油路c2には、チェックバルブ52及びオリフィス62が配設されており、係合圧PB2をブレーキB−2の油圧サーボ45に供給する際はチェックバルブ52を閉じて、該オリフィス62だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ後述する排出時にあっては、チェックバルブ52を開いて油路c2内の油圧を急速に排出するようになっている。さらに、油路c2に供給された係合圧PB2は、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aに入力され、該C2−B2ダンパ32によって、油圧サーボ45に給排される係合圧PB2の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
また、例えば制御部により前進1速段の正駆動が判断され、つまりエンジンブレーキ状態の解除が判断されると、ソレノイドバルブS2がOFFされると共にソレノイドバルブS1がONされ、さらに、リニアソレノイドバルブSLC2がON(通電)される形で閉じられて、係合圧PB2としての制御圧PSLC2が0にされてドレーンされる。また、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、ソレノイドバルブS2のOFFによりB−2リレーバルブ24が左半位置に切換えられるため、入力ポート24d、油路l、マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)を介して該マニュアルシフトバルブのドレーンポートより排出され、これにより、リニアソレノイドバルブSLC2を介してドレーンするよりも早いクイックドレーンが行われて、該ブレーキB−2が素早く解放される。なお、油路m内の油圧は、左半位置に切換えられたC−2リレーバルブ23のドレーンポートEXより排出され、油路c1,c2内の油圧は、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXより排出される。
[前進2速段における動作]
ついで、例えば上記前進1速段の状態から制御部70により前進2速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、上記前進1速段の際と同様に(エンジンブレーキ時は除く)、ソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御が行われる。
即ち、リニアソレノイドバルブSLB1が調圧制御されると、制御圧PSLB1が係合圧PB1として出力ポートSLB1bから出力されて、油路f1を介して油圧サーボ44に入力され、ブレーキB−1が係止される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進2速段が達成される。
また、上記油路f1には、チェックバルブ54及びオリフィス64が配設されており、係合圧PB1をブレーキB−1の油圧サーボ44に供給する際はチェックバルブ54を閉じて、該オリフィス64だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ44から係合圧PB1を排出する際はチェックバルブ54を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路f1に供給された係合圧PB1は、油路f2を介してB−1ダンパ34の油室34aに入力され、該B−1ダンパ34によって、油圧サーボ44に給排される係合圧PB1の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
[前進3速段における動作]
続いて、例えば上記前進2速段の状態から制御部70により前進3速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLB1がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御が行われる。
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御によりブレーキB−1の解放制御が行われ、つまりブレーキB−1の油圧サーボ44の係合圧PB1(制御圧PSLB1)が油路f1を介してリニアソレノイドバルブSLB1のドレーンポートEXより排出制御され、該ブレーキB−1が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC3は、ON(通電)されて制御圧PSLC3が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、制御圧PSLC3が係合圧PC3として出力ポートSLC3bから出力されて、油路e1を介して油圧サーボ43に入力され、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進3速段が達成される。
また、上記油路e1には、チェックバルブ53及びオリフィス63が配設されており、係合圧PC3をクラッチC−3の油圧サーボ43に供給する際はチェックバルブ53を閉じて、該オリフィス63だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ43から係合圧PC3を排出する際はチェックバルブ53を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路e1に供給された係合圧PC3は、油路e2を介してC−3ダンパ33の油室33aに入力され、該C−3ダンパ33によって、油圧サーボ43に給排される係合圧PC3の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
[前進4速段における動作]
次に、例えば上記前進3速段の状態から制御部70により前進4速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC3がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC2の調圧制御が行われる。
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御によりクラッチC−3の解放制御が行われ、つまりクラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3(制御圧PSLC3)が油路e1を介してリニアソレノイドバルブSLC3のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−3が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC2は、ON(通電)されて制御圧PSLC2が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、制御圧PSLC2が係合圧PC2として出力ポートSLC2bから出力されて、油路c1を介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22fに入力される。
上述したように第2クラッチアプライリレーバルブ22は、ソレノイドバルブS1がONされて信号圧PS1が油室22aに入力されておらず、かつ油室22bに入力されている係合圧PC1により左半位置にロックされているため、入力ポート22fに入力された制御圧PSLC2(係合圧PC2)は、出力ポート22gより係合圧PC2として出力される。該出力ポート22gより出力した係合圧PC2は、油路c2を介してC−2リレーバルブ23の入力ポート23bに入力される。
さらに、C−2リレーバルブ23は、ソレノイドバルブS2がOFFされてB−2リレーバルブ24が左半位置にされ、油室23a及び油路h5がドレーン状態にされており、スプリング23sの付勢力により左半位置にされているため、入力ポート23bに入力された係合圧PC2は、出力ポート23cから出力されると共に、出力ポート23eからも出力される。該出力ポート23cから出力された係合圧PC2は、油路c5を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21dに入力され、該第1クラッチアプライリレーバルブ21のスプール21pを該係合圧PC2によりスプリング21sの付勢力と相俟って左半位置に切換えてロックする。この際、油路k1を介して入力ポート22eに入力されている前進レンジ圧PDは、出力ポート21iから出力ポート21jに切換えられ、油路jに出力されるが、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22hにより遮断される。また、油路k1に供給されていた前進レンジ圧PDが遮断されるので、油路k2,k3を介した油室21cに対するロック圧としての前進レンジ圧PDの供給は解除される。
なお、油路c5には、チェックバルブ55及びオリフィス65が配設されており、係合圧PC2を第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21dに供給する際はチェックバルブ55を閉じて、該オリフィス65だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油室21dから係合圧PC2を排出する際はチェックバルブ55を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。
そして、上記C−2リレーバルブ23の出力ポート23eから出力された係合圧PC2は、油路c3を介して油圧サーボ42に入力され、クラッチC−2が係合される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進4速段が達成される。
また、上述したように、油路c2には、チェックバルブ52及びオリフィス62が配設されており、上記前進1速段のエンジンブレーキ時と同様に、係合圧PC2をクラッチC−2の油圧サーボ42に供給する際はチェックバルブ52を閉じて、該オリフィス62だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ42から係合圧PC2を排出する際はチェックバルブ52を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路c2に供給された係合圧PC2は、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aに入力され、該C2−B2ダンパ32によって、油圧サーボ42に給排される係合圧PC2の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
[前進5速段における動作]
次に、例えば上記前進4速段の状態から制御部70により前進5速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC2の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC1がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御が行われる。
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC1の調圧制御によりクラッチC−1の解放制御が行われ、つまりクラッチC−1の油圧サーボ41の係合圧PC1(制御圧PSLC1)が油路b1,b2を介してリニアソレノイドバルブSLC1のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−1が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC3は、上記前進3速段の際と同様に、ON(通電)されて制御圧PSLC3が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、制御圧PSLC3が係合圧PC3として出力ポートSLC3bから出力されて、油路e1を介して油圧サーボ43に入力され、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−2の係合と相俟って、前進5速段が達成される。
[前進6速段における動作]
そして、例えば上記前進5速段の状態から制御部70により前進6速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC2の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC3がON(通電)される形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御が行われる。
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御によりクラッチC−3の解放制御が行われ、つまりクラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3(制御圧PSLC3)が油路e1を介してリニアソレノイドバルブSLC3のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−3が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLB1は、上記前進2速段の際と同様に、OFFされて制御圧PSLB1が0圧となるように閉じられていた状態からON(通電)されて調圧制御が行われ、制御圧PSLB1が係合圧PB1として出力ポートSLB1bから出力されて、油路f1を介して油圧サーボ44に入力され、ブレーキB−1が係合される。これにより、上記クラッチC−2の係合と相俟って、前進6速段が達成される。
[D−N時における動作]
その後、例えば運転手が車輌を減速していき、車速に応じてダウンシフトされて前進1速段の状態で停車した後、シフトレバーをDレンジ位置からNレンジ位置にすると、上記マニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポートが入力ポートとの間が遮断されると共にドレーンポートに連通され、つまり前進レンジ圧PDがドレーンされる。
また同時に、変速操作部69からのレンジ信号によりシフトレバーがNレンジ位置であることが検出され、シフトレンジ検出手段73によりNレンジが検出されると、まず、リニアソレノイドバルブSLC2及びリニアソレノイドバルブSLC3がON(通電)されると共に、リニアソレノイドバルブSLB1がOFFされ、これらの制御圧PSLC2,PSLC3,PSLB1が0圧(非出力状態)にドレーンされて、つまり各油圧サーボ42,43,44,45の油圧がドレーンされて、クラッチC−2、クラッチC−3、ブレーキB−1、ブレーキB−2が解放される。なお、ソレノイドバルブS1はON(通電)された状態で維持され、ソレノイドバルブS2もOFFされた状態に維持されて、つまり両ソレノイドバルブS1,S2から信号圧PS1,PS2は出力されない。
一方、リニアソレノイドバルブSLC1は、例えばクラッチC−1が急解放されると解放ショックが生じるため、徐々に制御圧PSLC1を減圧していくように調圧制御を行いつつ、最終的に制御圧PSLC1を0圧(非出力状態)にドレーンすることで、クラッチC−1を緩やかに解放する。そして、このクラッチC−1も解放されると、自動変速機3は全てのクラッチ・ブレーキが解放されて、ニュートラル状態とされる。
このリニアソレノイドバルブSLC1による解放制御の間は、該リニアソレノイドバルブSLC1の入力ポートSLC1aに油路a3などを介して接続されているアキュムレータ30が、オリフィス60よりもリニアソレノイドバルブSLC1側の油路a1,a3に対して、Dレンジの間に蓄圧した油圧を放出して圧力維持を行うので、該リニアソレノイドバルブSLC1によるクラッチC−1の緩やかな解放制御を可能にしており、これにより、前進1速段の状態からのD−Nシフト操作時において解放ショックが生じることが防止される。
[後進1速段における動作]
また、例えば運転手のシフトレバーの操作によってシフトレバーがRレンジ位置にされると、上述のようにマニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポートから後進レンジ圧PREVが出力され、該後進レンジ圧PREVは、油路lなどを介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24dに入力される。
また同時に、シフトレバーセンサ(不図示)によりシフトレバーがRレンジ位置であることが検出され、制御部70により該シフトレバー位置としてRレンジが判定されると、ソレノイドバルブS1はON(通電)された状態で維持され、かつソレノイドバルブS2もOFFされた状態に維持されて、つまり信号圧PS2は出力されないので、上記B−2リレーバルブ24はスプリング24sの付勢力によって左半位置に維持される。これにより、入力ポート24cに入力された後進レンジ圧PREVは、出力ポート24g、油路nを介してブレーキB−2の油圧サーボ45に供給され、ブレーキB−2が係合される。
さらに、制御部70によりリニアソレノイドバルブSLC3が徐々に制御圧PSLC3を出力するように調圧制御され、係合圧PC3として出力ポートSLC3bから出力されて、油路e1を介して油圧サーボ43に入力され、つまりクラッチC−3が緩やかに係合される。これにより、上記ブレーキB−2の係止と相俟って、後進1速段が達成される。
なお、RレンジよりNレンジに切換えられた際は、上記Nレンジの状態と同様にされ、つまりブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は油路n、B−2リレーバルブ24、油路l、マニュアルシフトバルブを介してドレーンされ、クラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3は、リニアソレノイドバルブSLC3よりドレーンされる。
また、例えば例えば運転手によりシフトレバーがRレンジ位置に操作された際に、車速が前進方向に所定速度以上であることを検出すると、制御部によりソレノイドバルブS2がONされ、かつリニアソレノイドバルブSLC3のON(通電状態)が維持され、つまりRレンジ圧PREVがブレーキB−2の油圧サーボ45に供給されないようにB−2リレーバルブ24により遮断すると共に、クラッチC−3の油圧サーボ43に係合圧PC3(制御圧PSLC3)を供給せず、これによって後進1速段の達成を防止する、いわゆるリバースインヒビット機能が行われる。
[ソレノイド・オールオフフェール時における動作]
続いて、油圧制御装置6におけるソレノイド・オールオフフェール時における動作を説明する。シフトレバー位置がDレンジにされた状態における通常走行時に、例えばバッテリーのショートや断線等に起因して、全てのソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブSLC1、リニアソレノイドバルブSLC2、リニアソレノイドバルブSLC3、リニアソレノイドバルブSLB1、ソレノイドバルブS1、ソレノイドバルブS2)がOFFフェール(以下、「オールオフフェール」という。)した場合、リニアソレノイドバルブSLC1、リニアソレノイドバルブSLB1、及びソレノイドバルブS2は、ノーマルクローズタイプであるため油圧の出力をせず、リニアソレノイドバルブSLC2、リニアソレノイドバルブSLC3、及びソレノイドバルブS1は、ノーマルオープンタイプであるため、それぞれの油圧を出力する。
正常時の前進1速段から前進3速段での走行時において、上記第1クラッチアプライリレーバルブ21は、上述のように油室21cに入力された前進レンジ圧PDによってスプール21pが右半位置にロックされており、このため出力ポート21iより出力した前進レンジ圧PDは、油路k1を介して、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに入力され、左半位置(正常時位置)にされた第2クラッチアプライリレーバルブ22により遮断された状態とされている。
この状態からオールオフフェールとなると、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、ソレノイドバルブS1から出力された信号圧PS1が油路h1,h3を介して油室22aに入力されることにより右半位置(故障時位置)に切換えられ、該入力ポート22eに入力された前進レンジ圧PDは、出力ポート22dより出力され、油路b2を介して油圧サーボ41に入力されて、クラッチC−1が係合される。また、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2から出力されたPSLC2(係合圧PC2)は、右半位置に切換えられた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22fによって遮断される。さらに、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3は、入力ポートSLC3aに入力されたライン圧PLが略々そのまま係合圧PC3として、出力ポートSLC3bより出力され、油路e1を介して油圧サーボ43に入力されて、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−1と上記クラッチC−3とが係合されて前進3速段が達成され(図2参照)、つまり前進1速段から前進3速段での走行時にオールオフフェールとなった際は、前進3速段による走行状態が確保される。
また、正常時の前進4速段から前進6速段での走行時において、上述のようにクラッチC−2の係合圧PC2が油路c1、第2クラッチアプライリレーバルブ22、油路c2、C−2リレーバルブ23、油路c5を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21dに入力されており、スプール21p,21qが左半位置にロックされているため、出力ポート21jより出力した前進レンジ圧PDは、油路jを介して、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22hに入力され、左半位置にされた第2クラッチアプライリレーバルブ22により遮断された状態とされている。
この状態からオールオフフェールとなると、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、ソレノイドバルブS1から出力された信号圧PS1が油路h1,h3を介して油室22aに入力されることにより右半位置に切換えられ、また、ソレノイドバルブS2がOFFとなってB−2リレーバルブ24は切換えられずに左半位置に維持されることで、油路h4が遮断されて油路h5にソレノイドバルブS1の信号圧PS1が出力されないため、C−2リレーバルブ23も切換えられずに左半位置に維持される。このため、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22hに入力された前進レンジ圧PDは、出力ポート22gより出力され、油路c2、C−2リレーバルブ23、油路c3を介して油圧サーボ42に入力されて、クラッチC−2が係合される。また、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2から出力されたPSLC2(係合圧PC2)は、右半位置に切換えられた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22fによって遮断されるが、上記油路c2に出力された前進レンジ圧PDがC−2リレーバルブ23を介して油路c5にも出力され、第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21dに入力されるので、該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、引き続き左半位置にロックされる。そして、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3は、入力ポートSLC3aに入力されたライン圧PLが略々そのまま係合圧PC3として、出力ポートSLC3bより出力され、油路e1を介して油圧サーボ43に入力されて、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−2と上記クラッチC−3とが係合されて前進5速段が達成され(図2参照)、つまり前進4速段から前進6速段での走行時にオールオフフェールとなった際は、前進5速段による走行状態が確保される。
また、上記前進4速段から前進6速段での正常走行時にオールオフフェールとなった場合において、車輌を停止させ、一旦、シフトレバーをNレンジ位置にすると、不図示のマニュアルシフトバルブは、前進レンジ圧PDを出力停止すると共にドレーンし、特にノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2と第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21eとに対する前進レンジ圧PDがドレーンされる。すると、油路j,c2,c5を介して入力されていた油室21dへの前進レンジ圧PDがドレーンされ、該前進レンジ圧PDによるロックが解除される。また、ノーマルオープンであるソレノイドバルブS1からは信号圧PS1が引き続き出力されるため、第1クラッチアプライリレーバルブ21は、油室21aに入力される信号圧PS1によってスプール21p,21qが右半位置に切換えられる。
なお、このオールオフフェール時におけるNレンジの状態では、ライン圧PLを元圧とし、かつノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3から略々ライン圧PLと同圧の制御圧PSLC3(係合圧PC3)が出力されるので、クラッチC−3は係合状態にある。また、クラッチC−3が係合されていても、クラッチC−1,C−2及びブレーキB−1,B−2は解放状態にあり、サンギヤS2に減速回転が入力されても、サンギヤS3及びキャリヤCR2が空転されるため、入力軸10とカウンタギヤ11との間は略々ニュートラル状態である(図1参照)。
そして、例えば運転手により再びシフトレバーがDレンジ位置にされると、マニュアルシフトバルブから前進レンジ圧PDが出力され、該前進レンジ圧PDは、右半位置に切換えられた第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21eに入力されると共に、出力ポート21iから油路k1に出力され、右半位置にある第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22e、出力ポート22d、油路b2を介してクラッチC−1の油圧サーボ41に入力されて、該クラッチC−1が係合し、つまり上記前進1速段から前進3速段での走行時におけるオールオフフェール時と同様の状態となり、前進3速段が確保される。これにより、オールオフフェール後にあって一旦車輌を停車した後でも車輌の再発進が可能となり、例えば安全な場所への移動や整備工場までの移動等が可能となるリンプホーム機能が確保される。
[ソレノイドバルブS1故障時におけるN−D時の動作]
続いて、本発明の要部であるソレノイドS1故障時におけるN−D時の動作について、主に図7乃至9に基づいて説明をする。例えば、通常走行中に、運転者がシフトレバーを前進走行レンジ(Dレンジ)位置からニュートラルレンジ(Nレンジ)位置に操作し、シフトレンジ検出手段73が、DレンジからNレンジへのシフトレンジの切換りを検出すると、上述したD−N操作時と同様にクラッチC−2、クラッチC−3、ブレーキB−1、ブレーキB−2及びクラッチC−1が解放されてニュートラル状態となる。そして、再度、運転者がシフトレバーを操作し、シフトレンジがNレンジからDレンジへと切換ったことをシフトレンジ検出手段73が検出すると、変速段判定手段74は車速(出力軸回転速度)及びアクセル開度に基づいて変速マップmapを参照し、車輌の走行状態が通常走行時に前進1速段又は前進2速段の範囲内の場合は前進1速段を、車輌の走行状態が通常走行時に前進3速段の範囲内の場合は前進3速段を、車輌の走行状態が通常走行時に前進4速段乃至前進6速段の範囲内の場合は前進5速段を、係合制御後の変速段として設定する(S1,S2、図6参照)。
上記変速段判定手段74によって前進5速段が係合制御後の変速段として設定されると、入力軸回転速度センサ67によって検出された入力軸回転速度(図8の入力軸回転速度B)が、出力軸回転速度に前進5速段のギヤ比を掛けて算出された値、即ちその時点における前進5速段における入力軸回転速度の理論値である理論入力軸回転(図8の正常時の入力軸回転速度A)より大きい場合は(inRpm>outRpm*5thギヤ比)、トルクリミテーション実行手段76によってエンジンの回転速度が制限され(S3,S4)、出力軸回転速度が上記理論入力軸回転速度に所定値αを足した値以下に減速される(inRpm≦outRpm*5thギヤ比+α)(S5、図8の期間X)。なお、上記所定値αは、エンジントルク及びエンジン回転速度の変動などによって生じ得る誤差範囲であり、入力軸回転速度が該誤差範囲である所定値αを超えて、理論入力軸回転速度よりも高くなった場合、実際のギヤ比が目標としていた前進5速段のギヤ比よりも大きいギヤ比を形成していると判定することが可能な値に設定される。
入力軸回転速度が理論入力軸回転速度に所定値αを足した値よりも小さくなると、ND係合手段75から油圧指令手段71を介して油圧制御装置6に制御信号が出力され、ニュートラル状態から前進5速段へ係合制御が開始される(S6)。このとき、正常時にはソレノイドバルブSLC3からクラッチC−3の油圧サーボ43に係合圧が出力されて係合すると共に(図8の油圧指令値C)、クラッチC−2の油圧サーボ42にはSLC2から係合圧が漸増されて係合し(図8の油圧指令値D)、これにより、前進5速段は急係合せずにゆっくりと形成される。
一方、この時断線などの理由によりソレノイドS1が故障して非通電状態にあると、オールオフフェール時と同様に第1クラッチアプライリレーバルブ21及び第2クラッチアプライリレーバルブ22に信号圧PS1を出力する。該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、油室21aに制御圧が入力されると、右半位置にスプール21p,21qが固定され、入力ポート21eに入力された前進レンジ圧PDが、油路k1を介して出力ポート21iから第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに出力される。
上記第2クラッチアプライリレーバルブ22も同様に、ソレノイドS1からの信号圧PS1が油室22aに入力されるとスプールが右半位置に固定され、正常時(左半位置)には遮断されている前進レンジ圧PDが出力ポート22dから油路b2を介してクラッチC−1の油圧サーボ41に出力される(図8の係合圧E)。
また、リニアソレノイドバルブSLC2からクラッチC−2の油圧サーボ42へ出力される係合圧は、第2クラッチアプライリレーバルブ22のスプール22pによって遮断されると共に、クラッチC−3の油圧サーボ43にはリニアソレノイドバルブSLC3から係合圧が出力されており、クラッチC−1とクラッチC−3とが係合して前進3速段が形成される。
そのため、ND係合手段75により前進5速段への係合制御が開始されると、ギヤ比不一致判定手段77は、入力軸回転速度が上述した理想入力軸回転速度に所定値αを足した値よりも大きくなっていないかを判定することによって(inRpm>outRpm*5thギヤ比+α)、実際のギヤ比が前進5速段のギヤ比から誤差範囲を超えて離れていないか、即ち、前進5速段よりも低速側の変速段(低速段、前進3速段)を形成している可能性の有無を判定する(S7、図8のY時点)。
また、上記ギヤ比不一致判定手段77によって、別の変速段が形成されている可能性があると判定されると、オーバーレブ判定手段79は、出力軸回転速度がエンジンの許容回転速度(Revlimit)を前進3速段のギヤ比で除した値よりも大きいかを判定する(outRpm>Revlimit/3rdギヤ比)。
つまり、前進3速段が形成されかつ、車速が一定速度以上の場合(出力軸回転速度がエンジンの許容回転速度を前進3速段のギヤ比で除した値より大きい場合)は、図8の入力軸回転速度Gに示すようにエンジン2が駆動車輪13によって連れ回りされてレブリミットを越えるため、オーバーレブすると判定され、それ以外の場合は、正常時の入力軸回転速度Aや、前進3速段は形成されていても車速が上記一定速度以下の時の入力軸回転速度Fのように入力軸回転速度がレブリミットを越えないため、オーバーレブしないと判定される。
しかし、上述した係合制御中ではギヤ比が変化するため、正確なフェールの検出をすることが困難であると共に、オーバーレブ判定手段79によりオーバーレブすると判定されずに前進5速段への係合制御が終了し、次に前進5速段から前進6速段へと変速されると、クラッチC−3とブレーキB−1の掴み換えが行われるため、前進3速段が形成されているものは、クラッチC−1とブレーキB−1とが係合して前進3速段から更に低速段側の前進2速段が形成されてオーバーレブ指定しまう虞がある(図9の入力軸回転速度H)。
そのため、オーバーレブ判定手段79によりオーバーレブすると判定されずに前進5速段への係合制御が終了すると(S8)、アップシフト禁止手段81によって前進5速段から前進6速段へのアップシフトが禁止されると共に、タイマTが開始する(S9)。
上記アップシフト禁止手段81は、上記タイマTが所定時間Taが経過するまで前進5速段から前進6速段へのアップシフトを禁止すると共に(図9の時間Ta)、フェール判定手段82はアップシフトが禁止されている間、前進5速段のギヤ比が成立しているかを検出し、他のギヤ比を検出した場合にはフェールと判定し、一定時間前進5速段のギヤ比が成立していた場合には正常と判定する(S10,S11)。なお、この前進5速段のギヤ比が成立している時間は、必ずしも所定時間Taと同じである必要はなく、時間Taの範囲内でよりも短い時間設定にしてもよい(図9の所定時間Z)。
上記フェール判定手段82によって正常と判定されると、アップシフトの禁止が解除され(S12)、変速判定手段72が変速マップmapを参照して変速判定を行う。該変速判定手段72により前進6速段への変速が判定されると(S13)、クラッチC−3とブレーキB−1の掴み換え変速が行われて前進6速段が形成されて終了する(S14,15)。また、前進5速段のままと判定されれば(S16)、前進5速段が維持されて終了する(S17)。
一方、ステップ2において、前進1速段もしくは前進3速段へと係合制御される場合には、上述した前進1速段と同様な通常の係合制御が行われる。また、オーバーレブ判定手段79によりオーバーレブすると判定されると、オーバーレブ回避手段80は前進5速段への係合制御を中断してニュートラル状態に戻す(S20、図8の入力回転速度I)。そして、このニュートラル状態を、急激なエンジンブレーキなどが掛からずに前進4速段において車輌が安定して走行できる速度に車速が低下するまで維持し(S21)、該車速が十分に低下したところで油圧指令手段71を介して油圧制御装置6に制御信号を出力して前進4速段へと移行させる(S22,S23)。
上記制御信号が油圧制御装置6に出力されると、リニアソレノイドバルブSLC1及びリニアソレノイドバルブSLC2からそれぞれクラッチC−1の油圧サーボ41、クラッチC−2の油圧サーボ42に係合圧が出力される。リニアソレノイドバルブSLC1から第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22cに係合圧が入力されると、該係合圧が出力ポート22iから油室22bへと出力される。すると、スプール22pが該リニアソレノイドバルブSLC1からの係合圧によって、ソレノイドS1の信号圧PS1に抗して、右半位置から左半位置に切換わる。それにより、リニアソレノイドバルブSLC1からの係合圧が出力ポート22dから油路b2を介してクラッチC−1に出力されると共に、遮断されていたリニアソレノイドバルブSLC2からの係合圧も出力ポート22gから油路c2,c3を介してクラッチC−2の油圧サーボ42に出力され、前進4速段が形成される。
また、アップシフト禁止中に前進3速段のギヤ比が検出されてフェール判定手段82によってフェールと判定されると、現在の変速段を前進5速段ではなく前進3速段であると判定する(S24)。そして、車速及びアクセル開度に基づいて変速マップmapを参照し、前進3速段から変速線により設定される変速段へと変速して終了する(S25,S26)。なお、この時、前進5速段及び前進6速段への変速は禁止されると共に、これらの変速段が選択された際には、変速可能な変速段のうち最も高いの前進4速段が選択される。
上記のように自動変速機の制御装置1を構成したことによって、目標変速段とは異なる前進3速段が形成された可能性があると判定された場合に、オーバーレブ判定手段79によって、前進3速段においてオーバーレブする車速であるかを判定するため、高精度にオーバーレブするか否かを判定することができる。
また、オーバーレブ回避手段80は、オーバーレブ判定手段79がオーバーレブすると判定すると、前進5速段への係合制御を中断し、ニュートラル状態に移行してオーバーレブを回避するため、どのような自動変速機においても確実にオーバーレブすることを防止できる。即ち、ソレノイドバルブS1の故障により、前進レンジ圧PDが故障時油圧供給切換え部21,22を介してクラッチC−1の油圧サーボに係合圧として供給され、クラッチC2の代わりにクラッチC1が、クラッチC3と共に係合して前進3速段が形成されてオーバーレブする虞のある自動変速機においても、確実にオーバーレブを防止することができる。
また、該ニュートラル状態を、車速が前進4速段に移行しても走行安定性を失わない速度に低下するまで維持し、その後に前進4速段へと移行するため、安全かつ確実にオーバーレブを回避できる。
更に、オーバーレブするか否かを高精度に判定することができるため、実際にオーバーレブするときにのみニュートラル状態に移行し、無闇に駆動力が切断されないため、ドライバビリティーが向上する。
また、前進5速段への変速制御が終了した後、一定時間の間、前進6速段へのアップシフトをアップシフト禁止手段81により禁止したことにより、フェール判定手段82は、ギヤ比が一定時間前進5速段のギヤ比が形成されているかを判定することができ、それによりフェール判定を正確に行うことができる。
また、フェール判定を行うことによって、車速が遅く、前進3速段を形成していてもオーバーレブしないと判定された場合に、前進5速段から前進6速段へのアップシフトが判定されてクラッチC−3とブレーキB−1とが掴み換えることにより、実際には前進3速段が前進2速段へとダウンシフトすることを防止して、該ダウンシフト時にオーバーレブすることを防止することができる。
なお、以上説明した実施の形態においては、本自動変速機の油圧制御装置6を前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機3に適用した場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、例えば前進8速段を達成する自動変速機や、3つの摩擦係合要素を係合して変速段を形成する自動変速機などに適用してもよく、つまり、ニュートラルから設定された変速段へと係合制御される際に、低速側の変速段が形成されてオーバーレブする虞があるものであれば、どのような自動変速機の制御装置にあっても本発明を適用することができる。
また、ギヤ比不一致判定手段77によって、前進3速段が形成されている可能性があると判定された場合には、オーバーレブするとして常にオーバーレブ回避手段80によって係合制御を中断してニュートラル状態にしてもよい。