JP5165922B2 - オキソチタニルフタロシアニン結晶、その製造方法及び電子写真感光体 - Google Patents
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Description
また、かかるフタロシアニン系顔料には、その化学構造によって、無金属フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン化合物、チタニルフタロシアニン化合物等が存在するとともに、それぞれのフタロシアニン化合物が、その製造条件の違いによって種々の結晶型をとり得ることが知られている。
このように結晶型が異なる多数種のフタロシアニン化合物結晶が存在する中で、電荷発生剤として、Y型結晶構造を有するオキソチタニルフタロシアニンを使用した電子写真感光体を製造した場合、他の結晶型のオキソチタニルフタロシアニンを使用した場合と比較して、電子写真感光体における電気特性が向上することが知られている。
このようなY型オキソチタニルフタロシアニン結晶に関しては、例えば、X線回折スペクトルにおいてCu−Kα線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)=27.3゜に最大回折ピークを有するオキソチタニルフタロシアニンであって、フタロシアニン環を形成し得る有機化合物と、チタン化合物と、を尿素又はアンモニアを添加したジアルキルアミノアルコール中で、130℃、4時間程度の条件で反応させてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
より具体的には、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるピークを所定の範囲に有し、示差走査熱量分析において50〜400℃の範囲内における温度変化のピークを有しないオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている。
すなわち、本発明の目的は、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れ、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度及び電荷保持率の向上に効果的に寄与するオキソチタニルフタロシアニン結晶、その製造方法及び電子写真感光体を提供することにある。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
すなわち、所定の光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、有機溶媒中に、例えば、7日以上の長期に渡って浸漬した場合であっても、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移を有効に抑制することができる。
また、所定の工程を経て製造されたオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、感光層中における分散性を効果的に向上させることができる。
かかる分散性を向上させる効果は、特に、工程(c)において、ウェットケーキを所定のアルコールを用いて洗浄することによって、オキソチタニルフタロシアニン結晶の表面特性が改質されることによって得られるものと考えられる。
いずれにしても、本発明のオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れることから、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度及び電荷保持率の向上に効果的に寄与することができる。
なお、ウェットケーキとは、比較的少量の、例えば、水等の溶媒中にオキソチタニルフタロシアニンが分散し塊状になっている状態を示す。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
このように構成することにより、ろ液における吸光度を測定することで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を、容易かつ定量的に評価することができる。
なお、分散性の指標として波長400nmの光に対する吸光度を測定する理由は、かかる波長の光に対する吸光度と、オキソチタニルフタロシアニン結晶における分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性と、の相関が、経験的に見出されているためである。
また、かかる相関は、オキソチタニルフタロシアニン結晶における表面特性の改質具合が、波長400nmの光に対する吸光度に反映されるために生じるものと考えられる。
このように構成することにより、かかる酸によって、不純物を効果的に分解することができる一方、オキソチタニルフタロシアニン化合物の分解については、効果的に抑制することができる。
このように構成することにより、得られるウェットケーキにおける表面積を増加させることができるため、後の洗浄工程において、より効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができる。
このように構成することにより、さらに効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができる。
このように構成することにより、オキソチタニルフタロシアニン結晶が結晶転移することをより効果的に抑制して、さらに安定したオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
このように構成することにより、感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性を、さらに向上させることができる。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
すなわち、所定の光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を、所定の工程を経て製造することによって、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れ、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度及び電荷保持率の向上に効果的に寄与するオキソチタニルフタロシアニン結晶を安定的に製造することができる。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
このように実施することにより、ろ液における吸光度を測定することで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を、容易かつ定量的に評価することができる。
したがって、結晶が安定であるとともに、感光層中における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を、より安定的に製造することができる。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
すなわち、電荷発生剤として、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れた所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を含むことから、優れた感度及び電荷保持率を有する電子写真感光体を得ることができる。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
このように構成することにより、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を、容易に確認することができる。
本発明の第1の実施形態は、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であって、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、オキソチタニルフタロシアニン結晶について、より具体的に説明するが、工程(a)〜(d)については、後の第2の実施形態において説明し、第1の実施形態においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶自体の特性等について説明する。
本発明としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶を構成するオキソチタニルフタロシアニン化合物としては、下記一般式(1)であらわされる化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のオキソチタニルフタロシアニン化合物であれば、オキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性をさらに向上させることができるばかりでなく、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶を安定して製造することができるためである。
また、特に、オキソチタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(2)で表されることが好ましい。その中でも特に、下記式(3)で表される無置換のオキソチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のオキソチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、より安定した性質を備えたオキソチタニルフタロシアニン結晶をさらに容易に製造することができるためである。
(1)光学特性
本発明としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶は、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有することを特徴とする(第1の光学特性)。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.2°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
この理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶と比較して、有機溶媒中における結晶安定性及び電荷発生能が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、有機溶媒中における結晶安定性及び電荷発生能を向上させることができるためである。
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン結晶がかかる特性を有することによって、感光層用塗布液中におけるその経時安定性や分散性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、オキソチタニルフタロシアニン結晶を、実際にテトラヒドロフラン等の有機溶媒中に24時間浸漬させた場合であっても、結晶型がαまたはβ型へ転移せず、所定の結晶型を保持していることを確認できるため、有機溶媒中における結晶転移を確実に制御することができるためである。
なお、オキソチタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を作成するための感光層用塗布液(以下、感光層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、オキソチタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を感光層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、オキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができるとともに、オキソチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤、及び結着樹脂等における相溶性が良好となるためである。したがって、オキソチタニルフタロシアニン結晶及び電荷輸送剤等の特性を、より有効に発揮させる感光体を形成することができ、さらに電気特性及び画像特性に優れた電子写真感光体を、安定して製造することができるためである。
また、本発明としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶は、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することを特徴とする。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、有機溶媒中に添加して長時間放置した場合であっても、結晶構造が、α型結晶及びβ型結晶へと結晶転移することを有効に抑制することができるためである。したがって、このようなオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、貯蔵安定性に優れた感光層用塗布液を得るこができ、その結果、電気特性や画像特性に優れた電子写真感光体を安定して製造することができる。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、290〜400℃の範囲内に現れることがより好ましく、300〜400℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるブラッグ角の具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、後述する実施例において詳述する。
また、本発明の第2の実施形態は、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、第1の実施形態において既に説明した内容は適宜省略し、第2の実施形態であるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法について説明する。
オキソチタニルフタロシアニン化合物の製造方法としては、かかる分子の製造材料としてのo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下において反応させて、オキソチタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
すなわち、下記反応式(1)または下記反応式(2)に準じて実施することが好ましい。なお、反応式(1)及び反応式(2)においては、チタンアルコキシドとして、一例ではあるが、式(5)で表されるチタンテトラブトキシドを用いている。
したがって、反応式(1)に示すように、式(4)で表されるo−フタロニトリルと、式(5)で表されるチタンアルコキシドとしてのチタンテトラブトキシドとを反応させるか、反応式(2)において示すように、式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンと、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドとを反応させて、式(3)で表されるオキソチタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
なお、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドの替わりに、四塩化チタンを用いてもよい。
また、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.40〜0.53モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体に対して、1/4モル当量を超えた過剰量を添加することにより、後述する尿素化合物との相互作用が効果的に発揮されるためである。なお、かかる相互作用については、尿素化合物の項で詳述する。
したがって、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリン等1モルに対して、0.42〜0.50モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.45〜0.47モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、上述した反応式(1)及び(2)で表される反応を、尿素化合物の存在下において行うことが好ましい。この理由は、尿素化合物の存在下において製造されたオキソチタニルフタロシアニン化合物を用いることにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンにおける相互作用が発揮されるため、特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができるためである。
すなわち、かかる相互作用とは、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をより促進させる作用である。そして、このような促進作用のもとに、原料物質を反応させることにより、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することができる。
また、反応式(1)及び(2)で使用される尿素化合物が、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる尿素化合物を、反応式(1)及び(2)中の尿素化合物として用いることにより、反応の過程で生成するアンモニアが、より効率的にチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
すなわち、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成するためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
なお、かかる錯体化合物は、180℃以上の高温条件で反応させた場合に、特異的に生成しやすいことが判明している。そのため、沸点が180℃以上の含窒素化合物中、例えば、キノリン(沸点:237.1℃)やイソキノリン(沸点:242.5℃)、あるいはこれらの混合物(重量比10:90〜90:10)中で実施することがより有効である。
また、反応促進剤としてのアンモニアや、それに起因した錯体化合物がさらに生成しやすいことから、上述した尿素化合物の中でも、尿素を用いることがより好ましい。
また、反応式(1)及び(2)で使用する尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、尿素化合物の添加量をかかる範囲内の値とすることにより、上述した尿素化合物の作用をより効率的に発揮させることができるためである。
したがって、かかる尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.2〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜0.7モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、反応式(1)及び(2)で使用する溶媒としては、例えば、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラリン、及びニトロベンゼン等の炭化水素系溶剤、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、及びクロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のケトン系溶剤、ホルムアミド、及びアセトアミド等のアミド系溶剤、ピコリン、キノリン、及びイソキノリン等の窒素含有溶剤からなる群の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
特に、沸点が180℃以上の含窒素化合物、例えば、キノリンやイソキノリンであれば、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成しやすくなることから好適な溶媒である。
また、反応式(1)及び(2)における反応温度を150℃以上の高温とすることが好ましい。この理由は、かかる反応温度が150℃未満、特に135℃以下となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応温度を180〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜240℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、反応式(1)及び(2)における反応時間は、反応温度にもよるが、0.5〜10時間の範囲とすることが好ましい。この理由は、かかる反応時間が0.5時間未満となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。一方、かかる反応時間が10時間を越えると、経済的に不利となったり、あるいは生成した錯体化合物が減少したりする場合があるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応時間を0.6〜3.5時間の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)酸処理前工程
次いで、上述した工程またはその他の工程によって製造されたオキソチタニルフタロシアニン化合物に対して酸処理を実施する前段階として、かかるオキソチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒中に加え、加熱下で一定時間、攪拌処理し、ついで当該攪拌処理よりも低温の温度条件下で一定時間、液を静置して安定化処理する酸処理前工程を行うことが好ましい。
また、酸処理前工程に使用する水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。なお水溶性有機溶媒には、少量であれば、非水溶性の有機溶媒を添加してもよい。
さらにまた、攪拌処理後の安定化処理の条件も特に限定されないが、およそ10〜50℃程度、特に好ましくは23±1℃前後の温度範囲の一定温度条件下で、5〜15時間程度、液を静置して安定化させるのが好ましい。このように酸処理前工程を行うことによって、粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
次いで、酸処理工程として、粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得ることを特徴とする。
この理由は、酸に対して粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を溶解することによって、オキソチタニルフタロシアニン化合物を製造する際に残留した材料物質等由来する不純物を、十分に分解することができるためである。
また、使用する酸としては、濃硫酸、トリフルオロ酢酸及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種のであることが好ましい。
この理由は、このような酸であれば、上述した不純物をより効果的に分解することができる一方、オキソチタニルフタロシアニン化合物の分解については、効果的に抑制することができるためである。
また、かかる酸処理後においては、これらの酸に由来する成分を、後述する洗浄によって容易に除去することができるためである。
なお、酸処理工程は、使用する酸によっても異なるが、一般に0〜10℃、0.5〜3.0時間の条件で行うことが好ましい。
次いで、酸処理工程において得られたオキソチタニルフタロシアニン溶液を、貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得ることを特徴とする。
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下することによって、後の洗浄工程における洗浄効果を、有効に発揮させることができるためである。
すなわち、滴下によって、析出したオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキが、表面積が大きな不定形となるため、後の洗浄工程における洗浄効果を、有効に発揮させることができるためである。
また、使用する貧溶媒が、水であることが好ましい。
この理由は、水であれば、極性や温度調節の点から、さらに容易にオキソチタニルフタロシアニン化合物を析出させることができるためである。
したがって、析出したオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキにおける表面積を増加させて、より効果的に洗浄工程を実施することができるためである。
また、その他の貧溶媒としては、メタノール、エタノール、メタノールと水の混合溶媒、エタノールと水の混合溶媒等を用いることもできる。
なお、貧溶媒の温度は、使用する貧溶媒の種類によっても異なるが、一般に0〜20℃範囲内とすることが好ましい。
次いで、滴下工程において得られたオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄することを特徴とする。
この理由は、炭素数1〜4のアルコールを用いて洗浄することによって、後の結晶型変換工程において得られるオキソチタニルフタロシアニン結晶の、感光層中における分散性を効果的に向上させることができるためである。かかる分散性を向上させる効果は、オキソチタニルフタロシアニン結晶の表面特性が改質されることによって得られるものと考えられる。
いずれにしても、所定のアルコールを用いて洗浄することによって、感光層中における分散性に優れ、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度及び電荷保持率の向上に効果的に寄与するオキソチタニルフタロシアニン結晶を安定的に得ることができる。
なお、炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール及び1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらのアルコールであれば、さらに効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができるためである。
この理由は、所定のアルコールによって洗浄した後に、さらに水で洗浄することによって、オキソチタニルフタロシアニン結晶が結晶転移することを抑制して、より安定したオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができるためである。
また、炭素数1〜4のアルコール及び水による洗浄は、それぞれ複数回繰り返すことも好ましい。
なお、具体的な洗浄方法としては、例えば、10g程度のウェットケーキを、500ml程度の所定のアルコールや水等に浸漬した後、撹拌等によって懸濁させて行うことができる。
また、かかる洗浄の用いる所定のアルコール及び水等の温度については、例えば、0〜50℃の範囲内の値とすることが好ましく、10〜40℃の範囲内の値とすることがより好ましい。洗浄時間については、例えば、5分〜10時間の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜8時間の範囲内の値とすることがより好ましい。
次いで、洗浄工程において得られた洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることを特徴とする。
この理由は、オキソチタニル二ロシアニンのウェットケーキを、非水系溶媒中で加熱撹拌することによって、結晶型を第1の実施形態において説明した光学特性及び熱特性を有する所定の結晶型に変換することができるためである。
なお、上述した加熱撹拌は、水が存在した状態で非水系溶媒中に分散させて、30〜70℃で5〜40時間攪拌することが好ましい。
また、非水系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、及びジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
また、工程(d)、すなわち、上述した結晶型変換工程の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことが好ましい。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
この理由は、上述した工程を経て得られた所定のろ液における吸光度を測定することで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を、容易かつ定量的に評価することができるためである。
したがって、結晶が安定であるとともに、感光層中における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を、より安定的に製造することができるためである。
すなわち、上述したろ液における波長400nmの光に対する吸光度が、0.01未満の値となると、オキソチタニルフタロシアニン結晶における結晶形成自体に問題がある場合があるためである。一方、上述したろ液における400nmの光に対する吸光度が0.08を超えた値となると、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が低下しやすくなって、電子写真感光体における感度や電荷保持率の低下の原因となる場合があるためである。
したがって、上述したろ液における400nmの光に対する吸光度を0.012〜0.07の範囲内の値とすることがより好ましく、0.012〜0.05の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、分散性の指標として波長400nmの光に対する吸光度を測定する理由は、かかる波長の光に対する吸光度と、オキソチタニルフタロシアニン結晶における分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性と、の相関が、経験的に見出されているためである。
また、かかる相関は、オキソチタニルフタロシアニン結晶における表面特性の改質具合が、波長400nmの光に対する吸光度に反映されるために生じるものと考えられる。
また、所定のろ液における吸光度の測定方法については、後の実施例において記載する。
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶を懸濁させるために使用する混合溶媒の量としては、メタノール4g及びN,N−ジメチルホルムアミド4gを混合して、合計8gとする。
また、懸濁させるオキソチタニルフタロシアニン結晶の量を0.1gとする。
また、(f)工程において懸濁液をろ過するためのフィルタとしては、PTFEタイプの0.1μmメンブランフィルタを用いるものとする。
さらに、工程(g)において吸光度を測定する際の吸収層(ろ液)の厚さは、10mm(セル長)とする。
すなわち、図1においては、横軸に上述した所定のろ液における400nmの光に対する吸光度(−)を採り、縦軸に電子写真感光体における感度の絶対値(V)を採った特性曲線を示している。なお、かかる電子写真間感光体の構成や、感度の測定方法等については、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、所定のろ液における吸光度(−)の値が増加するにしたがって、感度の絶対値(V)が増加している。なお、感度の絶対値(V)が小さい値である程、優れた感度特性を備えることを意味する。
より具体的には、所定のろ液における吸光度(−)の値が0から0.08へと増加するのにともなって、感度の絶対値(V)は、約40Vから急激に増加しつつも、約60V以下の範囲内の値をとっていることがわかる。
一方、所定のろ液における吸光度(−)の値が0.08を超えた値となると、感度の絶対値(V)の増加は緩やかになるものの、約60V以上の高い値となってしまうことが分かる。
したがって、感度の絶対値(V)を約60V以下に抑制して優れた感度特性を得るためには、所定のろ液における吸光度(−)の値を0.08以下の値とすることが有効であることが理解される。
すなわち、図2においては、横軸に上述した所定のろ液における400nmの光に対する吸光度(−)を採り、縦軸に電子写真感光体における電荷保持率(%)を採った特性曲線を示している。なお、かかる電子写真感光体の構成や、電荷保持率の測定方法等については、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、所定のろ液における吸光度(−)の値が増加するにしたがって、電荷保持率(%)の値が減少している。なお、電荷保持率(%)の値が大きい値である程、電子写真感光体表面に形成された静電潜像を長時間保持することができ、電気特性に優れていることを意味する。
より具体的には、所定のろ液における吸光度(−)の値が0から0.08へと増加するのにともなって、電荷保持率(%)の値は、約100%からやや急激に減少しつつも、約97.5%以上の範囲内の値とをとっていることがわかる。
一方、所定のろ液における吸光度(−)の値が0.08を超えた値となると、電荷保持率(%)の値の減少はやや緩やかになるものの、約97.5%以下の低い値となってしまうことが分かる。
したがって、電荷保持率(%)の値を約97.5%以上に保持して優れた電気特性を得るためには、所定のろ液における吸光度(−)の値を0.08以下の値とすることが有効であることが理解される。
ここで、分散性の指標としては、オキソチタニルフタロシアニン結晶を含んだ感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、からなるパラメータ(A・C-1・d-1)(単位:1/(重量%・m)、以下同様である。)を用いることとする。かかるパラメータ及び感光層における反射吸光度の測定方法等については後述するが、基本的にランベルト・ベールの法則に準じて感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価したパラメータである。
すなわち、図3においては、横軸に(A・C-1・d-1)を採り、左縦軸に電子写真感光体における感度の絶対値(V)を採った特性曲線Aを、右縦軸に感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性(相対評価)を採った特性曲線Bを、それぞれ示している。
また、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性の相対評価は、感光層を顕微鏡で観察した結果に基づく評価である。
特性曲線Bから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が増加する程、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性(相対評価)が向上している。
すなわち、(A・C-1・d-1)の値が大きい程、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が高いことを示している。
したがって、(A・C-1・d-1)によって、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を明確に評価できると言える。
また、特性曲線Aから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が増加するのにしたがって、感度の絶対値が減少している。
したがって、特性曲線A及びBの結果を総合的に評価すると、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が向上するほど、電子写真感光体における感度が向上すると言える。
よって、本発明の分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、電子写真感光体における感度を効果的に向上させることができると言える。
なお、電子写真感光体における電荷保持率についても感度と同様に、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性との間に明確な相関があることが、別途確認されている。
なお、電子写真感光体が積層型である場合には、その電荷発生層を対象として用いることで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価することができる。
第3の実施形態は、基体上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、を含む感光層を備えた電子写真感光体であって、電荷発生剤が、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であり、かつ、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする電子写真感光体である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、第1及び第2の実施形態において既に説明した内容は適宜省略し、第3の実施形態である電子写真感光体について、主に単層型電子写真感光体を例にとって説明する。
図4(a)に示すように、本発明としての電子写真感光体10の基本的構成としては、基体12上に、特定の電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単一の感光層14を設けたものであることが好ましい。
この理由は、単層型電子写真感光体10であれば、正負いずれの帯電型においても適用可能となるとともに、簡易な層構成となることから、感光層を形成する際の被膜欠陥を抑制し、生産性を向上させることができるためである。
また、層間の界面が少ないことから、光学的特性を向上させることができるためである。
また、図4(b)に例示するように、この感光層14と、基体12と、の間に、中間層16を形成した単層型感光体10´とすることもできる。
また、図4に例示する基体12としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上述した金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、アルマイト、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。ドラム状の場合は、基体の直径を10〜60mm、より好ましくは10〜35mmの範囲内の値とすることが装置の小型化の面で好ましい。
なお、基体に対して陽極酸化等を実施した場合、非導電性や半導体特性となる場合があるが、そのような場合であっても所定の効果が得られる限り、基体として用いることができる。
また、図4(b)に示すように、基体12上に、所定の結着樹脂を含有する中間層16を設けてもよい。
この理由は、基体と感光層との密着性を向上させるとともに、この中間層内に所定の微粉末を添加することで、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制するとともに、カブリや黒点の原因となる非露光時における基体から感光層への電荷注入を抑制することができるためである。この微粉末としては、光散乱性、分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等を用いることができる。
したがって、中間層の膜厚としては、0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
(1)結着樹脂
本発明の電子写真感光体に使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂をはじめ、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
本発明において使用される電荷発生剤としては、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であって、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
この理由は、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れることから、優れた感度及び電荷保持率を有する電子写真感光体を得ることができるためである。
なお、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶の詳細については、上述した第1及び第2の実施形態における記載内容と重複するため、省略する。
この理由は、電荷発生剤の添加量をかかる範囲内の値とすることによって、電子写真感光体への露光をした際に、当該電荷発生剤が効率的に電荷を発生することができるためである。すなわち、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部に対して0.1重量部未満の値となると、電荷発生量が感光体上に静電潜像を形成するのに不十分となる場合があるためである。一方、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部に対して50重量部を超えた値となると、感光層用塗布液中に均一に分散させることが困難となる場合があるためである。
よって、結着樹脂100重量部に対する電荷発生剤の添加量を0.5〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明において使用される正孔輸送剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールなど)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど)、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が1重量部未満の値となると、感光層の正孔輸送能が極端に低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。
また、添加量が120重量部を超える値となると、分散性が低下し、結晶化しやすくなるという問題が生じるためである。
したがって、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜90重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
本発明に用いられる電子輸送剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ジナフトキノン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系化合物、フルオレノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物などが好適に使用される。これらは、それぞれ単独で使用されるほか、2種以上を併用することもできる。
この理由は、かかる電子輸送剤の添加量が1重量部未満の値となると、感光層の電子輸送能が極端に低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。
また、添加量が120重量部を超える値となると、分散性が低下し、結晶化しやすくなるという問題が生じるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜90重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、感光層の膜厚を5.0〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる感光層の厚さが5.0μm未満の値となると、電子写真感光体としての機械的強度が不十分となる場合があるためである。一方、かかる感光層の厚さが100μmを超えた値となると、基体から剥離しやすくなったり、均一に形成することが困難となる場合があるためである。したがって、かかる感光層の厚さを10〜80μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜40μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、上述した感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することが好ましい。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
この理由は、関係式(1)を満足する感光層であれば、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を、容易に確認することができるためである。
すなわち、第2の実施形態において図3を用いて説明したように、関係式(1)の左辺である(A・C-1・d-1)(1/(重量%・m))の値は、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性との間に、明確な相関を有する。したがって、(A・C-1・d-1)の値が所定の範囲であるか否かによって、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性を、容易に確認することができるためである。
すなわち、感光層における膜厚(d/m)及びオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)が一定の場合、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が不十分であると、入射光が吸収されにくく、波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が小さい値となりやすいためである。一方、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が良好であれば、入射光が吸収されやすく、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が大きい値となるためである。
よって、かかる理由から、関係式(1)における左辺(A・C-1・d-1)の値より、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価できることがわかる。
なお、電子写真感光体が積層型である場合には、その電荷発生層を対象として用いることで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価することができる。
すなわち、図3においては、横軸に(A・C-1・d-1)を採り、縦軸(左軸)に電子写真感光体における感度の絶対値(V)を採った特性曲線Aを示している。
かかる特性曲線Aから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が0に近づく程感度の絶対値(V)の値は大きく、(A・C-1・d-1)の値がより大きな値となるにしたがって、感度の絶対値(V)の値は小さくなっている。より具体的には、(A・C-1・d-1)の値が0〜1.75×104の範囲においては、かかる値が大きくなるにしたがって急激に感度の絶対値(V)の値が低下していることがわかる。一方、(A・C-1・d-1)の値が1.75×104以上の範囲においては、かかる値が増加するにともなって、感度の絶対値(V)の値が緩やかに減少し、60V以下の範囲内の値をとっていることがわかる。
したがって、(A・C-1・d-1)の値を1.9×104以上の値とすることがより好ましく、2.0×104以上の値とすることがさらに好ましい。
まず、感光層(基準厚さ2.5×10-5m)を積層した支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A1)を、色差計(ミノルタ(株)製、色差計CM1000)を用いて測定する。次に、感光層を積層していない支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A2)を、同様に測定する。
より具体的に、図5(a)及び(b)を用いて説明すると、図5(a)は、支持基体12上に感光層14が積層してある状態を示しており、図5(b)は、支持基体12のみの状態を示している。そして、図5(a)及び(b)中のI0は、それぞれの支持基体に対して照射された光(入射光)の強度を表しており、I1及びI2はそれぞれの支持基体に対して照射された入射光における反射光の強度を表している。したがって、支持基体の影響を排除して、感光層における反射吸光度を求めるためには、感光層と支持基体の反射吸光度が混在しているA1から、支持基体の反射吸光度であるA2を差し引けばよい。
よって、得られた反射吸光度の値(A1、A2)をもとに、下記数式(1)から、中間層の反射吸光度(A)を算出すればよい。
なお、図5(a)における反射吸光度(A1)は、下記数式(2)から算出され、同様に、図5(b)における反射吸光度(A2)は、下記数式(3)から算出される。
単層型電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に特定の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えば、ブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が、図6に示すように、特定の電荷発生剤を含む電荷発生層24と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含む電荷輸送層22と、からなる積層型の感光層20であることも好ましい。
この積層型電子写真感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、特定の電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上述した構造とは逆に、図6(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図6(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
また、単層型感光体の場合と同様に、基体上に中間層25を形成することも好ましい。
この積層型感光層20において、感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)の厚さは、特に限定されないが、電荷発生層については、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.1〜3μmの厚さであり、電荷輸送層については、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmの厚さである。
[実施例1]
1.オキソチタニルフタロシアニン化合物の製造
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)を加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
(1)顔料化前処理
上述したオキソチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体12gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、オキソチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶11.8gを得た。
上述した顔料化前処理で得られたオキソチタニルフタロシアニンの粗結晶10gを、97%の濃硫酸100gに加えて溶解した。なお、かかる酸処理は、5℃で1時間行った。
次いで、この溶液を、氷冷下の純水5リットル中に毎分10mlにて滴下したのち15±3℃付近で30分間、攪拌し、その後30分静置した。次いで溶液をガラスフィルターでろ過し、ウェットケーキを得た。
次いで、得られたウェットケーキをメタノール500mlに懸濁して洗浄し、洗浄後のメタノールをガラスフィルターによってろ別した。そして、かかる洗浄を4回行った。次に得られたウェットケーキを20℃の純水500mlで懸濁して洗浄し、洗浄後の水をガラスフィルターでろ過した。
次いで、洗浄後のウェットケーキ5gを、水0.75g、クロロベンゼン100g中に加えて、50℃にて24時間加熱撹拌を行った。
そして上澄みをガラスフィルターによってろ別して得られた結晶を、100mlのメタノールで漏斗上にて洗浄したのち、50℃で5時間、真空乾燥させて、式(3)で表される無置換のオキソチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.5gを得た。
(1)CuKα特性X線回折スペクトル測定
得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%の条件下、密閉系中で24時間、保管したのちテトラヒドロフランを除去して、X線回折装置(理学電機(株)製のRINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。得られたスペクトルチャートを、図7に示す。また、かかるスペクトルチャートは、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さない特徴を有していることから、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶が、安定した所定の結晶型を有していることが確認できた。この理由は、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°におけるピークは、上述した所定の結晶型に特有のピークであり、26.2°におけるピークは、β型結晶に特有のピークであるためである。
なお、測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
また、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析を行った。得られた示差走査分析チャートを、図8に示す。また、かかるチャートにおいては、吸着水の気化にともなうピーク以外に、296℃において1つのピークが確認された。
なお、測定条件は下記の通りとした。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
また、得られたオキソチタニル二ロシアニン結晶0.1g(1.25重量部)を、メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))8g(100重量部)に対して加えて、液の温度を23℃に保ちながら、回転速度100rpmにて1時間撹拌して懸濁液とした。次いで、得られた懸濁液を、PTFEタイプの0.1μmメンプランフィルタ(アドバンテスト(株)製)を用いてろ過し、ろ液を得た。次いで、得られたろ液をセル長10mmのセルに収容した後、かかるろ液における波長400nmの光に対する吸光度を吸光度計(HITACHI(株)製、分光光度計U3000)で測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)中間層の形成
ビーズミルを用いて、酸化チタン(MT−02、アルミナ、シリカ、シリコーンで表面処理した数平均一次粒子径が10nm(テイカ製))250重量部、四元共重合ポリアミド樹脂CM8000(東レ製)100重量部、溶媒としてメタノール1000重量部と、n-ブタノール250重量部とを、5時間混合、分散させ、さらに5ミクロンのフィルタにてろ過処理して、中間層用塗布液を作成した。
次いで、直径30mm、長さ238.5mmのアルミニウム基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて中間層用塗布液を塗布した。その後、130℃、30分の条件で硬化処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
次いで、ビーズミルを用いて、電荷発生剤として上述したようにして製造したオキソチタニルフタロシアニン結晶を250重量部、結着樹脂としてポリビニルブチラール樹脂100重量部、分散媒としてテトラヒドロフラン8000重量部を、48時間混合、分散させ、電荷発生層用の塗布液を得た。得られた塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過後、上述した中間層上にディップコート法にて塗布し、80℃で5分間乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次いで、超音波分散機内に、正孔輸送剤として下記式(7)で表される化合物(HTM−1)55重量部と、添加剤としてメタターフェニル5重量部と、結着樹脂として粘度平均分子量20,000のポリカーボネート樹脂60重量部と、粘度平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂40重量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン310重量部と、トルエン310重量部と、を収容したのち、10分間分散処理させて、電荷輸送層用塗布液を得た。
得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、120℃で30分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し積層型電子写真感光体を作製した。
(1)感度の測定
得られた電子写真感光体における感度を測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が−850Vになるように帯電させ、次いで、白色光からバンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.0μJ/cm2)を電子写真感光体表面に対して露光した(照射時間50msec)。次いで、露光後350msec経過後の電位を測定し、感度とした。得られた結果を表1に示す。なお、測定した電位は負の値となるため、表1においては、かかる値の絶対値を記載している。
また、得られた電子写真感光体における電荷保持率を測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が−850Vになるように帯電させ、帯電後1秒後の電位を測定して、電荷保持率(%)を測定した。得られた結果を表1に示す。
また、実施例2においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を3回とし、その後の水で洗浄する回数を2回としたほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、実施例3においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を2回とし、その後の水で洗浄する回数を3回としたほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、実施例4においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を1回とし、その後の水で洗浄する回数を4回としたほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、比較例1においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、60℃の水で5回洗浄したほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、比較例2においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、60℃の水で3回洗浄したほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、比較例3においては、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、20℃の水で3回洗浄したほかは、実施例1と同様にオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造するとともに電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、実施例1と同様であった。
また、本発明にかかるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法によれば、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を、安定的に製造できるようになった。
したがって、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として用いた電子写真感光体は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における電気特性の向上や、品質の安定化に著しく寄与することが期待される。
Claims (11)
- Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であって、
下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)前記オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)前記ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後の前記ウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程 - 前記工程(d)の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことを特徴とする請求項1に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、前記オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)前記懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)前記ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程 - 前記工程(a)において使用する酸が、濃硫酸、トリフルオロ酢酸及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
- 前記工程(b)において使用する貧溶媒が、水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
- 前記工程(c)において使用する炭素数1〜4のアルコールが、メタノール、エタノール及び1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
- 前記工程(c)において、前記ウェットケーキを前記炭素数1〜4のアルコールによって洗浄をした後、さらに水で洗浄することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
- 前記オキソチタニルフタロシアニン結晶が、有機溶媒中に24時間浸漬した後に測定されるCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶。
- Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法であって、
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)前記オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)前記ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後の前記ウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程 - 前記工程(d)の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことを特徴とする請求項8に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、前記オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)前記懸濁液をフィルタにてろ過してろ液を得る工程
(g)前記ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程 - 基体上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、を含む感光層を備えた電子写真感光体であって、
前記電荷発生剤が、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であり、かつ、
下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする電子写真感光体。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)前記オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)前記ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後の前記ウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程 - 前記感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、前記感光層における膜厚(d/m)と、前記感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
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