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JP4891003B2 - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体 Download PDF

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JP4891003B2 JP2006234401A JP2006234401A JP4891003B2 JP 4891003 B2 JP4891003 B2 JP 4891003B2 JP 2006234401 A JP2006234401 A JP 2006234401A JP 2006234401 A JP2006234401 A JP 2006234401A JP 4891003 B2 JP4891003 B2 JP 4891003B2
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Description

本発明は、電子写真感光体に関し、特に、指油の付着によって、クラックの発生や感光層の結晶化等が生じることが少ない電子写真感光体に関する。
従来、画像形成装置に用いられる電子写真感光体としては、光照射によって電荷を発生する電荷発生剤、発生した電荷を輸送する電荷輸送剤、およびこれらの物質が分散される層を構成する結着樹脂等からなる有機感光体が広く使用されている。
また、このような有機感光体に対して、表面を帯電させ(主帯電工程)、静電潜像を形成した後(露光工程)、この静電潜像を現像バイアス電圧が印加された状態でトナー現像し(現像工程)、さらに形成されたトナー像を、反転現像方式により転写紙に転写し(転写工程)、それを加熱定着して、所定の画像形成を行うという画像形成プロセスが実施されている。
そして、有機感光体上の残留トナーについては、クリーニングブレードを用いて除去され(クリーニング工程)、有機感光体上の残留電荷については、LED等により消去される(除電工程)プロセスが実施されている。
しかしながら、従来の電子写真感光体は、感度が低いばかりか、耐久性に乏しいという問題が見られた。
そこで、反転現像方式に用いる電子写真感光体であって、転写画像メモリーを小さくするとともに、耐ガス性を向上させるべく、特定の電子輸送剤を使用するとともに、ターフェニル化合物を添加した正帯電単層型電子写真感光体が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、正帯電特性や繰り返し特性を向上させるべく、特定の電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂を含有した単層型電子写真感光体において、さらにビフェニル誘導体を添加することが開示されている(例えば、特許文献2)。
さらに、感度低下等を少なくするとともに、耐ガス性を向上させるべく、電子写真感光体の感光層において、正孔輸送剤として、特定のスチルベン誘導体とポリカーボネート樹脂を用いるとともに、さらにビフェニル誘導体やセバシン酸誘導体を添加することが開示されている(例えば、特許文献3)。
特開2001−242656号(特許請求の範囲) 特開2000−314969号公報(特許請求の範囲) 特開平6−75394号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1〜3に開示された電子写真感光体は、未だ耐久性や耐摩耗性に乏しいばかりか、感度特性が不十分であるという問題が見られた。
また、特許文献1〜3に開示された電子写真感光体は、新たな問題として、指油等の付着によって、クラックが生じやすくなったり、感光層が結晶化したりするという問題が見られた。
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、所定の可塑剤成分を添加することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止できることを見出した。
すなわち、本発明は、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油の付着によって、クラックの発生や感光層の結晶化等が生じることが少ない電子写真感光体を提供することを目的とする。
本発明の電子写真感光体によれば、導電性基体上に、少なくとも、電荷発生剤、正孔輸送剤、及び結着樹脂を含有する感光層を備えた電子写真感光体であって、結着樹脂として、複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、複数のポリカーボネート樹脂が、下記一般式(7)で示されるポリカーボネート樹脂を含むとともに、下記一般式(8)または(9)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、かつ、感光層が、可塑剤成分として、下記一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有し、さらに、複数のポリカーボネート樹脂と、可塑剤成分とが、同一層に含まれることを特徴とする電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、このように構成することにより、結着樹脂としての複数のポリカーボネート樹脂と、特定構造を有する可塑剤成分と、が相互作用を発揮し、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
また、具体的には、可塑剤成分が、式(8)や(9)で表される分子構造のポリカーボネート樹脂と選択的に相溶するとともに、式(7)で表される分子構造のポリカーボネート樹脂により機械的強度を得ることができるようになり、耐指油性及び耐摩耗性という相反する特性を、同時に得ることができるようになる。
(一般式(7)中、Ra及びRbは、それぞれ独立した水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数6〜12の置換又は非置換のアリール基であり、添字k及びlは、それぞれ独立した0〜4の整数であり、Rc及びRdの一方は、水素原子であり、もう一方は、炭素数1〜2のアルキル基であり、Wは、単結合または−O−、−CO−であり、添字m及びnは、0.05<n/(n+m)<0.6の関係式を満足するモル比である。)
(一般式(8)中、複数の置換基Reは、水素原子、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基、あるいは炭素数6〜30の置換又は非置換のアリール基であり、添字oは、0〜4の整数である。)
(一般式(9)中、複数の置換基Rfは、水素原子、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基、あるいは炭素数6〜30の置換又は非置換のアリール基であり、添字pは、0〜4の整数である。)
(一般式(1)中、R1〜R10はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、Rは、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキレン基、あるいは窒素原子を含む有機基であり、nは0の整数を示す。)
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が単層型であって、可塑剤成分の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、電荷発生剤や電荷輸送剤等が同一層に含有される単層型感光層であっても、可塑剤成分が効果的に分散して、結着樹脂と、可塑剤成分との相互作用をさらに有効に発揮させることができる。したがって、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が積層型であって、可塑剤成分の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、電荷輸送層、あるいは電荷発生層において、可塑剤成分が効果的に分散して、結着樹脂と、可塑剤成分との相互作用をさらに有効に発揮させることができる。したがって、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
なお、ここでの結着樹脂とは、可塑剤が含まれる層における結着樹脂を意味する。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、可塑剤成分が、下記式(2)〜(6)で表される化合物であることが好ましい。
このように構成することにより、結着樹脂と、可塑剤成分との相互作用をさらに有効に発揮させることができる。したがって、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。





また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生剤が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴うピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることが好ましい。
このように構成することにより、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶が、優れた電荷発生能を備えるとともに、有機溶媒中における安定性にも優れていることから、貯蔵安定性に優れた感光層用塗布液を得ることができる。したがって、例えば、製造してから7日以上経過した感光層用塗布液を用いた場合であっても、優れた感度特性を有する電子写真感光体を、より安定的に製造することができる。
また、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶が、感光層用塗布液中における分散性にも優れることから、添加剤を多量に用いた場合であっても、かぶりの発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層の95%応答性時間(23℃、700Vの条件で帯電させた後、300msec後に帯電電圧が100Vとなるのに相当する波長780nmの露光量によって、帯電電圧が130Vになるまでの時間)を20msec以内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、所定の感度特性を安定的に得ることができる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層のガラス転移点(DSC測定)を65℃以上の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送剤が、ビススチルベン化合物またはビスブタジエン化合物であることが好ましい。
このように構成することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送剤としてのビススチルベン化合物またはビスブタジエン化合物が対称型構造を有することが好ましい。
このように構成することにより、可塑剤成分が、特定の分子構造を有するポリカーボネート樹脂とさらに選択的に相溶することができ、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
なお、ビススチルベン化合物またはビスブタジエン化合物が対称型構造を有するとは、式(17)〜(20)で表される化合物のように、基準炭素や基準面を中心として分離した場合に、それぞれが鏡面対称状態にあることを意味する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、図1に例示するように、導電性基体上に、少なくとも、正孔輸送剤、及び結着樹脂を含有する積層型の感光層を備えた電子写真感光体であって、結着樹脂として、複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、感光層が、可塑剤成分として、ビフェニル誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
また、具体的には、複数のポリカーボネート樹脂が、上記一般式(7)で示されるポリカーボネート樹脂を含むとともに、上記一般式(8)または(9)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、かつ、感光層が、可塑剤成分として、上記一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有し、さらに、複数のポリカーボネート樹脂と、可塑剤成分とが、同一層に含まれることを特徴とする電子写真感光体である。
以下、本発明の第1の実施形態である積層型の電子写真感光体について具体的に説明する。
1.支持基体
図1に例示する支持基体12としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、支持基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、支持基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、干渉縞の発生防止のためには、エッチング、陽極酸化、ウエットブラスティング法、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法を用いて、支持基体の表面に粗面化処理を行うことが好ましい。
なお、支持基体に対して陽極酸化等を実施した場合、非導電性や半導体特性となる場合があるが、そのような場合であっても所定の効果が得られる限り、導電性基体の中に含むことができる。
2.中間層
(1)基本的構造
図1に例示するように、支持基体12上に、所定の結着樹脂を含有する中間層25を設けてもよい。
(2)結着樹脂
中間層に使用される結着樹脂としてはポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、メラミン、エポキシ、アルキッド、フェノール、アクリル、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
(3)添加剤
また、製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止したり、分散性向上等を図ったりする目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することも好ましい。
特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が好ましい添加剤である。
また、微粉末等の添加剤を添加する場合、その粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、微粉末等の添加剤を添加する場合、その添加量を、中間層の樹脂100重量部に対して1000重量部以下、20〜500重量部が好ましく、50〜300重量部とすることがより好ましい。
(4)膜厚
また、中間層は膜厚を厚くすることによって、支持基体における凹凸の隠蔽性が高まるため、スポット状の画質欠陥は低減する方向にあって好ましいが、それとは逆に、残留電位の上昇等の電気的特性が低下する方向にある。
したがって、中間層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
3.電荷発生層
(1)基本的構造
電荷発生層は、結着樹脂100重量部に対して、電荷発生物質を20〜500重量部、有機溶媒を1,000〜50,000重量部の範囲で、それぞれ含む電荷発生層用塗布液の塗布物から構成されている。すなわち、電荷発生層は、所定の電荷発生層用塗布液を塗布した後、有機溶媒を飛散させることにより形成されている。
この理由は、このような配合比率からなる電荷発生層用塗布液から電荷発生層を構成することにより、さらに均一かつ安定的な電荷発生層の形成ができるようになるためである
。したがって、低温低湿条件下での明電位及び高温高湿下でのかぶり特性が向上し、安定的かつ経済的に形成することができるようになる。
なお、電荷発生層の膜厚は、一般には0.01〜5.0μm、好ましくは0.05〜3.0μmの範囲の値とすることが好ましい。
(2)電荷発生剤
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料等の従来公知の電荷発生剤が挙げられる。
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(10)〜(13)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
また、上述した電荷発生剤のうち、特に半導体レーザ等の光源を備えたレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置に使用する場合には、600〜800nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンのいずれかを少なくともひとつが含まれていることが好ましい。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を備えた静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置に使用する場合には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばペリレン系顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
なお、単層型感光体の場合、電荷発生剤の添加量を、全結着樹脂重量に対して、0.1〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、顔料系の電荷発生剤においては、その結晶構造の違いによって、電荷発生能や分散性等の諸特性が大きく変わってくることが知られている。そして、かかる結晶構造の違いは、X線回折スペクトルや、示差走査熱量分析によって特定することができる。
そこで、本発明における電荷発生剤としては、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴うピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることが、さらに好ましい。
この理由は、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶が、優れた電荷発生能を備えるとともに、有機溶媒中における安定性にも優れていることから、貯蔵安定性に優れた感光層用塗布液を得ることができるためである。したがって、例えば、製造してから7日以上経過した感光層用塗布液を用いた場合であっても、優れた感度特性を有する電子写真感光体を、より安定的に製造することができる。
また、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶が、感光層用塗布液中における分散性にも優れることから、添加剤を多量に用いた場合であっても、かぶりの発生を効果的に抑制することができる。
以下、特定のチタニルフタロシアニン結晶について、光特性と、熱特性と、にわけて、さらに説明する。
まず、光特性については、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であれば、かかる結晶は、電荷発生能に優れたY型結晶となるため、他のα型やβ型と比較して、感度特性を著しく向上させることができる。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましく、さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.4°にピークを有さないことが好ましい。
この理由は、このようにすることによって、結晶中にY型結晶以外のα型やβ型の結晶が部分的に含有されることを、より確実に抑制することができるためである。
また、有機溶媒中に7日間浸漬した後に回収したチタニルフタロシアニン結晶が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さないことが好ましい。
この理由は、有機溶媒中において7日間浸漬した場合であっても、チタニルフタロシアニン結晶が、上述した特性を保持できることによって、チタニルフタロシアニン結晶の有機溶媒中における結晶転移を、確実に制御することができるためである。
なお、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を製造するための電荷発生層用塗布液(以下、電荷発生層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
また、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する際の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を電荷発生層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができるとともに、特定のチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤、及び結着樹脂等における相溶性が良好となるためである。したがって、特定のチタニルフタロシアニン結晶及び電荷輸送剤等の特性を、より有効に発揮させる感光体を形成することがで、さらに感度特性に優れた電子写真感光体を、安定して製造することができるためである。
また、熱特性については、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴うピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であれば、有機溶媒中に添加して長時間放置した場合であっても、結晶構造が、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移することを有効に抑制することができるのである。したがって、このようなチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、貯蔵安定性に優れた電荷発生層用塗布液を得るこができ、その結果、感度特性に優れた電子写真感光体を安定して製造することができる。
また、かかる熱特性を有することによって、チタニルフタロシアニン結晶の感光層用塗布液に対する分散性が向上することから、添加剤を多量に用いた場合であっても、かぶりの発生を効果的に抑制することができる。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、290〜400℃の範囲内に現れることがより好ましく、300〜400℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
また、CuKα特性X線回折スペクトルの具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、後述する実施例において詳述する。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶は、以下の工程(a)〜(b)によって製造することができる。
(a)o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンを0.40〜0.53モルの範囲内の値で添加し、かつ、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して尿素化合物を0.1〜0.95モルの範囲内の値で添加して反応させ、チタニルフタロシアニン化合物を製造する工程
(b)(a)工程において製造したチタニルフタロシアニン化合物に対して、酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を製造する工程
以下、チタニルフタロシアニン結晶の製造方法について詳細に説明する。
まず、チタニルフタロシアニン化合物の製造方法としては、かかる分子の製造材料としてのo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下において反応させて、チタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
ここで、式(11)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を例にとって、その製造方法を具体的に説明する。
すなわち、式(11)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を製造する場合には、下記反応式(1)又は下記反応式(2)に準じて実施することが好ましい。なお、反応式(1)及び反応式(2)においては、チタンアルコキシドとして、一例ではあるが、式(15)で表されるチタンテトラブトキシドを用いている。
したがって、反応式(1)に示すように、式(14)で表されるo−フタロニトリルと、式(15)で表されるチタンアルコキシドとしてのチタンテトラブトキシドとを反応させるか、反応式(2)において示すように、式(16)で表される1,3−ジイミノイソインドリンと、式(15)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドとを反応させて、式(11)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
なお、式(15)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドの替わりに、四塩化チタンを用いてもよい。
また、式(15)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(14)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(16)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.40〜0.53モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、式(15)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(14)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(16)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体に対して、1/4モル当量を超えた過剰量を添加することにより、後述する尿素化合物との相互作用が効果的に発揮されるためである。なお、かかる相互作用については、尿素化合物の項で詳述する。
したがって、式(15)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(14)で表されるo−フタロニトリルまたは式(16)で表される1,3−ジイミノイソインドリン等1モルに対して、0.43〜0.50モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.45〜0.47モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)を、尿素化合物の存在下において行うことが好ましい。この理由は、尿素化合物の存在下において製造されたチタニルフタロシアニン化合物を用いることにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンにおける相互作用が発揮されるため、特定のチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができるためである。
すなわち、かかる相互作用とは、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をより促進させる作用である。そして、このような促進作用のもとに、原料物質を反応させることにより、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することができる。
また、工程(a)で使用される尿素化合物が、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる尿素化合物を、反応式(1)及び(2)中の尿素化合物として用いることにより、反応の過程で生成するアンモニアが、より効率的にチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
すなわち、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成するためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
なお、かかる錯体化合物は、180℃以上の高温条件で反応させた場合に、特異的に生成しやすいことが判明している。そのため、沸点が180℃以上の含窒素化合物中、例えば、キノリン(沸点::237.1℃)やイソキノリン(沸点:242.5℃)、あるいはこれらの混合物(重量比10:90〜90:10)中で実施することがより有効である。
よって、反応促進剤としてのアンモニアや、それに起因した錯体化合物がさらに生成しやすいことから、上述した尿素化合物の中でも、尿素を用いることがより好ましい。
また、工程(a)で使用する尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、尿素化合物の添加量をかかる範囲内の値とすることにより、上述した尿素化合物の作用をより効率的に発揮させることができるためである。
したがって、かかる尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.3〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.4〜0.7モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)で使用する溶媒としては、例えば、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラリン、及びニトロベンゼン等の炭化水素系溶剤、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、及びクロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のケトン系溶剤、ホルムアミド、及びアセトアミド等のアミド系溶剤、ピコリン、キノリン、及びイソキノリン等の窒素含有溶剤からなる群の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
特に、沸点が180℃以上の含窒素化合物、例えば、キノリンやイソキノリンであれば、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成しやすくなることから好適な溶媒である。
また、工程(a)における反応温度を150℃以上の高温とすることが好ましい。この理由は、かかる反応温度が150℃未満、特に135℃以下となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。
したがって、工程(a)における反応温度を180〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜240℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、工程(a)における反応時間は、反応温度にもよるが、0.5〜10時間の範囲とすることが好ましい。この理由は、かかる反応時間が0.5時間未満となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。一方、かかる反応時間が10時間を越えると、経済的に不利となったり、あるいは生成した錯体化合物が減少したりする場合があるためである。
したがって、工程(a)における反応時間を0.6〜3.5時間の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
次いで、上述した工程において製造されたチタニルフタロシアニン化合物に対して、後処理としての酸処理を実施し、チタニルフタロシアニン結晶を得ることが好ましい。
すなわち、酸処理を実施する前段階として、上述した反応によって得たチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒中に加え、加熱下で一定時間、攪拌処理し、ついで当該攪拌処理よりも低温の温度条件下で一定時間、液を静置して安定化処理する酸処理前工程を行うことが好ましい。
また、酸処理前工程に使用する水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。なお水溶性有機溶媒には、少量であれば、非水溶性の有機溶媒を添加してもよい。
また、酸処理前工程のうち攪拌処理の条件は特に限定されないが、およそ70〜200℃程度の温度範囲の一定温度条件下で、1〜3時間程度の攪拌処理を行うのが好ましい。
さらにまた、攪拌処理後の安定化処理の条件も特に限定されないが、およそ10〜50℃程度、特に好ましくは23±1℃前後の温度範囲の一定温度条件下で、5〜15時間程度、液を静置して安定化させるのが好ましい。
次いで、酸処理工程を以下のように実施することが好ましい。
すなわち、上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニン結晶を酸に溶解させた後、当該溶液を、水に対して滴下して再結晶させ、次いで得られたチタニルフタロシアニン結晶をアルカリ水溶液中で洗浄することが好ましい。具体的には、得られた粗結晶を酸に溶解し、この溶液を氷冷下の水中に滴下したのち一定時間にわたって攪拌し、さらに10〜30℃の範囲内の温度で静置して再結晶させることが好ましい。次いで、乾燥させず、水が存在した状態において、非水系溶媒中で、30〜70℃で2〜8時間攪拌することが好ましい。
なお、酸処理に使用する酸としては、例えば濃硫酸、トリフルオロ酢酸、及びスルホン酸等を用いることが好ましい。
この理由は、かかる強酸を酸処理に用いることによって、不純物を十分に分解することができる一方、特定のチタニルフタロシアニン結晶の分解は抑えることができるためである。よって、より高純度かつ結晶特性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を得ることができるためである。
また、洗浄処理に使用するアルカリ水溶液としては、例えばアンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等の一般的なアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
この理由は、酸処理後の特定のチタニルフタロシアニン結晶を、かかるアルカリ水溶液を用いて洗浄することによって、当該結晶の環境を酸性から中性とすることができるためである。その結果、次工程における当該結晶の取り扱いが容易となるとともに、当該結晶の安定性を向上させることができるためである。
また、攪拌処理のための非水系溶媒としては、例えばクロロベンゼン、及びジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
(3)結着樹脂
電荷発生層を構成する結着樹脂の種類としても、当該電荷発生層が表面層に該当する場合には、複数のポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする。
この理由は、このように構成することにより、結着樹脂と、可塑剤成分との相互作用をさらに有効に発揮させることができるためである。すなわち、可塑剤成分が、一方のポリカーボネート樹脂と選択的に相溶するとともに、もう一方とは非相溶状態を維持することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
なお、かかる結着樹脂の詳細については、後述する電荷輸送層の項目において詳述する。
(4)可塑剤成分
また、電荷発生層が表面層に該当する場合には、電荷発生層が、可塑剤成分として、所定構造を有するビフェニル誘導体を含有することを特徴とする。
この理由は、このような可塑剤成分を使用することにより、結着樹脂との間の相互作用をさらに有効に発揮させることができるためである。
すなわち、かかる可塑剤成分であれば、一方のポリカーボネート樹脂と選択的に相溶することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができる。
なお、かかる可塑剤成分の詳細については、後述する電荷輸送層の項目において詳述する。
また、このような可塑剤成分の添加量を、電荷発生層における結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる可塑剤成分の添加量が1重量部未満となると、一方のポリカーボネート樹脂と選択的に相溶することが困難となる場合があるためである。また、かかる可塑剤成分の添加量が30重量部を超えると、その選択性が低下して、機械的強度や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、可塑剤成分の添加量を、電荷発生層における結着樹脂100重量部に対して、2〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
4.電荷輸送層
(1)基本的構成
電荷輸送層は、電荷輸送剤(正孔輸送剤)と、有機溶剤および結着樹脂と共に均一に分散させた後、塗布することにより形成することが好ましい。
また、電荷輸送層の膜厚は、一般に2〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲内の値に設定することが好ましい。
(2)正孔輸送剤
(2)−1 種類
本発明の電荷輸送層に用いられる正孔輸送剤としては、従来公知の種々の化合物を使用することができる。具体的に、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニレンジアミン系化合物の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
(2)−2 具体例1
また、正孔輸送剤の具体例としては、下記一般式(17)〜(20)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(17)式中、R1a〜R12aはそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR13a(R13aは炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基、R1a〜R5a、R6a〜R10a、R11aとR12aはそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar1aは水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、nは0〜2の整数である。)
(一般式(18)中、R14〜R22はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR23(R23は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R14〜R18、R19とR20、R21とR22はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、X1は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
また、R16およびR20は上記置換基に加えて、下記一般式(18´)で表される置換基であっても良い。
(一般式(18´)中、Ar2、Ar3は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、cは0〜2の整数である。)
(一般式(19)中、R24〜R35はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR36(R36は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R24〜R28、R29とR30、R31とR32はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、X2は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
また、R26は上記置換基に加えて、下記一般式(19´)で表される置換基であっても良い。
(一般式(19´)中、Ar4、Ar5は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、dは0〜2の整数である。)
(一般式(20)中、R37〜R46はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR47(R47は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R37〜R41、R42とR43、R45とR46はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar4、Ar5は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、eは0〜2の整数である。)
また、正孔輸送剤の分子量を300〜2,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような分子量範囲の正孔輸送剤を用いることにより、膜厚のばらつきが小さくなるばかりか、初期のみならず、所定の連続印刷を実施した後であっても、感光体層における感度特性を維持することができるためである。
また、このような分子量範囲の正孔輸送剤であれば、取り扱いが容易であるばかりか、結晶化も少なく、耐久性にも優れているためである。
したがって、上述した正孔輸送剤の具体例のうち、分子量が300〜2,000である化合物であればより好ましい。
なお、かかる正孔輸送剤の分子量は、例えば、構造式をもとに算出することもできるし、あるいは、質量分析計で得られたマススペクトルを用いて測定することができる。
(2)−3 具体例2
また、正孔輸送剤の具体例としては、下式(21)〜(24)で表される化合物(HTM−1〜4)が挙げられる。
(2)−4 添加量
また、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、1〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が1重量部未満の値になると、所定の連続印刷を実施した後に、感光体層における感度特性を維持することができない場合があるためである。
一方、かかる正孔輸送剤の添加量が100重量部を超えると、均一に混合分散することが困難となったり、結晶化しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)結着樹脂
(3)−1 平均分子量
電荷輸送層を構成する結着樹脂の種類としては、当該電荷輸送層が表面層に該当する場合には、複数のポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする。
その際、かかる複数のポリカーボネート樹脂の平均分子量としては、特に制限されるものではないが、例えば、一方のポリカーボネート樹脂の平均分子量を大きくし、他方を小さくするといったように、平均分子量の異なる複数のポリカーボネート樹脂とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、上述したような、可塑剤成分が特定の分子構造に対して選択的に相溶する効果を、さらに有効に発揮させることができるためである。すなわち、可塑剤成分が、比較的平均分子量の小さいポリカーボネート樹脂と選択的に相溶する一方、比較的平均分子量の大きいポリカーボネート樹脂とは比較的相溶しないためである。より具体的には、平均分子量が40,000以上のポリカーボネート樹脂と、平均分子量が40,000未満のポリカーボネート樹脂とを併用することが好ましい。
(3)−2 配合比率
また、複数のポリカーボネート樹脂を併用するにあたり、一方のポリカーボネート樹脂100重量部とした場合に、他方のポリカーボネート樹脂の添加量を10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
例えば、式(8)又は式(9)で表されるポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合に、式(7)で表されるポリカーボネート樹脂の添加量を10〜80重量部とすることが好ましい。
この理由は、式(7)のポリカーボネート樹脂の添加量が10重量部未満の値となると、可塑剤成分との相互作用を発揮させることが困難となる場合があるためである。また、式(7)のポリカーボネート樹脂の添加量が80重量部を超えると、式(8)又は式(9)ポリカーボネート樹脂の添加量が相対的に減少し、耐久性や耐磨耗性等が著しく低下する場合があるためである。
したがって、一方のポリカーボネート樹脂100重量部に対して、他方のポリカーボネート樹脂の添加量を20〜50重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)−3 種類
また、本発明は、分子構造が異なる複数のポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする。この理由は、分子構造が異なる複数のポリカーボネート樹脂であれば、可塑剤成分との相互作用をさらに有効に発揮させることができるためである。
すなわち、例えば、可塑剤成分が、式(8)で表されるようなシクロ環構造を含むポリカーボネート樹脂や、式(9)で表されるような中心部分に非対称構造を有するポリカーボネート樹脂と選択的に相溶する一方、式(7)で表されるような共重合体のポリカーボネート樹脂とは比較的相溶し難いためである。
一方、分子構造が異なる複数のポリカーボネート樹脂を用いることにより、機械的強度や耐久性を維持しながら、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化についても有効に防止することができるためである。
また、一般式(7)の構造単位を有するポリカーボネート樹脂の好適例として、式(25)〜(27)で表されるポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
また、一般式(8)、(9)の構造単位を有するポリカーボネート樹脂の好適例として、式(28)〜(30)で表されるポリカーボネート樹脂を、それぞれ挙げることができる。
その他、電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、上述したポリカーボネート樹脂以外に、従来から感光層に使用されている種々の樹脂を併用することができる。
例えば、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂をはじめ、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
(4)可塑剤
また、本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送層が表面層に該当する場合には、電荷輸送層が、可塑剤成分として、一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有することを特徴とする。
この理由は、可塑剤成分として、一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有させることによって、結着樹脂としての複数のポリカーボネート樹脂と、特定構造を有する可塑剤成分と、が相互作用を発揮し、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができるためである。
また、具体的な可塑剤成分としては、式(31)で表される化合物(BP−1〜22)であることが好ましい。
また、このような可塑剤成分の添加量を、電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる可塑剤成分の添加量が1重量部未満となると、一方のポリカーボネート樹脂と選択的に相溶することが困難となって、特に、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を防止することが困難となる場合があるためである。一方、かかる可塑剤成分の添加量が30重量部を超えると、他方のポリカーボネート樹脂と相溶する割合が多くなって、耐久性や耐摩耗性及び感度特性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、可塑剤成分の添加量を、電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対して、2〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
次いで、図2を用いて、電荷輸送層における可塑剤の添加量と、電子写真感光体における摩耗量と、の関係を説明する。
図2においては、横軸に電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量(重量部)を採り、縦軸に電子写真感光体における摩耗量(μm)を採った特性曲線を示している。
かかる特性曲線から理解されるように、可塑剤の添加量(重量部)の値が0から30重量部へと増加すると、それにともなって、摩耗量(μm)の値も僅かに増加しているものの、約1.5μm以下の値を安定的に維持していることがわかる。一方、可塑剤の添加量(重量部)の値が30重量部を超えた値となると、摩耗量(μm)の値における増加割合が、徐々に大きくなってしまい、所定の耐摩耗性を安定的に維持することができないことがわかる。
かかる原因は、上述したように、複数のポリカーボネート樹脂に対して、可塑剤が選択的に相溶することが困難となって、複数のポリカーボネート樹脂と可塑剤との相互作用におけるバランスが崩れるためであると考えられる。
なお、添加剤としては、式(3)で表される化合物(BP−2)を用いた。また、電子写真感光体における組成や摩耗量の測定方法等は、後の実施例1において具体的に記載する。
次いで、図3を用いて、電荷輸送層における可塑剤の添加量と、電子写真感光体における感度電位と、の関係を説明する。
図3においては、横軸に電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量(重量部)を採り、縦軸に電子写真感光体における感度電位の絶対値(V)を採った特性曲線を示している。なお、感度電位の絶対値(V)が小さいほど、電子写真感光体における感度特性が優れていることを示す。
かかる特性曲線から理解されるように、可塑剤の添加量(重量部)の値が0から30重量部へと増加すると、それにともなって、感度電位の絶対値(V)の値も僅かに増加しているものの、30V強の値を安定的に維持していることがわかる。一方、可塑剤の添加量(重量部)の値が30重量部を超えた値となると、感度電位の絶対値(V)の値における増加割合が、徐々に大きくなってしまい、所定の感度電位を安定的に維持することができないことがわかる。
かかる原因は、上述した可塑剤の添加量と、電子写真感光体における摩耗量と、の関係における記載内容と同様の作用によるものと考えられる。
なお、添加剤や、電子写真感光体における組成及び感度電位の測定方法等は、後の実施例1において具体的に記載する。
次いで、図4を用いて、電荷輸送層における可塑剤の添加量と、電子写真感光体における光応答性と、の関係を説明する。
図4においては、横軸に電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量(重量部)を採り、縦軸に電子写真感光体における光応答性(msec)を採った特性曲線を示している。なお、光応答性(msec)が小さいほど、電子写真感光体における感度特性が優れていることを示す。
かかる特性曲線から理解されるように、可塑剤の添加量(重量部)の値が0から30重量部へと増加すると、それにともなって、光応答性(msec)の値も僅かに増加しているものの、約4.5msecの値を安定的に維持していることがわかる。一方、可塑剤の添加量(重量部)の値が30重量部を超えた値となると、光応答性(msec)の値における増加割合が、徐々に大きくなってしまい、所定の光応答性を安定的に維持することができないことがわかる。
かかる原因は、上述した可塑剤の添加量と、電子写真感光体における摩耗量または感度電位と、の関係における記載内容と同様の作用によるものと考えられる。
なお、添加剤や、電子写真感光体における組成及び光応答性の測定方法等は、後の実施例1において具体的に記載する。
(5)添加剤
また、上記各成分のほかに、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が用いられる。また、光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。その他にも、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
(6)感光体特性
(6)−1 95%応答性時間
また、95%応答性時間(23℃、700Vの条件で帯電させた後、300msec後に帯電電圧が100Vとなるのに相当する波長780nmの露光量によって、帯電電圧が130Vになるまでの時間)を20msec以内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、所定の感度特性を安定的に得ることができるためである。
したがって、かかる95%応答性時間を15msec以内の値とすることがより好ましく、10msec以内の値とすることがさらに好ましい。
(6)−2 ガラス転移点
また、感光層のガラス転移点(DSC測定)を65℃以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができるためである。
したがって、かかるガラス転移点を70〜120℃の範囲内の値とすることがより好ましく、75〜100℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(7)製造方法
また、積層型電子写真感光体の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、下記工程(a)〜(c)を含むことが好ましい。
(a)導電性支持体上に、中間層を形成する工程(中間層の形成工程と称する場合がある。)
(b)中間層上に、結着樹脂と、電荷発生物質と、溶媒と、を含む電荷発生層用塗布液を塗布して、電荷発生層を形成する工程(電荷発生層の形成工程と称する場合がある。)
(c)電荷発生層上に、複数のポリカーボネート樹脂と電荷輸送剤と溶媒とを含む電荷輸送層用塗布液を塗布して電荷輸送層を形成する工程(電荷輸送層の形成工程と称する場合がある。)
また、本発明は、電荷発生層及び電荷輸送層のいずれにも適用できるが、最表面側になる電荷輸送層に適用するのが好ましい。
(7)−1 中間層の形成工程
中間層の形成にあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えばブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することが好ましい。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することが好ましい。
その後、支持基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが望ましい。
なお、かかる塗布液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
(7)−2 電荷発生層の形成工程
次いで、電荷発生層を塗布液を作製するにあたり、分散処理を行う方法は特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を用いることが好ましい。
次いで、得られた塗布液を、既に形成してある中間層表面に対して塗布する。この塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いることが好ましい。
その後、この中間層表面上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが望ましい。
また、かかる塗布液の溶媒として、上述したように、プロピレングリコールモノアルキルエーテルと、環状エーテル化合物との混合溶媒を用いることができる。また、電荷発生剤等の分散性や、感光体層表面における平滑性を良くするために、塗布液を作成する際に、界面活性剤やレベリング剤等を添加することもできる。
また、塗布液の溶媒量は、電荷発生層の結着樹脂100重量部に対して、1,000〜50,000重量部の範囲で添加することが好ましい。
(7)−3 電荷輸送層の形成工程
次いで、電荷輸送層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に、電荷輸送剤等を添加して、分散処理を行い、塗布液を形成することが好ましい。
次いで、得られた塗布液を、既に形成してある電荷発生層表面に対して塗布する。この塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いることが好ましい。
その後、この電荷発生層表面上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが望ましい。
また、かかる塗布液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。また、必要に応じてレベリング剤等を用いることもできる。
また、この積層型感光体は、上記電荷発生層及び電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、図1に示すように、基体12上に電荷発生層24を形成し、その上に電荷輸送層22を形成した場合において、電荷輸送層22における電荷輸送剤として、アミン化合物誘導体やスチルベン誘導体の正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層24には電子輸送剤を含有させてもよい。そして、このような積層型の電子写真感光体であれば、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度を向上させることができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、図5に例示するように、導電性基体12上に、少なくとも、電荷発生剤、正孔輸送剤、及び結着樹脂を含有する単層型の感光層26を備えた電子写真感光体30であって、結着樹脂として、複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、感光層が、可塑剤成分として、ビフェニル誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
また、具体的には、複数のポリカーボネート樹脂が、上記一般式(7)で示されるポリカーボネート樹脂を含むとともに、上記一般式(8)または(9)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、かつ、感光層が、可塑剤成分として、上記一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有し、さらに、複数のポリカーボネート樹脂と、可塑剤成分とが、同一層に含まれることを特徴とする電子写真感光体である。
以下、本発明の第2の実施形態である単層型感光体としての電子写真感光体について具体的に説明する。
1.基本構成
単層型感光体における基本構成に関する種類等は、特に制限されるものではないが、感光体層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
また、単層型感光体を構成する平均分子量が異なる複数のポリカーボネート樹脂や、可塑剤成分の種類等については、積層型感光体と、特に変わるものではないが、可塑剤成分の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。前記感光体層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
さらにまた、単層型感光体の構成に関して、導電性基体と感光体層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
2.製造方法
また、単層型感光体の製造方法は特に制限されるものではないが、まず、塗布液を作成することが好ましい。そして、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、例えば100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。
[実施例1]
1.電子写真感光体の製造
導電性支持体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を順次形成し、実施例1の積層型の電子写真感光体を製造した。
(1)中間層の形成
中間層は酸化チタン(MT−02、アルミナ、シリカ、シリコーンで表面処理した数平均一次粒子径が10nm(テイカ製))2.5重量部、四元共重合ポリアミド樹脂CM8000(東レ製)1重量部、溶媒としてメタノール10重量部と、n-ブタノール2.5重量部とを加えて、ペイントシェーカーを用いて10時間分散させ、さらに5ミクロンのフィルタにてろ過処理して、中間層用塗布液を作成した。
次いで、30mmφ、長さ238.5mmのアルミニウム基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて塗布した。その後、130℃、30分の条件で熱処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
(2)電荷発生層及び電荷輸送層の作成
(2)−1 電荷発生層用塗布液の作成
式(11)で表されるチタニルフタロシアニンを1重量部、ポリビニルアセタール樹脂として、平均分子量が130,000の樹脂KS−5(積水化学製)を1重量部、混合溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル60重量部と、テトラヒドロフラン20重量部を仕込んだ後、ボールミルを用いて48時間攪拌し、さらに3ミクロンのフィルタにてろ過処理して、電荷発生層用塗布液とした。
なお、実施例1で使用した式(11)で表されるチタニルフタロシアニンは以下のように製造した。
すなわち、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル25gと、チタンテトラブトキシド28gと、キノリン300gとを加え、攪拌しつつ150℃まで昇温した。次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、攪拌して反応させた。
反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによって、濾過処理し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。(顔料化前処理)
上記チタニルフタロシアニン 化合物の合成で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、攪拌しつつ130℃に加熱して2時間、攪拌処理を行った。
つぎに、2時間経過した時点で加熱を停止し、23±1℃まで冷却したのち攪拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。
そして安定化された液をガラスフィルターによって濾過処理し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、チタニルフタロシアニン 化合物の粗結晶9.83gを得た。
次いで顔料化前処理で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。
次に、上記液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗したのち、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間、攪拌した。
そして液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、チタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
このチタニルフタロシアニンは、初期および1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフラン中に7日間、浸漬しても、ブラッグ角度2θ±0.2°=7.4°および26.2°にピークが発生していないことを確認した。さらに吸着水の気化に伴う90℃付近のピーク以外は、50℃から400℃まで温度変化のピークを示さないことを確認した。
(2)−2 電荷輸送層用塗布液の作成
また、テトラヒドロフラン460重量部を用いて、正孔輸送剤として式(21)で表されるスチルベン化合物(HTM-1)70重量部と、添加剤として、式(3)で表されるターフェニル20重量部と、結着樹脂として、式(25)で表されるポリカーボネート樹脂であって、平均分子量が50500である(Resin−1)30重量部と、式(28)で表される平均分子量が50200のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂である(Resin−4)70重量部とを均一に溶解させて、電荷輸送層用塗布液とした。
(2)−3 電荷発生層及び電荷輸送層の形成
支持基体上に形成した中間層の上に、フッ素樹脂製ブレードを用いて、電荷発生層用塗布液を塗布した後、80℃、5分の条件で乾燥処理し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次いで、調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、130℃、30分の条件で乾燥処理し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
2.電子写真感光体の評価
製造した電子写真感光体を、市販の負帯電反転現像プロセスを採用したプリンター(沖電気製レーザープリンター、Microline−18)に搭載し、電気特性や磨耗量を評価した。
(1)帯電電位(Vo)
得られた電子写真感光体をプリンターに搭載し、この際の帯電電位(Vo)を測定した。得られた結果を表1に示す。
(2)感度(VL)
得られた電子写真感光体をプリンターに搭載し、−850(V)になるように帯電させ、黒ベタ画像形成時の現像位置での電位を読み取り、その絶対値を、感度としての明電位(V)とした。
得られた結果を表1に示す。
(3)摩耗量
得られた電子写真感光体の摩耗量を測定した。すなわち、A4サイズ紙10000枚連続印字前後の感光層膜厚差を摩耗量とした。感光層膜厚測定には、渦電流式膜厚計を使用した。
(4)指油付着試験(48Hrs、96Hrs)
得られた電子写真感光体につき、48Hrs、96Hrs後の指油付着試験を実施した。すなわち、(感光層表面に指を圧接し、23℃、50%環境下で48時間保管後の感光層表面を目視判断した。
◎:クラック発生無し
○:顕微鏡で観察できるレベルのクラックが1ヶ所以内発生
△:目視で確認できるクラックの発生が5ヶ所以下
×:目視で確認できるクラックの発生が6ヶ所以上
(5)光応答性評価
得られた積層型電子写真感光体の光応答性を評価した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用い、感光体の帯電を−700Vとしたときに、キセノンフラッシュランプ(パルス幅:50nm、フィルターを用いて波長780nmの光を照射)の感光体への照射開始から300msec後の表面電位が100Vとなるような条件の光量を暫定的に設定した。次いで、かかる設定条件の光量において感光体を照射した場合に、表面電位が130V(95%応答性)となるまでに要する時間を、光応答性として測定した。
なお、かかる光応答性が20msec以内の値であれば、感度に関して、実用上問題無いことが判明しており、さらに、かかる光応答性が10msec以内の値であれば、優れた感度を有していると言える。
[実施例2〜5]
実施例2〜5においては、表1に示すように、可塑剤の添加量をそれぞれ結着樹脂100重量部に対して5、10、15、25重量部に変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例6〜9]
実施例6〜9においては、表1に示すように、可塑剤の種類をそれぞれ式(2)、(4)〜(6)で表されるビフェニル誘導体(BP−1、BP−3〜5)に変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例10〜15]
実施例10〜15においては、表1に示すように、結着樹脂の種類(組み合わせ)を以下に示すように変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例10:結着樹脂として、式(26)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−2)30重量部と、式(28)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−4)70重量部と、を用いた。
実施例11:結着樹脂として、式(27)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−3)30重量部と、式(28)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−4)70重量部と、を用いた。
実施例12:結着樹脂として、式(25)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−1)30重量部と、式(29)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−5)70重量部と、を用いた。
実施例13:結着樹脂として、式(26)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−2)30重量部と、式(29)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−5)70重量部と、を用いた。
実施例14:結着樹脂として、式(27)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−3)30重量部と、式(29)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−5)70重量部と、を用いた。
実施例15:結着樹脂として、式(25)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−1)30重量部と、式(30)であらわされるポリカーボネート樹脂(Resin−6)70重量部と、を用いた。
[実施例16〜18]
実施例16〜18においては、表1に示すように、正孔輸送剤の種類を、それぞれ式(22)〜(24)で表される化合物(HTM−2〜4)に変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
比較例1〜4においては、表1に示すように、正孔輸送剤の種類を、それぞれ式(21)〜(28)で表される化合物(HTM−1〜4)に変えるとともに、可塑剤を添加しなかったほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例5]
比較例5においては、表1に示すように、正孔輸送剤を、下記式(33)で表される化合物(HTM−5)に変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例6]
比較例6においては、表1に示すように、正孔輸送剤を、下記式(34)で表される化合物(HTM−6)に変えたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例7]
比較例7においては、表1に示すように、結着樹脂として式(25)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−1)100重量部を用いるとともに、可塑剤を添加しなかったほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例8]
比較例8においては、表1に示すように、結着樹脂として式(25)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−1)100重量部を用いたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例2〜18及び比較例1〜8に用いたポリカーボネート樹脂の平均分子量は、それぞれ、49700(Resin−2)、48800(Resin−3)、50200(Resin−4)、51000(Resin−5)、48500(Resin−6)のものを用いた。
[実施例19]
1.チタニルフタロシアニン結晶の製造
(1)チタニルフタロシアニン化合物の製造
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)とを加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
(2)顔料化前処理
上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
(3)顔料化処理
上述した顔料化前処理で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次いで、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間撹拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させ、上澄みと分離させた。
次いで、上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗したのち、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間、撹拌した。そして上澄みをガラスフィルターによってろ別したのち、得られた結晶を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(7)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。なお、以降において、得られたチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Aと称することとする。
2.チタニルフタロシアニン結晶の評価
(1)CuKα特性X線回折スペクトル測定
得られた製造後60分以内のチタニルフタロシアニン結晶0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%の条件下、密閉系中で7日間、保管したのちテトラヒドロフランを除去して、X線回折装置〔理学電機(株)製のRINT1100〕のサンプルホルダーに充填して測定を行った。得られたスペクトルチャートを、図6示す。
なお測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
また、得られた測定結果を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表2に示す。
○:ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さない。
×:ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有する。
(2)示差走査熱量分析
示差走査熱量計〔理学電機(株)製 TAS−200型、DSC8230D〕を用いて、得られたチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析を行った。得られた示差走査奈津量分析チャートを、それぞれ図7に示す。また、それぞれのチャートにおけるピーク温度及びピークの個数を表2に示す。
なお、測定条件は下記のとおりとした。
サンプルパン:Al
昇温速度:20℃/分
3.電子写真感光体の製造
次いで、電荷発生層に含有させる電荷発生剤として、上述した製造方法によって得られたチタニルフタロシアニン結晶を用いるとともに、製造直後の電荷発生層用塗布液を用いて製造したものと、製造後7日間貯蔵後の電化発生層用塗布液を用いて製造したものと、の2通りを製造したほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
4.電子写真感光体の評価
(1)感度変化(VL)
製造直後の電荷発生層用塗布液を用いて形成した感光体の明電位VL1(V)と、7日間貯蔵後の電荷発生層用塗布液を用いて形成した感光体の明電位VL2(V)とをそれぞれ以下の条件下で測定した。
すなわち、製造したそれぞれの電子写真感光体を、市販の負帯電反転現像プロセスを採用したプリンター(沖電気製レーザープリンター、Microline−18)に搭載し、−850(V)になるように帯電させ、黒ベタ画像形成時の現像位置での電位を読み取り、VL1(V)及びVL2(V)とした。
次いで、感度変化ΔVL(V)(=VL2−VL1)を算出た。得られた結果を表3に示す。
(2)かぶり画像評価
また、7日間貯蔵後の電荷発生層用塗布液を用いて形成した電子写真感光体を搭載したプリンターMicroline 22N(京セラミタ(株)製)を用いて、高温高湿下(温度:35℃、湿度:85%)にて画像形成を行い、ISO規格5%濃度の画像パターンを連続20万枚印刷し、また、ISO規格2%濃度の画像パターンを間欠5万枚印刷した。
次いで、分光光度計SpectroEye(グレタグマクベス(株)製)にて、ISO5規格5%濃度の画像パターン連続20万枚印刷及びISO規格2%濃度の画像パターン間欠5万枚印刷時における、非印字領域の濃度を測定し、下記の基準に沿って画像かぶりを評価した。得られた結果を3に示す。
○:非印字領域の濃度が0.008未満であり、かぶり不良が全く観察されない。
△:非印字領域の濃度が0.008以上0.015未満であり、かぶり不良が少々観察される。
×:非印字領域の濃度が0.15以上であり、顕著なかぶり不良が観察される。
(3)指油付着試験(48Hrs、96Hrs)
得られた電子写真感光体につき、48Hrs、96Hrs後の指油付着試験を、実施例1と同様にして実施した。得られた結果を表3に示す。
[実施例20〜23]
実施例20〜23においては、表3に示すように、可塑剤の添加量をそれぞれ結着樹脂100重量部に対して5、10、15、25重量部に変えたほかは、実施例19と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表3に示す。
[実施例24〜28]
実施例24〜28においては、使用する電荷発生剤として、下記方法で製造されたチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−B)を用いたほかは、それぞれ実施例19〜23と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表3に示す。
すなわち、TiOPc−Bの製造においては、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に加えた尿素の添加量を5.70g(0.095mol)とした以外は、TiOPc−Aと同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造し、無置換のチタニルフタロシアニン結晶(青色粉末)4.1gを得た。
なお、得られたチタニルフタロシアニン結晶における光学特性、及び熱特性を表2に示す。
また、かかるチタニルフタロシアニン結晶におけるX線回折スペクトルチャートを図8に、示差走査熱量分析チャートを図9に示す。
[実施例29〜33]
実施例29〜33においては、使用する電荷発生剤として、下記方法で製造されたチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−C)を用いたほかは、それぞれ実施例19〜23と同様に電子写真感光体を製造して評価した。得られた結果を表3に示す。
すなわち、TiOPc−Cの製造においては、チタニルフタロシアニン化合物を製造する際に加えた尿素の添加量を8.40g(0.14mol)とした以外は、TiOPc−Aと同様にチタニルフタロシアニン結晶を製造し、無置換のチタニルフタロシアニン結晶(青色粉末)4.1gを得た。
なお、得られたチタニルフタロシアニン結晶における光学特性、及び熱特性を表2に示す。
また、かかるチタニルフタロシアニン結晶におけるX線回折スペクトルチャートを図10、示差走査熱量分析チャートを図11示す。
本発明に係る電子写真感光体によれば、結着樹脂として、複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、可塑剤成分として、所定構造を有するビフェニル誘導体を含有することから、優れた耐久性や耐摩耗性及び感度特性を保持しつつも、指油等の付着によるクラックの発生や結晶化を有効に防止することができるようになった。
したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における高耐久性化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
本発明に係る積層型の電子写真感光体の概略構成を説明するために供する図である。 可塑剤の添加量と摩耗量との関係を説明するための特性曲線を示す図である。 可塑剤の添加量と感度電位との関係を説明するための特性曲線を示す図である。 可塑剤の添加量と光応答性との関係を説明するための特性曲線を示す図である。 本発明に係る単層型の電子写真感光体の概略構成を説明するために供する図である。 TiOPc−AにおけるX線回折スペクトルチャートを示す図である。 TiOPc−Aにおける示差走査熱量分析チャートを示す図である。 TiOPc−BにおけるX線回折スペクトルチャートを示す図である。 TiOPc−Bにおける示差走査熱量分析チャートを示す図である。 TiOPc−CにおけるX線回折スペクトルチャートを示す図である。 TiOPc−Cにおける示差走査熱量分析チャートを示す図である。
符号の説明
12:基体、20:積層型電子写真感光体、22:電荷輸送層、24:電荷発生層、25:中間層、26:感光層、30:単層型電子写真感光体

Claims (9)

  1. 導電性基体上に、少なくとも、電荷発生剤、正孔輸送剤、及び結着樹脂を含有する感光層を備えた電子写真感光体であって、
    前記結着樹脂として複数のポリカーボネート樹脂を用いるとともに、
    前記複数のポリカーボネート樹脂が、下記一般式(7)で示されるポリカーボネート樹脂を含むとともに、下記一般式(8)または(9)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、かつ
    (一般式(7)中、Ra及びRbは、それぞれ独立した水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数6〜12の置換又は非置換のアリール基であり、添字k及びlは、それぞれ独立した0〜4の整数であり、Rc及びRdの一方は、水素原子であり、もう一方は、炭素数1〜2のアルキル基であり、Wは、単結合または−O−、−CO−であり、添字m及びnは、0.05<n/(n+m)<0.6の関係式を満足するモル比である。)
    (一般式(8)中、複数の置換基Reは、水素原子、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基、あるいは炭素数6〜30の置換又は非置換のアリール基であり、添字oは、0〜4の整数である。)
    (一般式(9)中、複数の置換基Rfは、水素原子、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基、あるいは炭素数6〜30の置換又は非置換のアリール基であり、添字pは、0〜4の整数である。)
    前記感光層が、可塑剤成分として、下記一般式(1)で表されるビフェニル誘導体を含有し、さらに、複数の前記ポリカーボネート樹脂と、前記可塑剤成分とが、同一層に含まれることを特徴とする電子写真感光体。
    (一般式(1)中、R1〜R10はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、Rは、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキレン基、あるいは窒素原子を含む有機基であり、nは0の整数を示す。)
  2. 前記感光層が単層型であって、前記可塑剤成分の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記感光層が積層型であって、前記可塑剤成分の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  4. 前記可塑剤成分が、下記式(2)〜(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。




  5. 前記電荷発生剤が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴うピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記感光層の95%応答性時間を20msec以内の値とすることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記感光層のガラス転移点を65℃以上の値とすることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  8. 前記正孔輸送剤が、ビススチルベン化合物またはビスブタジエン化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  9. 前記ビススチルベン化合物またはビスブタジエン化合物が対称型構造を有することを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
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