JP5158221B2 - 車両用サスペンション装置 - Google Patents
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Description
ここで、前記キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置が、地面より下の、地面よりも離れた位置に設定されている場合には、このキャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を中心として車輪がキャンバ角方向に移動するため、キャンバ角が生じることによってタイヤ接地点も横移動することになる。
このタイヤ接地点の横変位を零とするため、前記キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面付近に設けることも可能である。しかしながら、このように、キャンバ角方向の運動の瞬間的回転中心位置を地面付近に設けると、キャンバ角も零に近づくことになり、キャンバ角による効果を損ねてしまう。
そこで、この発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、キャンバ角変化による効果を損ねることなく、タイヤに作用する横力を利用してキャンバ角を適切な値に制御することの可能な車両用サスペンション装置を提供することを目的としている。
Δyl1=l1・tanγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による車両用サスペンション装置の原理を示したものであって、車体後方からみた図である。
図1において、1は車体、2は車輪であって、車輪2は回転支持部材3により回動自在に支持される。この回転支持部材3には、略上下方向に延びる、上下方向リンクとしてのリンク4及びリンク5の上端部が、回転部材4a及び5aを介して回動自在に連結され、リンク4及びリンク5の下端部は逆T字状リンクとしてのリンク6に連結されている。このリンク6は略逆T字状に形成され、前記リンク4及びリンク5の下端部は、前記リンク6の略水平方向に延びる水平部6aの両端に、それぞれ回転部材4b、5bを介して回動自在に連結され、リンク4及びリンク5の軸の延長線の交点が地面よりも下に位置するように配置される。
これによって、前記リンク6は、路面からの上下方向の力の入力により、車体1に対して上下方向に相対移動可能に支持され、また、前記回転支持部材3は、路面からの横方向の力の入力により、リンク6に対して横方向に相対移動可能に支持される。このときの、前記回転支持部材3の横方向の移動の瞬間回転中心Aは、リンク4及びリンク5の軸の延長線の交点となり、また、前記リンク6の上下方向の瞬間回転中心Bは、リンク7及びリンク8の軸の延長線の交点となる。
なお、図1では、前記ばね部材10を、リンク8に取り付けているが、車輪2の上下方向の位置を決定する第2の仮想リンク12を構成するサスペンション構成部品の何れかに取り付けられていればよい。
ここで、従来のキャンバ角制御方式のサスペンション装置では、前述のように、タイヤ横力が作用した場合にキャンバ角が変化するように構成している。したがって、図2の第1の仮想リンク11を備えていると考えることができる。そして、第1の仮想リンク11によりキャンバ角を付加させるべく、第1の仮想リンク11の瞬間回転中心、つまり、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aを、どの位置に定めるかを決定している。
ここで、上述のように、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12を設けることによって、パッシブなサスペンションにおいて、タイヤ横力が生じた際の車輪2のキャンバ角変化と、タイヤ接地点の横変位とを独立に任意に設定することができる。
Δyl1=l1・tanγ ……(1)
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ ……(2)
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕 ……(3)
R=〔(l4)2+(l2)2〕1/2 ……(4)
β=cos-1〔(l4)/(l2)〕 ……(5)
α=β+sin-1(ΔZ/R−sinβ)〕 ……(6)
ΔZ
=R・sin〔(ΔW・R・cosβ−Fy・R・cosβ+Kγ・γ)/Kδ〕
……(7)
Kδ=Kw・(R・cosβ)2 ……(8)
ΔW=f(Fy) ……(9)
また、前記第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2は、前記(3)式で表され、(3)式中の、R、β、αは、それぞれ前記式(4)から(6)式で表される。また、(6)式中のΔZは、前記(7)式で表され、車体の輪荷重と、タイヤに作用する横力と、第1の仮想リンク11によって、瞬間回転中心A回りに生じる、モーメントによって決定される。
また、前記(1)〜(9)式に示すように、第1の仮想リンク11によるキャンバ角γ、第1の仮想リンク11によるタイヤ接地点の横移動量Δyl1、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2を定義し、その数値的に定義することができるから、横移動量Δyl1及びΔyl2が所定の関係を満足するように瞬間回転中心A及びBの位置を算出することによって、これらの配置位置を容易に決定することができ、アクチュエータ等を用いることなく、容易に実現することができる。
図8は、第2の実施の形態における車両用サスペンション装置の一例を示す概略構成図であって、車両後方から見た図である。
図8中、31はナックルアームであって、このナックルアーム31に、車輪32及びブレーキロータ33が回転自在に取り付けられている。また、このナックルアーム31には上下方向に延びるリンク34が、2つのブッシュ(弾性部材)35及び36を介して連結され、2つのブッシュ35及び36のそれぞれについてその変形する方向を軸方向としたとき、この軸方向に対して直交する直交軸どうしの交点が、地面よりも下の位置となるように配置される。
このサスペンション装置では、2つのブッシュ35及び36の前記軸方向に対して直交する直交軸どうしの交点が、キャンバ角方向の瞬間回転中心Aとなる。また、アッパリンク37及びロアリンク38の延長線どうしの交点が、上下方向の瞬間回転中心Bとなる。
R=|l1・tanγ|/|cosα| ……(10)
また、上記第1の実施の形態で説明したように、リンク機構を用いて、第1の仮想リンク11及び第2の仮想リンク12を構成する場合に比較して、ブッシュ35、36を用いることによって、シンプルな構造で且つより安価に実現することができ、また、より軽量化も図ることができる。
また、弾性部材としてブッシュを用いた場合について説明したがこれに限るものでなく、例えば、ばね部材等、弾性変形する部材であれば適用することができる。
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、瞬間回転中心A及びBの設定方法が異なること以外は同様であるので同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
この第3の実施の形態においては、図10に示すように、第1の仮想リンク11によるキャンバ角方向への傾斜によって、車輪2の上部が旋回内側方向に移動する際のその横移動量Δyl1uが、第2の仮想リンク12によるタイヤ接地点の横移動量Δyl2とほぼ等しくなるように、瞬間回転中心Aに対する瞬間回転中心Bを設定する。
ここで、車輪2の上部位置の横移動量Δyl1uは、次式(11)で表すことができる。
Δyl1u=l1・tanγ+2r・sinγ ……(11)
なお、式(11)中のrは車輪2の半径である。
したがって、|Δyl1u|≒|Δyl2|を実現するためには、次式(12)を満足するように、瞬間回転中心A及びBを設定すればよい。
R=|l1・tanγ+2r・sinγ|/|cosα| ……(12)
また、上記第3の実施の形態においては、上記第1の実施の形態に適用した場合について説明したが、上記第2の実施の形態に適用することができることはいうまでもない。
2 車輪
3 回転支持部材
4、5 リンク
6 リンク
7、8 リンク
10 仮想ばね
11 第1の仮想リンク
12 第2の仮想リンク
14 仮想ばね
31 ナックルアーム
32 車輪
33 ブレーキロータ
34 リンク
35、36 ブッシュ(弾性部材)
Claims (5)
- タイヤ接地点に横力が作用したとき、車輪の上下方向の変位とは独立に、前記横力が増加する方向であり且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンクと、前記第1の仮想リンクと車体との間に仮想的に回動自在に連結され且つ車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体に対して車輪を上下方向に移動可能な第2の仮想リンクと、に等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えた車両用サスペンション装置であって、
前記タイヤ接地点に横力が作用する状態において、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより前記タイヤ接地点が旋回内側方向に移動したとき、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回外側方向への変位が、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回内側方向への変位以上となるように、前記車輪の車体に対するキャンバ角方向の回転中心点と前記車輪の車体に対する上下方向の回転中心点とを配置し、
さらに、前記キャンバ角方向の回転中心点を地面よりも下に配置し且つ前記上下方向の回転中心点を地面よりも上の左右反対側の車輪側に設けたとき、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl1、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl2及びキャンバ角変化γを次式で定義し、これに基づき前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする車両用サスペンション装置。
Δyl1=l1・tanγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
ただし、Rは前記第2の仮想リンクのリンク長、βは定常状態での前記第2の仮想リンクの傾斜角、αは定常状態からの前記第2の仮想リンクの傾斜角の変化角度、l1は前記キャンバ角方向の回転中心点から地面までの垂直距離、Fyはタイヤ接地点に作用する横力、Wは定常状態での輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、l3は定常状態からのタイヤ接地点の変位、Kγは前記第1の仮想リンクによるキャンバ角方向の剛性値である。 - タイヤ接地点に横力が作用したとき、車輪の上下方向の変位とは独立に、前記横力が増加する方向であり且つ車体に対してキャンバ角方向に車輪を傾斜させる第1の仮想リンクと、前記第1の仮想リンクと車体との間に仮想的に回動自在に連結され且つ車輪の上下方向の荷重変化に伴って車体に対して車輪を上下方向に移動可能な第2の仮想リンクと、に等価的に置き換えることの可能なリンク機構を備えた車両用サスペンション装置であって、
前記タイヤ接地点に横力が作用する状態において、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回内側方向への変位と、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の旋回外側方向への変位とが同等となるように、前記車輪の車体に対する前記キャンバ角方向の回転中心点と前記車輪の車体に対する上下方向の回転中心点とを配置し、
さらに、前記キャンバ角方向の回転中心点を地面よりも下に配置し且つ前記上下方向の回転中心点を地面よりも上の左右反対側の車輪側に設けたとき、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl1、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl2及びキャンバ角変化γを次式で定義し、これに基づき前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする車両用サスペンション装置。
Δyl1=l1・tanγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
ただし、Rは前記第2の仮想リンクのリンク長、βは定常状態での前記第2の仮想リンクの傾斜角、αは定常状態からの前記第2の仮想リンクの傾斜角の変化角度、l1は前記キャンバ角方向の回転中心点から地面までの垂直距離、Fyはタイヤ接地点に作用する横力、Wは定常状態での輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、l3は定常状態からのタイヤ接地点の変位、Kγは前記第1の仮想リンクによるキャンバ角方向の剛性値である。 - 前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより前記車輪が車体側に傾斜したときの前記車輪上部と車体との間のタイヤハウスクリアランスが、許容範囲内に収まるように前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用サスペンション装置。
- 前記キャンバ角方向の回転中心点を地面よりも下に配置し且つ前記上下方向の回転中心点を地面よりも上の左右反対側の車輪側に設けたとき、前記第1の仮想リンクの位置が変化することにより生じる車輪上部の横移動量Δyl1u、前記第2の仮想リンクの位置が変化することにより生じる前記タイヤ接地点の横移動量Δyl2、及びキャンバ角変化γを、次式で定義し、これに基づき前記キャンバ角方向の回転中心点と前記上下方向の回転中心点とを配置することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用サスペンション装置。
Δyl1u=l1・tanγ+2r・sinγ
Δyl2=−R〔cosβ−cos(β−α)〕
γ=〔−Fy・l1+(W+ΔW)・l3〕/Kγ
ただし、Rは前記第2の仮想リンクのリンク長、βは定常状態での前記第2の仮想リンクの傾斜角、αは定常状態からの前記第2の仮想リンクの傾斜角の変化角度、l1は前記キャンバ角方向の回転中心点から地面までの垂直距離、rは車輪の半径、Fyはタイヤ接地点に作用する横力、Wは定常状態での輪荷重、ΔWは定常状態からの輪荷重変化、l3は定常状態からのタイヤ接地点の変位、Kγは前記第1の仮想リンクによるキャンバ角方向の剛性値である。 - 前記第1の仮想リンクは、弾性部材の剛性を利用して前記キャンバ角を変化させるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用サスペンション装置。
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