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JP2007331403A - サスペンション装置 - Google Patents

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JP2007331403A
JP2007331403A JP2006161840A JP2006161840A JP2007331403A JP 2007331403 A JP2007331403 A JP 2007331403A JP 2006161840 A JP2006161840 A JP 2006161840A JP 2006161840 A JP2006161840 A JP 2006161840A JP 2007331403 A JP2007331403 A JP 2007331403A
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Yusuke Kageyama
雄介 影山
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】サスペンションストローク時に、アンチダイブ角・アンチリフト角等またはロールセンタ高を一定に維持することができるサスペンション装置を提供する。
【解決手段】車軸を回転自在に支持するアクスルキャリア2と、車体側取付部から車両幅方向に延在し前記アクスルキャリアに連結される複数のリンクを備えたサスペンション装置において、前記複数のリンクは、車軸に対して車両上下方向上側または下側に、車両側面視または車両正面視において交差する第1リンク41および第2リンク42を有し、前記第1および第2リンクが設けられている側と車軸に対して反対側の前記上側または下側に、第3リンク43を有する。
【選択図】図5

Description

本発明は、車輪を複数のリンクにより支持する独立懸架式サスペンション装置に関する。
従来、車軸を回転自在に支持するアクスルキャリアを、車両幅方向に延在する複数のリンクと、車両前後方向に延在するトレーリングアームとで支えたトレーリングアーム式マルチリンク型サスペンション装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、車軸を回転自在に支持するナックルと、ナックルを上下動自在に車体に連結する複数のアームと、ナックルの上下動を緩衝するダンパと、を備えたマルチリンク型サスペンション装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−104921号公報 特開平7−186649号公報
サスペンションに関する一般的な問題として、発進・加速時または制動時の慣性力による前後荷重移動によって車両姿勢が変化し、乗心地が悪化する、という問題がある。すなわち、発進・加速時には、車両後方が車両前方に対して下側に変位し、前輪のリフトと後輪のスクワットが発生する。制動時には、車両前方が車両後方に対して下側に変位して、前輪のダイブと後輪のリフトが発生する。
一般に、特許文献1に記載されているような複数のリンクを備えたサスペンションでは、リンクの配置(サスペンションジオメトリ)によりサスペンションの車両側面視における瞬間回転中心位置を制御し、リンク反力によるアンチダイブ力、アンチスクワット力・アンチリフト力を作用させることで、上記ダイブやスクワット、リフトを解消している。例えば、側面視瞬間回転中心と後輪接地点とを結ぶ直線の地面に対する傾角(以下、アンチリフト角)を、後輪のリフトが生じない値に設定している。
しかし、瞬間回転中心位置は、サスペンションストロークに応じて時々刻々と変化する。このため、瞬間回転中心位置に基づき設定されるアンチダイブ角・アンチリフト角等を、サスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することができない。その結果、ダイブやリフト等を充分に解消することができない、という問題があった。
また、車体は、旋回時に、遠心力によってロール方向に傾く。車両正面視における車体バネ上部分のロール方向の瞬間回転中心(以下、ロールセンタ)は、サスペンションジオメトリにより決まる。よって、特許文献2に記載されているようなマルチリンク型サスペンションでは、構造的に、サスペンションのストロークに伴い、ロールセンタが車両上下方向に変位する。サスペンションストローク時におけるロールセンタの地面に対する高さ(以下、ロールセンタ高)の変位量が大きいと、車両挙動が不安定になる。従来のマルチリンク型サスペンションは、この点について課題を抱えたままである。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、サスペンションストローク時に、アンチダイブ角・アンチリフト角等またはロールセンタ高を一定に維持することができるサスペンション装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のサスペンション装置では、車軸を回転自在に支持するアクスルキャリアと、車体側取付部から車両幅方向に延在し前記アクスルキャリアに連結される複数のリンクと、を備えたサスペンション装置において、前記複数のリンクは、車軸に対して車両上下方向上側または下側に、車両側面視または車両正面視において交差する第1リンクおよび第2リンクを有し、前記第1および第2リンクが設けられている側と車軸に対して反対側の前記上側または下側に、第3リンクを有することとした。
よって、サスペンションジオメトリに基づき瞬間回転中心位置を制御することにより、サスペンションストロークの全領域を通じて、アンチリフト・アンチダイブ角等を一定に維持して乗心地性能を向上し、またはロールセンタ高を一定に維持して操縦安定性能を向上することができる。
以下、本発明のサスペンション装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
実施例1のサスペンション装置は、リンクを交差(クロス)させることにより、サスペンションストローク時の車両側面視における瞬間回転中心の変化を制御する。これにより、サスペンションストローク時のアンチリフト角・アンチダイブ角の変位量を小さくするものである。
[サスペンション装置の基本構成]
図1〜図3は、本発明を車両後輪に適用した、実施例1に係るサスペンション装置1を示す。図1はサスペンション装置1の全体斜視図であり、図2は左輪側の側面図、図3は左輪側の平面図である。いずれも、サスペンションストローク量がゼロである中立状態を示す。右輪側は左輪側と同様の構成であるため、説明を省略する。
図1に示すように、サスペンション装置1は、車軸Aを回転自在に支持するアクスルキャリア2と、車両上下方向の荷重を弾性支持し、衝撃を吸収するストラット3と、アクスルキャリア2を上下方向でのみ揺動可能に車体に固定する複数のリンク41〜43およびトレーリングアーム5と、を有している。複数のリンク41〜43は、第1、第2アッパリンク41,42およびロアリンク43を有しており、これらは車体側の取付部から車両幅方向に延在し、アクスルキャリア2に連結されている。
図2に示すように、アクスルキャリア2は、車軸Aから放射状に延びる複数の支持部材、すなわち第1アッパリンク支持部材21と、第2アッパリンク支持部材22と、ロアリンク支持部材23と、ストラット支持部材24と、を有している。
(ストラット)
ストラット支持部材24は車軸Aから車両下方かつ車両後方かつ車両幅方向内側に延在し、その車輪W外径側の端のストラット車輪側取付部24aには、ストラット3が連結されている。ストラット3は車両上下方向に設置されており、その上端はストラット車体側取付部3aで車体に連結されている。ストラット車体側取付部3aは、ストラット車輪側取付部24aよりも若干車両前方に設けられている。ストラット3は、車両上下方向の荷重を支え、また衝撃を吸収するコイルスプリング31と、振動を減衰させるショックアブソーバ32と、を同軸に有している。
(ロアリンク)
ロアリンク支持部材23は、車軸Aから車両後方かつ車両下方に延在し、その車輪W外径側の端には、ロアリンク車輪側取付部23aが設けられている。ロアリンク43の車体側への連結部であるロアリンク車体側取付部43aは、ロアリンク車輪側取付部23aに対して車両後方かつ車両上方に設けられている(図2参照)。ロアリンク43は、ロアリンク車体側取付部43aから車両幅方向外側かつ車両前方かつ車両下方に延在し、ロアリンク車輪側取付部23aに連結されている。ロアリンク43の長さは、第1、第2アッパリンク41,42よりも長く設定されている。
(アッパリンク)
第1アッパリンク支持部材21は車軸Aから車両前方かつ車両下方かつ車両幅方向外側に延在し、その車輪W外径側の端には、第1アッパリンク車輪側取付部21aが設けられている。第2アッパリンク支持部材22は車軸Aから車両前方かつ車両上方かつ車両幅方向内側に延在し、その車輪W外径側の端には、第2アッパリンク車輪側取付部22aが設けられている。第1アッパリンク車輪側取付部21aは、第2アッパリンク車輪側取付部22aよりも車両前方に設けられている。
第1、第2アッパリンク41,42の車体側への連結部である第1、第2アッパリンク車体側取付部41a、41bは、ともに車軸Aに対して車両前方かつ車両上方に設けられており、リアサスペンションメンバ6に連結されている。リアサスペンションメンバ6は、図外のラバーインシュレータを介して車体に固定されている。第1アッパリンク車体側取付部41aは、第2アッパリンク車体側取付部42aに対して車両後方かつ車両上方かつ車両幅方向外側に設けられている。
第1アッパリンク車体側取付部41aは、第1アッパリンク車輪側取付部21aに対し若干車両前方かつ車両上方に設けられている。第2アッパリンク車体側取付部42aは、第2アッパリンク車輪側取付部22aに対し車両前方かつ若干車両下方に設けられている(図2参照)。
第1アッパリンク41は、第1アッパリンク車体側取付部41aから車両幅方向外側かつ車両後方かつ車両下方に延在し、第1アッパリンク車輪側取付部21aに連結されている。第2アッパリンク42は、第2アッパリンク車体側取付部42aから車両幅方向外側かつ車両後方かつ若干車両上方に延在し、第2アッパリンク車輪側取付部22aに連結されている(図2、図3参照)。図2に示すように、第1、第2アッパリンク41,42は、車両側面視において交点Q1を有している。
(トレーリングアーム)
トレーリングアーム5は、車両上下方向におけるアクスルキャリア2の揺動を可能にしつつ、アクスルキャリア2を車両前後方向に支持する。トレーリングアーム5は、車体側の取付部であるトレーリングアーム車体側取付部5aから車両後方かつ若干車両上方に延在し、アクスルキャリア2に連結されている。図2に示すように、トレーリングアーム5とストラット3とは、側面視において互いに略直交している。
トレーリングアーム車体側取付部5aは、車両幅方向に軸が設けられた円筒形ラバーブッシュであり、トレーリングアーム5を車両上下方向に揺動可能に軸支する。
(リンク取付部)
第1、第2アッパリンク41,42の車輪側取付部21a、22aと車体側取付部41a、42a、およびロアリンク43の車体側取付部43aと車輪側取付部23aは、それぞれ車両前後方向に軸が設けられた円筒形(内筒外筒タイプ)ラバーブッシュである。図3に示すように、各リンク41〜43の車輪側および車体側取付部ブッシュの軸は、車体と車輪Wとの間に延在する各リンク部材の軸に対して、車両上面視で直角方向に設定されている。車両側面視において、第1、第2アッパリンク車輪側取付部21a、22aのブッシュ軸は同方向に設定され、ともにロアリンク車輪側取付部23aのブッシュ軸方向と略平行になるように設定されている。
これらのブッシュは、サスペンションリンクの取付部に用いられる一般的なものであり、その軸周りの捩れによりリンク揺動軸として機能すると同時に、その弾性変形および減衰作用により路面からの衝撃や振動を吸収する。これらのラバーブッシュは、軸直角方向(ラジアル方向)よりも軸方向(スラスト方向)に剛性が低い特性を有している。
[従来技術との対比における実施例1の作用効果]
サスペンションに関する一般的な問題として、発進・加速時または制動時の慣性力による前後荷重移動によって車両姿勢が変化し、乗り心地が悪化する、という問題がある。すなわち、発進・加速時には、車体後方が車体前方に対して下側に変位し(尻下がり)、前輪のリフトまたは後輪のスクワットが発生する。制動時には、車体前方が車体後方に対して下側に変位して(前のめり)、前輪のダイブと後輪のリフトが発生する。
一般に、複数のリンクを備えたサスペンションでは、リンクの配置、すなわちサスペンションジオメトリにより車両側面視における瞬間回転中心位置を制御し、リンク反力によるアンチリフト力を作用させることで、後輪のリフトを解消している。例えば、側面視瞬間回転中心と後輪接地点とを結ぶ直線(以下、スイングアーム)の地面に対する傾角(以下、アンチリフト角)を、後輪のリフトが生じない値に設定している。側面視瞬間回転中心は、アッパリンクおよびロアリンクの車輪側取付部(以下、アウタピボット点)の車両側面視におけるブッシュ軸延長線(以下、アウタピボット点延長線)の交点として求められる。
しかし、瞬間回転中心位置は、サスペンションストロークに応じて時々刻々と変化する。一般的に、サスペンションストローク時における側面視瞬間回転中心位置の変化量を小さくすることは困難である。例えば、サスペンションジオメトリにより側面視瞬間回転中心を無限遠方に設定することで、その変化量の影響を小さくするなどの対策が考えられる。この場合、車両側面視において、ロアリンクのアウタピボット点延長線とアッパリンクのアウタピボット点延長線とが平行になるように設定しなければならないが、他性能(キャンバ変化、トー変化など)との関係から困難である。
このため、瞬間回転中心位置に基づき設定されるアンチダイブ角・アンチリフト角等を、サスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することができない。その結果、ダイブやリフト等を充分に解消することができない、という問題があった。
本実施例1のサスペンション装置1は、車両側面視において第1、第2アッパリンク41,42をクロスさせ、物理的なアウタピボット点の代替として、両リンク41,42の車両側面視交点Q1を仮想のアウタピボット点と定義し、この仮想アウタピボット点Q1の位置を制御することとした。これにより、従来のダブルウィッシュボーン式またはマルチリンク式サスペンションの性能を維持しつつ、サスペンションストローク時のアンチダイブ・アンチリフト角の変化を小さくできる。以下、制動時のアンチリフト角の変化を例にとり、従来技術と対比して説明する。
(アンチリフト角変化の抑制)
図4と図5に、それぞれ従来のマルチリンク式サスペンションおよび本実施例1のサスペンション装置1におけるアンチリフト角の算出方法を示す。サスペンションストローク量ゼロの中立状態(以下、初期状態)のアウタピボット点延長線およびスイングアームを一点鎖線で示し、バウンドストローク時のアウタピボット点延長線およびスイングアームを2点鎖線で示す。
側面視瞬間回転中心は、アッパ側およびロア側における弾性主軸の延長線の車両側面視交点として求めることができ、アウタピボット点の延長線により弾性主軸の延長線を近似できる。車両側面視において、アッパ側アウタピボット点延長線およびロア側アウタピボット点延長線が交わる点が、側面視瞬間回転中心O1である。側面視瞬間回転中心O1と後輪接地点Pとを結ぶ直線、すなわちスイングアームの地面に対する角度がアンチリフト角θである。
なお、アッパ側またはロア側のリンクが2本ある場合は、本実施例1のようにそれら2本のリンクを車両側面視でクロスさせない限りにおいて、それら2本のリンクの車輪側取付部の中点でアッパ側またはロア側のアウタピボット点を近似できる。
(従来技術におけるアンチリフト角変化)
従来のマルチリンク式サスペンションにおいて、図4に示す位置に側面視瞬間回転中心O1が設定された場合、サスペンションがバウンドストロークしたとき、点O1の位置は、大きく下方の点O1'に変化する。サスペンションストローク時、側面視瞬間回転中心O1の車両上下方向における変位量は大きい。
なお、上記のように他性能との関係から、アッパ側アウタピボット点延長線とロア側アウタピボット点延長線とが平行になるようなサスペンションジオメトリの設定は困難である。よって、実際に設定される側面視瞬間回転中心O1の位置は、無限遠方ではなく、トレーリングアームのピボット点(車体側取付部)付近となる。よって、側面視瞬間回転中心O1の車両上下方向における変位は、アンチリフト角θの変化量に大きく影響する。
したがって、アンチリフト角は、θからθ'に大きく変化する。すなわち、サスペンションストロークに対するアンチリフト角の変化量Δθ(=θ-θ')は大きい。
(本実施例1におけるアンチリフト角変化)
図5に示すように、本実施例1では、車両側面視においてクロスさせた第1、第2アッパリンク41,42の車両側面視交点Q1を、仮想のアッパ側アウタピボット点として定義する。
車両側面視において、仮想アウタピボット点Q1を通り、かつ第1、第2アッパリンク車輪側取付部21a,22aのブッシュ軸と平行な直線L11が、アッパ側アウタピボット延長線である。また、ロア側アウタピボット点であるロアリンク車輪側取付部23aのブッシュ軸延長線L12が、ロア側アウタピボット延長線である。直線L11と直線L12の交点が、側面視瞬間回転中心O1であり、側面視瞬間回転中心O1と後輪接地点Pとを結ぶ直線であるスイングアームL13が地面となす角度θが、アンチリフト角である。
サスペンションがバウンドストロークすると、仮想アウタピボット点Q1は上方の点Q1'に移動し、仮想アウタピボット点延長線L11の車両側面視での対水平傾角も変化する。ここで、サスペンションストロークに従って変化する上記傾角は、仮想アウタピボット点Q1の設定位置、言い換えれば第1、第2アッパリンク41,42の車輪側取付部21a,22a,または車体側取付部41a,42aの位置で制御することができる。
本実施例1では、サスペンションストロークの全領域を通じて、アッパ側の仮想アウタピボット点延長線L11とロア側アウタピボット点延長線L12とが略平行になるように、仮想アウタピボット点Q1の位置を設定している。これにより、側面視瞬間回転中心O1の位置を無限遠方に設定している。
なお、この配置関係は、第1、第2アッパリンク41,42のみにより独立して設定することができるため、従来技術のような、ジオメトリによる瞬間回転中心位置の制御が他性能へ及ぼす影響を考慮する必要がない。
よって、側面視瞬間回転中心Oがトレーリングアームのピボット点(車体側取付部)付近に設定されている場合と比べて、側面視瞬間回転中心O1の車両上下方向変位は、アンチリフト角の変化量にほとんど影響しない。
また、側面視瞬間回転中心O1の位置は無限遠方となるため、図5において、ストローク前後の側面視瞬間回転中心O1とO1'との間の車両前後方向距離は、後輪接地点Pと側面視瞬間回転中心O1(またはO1')との間の前後方向距離に比べて充分に小さい。この場合、側面視瞬間回転中心O1の車両前後方向における変位は、アンチリフト角θの変化量にほとんど影響しない。すなわち、アンチリフト角変化に影響を及ぼす主要因となるのは、側面視瞬間回転中心O1の車両前後方向変位ではなく、車両上下方向変位である。
ここで、同じサスペンションストローク量に対して、仮想アウタピボット点Q1の車両上下方向変位量は、物理的なアウタピボット点、すなわち第1、第2アッパリンク車輪側取付部21a、22aの車両上下方向変位量よりも小さい。よって、サスペンションストローク時、側面視瞬間回転中心O1の車両上下方向変位量は小さい。
以上より、サスペンションストローク時、アンチリフト角は、θからθ'に変化するがその変化量は小さい。すなわち、ストローク時のアンチリフト角の変化量Δθ(=θ-θ')は極小である。
(実験結果によるアンチリフト角変化量の対比)
図6に、従来のマルチリンク式サスペンションおよび本実施例1のサスペンション装置1における、サスペンションストロークに対するアンチリフト角θの変化の実験結果を示す。従来のサスペンションでは、単位ストローク量当たりのアンチリフト角の変化量が多い。それに対し、本実施例1のサスペンション装置1では、上記変化量が従来技術に比べて数倍少なく、サスペンションストロークの全領域にわたってアンチリフト角の値が略一定である。
以上より、本実施例1のサスペンション装置1は、サスペンションストローク時にもアンチリフト角θを略一定に保ち、乗心地性能を向上することができる。なお、アンチダイブやアンチスクワット等についても、同様にして制御できる。上記性能は、第1、第2アッパリンク41,42の配置のみにより達成されるため、ロアリンク43等、他のサスペンション要素のジオメトリ自由度が確保され、他性能への影響を考慮する必要がない。言い換えれば、従来機能を実現しつつ、アンチリフト角変化を少なくすることができる。
なお、後述する実施例2と同様に、サスペンションストロークの全領域にわたって、側面視瞬間回転中心O1が初期状態のスイングアームL13上を移動するように、仮想アウタピボット点Q1の配置を調整することとしてもよい。
(リンク配置による作用効果)
一般的に、サスペンションストローク時のスカッフ変化、すなわち車輪接地点の車両幅方向の変位を抑制して操縦安定性を確保するためには、ロアリンクを長くすることが望ましい。一方、車両後部の低床化を実現したり荷台スペースを確保したりするためには、アッパリンクを短くし、車軸に対して車両上下方向上側(以下、アッパ側)のスペースを節約する(省スペース化する)ことが望ましい。しかし、アッパリンクを短くすると、ストローク時の側面視瞬間回転中心の変化が大きくなるため、一定限度以上にはアッパ側のスペースを小さくすることができない、というトレードオフの問題があった。
本実施例1では、ロアリンク43の寸法を長くして上記操縦安定性能を確保するとともに、第1、第2アッパリンク41,42の車両幅方向の寸法を上記クロスによって短くコンパクトにしている。車両側面視におけるリンクのクロスは、必ず車両上面視におけるリンクのクロスを伴い、リンクの車両幅方向寸法の短縮を伴うためである。これにより、車両後部の低床化等が可能になる。同時に、第1、第2アッパリンク41,42を車両側面視でクロスさせることにより、側面視瞬間回転中心の変化を抑制している。よって、上記トレードオフを解消できる。
言い換えると、アッパ側のスペースに上限があり、アッパリンクの寸法を短くせざるを得ないときでも、アッパリンクをクロスさせることで側面視瞬間回転中心の変化を抑制し、乗り心地性能を確保できる。よって、アッパリンクをクロスさせることで、実質的に長いアッパリンクを設けた場合と同様の機能を実現できる。
さらに、本実施例1では、クロスさせた第1、第2アッパリンク41,42をともに車軸Aに対して車両前後方向前側に配置している。これにより、車軸Aに対して車両前後方向後側におけるリンク用スペースをなくすことができ、荷台スペースの拡大等が可能となっている。なお、クロスさせた第1、第2アッパリンク41,42を車軸Aに対して車両前後方向後側に配置することとしてもよい。この場合、車軸Aに対して車両前後方向前側におけるリンク用スペースをなくすことができ、座席スペースの拡大等が可能となる。
また、本実施例1では、第1、第2アッパリンク41,42が設けられている(車軸Aに対して)車両前後方向前側と反対側である(車軸Aに対して)車両前後方向後側にロアリンク43を配置している。すなわち、第1、第2アッパリンク車輪側取付部21a,22aは車軸Aに対して車両前後方向前側に設けられているのに対し、ロアリンク車輪側取り付け部23aは車軸Aに対して車両前後方向後側に設けられている。これにより、車輪Wに入力される車両幅方向の力やトー方向の力に対する車輪Wの支持剛性を向上し、操縦安定性を確保している。
[実施例1の効果]
以下、実施例1から把握される、本発明のサスペンション装置1が有する効果を列挙する。
(1)車軸Aを回転自在に支持するアクスルキャリア2と、車体側取付部41a〜43aから車両幅方向に延在しアクスルキャリア2に連結される複数のリンク41〜43と、を備えたサスペンション装置1において、複数のリンク41〜43は、車軸Aに対して車両上下方向上側または下側に、車両側面視において交差する第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)を有し、上記第1および第2のリンクが設けられている(車軸Aに対して)車両上下方向上側または下側と反対側である、(車軸Aに対して)車両上下方向下側または上側に、第3のリンク(ロアリンク43)を有することとした。
車両側面視でクロスさせた第1、第2アッパリンク41,42の交点Qを仮想のアッパ側アウタピボット点として定義し、側面視瞬間回転中心Oが無限遠方に来るように上記点Qを制御した。よって、マルチリンク式(またはダブルウィッシュボーン式)サスペンションの従来機能を実現しつつ、アンチダイブ角・アンチリフト角等をサスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することにより、ダイブやリフト等を解消して乗心地性能を向上することができる、という効果を有する。なお、ここで車軸Aに対して車両上下方向上側または下側に、車両側面視において交差する第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)を有するとは、これら第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)のいずれか1つのリンクの車輪側取付部21a,22aおよびいずれか1つのリンクの車体側取付部41a,42aが車軸Aに対して車両上下方向上側または下側にあればよく、必ずしもすべての車輪側取付部21a,22aおよび車体側取付部41a,42aが車軸Aに対して車両上下方向上側または下側になければならないということではない(以下、同様)。
(2)サスペンション装置1は、車体側取付部5aから車両後方に延在しアクスルキャリア2に連結されるトレーリングアーム5を有することとした。
よって、車輪Wの前後支持剛性を高めることができ、操縦安定性能を確保しつつ、上記(1)の効果をより効率よく発揮できる、という効果を有する。
(3)上記第1および第2のリンクは、車軸Aに対して車両上下方向上側に配置される第1、第2アッパリンク41,42であることとした。
すなわち、上記第1および第2のリンクを車両側面視でクロスさせることにより、ストローク時の側面視瞬間回転中心の変化を抑制すると同時に、上記第1および第2のリンクの車両幅方向の寸法を上記クロスによって短くコンパクトにした。ここで、上記第1および第2のリンクをアッパ側に配置される第1、第2アッパリンク41,42とすることによって、側面視瞬間回転中心の変化を抑制して乗り心地性能を向上しつつ、低床化の実現や荷台スペースの確保を容易にできる、という効果を有する。
(4)上記第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)は、車軸Aに対して車両前後方向前側または後側に配置されることとした。
すなわち、クロスさせた第1、第2アッパリンク41,42をともに車軸Aに対して車両前後方向前側または後側に配置することにより、車軸Aに対して車両前後方向後側または前側におけるリンク用スペースをなくすことができる。これにより、車両後部のレイアウト自由度が向上し、車両後部を低床化すると同時に荷台スペースや座席スペースを拡大すること等が容易になる、という効果を有する。なお、ここでクロスさせた第1、第2アッパリンク41,42をともに車軸Aに対して車両前後方向前側または後側に配置するとは、第1、第2アッパリンク41,42のいずれか一方の車輪側取付部21a,22aおよびいずれか一方の車体側取付部41a,42aが車軸Aに対して車両前後方向前側または後側にあればよく、必ずしもすべての車輪側取付部21a,22aおよび車体側取付部41a,42aが車軸Aに対して車両前後方向前側または後側になければならないということではない(以下、同様)。
(5)ロアリンク43は、第1、第2アッパリンク41,42が設けられている(車軸Aに対して)車両前後方向前側または後側と反対側である(車軸Aに対して)車両前後方向後側または前側に配置されることとした。
よって、車輪Wの横剛性やトー剛性を高めることができ、操縦安定性を確保しつつ、上記(1)の効果をより効率よく発揮できる、という効果を有する。
実施例2のサスペンション装置は、実施例1と同様に、リンクをクロスさせることにより、サスペンションストローク時の瞬間回転中心の変化を制御する。ただし、実施例1と異なり、車体正面視における瞬間回転中心を制御することにより、サスペンションストローク時のロールセンタ高の変位量を小さくするものである。
[サスペンション装置の基本構成]
図7〜図10は、本発明を車両後輪に適用した、実施例2に係るサスペンション装置1を示す。実施例1と共通する構成については同一の符号を付し、実施例1と異なる構成についてのみ、以下、説明する。図7はサスペンション装置1の全体斜視図、図8は左輪側の側面図、図9は左輪側の正面図、図10は左輪側の平面図である。いずれも、サスペンションストローク量がゼロである中立状態を示す。
サスペンション装置1は、実施例1と同様、アクスルキャリア2と、ストラット3と、車体側の取付部から延在しアクスルキャリア2に連結されている複数のリンク41〜43およびトレーリングアーム5と、を有している。複数のリンク41〜43は、実施例1と同様、車軸Aに対して車両上下方向上側かつ車両前後方向前側に配置された第1、第2アッパリンクと、車軸Aに対して車両上下方向下側かつ車両上下方向後側に配置されたロアリンク43と、を有している。
(アッパリンク)
第1アッパリンク41は、第1アッパリンク車体側取付部41aから車両幅方向外側かつ車両前方かつ若干車両下方に延在し、第1アッパリンク車輪側取付部21aに連結されている。第2アッパリンク42は、実施例1と同様、第2アッパリンク車体側取付部42aから車両幅方向外側かつ車両後方かつ若干車両上方に延在し、第2アッパリンク車輪側取付部22aに連結されている。図9に示すように、第1、第2アッパリンク41,42は、車両正面視において交点Q2を有している。
アクスルキャリア2の第1アッパリンク支持部材21は、車軸Aから車両前方かつ車両上方に延在し、その車輪W外径側の端には、第1アッパリンク車輪側取付部21aが設けられている。第1アッパリンク車輪側取付部21aは、第2アッパリンク車輪側取付部22aに対して車両前方かつ車両下方かつ車両幅方向外側に設けられている。第1アッパリンク車体側取付部41aは、第1アッパリンク車輪側取付部21aに対し車両後方かつ若干車両上方に設けられ、また、第2アッパリンク車体側取付部42aに対して車両後方かつ若干車両上方かつ車両幅方向内側に設けられている(図8〜図10参照)。
(ストラット)
ストラット3は車両上下方向に設置されており、その上端は車体取付部3aで車体に連結されている。
他の構成は、実施例1と同様である。
[従来技術との対比における実施例2の作用効果]
車両のロール運動は、前輪ロールセンタと後輪ロールセンタを結ぶ軸であるロール軸と車両重心との間の距離、すなわちロールモーメント長によって決定される。サスペンションに関する一般的な問題として、サスペンションストローク時にロールセンタの変化が大きいと、すなわちロールモーメント長の変化が大きいと、車体のロール運動の乱れが大きくなり、操縦安定性能が悪化する、という問題がある。
ロールセンタは、車両正面視における瞬間回転中心に基づき求められる。正面視瞬間回転中心の位置は、サスペンションストロークによるリンクの正面視角度によって変化するため、ロールセンタ高もサスペンションストロークに応じて時々刻々と変化する。一般的に、サスペンションストローク時における正面視瞬間回転中心位置の変化を抑制することは困難である。
例えば、サスペンションジオメトリにより正面視瞬間回転中心を無限遠方に設定することで、正面視瞬間回転中心位置の変化量がロールセンタ高変化に与える影響を小さくするなどの対策が考えられる。この場合、車体正面視において、ロアリンクとアッパリンクとが平行になるように設定しなければならないが、他性能(キャンバー変化、トー変化など)との関係から、困難である。
このため、瞬間回転中心位置に基づき設定されるロールセンタ高を、サスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することができない。その結果、車体のロール運動の乱れを充分に解消することができない、という問題があった。
本実施例2のサスペンション装置1は、車両正面視において第1、第2アッパリンク41,42をクロスさせ、物理的なアウタピボット点の代替として、両リンク41,42の車両正面視交点Q2を仮想のアウタピボット点と定義し、この仮想アウタピボット点Q2の位置を制御することとした。これにより、従来のダブルウィッシュボーン式またはマルチリンク式サスペンションの性能を維持しつつ、サスペンションストローク時のロールセンタ高の変化を小さくできる。以下、従来技術と対比して説明する。
(ロールセンタ高の変化の抑制)
図11と図12に、それぞれ従来のマルチリンク式サスペンションおよび本実施例1のサスペンション装置1におけるロールセンタ高の算出方法を示す。サスペンションストローク量ゼロの中立状態、すなわち初期状態のリンク延長線およびスイングアームを一点鎖線で示し、バウンドストローク時のリンク延長線およびスイングアームを2点鎖線で示す。
正面視瞬間回転中心は、アッパ側およびロア側における弾性主軸の延長線の車両正面視交点として求めることができ、リンクの延長線により弾性主軸の延長線を近似できる。車両正面視において、アッパリンク延長線およびロアリンク延長線が交わる点が、正面視瞬間回転中心O2である。リンク延長線は、リンクの車輪側取付部であるアウタピボット点とリンクの車体側取付部(以下、インナピボット点)とを結ぶ直線である。正面視瞬間回転中心O2と後輪接地点Pとを結ぶ直線、すなわちスイングアームと車体中心線との交点が、ロールセンタRである。地面からロールセンタRまでの高さが、ロールセンタ高hであり、ロールセンタRから車両重心Gまでの距離がロールモーメント長Mである。
なお、アッパ側またはロア側のリンクが2本ある場合は、本実施例2のようにそれら2本のリンクを車両正面視でクロスさせない限りにおいて、それら2本のリンクの車輪側取付部の中点でアッパ側またはロア側のアウタピボット点を近似できる。また、それら2本のリンクの車体側取付部の中点でアッパ側またはロア側のインナピボット点を近似できる。
(従来技術におけるロールセンタ高の変化)
従来のマルチリンク式サスペンションにおいて、図11に示す位置に正面視瞬間回転中心O2が設定された場合、サスペンションがバウンドストロークしたとき、アッパリンクとロアリンクは、それぞれの車体側取付部(インナピボット点)を中心に反時計回りに回転する。このときアッパリンク延長線L21とロアリンク延長線L22との交点である正面視瞬間回転中心O2の位置は、大きく下方の点O2'に変化する。これに伴い、スイングアームL23も下方の直線L23'に変位するため、ロールセンタRは下方の点R'に変位する。
なお、上記のように他性能との関係から、アッパリンク延長線L21とロアリンク延長線L22とが平行になるようなサスペンションジオメトリの設定は困難である。よって、実際に設定される正面視瞬間回転中心O2の位置は、無限遠方ではなく、車体付近となる。よって、正面視瞬間回転中心O2の車両上下方向における変位は、ロールセンタ高hの変化量に大きく影響する。サスペンションストローク時、ロールセンタ高hの変化量Δh(=|h-h'|)は大きい。したがって、ロールモーメント長MはΔhだけ大きく変化し、車体のロール運動の乱れが大きくなる。
(本実施例2におけるロールセンタ高の変化)
図12に示すように、本実施例2では、車両正面視においてクロスさせた第1、第2アッパリンク41,42の車両正面視交点Q2を、仮想のアッパ側アウタピボット点として定義する。また、第1、第2アッパリンク車体側取付部41a、42aの中間点Sを、アッパ側インナピボット点として近似する。ここで、仮想アウタピボット点Q2と近似インナピボット点Sとを結ぶ直線を、仮想アッパリンク延長線L21とする。
車両正面視において、仮想アッパリンク延長線L21とロアリンク延長線L22の交点が、正面視瞬間回転中心O2であり、正面視瞬間回転中心O2と後輪接地点Pとを結ぶ直線であるスイングアームL23と車体中心線との交点がロールセンタRである。
サスペンションがバウンドストロークすると、仮想アウタピボット点Q2は上方の点Q2'に移動し、仮想アッパリンク延長線L21の車両正面視での対水平傾角も変化する。すなわち、アッパ側のインナピボット点Sは、車体に固定された第1、第2アッパリンク車体側取付部41a、42aの中間点なので、バウンドストロークによって変化しない。一方、バウンドストロークとともに、仮想アウタピボット点Q2は点Q2'に移動するため、仮想アッパリンク延長線L21もインナピボット点Sを中心として反時計回りに直線L21'に回転移動する。また、ロアリンク延長線L22も、バウンドストロークとともにロアリンク車体側取付部43aを中心として反時計回りに直線L22'に回転移動する。
ここで、サスペンションストロークに従って変化する仮想アッパリンク延長線L21の上記傾角は、仮想アウタピボット点Q2の設定位置、言い換えれば第1、第2アッパリンク41,42の車輪側取付部21a,22a,または車体側取付部41a,42aの位置で制御することができる。
本実施例2では、バウンド・リバウンド時、正面視瞬間回転中心O2'が、初期状態のスイングアームL23上のいずれかの点に位置するように(スイングアームL23上を移動するように)、仮想アウタピボット点Q2の位置が調整されている。言い換えると、仮想アッパリンク延長線L21が、ロアリンク延長線L22と初期状態のスイングアームL23との交点を通るように、仮想アウタピボット点Q2が設定されている。
よって、仮想アウタピボット点Q2と後輪接地点Pとを結ぶ直線であるスイングアームL23は、サスペンションストロークの全領域にわたって、初期状態からほとんど変化することがない。
なお、この配置関係は、第1、第2アッパリンク41,42のみにより独立して設定することができるため、従来技術のような、ジオメトリによる瞬間回転中心位置の制御が他性能へ及ぼす影響を考慮する必要がない。
このように、サスペンションストロークの全領域にわたって、スイングアームL23が初期状態からほとんど変化することがないように設定されているため、スイングアームL23と車体中心線との交点であるロールセンタRはほとんど変位することがない。よって、サスペンションストローク時、ロールセンタ高hもほとんど変わらない。したがって、ロールモーメント長Mの変化が少なく、車体のロール運動の乱れが少ない。
(実験結果によるロールセンタ高の変化量の対比)
図13に、従来のマルチリンク式サスペンションおよび本実施例2のサスペンション装置1における、サスペンションストロークに対するロールセンタ高の変化の実験結果を示す。従来のサスペンションでは、ストローク量に比例してロールセンタ高が変化し、単位ストローク量当たりのロールセンタ高の変化量が多い。
それに対し、本実施例2のサスペンション装置1では、上記変化量が従来技術に比べて少なく、サスペンションストロークの全領域にわたってロールセンタ高の値が略一定である。詳細には、バウンドストロークの全領域にわたり、ロールセンタ高は略一定であり、変化がほとんどない。また、リバウンドストローク領域でも、リバウンド量に対するロールセンタ高の変化量は、従来のサスペンションに比べて微小である。
以上より、本実施例2のサスペンション装置1は、サスペンションストローク時にもロールセンタ高を略一定に保ち、操縦安定性能を向上することができる。上記機能は、第1、第2アッパリンク41,42の配置のみにより達成されるため、ロアリンク43等、他のサスペンション要素のジオメトリ自由度が確保され、他性能への影響を考慮する必要がない。言い換えれば、従来機能を実現しつつ、ロールセンタ高の変化を少なくすることができる。
なお、実施例1と同様に、サスペンションストロークの全領域を通じて、仮想アッパリンク延長線L21とロアリンク延長線L22とが略平行になるように、仮想アウタピボット点Q2の位置を設定してもよい。これにより、正面視瞬間回転中心O2の位置を無限遠方に設定できる。この場合も、サスペンションストローク時、ロールセンタ高hの変化量は小さい。すなわち、ロールモーメント長Mの変化が少なく、車体のロール運動の乱れが少ない。
(リンク配置による作用効果)
リンク配置による作用効果は、実施例1と同様である。
[実施例2の効果]
以下、実施例2から把握される、本発明のサスペンション装置1が有する効果を列挙する。
(1)車軸Aを回転自在に支持するアクスルキャリア2と、車体側取付部41a〜43aから車両幅方向に延在しアクスルキャリア2に連結される複数のリンク41〜43と、を備えたサスペンション装置1において、複数のリンク41〜43は、車軸Aに対して車両上下方向上側または下側に、車両正面視において交点を有する第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)を有し、上記第1および第2のリンクが設けられている(車軸Aに対して)車両上下方向上側または下側と車軸Aに対して反対側である、(車軸Aに対して)車両上下方向下側または上側に、第3のリンク(ロアリンク43)を有することとした。
すなわち、車両正面視でクロスさせた第1、第2アッパリンク41,42の交点Q2を仮想のアッパ側アウタピボット点として定義し、ストロークの全領域にわたって正面視瞬間回転中心O2が初期状態のスイングアームL23上を移動するように、上記点Q2を制御した。よって、マルチリンク式(またはダブルウィッシュボーン式)サスペンションの従来機能を実現しつつ、ロールセンタ高hをサスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することにより、操縦安定性能を向上することができる、という効果を有する。
(2)サスペンション装置1は、車体側取付部5aから車両後方に延在しアクスルキャリア2に連結されるトレーリングアーム5を有することとした。
よって、車輪Wの前後支持剛性を高めることができ、上記(1)の効果をより効率よく発揮できる、という効果を有する。
(3)上記第1および第2のリンクは、車軸Aに対して車両上下方向上側に配置される第1、第2アッパリンク41,42であることとした。
すなわち、上記第1および第2のリンクを車両正面視でクロスさせることにより、ストローク時の正面視瞬間回転中心位置を制御すると同時に、上記第1および第2のリンクの車両幅方向の寸法を上記クロスによって短くコンパクトにした。ここで、上記第1および第2のリンクをアッパ側に配置される第1、第2アッパリンク41,42とすることによって、正面視瞬間回転中心O2の変化を制御して操縦安定性能を向上しつつ、低床化の実現や荷台スペースの確保を容易にできる、という効果を有する。
(4)上記第1および第2のリンク(第1、第2アッパリンク41,42)は、車軸Aに対して車両前後方向前側または後側に配置されることとした。
すなわち、クロスさせた第1、第2アッパリンク41,42をともに車軸Aに対して車両前後方向前側または後側に配置することにより、車軸Aに対して車両前後方向後側または前側におけるリンク用スペースをなくすことができる。これにより、車両後部のレイアウト自由度が向上し、車両後部を低床化すると同時に荷台スペースや座席スペースを拡大すること等が容易になる、という効果を有する。
(5)ロアリンク43は、第1、第2アッパリンク41,42が設けられている(車軸Aに対して)車両前後方向前側または後側と車軸Aに対して反対側である(車軸Aに対して)車両前後方向後側または前側に配置されることとした。
よって、車輪Wの横剛性やトー剛性を高めることができ、上記(1)の効果をより効率よく発揮できる、という効果を有する。
(他の実施例)
以上、本発明のサスペンション装置を実施例1および実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成についてはこれらに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1および実施例2では1本のロアリンク43と2本のアッパリンク(第1、第2アッパリンク41,42)を設け、これら2本のアッパリンク(第1、第2アッパリンク41,42)をクロスさせることとしたが、1本のアッパリンクと2本のロアリンクを設けた上で、これら2本のロアリンクを車両側面視または正面視でクロスさせ、このクロス点を調整することにより車両側面視または正面視での瞬間回転中心位置を制御することとしてもよい。この場合も、実施例1および実施例2と同様に、従来のサスペンション機能を実現しつつ、アンチダイブ角・アンチリフト角等またはロールセンタ高をサスペンションストロークの全領域を通じて適正値に維持することにより、乗心地性能や操縦安定性能を向上することができる、という効果を有する。
また、実施例1および実施例2の両条件を満たすリンク配置としてもよい。すなわち、車軸に対して車両上下方向上側または下側に設けた2本のリンクを、これらが車両側面視および正面視で同時にクロスするように配置し、交点位置等を調整して側面視瞬間回転中心および正面視瞬間回転中心の双方を最適に制御することとして、乗心地性能および操縦安定性能を向上させることとしてもよい。
実施例1に係るサスペンション装置の全体斜視図である。 実施例1に係るサスペンション装置の側面図である。 実施例1に係るサスペンション装置の平面図である。 従来技術におけるアンチリフト角の算出法を示すサスペンション装置の側面図である。 実施例1におけるアンチリフト角の算出法を示すサスペンション装置の側面図である。 実施例1と従来技術におけるサスペンションストローク量とアンチリフト角との関係を示すグラフである。 実施例2に係るサスペンション装置の全体斜視図である。 実施例2に係るサスペンション装置の側面図である。 実施例2に係るサスペンション装置の正面図である。 実施例2に係るサスペンション装置の平面図である。 従来技術におけるロールセンタ高の算出法を示すサスペンション装置の正面図である。 実施例2におけるロールセンタ高の算出法を示すサスペンション装置の正面図である。 実施例2と従来技術におけるサスペンションストローク量とロールセンタ高との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 サスペンション装置
2 アクスルキャリア
3 ストラット
3a ストラット車体側取付部
5 トレーリングアーム
5a トレーリングアーム車体側取付部
6 リアサスペンションメンバ
21 第1アッパリンク支持部材
21a 第1アッパリンク車輪側取付部
22 第2アッパリンク支持部材
22a 第2アッパリンク車輪側取付部
23 ロアリンク支持部材
23a ロアリンク車輪側取付部
24 ストラット支持部材
24a ストラット車輪側取付部
31 コイルスプリング
32 ショックアブソーバ
41 第1ロアリンク
41a 第1アッパリンク車体側取付部
42 第2アッパリンク
42a 第2アッパリンク車体側取付部
43 ロアリンク
43a ロアリンク車体側取付部
A 車軸
W 車輪

Claims (5)

  1. 車軸を回転自在に支持するアクスルキャリアと、
    車体側取付部から車両幅方向に延在し前記アクスルキャリアに連結される複数のリンクと、
    を備えたサスペンション装置において、
    前記複数のリンクは、
    車軸に対して車両上下方向上側または下側に、車両側面視または車両正面視において交差する第1リンクおよび第2リンクを有し、
    前記第1および第2リンクが設けられている側と車軸に対して反対側の前記上側または下側に、第3リンクを有すること
    を特徴とするサスペンション装置。
  2. 請求項1に記載のサスペンション装置において、車体側取付部から車両後方に延在し前記アクスルキャリアに連結されるトレーリングアームを有することを特徴とするサスペンション装置。
  3. 請求項1または2に記載のサスペンション装置において、前記第1および第2リンクは、車軸に対して車両上下方向上側に配置されるアッパリンクであることを特徴とするサスペンション装置。
  4. 請求項3に記載のサスペンション装置において、前記第1および第2リンクは、車軸に対して車両前後方向前側または後側に配置されることを特徴とするサスペンション装置。
  5. 請求項4に記載のサスペンション装置において、前記第3リンクは、前記第1および第2リンクが設けられている側と車軸に対して反対側の前記前側または後側に配置されることを特徴とするサスペンション装置。
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