JP5028761B2 - 高強度溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
え、且つ縦シーム溶接部の継手引張強度が950MPa以上を満足する高強度溶接鋼管の製造方法として好適なものに関する。
これまでに、API規格でX100グレードのラインパイプが実用化されているが、さらに、引張強度900MPaを超えるX120グレードに対する要望が具体化されつつある。
1)継手強度≧950MPaを達成するHAZ強度に必要な母材Pcm値の確保と、溶接性や靱性等への悪影響を除くための個々の合金元素添加量規制。
o添加系溶接金属の選定。
本発明は上記知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち本発明は、
1. 質量%で、
C:0.03〜0.12%
Si:≦0.5%
Mn:1.7〜3.0%
P≦0.010%、S≦0.003%
Al:0.01〜0.08%
Cu:≦0.8%
Ni:0.1〜1.0%
Cr:≦0.8%
Mo:≦0.8%
Nb:0.01〜0.08%
V:≦0.10%
Ti:0.005〜0.025%
B:≦0.003%
Ca:≦0.01%
REM:≦0.02%
N:0.001〜0.006%
を含有し、
下記式(1)で計算されるPcm値が0.21≦Pcm≦0.30を満足し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる鋼を、
1000〜1200℃に再加熱し、950℃以下の温度域での累積圧下量≧67%の熱間
圧延を行い、圧延終了後、700℃以上から冷却速度20〜80℃/sで加速冷却を開始し
、250℃以下で冷却停止後、空冷し、250〜400℃に再加熱して製造した、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向の全厚引張試験片における降伏強度と歪時効前の降伏強度の差が20MPa以下、且つ、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向のシャルピー衝撃試験における−30℃でのシャルピー吸収エネルギーが150Jである鋼板を管状に成形し、その突合わせ部をサブマージアーク溶接して鋼管とした後、更に拡管をおこなうことを特徴とする、高強度溶接鋼管の製造方法。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B (1)
但し、各成分は含有量(%)とする。
C:0.05〜0.09%
Si:0.1〜0.4%
Mn:2.0〜3.0%
P:≦0.020%
S:≦0.010%
Al:≦0.015%
Cu:≦0.5%
Ni:≦2.0%
Cr:≦1.0%
Mo:≦1.0%
V:≦0.1%
Ti:0.003〜0.03%
B:≦0.0010%
O:≦0.03%
N:≦0.008%
残部Feおよび不可避的不純物である1記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
1 素材鋼板
[成分組成]
C:0.03〜0.12%
Cは低温変態組織においては過飽和固溶することで強度上昇に寄与する。その効果を得るため、0.03%以上の添加が必要であるが、0.12%を超えて添加すると、パイプの円周溶接部の硬度上昇が著しく、耐低温割れ性が低下るため、上限を0.12%とする。
Siは変態組織によらず固溶することにより強化するため、母材、HAZの強度上昇に有効である。しかし、0.5%を超えて添加すると靱性が著しく低下するため上限を0.5%とする。
Mnは焼入性向上元素として作用する。特にHAZにおいて高強度を達成するための低温変態組織を得るために1.7%以上の添加が必要であるが、連続鋳造プロセスでは中心偏析部の濃度上昇が著しく、3.0%を超える添加を行うと、母材およびHAZの靭性を劣化させるとともに、偏析部での遅れ破壊の原因となるため、上限を3.0%とする。
Alは脱酸元素として作用する。0.01%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.08%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靱性を劣化させるため、上限を0.08%とする。
Cu、Cr、Moはいずれも焼入性向上元素として作用する。これらはMnと同じように低温変態組織を得て母材・HAZの高強度化に寄与し、Mnを多量に添加することの代替として使用する。高価な元素であり、且つそれぞれ0.8%以上添加しても高強度化の効果は飽和するため、上限を0.8%とする。
Niは焼入性向上元素として作用し、添加しても靱性劣化を起こさないため、有用な元素である。この効果を得るため、0.1%以上添加するが、高価な元素であり、上限を1.0%とする。
Nb、Vは炭化物を形成して2回以上の溶接熱サイクルを受けるHAZの焼戻し軟化防止に有効で、必要なHAZ強度を得るために添加する。
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量を低減させ、析出したTiNがピンニング効果でオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材、HAZの靱性向上に寄与する。必要なピンニング効果を得るためには0.005%以上を添加するが、0.025%を超えて添加すると炭化物を形成す、その析出硬化により靱性が著しく劣化するため、上限を0.025%とする。
Bはオーステナイト粒界に偏析し、フェライト変態を抑制することで,特にHAZの強度低下防止に寄与する。0.003%を超えて添加してもその効果は飽和するため、上限を0.003%とする。
Caは鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、靱性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.01%を超えて添加すると、CaO−CaSのクラスターを形成し、靱性を劣化させるので、上限を0.01%とする。
REMは鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、靱性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素で、且つ0.02%を超えて添加しても効果が飽和するため、上限を0.02%とする。
Nは通常鋼中の不可避不純物として存在し、Ti添加により、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成する。必要とするピンニング効果を得るためには0.001%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.006%を超えると、溶接部、特に溶融線近傍で1450℃以上に加熱されたHAZでTiNが分解し、固溶Nが靭性を低下させるので上限を0.006%とする。
Pcm(=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B、但し、各成分は含有量%とする。)は溶接割れ感受性組成であるが、本発明では継手強度≧950MPaを達成するため下限値を0.21とする。
最軟化HAZ硬さは鋼のPcm値と相関し、継手引張強度950MPaを確保するビッカース硬さ270以上(950MPaのビッカース硬さ換算値300の9割)とするため、Pcmの下限値を0.21とする。
P、Sはいずれも鋼中に不可避的不純物として存在する.特に中心偏析部での偏析が著しい元素であり、母材の偏析部起因の靱性低下を抑制するためにそれぞれ上限を0.010%、0.003%とする。
[製造方法]
加熱温度:1000〜1200℃
熱間圧延開始時に、スラブを完全にオーステナイト化するため、下限温度を1000℃とする。一方、1200℃を超える温度まで鋼片を加熱すると、TiNピンニングによってもオーステナイト粒成長が著しく、母材靱性が劣化するため上限温度を1200℃とする。
熱間圧延では、オーステナイト未再結晶域である950℃以下において累積で圧下量を67%以上の大圧下を行う。
熱間圧延後、加速冷却を開始する温度が低いと、空冷過程においてオーステナイト粒界から初析フェライトが生成し、母材強度を低下させるので、初析フェライト生成を抑制するための下限温度を700℃とする。
鋼板強度は加速冷却の冷却速度が増加するに従い上昇する傾向を示す。加速冷却時の冷却速度が20℃/s未満の場合,変態組織が比較的高温で変態するため、十分な強度を得ることができない。一方、80℃/sを超える冷却速度の場合、表面近傍でのマルテンサイト変態が生じ、比較的低温域での焼き戻しでは母材靭性が充分に回復せずに母材靱性が低下することから、加速冷却時の冷却速度を20〜80℃/sとする。
鋼板強度は加速冷却の冷却停止温度が低下するに従い上昇する傾向を示す。加速冷却の冷却停止温度が250℃を超える場合、後述の焼戻し後に充分な強度が得られないことから,加速冷却の冷却停止温度を250℃以下とする。
このプロセスは本発明において,重要な構成要件である。高強度鋼の製造において停止温度を低下させて高強度化する場合、生成した低温変態組織が管成形時の冷間加工により塑性変形を受けることがある。このため、鋼材の機械的性質が歪時効により経年変化することが懸念される。
上記方法で製造された鋼板の鋼管への成形方法は特に限定はなく、従来から用いられているUOE成形、プレスベンド成形、ロール成形のいずれも使用可能である。
C:0.05〜0.09%
溶接金属においてもCは鋼の強化元素として重要な元素である。特に、継手部のオーバーマッチングを達成するため、溶接金属部において引張強度≧950MPaとする必要で、0.05%以上とする。
Siは溶接金属の脱酸ならびに良好な作業性を確保するために必要で、0.1%未満では十分な脱酸効果が得られず、一方、0.4%を超えると溶接作業性の劣化を引き起こすため、上限を0.4%とする。
Mnは溶接金属の高強度化に重要な元素である。特に、引張強度≧950MPaといった超高強度は、従来のアシキュラフェライト組織では達成できず、多量のMnを含有させベイナイト組織とすることで可能となる。
P、Sは溶接金属中では粒界に偏析しその靱性を劣化させるため、上限をそれぞれ0.020%、0.010%とする。
Alは脱酸元素として作用するが、溶接金属においてはTiによる脱酸が靱性改善効果が大きい。また、Al酸化物系の介在物が多くなると溶接金属のシャルピー吸収エネルギーが低下するため積極的には添加せず、その上限を0.015%とする。
母材と同様にCu、Ni、Cr、Moは溶接金属においても焼入性を向上させるので、ベイナイト組織とするために含有させる。
適量のV添加は靱性・溶接性を劣化させずに強度を高めることから有効な元素である。0.1%を超えると溶接金属の再熱部の靱性が著しく劣化するため、上限を0.1%とする。
Tiは溶接金属中では脱酸元素として働き、溶接金属中の酸素の低減に有効である。この効果を得るためには0.003%以上の含有が必要であるが、0.03%を超えた場合、余剰となったTiが炭化物を形成し溶接金属の靱性を劣化させるため、上限を0.03%とする。
Bは溶接金属をベイナイト組織とするため含有する。但し、溶接金属中のB量が0.0010%を超えると靱性の低いマルテンサイト組織が生成するため,上限を0.0010%とする。
溶接金属中の酸素量を低減すると靱性が改善する。特に0.03%以下とすることで著しく改善されるため、上限を0.03%とする。
溶接金属中の固溶N量を低減すると靱性が改善する。特に0.008%以下とすることで著しく改善されるため、上限を0.008%とする。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.03〜0.12%
Si:≦0.5%
Mn:1.7〜3.0%
P≦0.010%、S≦0.003%
Al:0.01〜0.08%
Cu:≦0.8%
Ni:0.1〜1.0%
Cr:≦0.8%
Mo:≦0.8%
Nb:0.01〜0.08%
V:≦0.10%
Ti:0.005〜0.025%
B:≦0.003%
Ca:≦0.01%
REM:≦0.02%
N:0.001〜0.006%
を含有し、
下記式(1)で計算されるPcm値が0.21≦Pcm≦0.30を満足し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる鋼を、
1000〜1200℃に再加熱し、950℃以下の温度域での累積圧下量≧67%の熱間
圧延を行い、圧延終了後、700℃以上から冷却速度20〜80℃/sで加速冷却を開始し
、250℃以下で冷却停止後、空冷し、250〜400℃に再加熱して製造した、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向の全厚引張試験片における降伏強度と歪時効前の降伏強度の差が20MPa以下、且つ、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向のシャルピー衝撃試験における−30℃でのシャルピー吸収エネルギーが150Jである鋼板を管状に成形し、その突合わせ部をサブマージアーク溶接して鋼管とした後、更に拡管をおこなうことを特徴とする、高強度溶接鋼管の製造方法。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B (1)
但し、各成分は含有量(%)とする。 - 突合わせ部をサブマージアーク溶接して得られる溶接金属の化学組成が、
C:0.05〜0.09%
Si:0.1〜0.4%
Mn:2.0〜3.0%
P:≦0.020%
S:≦0.010%
Al:≦0.015%
Cu:≦0.5%
Ni:≦2.0%
Cr:≦1.0%
Mo:≦1.0%
V:≦0.1%
Ti:0.003〜0.03%
B:≦0.0010%
O:≦0.03%
N:≦0.008%
残部Feおよび不可避的不純物である請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造方法。 - 突合わせ部を、仮付溶接後、内外面1層でサブマージアーク溶接することを特徴とする
請求項1または2記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
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