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JP5028761B2 - 高強度溶接鋼管の製造方法 - Google Patents

高強度溶接鋼管の製造方法 Download PDF

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JP5028761B2 JP2005208295A JP2005208295A JP5028761B2 JP 5028761 B2 JP5028761 B2 JP 5028761B2 JP 2005208295 A JP2005208295 A JP 2005208295A JP 2005208295 A JP2005208295 A JP 2005208295A JP 5028761 B2 JP5028761 B2 JP 5028761B2
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Description

本発明は、高強度溶接鋼管の製造方法に関し、特に素材の引張強度が900MPaを超
え、且つ縦シーム溶接部の継手引張強度が950MPa以上を満足する高強度溶接鋼管の製造方法として好適なものに関する。
近年,天然ガスや原油の輸送用として使用されるラインパイプは、高圧化による輸送効率の向上や薄肉化による現地溶接施工能率の向上のため、年々高強度化されている。
これまでに、API規格でX100グレードのラインパイプが実用化されているが、さらに、引張強度900MPaを超えるX120グレードに対する要望が具体化されつつある。
このような高強度ラインパイプ用溶接鋼管およびその素材となる高強度厚鋼板の製造方法に関し、例えば特許文献1においては、熱間圧延後2段冷却を行い、2段目の冷却停止温度を300℃以下とすることで、高強度化を達成する技術が開示されている。
特許文献2では高価な合金元素添加量を削減しつつ、高強度・高靱性を得るための加速冷却および焼戻し条件に関する技術が開示されている。
また、特許文献3には、母材については特許文献1と同様に合金元素添加量を削減し、縦シーム溶接部の溶接金属では高強度・高靱性が得られる成分設計技術が開示されている。
特開2003―293089号公報 特開2002―173710号公報 特開2000―355729号公報
しかしながら、母材の合金元素量を低く抑えたまま加速冷却等の手段によって高強度化を進めた場合、溶接条件によっては縦シーム溶接の熱影響部(Heat Affected Zone、以降HAZ)の強度との乖離により、水圧試験のための実管試験で強度の低いHAZ部において破壊が生じる等溶接部における安全性が懸念され、高強度な母材に応じた適切な溶接条件の選定が新たに必要とされる。
また、加速冷却の停止温度を下げて高強度化した場合、生成した低温変態組織は管成形時に冷間で塑性加工することもあり、歪時効挙動で機械的性質が経年変化することが懸念される。
本発明は、低グレードのラインパイプ製造に用いた縦シーム溶接方法を大きく変えることなく,母材以上の継手強度を達成し、且つ時効による機械的性質の変動を抑制することが可能なX120グレードの高強度溶接鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討を行い、以下の基本技術が有効なことを見出した。
1)継手強度≧950MPaを達成するHAZ強度に必要な母材Pcm値の確保と、溶接性や靱性等への悪影響を除くための個々の合金元素添加量規制。
図1に、母材のPcm=0.22である管厚14mmの鋼を内外面1層サブマージアーク溶接(内面側1層溶接後、外面側を1層溶接)を行った溶接鋼管の外面側の表層下約1mm位置におけるビッカース硬さの分布を示す。
HAZにおいて、硬さの低下が認められ、最軟化となる位置は、母材部との境界に近い領域である。最軟化部のミクロ組織観察の結果、外面溶接によってオーステナイト化温度(Ac3点)直上に加熱された領域が最も軟化している。
最軟化部の硬さを上昇させる成分設計を行うことにより、溶接時の加熱温度がより高い領域のHAZ硬さも上昇し、継手軟化が大幅に軽減される。
また、溶接鋼管におけるHAZ最軟化部の硬さを母材部の約9割以上とするとHAZ軟化による継手強度の低下が生じないことも見いだした。
2)上記母材成分制約で歪み時効を起こすことなく,高強度・高靱性を得るための制御圧延・加速冷却条件の選定。
3)母材と溶接部の強度マッチングを適正なものにする高Mn−Cu−Ni−Cr−M
o添加系溶接金属の選定。
本発明は上記知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち本発明は、
1. 質量%で、
C:0.03〜0.12%
Si:≦0.5%
Mn:1.7〜3.0%
P≦0.010%、S≦0.003%
Al:0.01〜0.08%
Cu:≦0.8%
Ni:0.1〜1.0%
Cr:≦0.8%
Mo:≦0.8%
Nb:0.01〜0.08%
V:≦0.10%
Ti:0.005〜0.025%
B:≦0.003%
Ca:≦0.01%
REM:≦0.02%
N:0.001〜0.006%
を含有し、
下記式(1)で計算されるPcm値が0.21≦Pcm≦0.30を満足し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる鋼を、
1000〜1200℃に再加熱し、950℃以下の温度域での累積圧下量≧67%の熱間
圧延を行い、圧延終了後、700℃以上から冷却速度20〜80℃/sで加速冷却を開始し
、250℃以下で冷却停止後、空冷し、250〜400℃に再加熱して製造した、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向の全厚引張試験片における降伏強度と歪時効前の降伏強度の差が20MPa以下、且つ、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向のシャルピー衝撃試験における−30℃でのシャルピー吸収エネルギーが150Jである鋼板を管状に成形し、その突合わせ部をサブマージアーク溶接して鋼管とした後、更に拡管をおこなうことを特徴とする、高強度溶接鋼管の製造方法。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B (1)
但し、各成分は含有量(%)とする。
2. 突合わせ部をサブマージアーク溶接して得られる溶接金属の化学組成が、
C:0.05〜0.09%
Si:0.1〜0.4%
Mn:2.0〜3.0%
P:≦0.020%
S:≦0.010%
Al:≦0.015%
Cu:≦0.5%
Ni:≦2.0%
Cr:≦1.0%
Mo:≦1.0%
V:≦0.1%
Ti:0.003〜0.03%
B:≦0.0010%
O:≦0.03%
N:≦0.008%
残部Feおよび不可避的不純物である1記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
3. 突合わせ部を、仮付溶接後、内外面1層でサブマージアーク溶接することを特徴とする1または2記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
本発明によれば、低強度グレードの溶接鋼管の製造に用いられてきた溶接方法により、歪時効特性に優れた、溶接部の継手引張り強度に優れたX120グレード(引張強度900MPa以上)の高強度溶接鋼管の製造が可能で産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1 素材鋼板
[成分組成]
C:0.03〜0.12%
Cは低温変態組織においては過飽和固溶することで強度上昇に寄与する。その効果を得るため、0.03%以上の添加が必要であるが、0.12%を超えて添加すると、パイプの円周溶接部の硬度上昇が著しく、耐低温割れ性が低下るため、上限を0.12%とする。
Si:≦0.5%
Siは変態組織によらず固溶することにより強化するため、母材、HAZの強度上昇に有効である。しかし、0.5%を超えて添加すると靱性が著しく低下するため上限を0.5%とする。
Mn:1.7〜3.0%
Mnは焼入性向上元素として作用する。特にHAZにおいて高強度を達成するための低温変態組織を得るために1.7%以上の添加が必要であるが、連続鋳造プロセスでは中心偏析部の濃度上昇が著しく、3.0%を超える添加を行うと、母材およびHAZの靭性を劣化させるとともに、偏析部での遅れ破壊の原因となるため、上限を3.0%とする。
Al:0.01〜0.08%
Alは脱酸元素として作用する。0.01%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.08%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靱性を劣化させるため、上限を0.08%とする。
Cu:≦0.8%、Cr:≦0.8%、Mo:≦0.8%
Cu、Cr、Moはいずれも焼入性向上元素として作用する。これらはMnと同じように低温変態組織を得て母材・HAZの高強度化に寄与し、Mnを多量に添加することの代替として使用する。高価な元素であり、且つそれぞれ0.8%以上添加しても高強度化の効果は飽和するため、上限を0.8%とする。
Ni:0.1〜1.0%
Niは焼入性向上元素として作用し、添加しても靱性劣化を起こさないため、有用な元素である。この効果を得るため、0.1%以上添加するが、高価な元素であり、上限を1.0%とする。
Nb:0.01〜0.08%、V:≦0.10%
Nb、Vは炭化物を形成して2回以上の溶接熱サイクルを受けるHAZの焼戻し軟化防止に有効で、必要なHAZ強度を得るために添加する。
またNbは、熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果もあり、特に950℃まで未再結晶領域とするためには0.01%以上の添加が必要である。一方、0.08%を超えて添加するとHAZの靱性を著しく損ねることから上限を0.08%とする。
Vは炭化物を形成し、特に2回以上の熱サイクルを受けるHAZにおける焼戻し軟化を防止するので添加する。0.10%を超えて添加すると,HAZの靱性を著しく損ねることから上限を0.10%とする。
Ti:0.005〜0.025%
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量を低減させ、析出したTiNがピンニング効果でオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材、HAZの靱性向上に寄与する。必要なピンニング効果を得るためには0.005%以上を添加するが、0.025%を超えて添加すると炭化物を形成す、その析出硬化により靱性が著しく劣化するため、上限を0.025%とする。
B:≦0.003%
Bはオーステナイト粒界に偏析し、フェライト変態を抑制することで,特にHAZの強度低下防止に寄与する。0.003%を超えて添加してもその効果は飽和するため、上限を0.003%とする。
Ca:≦0.01%
Caは鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、靱性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.01%を超えて添加すると、CaO−CaSのクラスターを形成し、靱性を劣化させるので、上限を0.01%とする。
REM:≦0.02%
REMは鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、靱性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素で、且つ0.02%を超えて添加しても効果が飽和するため、上限を0.02%とする。
N:0.001〜0.006%
Nは通常鋼中の不可避不純物として存在し、Ti添加により、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成する。必要とするピンニング効果を得るためには0.001%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.006%を超えると、溶接部、特に溶融線近傍で1450℃以上に加熱されたHAZでTiNが分解し、固溶Nが靭性を低下させるので上限を0.006%とする。
0.21≦Pcm≦0.30
Pcm(=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B、但し、各成分は含有量%とする。)は溶接割れ感受性組成であるが、本発明では継手強度≧950MPaを達成するため下限値を0.21とする。
図2に、種々の実験鋼塊に最軟化HAZ硬さを再現するため、最高加熱温度をAc3点直上とした再現熱サイクルを付与し、ビッカース硬さを求め、Pcm値で整理した結果を示す。
最軟化HAZ硬さは鋼のPcm値と相関し、継手引張強度950MPaを確保するビッカース硬さ270以上(950MPaのビッカース硬さ換算値300の9割)とするため、Pcmの下限値を0.21とする。
一方、鋼のPcm値の増大は鋼管の円周溶接時に問題となる低温割れを助長させる.円周溶接を模擬したy形溶接割れ試験結果より、100℃予熱での低温割れ阻止に必要なPcmの上限は0.30であり、円周溶接部の低温割れを阻止するため、Pcmの上限は0.30とした。
P:≦0.010%、S:≦0.003%
P、Sはいずれも鋼中に不可避的不純物として存在する.特に中心偏析部での偏析が著しい元素であり、母材の偏析部起因の靱性低下を抑制するためにそれぞれ上限を0.010%、0.003%とする。
[製造方法]
加熱温度:1000〜1200℃
熱間圧延開始時に、スラブを完全にオーステナイト化するため、下限温度を1000℃とする。一方、1200℃を超える温度まで鋼片を加熱すると、TiNピンニングによってもオーステナイト粒成長が著しく、母材靱性が劣化するため上限温度を1200℃とする。
950℃以下での累積圧下量≧67%
熱間圧延では、オーステナイト未再結晶域である950℃以下において累積で圧下量を67%以上の大圧下を行う。
オーステナイト粒を伸展させ、その後の加速冷却で変態生成するベイナイトの母相を微細化する。加速冷却して得られるベイナイト鋼の靱性は良好で、特に圧下量を67%以上とすることでベイナイトの微細化が著しく靱性が飛躍的に向上する。
加速冷却の冷却開始温度≧700℃
熱間圧延後、加速冷却を開始する温度が低いと、空冷過程においてオーステナイト粒界から初析フェライトが生成し、母材強度を低下させるので、初析フェライト生成を抑制するための下限温度を700℃とする。
加速冷却の冷却速度:20〜80℃/s
鋼板強度は加速冷却の冷却速度が増加するに従い上昇する傾向を示す。加速冷却時の冷却速度が20℃/s未満の場合,変態組織が比較的高温で変態するため、十分な強度を得ることができない。一方、80℃/sを超える冷却速度の場合、表面近傍でのマルテンサイト変態が生じ、比較的低温域での焼き戻しでは母材靭性が充分に回復せずに母材靱性が低下することから、加速冷却時の冷却速度を20〜80℃/sとする。
加速冷却の冷却停止温度:≦250℃
鋼板強度は加速冷却の冷却停止温度が低下するに従い上昇する傾向を示す。加速冷却の冷却停止温度が250℃を超える場合、後述の焼戻し後に充分な強度が得られないことから,加速冷却の冷却停止温度を250℃以下とする。
焼戻し温度:250〜400℃
このプロセスは本発明において,重要な構成要件である。高強度鋼の製造において停止温度を低下させて高強度化する場合、生成した低温変態組織が管成形時の冷間加工により塑性変形を受けることがある。このため、鋼材の機械的性質が歪時効により経年変化することが懸念される。
歪時効の軽減には、冷間成形前に焼戻し処理により固溶CならびにNを固着させることが有効であるが、焼戻し温度が250℃未満の場合、充分な歪時効抑制効果が得られず、一方、400℃を超える焼戻しの場合、強度が低下し、炭化物の成長によりDWTT特性が劣化するため、焼戻し温度を250〜400℃とする。
尚、鋼の製鋼方法については特に限定しないが,経済性の観点から、転炉法による製鋼プロセスと,連続鋳造プロセスによる鋼片の鋳造を行うことが望ましい。
上記方法で製造された鋼板の鋼管への成形方法は特に限定はなく、従来から用いられているUOE成形、プレスベンド成形、ロール成形のいずれも使用可能である。
2 溶接金属
C:0.05〜0.09%
溶接金属においてもCは鋼の強化元素として重要な元素である。特に、継手部のオーバーマッチングを達成するため、溶接金属部において引張強度≧950MPaとする必要で、0.05%以上とする。
一方、0.09%を超えると溶接金属の高温割れが発生しやすくなるため、上限を0.09%とする。
Si:0.1〜0.4%
Siは溶接金属の脱酸ならびに良好な作業性を確保するために必要で、0.1%未満では十分な脱酸効果が得られず、一方、0.4%を超えると溶接作業性の劣化を引き起こすため、上限を0.4%とする。
Mn:2.0〜3.0%
Mnは溶接金属の高強度化に重要な元素である。特に、引張強度≧950MPaといった超高強度は、従来のアシキュラフェライト組織では達成できず、多量のMnを含有させベイナイト組織とすることで可能となる。
この効果を得るためには2.0%以上含有させる必要があるが、3.0%を超えると溶接性が劣化するため、上限を3.0%とする。
P:≦0.020%、S:≦0.010%
P、Sは溶接金属中では粒界に偏析しその靱性を劣化させるため、上限をそれぞれ0.020%、0.010%とする。
Al:≦0.015%
Alは脱酸元素として作用するが、溶接金属においてはTiによる脱酸が靱性改善効果が大きい。また、Al酸化物系の介在物が多くなると溶接金属のシャルピー吸収エネルギーが低下するため積極的には添加せず、その上限を0.015%とする。
Cu:≦0.5%、Ni:≦2.0%、Cr:≦1.0%、Mo:≦1.0%
母材と同様にCu、Ni、Cr、Moは溶接金属においても焼入性を向上させるので、ベイナイト組織とするために含有させる。
但し、溶接ワイヤへの添加量が多くなるとワイヤ強度が著しく上昇し、サブマージアーク溶接時のワイヤ送給性に障害が生じるため、含有量の上限をCuは0.5%、Niは2.0%、Crは1.0%、Moは1.0%とする。
V:≦0.1%
適量のV添加は靱性・溶接性を劣化させずに強度を高めることから有効な元素である。0.1%を超えると溶接金属の再熱部の靱性が著しく劣化するため、上限を0.1%とする。
Ti:0.003〜0.03%
Tiは溶接金属中では脱酸元素として働き、溶接金属中の酸素の低減に有効である。この効果を得るためには0.003%以上の含有が必要であるが、0.03%を超えた場合、余剰となったTiが炭化物を形成し溶接金属の靱性を劣化させるため、上限を0.03%とする。
B:≦0.0010%
Bは溶接金属をベイナイト組織とするため含有する。但し、溶接金属中のB量が0.0010%を超えると靱性の低いマルテンサイト組織が生成するため,上限を0.0010%とする。
O:≦0.03%
溶接金属中の酸素量を低減すると靱性が改善する。特に0.03%以下とすることで著しく改善されるため、上限を0.03%とする。
N:≦0.008%
溶接金属中の固溶N量を低減すると靱性が改善する。特に0.008%以下とすることで著しく改善されるため、上限を0.008%とする。
本発明に係る継手強度向上技術は特に仮付溶接後、内面と外面を1層ずつサブマージアーク溶接する比較的入熱の高い溶接法において特に有効である。
本発明ではサブマージアーク溶接に用いられるフラックスは特に制限はなく溶融型であっても焼成型であってもかまわない。また、溶接部の低温割れ防止の目的で、溶接前に予熱あるいは溶接後熱処理を行っても本願の効果は損なわれない。
表1に示す化学組成の鋼A〜Jを用いて、表2に示す熱間圧延・加速冷却・焼戻し条件にて鋼板No.1〜16を作製した。表1において鋼種A〜Fは本発明範囲内の成分組成で、鋼種GからJは本発明範囲外の成分組成である。
Figure 0005028761
Figure 0005028761
得られた鋼板より、API−5Lに準拠した全厚引張試験片と、DWTT試験片、および板厚中央位置からJIS Z2202のVノッチシャルピー衝撃試験片を鋼板圧延方向と直角方向に採取し、鋼板の引張試験、DWTT試験およびシャルピー衝撃試験を実施して、強度と靱性を評価した。
母材の強度は引張強度で900MPa以上を良好とし、母材の靭性は−30℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−30)で150J以上、ならびにDWTT試験の−20℃での延性破面率(SA−20)で85%以上を良好とした。
次に、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行い、全厚引張試験片とシャルピー衝撃試験片を鋼板圧延方向と直角方向に採取し、引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施して、歪時効特性を評価した。
歪時効特性は、歪時効前後での降伏強度の差が20MPa以下で、かつ歪時効後の−30℃でのシャルピー吸収エネルギーが150J以上を良好とした。
また、鋼板No.1〜16を用いて、溶接ワイヤ、溶接フラックスを種々変更し、サブマージアーク溶接にて鋼板の突合わせ溶接を行い、表3に示す溶接継手No.1〜16を作製した。得られた継手の溶接金属部より、分析試料を採取し、化学分析を行った。分析結果を表3に示す。
Figure 0005028761
また、API−5Lに準拠した継手引張試験片(余盛付)と、JIS Z2202のVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、溶接継手の引張試験およびのシャルピー衝撃試験(切欠き位置:溶接金属、HAZ)を実施して、溶接部の強度と靱性を評価した。
溶接部の強度は引張強度で950MPa以上、破断位置が母材であるものを良好とし、溶接部の靭性は溶接金属ならびにHAZの−30℃での吸収エネルギーで100J以上を良好とした。
更に、JIS Z 3158に準拠し、y形溶接割れ試験を実施した。試験環境は、気温30℃で湿度80%にコントロールした。
この環境下に1時間放置した100kgf級高張力鋼用の手溶接棒を用い、予熱温度100℃とした試験体に試験ビードを溶接した。溶接割れ感受性は、試験ビードと直交する断面の観察結果で得られた断面割れ率で評価し、断面割れ率が0%を良好とした。
母材の強度・靱性調査結果、溶接継手部の強度・靱性調査結果、および溶接割れ感受性の評価結果をまとめて表4に示す。
Figure 0005028761
母材の組成、鋼板製造方法ならびに溶接金属の組成が本発明範囲内である本発明鋼管No.1〜8は、良好な母材特性ならびに歪時効特性、溶接部特性、溶接性を有している。
一方、母材組成が本発明範囲内であるが鋼板製造条件あるいは溶接金属組成が本発明範囲外である比較鋼管No.9〜12は、母材特性、歪時効特性、溶接部特性、溶接性のいずれかにおいて本発明例と比較して劣る。
鋼板製造条件は本発明範囲内であるが、母材組成ならびに溶接金属組成が本発明範囲外である比較鋼管No.13〜16は、母材特性、歪時効特性、溶接部特性、溶接性のいずれかにおいてが本発明例と比較して劣る。
内外面1層サブマージアーク溶接を行った溶接鋼管の外面側硬度分布を示す図。 再現熱サイクル試験で得られた最軟化HAZ硬さとPcm値の相関図。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.12%
    Si:≦0.5%
    Mn:1.7〜3.0%
    P≦0.010%、S≦0.003%
    Al:0.01〜0.08%
    Cu:≦0.8%
    Ni:0.1〜1.0%
    Cr:≦0.8%
    Mo:≦0.8%
    Nb:0.01〜0.08%
    V:≦0.10%
    Ti:0.005〜0.025%
    B:≦0.003%
    Ca:≦0.01%
    REM:≦0.02%
    N:0.001〜0.006%
    を含有し、
    下記式(1)で計算されるPcm値が0.21≦Pcm≦0.30を満足し、残部Feお
    よび不可避的不純物からなる鋼を、
    1000〜1200℃に再加熱し、950℃以下の温度域での累積圧下量≧67%の熱間
    圧延を行い、圧延終了後、700℃以上から冷却速度20〜80℃/sで加速冷却を開始し
    、250℃以下で冷却停止後、空冷し、250〜400℃に再加熱して製造した、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向の全厚引張試験片における降伏強度と歪時効前の降伏強度の差が20MPa以下、且つ、鋼板圧延方向と直角方向に2%の引張予歪を付与した後に250℃で30分の加熱を行った場合の、鋼板圧延方向と直角方向のシャルピー衝撃試験における−30℃でのシャルピー吸収エネルギーが150Jである鋼板を管状に成形し、その突合わせ部をサブマージアーク溶接して鋼管とした後、更に拡管をおこなうことを特徴とする、高強度溶接鋼管の製造方法。
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5*B (1)
    但し、各成分は含有量(%)とする。
  2. 突合わせ部をサブマージアーク溶接して得られる溶接金属の化学組成が、
    C:0.05〜0.09%
    Si:0.1〜0.4%
    Mn:2.0〜3.0%
    P:≦0.020%
    S:≦0.010%
    Al:≦0.015%
    Cu:≦0.5%
    Ni:≦2.0%
    Cr:≦1.0%
    Mo:≦1.0%
    V:≦0.1%
    Ti:0.003〜0.03%
    B:≦0.0010%
    O:≦0.03%
    N:≦0.008%
    残部Feおよび不可避的不純物である請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
  3. 突合わせ部を、仮付溶接後、内外面1層でサブマージアーク溶接することを特徴とする
    請求項1または2記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
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