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JP7444090B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鋼板およびその製造方法 Download PDF

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JP7444090B2 JP2021012430A JP2021012430A JP7444090B2 JP 7444090 B2 JP7444090 B2 JP 7444090B2 JP 2021012430 A JP2021012430 A JP 2021012430A JP 2021012430 A JP2021012430 A JP 2021012430A JP 7444090 B2 JP7444090 B2 JP 7444090B2
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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビル、橋梁、タンクなどに使用される鋼板、特に、溶接を行った際の溶接熱影響部(以下、HAZとも称する)においても高い靭性を確保できる厚鋼板に関するものである。
近年、船舶、海洋構造物、中高層ビル、橋梁、タンクなどの構造物に使用される、溶接用鋼材の材質特性に対する要望は厳しさを増している。さらに、そのような構造物は、短期間で製造するべく、サブマージアーク溶接法、エレクトロガス溶接法、エレクトロスラグ溶接法などに代表される、大入熱溶接法の運用が希望されていることから、鋼材自身の靭性と同様に、HAZの靭性への要求も厳しさを増している。しかし、一般に、溶接入熱量が大きくなると、HAZの組織が粗大化し、HAZの靭性は低下することが知られている。このような大入熱溶接による靭性の低下に対して、これまでも多くの対策が提案されてきた。
大入熱溶接によるHAZ(以下、大入熱HAZともいう)の靱性を改善する方法として、例えば特許文献1および特許文献2では、TiN、Alオキサイド等のピンニング効果によりオーステナイト粒の粗大化を抑制する方法が提案されている。また、特許文献3、特許文献4および特許文献5では、オーステナイト粒内にフェライト変態核を多数存在させることにより結晶粒内組織の微細化を図る技術が示されている。具体的には、TiN、MnS、Tiオキサイド等をフェライト変態核として利用することにより、結晶粒内組織の微細化を達成し、HAZの低温靱性の改善を図っている。また、特許文献6では、固溶Bを活用し粒界フェライトの割合を抑えることでHAZ靱性の改善を図っている。特許文献7では、Bの化合物を用いて、粒内のベイナイト組織を細粒化することで再現HAZ組織の改善を図っている。
特公昭55-026164号公報 特許第2950076号 特公平07-068577号公報 特公平05-017300号公報 特許3733898号 特開2005-336602号公報 特許第4332064号
しかしながら、上記の析出物を利用してHAZを微細化する諸技術を適用しても、大入熱溶接を施す場合には、HAZ組織の粗大化は不可避であり、例えば-40℃を下回る環境下では低温靭性の劣化が生じる。近年、船舶やタンク等においては、従来よりも低温の環境での運用が検討されており、上記の特許各文献に記載の技術が対象としている鋼材よりも飛躍的に溶接熱影響部の低温靭性を向上させた鋼材が必要とされるようになっている。そこで、本発明は、上記実情を鑑み、特に大入熱HAZの低温靱性が向上された鋼板を提供することを目的とするものである。
発明者らは、上記課題を解決するために、大入熱HAZの低温靱性を向上するための手法について鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに到った。
まず、発明者らは、大入熱溶接により生成する低靭性組織である粗大なフェライトサイドプレートに着目した。大入熱溶接を施したとき、オーステナイト粒が粗大に成長すると、そこから生成する組織も粗大となる。粗大なフェライトサイドプレート(以下、FSPと示す)は、上記のような粗大なオーステナイト粒界から生成した粗大な粒界フェライトを起点として、フェライトが粒内に伸長して形成される組織である。このFSP組織の粗さが低靭性の主要因である。そこで、発明者らは、粗大な粒界フェライトを微細化することにより、粗大なFSPが抑制されて、大入熱HAZの低温靭性が向上すると考えた。
さらに、発明者らが鋭意検討した結果、次の(1)式で定義されるSBが所定の条件を満足し、次の(2)式で得られる温度がAr点(変態開始温度)よりも高い温度となり、さらに次の(3)式の条件を満足する、成分組成に設計することによって、粒界に析出したBNから粒界フェライトが核生成し、粒界フェライトの微細化が達成できることを見出した。この粒界フェライトの微細化により、従来よりも優れた大入熱HAZの低温靱性を得ることができる。
SB=[B]-0.77×[N]+0.22×[Ti] …(1)
T(℃)=12000/(4.63―log([B]×([N]-[Ti]/3.42)))-273 …(2)
0.30≦[Ni]+[Cu]≦3.0 …(3)
ただし、[B]、[N]、[Ti]、[Ni]および[Cu]は、各元素の含有量(質量%)である。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は以下の通りである。
1.質量%で、
C:0.03~0.15%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:2.00~4.00%、
P:0.020%以下、
S:0.0005~0.0100%、
Al:0.005~0.100%、
Ti:0.004~0.030%、
B:0.0020~0.0050%、
N:0.0035~0.0100%、
Cu:0.01~1.50%および
Ni:0.01~1.50%
を、次式(1)で示されるSBが-0.0010以上0.0002以下、次式(2)で示される温度TがAr点超となる範囲および次式(3)を満足する範囲にて含有し、残部はFeおよび不可避不純物である成分組成を有する鋼板。
SB=[B]-0.77×[N]+0.22×[Ti] …(1)
T(℃)=12000/(4.63―log([B]×([N]-[Ti]/3.42)))-273 …(2)
0.30≦[Ni]+[Cu]≦3.0 …(3)
但し、前記式(1)、(2)および(3)における、[B]、[N]、[Ti]、[Ni]および[Cu]は各成分の含有量(質量%)を表す。
ここで、前記Ar点は、例えば、
Ar(℃)=910-273×C-74×Mn-57×Ni-16×Cr-9×Mo-5×Cuで求めることが可能である。なお、式における各元素は、該元素の含有量(質量%)を示す。
2.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Nb:0.005~0.040%、
Ca:0.0005~0.0030%、
Mg:0.0002~0.0050%、
REM:0.0010~0.1000%
V :0.005~0.100%、
Cr:0.01~0.50%および
Mo:0.01~0.50%
の1種または2種以上を含有する前記1に記載の鋼板。
3.前記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、900℃以下の温度まで7℃/s以下の冷却速度で冷却後、850℃以下のフェライト-オーステナイトの二相温度域における累積圧下率が60%以上および、仕上温度が720℃以上である、熱間圧延を施した後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で600℃以下300℃以上の温度域まで冷却する鋼板の製造方法。
本発明により、大入熱溶接を施しても溶接熱影響部の低温靱性に優れる鋼材を得ることができる。したがって、本発明の鋼材は、エレクトロガス溶接、サブマージアーク溶接、エレクトロスラグ溶接などの大入熱により施工される液化ガスの低温貯蔵タンクや低温環境で運用される船舶等の構造物に好適に用いられる。
入熱10kJ/mm相当のサブマージアーク溶接の溶融線(FL)近傍の熱履歴を付与した再現HAZ部の析出物の観察画像を示す透過電子顕微鏡写真である。
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。まず、本発明において化学成分を限定した意義について説明する。なお、本発明において、化学成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味している。
C:0.03~0.15%
Cは、必要な強度を得るために0.03%以上の含有を必須とする。しかしながら、0.15%を超えて含有すると、島状マルテンサイトが増加して溶接熱影響部の靱性が低下するため、上限を0.15%とする。下限は、好ましくは0.045%である。また、0.10%未満であることが好ましい。
Si:0.01~0.50%
Siは、母材の強度確保および脱酸などに必要な成分であり、0.01%以上で添加する。一方、0.50%を超えると、HAZが硬化してHAZの靭性が低下するため、上限を0.50%とする。さらに、好ましい下限は、0.10%であり、好ましい上限は0.30%である。
Mn:2.00~4.00%
Mnは、母材の強度を確保するために、2.00%以上必要であり、4.00%を超えると溶接性が劣化するだけでなく鋼材コストも上昇する。したがって、Mnの範囲は、2.00~4.00%とする。下限は、好ましくは2.20%である。上限は、好ましくは3.60%である。
P:0.020%以下
Pは、不可避的に混入する不純物であり、含有量が0.020%を超えると、母材および溶接部の靱性を低下させるため、上限を0.020%とする。なお、良好な靱性を得るためには、0.010%以下が好ましく、0.007%以下であることがさらに好ましい。ちなみに、下限は限定する必要はないが、極低P化処理を施すことでコストが増加してしまうため、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.0005~0.0100%
Sは、フェライト核生成に必要な複合介在物の核に所要のMnS、さらにCaを添加する場合はCaSを生成するために0.0005%以上必要である。一方、0.0100%を超えると、母材の靱性を劣化させる。上限は好ましくは0.0090%である。下限は、好ましくは0.0010%である。
Al:0.005~0.100%
Alは、鋼の脱酸上0.005%以上、好ましくは0.010%以上が必要である。一方、0.100%を超えて含有すると、母材の靱性を低下させると共に溶接金属の靱性を劣化させる。上限は好ましくは0.008%である。下限は、好ましくは0.002%である。
Ti:0.004~0.030%
Tiは、鋼の凝固時にTiNとなって析出し、溶接熱影響部でのオーステナイトの粗粒化抑制や、フェライト変態核となって高靱性化に寄与する。Tiは、0.004%に満たないとその効果は少なく、0.030%を超えるとTiN粒子の粗大化によって期待する効果が得られなくなる。したがって、Tiの含有量は、0.004~0.030%の範囲とする。下限は好ましくは0.008%である。上限は、好ましくは0.020%である。
B:0.0020~0.0050%
Bは、粒界フェライトを微細化させる上で重要な元素であり、フェライト変態温度以上で析出させるために少なくとも0.0020%添加する。しかし、多量に添加すると母材靱性を劣化させるため、上限を0.0050%とする。下限は好ましくは0.0025%である。上限は、好ましくは0.040%である。
N:0.0035~0.0100%
Nは、Tiと結合してTiNを形成し、かつBと結合してBNを形成するため0.0035%以上で添加する。Nの含有量が増えると、固溶Nが増大しHAZ靱性の低下を招くことから、0.0100%を上限とした。下限は好ましくは0.040%である。上限は、好ましくは0.090%である。
Cu:0.01~1.50%
Cuは、鋼の焼き入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮されるが、過度の含有は靱性や溶接性をかえって劣化させる。そのため、Cu含有量は0.01~1.50%とする。下限は好ましくは0.10%である。上限は、好ましくは1.00%である。
Ni:0.01~1.50%
Niは、鋼の焼き入れ性を高める元素であり、圧延後の強度向上に加え、靱性、高温強度、耐候性などの機能向上に寄与する。これらの効果は、0.01%以上の含有によって発揮される。一方で、過度の含有は靱性や溶接性をかえって劣化させることに加え、合金のコスト増加を招く。そのため、Ni含有量は0.01~1.50%とする。下限は好ましくは0.10%である。上限は、好ましくは1.00%である。
本発明の鋼板は、以上の各成分を含み、残部はFeおよび不可避不純物である成分組成を有する。この成分組成において、さらに、次式(1)で示されるSBが-0.0010以上0.0002以下および、次式(2)で示される温度TがAr点超であり、さらに次式(3)を満足することが肝要である。
SB=[B]-0.77×[N]+0.22×[Ti] …(1)
T(℃)=12000/(4.63―log([B]×([N]-[Ti]/3.42)))-273 …(2)
0.30≦[Ni]+[Cu]≦3.0 …(3)
但し、前記式(1)、(2)および(3)における、[B]、[N]、[Ti]、[Ni]および[Cu]は各成分の含有量(質量%)を表す。
本発明において、B、NおよびTiは、上記した式(1)および式(2)を満足するように含有させることにより、大入熱溶接時に鋼板が受ける熱サイクル(以下、溶接熱サイクルともいう)においてもTiNが固溶することなく残存し、このTiNを核としてBNが早期に析出するようになる。ここに、図1に、上記した成分組成の鋼板に入熱10kJ/mm相当の溶接再現熱サイクルを付与したサンプルの観察画像を示すように、溶接熱サイクルの冷却過程の所期段階において、TiNの周囲にBNが析出していることがわかる。すなわち、BNはより高温域から析出しやすくなる。かようにBNがTiNから析出すると、TiNとBNの複合析出物のサイズは、TiN単独のサイズよりも大きくなる。析出物のサイズが大きくなることによって、フェライトが核生成しやすくなる。なお、核となるTiNのサイズは15nm以上200nm以下が通常であり、BNがTiNに析出するとBN被覆析出物のサイズは50nm以上600nm以下が通常である。フェライトが核生成しやすいということは、粒界に多くのフェライト核が生成するということであり、粒界に多くのフェライトができる。これらのフェライトは違うBNから核生成していることから方位が異なり、フェライトの結晶方位はランダム化する。この結晶方位のランダム化により、隣接するフェライト同士が合体しなくなる。その結果、粒界フェライトが微細化し、そこから生成するフェライトサイドプレートも微細化する。従って、式(1)および式(2)を満足することでHAZ靭性が向上することになる。
すなわち、前記SBの値が0.0002を超えると、固溶Bが増加し該固溶Bによって焼き入れ性が上がり、島状マルテンサイトが形成される結果、低温での靱性を十分に確保できなくなる。また、前記SBの値が-0.0010を下回ると、BNの析出が不十分になって、粒界フェライトを微細化できない。
さらに、前記式(2)は、図1に示したようにTiNの周囲にBNが析出する際の析出温度Tを示しており、このTがAr点を下回ると、BNを核としたフェライト生成が難しくなる結果、粒界フェライトの微細化が実現しない。
上記した成分組成を有する鋼板では、例えば、入熱量が5kJ/mm以上の大入熱溶接を行った際の、ボンド近傍の熱影響部組織は、旧γ粒界に生成する粒界フェライトの密度が20個/mm以上となる。ここで、旧γ粒界の粒界フェライト生成密度は、溶接を模擬した熱サイクルシミュレーションの冷却途中でフェライト変態開始直後から急冷処理を行い、EBSD(電子線後方回折法)を用いて計測することができる。本発明において、旧γ粒界の隣接する3重点から3重点までの粒界に沿った曲線長さを旧γ粒界長さとして、その旧γ粒界上に生成した隣り合うフェライト粒の結晶方位差が15度以上となるフェライト粒の個数を旧γ粒界上のフェライト数として、(旧γ粒界上のフェライト数)/(旧γ粒界長さ)により粒界フェライトの密度を定義する。
本発明では、大入熱溶接を施した時のボンド近傍の熱影響部組織の、旧γ粒界上に生成する粒界フェライトの密度を20個/mm以上とすることにより、粗大なフェライトサイドプレートの抑制が可能となり、HAZにおいて優れた低温靱性を実現する。ここで、ボンド近傍の熱影響部組織とは、溶接金属の母鋼板の境界からおよそ0.5mm母材である鋼板側に入った位置までの間の領域をいう。旧γ粒界に生成する粒界フェライトの密度は、上記した式(1)および(2)に従ってN、BおよびTiの添加量を規定範囲内に制御することにより、20個/mm以上とすることができ、粗大なフェライトサイドプレートの抑制が可能となり、熱影響部において優れた靱性を得ることができる。
さらに、本発明において、NiおよびCuは、上記した式(3)を満足する範囲にて含有させることにより、例えば、入熱量が5kJ/mm以上の大入熱溶接を行った際の、ボンド近傍の熱影響部組織における、ベイナイトの体積分率を50%超え80%以下とすることができる。すなわち、(Ni+Cu)の値が3.0を超えると、焼き入れ性が過大となり、熱影響部組織におけるベイナイトの体積分率が80%を超え、十分なHAZ靭性を確保できないことになる。一方、(Ni+Cu)の値が0.30を下回ると、焼き入れ性が不十分となり、熱影響部組織におけるベイナイト分率が50%を下回り、HAZの強度を確保できないことになる。なお、本発明の鋼板に大入熱溶接を施した際の熱影響部の組織は、体積率で50%超え80%以下のベイナイト相を主相とし、残部がフェライト相と、あるいはさらにパーライトとからなる組織となる。
本発明の他の実施形態においては、さらに特性を向上させるため、上記成分組成に加えて、Nb、Ca、Mg、REM、V、CrおよびMoからなる群より選択される1種または2種以上を任意に含有することが可能である。
Nb:0.005~0.040%
Nbは、母材の強度、靭性および継手の強度を確保するのに有効な元素である。その効果は0.005%以上の含有により発揮される。一方、0.040%を超えて含有すると、溶接熱影響部に島状マルテンサイトを形成することにより靭性が劣化する。そのため、Nbを含有する場合、Nb含有量を0.005~0.040%とすることが好ましい。
Ca:0.0005~0.0030%
Caは、Sの固定による靭性向上に有用な元素であるが、含有量が0.0030%を超えるとその効果は飽和するので、Caは0.0030%以下で含有させるものとする。一方、含有量が0.0005%以下であると、Sの固定が不十分となる。そのため、Caの含有量は、0.0005%以上0.0030%以下とすることが好ましい。
Mg:0.0002~0.0050%
REM:0.0010~0.1000%
MgおよびREMは、いずれも溶鋼中で強い脱酸力を有し、微細酸化物形成を補助する働きがあることから、必要に応じて添加する。それぞれの脱酸効果を示す添加量は、Mg:0.0002%以上、REM:0.0010%以上であるが、多量に添加すると、粗大な介在物ができて母材特性を損ねることから、それぞれの添加の上限をMg:0.0050%およびREM:0.1000%とすることが好ましい。
V :0.005~0.100%
Cr:0.01~0.50%
Mo:0.01~0.50%
Mo、CrおよびVはいずれも、鋼の焼き入れ性を高める元素であるが、Cu、Niと比較して焼き入れ性が高くなりやすいため、容易にベイナイトの体積分率が80%を超えてしまいHAZの靭性を劣化させてしまう、おそれがある。そのため、MoおよびCrの添加量は0.50%以下、そしてVの添加量は0.100%以下とすることが好ましい。一方、MoおよびCrの添加量が0.01%未満、そしてVの添加量が0.005%未満では、十分な焼き入れ性向上効果が得られないため、MoおよびCrの添加量が0.01%以上、そしてVの添加量が0.005%以上とすることが好ましい。
本発明の製造方法は、以上の成分組成を有する鋼素材を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、900℃以下の温度まで7℃/s以下の冷却速度で冷却後、850℃以下のフェライト-オーステナイトの二相温度域における累積圧下率が60%以上および、仕上温度が720℃以上である、熱間圧延を施した後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で600℃以下300℃以上の温度域まで冷却する。次に、本発明における製造条件の限定理由について説明する。
[鋼素材加熱温度および冷却速度]
まず、鋼素材、例えばスラブの加熱温度は、1050℃以上1200℃以下であることが必要である。この理由は、1050℃未満の加熱では、凝固中に生成した靱性に悪影響を及ぼす粗大な介在物が溶けずに残る可能性があるためである。一方、高温で加熱すると、後述する冷却速度を制御して造りこんだ析出物を再溶解させてしまう可能性がある。これを踏まえると、相変態を完了させる意味での加熱温度としては1200℃以下で十分である。なお、そのときに生じると考えられる結晶粒の粗大化も、上記したTiNのピンニング効果により、あらかじめ防ぐことができる。以上より、加熱温度を1050℃以上1200℃以下に限定した。
次いで、900℃以下の温度まで7℃/s以下の冷却速度で冷却する必要がある。この理由は、7℃/sを超える冷却速度では、BがBNとして析出せずに、粒界に固溶Bとして残存することで、粒界フェライトの生成が抑制され、母材の低温靭性を十分に確保することが困難となるためである。
[熱間圧延条件]
850℃以下のフェライト+オーステナイトの2相温度域において累積圧下率60%以上の熱間圧延を行う必要がある。その理由として、2相温度域における圧下量の増加は、圧延中のフェライトの加工による転位強化に伴う強度向上と加工によるサブグレインの形成を通じた細粒化の効果による靱性の向上の効果があるからである。さらにフェライト+オーステナイトの2相温度域での累積圧下率が60%となることで、フェライトの圧延集合組織が発達し、低温靱性の向上に寄与する。このため、850℃以下のフェライト+オーステナイトの2相温度域における累積圧下率を60%以上に限定した。
さらに、熱間圧延における仕上温度を、720℃以上とする。すなわち、720℃以上で熱間圧延を完了させるのは、720℃未満で仕上圧延を行うと、相変態により生成したフェライトに歪を与えることになり、靱性が低下してしまうためである。
さらに、上記の熱間圧延を施した後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で600℃以下300℃以上の温度域まで冷却することにより、母材の強度を高める。
[熱間圧延後冷却条件]
また、前記鋼素材は720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上600℃以下まで冷却する。すなわち、700℃以上から冷却する理由として、700℃未満より冷却を開始すると焼き入れ性の観点から不利となり、所要の強度が得られない。また、冷却速度が5℃/s未満では均一なミクロ組織を有する鋼を得ることが難しくなる。また、300℃以上600℃以下の温度域まで冷却する。なぜなら、600℃を超える温度での冷却停止では、焼き入れ性の観点から、十分な強度確保が困難となるためである。また、300℃未満の温度での冷却停止は、鋼材特性に大きな変化を与えないことから、操業上の負荷のみが大きくなるためである。上記の理由により、鋼片は700℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上600℃以下まで冷却する。
上記した鋼素材はスラブを用いることができるが、これら鋼素材を鋳造によって製造する場合、その鋳造条件に関して、以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、スラブ鋳造時の冷却速度を、0.3m/min以上かつ1.0m/minにする。鋳造速度が0.3m/min未満になると、母材(鋼板)のTiNのサイズが大きくなってしまう。TiNサイズが大きくなると、母材(鋼板)のTiN密度が低下してBN複合析出物の量が減少する。その結果、十分にフェライトが微細化できず、HAZ靭性が劣化する、おそれがある。なお、核となるTiNのサイズは15nm以上200nm以下である。一方、鋳造速度が1.0m/minを超えると、TiNの密度は増加するが、TiNのサイズが小さくなってしまい、溶接時に固溶してしまう。その結果、オーステナイト粒径が粗大化して、HAZ靭性が劣化する、おそれがある。
かくして製造される鋼板は、上記した成分組成に加えて、次の組織を有することになる。すなわち、フェライト-パーライト組織である。また、上記した用途の鋼板としては、低温靭性が高いことに加えて、とくに降伏応力が200MPa以上であることが好ましい。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
表1に示す成分組成に調整した鋼スラブ(鋼素材)に対して、表2に示す種々の条件に従って、スラブ加熱後に冷却し、次いで熱間圧延そして冷却処理を施して板厚20mmの厚鋼板とした。
かくして得られた各厚鋼板からJIS Z2241に準拠した引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠した引張試験を行って引張強さを測定した。また、各厚鋼板からJIS Z2242に準拠した試験片を採取し、各試験片にV開先を加工し、JIS Z2242に準拠したシャルピー衝撃試験を行って-70℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーを測定した。さらに、得られた各厚鋼板を用いて、サブマージアーク溶接(溶接入熱量:102kJ/cm)により、溶接継手を作製した。かくして得られた溶接継手の熱影響部からJIS Z2241に準拠した引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠した引張試験を行って継手強度を測定した。また、溶接継手から切欠き位置をボンド部とするJIS4号衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、-70℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーを測定した。
以上の各測定結果を、表3に示す。
また、粒界フェライトの密度およびボンド近傍熱影響部ベイナイト分率についても調査した。すなわち、粒界フェライトの密度は上述した手法に従って計測した。また、ボンド近傍熱影響部のベイナイト分率は、上記の溶接継手の熱影響部を切り出して作製した、金属組織観察用のサンプルを用い、同サンプルを鏡面まで研磨し、ナイタール(3%硝酸-エタノール溶液)で腐食して組織を現出し、1000倍のSEM(走査電子顕微鏡)により組織を5視野観察して、ベイナイト分率を測定した。
Figure 0007444090000001
Figure 0007444090000002
Figure 0007444090000003

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.03~0.15%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:2.00~4.00%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0005~0.0100%、
    Al:0.005~0.100%、
    Ti:0.004~0.030%、
    B:0.0020~0.0050%、
    N:0.0035~0.0100%、
    Cu:0.01~1.50%、
    Ni:0.01~1.50%および
    Ca:0.0005~0.0030%
    を、次式(1)で示されるSBが-0.0010以上0.0002以下、次式(2)で示される温度TがAr点超となる範囲および次式(3)を満足する範囲にて含有し、残部はFeおよび不可避不純物である成分組成を有する鋼板であって、該鋼板から、溶接入熱量:102kJ/cmのサブマージアーク溶接により作製した溶接継手における、継手強度が540MPa以上および-70℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが86J以上である、鋼板。
    SB=[B]-0.77×[N]+0.22×[Ti] …(1)
    T(℃)=12000/(4.63―log([B]×([N]-[Ti]/3.42)))-273 …(2)
    0.30≦[Ni]+[Cu]≦3.0 …(3)
    但し、前記式(1)、(2)および(3)における、[B]、[N]、[Ti]、[Ni]および[Cu]は各成分の含有量(質量%)を表す。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Nb:0.005~0.040%、
    Mg:0.0002~0.0050%、
    REM:0.0010~0.1000%
    V :0.005~0.100%、
    Cr:0.01~0.50%および
    Mo:0.01~0.50%
    の1種または2種以上を含有する請求項1に記載の鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の成分組成を有する鋼素材を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、900℃以下の温度まで7℃/s以下の冷却速度で冷却後、850℃以下のフェライト-オーステナイトの二相温度域における累積圧下率が60%以上および、仕上温度が720℃以上である、熱間圧延を施した後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で600℃以下300℃以上の温度域まで冷却する、溶接入熱量:102kJ/cmのサブマージアーク溶接により作製した溶接継手における、継手強度が540MPa以上および-70℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが86J以上である、鋼板の製造方法。

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