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JP4926026B2 - 伸縮シート - Google Patents

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JP4926026B2 JP2007323819A JP2007323819A JP4926026B2 JP 4926026 B2 JP4926026 B2 JP 4926026B2 JP 2007323819 A JP2007323819 A JP 2007323819A JP 2007323819 A JP2007323819 A JP 2007323819A JP 4926026 B2 JP4926026 B2 JP 4926026B2
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Description

本発明は、弾性部材とシートとを複合化してなる伸縮シートに関する。本発明の伸縮シートは、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの各種吸収性物品を構成する部材として特に好適に用いられる。
使い捨ておむつなどの吸収性物品を構成する部材として、実質的に非伸縮性のシート部材に複数条の伸縮性弾性部材を伸長状態で取り付けた伸縮性複合シートが知られている。例えば特許文献1には、同文献の図1に記載されているように第1の不織布層122と、第2の不織布層126と、両不織布層間に位置するエラストマー層124とから構成されている伸縮シートが開示されている。エラストマー層124はスクリム、穿孔フィルム、エラストマー織布、不織布から構成されている。同文献の図1には、エラストマー層124が、互いに直交する複数の第1のストランド125と、複数の第2のストランド127とからなるエラストマースクリム130から構成されていることが記載されている。この伸縮シートは、伸縮性は有するものの、凹凸形状を有するものではない。
特許文献2には、長手方向へ延びる実質的に非伸縮性のシート部材と、前記長手方向へ延びていて該長手方向と交差する幅方向へ所与寸法離間して並ぶ複数条の伸縮性弾性部材とから構成され、前記弾性部材が前記シート部材に前記長手方向へ伸長状態で取り付けられた伸縮性複合シートが記載されている。この複合シートは、前記シート部材と前記弾性部材とが前記長手方向へ交互に起伏を繰り返すことにより形成された多数の襞を有している。この襞は、前記幅方向へ実質的に連続して延び、かつ、前記長手方向へ略等間隔で並んでいる。同文献の記載によれば、この複合シートは、襞が幅方向へ連続して延びるとともに、襞が長手方向へ略等間隔で規則正しく並んでいるので、複合シートの幅方向全域を略均一の張力で長手方向へ略同一長さまで伸長させることができるとされている。
特許文献2に記載の伸縮性複合シートは、その全体が起伏を繰り返す波形形状になっているので、この複合シートを例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、該表面シートと吸収体との接触が部分的なものになってしまう。その結果、表面シートを透過した液が吸収体へ円滑に移行しがたく、液漏れを起こす可能性がある。
特許文献3には、第1方向とこれに直交する第2方向を有し、前記第1方向へ長さ寸法が大きく前記第2方向へ長さ寸法が小さい、体液を吸収可能な第1吸収パネルを備えた体液吸収構造体が記載されている。第1吸収パネルは、第1方向へ交互に配列し、かつ第2方向へ延在する複数の凹部と凸部を備える波状に折曲されている。凸部の各々の頂部における第1吸収パネルの折曲は、第1方向へ交互に配列し、かつ第2方向へ延在する複数の易折性域を介してなされている。易折性域の各々の間には、互いに隣接する吸収パネルユニットの各々が画成されている。吸収パネルユニットは、それらの対向表面で部分的に接合されている。
特許文献3に記載の体液吸収構造体は、特許文献2に記載の伸縮性複合シートと同様に波形形状を有するものではあるが、伸縮性を有するものではない。したがって、この吸収構造体は、伸縮性が必要とされる部位や、伸縮性を有することが有利とされる部位に用いることはできない。
特表2003−524534号公報 特開2002−371456号公報 特開2005−052225号公報
本発明の目的は、前述した従来技術よりも更に性能が向上した伸縮シートを提供することにある。
本発明は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性部材が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、伸長可能なシートに接合されてなる伸縮シートであって、
前記伸縮シートは、前記弾性部材を含み、かつ隣り合う前記弾性部材間の距離が相対的に小さくなっている第1の領域と、前記弾性部材を含み、かつ隣り合う前記弾性部材間の距離が相対的に大きくなっているか、又は前記弾性部材が配されていない第2の領域とを有し、
第1の領域及び第2の領域は、それぞれ前記弾性部材の延びる方向と同方向に延びるとともに、前記弾性部材の延びる方向と直交する方向に沿って交互に配置されており、
第1の領域においては、前記伸縮シートの表面は実質的に平坦であり、
第2の領域においては、前記弾性部材の延びる方向と直交する方向にそれぞれ延びる形状を有する凸部及び凹部が、前記弾性部材の延びる方向に沿って交互に形成されている伸縮シートを提供するものである。
また本発明は、伸縮シートを表面シートとして備えた吸収性物品を提供するものである。
本発明の伸縮シートは、伸縮性を有する一つのシート内に、平坦な部分と凹凸形状を有する部分とを併せ持つという特徴を有する。このような構造となっていることで、凹凸構造の形状保持性が良好となる。このような特徴を有する伸縮シートを、特に吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、伸縮シートの平坦な部分が吸収体と面で接触するので、排泄された液が吸収体へ円滑に移行する。凹凸形状を有する部分は、着用者の肌との接触面積が低減するのでさらっとした感覚を呈する。また凹凸形状を有する部分は、嵩高でありクッション感を発現する。しかも、凹凸形状を有する部分は、経血や軟便などの高粘性液の取り込み及び一時的な保持に有効である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の伸縮シートの一実施形態の斜視図が示されている。図2及び図3は、図1におけるII−II線断面図及びIII−III線断面図である。本実施形態の伸縮シート10は、第1のシート11及び第2のシート12の計2枚のシートと、両シート間に挟持された多数の弾性部材13とから構成されている。各弾性部材13は、第1及び第2のシート11,12と接合している。第1のシート11と第2のシート12は、同種のものでもよく、或いは異種のものでもよい。ここで言う同種のシートとは、シートの製造プロセス、シートの構成材料の種類、シートの厚みや坪量等がすべて同じであるシートどうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には異種のシートであるという。
伸縮シート10は、主として2つの領域、すなわち第1の領域101と第2の領域102とを有している。第1の領域101は、弾性部材13を含み、かつ隣り合う弾性部材間の距離が相対的に小さくなっている領域である。第2の領域102は、(i)弾性部材13を含み、かつ隣り合う弾性部材間の距離が相対的に大きくなっているか、又は(ii)弾性部材13が配されていない領域である(本実施形態においては図1に示すように、第2の領域102には弾性部材13が配されていない。)。
第1の領域101及び第2の領域102は、それぞれ弾性部材13の延びる方向と同方向に延びている帯状の領域である。また、第1の領域101及び第2の領域102は、弾性部材13の延びる方向と直交する方向に沿って交互に配置されている。
図2に示すように、第1の領域101においては、伸縮シート10の2つの表面101a,101bはいずれも実質的に平坦になっている。なお図2においては、シート11,12は省略されて、両シートが一体化した状態が表されている。
一方、図1及び図3に示すように、第2の領域102においては、弾性部材13の延びる方向と直交する方向にそれぞれ延びる形状を有する凸部111及び凹部112が、弾性部材13の延びる方向に沿って交互に形成されている。第2の領域102の一方の表面102aに形成された凹凸形状は、第2の領域102の他方の表面102bに形成された凹凸形状と相補形状をなしている。その結果、第2の領域102においては、弾性部材13の延びる方向に沿って規則的に起伏を繰り返す波形の凹凸形状が形成される。なお図3においても、図2と同様に、シート11,12は省略されて、両シートが一体化した状態が表されている。凹凸形状は、クッション性の観点から、凸部111の頂部から凹部112の底部までの高さT3(図3参照)が0.5mm以上であることが好ましい。
図2及び図3から明らかなように、第1の領域101の厚みT1と、第2の領域102の見掛け厚みT2とを比較すると、T1<T2となっている。したがって、第2の領域102は、その見掛け厚みの大きさ及び凹凸形状に起因して、嵩高でクッション性が高いものとなる。T1及びT2それ自体の厚みは、T1<T2であることを条件として、T1が0.2〜4.0mm、特に1.0〜1.5mmであることが好ましく、T2が1.5〜10.0mm、特に2.0〜5.0mmであることが好ましい。第1の領域101及び第2の領域102の厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて各領域を平板間に挟み、各領域の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。また液の移行性やクッション性の観点から、T2とT1の比(T2/T1)の値は1.2以上あることが、好ましい。
実質的に平坦な第1の領域101及び波形の凹凸形状をなす第2の領域102を備えた本実施形態の伸縮シート10を、例えば吸収性物品の表面シートとして用いると、以下の有利な効果(イ)〜(ハ)が奏される。
(イ)実質的に平坦な第1の領域101は、その平坦さゆえに、その全域において吸収体と面でもって接触することができる。したがって、排泄された液が表面シートを透過して、吸収体へ円滑に移行することができる。このことは、吸収性物品からの液漏れ防止に効果的である。
(ロ)波形の凹凸形状をなす第2の領域102は、着用者の肌との接触面積が小さくなる。それによって第2の領域102はさらっとした感覚を呈する。しかも、凹凸形状による見掛け厚みT2の増加は、第2の領域102にクッション感を付与する。さらに、経血や軟便などの高粘性液が排泄された場合には、該高粘性液が凸部111から凹部112に向けて流動し、凹部112内に一時的にトラップされる。これによって、高粘性液の吸収性物品からの漏れ出しが効果的に防止される。
(ハ)波形の凹凸形状をなす第2の領域102は、弾性部材13を有する第1の領域101の間に位置しているので、該弾性部材13による安定化効果によって該凹凸形状の形態保持性が良好になる。
第1の領域101及び第2の領域102の幅は、伸縮シート10の具体的な用途に応じ適切に設定することができる。伸縮シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、第1の領域101の幅W1を5〜50mm、特に10〜20mmとすることが好ましい。一方、第2の領域102の幅W2を5〜50mm、特に10〜20mmとすることが好ましい。第1の領域101及び第2の領域102は伸縮シート10中に複数存在するところ、各第1の領域の幅W1は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。第2の領域102についても同様であり、各第2の領域102の幅W2は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
第1の領域101に存在している弾性部材13間の距離は、伸縮シート10の伸縮特性に影響を及ぼす。具体的には、弾性部材13間の距離が小さいほど、伸縮力が大きくなる。この観点から、隣り合う弾性部材13間の距離は、0.5〜1.5mm、特に0.5〜1.0mmであることが好ましい。ここで言う隣り合う弾性部材13間の距離とは、弾性部材13の中心間の長さのことである。一方、第2の領域102に弾性部材13が存在している場合には、該領域102における弾性部材13間の距離は、該領域102に凹凸形状が形成されるような距離とする。この距離は、弾性部材の伸縮特性にもよるが、一般に5.0〜50mm、特に5.0〜20.0mmであることが好ましい。
伸縮シート10を構成する各シート11,12はいずれも伸長可能なものである。各シート11,12は、弾性部材13の延びる方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(イ)シート11,12の構成材料自体が伸長する場合と、(ロ)構成材料自体は伸長しなくても、例えば不織布のように、交点において結合していた構成繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、シート全体として伸長する場合とを包含する。
各シート11,12は、弾性部材13と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性部材13と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性部材13と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。シート11,12を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによる噛み込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、弾性部材13をシート11,12に融着させるときの該シート11,12の搬送性が良好になる点から、シート11,12はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
各シート11,12は伸長可能であり、かつ実質的に非弾性である。また、本発明において弾性とは、伸ばすことができ、かつ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質であるところ、各シート11,12は、かかる性質を有していない。各シート11,12が弾性を有する場合には、その構成繊維として弾性樹脂を含む必要があり、弾性樹脂を含むシートは、その風合いを低下させる一因となるべたつき感を呈する傾向にある。したがって本実施形態においては、各シート11,12を実質的に非弾性となして、その風合いの低下を防止している。
第1の領域101においては、各弾性部材13は、伸縮シート10の全長にわたって実質的に連続している。場合によっては、伸縮シート10の長手方向(この方向は弾性部材13の延びる方向と一般に一致する)において、弾性部材13が存在していない領域が存在していてもよい。弾性部材13は弾性樹脂を含んでいる。第1の領域101においては、各弾性部材13は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。但し、伸縮シート10の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性部材13が交差することは許容される。各弾性部材13は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、あるいは蛇行しながら延びていてもよい。弾性部材が互いに交差しないということは、交点がほとんど無いということになる。交点があると、交点と交点の間に複数の繊維があるということになるが、通常、工業的には、交点間に存在する繊維の長さが一致するということは稀である。交点間に存在する繊維の長さが異なる状態のままで、伸長を行うと、交点間に含まれる長さの短い方の繊維だけに、応力がかかることになり、たくさんの繊維を配置しても、伸長に関与しない繊維が多く生じることになる。同じ重量の繊維で比較した場合、繊維の交点の多いほうが収縮力は小さくなる。よって、コストの無駄となる。縦方向だけの伸縮を考えた場合、ネットのように横方向に繊維がある場合は、横方向の繊維が、無駄なだけでなく、上記交点が生じ、同様に縦方向の繊維にも無駄な部分が生じてしまう。弾性部材13の延びる方向は、第1及び第2のシート11,12の製造時の流れ方向と一致していてもよく、あるいはシート11,12の製造時の流れ方向と直交していてもよい。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性部材13の延びる方向は、第1及び第2のシート11,12の製造時の流れ方向と一致する。
第1の領域101においては、弾性部材13は、実質的に非伸長状態でシート11,12に接合されている。弾性部材13が伸長していない状態で不織布11、12に接合されるため、本実施形態の伸縮シート10は、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、伸縮性が低下しにくいという利点がある。さらに、例えば弾性部材13を2倍に伸長させてシート11,12と貼り合わせた場合に、初期の1.3倍まで仮に戻ったとすると、この状態からは1.54倍までしか伸ばすことができないが、非伸長状態で貼り合わせを行った場合には、伸縮シートを伸長させたときの初期原点が異なるため、シート11,12の伸長可能な長さまで又は弾性部材13の最大伸度まで伸ばすことが可能となるという利点がある。
弾性部材13は、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。あるいは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。さらに、弾性部材13は、平らな帯状の形状(平ゴム状)でもよい。これらのうち、後述する好適な製造方法に鑑みると、弾性部材13は、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたフィラメントであることが好ましい。
弾性部材13は、ノズルから吐出された溶融樹脂を紡糸線上で延伸して得られたフィラメントであることが好ましい。延伸することで、弾性部材13を構成する高分子が、該弾性部材13の長さ方向に分子配向するので、後述する50%伸長時の行きの強度に対する戻りの強度の比が高まり、ヒステリシスロスが小さくなる。また、延伸によって細い弾性フィラメントが得られる。この観点から、弾性部材13は、1.1〜400倍、特に4〜100倍に延伸されたフィラメントであることが好ましい。
特に、弾性部材13は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたフィラメントであることが好ましい。弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、弾性部材13を非伸長状態でシート11,12に接合させることが可能になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(イ)弾性部材13の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(ロ)弾性部材13の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性部材13は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維(フィラメント)を直接延伸することで得られる。
延伸により得られた弾性部材13は、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。この範囲は、伸縮シート10の風合いや、弾性部材13の生産性を考慮して決定されたものである。詳細には、弾性部材13の直径が大きすぎると、伸縮シート10に触れたときに、弾性部材13に起因する段差が知覚されやすくなってしまう。この段差は、伸縮シート10の風合いにマイナスに作用するものである。この観点からは、弾性部材13の直径は小さいほど、各シート11,12の風合いのみが知覚されやすくなるので好ましい。また、不織布の光透過性を低減させることにより、いわゆる体液の色の隠蔽性能を持たせる意味でも、弾性部材13は細い方が好ましい。さらに、後述する歯溝ロールによる延伸において、弾性部材13の直径を歯溝ロール間の歯と歯のクリアランス以下(好ましいクリアランスとしては歯の耐久性を高める点と噛み込み量による延伸倍率を高くする点でクリアランスが小さくなり、250μm以下、より好ましくは200μm以下である)にすることで、延伸時に弾性部材13がダメージ(亀裂や切断)を受けにくくなるので、細い方が好ましい。弾性部材の直径と前記クリアランスとの比は0.2〜1、特に0.2〜0.5が好ましい。尤も、弾性部材13が細径になる程その製造が容易でなくなる。これらを考慮すると、弾性部材13の直径は前記の範囲内であることが好ましい。
弾性部材13は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形や扁平形状の断面のこともある。例えば後述する製造方法に従い伸縮シート10を製造する場合には、弾性部材13の断面は扁平形状になりやすい傾向にある。この場合、伸縮シート10中において、弾性部材13は、楕円形の長軸が伸縮シート10の平面方向と同方向になり、且つ短軸が伸縮シート10の厚さ方向と同方向になるように配置されることが好ましい。
弾性部材13の断面が扁平形状である場合、長軸/短軸の比率(平均偏平率)は1.0〜7.0、特に1.1〜3.0であることが、伸縮特性及び弾性部材13とシート11,12の構成繊維との接合強度、及び伸縮シート10の隠蔽性が増す点から好ましい。断面が扁平形状である弾性部材13は、その長軸方向が、伸縮シート10の平面方向とほぼ一致するように配されている。なお、弾性部材13の断面が扁平形状である場合、弾性部材13の直径とは、長軸径と短軸径を平均したものを意味する。扁平形状を有する弾性部材13における長軸とは、顕微鏡観察によって抽出された弾性部材13の外周における最も長い横断線の長さをいう。弾性部材13における短軸とは、前記のようにして決定した長軸に平行な二辺を有し、かつ前記の外周に外接する長方形を描いたときの短辺の長さをいう。これらを任意の弾性部材5点について測定し、扁平率の平均を平均扁平率とし、直径の値の平均を弾性部材の直径の値とする。
第1の領域101においては、弾性部材13は、その全長にわたって各シート11,12に接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、シート11,12のうち、弾性部材13と接触しているすべての部位が、該弾性部材13と接合していることを要せず、弾性部材13に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性部材13とシート11,12とが接合されていることを言う。弾性部材13が各シート11,12にその全長にわたって接合していることで、弾性ストランド13と各シート11,12との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮シート10を引き伸ばしても、弾性部材13が各シート11,12から剥離しづらくなる。弾性部材13が各シート11,12から剥離してしまうと、自然状態(弛緩状態)において、弾性部材13と各シート11,12との間に浮きが生じて、伸縮シート10全体としての一体感に欠けるものとなる。
弾性部材13と、第1及び第2のシート11,12との接合の様式としては、例えば融着、接着剤による接着などが挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性部材13は、各シート11,12に融着により接合される。この方法によれば、各シート11,12に熱は加えられず、溶融紡糸により得られた弾性部材13の固化前に、該弾性部材13をシート11,12に融着させるので、該弾性部材13の周囲に存在する部位のみが該弾性部材13と接合し、それよりも離れた部位においては、シート11,12が本来有する風合いが維持されたままになっている。その結果、伸縮シート10の風合いが良好に保たれるという利点がある。この場合、各シート11,12と弾性部材13とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。あるいは、各シート11,12と弾性部材13とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)を行うことができる。シート11,12が不織布等の繊維シートからなる場合には、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。尤も、これらの補助的な接合手段は、得られる伸縮シート10の風合いを損なったり、弾性部材13にダメージを与えたりする場合がある。したがって、弾性部材13をその溶融熱でシート11,12と融着することが好ましい。但し、補助的な接合手段として、エアスルー法による熱風吹き付けからなる熱処理を用いた場合には、得られる伸縮シート10の風合いは損なわれず、またシート11,12の接合強度の高いものが得られる点で好ましい。
伸縮シート10は、弾性部材13の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート10の伸縮性は、弾性部材13の弾性に起因して発現する。伸縮シート10を、弾性部材13の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性部材13並びに第1及び第2のシート11,12が伸長する。そして伸縮シート10の引き伸ばしを解除すると、弾性部材13が収縮し、その収縮に連れて第1及び第2のシート11,12が引き伸ばし前の状態に復帰する。
伸縮シート10においては、弾性部材13と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していない。したがって伸縮シート10を、弾性部材13の延びる方向と同方向に引き伸ばしたときには、該伸縮シート10が幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。つまり、伸縮シート10はその引き伸ばし状態において、その長手方向にわたり幅がほぼ一様になっている。その結果、伸縮シート10を、その伸長状態で搬送させてこれを加工するときのハンドリング性が良好になる。また、伸縮シート10を例えばパンツ型おむつの外包材として用いた場合、おむつの着用中にずれ落ちが起こったり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。また、おむつの構成と使用者の動きを考えると、幅方向に不均一な伸長が起こるが、その際にも幅縮みはほとんど起きず、おむつがずれたり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。この観点から、伸縮シート10は、これを1.5倍に伸長したときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の1%〜10%、特に1%〜5%であることが好ましい。幅縮みは(1−伸長後の幅÷伸長前の幅)×100として求めることができる。伸長後の幅は次のように測定する。サンプルを、その長さ方向が概ね流れ方向に沿うように(角度差15度以内)幅50mmにて切り出す。長さは150mm超とする。サンプルの幅を50mmに保った状態で、サンプルの長手方向両端部を、把持間隔150mmで把持する。このとき、サンプルがその長手方向にたるまず、かつ伸長しないように注意する。この状態から、把持間隔を1.5倍まで伸長させたときの、サンプルの長さ方向の中央部の幅を測定し、その値を伸長後の幅とする。
次に、伸縮シート10を構成する第1及び第2のシート11,12並びに弾性部材13の構成材料について説明する。各シート11,12としては、不織布やプラスチックフィルムを用いることができる。これらの構成材料としては実質的に非弾性のものが用いられる。その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等が挙げられる。第1及び第2のシート11,12は、その双方が不織布でもよく、あるいはプラスチックフィルムでもよい。また一方が不織布で、他方がプラスチックフィルムでもよい。
シート11,12が不織布である場合、該不織布を構成する繊維としては、実質的に非弾性の繊維が用いられる。その例は上述のとおりである。不織布を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。不織布は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート10を厚みのある嵩高なものとする観点からは、不織布は、短繊維からなるものであることが好ましい。伸縮シート10を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
シート11,12が不織布である場合、該不織布は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性部材13との融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
シート11,12が不織布である場合、該不織布の厚みは、好ましくは0.3〜2.0mm、更に好ましくは0.5〜0.7mmである。厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み伸縮シート10の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。シート全体の厚みは平板間の距離を測ることで求められる。各不織布の坪量は、風合い、厚み及び意匠性等の観点から、それぞれ3〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
一方、シート11,12がプラスチックフィルムである場合、その坪量は、10〜40g/m2、特に15〜20g/m2であることが、風合い、厚み及び意匠性等の観点から好ましい。
シート11,12が不織布である場合、該不織布は、一定の繊維径を有する高伸度(例えば繊維の最大伸度が80〜800%、特に120〜650%)の繊維を原料とすることが、最大強度の高い伸縮シート10が得られる点で好ましい。繊維の伸度は、JIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±5%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準する。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
弾性部材13は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα-オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性部材13の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
弾性部材13とシート11,12を構成する材料との好適な組み合わせは、シート11,12が不織布からなる場合には、弾性部材13にSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、不織布の構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶けきらず(芯が残る)、最大強度の高い伸縮シート10が得られる。
次に、本実施形態の伸縮シート10の好適な製造方法を、図4ないし図6を参照しながら説明する。図4に示すように、本製造方法においては、紡糸ノズル16から紡出された溶融状態の多数のフィラメントからなる弾性部材13を所定速度で引き取って延伸しつつ、該フィラメントの固化前に、該フィラメントが互いに交差せず一方向に配列するように該フィラメントをシート11,12に融着させ、次いで該フィラメントが融着した複合体19を、該フィラメントの延びる方向に沿って弾性発現処理して該複合体19に伸縮性を付与するとともに第2の領域に凹凸形状を賦与する。
紡糸ノズル16は、紡糸ヘッド17に設けられている。紡糸ヘッド17は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド17へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド17に供給される。図5は、図4に示す紡糸ヘッド17に設けられた紡糸ノズル16の配置状態を示す模式図である。紡糸ヘッド17には、多数の紡糸ノズル16が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル16は、第1及び第2のシート11,12の幅方向に沿って配置されている。紡糸ノズル16は、複数個が集合したノズル群16Aを形成している。各ノズル群16Aにおいて、両端に位置する紡糸ノズル16間の距離V1は、目的とする伸縮シート10における第1の領域101の幅W1に相当する。また、隣り合うノズル群16A間の距離V2は、目的とする伸縮シート10における第2の領域102の幅W2に相当する。各ノズル群16Aにおいて、隣り合う紡糸ノズル16の間隔は、目的とする伸縮シート10の第1の領域101における弾性部材13の間隔に相当する。紡糸ノズル16は通常円形であり、その直径は弾性部材13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル16の直径は0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。シート11,12との接合強度を高める目的、フィラメントの紡糸性を上げる目的、及び伸縮シート10の伸縮特性を向上させる目的で、フィラメントを複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
紡出された溶融状態のフィラメントは、それぞれ原反から互いに同速度で繰り出された第1のシート11及び第2のシート12と合流し、両シート11,12間に挟持されて所定速度で引き取られる。フィラメントの引き取り速度は、両シート11,12の繰り出し速度と一致している。フィラメントの引き取り速度は、該フィラメントの直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によってフィラメントに生じる張力は、該フィラメントをシート11,12と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該フィラメントの乱れを防止する。それによってフィラメントどうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、フィラメントの引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
フィラメントは、その固化前に、即ち融着可能な状態で第1及び第2のシート11,12と合流する。その結果、フィラメントは、第1及び第2のシート11,12に挟持された状態で、これらのシート11,12に融着する。つまり、固化前のフィラメントを、搬送されるシート11,12に融着させることで、該フィラメントは引き取られて延伸される。フィラメントの融着に際しては第1及び第2のシート11,12には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっているフィラメントに起因する溶融熱によってのみ、該フィラメントと両シート11,12とが融着する。その結果、両シート11,12のうち、フィラメントの周囲に存在する繊維のみが該フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、両シート11,12に加わる熱は最小限にとどまるので、該シート自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート10の風合いが良好になる。
紡出されたフィラメントが、第1及び第2のシート11,12と合流するまでの間、該フィラメントは延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、50%伸長時強度の行きの強度に対する戻りの強度の比が高まりヒステリシスロスの小さなフィラメントが得られる。フィラメントを十分に延伸させる観点及びフィラメントの糸切れを紡糸する観点から、紡出されたフィラメントに所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該フィラメントの温度を調整してもよい。
フィラメントの延伸は、弾性樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の延伸時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。この観点から、弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。また、弾性樹脂の耐熱性の観点から、溶融温度は220℃以下が好ましい。弾性部材13の成形温度(ダイスの温度)は樹脂の流動性を上げて成形性をよくするために原料樹脂の溶融温度の+50℃以上が好ましく、耐熱性のため原料樹脂の溶融温度の+110℃以下が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。軟化状態でフィラメントを第1及び第2のシート11、12に合流させた場合には、フィラメントは、第1及び第2のシート11,12に挟持された状態で、これらのシート11,12に接合される。また、軟化温度より低い温度の状態を固化状態という。軟化温度は、伸縮シート10の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮シート10の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80〜180℃がより好ましい。
フィラメントとシート11,12とを接合させるときの該フィラメントの温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。またフィラメントの形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート10を得る観点から、フィラメントの温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは120〜160℃の範囲である。接合時の温度は、フィラメントと接合させるラミネート基材として、フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
フィラメントとシート11,12との接合時には、フィラメントは実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、シート11,12の少なくとも一部が、フィラメントへ融着することが好ましく、フィラメントとシート11,12の少なくとも一部との両方が融着することがより好ましい。十分な接合強度が得られるからである。得られる伸縮シート10の伸縮特性は、フィラメントとシート11,12との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述するシート11,12の延伸による接合点のはずれによって調整することができる。シート11,12をフィラメントに融着させることで、接合点一つ一つの接合強度が高くなる。接合点の密度を低くすると、シート11,12による伸縮阻害が少なくなり、且つ十分な接合強度を有する伸縮シート10が得られるので好ましい。
フィラメントを第1及び第2のシート11,12と合流させるときには、各フィラメントが互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、フィラメントを第1及び第2のシート11,12と合流させて両シート11,12間に該フィラメントを挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール18,18によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮シート10の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎるとフィラメントが両シート11,12内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮シート10の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール18,18による挟圧力は、フィラメントが両シート11,12に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
ニップロール18による挟圧の別の条件として、ニップロール18の温度が挙げられる。本発明者らの検討の結果、ニップロール18を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート10が得られることが判明した。ニップロール18を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール18の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
このようにして2枚のシート11,12間に弾性部材13が挟持された複合体19が得られる。この複合体19においては、目的とする伸縮シート10における第2の領域102となるべき部位は、2枚のシート11,12が非接合状態になっていてもよく、あるいは接着剤等の塗布によって接合状態になっていてもよい。
次に、シート11,12を含む複合体19を、弾性部材13の延びる方向に沿って弾性発現処理して、該複合体19に伸縮性を付与する操作を行う。また、第2の領域102に凹凸形状を賦与する操作を行う。本製造方法においては、この操作を、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現・凹凸賦与装置22を用い、複合体19をその搬送方向、即ちフィラメントの延びる方向に沿って弾性発現させ、かつ凹凸賦与することで行う。
弾性発現・凹凸賦与装置22は、一方又は双方の歯溝ロール20,21の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、歯溝ロール20,21間の間隔が調節可能になっている。本製造方法においては、各歯溝ロール20,21を、一方の歯溝ロール20の歯が他方の歯溝ロール21の歯間に遊挿され、他方の歯溝ロール21の歯が一方の歯溝ロール20の歯間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両歯溝ロール20,21間に複合体19を挿入し、これを弾性発現させ、かつ凹凸賦形する。
弾性発現・凹凸賦与装置22においては、一対の歯溝ロール20,21の両方が駆動源によって駆動するようになっていてもよく(共回りロール)、一方の歯溝ロール20又は21のみが駆動源によって駆動するようになっていてもよい(連れ回りロール)。本製造方法においては、下側の歯溝ロール21のみが駆動源によって駆動し、上側の歯溝ロール20は駆動源に接続されておらず、歯溝ロール21の回転に伴って従動する(連れ回る)ようになっている。歯溝ロール20,21の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられ、特にこれらの歯幅を細くしたものが好ましい。
図6には、複合体19が弾性発現・凹凸賦形される状態が模式的に示されている。複合体19が歯溝ロール20,21間を通過する際には、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、ほとんど延伸されない。これに対し、駆動ロールである歯溝ロール21の歯24の歯面によって、従動ロールである歯溝ロール20の歯23の歯面に向けて押圧される領域(P2−P1間)においては、両歯20,21によって大きく延伸される。また、歯溝ロール21の歯24の先端部によって、歯溝ロール20の歯23から引き離される領域(P4−P3間)においては、前記領域(P2−P1間)程ではないが、大きく延伸される。
また複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24の先端部に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、前述のとおりほとんど延伸されないが、歯23,24の先端部によって、その径方向に、つまり複合体19の厚み方向に片押しされるので、厚み方向に薄くなる。但し領域(P3−P2間)と領域(P1−P4間)とは片押しされる方向が反対向きであるため、薄くなる方向が反対向きとなる。
以上のとおりの弾性発現処理によって、弾性部材13と両シート11,12との剥離を防止しつつ、複合体19における両シート11,12を効率的に延伸させ、伸長性を付与することができる。また、歯溝ロール20,21によるシート11,12の噛み合わせによって凹凸形状が賦与される。複合体19が歯溝ロール20,21を通過すると、弾性部材13の収縮復元力によって、速やかにMD方向への延伸状態が解放される。その結果、弾性部材13が存在する領域である第1の領域101は、搬送方向へ収縮する。それによって第1の領域101は、弾性発現処理前の平坦な状態に戻る。一方、弾性部材13が存在しない領域である第2の領域102には収縮力が作用しないので、歯溝ロール20,21によるシート11,12の噛み合わせによって形成された凹凸形状がそのまま維持される。その結果、第2の領域102には、弾性部材13の延びる方向に沿って規則的な起伏を繰り返す波形の凹凸形状が形成される。なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、伸縮性が発現する限度において、ある程度の延伸状態が維持された状態で延伸状態を解放してもよい。
このようにして得られた伸縮シート10は、その具体的な用途にもよるが、その全体の坪量が10〜150g/m2、特に25〜50g/m2であることが好ましい。
本実施形態の伸縮シート10は、先に述べたとおり使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の表面シートとして好適に用いられる。その場合、伸縮シート10の伸縮方向が、吸収性物品の長手方向と一致するように該伸縮シート10を吸収性物品に組み込んでもよく、あるいは伸縮シート10の伸縮方向が、吸収性物品の幅方向と一致するように該伸縮シート10を吸収性物品に組み込んでもよい。前者の場合には、吸収性物品の長手方向における製品のヨレが低減され、また排泄液の漏れ防止が良好であるという利点がある。後者の場合には、吸収性物品の幅方向における製品のヨレが低減され、また排泄液の漏れ防止が良好であるという利点がある。
前記の用途以外に、伸縮シート10は、例えばパンツ型使い捨ておむつの外装シートとして好適に用いられる。またこの用途以外に、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性等の利点を生かし、医療用使い捨て衣類や清掃シート等の各種の用途に用いることもできる。さらに、使い捨ておむつの胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシートとしても用いられる。また、生理用ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることもできる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の伸縮においては、2枚のシート11,12間に多数の弾性部材13が挟持された構造になっていたが、これに代えて、1枚のシートの表面に多数の弾性部材を接合して伸縮シートとなしてもよい。
また前記実施形態の第1の領域101においては、弾性部材13はすべて同径で、等ピッチで配置されていたので、第1の領域101のどの部分をとっても伸長応力は同じになっていた。しかし、これに代えて、第1の領域101が、伸長応力が異なる2以上の領域からなるように伸縮シートを構成してもよい。この場合、伸長応力が異なる各第1の領域101においては、隣り合う弾性部材のピッチが異なっているか、及び/又は、弾性部材の直径が異なっている。それによって各第1の領域101間での伸長応力を異ならせることができる。伸縮シートの製造時に、2種以上の異なる樹脂を、任意の紡糸ノズルに導入して紡糸を行うことでも、各第1の領域101領域間での伸長応力を異ならせることができる。
伸縮シート10に部分的にエンボス加工を行ったり、弾性部材13を部分的にカットしたり部分的に熱シールしたりすることもできる。これらの操作は、第1の領域101に伸縮しない部分を形成したり、強度を部分的に上げたりする目的で行われる。或いは、他の部材と貼り合わせたり、デザイン性を持たせたりする目的で行う。
本発明の伸縮シートの一実施形態を示す斜視図である。 図1におけるII−II線断面図である。 図1におけるIII−III線断面図である。 図1に示す伸縮シートを製造するために用いられる好適な装置を示す模式図である。 図4に示す装置における紡糸ノズルの配置状態を示す模式図である。 図4に示す装置によって複合体が延伸・凹凸賦形される状態を示す模式図である。
符号の説明
10 伸縮シート
11 第1のシート
12 第2のシート
13 弾性部材
101 第1の領域
102 第2の領域
111 凸部
112 凹部

Claims (5)

  1. 互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性部材が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、伸長可能なシートに接合されてなる伸縮シートであって、
    前記伸縮シートは、前記弾性部材を含み、かつ隣り合う前記弾性部材間の距離が相対的に小さくなっている第1の領域と、前記弾性部材を含み、かつ隣り合う前記弾性部材間の距離が相対的に大きくなっているか、又は前記弾性部材が配されていない第2の領域とを有し、
    第1の領域及び第2の領域は、それぞれ前記弾性部材の延びる方向と同方向に延びるとともに、前記弾性部材の延びる方向と直交する方向に沿って交互に配置されており、
    第1の領域においては、前記伸縮シートの表面は実質的に平坦であり、
    第2の領域においては、前記弾性部材の延びる方向と直交する方向にそれぞれ延びる形状を有する凸部及び凹部が、前記弾性部材の延びる方向に沿って交互に形成されている伸縮シート。
  2. 前記弾性部材が前記伸長可能なシートに融着により接合している請求項1記載の伸縮シート。
  3. 前記弾性部材は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものである請求項1記載の伸縮シート。
  4. 前記弾性部材が、紡糸ノズルから紡出された弾性樹脂を溶融延伸して得られたフィラメントである請求項3記載の伸縮シート。
  5. 前記弾性部材は、前記弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で1.1〜400倍に延伸されて得られたものであり、直径が10〜200μmになっている請求項3又は4記載の伸縮シート。
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