JP4924852B2 - 非水電解液二次電池用電極板の製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、集電体上に塗布された金属元素含有化合物または有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、生成される金属酸化物の結晶化温度未満の温度で加熱することにより、結着物質である金属酸化物を生成し、且つ、このとき該結着物質の周囲に存在する電極活物質粒子を集電体上に固着させることができること、および上記加熱の際の温度等を調整することによって、上記有機物あるいは上記有機金属化合物由来の炭素成分を電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存させることができることを本発明者らは見出し、非水電解液二次電池用電極板の製造方法の発明を完成させた。
(1)電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための金属元素含有化合物と、上記金属元素含有化合物の溶媒と、導電材とは区別される炭素成分を提供する有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記金属元素含有化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記金属元素含有化合物を予め選択し、且つ、上記加熱工程における加熱温度を、上記金属元素含有化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法、
(2)電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための有機金属化合物と、上記有機金属化合物の溶媒とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記有機金属化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記有機金属化合物を予め選択し、且つ、上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機金属化合物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法、
(3)電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための有機金属化合物と、上記有機金属化合物の溶媒と、導電材とは区別される炭素成分を提供する有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記有機金属化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記有機金属化合物を予め選択し、且つ、上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ少なくとも上記有機金属化合物または上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法、
(4)上記金属元素含有化合物または上記有機金属化合物が、金属塩であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法、を要旨とするものである。
しかも、金属元素含有化合物と電極活物質粒子と有機物とを少なくとも含有して調製される電極活物質層形成溶液、あるいは結着物質生成材料である有機金属化合物、と電極活物質粒子とを少なくとも含有して調製される電極活物質層形成溶液は、含有される電極活物質粒子の粒子径によらず、集電体への塗布性が良好に維持される程度の粘度が示される。したがって、樹脂製のバインダーを使用した従来の電極活物質層形成溶液では、粘度の著しい上昇のため使用困難であった粒子径の小さい電極活物質粒子を使用することができるようになった。また上記電極活物質形成溶液の集電体への塗布性が良好であることから、所望の厚みに塗布することも可能である。
本発明の電極板は、集電体上の少なくとも一部に電極活物質層を備えて構成される。以下に、電極活物質層、集電体、電極の充放電レート特性評価方法について、順に説明する。
尚、本発明の非水電解液二次電池用電極板は、従来技術のように樹脂製のバインダーを使用することなく、非晶質であって、アルカリイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物の存在により、電極活物質粒子を集電体上に固着させてなる電極活物質層を備えるものである。かかる本発明の電極板は、従来の樹脂製バインダーを用いてなる非水電解液二次電池用電極板に比べて、同一の電極活物質粒子を同量含む場合であっても、非常に高い出入力特性を発揮することが可能である。さらに、導電材とは区別される炭素成分が含有されることによって、非常に望ましい出入力特性が示される。しかも、本発明の電極板は、従来の樹脂製バインダーを用いた電極板と同様に、集電体に対する電極活物質層の膜密着性が良好であり、したがって該電極活物質層の膜形成性が良好である。
また本発明者らの検討により、樹脂製バインダーを用いずに、金属酸化物を結着物質として電極活物質層中に含有させた場合には、従来と比べ、該電極活物質層の柔軟性がやや低下し、これに伴い、電極板の加工特性がやや低下する傾向が見られた。これに対し本発明では、上記炭素成分を電極活物質層に含有させることによって、樹脂製バインダーを使用しなくても、従来どおりの優れた加工特性を示す電極板を提供することができる。
そして、上述のとおり出入力特性の向上が図られた本発明の電極板を正極板及び/または負極板として用いる本発明の非水電解液二次電池であれば、上述のとおり電極板の出入力特性が向上しているため、電池としての出入力特性の向上に寄与することになり、結果として出入力特性の向上した非水電解液二次電池が提供される。
本発明における電極活物質層は、電極活物質粒子が、従来のように樹脂製のバインダーではなく、非晶質であってリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物によって集電体上に固着されており、且つ、導電材とは区別される炭素成分を含有しているものである。
電極活物質層の厚みが、上述の範囲のように薄い場合には、用いられる電極活物質粒子は粒子径が小さいものであり、少なくとも電極活物質層の膜厚以下の粒子径であることを意味し、これによって、出入力特性の向上に大きく寄与する結果となる。また、このように電極活物質層の膜厚が薄い場合には、電極活物質層中において、電極活物質粒子と集電体とを移動する電子の移動距離が短くなるので、電極板における電気抵抗を下げることができ、結果として出入力特性の向上に寄与することができるため望ましい。
尚、本発明において電極活物質層の膜厚の下限は、主として、用いられる電極活物質粒子の粒子径に依存し、使用可能な電極活物質粒子の粒子径の縮小化に伴い、さらに上述の範囲を下回る、より薄い膜厚とすることが可能である。
また電極活物質層は、電解液が浸透可能な程度に空隙が存在していることが好ましく、電極活物質層中の空隙率は、一般的に15〜40%、より好ましくは20〜40%である。
以下に、本発明における電極活物質層中に含有される物質について具体的に説明する。
本発明における電極活物質層に含有される電極活物質粒子としては、一般的に非水電解液二次電池用電極板において用いられるリチウムイオン挿入脱離反応を示す充放電可能な正極活物質粒子または負極活物質粒子であれば、特に限定されない。即ち、本発明では集電体上において、電極活物質粒子などの粒子間あるいは電極活物質粒子と集電体との間に金属酸化物が介在することによって互いに接着し電極活物質層が形成されており、上記金属酸化物は、電極活物質粒子の種類や形状によらず結着物質として作用する。
また電極活物質層中に含有される電極活物質の粒子径は、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて測定することができる。
上記電極活物質層中に結着物質として含有される金属酸化物は、一般的に金属と理解される金属元素の酸化物であって、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない非晶質の金属酸化物であれば、特に限定されるものではない。上記金属元素の例としては、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Ra、およびCeなどを挙げることができる。
また2種以上の金属元素を含む複合金属酸化物であって、本発明の金属酸化物として用いることができるものの例としては、例えば、ガドリニウムがドープされた酸化セリウム、イットリウムがドープされた酸化ジルコニウム、鉄とチタンの混合酸化物、インジウムとスズが混合された酸化物、リチウムがドープされた酸化ニッケルなどを挙げることができる。
尚、本段落で記載する金属酸化物の例は、本発明における金属酸化物を何ら限定するものではなく、本発明において、集電体上で電極活物質粒子の結着物質として働きうる金属酸化物とは、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない、非晶質の金属酸化物であって、樹脂製のバインダーを用いずとも、電極活物質粒子を集電体上に固着させることのできるものであれば、いずれのものであってもよい。また、本発明において、上述する金属酸化物は、1種または2種以上の組み合わせで、電極活物質層中に含有させることができる。
本発明において、電極活物質層中における金属酸化物と、電極活物質粒子の配合比率は特に特定されず、使用される電極活物質粒子の種類や大きさ、金属酸化物の種類、電極に求められる機能などを勘案して適宜決定することができる。ただし、一般的には、電極活物質層中における電極活物質粒子の量が多い方が、電極の電気容量が増大するため、この観点からは、電極活物質層中に存在する電極活物質粒子に対する金属酸化物の配合量が、少ない方が好ましいといえる。
より具体的には、上記電極活物質層中において、上記電極活物質粒子の重量比率を100重量部としたときに、上記金属酸化物の重量比率を、1重量部以上50重量部以下とすることができる。1重量部未満であると、電極活物質粒子が集電体上に良好に固着されない場合がある。
一方、上記金属酸化物の重量比率の上限の記載は、本発明において、金属酸化物が当該上限を超えて存在することを除外する趣旨ではない。電極の電気容量を大きくするために、より少ない量の金属酸化物で活物質粒子を集電体上に固着させることができることを示すものである。
本発明における金属酸化物は、非晶質であることが特定される。本発明において非晶質の金属酸化物とは、当該金属酸化物、あるいは当該金属酸化物を含む試料を、X線回折装置で解析し、当該金属酸化物のピークが検出されなかった場合を意味する。例えば、金属元素として鉄を例に結晶性の酸化鉄と、非晶質の酸化鉄についてそれぞれのX線回折装置における具体的な分析結果を用いて説明する。
次に、分析試料1及び2の結晶性について、X線回折装置で評価した。それぞれの分析結果について、分析試料1については図1に、分析試料2については図2示した。図1及び図2から明らかなように、図1はブロードなチャートが示されるだけで何らピークが観察させず、非晶質な状態であると理解される。一方、図2では、横軸の32°と58°付近にピークが確認でき、これによって結晶性の酸化鉄がガラス基板上に生成されていることが理解される。
このように、本発明では、金属元素が酸化物となっているか否かを組成分析により確認するとともに、X線回折装置によって得られたチャートから、その金属酸化物が非晶質であるのか、結晶性であるのかを確認することができる。
また本発明における金属酸化物は、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さないものに特定される。かかる理由は、本発明における金属酸化物が、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンと電気化学的に反応しないことを趣旨とする。これによって該金属酸化物の電気化学的な反応に伴う膨張や反応物が生じず、結果として電極活物質層中の金属酸化物の膨張や欠損などによる劣化が抑制される。
以下に、CV試験について説明する。具体的には、電極電位を活物質の適切な電圧範囲において、例えばアルカリ金属イオンとしてリチウムイオンを想定し、金属酸化物としてLiMn2O4であれば、3.0Vから4.3Vまで掃引したのち、再び3.0Vまで戻す作業を3回程度繰り返すものである。走査速度は1mV/秒が好ましい。例えばLiMn2O4であれば、図3に示すように、約3.9V付近にLiMn2O4のLi脱離反応に相当する酸化ピークが出現し、約4.1V付近にLi挿入反応に相当する還元ピークが出現し、これによってリチウムイオンの挿入脱離反応の有無を確認することができる。また、図4に示すように、ピークが出現しない場合にはリチウムイオンの挿入脱離反応がないと判断することができる。
尚、本発明において、金属酸化物が、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないとは、金属酸化物固有の電気的性質を意味するものではなく、電極活物質層中に結着物質として含有される金属酸化物が、該電極活物質中に含有される電極活物質粒子に適した電圧範囲において、リチウムイオン挿入脱離反応を示さないことを意味する。即ち、電極板において、上記金属酸化物が、実質的に、リチウムイオンを挿入脱離しないことが重要であるからである。
本発明の電極板には、任意で、電極活物質層中に、さらに導電材を含有させることができる。
一般的に、導電材を電極活物質層中に含有させることにより、電極活物質層における各電極活物質と集電体との電子伝導性をより良好に確保し、電極活物質層自体の体積抵抗率を効率よく下げることができるため、望ましい。上記導電材としては、通常、非水電解液二次電池用電極板に用いられるものを使用することができ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の粒子状のカーボンブラック等の導電性の炭素材料が例示される。上記導電材の平均一次粒径は20nm〜50nm程度であることが好ましい。また異なる導電材としては炭素繊維(VGCF)が公知である。上記炭素繊維は、長さ方向に非常に良好に電気を導くことができ、電気の流動性を向上させることができるもので、繊維長さは、1μmから20μm程度である。したがって、上述するアセチレンブラックなどの粒子状の導電材に加えて、炭素繊維も併せて用いることにより、導電材添加効果を向上させることができる。上記導電材の導電性は、一般的に、電気抵抗率で表記され、0.14〜0.25Ωcm程度の電気抵抗が示される。
尚、上記平均一次粒径は、活物質の粒径を測定する方法と同様に、電子顕微鏡による実測から求められる算術平均により求められる。
導電材を電極活物質層に含有される場合には、その含有量は特に限定されないが、一般的には、電極活物質粒子100重量部に対して、導電材の割合が5重量部以上20重量部以下となるようにすることが望ましい。
本発明における電極活物質層中には、導電材と区別される炭素成分(以下、単に「炭素成分」ともいう)が含有される。本発明における上記炭素成分は、任意で添加される導電材とも区別され、また特に負極板においては、負極活物質粒子とは別に電極活物質層中に存在するものである。
より具体的には、導電材や、グラファイトから構成される負極活物質粒子などの炭素材料を添加する前の電極活物質層形成溶液を基板上に塗布して塗膜を形成し、適切な加熱温度あるいは適切な加熱雰囲気で加熱することにより、形成される膜中に炭素成分が存在することを予備的に確かめる予備実験を行う。次いで、必要な材料が含有された電極活物質層形成溶液を集電体上に塗布して予備実験と同様の条件で加熱工程を実施することにより、導電材や、グラファイトから構成される負極活物質粒子などの炭素材料以外の炭素成分が含有される電極活物質層を備える電極板を作成することができる。
たとえば、本発明において、結着物質である金属酸化物中に上記炭素成分が含有される場合があるが、かかる場合には、上記金属酸化物中に含有される金属元素100モル%に対して上記炭素成分が10モル%以上含有されていることが好ましく、またその上限は特に限定されないが、50モル%以下の含有量で、充分に出入力特性の向上、および加工特性の向上に寄与することができる。
本発明における電極活物質層は、電極活物質粒子、結着物質である金属酸化物、および導電材とは区別される炭素成分を少なくとも含有しており、また導電材をさらに添加させることができるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる任意の添加剤が含有されていてもよい。
本発明に用いられる集電体は、一般的に非水電解液二次電池用電極板の電極集電体として用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、正極集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔など、負極集電体としては、銅箔あるいは、アルミニウム箔、ニッケル箔などを好ましく用いることができる。
上記集電体の厚みは、一般に非水電解液二次電池用電極板の集電体として使用可能な厚みであれば特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。
本発明の電極板の出入力特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。即ち、上記放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した電極板においては、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解される。したがって、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価され、この結果、出入力特性が向上とした評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、以下の式1より放電容量維持率(%)を求めることができる。
尚、上記放電容量は、三極式コインセルにより電極自体の放電容量を測定することにより求められる。
本発明の製造方法の第一の態様は、電極活物質層形成溶液として、電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための1種または2種以上の金属元素含有化合物と、導電材とは区別される炭素成分を付与可能な材料である有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を調製し、これを用いて、後述する塗布工程、および加熱工程を順に実施する。
このとき、上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記金属元素含有化合物が予め選択される。
そして、上記加熱工程における加熱温度を、上記金属元素含有化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度とすることを特徴とする。
このとき、加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記有機金属化合物が予め選択される。
そして、加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機金属化合物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度とすることを特徴とする。
このとき、上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記有機金属化合物が予め選択される。
上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ少なくとも上記有機金属化合物または上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度とすることを特徴とする。
上記電極活物質層形成溶液に含有される電極活物質粒子は、上述において既に説明した電極活物質粒子と同様であるため、ここではその説明を割愛する。尚、本発明の製造方法において、用いられる電極活物質粒子の粒子径は、所望の大きさを選択することができることも上述と同様である。
本発明に製造方法において、電極活物質層形成溶液中には、生成が予定される金属酸化物の生成材料として、金属元素含有化合物、あるいは有機金属化合物を用いることができる。本段落以下、金属元素含有化合物、あるいは有機金属化合物を、まとめて結着物質生成材料という場合がある。
結着物質生成材料は、基板上で、熱分解開始温度以上の温度で加熱されると、熱分解し、且つ、酸化して、製膜することが可能である。本発明者らは、本発明の課題を検討するにあたり、金属酸化物膜を基板上に薄膜形成する際に、この金属酸化物膜中に電極活物質粒子を含有させることを検討し、鋭意研究の結果、金属酸化物の量を少なくしていっても、金属酸化物の存在により、電極活物質粒子を基板上に固着させることができることを見出したものである。即ち、本発明者らは、樹脂製のバインダーを使用せずに、上記膜化する結着物質中に電極活物質粒子を含有させる着想のもと、結着物質生成材料と電極活物質粒子とを含有する溶液を調製し、集電体上に塗布して加熱することを試みた。その結果、主として電極活物質粒子からなる電極活物質層中に結着物質が存在する程度に、集電体上で生成される結着物質の量を著しく減らしても、電極活物質粒子が集電体上に固着されることを見出した。
したがって、本発明の製造方法に用いられる結着物質生成材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、熱分解され、且つ、酸化されて、製膜可能な金属元素を含むものであり、且つ集電体上で生成される結着物質がリチウムイオンなどのアルカリ金属イオンの挿入脱離反応を示さないものであれば、いずれのものを選択してもよい。
また特に、結着物質生成材料のうち、有機金属化合物は、結着物質の生成材料であり、且つ、当該有機金属化合物に含有される炭素原子を、電極活物質層中に含有される、導電材とは区別される炭素成分として付与可能な化合物である。
尚、使用する結着物質生成材料から生成される結着物質が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さないものであることは、予備実験において、結着物質生成材料を含有する溶液を基板上に塗布してこれを加熱することによって結着物質を形成し、上述するサイクリックボルタンメトリー法により確認することができる。
上記金属元素含有化合物は、具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Ra、及びCeなどの一般的な金属元素群から選択されるいずれか1種、または2種以上の金属元素を含有する化合物であればよい。
また理由は明らかではないが、上記金属元素の中でも、特に3乃至5周期に属する金属元素を含有する金属元素含有化合物を用いた場合には、生成される電極板の出入力特性がより高くなる傾向にあるため、好ましい。即ち、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、及びSnから選択されるいずれか1種、または2種以上の金属元素を含有する化合物が、金属元素含有化合物として好ましい。
上記有機金属化合物は、金属と炭素とを含む化合物のことを意味し、炭素元素を含有する金属錯体、炭素元素を含有する金属塩のいずれも含む。より詳しくは、有機金属化合物は、上記金属元素含有化合物において列挙されるような一般的な金属元素群から選択されるいずれか1種、または2種以上の金属元素および炭素を含有する化合物であればよい。また有機金属化合物において、上記金属元素群の中でも、特に3乃至5周期に属する金属元素が含有することが好ましいことも、上記金属元素含有化合物と同様である。
金属塩の具体的な例示としては、金属塩の具体的な例示としては、酢酸スカンジウム、酢酸クロム、酢酸鉄(II)、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸銀、酢酸インジウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム、酢酸鉛、酢酸ランタン、酢酸ストロンチウム、酢酸パラジウム、酢酸バリウム等を挙げることができる。
また電極活物質層中に残存する上記炭素成分を提供するための別の化合物として、上記有機金属化合物とは区別される有機物を用いることもできる。上記有機物は、具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース、デンプン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールあるいはポリエチレングリコールなどを例示することができる。これらの有機物は、上記電極活物質層形成溶液を調製する際に、その粘度を調整する作用を発揮する。これら粘度調整材としても作用可能な有機物を、電極活物質層形成溶液に配合させ、集電体上に当該溶液を塗布した後、適切な温度で加熱することにより、形成される電極活物質層中に炭素成分を残存させることができる。
上記電極活物質層形成溶液に用いられる溶媒は、電極活物質粒子、結着物質生成材料、あるいは有機物などの添加剤が添加されてなる電極活物質層形成溶液として調製可能であって、かつ集電体上に塗布された後、加熱工程において除去可能なものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエンなどの1種の溶媒、あるいはこれらの2種以上の組み合わせからなる混合溶媒等を挙げることができる。
次に、以上のとおり調製された電極活物質層形成溶液を、集電体上に塗布して塗膜を形成する塗布工程について説明する。尚、本発明の製造方法において用いられる集電体は、上記非水電解液二次電池用電極板に用いられる集電体と同様であるため、ここでは割愛する。
本塗布工程では、電極活物質層形成溶液の塗布方法として公知の塗布方法であれば、適宜選択して実施することができる。たとえば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等によって、集電体表面の任意の領域に塗布して塗膜を形成することができる。また、集電体表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、上記方法以外に手動で塗布することも可能である。尚、本発明において使用する集電体は、必要に応じて、予めコロナ処理や酸素プラズマ処理等を行うことで、電極活物質層の製膜性をさらに改善することができるため好ましい。
次に、上記塗布工程において形成された塗膜を加熱する加熱工程について説明する。本加熱工程は、上記塗膜中に存在する結着物質生成材料を加熱して熱分解し、これに含まれる金属元素を含む、非晶質の金属酸化物を生成するとともに、該塗膜中に含まれる溶媒を除去することを目的に行われる。またこのとき、該塗膜中の有機金属化合物、またはさらに添加される有機物の少なくともいずれかにおける炭素を導電材とは区別される炭素成分として電極活物質層中に残存させるために、適切な加熱温度あるいは加熱雰囲気に調整する必要がある。
上記塗膜中に含有される金属元素含有化合物あるいは有機金属化合物は、加熱されて熱分解すると、一般的には、速やかに酸化し、これによって金属酸化物が形成される。したがって予備試験として、金属元素含有化合物または有機金属化合物が配合される溶液を基板上に塗布して加熱し、基板上に積層される積層膜を削って試料とし、組成分析を行い、金属元素と酸素の含有比率を測定することによって、金属酸化物が形成されているかどうかを判断することができ、また、金属酸化物が生成されていた場合には、用いられた金属元素含有化合物または有機金属化合物が、基板上で熱分解開始温度以上の温度で加熱されたことが確認される。尚、上記予備試験における加熱は、本製造方法において予定される加熱雰囲気と同様の雰囲気で実施する。即ち、本発明において「金属元素含有化合物または有機金属化合物の熱分解開始温度」とは、加熱により金属元素含有化合物または有機金属化合物が熱分解され、これに含まれる金属元素の酸化が開始する温度、と理解することができる。
本発明における「結晶化温度」は、金属酸化物の固有の結晶化温度とは必ずしも一致するとは限らず、電極活物質層形成溶液中の状態により、これらの固有の結晶化温度と若干相違する場合がある。したがって、この点を勘案し、予め、電極活物質層形成用塗膜中における金属酸化物の結晶化温度を確認しておくことが望ましい。
即ち、電極活物質層中に残存する導電材とは区別される炭素成分に付与する化合物として、有機金属化合物を用いる場合には、有機金属化合物から、有機基が分離し、該有機基の少なくとも一部が、加熱工程において消失せずに炭化して導電材とは区別される炭素成分として電極活物質層中に残存可能な温度であればよい。
また、有機物を用いる場合も同様に、当該有機物における有機基の少なくとも一部が加熱工程において消失せずに炭化して電極活物質層中に残存可能な温度であればよい。
あるいは、電極活物質粒子と、有機金属化合物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を用いて本発明の電極板における電極活物質層を形成する場合には、上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ有機金属化合物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度に設定すればよい。
あるいはまた、電極活物質粒子と、有機金属化合物と、有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を用いて本発明の電極板における電極活物質層を形成する場合には、上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ有機金属化合物及び/または有機物に含有される炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存することが可能な温度に設定すればよい。
また、上記加熱工程において、加熱温度を決定する際には、さらに用いられる集電体、電極活物質粒子、導電材などの耐熱性も充分勘案することが望ましい。たとえば、一般的に負極板の集電体として用いられる銅箔の耐熱温度は、空気雰囲気中では酸化してしまうので200℃前後であり、不活性ガス雰囲気であれば1080℃前後である。また、アルミ箔の耐熱温度は、660℃前後である。このため、上記加熱温度が、上記耐熱温度を超える場合には、集電体が損傷するおそれがある。
例えば空気雰囲気である場合には、特別な雰囲気の調整が必要なく、簡易に加熱工程を実施することができる点で好ましい。特に集電体としてアルミ箔を用いる場合には、空気雰囲気下において加熱工程を実施しても、該アルミ箔が酸化する虞がないので、好ましく加熱工程を実施することができる。
一方、集電体として銅箔を用いる場合には、空気雰囲気下で加熱工程を実施すると酸化してしまい、望ましくない。したがって、かかる場合には、不活性ガス雰囲気下、あるいは還元ガス雰囲気、あるいは不活性ガスと還元ガスの混合ガス雰囲気下で加熱することが好ましい。尚、酸素ガスが充分に含有されない雰囲気下で加熱工程を実施する場合において、電極活物質層中に金属酸化物を生成する場合には、金属元素含有化合物あるいは有機金属化合物中における金属元素の酸化は、電極活物質層形成溶液中に含有される化合物中の酸素と金属元素とが結合することによって実現される必要があるので、使用する化合物中に酸素元素が含有される化合物を用いる必要がある。
非水電解液二次電池は、一般的には、正極板及び負極板と、これらの間にポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータとが設けられて構成されており、これらが容器内に収納され、且つ容器内に非水電解液が充填された状態で密封されて製造される。
本発明の非水電解液二次電池は、正極板および/または負極板として、上述する本発明の電極板を用いることを特徴とする。本発明の電極板は、上述のとおり、出入力特性が非常に優れている。したがってかかる電極板を用いることによって、本発明の非水電解液二次電池においても当該電極板の性能が発揮され、電池自体の出入力特性が向上する。
本発明に用いられる非水電解液は、一般的に、非水電解液二次電池用の非水電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
上記環状エステル類としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、及びγ−バレロラクトン等が挙げられる。
上記鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、及び酢酸アルキルエステル等が挙げられる。
上記環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、及び1,4−ジオキソラン等が挙げられる。
上記鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、及びテトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
金属元素含有化合物としてFe(NO3)3・9H2O[分子量:404]10.0gをエタノール20gに加えて、さらに有機物としてポリエチレングリコール200(関東化学社製)を10g混合し、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物を生成する原料溶液とした。次いで、上記原料溶液に、平均粒径4μmの正極活物質LiMn2O410gと、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)1.5g、炭素繊維(昭和電工株式会社製、VGCF)0.1gを混合させ、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で7000rpmの回転数で40分間混練することによって電極活物質層形成溶液を調製した。尚、上記電極活物質層形成溶液の各成分については、あわせて表1に示す。後述する実施例2乃至20、及び比較例1乃至4についても同様である。
尚、実施例1を作成するにあたり、上述で得られた非水電解液二次電池用正極板を所望のサイズの円板形状に繰り抜く加工を行ったが、当該加工作業において、電極活物質層が剥離するなどの不具合なく、作用極を形成することができた。このことから、電極活物質層の膜形成性が良好であることを確認した。以下に示す実施例および比較例においても、膜形成性が良好であるとは、上述するように、不具合なく正極板(あるいは負極板)を円板上に繰り抜く加工ができた場合を意味する。一方、上記繰り抜き加工において電極活物質層の一部が剥がれたり、あるいは電極活物質が集電体上から落下して三極式コインセルの作用極として使用に耐える円板が形成されなかった場合には、電極活物質層の膜形成性が不良であると評価するものとする。
次に、実施例1における電極活物質層を削って、試料1を得た。そして試料1を用いて、X線光電子分光法(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)によって組成分析を実施したところ、Fe元素が9Atomic%、Mn元素が5Atomic%、O元素が53Atomic%、C元素が33Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が、熱分解されて酸化鉄が生成されたことが確認された。
また確認試験1として、アセチレンブラック及び炭素繊維を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に非水電解液二次電池用正極板を作成し、上述同様に電極活物質層の組成分析試験を実施したところ、C元素は13Atomic%であった。したがって、実施例1における電極活物質層には、アセチレンブラック及び炭素繊維由来の炭素成分、およびこれら導電材以外の炭素成分が含有されていることが認められた。
また試料1を用いてX線回折装置(XRD)で、その結晶性を評価したところ、図6に示すように、電極活物質層中に含有される金属酸化物は非晶質であることがわかった。尚、参考に、上記金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)をガラス板にミヤバー4番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層膜を削りとり、X線回折装置を用いてその結晶性を評価した結果を図7に示した。また正極活物質粒子であるM1090をX線回折装置を用いてその結晶性を評価し、結果を図8示した。図7は、原料溶液を加熱して得られた酸化鉄のX線回折結果であり、ピークが確認されないことより、該酸化鉄が非晶質であることが確認された。また図8は、正極活物質粒子であるマンガン酸リチウムのX線回折結果であり、結晶性のマンガン酸リチウムを表すピークが確認された。図7及び図8を参考に、図6を解析すると、結晶性のマンガン酸リチウムの特徴的なピークしか確認されず、また重ねてブロードな非晶質の酸化鉄の山が表れていることが確認された。
さらに実施例1で作製した正極板を用いてCV試験を行った。具体的には、まず電極電位を3.0Vから4.3Vまで掃引したのち、再び3.0Vまで戻す作業を3度繰り返した。走査速度は1mV/秒とした。2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムは、上述で示す図3に相当する。図3より明らかなように、3.9V付近にLiMn2O4のLi脱離反応に相当する酸化ピークが、4.1V付近にLi挿入反応に相当する還元ピークが確認できた。一方、上記金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)をアルミ基板にミヤバー4番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層体について、上述と同様にCV試験を行った。2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムは、上述で示す図4に相当する。図4より明らかなように、上記積層膜では、電気化学的な反応が示されなかった。このことから、実施例1の結着物質である酸化鉄はリチウムの挿入脱離反応を示さない事が確認できた。尚、本実施例では、CV試験は、Bio Logic社製のVMP3を用いて実施した。尚、上述する、電極活物質層形成溶液の集電体への塗布量、形成される電極活物質層の膜厚及び膜形成性、該電極活物質層中に生成される結着物質、上記結着物質の結晶性、及び本段落に記載するCV試験の結果について表2にまとめて示す。後述する実施例2乃至20及び比較例1乃至4についての内容も同様に表2に示す。
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を調製した。
正極板として上述のとおり作製した実施例1(直径15mmの円板、含有される正極活物質の重量:2.72mg/1.77cm2)を作用極として用い、対極板及び参照極板として金属リチウム板、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル1とした。そして実施例試験セル1を下記充放電試験に供した。
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例試験セル1において、作用極の放電試験を実施するために、まず実施例試験セル1の下記充電試験のとおり満充電させた。
実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.3Vに達するまで定電流(245μA)で定電流充電し、当該電圧が4.3Vに達した後は、電圧が4.3Vを上回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極において、活物質であるマンガン酸リチウムの理論放電量90mAh/gが1時間で放電されるよう設定された。
その後、満充電された実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.3V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(245μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例1である正極用電極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
作用極の放電レート特性を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位重量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1における式により放電容量維持率(%)を求めた。尚、上記放電試験により得られた単位重量当たりの放電容量(mAhr/g)及び放電容量維持率(%)は、100Cにおいて96%、50Cにおいて99%であった。
放電レート50Cにおける放電容量維持率 60%以上・・・・・・・・・◎
放電レート50Cにおける放電容量維持率 50%以上60%未満・・・・○
放電レート50Cにおける放電容量維持率 30%以上50%未満・・・・△
放電レート50Cにおける放電容量維持率 30%未満・・・・・・・・・×
実施例2:金属元素含有化合物としてFe(NO3)3・9H2O[分子量:404]0.4gをメタノール5gに加えて、さらにポリエチレングリコール200(関東化学社製)を10g混合したこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例2とした。
実施例3:平均粒径0.3μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例3とした。
実施例4:平均粒径10μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に正極板を作成し、実施例4とした。
実施例5:金属元素含有化合物として、Fe(NO3)3・9H2O[分子量:404]を2.0gと、有機金属化合物としてチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート[分子量:363.88](マツモト交商製 TC−100)を23.0g用い、これらをエタノール35gに加えて、さらにエチルセルロース(日進化成株式会社 エトセルGr.STD−100)を5g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に正極板を作成し、実施例5とした。
実施例6:有機金属化合物として、Li(CH3COO)・2H2O[分子量:102]4.0gを用い、これをメタノール16gに加えて、さらにエチルセルロース(日進化成株式会社 エトセルGr.STD−7)を10g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと、および、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体の加熱条件を下記のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様に非水電解液二次電池用正極板を作成し、実施例6とした。尚、実施例6における集電体の加熱条件は、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、常温の電気炉内に設置し、1時間かけて260℃まで加熱した後、260℃に温度を維持したまま5時間加熱し、さらにその後、15分かけて420℃まで加熱し、420℃に温度を維持したまま5分間加熱する条件に変更した。
実施例7:有機金属化合物として、Ni(CH3COCHCOCH3)2・2H2O[分子量:293]12gを用い、これをエタノール16gに加えて、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、有機物を用いなかったこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解液二次電池用正極板を作成し、実施例7とした。
実施例8:金属元素含有化合物として、Mg(NO3)2・6H2O[分子量:256]4.0gを用い、これを水13gとメタノール3gに加えて、さらにでんぷん(溶性)(関東化学社製)を5g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例8とした。
実施例9:金属元素含有化合物として、Cu(NO3)2・3H2O[分子量:241]6.0gを用い、これをメタノール10g、アセトン5gに加えて、さらに酢酸セルロース(関東化学社製)を5g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例9とした。
実施例10:金属元素含有化合物として、Ca(NO3)2・4H2O[分子量:236]7.0gを用い、これをメタノール15gに加えて、さらに剥離ニス(昭和インク工業:46−7−0)を10g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例10とした。
実施例11:金属元素含有化合物として、Cr(NO3)3・9H2O[分子量:400]5.0gと、有機金属化合物としてチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート[分子量:363.88](マツモト交商製 TC−100)5.0gを用い、これをメタノール15gに加えて、さらにヒートシール粘着材(大日本インキ化学工業株式会社製:TS−PCニスA)を7g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例11とした。
実施例12:有機金属化合物として、(CH3COCH:C(CH3)O)2Co[分子量:257]9.0gを用い、これをメタノール15gとトルエン10gに加えて、さらにフェノール樹脂(住友ベークライト社製:スミライトレジン)を10g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例12とした。
実施例13:金属元素含有化合物として、Mn(NO3)2・6H2O[分子量:287]9.0gを用い、これをメタノール10gとキシレン10gに加えて、さらにアクリル変性樹脂(ハリマ化成株式会社製:KV−905)を8g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例13とした。
実施例14:金属元素含有化合物として、Zn(NO3)2・6H2O[分子量:298]7.0gを用い、これをメタノール20gに加えて、さらにエポキシ樹脂(DIC社製:EPICLON840S)を5g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例14とした。
実施例15:有機金属化合物として、Y(CH3COCHCOCH3)3・2H2O[分子量:408]11.0gを用い、これをメタノール15gに加えて、さらにポリエチレングリコール200(関東化学社製)を10g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例15とした。
実施例16:有機金属化合物として、Zr(CH3COCHCOCH3)4[分子量:488]6.0gを用い、これをメタノール25gに加えて、さらにポリエチレングリコール200(関東化学社製)を10g混合したこと、平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は、実施例1と同様に正極板を作成し、実施例16とした。
実施例17:平均粒径0.3μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に本発明の正極板を作成し、実施例17とした。
実施例18:平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に本発明の正極板を作成し、実施例18とした。
実施例19:平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に本発明の正極板を作成し、実施例19とした。
実施例20:平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を用いたこと、および、表2に示す電極活物質層形成溶液塗布量としたこと以外は実施例1と同様に本発明の正極板を作成し、実施例20とした。
上記実施例2乃至20について、実施例1と同様に、電極活物質層の厚みを測定し、平均値を算出した。結果は、表2に示す。
上記実施例2乃至20について、実施例1と同様に、膜形成性の確認を行った。結果は、表2に示す。
実施例1における試料1と同様に、実施例2乃至実施例20について、試料2乃至20を作成し、これを用いて組成分析を行った。結果は、以下の通りであった。
実施例2では、Fe元素が10Atomic%、Mn元素が12Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が22Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が、熱分解されて酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例3では、Fe元素が13Atomic%、Mn元素が10Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が21Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が、熱分解されて酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例4では、Fe元素が14Atomic%、Mn元素が9Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が21Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が、熱分解されて酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例5では、Fe元素が2Atomic%、Ti元素が12Atomic%、Mn元素が8Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が22Atomic%検出された。一方、N元素及びCl元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が、熱分解されて酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例6では、Mn元素が15Atomic%、O元素が60Atomic%、C元素が25Atomic%検出された。一方、本組成分析における系では、Liの検出が不可能であるため、Liの分析結果は得られなかった。しかしながら、酢酸リチウムは熱分解されやすいことが公知であること、および仮に酢酸リチウムが試料6中に存在すれば、炭素成分の検出量がさらに多くなるはずであることから勘案し、金属元素含有化合物として用いた酢酸リチウムは、加熱工程において分解され、これによって酸化リチウムが形成されたと理解される。
実施例7では、Ni元素が12Atomic%、Mn元素が17Atomic%、O元素が52Atomic%、C元素が19Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸セリウムが、熱分解されて酸化セリウムが生成されたことが確認された。
実施例8では、Mg元素が8Atomic%、Mn元素が18Atomic%、O元素が52Atomic%、C元素が22Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸マグネシウムが、熱分解されて酸化マグネシウムが生成されたことが確認された。
実施例9では、Cu元素11Atomic%、Mn元素が15Atomic%、O元素が50Atomic%、C元素が24Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸アルミニウムが、熱分解されて酸化アルミニウムが生成されたことが確認された。
実施例10では、Ca元素6Atomic%、Mn元素が15Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が26Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸カルシウムが、熱分解されて酸化カルシウムが生成されたことが確認された。
実施例11では、Cr元素5Atomic%、Ti元素4Atomic%、Mn元素が16Atomic%、O元素が51Atomic%、C元素が24Atomic%検出された。一方、Cl元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた塩化チタンが、熱分解されて酸化チタンが生成されたことが確認された。
実施例12では、Co元素13Atomic%、Mn元素が16Atomic%、O元素が54Atomic%、C元素が17Atomic%検出された。検出されたC元素の量から、酢酸コバルトにおける炭素は加熱によりその大半が、消失したものと理解された。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた酢酸コバルトが熱分解されて、酸化コバルトが生成されたことが確認された。
実施例13では、Mn元素10Atomic%、Mn元素が16Atomic%、O元素が53Atomic%、C元素が21Atomic%検出された。検出されたC元素の量から、酢酸ニッケルにおける炭素は加熱により消失したものと理解された。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた酢酸ニッケルが熱分解されて、酸化ニッケルが生成されたことが確認された。
実施例14では、Zn元素12Atomic%、Mn元素が16Atomic%、O元素が47Atomic%、C元素が25Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸亜鉛が、熱分解されて酸化亜鉛が生成されたことが確認された。
実施例15では、Y元素9Atomic%、Mn元素が16Atomic%、O元素が52Atomic%、C元素が23Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸イットリウムが、熱分解されて酸化イットリウムが生成されたことが確認された。
実施例16では、Zr元素5Atomic%、Mn元素が19Atomic%、O元素が52Atomic%、C元素が24Atomic%検出された。一方、Cl元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた塩化ジルコニウムが、熱分解されて酸化ジルコニウムが生成されたことが確認された。
実施例17では、Fe元素が13Atomic%、Mn元素が9Atomic%、O元素が57Atomic%、C元素が21Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が熱分解されて、酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例18では、Fe元素が14Atomic%、Mn元素が10Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が20Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が熱分解されて、酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例19では、Fe元素が12Atomic%、Mn元素が9Atomic%、O元素が57Atomic%、C元素が22Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が熱分解されて、酸化鉄が生成されたことが確認された。
実施例20では、Fe元素が13Atomic%、Mn元素が10Atomic%、O元素が56Atomic%、C元素が21Atomic%検出された。一方、N元素は検出されなかった。以上の結果、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていた硝酸鉄が熱分解されて、酸化鉄が生成されたことが確認された。
また実施例1における試料1と同様の方法で、実施例2乃至20における試料2乃至20を用いて、その結晶性を評価した。その結果、試料1と同様に、試料2乃至20においても、電極活物質層中に含有される金属酸化物は非晶質であることが確認された(X線回折結果の図示は省略する)。
実施例1と同様の方法で、上記実施例2乃至20を用いてそれぞれのCV試験を行い、得られたサイクリックボルタモグラムからLi脱離反応に相当する酸化ピーク及びLi挿入反応に相当する還元ピークを確認した(サイクリックボルタモグラムの図示は省略する)。一方、実施例2乃至20において、上記金属酸化物を生成する原料溶液(正極活物質を添加する前の溶液)を用い、実施例1におけるCV試験と同様に積層体を形成し、上述と同様にCV試験を行った。その結果、上記積層膜では、電気化学的な反応が示されなかった。このことから、実施例2乃至20それぞれにおける結着物質はリチウムの挿入脱離反応を示さない事が確認された。
実施例2乃至20について、実施例1における実施例試験セル1と同様に、実施例試験セル2乃至20を作成した。尚、各実施例における、円板状のサイズは実施例1と同様であり、またこれに含有される正極活物質の重量は、表3あるいは表4に示す。
上記実施例試験セル2乃至20を用い、表3あるいは表4に示す、定電流値に変更した以外は、実施例1に倣って、充放電試験を行った。尚、各実施例及び比較例において、充電時の定電流(放電レート:1C)は、いずれも放電時の定電流(放電レート:1C)と同じであるため、充電時の定電流の数値の記載は省略した。そして、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算し、放電容量維持率(%)を算出した。結果は、実施例2乃至15については表3に、実施例16〜20については表4に示す。
金属元素化合物あるいは有機金属元素化合物は用いずに、平均粒径4μmの正極活物質LiMn2O4を10gと、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック)1.5g、炭素繊維(昭和電工株式会社製、VGCF)0.1g、及び樹脂製のバインダーとしてPVDF(クレハ社製、KF#1100)1.3gに、溶媒としてNMP(三菱化学社製)を加えて、分散させ、固形分濃度が55重量%となるようにエクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で7000rpmの回転数で15分間攪拌して、スラリー状の電極活物質層形成溶液を調製した。
金属元素含有化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に非水電解液二次電池用正極板を作成した。
そして、実施例1と同様に所定形状の円板を繰り抜く加工を行ったが、このとき、電極活物質層が剥がれてしまい、三極式コインセルに使用可能な円板上の電極を作成することができなかった。即ち、上記非水電解液二次電池用正極板における電極活物質層の膜形成性は不良であった。
平均粒径が10μmの正極活物質LiMn2O4を使用したこと以外は比較例1と同様にスラリー状の電極活物質層形成溶液を調製した。
そして上記電極活物質層形成溶液を、正極集電体として用いる厚さ15μmのアルミ箔上に、乾燥後の電極活物質層形成溶液の塗工量が30g/m2となるように塗布し、オーブンを用いて、120℃の空気雰囲気下で20分乾燥させて、集電体表面上に正極用の電極活物質層を形成した。さらに、形成された電極活物質層の塗工密度が2.0g/cm3(正極活物質層の厚さ:30μm)となるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、120℃にて12時間、真空乾燥させて、非水電解液二次電池用正極板を作製し、これを比較例3とした。比較例3の膜形成性は良好であった。また比較例3における電極活物質層の厚みは、30μmであった。
平均粒径1μmの正極活物質LiMn2O4を使用したこと以外は比較例1と同様に電極活物質層形成溶液を調製し、比較例1と同様のアルミ箔上に、乾燥後の電極活物質層形成溶液の塗工量が30g/m2となるように塗布したが、上記電極活物質層形成溶液の粘度が調整困難で、流動性が悪くなり、設計通りの塗布ができず、正極活物質層を形成することができなかった。したがって、非水電解液二次電池用正極板を作成することができなかった。
有機物であるポリエチレンオキサイド1gをメタノール9gに溶解させた溶液に、結着物資生成材料として、金属元素含有化合物であるチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(株式会社マツモト交商製、TC−100)5.0gをと混合させ、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物を生成する原料溶液とした。次いで、上記原料溶液に、平均粒径4μmの負極活物質粒子であるグラファイト7gを混合させ、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で7000rpmの回転数で20分間混練することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、不活性ガス雰囲気(窒素99.99%)の電気炉(高温雰囲気ボックス炉、光洋サーモシステム株式会社製、KB8610N−VP)内に設置し、1時間かけて400℃まで加熱し、その後、400℃に温度を維持したまま10分間加熱し、集電体上に金属酸化物と負極活物質粒子を含む負極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用負極板を得た。そして上記負極板を室温になるまで放置した後に大気開放して取り出し、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、実施例21とした。
実施例22:表6に示す電極活物質層形成溶液塗布量に変更したこと以外は、実施例21と同様に負極板を製造し、これを実施例22とした。
実施例23:用いる負極活物質粒子の粒子径を10μmに変更したこと以外は実施例21と同様に負極板を製造し、これを実施例23とした。
実施例24:用いる負極活物質粒子の粒子径を1μmに変更し、且つ、表6に示す電極活物質層形成溶液塗布量に変更したこと以外は実施例21と同様に負極体を製造し、これを実施例24とした。
上記実施例21乃至24について、実施例1と同様に、電極活物質層の厚みを測定し、平均値を算出した。結果は、表6に示す。
上記実施例21乃至24について、実施例1と同様に、膜形成性の確認を行った。結果は、表6に示す。
実施例1における試料1と同様に、実施例21乃至実施例24について、試料21乃至24を作成し、これを用いて組成分析を行った。結果は、以下の通りであった。
実施例21では、Ti元素が12Atomic%、C元素が61Atomic%、O元素が27Atomic%検出された。
実施例22では、Ti元素が12Atomic%、C元素が61Atomic%、O元素が27Atomic%検出された。
実施例23では、Ti元素が13Atomic%、C元素が57Atomic%、O元素が30Atomic%検出された。
実施例24では、Ti元素が14Atomic%、C元素が55Atomic%、O元素が31Atomic%検出された。
また、以上の結果、実施例21乃至24において、電極活物質層形成用塗膜中に含有されていたチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)が熱分解されて、電極活物質層中に酸化チタンが生成されたことが確認された。
また実施例1における試料1と同様の方法で、実施例21乃至24における試料21乃至24を用いて、その結晶性を評価した。その結果、試料1と同様に、試料21乃至24においても、電極活物質層中に含有される金属酸化物(酸化チタン)は非晶質であることが確認された(X線回折結果の図示は省略する)。
実施例21乃至24における電極活物質層を構成する金属酸化物(即ち、酸化チタン)が、リチウムイオン挿入脱離反応を示すか否かを予め確認するために、CV試験を行った。具体的には、まず電極電位を3Vから0.03Vまで掃引したのち、再び3Vまで戻す作業を3度繰り返した。走査速度は1mV/秒とした。2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムから、明らかな、酸化ピークおよび還元ピークが確認できた。一方、上記金属酸化物を生成する原料溶液(負極活物質を添加する前の溶液)をアルミ基板にミヤバー4番で塗布し、電極作成時と同じ加熱条件で加熱し、得られた積層体について、上述と同様にCV試験を行った。その結果、1回目から3回目のいずれのサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムにおいても、ピーク(電気化学的な反応)は確認されなかった。このことから、実施例21乃至24の結着物質である酸化チタンはリチウムイオンの挿入脱離反応を示さない事が確認できた。尚、上記CV試験は、Bio Logic社製のVMP3を用いて実施した。
まず、実施例1における充放電試験と同様に、非水電解液を調製し、正極板として実施例1を用いた代わりに、負極板として実施例21乃至24をそれぞれ作用極として用いた。そして、実施例試験セル1と同様に、実施例試験セル21乃至24を作成し、それぞれの試験セルを、以下の充放電試験に供した。尚、下記には、実施例試験セル21を用いた充放電試験について記載するが、実施例22乃至24についても、表7に示す定電流値に変更した以外は同様に充放電試験を行った。
実施例試験セル21を、25℃の環境下で、電圧が0.03Vに達するまで定電流(707μA)で定電流充電し、当該電圧が0.03Vに達した後は、電圧が0.03Vを下回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル21である作用極において、活物質であるグラファイトの理論放電量372mAhr/gが1時間で放電されるよう設定された。
(放電試験)
その後、満充電された実施例試験セル21を、25℃の環境下で、電圧が0.03V(満充電電圧)から2.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(707μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例21である負極用電極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
続いて、上述のとおり実施した定電流(707μA)(放電レート:1C、放電終了時間:1時間)での定電流放電試験を基準として、放電レート50C、100Cにおいても、同様にして各々定電流放電試験を行ない、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。尚、実施例21乃至24について、上記放電試験により得られた単位重量当たりの放電容量(mAhr/g)及び放電容量維持率(%)は、表7にまとめて示す。
実施例1と同様の方法で、実施例21乃至24について、放電容量維持率(%)を求めた。また、電極の放電レート特性評価を以下の通り行った。結果は、表7に示す。
放電レート50Cにおける放電容量維持率 80%以上100%以下・・・・◎
放電レート50Cにおける放電容量維持率 50%以上80%未満・・・・・○
放電レート50Cにおける放電容量維持率 50%未満・・・・・・・・・・×
実施例21について、電極活物質層中における導電材とは区別される炭素成分を、上述するSTEM法により以下のとおり確認した。まず、実施例21を集電体面に対し略垂直に切断し、電極活物質層の厚み方向の断面をSTEM法により、炭素元素マッピングにより炭素成分の着色領域を観察したところ、炭素成分を含む粒子径が15nm程度の粒子が分散して存在することが確認された。かかる炭素成分を示す着色領域は、公知の導電材粒子を示す着色領域に比べて著しく小さく、これによって、導電材とは区別される炭素成分が、本発明の電極活物質層中に存在することを確認した。尚、以下に記載する実施例、比較例および参考例についても、同様にSTEM法の炭素元素マッピングにより、電極活物質層中における炭素成分の存在の有無について確認した。また、実施例22乃至24についても実施例21と同様に、炭素成分を確認した。結果は表6に示す。
実施例21の加工特性を、JIS K 5600−5−1に基づく、円筒形マンドレル法の曲げ試験に評価した。実施例21を、電極活物質層面が外側に折り曲げられるよう向きで試験板に挟み、試験板の両端を固定し、2秒間かけて一律速度で均一に角度180度に折り曲げて、円筒形マンドレル法の曲げ試験を行った後、試験板から取り出した実施例1の電極活物質層面を目視で観察し、以下のとおりに評価した。尚、本加工特性評価は、マンドレル法曲げ試験機(型番 REF802 SEPRO製)を用いて実施した。また、実施例22乃至24についても実施例21と同様に、加工特性を評価した。結果は表6に示す。
電極活物質層面の膜割れ、および、集電体の剥離が認められなかった・・・・◎
若干の電極活物質層面の膜割れ、または、集電体の剥離が認められたが負極板としての使用に問題がなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○
電極活物質層面の膜割れ、または、集電体の剥離が認められ負極板として使用できなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・×
実施例21乃至24に関し、電極活物質層形成溶液の集電体への塗工適性について、負極板の塗布工程実施後、集電体上に形成された塗膜表面を目視で観察し、以下のとおり評価した。結果は、表6に示す。
塗膜表面が均一であった・・・・・・・・・・・・・・・◎
塗膜表面の一部に若干の凹凸が確認された・・・・・・・○
塗膜表面に、スジ、または塗りムラが確認された・・・・△
塗膜表面に、負極板として使用不可能な程度の明らかなスジ、または塗りムラが確認された・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・×
結着物質生成材料は用いずに、平均粒径12μmの負極活物質グラファイトを10gと、樹脂製のバインダーとしてPVDF(クレハ社製、KF#1100)1.3gに、溶媒としてNMP(三菱化学社製)を加えて、分散させ、固形分濃度が55重量%となるようにエクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で7000rpmの回転数で15分間攪拌して、スラリー状の電極活物質層形成溶液を調製した。
さらに、形成された電極活物質層の厚みが、約85μmとなるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、70℃にて300分間、真空乾燥させて負極板を作製し、比較例5とした。
用いる負極活物質粒子の粒子径を表5に示すとおりとし、且つ、集電体上への電極活物質層形成溶液の塗布量、電極活物質層の厚みを表6に示すとおりに変更したこと以外は、比較例5と同様に負極板を作製し、比較例6乃至9とした。
また比較例5乃至9について、実施例21と同様に、膜形成評価、加工特性評価、塗工適性評価を行った。結果は表6にまとめて示す。尚、比較例7乃至9については、塗工適性が良好ではなく、その結果、加工特性を正しく評価することができなかった。
加熱工程における加熱条件を、不活性ガス雰囲気(窒素)下において1時間かけて400℃まで加熱し、その後、400℃に温度を維持したまま10分間加熱し、次いで、室温になるまで放置した後に大気開放して取り出し、今度は水素還元雰囲気(水素濃度4%、窒素濃度96%)にして1時間かけて400℃まで加熱し、400℃のまま10保持し、室温になるまで放置した後に大気開放して取り出すよう、変更した以外は、実施例21と同様に負極板を形成し、電極活物質層中に炭素成分を含有しないこと以外は実施例21と同じ内容の参考例1を得た。
参考例1について、実施例21と同様に、電極活物質層の膜厚測定、膜形成性の評価、結着物質の結晶性、炭素成分の有無の確認、CV試験、加工特性、塗工適性について評価した。その結果、加工特性について、電極の特性としては問題ないものの、実施例21乃至24をやや下回ることがわかった。
Claims (4)
- 電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための金属元素含有化合物と、上記金属元素含有化合物の溶媒と、導電材とは区別される炭素成分を提供する有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記金属元素含有化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、
上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記金属元素含有化合物を予め選択し、且つ、
上記加熱工程における加熱温度を、上記金属元素含有化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法。 - 電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための有機金属化合物と、上記有機金属化合物の溶媒とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記有機金属化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、
上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記有機金属化合物を予め選択し、且つ、
上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ上記有機金属化合物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法。 - 電極活物質粒子と、結着物質である金属酸化物を生成するための有機金属化合物と、上記有機金属化合物の溶媒と、導電材とは区別される炭素成分を提供する有機物とが少なくとも含有される電極活物質層形成溶液を、集電体上の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
上記塗布工程後に実施される加熱工程であって、上記塗膜を加熱して溶媒を蒸発させるとともに、上記有機金属化合物を熱分解して金属酸化物を生成することによって、上記集電体上に金属酸化物と上記電極活物質粒子とを含有する電極活物質層を形成する加熱工程とを含み、
上記加熱工程において生成される金属酸化物が、アルカリ金属イオン挿入脱離反応を示さない金属酸化物となるよう、上記塗布工程に用いられる上記有機金属化合物を予め選択し、且つ、
上記加熱工程における加熱温度を、上記有機金属化合物の熱分解開始温度以上であって、上記加熱工程において生成される金属酸化物の結晶化温度未満であり、且つ少なくとも上記有機金属化合物または上記有機物由来の炭素が電極活物質層中に導電材とは区別される炭素成分として残存可能とする温度範囲内の温度とすることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法。 - 上記金属元素含有化合物または上記有機金属化合物が、金属塩であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
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