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JP4972931B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図4および図5に示すように構成されている。図4に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図5参照)が回転自在に挟持されている。
図4中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図4の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部1eに螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図4のA−A線に沿う断面図である図5に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、僅かに変位できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
図5に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図5においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図5の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図5の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図5の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図5で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図5の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図5の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、トラニオン15の枢軸14を揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持する前述したヨーク23A,23Bは、それ自体が支持ポスト64,68を中心に揺動することにより、例えば一方のトラニオン15(例えば図5の右側のトラニオン)の上側への変位に伴って他方のトラニオン15(例えば図5の左側のトラニオン)を下側へ変位させるといったように、同一キャビティ内で対向する一対のトラニオン15の動きをシーソーのように同期させてこれらをそれぞれ逆方向に変位させる機能を有している。これに関連して、例えば特許文献1には、図6および図7に示すように、ヨーク23A,23Bに突起119を形成し、この突起119によりトラニオン15を上下に変位させて、変速時のトラニオン15の傾転挙動の同期を確保する構造が提案されている。
特許第3022112号公報
しかしながら、特許文献1の構造では、変速時にトラニオン15が上下方向に変位する際、ヨーク23A,23Bの突起119の端部がトラニオン15と接触することとなるため、トラニオン15と突起119との間に摩擦力が生じ、これらの両部材15,119が摩耗してしまう虞がある。また、このような摩擦力は、トラニオン15の傾転運動に対して抵抗となり、円滑な変速動作を妨げてしまう虞もある。更に、突起部119をヨーク23A,23Bに一体に形成するため、ヨーク23A、23Bの加工方法も制約を受け、ヨーク23A,23Bの製造コストが高くなるといった問題もある。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ヨークの製造コストの低減を図りつつ、ヨークとトラニオンとの間の摩擦力を緩和し、変速動作に伴うトラニオンの円滑な傾転運動を確保できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンを前記枢軸の軸方向に変位させる駆動装置と、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記トラニオンの変位により揺動する一対のヨークとを備えるトロイダル型無段変速機において、前記トラニオンの軸方向における前記トラニオンと前記ヨークとの間には、前記トラニオンの軸方向の変位によるヨークの揺動に寄与する一対の介挿部材が設けられ、これらの介挿部材は前記トラニオンの軸方向において凹凸状の球面によって互いに係合していることを特徴とする。
この請求項1に記載された発明においては、凹凸状の球面によって互いに係合する一対の介挿部材をトラニオンとヨークとの間に挟み、それにより、変速時に両者間に作用する力を常に広い面で受けるようにしている。そのため、トラニオンとヨークとの間での摩擦力を緩和し、これら両者の摩耗を低減できるとともに、変速動作に伴うトラニオンの円滑な傾転運動を確保できる。つまり、トロイダル型無段変速機の動作の信頼性が向上する。また、ヨークに突起を形成しないため、ヨークの製造コストを低減できる。
また、請求項2に記載されたトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載された発明において、前記一対の介挿部材は、前記トラニオンの前記枢軸の外周に装着される環状体から成り、少なくとも一方の環状体は、その内径が前記トラニオンの前記枢軸の外径よりも大きく設定され、前記枢軸の軸方向に対して略直交する方向へ移動できるように前記枢軸との間に隙間を確保していることを特徴とする
この請求項2に記載された発明においては、トラニオンの枢軸と略直交する方向への環状体の移動が許容されるため、ヨークが傾いたときに球面結合の環状体が互いに調芯するように動くことができ、したがって、トラニオンの軸方向の変位によるヨークの円滑な揺動を確保できる。すなわち、変速時にヨークが傾いたときには、トラニオンの枢軸の中心軸とこの枢軸を支持するヨークの支持穴の中心軸との平行状態を維持できなくなるため、環状体がトラニオンまたはヨークに対して固定されていると、球面の中心がずれ、ヨークの円滑な揺動運動が損なわれてしまう。しかしながら、本構成のように環状体の少なくとも一方を枢軸と直交する方向にスライドできるようにトラニオンに対して所定の隙間をもって取り付けておくと、ヨークが傾いたときに球面結合の環状体同士が互いに調芯するように動くことができ、ヨークの円滑な揺動を確保できるようになる。
また、請求項3に記載されたトロイダル型無段変速機は、請求項1または請求項2に記載された発明において、互いに係合する前記介挿部材の凹凸状の球面には、その相対的な摺動に対する抵抗を緩和するための摩擦低減処理が施されていることを特徴とする。
この請求項3に記載された発明においては、互いに係合する前記介挿部材の凹凸状の球面に摩擦低減処理が施されているため、変速動作に伴うトラニオンの傾転運動を更に円滑に行なうことができるようになる。
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、凹凸状の球面によって互いに係合する一対の介挿部材をトラニオンとヨークとの間に挟み、変速時に両者間に作用する力を常に広い面で受けるようにしているため、ヨークの製造コストの低減を図りつつ、ヨークとトラニオンとの間の摩擦力を緩和し、変速動作に伴うトラニオンの円滑な傾転運動を確保することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、変速に伴うヨークとトラニオンとの間の力伝達構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図4〜図7と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1および図2に示すように、本実施形態においては、トラニオン15とヨーク23A,23Bとの間に、トラニオン15の軸方向の変位によるヨーク23A,23Bの揺動に寄与する介挿部材としての一対の薄板部材130,132が設けられている。すなわち、この構造では、トラニオン15とヨーク23A,23Bとの間に介挿された薄板部材130,132により、駆動装置32のトラニオン15の軸方向移動に伴うヨーク23A,23Bの揺動が引き起こされる(この揺動は、駆動装置32によるトラニオン15の軸方向移動に伴って薄板部材130,132がヨーク23A,23Bの一端側を押し上げることにより引き起こされる)とともに、ヨーク23A,23Bの揺動に伴うトラニオン15の軸方向移動が引き起こされる(この軸方向移動は、薄板部材130,132がトラニオン15を押し下げることにより引き起こされる)。したがって、トラニオン15を上下に変位させて、変速時のトラニオン15の傾転挙動の同期(一方のトラニオン15の上側への変位に伴って他方のトラニオン15を下側へ変位させるといったように、同一キャビティ内で対向する一対のトラニオン15の動きをシーソーのように同期させてこれらをそれぞれ逆方向に変位させる機能)を確保できるようになる。
また、本実施形態において、薄板部材130,132は、トラニオン15の枢軸14の外周に装着される環状体から成る。そして、少なくとも一方の環状体、本実施形態ではヨーク23A,23B側に位置する一方の薄板部材130は、図2に明確に示すように、その内径がトラニオン15の枢軸14の外径よりも大きく設定されており、枢軸14の軸方向に対して略直交する方向(図2に矢印で示す方向)への移動が可能となるように枢軸14との間に隙間sを確保している。
また、本実施形態において、一対の薄板部材130,132は、凹凸状の球面によって互いに係合している。具体的には、図3に示すように、ヨーク23A,23B側に位置する薄板部材130に凹状の球面130aが設けられ、一方、トラニオン15側に位置する薄板部材132に凸状の球面132aが設けられ、これらの球面130a,132a同士が互いに係合するようになっている。
更に、本実施形態において、互いに係合する薄板部材130,132の凹凸状の球面には、その相対的な摺動に対する抵抗を緩和するための摩擦低減処理が施されている。具体的には、本実施形態では、薄板部材130,132の摺動面に摩擦係数を減ずるための皮膜が施されており、更に具体的には、互いに係合する球面130a,132aの一方にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成る層140が形成されている。摩擦低減処理は、薄板部材130,132の凹凸状の球面130a,132aの相対的な摺動に対する抵抗を緩和するものであれば、どのようなものでもよい。
以上説明したように、本実施形態では、凹凸状の球面130a,132aによって互いに係合する一対の薄板部材130,132をトラニオン15とヨーク23A,23Bとの間に挟み、それにより、変速時に両者15;23A,23B間に作用する力を常に広い面で受けるようにしている。そのため、トラニオン15とヨーク23A,23Bとの間での摩擦力を緩和し、これら両者15;23A,23Bの摩耗を低減できるとともに、変速動作に伴うトラニオン15の円滑な傾転運動を確保できる。つまり、トロイダル型無段変速機の動作の信頼性が向上する。また、ヨーク23A,23Bに突起を形成しないため、ヨーク23A,23Bの製造コストを低減できる。
また、本実施形態では、トラニオン15の枢軸14と略直交する方向への薄板部材130の移動が許容されるため、ヨーク23A,23Bが傾いたときに球面結合の薄板部材130,132が互いに調芯するように動くことができ、したがって、トラニオン15の軸方向の変位によるヨーク23A,23Bの円滑な揺動を確保できる。すなわち、変速時にヨーク23A,23Bが傾いたときには、トラニオン15の枢軸14の中心軸とこの枢軸14を支持するヨーク23A,23Bの支持穴18の中心軸との平行状態を維持できなくなるため、薄板部材130,132がトラニオン15またはヨーク23A,23Bに対して固定されていると、球面130a,132aの中心がずれ、ヨーク23A,23Bの円滑な揺動運動が損なわれてしまう。しかしながら、本構成のように薄板部材130,132の少なくとも一方(130)を枢軸14と直交する方向にスライドできるようにトラニオン15に対して所定の隙間sをもって取り付けておくと、ヨーク23A,23Bが傾いたときに球面結合の薄板部材130,132同士が互いに調芯するように動くことができ、ヨーク23A,23Bの円滑な揺動を確保できるようになる。
また、本実施形態では、互いに係合する薄板部材130,132の凹凸状の球面130a,132aに摩擦低減処理が施されているため、変速動作に伴うトラニオン15の傾転運動を更に円滑に行なうことができるようになる。
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機に適用することができる。
本発明の実施形態に係るトロイダル無段変速機の要部断面図である。 図1のトロイダル無段変速機の要部拡大断面図である。 薄板部材の拡大断面図である。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。 図4のA−A線に沿う断面図である。 変速に伴うヨークとトラニオンとの間の力伝達構造の従来例を示す要部断面図である。 図6のトロイダル無段変速機の要部拡大断面図である。
符号の説明
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
14 枢軸
15 トラニオン
23A,23B ヨーク
32 駆動装置
130,132 薄板部材(介挿部材)
130a,132a 球面
140 層
s 隙間

Claims (3)

  1. ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンを前記枢軸の軸方向に変位させる駆動装置と、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記トラニオンの変位により揺動する一対のヨークとを備えるトロイダル型無段変速機において、
    前記トラニオンの軸方向における前記トラニオンと前記ヨークとの間には、前記トラニオンの軸方向の変位によるヨークの揺動に寄与する一対の介挿部材が設けられ、これらの介挿部材は前記トラニオンの軸方向において凹凸状の球面によって互いに係合していることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記一対の介挿部材は、前記トラニオンの前記枢軸の外周に装着される環状体から成り、少なくとも一方の環状体は、その内径が前記トラニオンの前記枢軸の外径よりも大きく設定され、前記枢軸の軸方向に対して略直交する方向へ移動できるように前記枢軸との間に隙間を確保していることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. 互いに係合する前記介挿部材の凹凸状の球面には、その相対的な摺動に対する抵抗を緩和するための摩擦低減処理が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
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