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JP4968500B2 - セメント用強度向上剤、セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体水溶液およびセメント組成物 - Google Patents

セメント用強度向上剤、セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体水溶液およびセメント組成物 Download PDF

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Description

本発明は、グリセリンまたはグリセリン誘導体とポリカルボン酸系共重合体を含有するセメント用強度向上剤、ポリカルボン酸系共重合体水溶液およびセメント組成物に関する。
従来、セメント関連製品は、水、セメント、骨材、および減水剤等の材料を練り混ぜ、各種型枠に打設後、養生を行い製造している。セメント関連製品の種類によらず、型枠の回転率の向上およびセメント関連製品に高強度化が求められているため、初期材齢に高い強度を発現させる必要があることから、セメントとして早強セメントを使用したり、各種ポリカルボン酸系化合物を使用してセメント組成物中の水量を減少させたり、養生方法として蒸気養生を行ったりしているが、それでも脱型までに数時間を要し、また強度も十分満足のできる数値に達していないのが現状である。
セメント関連製品、すなわちセメント組成物の初期材齢に高い強度を発現させるため、各種硬化促進剤を添加することにより対応している。このような硬化促進剤として塩化カルシウムが広く使用されていたが、塩素イオンは鉄筋腐食性があり、コンクリート製品の耐久性を損なうため、現在ほとんど使用されていない。このため、塩素イオンを含まない硬化促進剤として、亜硝酸塩、チオ硫酸塩、硫酸塩、チオシアン酸塩、モリブデン酸塩等が提案されており、このような硬化促進剤とポリカルボン酸系化合物を併用した添加剤も提案されている(たとえば特許文献1、2)。これら併用系の添加剤を使用すると、セメント組成物中の水量が減少でき、初期材齢の高強度化も可能であるが、硬化促進剤成分が多量に必要であり、また時間による流動性の低下が著しいという問題があった。
一方、セメント組成物の水量の減少、および流動性の改善を目的として、以前よりポリカルボン酸系共重合体の水溶液が使用されている。これらポリカルボン酸系共重合体はナフタレン系、メラミン系等の他の混和剤と比較して水量を減少させる性能が高いことから、高濃度の水溶液で供給を行うと、多少の供給ぶれにより大幅に流動性が変化してしまうことから、20重量%程度の水溶液の形態で使用されている。近年、混和剤供給設備の高精度化により、高濃度水溶液の使用も可能となってきている。しかし、ポリカルボン酸系共重合体の水溶液は、過硫酸系、および水溶性アゾ系の開始剤を使用して製造した場合、30重量%より高濃度であると、冬場あるいは劣化防止のために低温保存しておくと開始剤由来の硫酸塩や塩酸塩が析出したり、共重合体が析出したりするという問題があった。
特開平7−309656号公報 特開平9−12351号公報
非特許文献1では、有機系の急結剤としてグリセリンが例示されている。急結剤とは、セメントの凝結時間を著しく短くし、早期強度を増進するために使用され、主として吹付けコンクリートに用いられる混和剤であり、セメントの水和を早め、初期材齢の強度発現を大きくするために用いられる硬化促進剤とは性能を異にする混和剤である。グリセリンは、セメント中の間隙相の水和を促進するので、グリセリン単体での急結剤としては有用であることが知られている。しかし、グリセリンは、珪酸石灰の水和を促進しないため、強度の発現が小さいことから、流動性の低下が著しく、初期材齢に高い強度を発現させるには不向きであることも周知である。
「セメント・コンクリート用混和材料」(株)技術書院発行(P.354〜361)
本発明の課題は、セメント組成物の流動性の低下が少なく、初期材齢に高い強度を発現することができるセメント用強度向上剤を提供することである。
また、本発明の課題は、例えば30重量%以上の高濃度の水溶液において、低温保管しても塩類の析出が抑制されたポリカルボン酸系共重合体を提供することである。
第一の発明に係るセメント用強度向上剤は、下記の(a)、(b)を必須とし、セメント100重量部に対する(a)の添加量が0.001〜1重量部であり、(a)と(b)の比率が重量比で(a):(b)=1〜50:50〜99((a)と(b)の重量の合計を100とする)である。
(a)下記一般式(1)で示される化合物
Figure 0004968500

(Rは、互いに独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。AOは、オキシエチレン基を表。l、m、nはそれぞれ互いに独立して0〜10である。)
(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体
また、第一の発明は、セメント、骨材、水および前記セメント用強度向上剤を含有するセメント組成物に係るものである。
第二の発明は、(a)一般式(1)で示される化合物、および水溶液中で過硫酸系開始剤と水溶性アゾ系開始剤との少なくとも一方を用いて共重合した(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体を含有し、セメント100重量部に対する(a)の添加量が0.001〜1重量部であり、(a)と(b)の比率が重量比で(a):(b)=1〜50:50〜99((a)と(b)の重量の合計を100とする)であるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体水溶液に係るものである。
また、第二の発明は、セメント、骨材、および前記水溶液を含有するセメント組成物に係るものである。
第一および第二の発明において好ましくは、(a)一般式(1)で示される化合物のうち、l、m、nが0、Rが水素原子の化合物である。
また、第一および第二の発明として、(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体が、下記式(2)で示される単量体(ア)50〜99重量%、下記式(3)で示される単量体または無水マレイン酸(イ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体(ウ)0〜30重量%を重合して得られる。
Figure 0004968500

(ただし、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を表し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、50モル%以上が炭素数2のオキシアルキレン基で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、p=20〜300、q=0〜2である。)
Figure 0004968500
(ただし、Xは−OMまたは−Y−(AO)を表し、Yはエーテル基またはイミノ基を表し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、r=1〜50である。MおよびMはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基を表す。)
参考形態では、(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体が、式(4)で示される単量体(エ)50〜99重量%、式(5)で示される単量体(オ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体(カ)0〜30重量%を重合して得られる共重合体である。
Figure 0004968500
(ただし、Rは水素原子またはメチル基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、S=1〜150である。)
Figure 0004968500

(ただし、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基を表す。)
第一の発明によれば、セメント組成物の経時的な流動性の低下を抑制でき、低添加量で初期材齢に高い強度を発現することができる。従って、セメント関連製品の様々な用途で使用することが可能であり、特に、40%以下の低水セメント比で使用される生コンクリート、コンクリートパイルおよびポール等の遠心成形製品、流し込み成形による2次製品、押出し成形板等の用途で使用すると、その効果が特に十分に発揮される。
セメント混和剤として、(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体とグリセリンまたはグリセリン誘導体とを併用することによって、グリセリンが初期材齢強度向上という硬化促進剤的な作用効果をもたらすことは知られておらず、当業者の常識に反する。
第二の発明によれば、過硫酸系および/または水溶性のアゾ系の重合開始剤を使用し、例えば30重量%以上の高濃度のポリカルボン酸系共重合体水溶液を製造しても、低温保管時に塩類の析出が抑制される。従って水溶液の高濃度化を可能にし、物流管理の効率化が可能である。
(a) 式(1)で示される化合物において、Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基である。3つのRは互いに同じであっても異なっていても良い。炭素数1〜8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の脂肪族飽和炭化水素基;アリル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、クレジル基等の芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基;等があり、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、Rが水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子である。
式(1)において、AOは、のオキシエチレン基である。l、m、nはオキシエチレン基の付加モル数であり、0〜10であり、好ましくは0〜5であり、より好ましくは0である。l、m、nの値は全てが同じ値でなくてもよいが、10を超えると強度向上効果が低減するため好ましくない。
式(1)で示される化合物でグリセリン骨格が好ましいのは、他の多価アルコール骨格、たとえば、ソルビトール骨格、ペンタエリスリトール骨格、糖類由来の骨格であるとセメント組成物が凝結遅延を起こしてしまい、初期材齢の強度が高くならないからである。
(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体は、後述のものである。
ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体の中でも、式(2)で示される単量体(ア)50〜99重量%、式(3)で示される単量体または無水マレイン酸(イ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体(ウ)0〜30重量%を有する共重合体を用いることが好ましく、式(2)で示される単量体(ア)80〜99重量%、式(3)で示される単量体または無水マレイン酸(イ)1〜20重量%および共重合可能な他の単量体(ウ)0〜10重量%を有する共重合体を用いることがさらに好ましい。
また、式(4)で示される単量体(エ)50〜99重量%、式(5)で示される単量体(オ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体(カ)0〜30重量%を有する共重合体を用いることが好ましく、式(4)で示される単量体(エ)70〜99重量%、式(5)で示される単量体(オ)1 〜30重量%および共重合可能な他の単量体(カ)0〜10重量%を有する共重合体を用いることがより好ましい。
式(2)において、R、RおよびRは、水素原子またはメチル基であり、好ましくはR、RおよびRの合計炭素数が0〜1である。Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、炭素数1〜8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の脂肪族飽和炭化水素基;アリル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、クレジル基等の芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基;等があり、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、Rが水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。
式(2)において、AOは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられ、好ましくは50モル%以上がオキシエチレン基であり、より好ましくは80モル%以上がオキシエチレン基である。
pは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の付加モル数であり、20〜300であり、好ましくは20〜100である。pの値が300を超えると得られる化合物が高粘度になるため製造が困難になるので好ましくない。
qはメチレン基の数であり、0〜2である。好ましくは1である。qの値が2を超えると製造が困難なため好ましくない。
式(3)のMおよびMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基である。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。
有機アンモニウム基は、有機アミン由来のアンモニウム基であり、有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンである。
Xは−OMまたは−Y−(AO)である。Yはエーテル基またはイミノ基であり、エーテル基は−O−を表し、イミノ基は−NH−を表す。
Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられ、好ましくは50モル%以上がオキシエチレン基であり、より好ましくは80モル%以上がオキシエチレン基である。
は水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であり、炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基等がある。Rで示される炭化水素基の炭素数が4を超えると得られる共重合体の親水性が十分でなくなり、また起泡しやすくなるので好ましくない。
(イ)として無水マレイン酸を使用した場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等で開環させるか、あるいは水により開環させて使用することができる。
式(4)、式(5)において、R、およびRは水素原子またはメチル基である。Rは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、炭素数1〜8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の脂肪族飽和炭化水素基;アリル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、クレジル基等の芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基;等があり、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、Rが水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。
式(4)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、好ましくは50モル%以上がオキシエチレン基であり、より好ましくは80モル%以上がオキシエチレン基である。
sは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の付加モル数であり、1〜150であり、好ましくは20〜100である。sの値が150を超えると得られる化合物が高粘度になるため製造が困難になるので好ましくない。
式(5)のMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基である。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。
有機アンモニウム基は、有機アミン由来のアンモニウム基であり、有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンである。
(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、500〜100,000であり、好ましくは5,000〜50,000であり、より好ましくは10,000〜20,000である。重量平均分子量が100,000を超える化合物は高粘度のため製造が困難になるので好ましくない。
(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体は、公知の方法により、重合開始剤を用いて重合することにより得ることができる。重合の方法については、塊状重合でも溶液重合でも良い。溶液重合で水を溶剤として用いる場合は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩や、過酸化水素、水溶性のアゾ系開始剤を用いることができ、その際に亜硫酸水素ナトリウム、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、次亜リン酸ナトリウムなどの促進剤を併用することもできる。また、溶液重合でメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、n−ヘキサン、2−エチルヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶剤を用いた重合の場合や塊状重合の際には、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物やアゾイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物を用いることができる。また、その際にはチオグリコール酸、メルカプトエタノールなどの連鎖移動剤を用いることもできる。
本発明のセメント用強度向上剤または水溶液は、そのままの形態で用いることもできるが、必要に応じて水で希釈して用いることも可能である。
第一の発明において、(a)と(b)は配合して使用してもよく、別々にセメントに添加して使用しても良い。セメント組成物の初期材齢向上という観点からは、(a)と(b)の重量比率は、(a):(b)=1〜50:50〜99が好ましい((a)と(b)との合計重量を100とする)。(a)の重量比率が(b)の重量比率を上回ると、セメント組成物の初期材齢の強度向上効果が低下し、またセメント組成物の練り混ぜ直後、および経時後の流動性が低下する。ここで、本発明の観点からは、(a)の重量比率は5以上((b)は95以下)が更に好ましく、7以上((b)は93以下)が最も好ましい。また、(a)の重量比率は、30以下((b)は70以上)が更に好ましく、25以下((b)は75以上)が最も好ましい。
第一の発明、第二の発明においては、セメント用強度向上剤とした場合の有効成分重量として、セメント重量100重量部に対して0.01〜1.2重量部使用することが好ましい。この量は0.05重量部以上とすることが更に好ましく、0.1重量部以上とすることが一層好ましい。また、この量は1.0重量部以下とすることが更に好ましく、0.6重量部以下とすることが一層好ましい。これが0.01重量部を下回ると初期材齢強度が低下する。これが1.2重量部を超えると、凝結遅延を引き起こし、初期材齢に高い強度が得られなくなる。
また、初期材齢強度向上という観点からは、セメント重量100重量部に対して、(a)の添加量を0.001〜1重量部とすることが好ましい。これは、0.005重量部以上とすることが好ましく、0.01重量部以上とすることが更に好ましい。また、(a)の添加量は、0.5重量部以下とすることが更に好ましく、0.3重量部以下とすることが一層好ましい。(a)の量を0.001重量部以上とすることによって、初期材齢強度が一層向上する。また、(a)の添加量が1.0重量部を超えると、(a)が本来有する急結剤としての性能が発現し易くなり、セメント組成物の流動性の低下が著しくなるので好ましくない。
(a)、(b)は、コンクリートに使用する水に予め溶解させて使用することができ、また注水と同時に添加して使用することができ、また注水から練り上がりまでの間に添加して使用することができ、また一旦練り上がったコンクリートに後から添加して使用することもできる。
第一の発明のセメント用強度向上剤、第二の発明の水溶液は、その効果を損なわない程度で、必要に応じて他の添加剤または添加材と併用することが可能である。他の添加剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、リグニンスルホン酸の塩、芳香族アミノスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩など他の減水剤、空気連行剤、分離低減剤、増粘剤、防水剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、膨張剤、乾燥収縮低減剤、防錆剤、起泡剤、発泡剤、AE剤、消泡剤、界面活性剤類などを挙げることができる。また、他の添加材としては高強度材、高強度混和材、超高強度混和材と呼ばれる混和材を挙げることができる。
第二の発明に係る水溶液を製造する際には、水溶液中で、過硫酸系および/または水溶性のアゾ系の開始剤で共重合させた(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系化合物の水溶液に、(a)一般式(1)で示される化合物を添加する。
(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体は水系重合、過硫酸系および/または水溶性のアゾ系の開始剤で反応させたものを使用する。第一の発明、第二の発明において、水系重合時の水溶液濃度は特に限定されない。しかし、濃度が高い方が管理が効率的なので、この観点からは30重量%以上が好ましく、40重量%以上が更に好ましい。水溶液濃度が30重量%より低いと、(a)一般式(1)で示される化合物を添加しない場合であっても、低温で塩が析出しにくいので、この点で第二の発明の作用効果は大きい。水溶液濃度の上限は特にないが、一般的には90重量%以下が好ましく、80重量%以下が更に好ましい。
水系重合は、開始剤あるいは反応原料を滴下することにより反応を行ってもよく、一括仕込みで反応を行ってもよい。また使用される過硫酸系の開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムを使用してポリカルボン酸系の共重合体を製造すると、高濃度水溶液で低温保管した場合、塩の析出を抑制できるため好ましく、また、水溶性のアゾ系開始剤としては、2,2‘−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2硫酸塩・2水和物、2,2‘−アゾビス{〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2‘−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)2塩酸塩、2,2‘−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩等の塩酸塩系を使用してポリカルボン酸系共重合体を製造すると、高濃度水溶液で低温保管した場合、塩の析出を抑制できるため好ましい。水溶性のアゾ系開始剤で、塩系でないものは、高濃度水溶液で低温保管しても塩が析出しないが、重合度が低くなるため好ましくない。反応温度は40〜90℃が好ましい。
第二の発明に係る水溶液の製造時には、(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体の重合反応終了後、カルボン酸部位の中和反応を行っても行わなくてもよく、また重合前に中和反応を行ってもよい。中和に使用される化合物としても制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンや、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を使用してもよい。
第二の発明に係る水溶液の製造時には、(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体に(a)一般式(1)で示される化合物を添加するが、重合反応前に添加してもよく、重合反応中に添加してもよく、重合反応後に添加してもよい。また中和反応の前後に添加してもよい。
第一および第二の発明に係るセメント組成物に使用されるセメントとしては、普通、早強、超早強のポルトランドセメント、シリカフュームセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントあるいは高炉セメントの1種または2種以上を用いるのが好ましく、2種以上の場合の組み合わせについては特に制限は無い。また、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石等の鉱物系粉体をセメントに配合してもよい。
第一および第二の発明のセメント組成物に使用される骨材としては、産地に限定はなく、山砂、川砂、海砂、砕砂、珪砂、砕石、川砂利、軽量骨材、コンクリート再生骨材などを用いることができこれらの1種または2種以上を使用してもよい。
第一および第二の発明のセメント組成物に使用される水は、セメント重量に対して15〜100重量%使用することが好ましく、20〜70重量%であることがより好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、式(2)で示される化合物の構造式、式(3)で示される化合物の構造式、その共重合組成および重量平均分子量を表1に示す。
Figure 0004968500
(製造例1)
式(2)で示される単量体(ア)と式(3)で示される単量体(イ)とを重合して得られる共重合体である。5リットル加圧反応器にアリルアルコール58g(1.0モル)と触媒としてナトリウムメチラート1.0gをとり、系内の空気を窒素ガスで置換したのち、100〜120℃でエチレンオキシド1320g(30.0モル)とプロピレンオキシド116g(2.0モル)をあらかじめ混ぜた溶液を約0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)で徐々に圧入して付加反応を行った。反応終了後60℃まで冷却した。
続いて、60℃で保たれている反応溶液中に水1133g、無水マレイン酸166.6g(1.7モル)を加え、35℃で重合開始剤として過硫酸アンモニウム38.8g(0.17モル)を加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させた。重合反応終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液283g(水酸化ナトリウムとして3.4モル)を加え中和し、さらに水1473gを加え共重合体の40重量%水溶液を得た。
(製造例2)
式(2)で示される単量体(ア)と式(3)で示される単量体(イ)とを重合して得られる共重合体である。かき混ぜ機、温度計、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却器を装着した5リットルフラスコに、ポリオキシエチレン(n=34)モノアリルモノメチルエーテル1528g(1モル)、無水マレイン酸98g(1モル)を秤取った。窒素ガス雰囲気下、60℃以下で、重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロ二トリル6.56g(0.04モル)を添加し、85±2℃に昇温し、8時間反応させた。得られた共重合体の動粘度を測定したところ、100℃で252mm/sであった。その後、イオン交換水2764gを加え、30分攪拌、混合後、ジエタノールアミン210g(2モル)を加えさらに30分攪拌、混合後、目的とする共重合体の40重量%水溶液を得た。
(製造例3)
式(4)で示される単量体(エ)と式(5)で示される単量体(オ)とを重合して得られる共重合体である。温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えた5Lフラスコにイオン交換水1614gを仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次いで、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)1668g、メタクリル酸332g、イオン交換水500g、および連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸16.7gを混合したモノマー水溶液を反応容器内に4時間かけて滴下し、さらに、該モノマー水溶液滴下開始と同時に、過硫酸アンモニウム23gとイオン交換水207gとからなる開始剤水溶液を5時間かけて反応容器内に滴下した。開始剤水溶液の滴下終了後、引き続き反応容器内を1時間80℃に維持し、重合反応を完結させた。その後、30重量%水酸化ナトリウム水溶液515gで中和し、重量平均分子量27000の共重合体の45重量%水溶液を得た。
(実施例1〜3、参考例1及び比較例1〜8)
表2に示す配合条件で45L/バッチのコンクリート原料を混合して90秒間強制練りミキサーで混練りし、得られたコンクリートのスランプを測定し、作業性について判定した。なお、セメント用強度向上剤は単位水量の一部として使用した。また、表3においての添加量はセメント100重量部に対する割合を示す。また、強度試験用供試体として、直径10cm、長さ20cmの円柱型枠に上記で得られたコンクリートを充填後、気中養生を行い、材齢7日強度を測定した。これらの試験結果を表3に示す。なお強度試験用供試体は3本作成し、圧縮強度は材齢7日後に3本試験を行いそれぞれの平均値とした。
Figure 0004968500
Figure 0004968500
A・・・・グリセリン
B・・・・グリセリンの活性水素1個あたりEO3モル付加品
C・・・・グリセリンの活性水素1個あたりEO8モル付加品
*1 有効成分あたりの添加量を記載。また、消泡剤を有効成分あたり0.01重量%添加して使用。
*2 亜硝酸カルシウム
*3 ソルビトールの活性水素1個あたりEO5モル付加品
*4 グリセリンの活性水素1個あたりEO20モル付加品
実施例1〜と比較例1、2、7、8の比較により、本発明のセメント用強度向上剤を所定量加えたものは、作業性および初期材齢における圧縮強度が向上しており、練り混ぜ直後の流動性、および流動保持性に優れていることがわかる。また、比較例3〜6に示されるような他の添加剤を加えたときとの比較では、少量の添加で作業性および初期材齢における圧縮強度が向上していることがわかる。
(比較例9〜11)
表4に示す配合条件で45L/バッチのコンクリート原料を混合して90秒間強制練りミキサーで混練りし、得られたコンクリートのスランプを測定した。なお、グリセリンは単位水量の一部として使用した。また、表5においてグリセリンの添加量は単位セメント量に対する割合を示す。また、強度試験用供試体として、直径10cm、長さ20cmの円柱型枠に上記で得られたコンクリートを充填後、気中養生を行い、材齢7日強度を測定した。これらの試験結果を表5に示す。なお強度試験用供試体は3本作成し、圧縮強度は材齢7日後に3本試験を行いそれぞれの平均値とした。
Figure 0004968500
Figure 0004968500
比較例9〜11に示すように、グリセリンおよびグリセリン無添加での試験結果より、グリセリン単体では初期材齢の圧縮強度の向上ができていないことがわかる。また、グリセリンが急結材として作用していることが判る。
(実施例
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を装着した1リットルフラスコに製造例1で製造した共重合体の40重量%水溶液450g(共重合体として180g)、およびグリセリン18gを秤取り、30分撹拌、混合し、ポリカルボン酸系共重合体の水溶液を得た。調整したポリカルボン酸系共重合体の水溶液を500mlのポリ瓶に移し変え、0℃にて保管し、1週間後の状態を確認した。結果を表6に示す。
(比較例12)
グリセリンの替わりに水を18g添加する以外は実施例と同様にして調整し、0℃にて保管し、1週間後の状態を確認した。結果を表6に示す。
Figure 0004968500
実施例、比較例12の比較により、第二の発明に係るポリカルボン酸系共重合体水溶液は、低温保管においても硫酸塩、および共重合体が析出せずに、安定的に使用可能であることがわかる。

Claims (7)

  1. 下記の(a)、(b)を必須とし、セメント100重量部に対する(a)の添加量が0.001〜1重量部であり、(a)と(b)の比率が重量比で(a):(b)=1〜50:50〜99((a)と(b)の重量の合計を100とする)である、セメント用強度向上剤。
    (a)下記一般式(1)で示される化合物
    Figure 0004968500

    (Rは、互いに独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。AOは、オキシエチレン基を表。l、m、nはそれぞれ互いに独立して0〜10である。)
    (b) ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体であって、
    少なくとも下記式(2)で示される単量体(ア)50〜99重量%、下記式(3)で示される単量体または無水マレイン酸(イ)1〜50重量%、および共重合可能な他の単量体(ウ)0〜30重量%を重合して得られるポリカルボン酸系共重合体
    Figure 0004968500

    (ただし、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、AOは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、50モル%以上が炭素数2のオキシアルキレン基で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、p=20〜300、q=0〜2である。)
    Figure 0004968500

    (ただし、Xは−OMまたは−Y−(AO)を表し、Yはエーテル基またはイミノ基を表し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、r=1〜50である。MおよびMはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基を表す。)
  2. l、m、nがそれぞれ0であり、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項1記載のセメント用強度向上剤。
  3. セメント、骨材、水および請求項1または2記載のセメント用強度向上剤を含有するセメント組成物。
  4. (a)一般式(1)で示される化合物、および水溶液中で過硫酸系開始剤と水溶性アゾ系開始剤との少なくとも一方を用いて共重合した(b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体を含有しており、セメント100重量部に対する(a)の添加量が0.001〜1重量部であり、(a)と(b)の比率が重量比で(a):(b)=1〜50:50〜99((a)と(b)の重量の合計を100とする)である、セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体水溶液。
    (a)下記一般式(1)で示される化合物
    Figure 0004968500

    (Rは、互いに独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。AOは、オキシエチレン基を表。l、m、nはそれぞれ互いに独立して0〜10である。)
    (b) ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体であって、
    少なくとも下記式(2)で示される単量体(ア)50〜99重量%、下記式(3)で示される単量体または無水マレイン酸(イ)1〜50重量%、および共重合可能な他の単量体(ウ)0〜30重量%を重合して得られる共重合体
    Figure 0004968500

    (ただし、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、AOは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、50モル%以上が炭素数2のオキシアルキレン基で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、p=20〜300、q=0〜2である。)

    Figure 0004968500

    (ただし、Xは−OMまたは−Y−(AO)を表し、Yはエーテル基またはイミノ基を表し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、r=1〜50である。MおよびMはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム基を表す。)
  5. (b)ポリオキシアルキレン化合物を側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体の濃度が30重量%以上であることを特徴とする、請求項4記載のポリカルボン酸系共重合体水溶液。
  6. l、m、nがそれぞれ0であり、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項4または5記載のポリカルボン酸系共重合体水溶液。
  7. セメント、骨材、および請求項4〜6のいずれか一つの請求項に記載の水溶液を含有するセメント組成物。
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