JP4953587B2 - 熱収縮性フィルム並びに該フィルムを用いた成形品及び容器 - Google Patents
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Description
(1)ポリ乳酸系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを主成分として含有し、前記アクリル系樹脂(B)が、メタクリル酸メチル単独重合体、又はメタクリル酸メチルと他のビニル単量体との共重合体であり、該ポリ乳酸系樹脂とアクリル系樹脂との質量比が(A)/(B)=95/5乃至50/50である混合樹脂層を少なくとも1層有し、かつ80℃温水中に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて−40℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温したときにフィルム中に含まれる全ての結晶を融解するのに必要な熱量ΔHmと、昇温測定中の結晶化により生じる熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が25J/g以下であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
(2)前記ポリ乳酸系樹脂(A)がD−乳酸とL−乳酸との共重合体、又はこれらの混合物である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
(3)前記混合樹脂層がさらに、他のゴム成分を、前記ポリ乳酸系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)との混合樹脂100質量部に対し、10質量部以上80質量部以下含有する請求項1または2のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
(4)主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1,200MPa以上である請求項1乃至3いずれかに記載の熱収縮性フィルム。
(5)0℃環境下の引張試験における引張破断伸度が100%以上である請求項1乃至4いずれかに記載の熱収縮性フィルム。
(6)請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いる成形品。
(7)請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
(8)請求項6に記載の成形品又は請求項7に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
なお、本明細書において、「主成分として含有する」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占める成分である。また、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含する。
本発明の熱収縮性フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう。)は、ポリ乳酸系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)との混合樹脂層を少なくとも1層有するフィルムを少なくとも一方向に延伸してなる。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂とは、D−乳酸若しくはL−乳酸の単独重合体、又はそれらの共重合体をいい、具体的には構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合物も含まれる。
本発明で用いるアクリル系樹脂とは、メタクリル酸メチル単独重合体、又はメタクリル酸メチルと、他のビニル単量体との共重合体である。該ビニル単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類;スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等である。また、この共重合体には、ポリブタジエン又はブタジエン/アクリル酸ブチル共重合体、ポリアクリル酸ブチル共重合体などのエラストマー成分や無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位をさらに含んでいてもよい。中でも、剛性、成形性の観点から、メタクリル酸メチルの単独重合体であるポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、及びメタクリル酸からなる群から選ばれる2種以上からなる共重合体が好適に用いられる。
本発明においては、示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて−40℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温したときにフィルム中に含まれる全ての結晶を融解するのに必要な熱量ΔHmと、昇温測定中の結晶化より生じる熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が25J/g以下であることが重要であり、好ましくは20J/g以下、さらに好ましくは15J/g以下、最も好ましくは10J/g以下の範囲に調整することが望ましい。ここで、ΔHmは示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて−40℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温したときにフィルム中に含まれる全ての結晶が融解する熱量であり、フィルムの結晶化の程度を示す尺度ではあるが、昇温測定時に生じる結晶化の影響も含まれている。そこで、昇温測定時の結晶化に由来する結晶化熱量ΔHcを差し引くことで、本来のフィルムの結晶化の程度を知ることができる。前記(ΔHm−ΔHc)が25J/g以下であれば、加熱収縮による結晶化を十分に抑制でき、上記熱収縮範囲内に調整し易いほか、フィルムの経時的な機械的強度低下が起こり難いため、実用上好ましい。なお、該フィルムが積層構成である場合は、フィルム全層の(ΔHm−ΔHc)が上記範囲であればよく、表面層は耐熱性、耐溶剤性の観点から、結晶性を多少高めに調整することが好ましい。
なお、本明細書において「主収縮方向」とは、縦方向(長手方向)と横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
本発明のフィルムは、フィルムの熱収縮特性、収縮仕上がり性、透明性等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を積層することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、60℃、及び80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向及び横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7を用い、JIS K7121に準じて、試料10mgを、加熱速度10℃/分で−40℃から250℃まで昇温した。得られたサーモグラフから全結晶を融解するのに必要な熱量ΔHmと、昇温測定中の結晶化に伴い発生する熱量ΔHcを求めた。
◎:ΔHm−ΔHcが15J/g以下のもの
○:ΔHm−ΔHcが15J/gを超え、25J/g以下のもの
×:ΔHm−ΔHcが25J/gを超えるもの
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm、横298mmの大きさに切り取り、横方向の両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5Lの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70〜85℃の範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが全く生じない。
○:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みがごく僅かに生じる。
×:収縮が不充分、又はシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる。
JIS K7127に準じて、温度0℃、試験速度100mm/分の条件でフィルムの主収縮方向と直交する方向(縦方向)について測定した。
表1に示すように、カーギルダウ社製 低結晶性ポリ乳酸樹脂 商品名『NatureWorks NW4050』(L体/D体量=95/5)(以下「PLA1と略称する」):50質量%と、住友化学社製 メタクリル酸メチル樹脂 商品名『スミペックス LG21』(以下「PMMAと略称する」):25質量%と、三菱レイヨン社製 コアシェル構造アクリル−シリコーン共重合体 商品名『メタブレン S2001』(以下「ゴム1」と略称する):25質量%との混合樹脂を三菱重工業株式会社製2軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合し、Tダイ口金により押出した後、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、250μmの未延伸シートを得た。次いで、三菱重工株式会社製フィルムテンターにて、予熱温度90℃、延伸温度85℃で横一軸方向に5.0倍に延伸し厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。
評価項目の全てが◎であったフィルムを(◎)、○が含まれるフィルムを(○)、1つでも×があったフィルムを(×)として総合評価した。評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1においてゴム1を大日本インキ化学工業社製 商品名「プラメート PD150」(以下「ゴム2」と略称する)と変更し、組成比をPLA1:60質量%、PMMA:15質量%、ゴム2:25質量%と変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1においてゴム1を含有せず、組成比をPLA1:60質量%、PMMA:40質量%と変更した以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1において、更にカーギルダウ社製 高結晶性ポリ乳酸樹脂 商品名『NatureWorks NW4032』(L体/D体量=99/1)(以下「PLA2と略称する」)を含有させ、組成比をPLA1:30質量%、PLA2:20質量%、PMMA:25質量%、ゴム1:25質量%と変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例4において、同組成比の混合樹脂層(表1では「中層」と示す)の両面にPLA1:90質量%とPMMA:10質量%との混合樹脂100質量部に対し、富士シリシア化学社製 疎水性シリカ粒子 商品名『サイロホービック100』を0.3質量部添加した混合樹脂層(表1では「外層」と示す)を2種3層のフィードブロックを用いて共押出しを行い、その厚み比を外層:中層:外層=30μm:190μm:30μmに調整した以外は、実施例3と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られた積層フィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1においてゴム1を三井・デュポンポリケミカル(株)社製 エチレン−酢酸ビニル共重合体 商品名「エバフレックス EV45LX」(以下「ゴム3」と略称する)と変更し、組成比をPLA1:45質量%、PMMA:25質量%、ゴム2:30質量%と変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1において、組成比をPLA1:75質量%、ゴム1:25質量%に変更し、さらにPMMAを含まないように変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例4において、組成比をPLA1:55質量%、PLA2:20質量%、ゴム1:25質量%に変更し、さらにPMMAを含まないように変更した以外は、実施例4と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1において、組成比をPLA1:35質量%、PMMA:40質量%、ゴム1:25質量%に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得ようと試みたが、シートを延伸する途中で破断してしまった。
表1に示すように、実施例1において、組成比をPLA1:73質量%、PMMA:2質量%、ゴム1:25質量%に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
これより、本発明のフィルムは、熱収縮特性に優れた収縮包装、収縮結束包装、熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムであることが分かる。
Claims (8)
- ポリ乳酸系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを主成分として含有し、前記アクリル系樹脂(B)が、メタクリル酸メチル単独重合体、又はメタクリル酸メチルと他のビニル単量体との共重合体であり、該ポリ乳酸系樹脂とアクリル系樹脂との質量比が(A)/(B)=95/5乃至50/50である混合樹脂層を少なくとも1層有し、かつ80℃温水中に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて−40℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温したときにフィルム中に含まれる全ての結晶を融解するのに必要な熱量ΔHmと、昇温測定中の結晶化により生じる熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が25J/g以下であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
- 前記ポリ乳酸系樹脂(A)がD−乳酸とL−乳酸との共重合体、又はこれらの混合物である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
- 前記混合樹脂層がさらに、他のゴム成分を、前記ポリ乳酸系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)との混合樹脂100質量部に対し、10質量部以上80質量部以下含有する請求項1または2のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
- 主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1,200MPa以上である請求項1乃至3いずれかに記載の熱収縮性フィルム。
- 0℃環境下の引張試験における引張破断伸度が100%以上である請求項1乃至4いずれかに記載の熱収縮性フィルム。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いる成形品。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
- 請求項6に記載の成形品又は請求項7に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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