JP4297911B2 - 熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベルおよび容器 - Google Patents
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Description
本発明のフィルムの第一の態様は、PO系樹脂を主成分とする中間層と、該中間層の両面に形成されたPLA系樹脂を主成分とする表裏層により構成される少なくとも3層を有する。
本発明のフィルムにおいて、表裏層はPLA系樹脂を主成分とする組成物で構成される。本発明のフィルムは、表裏層がPLA系樹脂を主成分とする組成物からなる層で構成されているため、以下の利点を有する。第一に、表裏層がポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリスチレン系樹脂で構成される熱収縮性フィルムよりも優れた低温収縮性と剛性が得られる。第二に、表裏層がPO系樹脂で構成される熱収縮性フィルムよりも印刷時に良好なインキ密着性が得られるため、製膜後のコロナ処理等を省略でき、製造工程を簡略化できる。第三に、製袋時にTHFなどの溶剤によるシールが良好であるため、シール時における接着剤の使用を省略することができ、製造コストの低廉化に資することができる。
本発明のフィルムにおいて、中間層はPO系樹脂を主成分とする組成物からなる層である。
本発明のフィルムで用いられるPO系樹脂は特に限定されない。使用可能なPO系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。中でも、熱収縮率と成形性との観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、重合方法や共重合成分などにより多様な種類が存在するため、その範囲に特に限定されるものではない。好ましい種類を以下に示す。
本発明のフィルムの第2の態様としては、上記中間層と上記表裏層の間に接着性の向上を目的とした接着層を有する態様を例示することができる。
接着性樹脂としては上記中間層と表裏層の層間接着性を向上させるものであれば特に限定されないが、表裏層のPLA系樹脂に対し、反応性または親和性を有する部位と、中間層のPO系樹脂と親和性を有する部位とを兼ね備えた樹脂が好適に用いられる。
本発明のフィルムは、少なくとも1種のPO系樹脂を主成分とする中間層と、該中間層の両面に積層された少なくとも1種のPLA系樹脂を主成分とする表裏層とから構成される。本発明のフィルムは、屈折率が比較的近いPO系樹脂とPLA樹脂とからなる熱収縮性フィルムであるため、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加した際にも、フィルムの透明性を確保することができる。
(1)熱収縮率
本発明のフィルムは、80℃温水中で10秒間加熱したときの熱収縮率が少なくとも一方向において30%以上であることが重要である。この熱収縮率は、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に20%以上70%以下程度である。
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、)巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品のための収縮包装、結束バンドとして用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
得られたフィルムを横4mm×縦60mmの大きさに正確に切り出し、サンプルとした。粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測(株)製)を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度2℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で、縦方向について動的粘弾性を測定した。なお、貯蔵弾性率(E’)としては、20℃における貯蔵弾性率を示した。
得られたフィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃および80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向および横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
得られたフィルムを縦100mm、横1,000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定し、10%以上を×、5%以上10%未満を○、5%未満を◎として評価した。
得られたフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルムの両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、4〜8秒で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃以上85℃以下の範囲とした。ボトル装着時のフィルムの様子を目視により確認し、以下の基準で評価した。
◎:ボトル装着時、層間剥離がなく、シール部分よりラベルを剥がした際にも、層間剥離を生じない。
○:ボトル装着時、層間剥離はないが、シール部分よりラベルを剥がした際に、層間剥離を生じる。
△:ボトル装着時、シール部分にわずかに層間剥離が生じる。
×:ボトル装着時、シール部分の全面に層間剥離が生じる。
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルム両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃から85℃までの範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
○:収縮は十分であるが、所々シワ、アバタまたは格子目の歪みが生じている。
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる。または、収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
表1に示すように、表裏層で使用するPLA系樹脂として、NatureWorks LLC社製 商品名「Nature Works4060D(L体:D体比率=88:12)」(以下「PLA1」と略称する)を用い、中間層で使用するPO系樹脂として、日本ポリプロ(株)製 ランダムPP 商品名「ウィンテックWFX4T」(以下「PO1」と略称する)50質量%と宇部興産(株)製直鎖状低密度ポリエチレン 商品名「ユメリット0540F」(以下「PO3」と略称する)50質量%との混合樹脂組成物を用いた。各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業(株)製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、未延伸積層シートでの各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=45μm/160μm/45μmとなるよう2種3層ダイスより共押出した後、40℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械(株)製フィルムテンターにて、延伸温度75℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、表裏層で使用するPLA系樹脂として、PLA1を50質量%と、NatureWorks LLC社製 商品名「Nature Works4050D(L体:D体比率=95:5)」(以下「PLA2」と略称する)50質量%の混合樹脂を用い、中間層で使用するPO系樹脂として、PO1:80質量%、出光興産(株)製ポリオレフィン「TPO310V」(以下「PO2」と略称する):20質量%の混合樹脂組成物を用い、さらに接着層として三井化学(株)製 酸変性ポリオレフィン樹脂 商品名「アドマーSF731」(以下「AD1」と略称する。)を用いた。各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業(株)製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、各層の厚みが表裏層/接着層/中間層/接着層/表裏層=40μm/10μm/150μm/10μm/40μmとなるよう3種5層ダイスより共押出した後、40℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、延伸温度75℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例2の表裏層をPLA1:90質量%、大日本インキ化学工業(株)製 ポリ乳酸系樹脂とジオールとジカルボン酸の共重合体 商品名「プラメートPD150」(以下「ゴム成分」と略称する。):10質量%の混合樹脂、中間層をPO1:55質量%、PO2:30質量%、荒川化学(株)製 水添石油樹脂 商品名「アルコンP140」(以下「石油樹脂」と略称する。):15質量%の混合樹脂とし、接着層として旭化成ケミカルズ(株)製 酸変性SEBS 商品名「タフテック M1913」(以下「AD2」と略称する。)を用いた以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例2の表裏層をPLA1:50質量%、PLA2:40質量%、ゴム成分:10質量%の混合樹脂、中間層をPO1:35質量%、PO3:40質量%、石油樹脂:25質量%の混合樹脂とし、接着層として住友化学(株)製 エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体 商品名「ボンドファースト 7M」(以下「AD3」と略称する。)を用いた以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例2の接着層を旭化成ケミカルズ(株)製 SEBS 商品名「タフテック H1221」(以下「AD4」と略称する)とした以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1の中間層を日本ポリエチ(株)製 エチレン−酢酸ビニル共重合体 商品名「ノバテックEVA LV141」(以下「PO4」と略称する)とした以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例3の中間層をPO1:45質量%、PO2:30質量%、石油樹脂:15質量%、PLA1:10質量%の混合樹脂とした以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、中間層を設けずにPLA単層からなる未延伸単層シートを厚みが250μmとなるように作製した以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、表裏層を設けずに、PO1:80質量%とPO3:20質量%とからなる厚み250μmの未延伸単層シートを作製した以外は実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。なお、テトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製しようとしたところ、溶剤シール適性が悪く、円筒状に製袋できなかった。
表1に示すように、実施例1において、表裏層をPO1、中間層をPLA1に変更した、未延伸積層シートでの各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=80μm/90μm/80μmとなるように変更した以外は実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。なお、テトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製しようとしたところ、溶剤シール適性が悪く、円筒状に製袋できなかった。
表1に示すように、中間層のPO系樹脂としてPO1:50質量%とPO2:50質量%との混合樹脂組成物を用い、未延伸積層シートでの各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=105μm/40μm/105μmとなるように変更した以外は実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、中間層のPO系樹脂としてPO1:50質量%とPO2:50質量%との混合樹脂組成物を用い、未延伸積層シートでの各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=10μm/230μm/10μmとなるように変更した以外は実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
これに対し、中間層にPO系樹脂を有さず、接着層を有さない場合(比較例1)には70℃において著しく高い収縮率を示し、収縮仕上がり性に劣り、また、表裏層としてPLA系樹脂を有さない場合(比較例2)には、腰強さ、熱収縮率、および自然収縮がそれぞれ低下した。また、中間層をPLA系樹脂、表裏層をPO系樹脂で構成した場合(比較例3)には、溶剤シール性が悪く、製袋できない結果となった。
また、表裏層の厚みが厚い場合(参考例1)には高い熱収縮率を示し、収縮仕上がり性が実施例1、2のフィルムより僅かに劣っていた。一方、表裏層の厚みが薄い場合(参考例2)には、自然収縮率が大きくなると共に、腰強さと収縮仕上がり性が実施例1、2のフィルムより僅かに劣っていた。
これより、本発明のフィルムは、低温収縮性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性、自然収縮性に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
Claims (10)
- 中間層と、該中間層の両側に積層された表裏層の少なくとも3層を有する熱収縮性積層フィルムであって、
上記中間層が少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を主成分とする層で構成され、
上記表裏層が少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂を主成分とする層で構成され、
かつ80℃の温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が30%以上であり、かつ80℃の温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。 - 上記ポリ乳酸系樹脂が、D−乳酸およびL−乳酸の共重合体、またはこの共重合体の混合物からなる樹脂である請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
- 上記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物である請求項1または2に記載の熱収縮性積層フィルム。
- フィルム全体の厚みに対する上記表裏層の厚み比が10%以上70%以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
- 上記中間層と上記表裏層との間に、少なくとも一層の接着層を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
- 上記中間層が、中間層を構成するポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂50質量部以下を含有する請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
- JIS K7105に準拠して測定されるヘーズ値が10%以下である請求項1乃至6のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
- 請求項8に記載の成形品または請求項9に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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